あなたのための物語(小説)

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&font(#6495ED){登録日}:2014/08/24 (日曜日) 21:50:00 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 ? 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){ &color(gray){サマンサ・ウォーカーは死んだ} } #contents() あなたのための物語とは、2009年8月に早川書房より刊行されたSF小説である。現在ではには文庫版が出版されているため、そちらのほうが手に入りやすい。 著者は「[[円環少女]]」シリーズや[[BEATLESS]]で知られるSF・ライトノベル作家の長谷敏司氏。 後、[[某聖杯戦争ゲー>Fate/stay night]]のスピンオフに同名の[[宝具]]が存在するが、そちらとは全く関係ない。そもそもあっちは「&color(red){貴方}のための物語」だしね。 *概要 死病に瀕した天才科学者サマンサ・ウォーカーとITP(後述)と呼ばれる技術により生み出された擬似人格、通称<<wanna be>>の交流を通して、人の死や人と道具の関係を問いただすSF小説。 本編のほぼ全てが死病に蝕まれ死にゆくサマンサの鬱った思考と、容赦のない病と死の描写で占められており、読了後はきっと鬱になる事請け合い。常時フラットかつ起伏の少ないストーリー展開であり、BEATLESS等に見られる派手なアクションも存在しないためその辺を期待する人は楽しめないであろう。 反面、BEATLESSにおいても見られるような、「ヒト」と「道具(モノ)」との関係というテーマや機械知性との対話の描写も内包しておりそういったものを求める人にとっては紛れもない傑作となりうる。 また、同氏の中編小説「地には豊穣」「[[allo, toi, toi]]」と同一世界観の物語であり、共通のガジェットであるITPが主軸に据えられている。というかallo, toi, toiに関しては、本作がベストSF2009において二位入賞を果たした際に書かれたものである。とはいえ、どちらの作品に関しても同一世界観を書いた話であるという以上の関連性は無いに等しい。 **あらすじ 西暦2083年、人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格<<wanna be>>に小説を執筆させることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。 そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である”感覚の平板化”の解決に捧げようとする。 いっぽう<<wanna be>>は徐々に、彼女のための物語を語り始めるが……。 <本作表紙裏、あらすじより> *登場人物 ○サマンサ・ウォーカー &color(red){「わたしにとって、科学とは抵抗(プロテスト)です。自分自身の無力さと、親世代が欠損を残した不満足な世界を乗り越えてゆくために、科学者を志したのです」} 人工神経の分野において、若くして頭角を現した天才科学者。「脳神経と電動義肢を接続する人工神経の制御プロトコル」であるNIP(Neuron Interface Protocol)の開発者連中の一人。共同開発者であるデニス・ローデンバーグと共に、ニューロロジカル社という企業を起ち上げ、NIP技術により巨大企業へと押し上げた。 その後、社の経営はデニスと専門の経営者に任せ、本人は社内において研究開発の一翼を担う存在となる。 現在はNIPを応用したITPの開発に心血を注いでおり、その過程で創造性試験体<<wanna be>>を生み出す。 生粋の研究者であり、研究開発以外の事にあまり目を向ける事がない。それ故プライベートよりも仕事を優先させる……というかそもそもプライベートを殆ど持っていない。本人はそんな現状に不満はないが、デニスには心配されている。 そんな最中、新種の自己免疫疾患により余命半年を宣告された彼女は、残された時間をITPの開発に使おうとするが……。 ある意味[[ラスボス]]。 ○<<wanna be>> &color(blue){<なにか、お役に立てる事はありますか>} ITPの研究開発の途中で生み出された仮想人格。作中においては「創造性試験体」、<<彼>>、<<wanna be>>と呼ばれるが、人間のような名前は持たない。 人間の脳を記述するための言語であるITPを用いて記述された存在であり、肉体は持たず量子コンピュータ内のソースが全てであるものの、拳大の球状端末に接続する事で人間と同じように外部を感知することが出来る。 また作中においては、人間との意思疎通を円滑化させるため人間の男性を模した立体映像を空間中に投影している。 その存在意義は、ITPの記述に人間と同様の「創造性」があるかどうかを調べるためであり、その方法として小説を書く事を課せられている。そして、<<wanna be>>の書いた小説が、どこかで見たもののツギハギから外れれば外れる程、ITPの創造性が証明されら事 となる。 最終的に小説は創造性の実証のため報道陣向けに発表され、<<wanna be>>自体はそれが終わればバックアップを残し[[量子コンピュータ]]内から削除――簡単に言えば死ぬのである。 起動初期は(言語能力自体は有していたものの)人間で言えば赤ん坊のような存在であったが、研究員やサマンサとの対話や、多くの小説を読む事により、ITPなりの自我が発芽することになる。 そして<<wanna be>>は自我の赴くまま、徐々に「サマンサのための物語」を書くようになり……。 ○ケイト・ブライアン サマンサの後釜としてITP技術の開発を引き継ぐ事となった若き研究者。 子持ちでファッションにも気を遣う。研究一筋のサマンサとは全く違う、ワークライフバランスを大切にする研究者。 研究開発の手法もサマンサとは正反対であり、サマンサがトップダウン式の、ある種独裁的な部下の使い方をするのに対し、ケイトはチームワーク重視で研究開発を進めている。 ○デニス・ローデンバーグ サマンサと共にNIPの基礎理論を作り上げ、ニューロロジカル社を立ち上げた元研究者。現在は経営者としてニューロロジカル社に勤めている。 己のプライベートを捨て、研究に没頭するサマンサを心配しながらも、経営者としてサマンサに厳しい言葉を投げかけることも。 *用語 ○ITP(Image Transfer Protocol) 神経伝達言語。NIPの発展系として開発されている。 対象の脳内には無い神経の発火を、[[ナノマシン]]を使い対象の脳内に記述する事が出来る技術。 例えば、人間は文字で「悲しい」と描いても実際に悲しいと感じることはない。然しITPを用いれば、ある人の感じた「悲しい」という感情をITPの形で保存しておく事により、その「悲しい」と記録した神経を、伝えたい相手の脳内でも働く書式で発火させる事によで、「悲しい」の感情を相手に対し完全に伝えることが出来る。 神経の発火を模倣し、意思や意味を脳内で作り出す言語、それがITPである。 この技術を用いれば脳内のあらゆる働きを記述し、保存することが出来る。つまりこの技術により新たな人格を作り出したり、自分の脳神経の発火を記述する事で人格のコピーを残すことすら出来る技術である。 ニューロロジカル社では、将来的にこの技術を商品を売り出そうとしているものの、「感覚の平板化」をと呼ばれる現象を始め、未だ少なくない問題と課題を抱えており、現在は それらのバグを無くすべく開発を進めている。 *備考 ・本作が長谷敏司氏のSFレーベルにおける初の長編となる。因みに、初のハヤカワレーベル作品は「地には豊穣」であるが、こちらもITP技術者の話となっている。 ・前述したが、同氏は本作で同年のベストSF第二位に入賞している。また、(残念ながら逃しはしたものの)日本SF対象候補にも選出された。 ・世界観が世界観なだけに当たり前であるが、同氏の作品でありながらヒロインが幼女ではない。どころか幼女自体出てこない。 追記・修正よろしくお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() #comment #areaedit(end) }

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