M4中戦車

「M4中戦車」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

M4中戦車 - (2016/07/06 (水) 22:20:46) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/10/07 (金) 14:15:51
更新日:2024/02/13 Tue 21:35:49
所要時間:約 4 分で読めます




M4中戦車(通称シャーマン)とは第二次大戦中においてアメリカ合衆国によって開発・製造された中戦車である

全長:7.47m
車体長:6.19m
全幅:2.62m
全高:2.67m
重量:32.3t
乗員:5人
武装:76.2mmM1
12.7mm M2機関銃×1
7.62mm M1919機関銃×2

他、ロケット砲搭載のシャーマン・カリオペやイギリスが改良したファイアフライ等様々なバリエーションが存在する


さほどミリタリー物に詳しくない諸兄も結構な人数の者が映画やゲーム等で見たことや聞いたことがあると思われる

第二次大戦中の戦車と言ったら何かと聞かれたら大半がドイツのティーガーかソ連のT-34、そしてコレを挙げるだろう

その圧倒的な知名度のせいでM26パーシング重戦車の影がだいぶ薄くなっているのはご愛敬(せめてもう少し登場時期が早ければよかったのだが)
また、イギリス、カナダ、オーストラリアを始めとするイギリス連邦加盟国やソビエト連邦に数千輌。
その他、自由フランス軍やポーランド亡命政府にも(棺桶等と共に)レンドリースされている


■開発経緯
1940年、アメリカは中立姿勢をとっていた事等により装甲車両の開発に積極的ではなかった。
それでも欧州の戦乱の空気を察っし、1939年に正式採用されたM2A1中戦車を1000両量産する計画を立てた。
M2中戦車は37mm砲を搭載、最大装甲厚51mmで開発当時はギリギリ世界水準といった程度の性能だった。

だが1940年5月に始まったフランス戦の戦訓により37mm砲を搭載したM2中戦車では予想される戦場で生き残ることはできないと判断。
M2中戦車の量産計画を中止。新型戦車開発に乗り出す。

まずはつなぎとして1941年4月からM3リー中戦車が生産開始、1941年10月にはM4中戦車が正式採用、1942年2月には量産が開始された。

■性能
火力:75mm砲M3を搭載、500m先の68mm装甲版を貫通する
速力:路上時速40km/時 不整地20km/時 と同時代の他国戦車に引けを取らない速力。
装甲:車体前面51mm 砲塔前面76mm 他国同時期戦車と比較して同程度か多少劣る程度。重装甲が過ぎると信頼性にも影響するのでこの程度。
生産性:生産性を確保する為にM3中戦車に引き続き、複数メーカー・複数エンジンでの生産体制を構築。
    メーカーにより車体の製造方法や搭載するエンジンが異なる。
    大抵こういう事をすると互換性に問題が出るのが相場だが(例:チハ戦車)互換性を維持することに成功。

■戦中の活躍
M4中戦車の性能自体は標準的、と言うに相応しいものであり、ソ連のT-34中戦車と同程度の性能だった。
しかし新型の6号戦車”タイガー重戦車”や5号戦車”パンター”等の独ソ戦で恐竜的進化を遂げたドイツ軍重戦車に張り合うには性能が不足していた。

ティーガーとの性能差は論外レベル。装甲、攻撃力、射程等全て劣り、遠距離砲戦では一方的に狩られる事も珍しくなかった。
特に装甲の薄さに悩んだ前線兵士らは装甲に予備の履帯や土嚢、コンクリート片、撃破された戦車から引っぺがした装甲板等を貼り付けて
少しでも厚くしようとする者が続出した。

米軍の戦術ドクトリンとしては偵察に軽戦車M3/M5スチュアート+対戦車に対戦車自走砲M10/M18/M36、
そして歩兵支援にM4と分業を想定しており、当初戦車の性能差はさほど問題視されていなかった。
しかしこの戦術ドクトリンは実際には機能せず、結局M4シャーマンも敵戦車と戦闘を行う事になった

実戦でM4戦車は、火力・防御力で自分より優れたドイツ軍重戦車をその生産性と信頼性に物言わせた人海戦術で圧殺した。
具体的には数両が囮としてドイツ軍戦車をひきつけている間に

  • 残りが迂回して装甲の薄い側面・後方に回り込んで仕留める
  • 対戦車自走砲、戦闘爆撃機、重榴弾砲などの支援を要請する

といった感じである

戦争中にも改良は継続され
  • 主砲の換装(75mm砲→76.2mm砲)
  • 高速徹甲弾の配備(但し一両あたり数発)
  • 幅広キャタピラの導入
  • 湿式弾薬庫の導入
  • 現地改造による追加装甲 
等により質的向上は継続して行われた。

それでもパンター相手は分が悪いのは変わらなかったが、
ドイツの重戦車がその自重で自滅し、多種多様な戦車により補給に負荷をかけていたのとは対照的に
その高い信頼性と潤沢な補給パーツにより常に前線に多数のM4戦車を稼動状態で配備することに成功。
連合軍の勝利に貢献した。

一方の太平洋戦域では日本軍の弱小戦車相手にM4無双!やったねシャーマン!
確かに日本軍から見れば重戦車そのもの。真っ向勝負で敵うはずもない。

だが決して全くの無傷ではいられなかった。

日本軍は待ち伏せによる速射砲(対戦車砲)での至近砲撃やソ連兵も真似しないトンデモ兵器で対抗した。


刺突爆雷
対戦車自爆蛸壺もあるよ!!

そんな我が身も顧みない戦法に戦車兵達は戦慄し、少なくない損害を出した。
そしてまた土嚢等で装甲強化に走るのである。

■戦後
設計は優秀だった為戦後も現役に留まり、M24チャーフィー軽戦車等と共に世界中の西側諸国に配備された。
自衛隊にも配備され、専守防衛や怪獣退治に使用されるが、70年代末には61式戦車と交代する形で全車引退している

【バリエーション】
■シャーマン・ファイアフライ
主砲を英国製17ポンド対戦車砲に換装したもの。
ファイアフライは西洋ホタル(肉食で凶暴)を指す。

長口径と砲搭背部の出っ張り(通信機兼カウンターマス)が特徴。
条件さえ整えばティーガーやパンターも喰えるため、ドイツ戦車兵の最優先目標になった。
かの有名なエース、ヴィットマンにトドメをさしたのもこいつ。 

■シャーマン・ジャンボ
形式番号M4A3E2
M4A3の改造機種。シャーマンに追加装甲を施し装甲強化した。
最大装甲厚が76mmから152mmと倍増。対戦車砲が潜んでいそうな所等の切り込み役として重宝された。

■M50スーパーシャーマン
仏戦車AMX-13の主砲を装備したユダヤ的シャーマン。
口径こそ75mmと通常のシャーマンと変わらないが、AMX-13の75mm砲はパンターの75mm砲を元に作ったもののため、威力は段違い。
エジプト軍のシャーマン(こちらはAMX-13の砲等を乗せている)と交戦した。

また、105mm砲を装備したM51シャーマンもM50の後継として作られ、M48パットンなど当時の主力戦車に混じって活躍したそうな。

その他、生産工場や生産時期、現地改修などにより本が数冊必要なレベルで派生・改造機が多く、T-34と並んでマニア泣かせである。


■余談
  • 愛称「シャーマン」はイギリス側の呼び名であり、米軍からの呼び名は、【M4中戦車】である。

  • ドイツからストーブと陰口を叩かれる程、被弾時に燃え易いことで有名だった。湿式弾庫の採用でとりあえずは改善された。

  • 現在はほぼ引退しているが、パラグアイでは少数が主力戦車として現役稼働している

  • 「土嚢装甲」は、ある者は「デメリットしかない」と言い、またある者は「パンツァーファウスト等の貫通力を弱められる」と言ったらしいが、
効果の有無は謎


追記・修正をお願いします

この項目が面白かったなら……\ポチッと/