223系近郊形直流電車

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223系近郊形直流電車 - (2018/12/09 (日) 01:50:06) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2010/07/16(金) 19:48:50
更新日:2024/01/18 Thu 18:40:34
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JR西日本が保有する鉄道車両にして現在のアーバンネットワークを代表する車両である。

221系に代わってJR西日本の近郊形電車の標準となり、1993年の製造開始以降マイナーチェンジを繰り返しながらアーバンネットワークや岡山地区に投入された。
総生産数は926両で、JR西日本になくてはならない車両となる。

しかし、車体の基礎設計が1990年代と古く、安全性の向上に限界があった事、下枠交差式パンタグラフを始めとする機器類の調達が困難になった事などから、
依然として残る国鉄形車両や221系の置き換えを後継の225系に託し、2008年度製造分を以って製造を終了した。
以下に223系の特徴をまとめる。


◆車体
先代の221系を引き継いだ20m級・片側3扉の標準的な近郊形車両の車体だが、素材は1991年に登場した207系に引き続き軽量ステンレス製とされた。
関空連絡橋の横風対策で車高は221系比で60mm低い3,640mmとされ、後に新快速用として造られた車両等でも高速走行時の安定性を高める為、この値を採用している。

先頭形状は221系のイメージを踏襲した半流線型ながら、新たに書き起こされた新規形状とされた。
灯具類は0番代では丸型前照灯と尾灯を1灯ずつ配していたが、1000番代では角型前照灯とフォグランプを2灯ずつ、尾灯を1灯ずつ配する形に変更された。
更に2000番代では0・1000番代では前面ステップ端に取り付けられていた尾灯を前照灯・フォグランプの真下に移した。
2000番代の灯具類の配置は以降の223系シリーズ全てに採用されたほか、北陸地方向けの521系や姫新線用のキハ122・127系でも採用されている。

窓は221系と同じく連窓とされたが、縦方向の寸法は221系の1mから95cmと5cm縮小された。
これはステンレスで1mの大型窓とした場合、車体剛性が確保できず、側面からの衝突に弱くなるほか、耐用年数が短くなるなどJR西日本にとっては死活問題ともいうべき事態になる為である。
配置は0番代では221系と同じとされたが、1000番代では座席配置の変更に伴って窓配置も変更され、車端部以外の戸袋窓が廃止された。
更に2000番代以降は車端部も含めて戸袋窓が完全に廃止されている。

2000番代以降では先頭車の先頭部構体*1と妻面部分がボルト留めとなっており、先頭車から中間車への改造やその逆が容易となるように配慮されている。
なお、中間車を先頭車に改造する場合には125系のような先頭部構体を取り付けることになっている。
先頭部構体は普通鋼製で、車体色のシルバーは塗装されている。
これらの構体構造は2000番代以降に設計・製造された225・227・321・323・521系の全てのJR西日本の通勤・近郊形電車に採用されている。

この他、最終グループである2008年度製造車は車体強度の向上の為、外板材質の変更、各部への補強の追加が行われている。
また、5500番代はワンマン運転時の運転士の見通しを確保するため、妻面に窓が設けられている。

◆接客設備
座席は基本的に転換クロスシートだが、5500番代は車端部の座席がロングシートとなっている。
扉間の列数は0番代では221系と同じ6列とされたが、1000番代以降では混雑時のスペース確保と閑散時の座席定員両立を図る為、扉間5列として扉脇の座席に補助席を設けている。
ただし、2500番台は元々の用途や0番台が非対応であることから補助席を持たない。
また、横の配列が用途に応じて大きく変化している。

空港連絡列車としての使用が念頭に置かれた0・2500番代では1列-2列の配置とされ、大型の荷物を持った空港利用者や大阪環状線内でのスペース増大に対応している。
この為、座席定員は少なくなっている。
特に2500番代は前述したように扉間5列であるにも関わらず補助席を持たない為、座席定員数は223系シリーズ最小となっている。

JR神戸線JR京都線・琵琶湖線新快速・快速用として製造された1000・2000番代、 快速マリンライナー 用として製造された5000番代は旺盛な着席需要に対応するため、221系と同じ2列-2列の配置とされた。
前述した様に扉間の座席配置は5列と221系の6列から1列減少したが、補助席を設けて閑散時は221系を上回る座席定員を確保している。

なお、1000番代の補助席は背もたれが付けられたが、2000番代以降ではコストダウンのために省略された。
が、そのせいで座面を収納している部分とそうでない部分に段差ができ、座る姿勢がおかしくなるため利用者からは不評である。
また、1000番代ではランプによって補助席が使用可能かどうかを知らせていたが、
これまたコストダウンのために2000番代以降は使用できない場合がある、と書かれたプレートが貼り付けられているだけである。

福知山近郊のローカル輸送に徹する5500番代では、扉間の座席配置は縦方向・横方向智に1000・2000番代と同等とされたが、
前述の通り車端部のみワンマン運転時の運転士の見通しを確保するためにロングシートとなっている。
また、整理券の発券機が取り付けられている関係で、補助席は中央ドア部の8席のみとなっている。

また、2000番代以降では交通弱者対応として、床面高さを0・1000番代の1,150mmから1,130mmと低床化し、ホームとの段差縮小に努めている。

◆走行機器
システムはその後のJR西日本のインバータ車の標準となるMT比1:2とされた。
ただし機器類をM車に集約している為2両でユニットを組む事も可能で、5000・5500番代はこれを生かして2両編成となっている。
また1000・2000番代の8両編成にも2両ユニットが存在する。

制御装置は0番代がGTO-VVVFインバータ、1000番代以降がIGBT-VVVFインバータとなっているが、いずれも1個のインバータで1個のモーターを駆動させる、所謂1C1M方式となっている。

モーターは小型・軽量で大出力を誇る三相誘導電動機を採用、出力は1000・2000・2500・5000番代が220kW、0・5500番代が230kWとなっている。
0番代は2008年頃に換装されており、それまでの出力は180kWだった。

パンタグラフは下枠交差式で、JR西日本の新製車両としては最後の下枠交差式パンタグラフ採用車となった。
基本的に電動車に1基搭載しているが、2000番代と5500番代の一部が前者はJR東西線乗り入れのため、後者は架線の霜取り用として2基搭載している。

全車が221系と併結可能である。この点を生かし、2000番代の一部と5500番代が221系性能に固定されている。
これらの車両は前面貫通扉と乗務員室扉にオレンジ色のテープが2本貼られたほか、2000番代の221系性能固定車は番代が6000に変更されている。
また、運転台の至る所に221系性能であることを示すステッカーと速度計の120km/hの位置にリミットを示す三角形のステッカーが貼られている。
そこまでする必要あるのか。

◆各番代解説
  • 0番代
1994年に空港連絡列車である関空快速用として68両が製造された。
2・6両編成、3・5両編成時代を経て現在は4両編成に統一されている。223系では唯一丸型の前照灯が採用されている。
吹田総合車両所日根野支所所属。

*2

  • 1000番代
元々は1996年度に投入を開始する予定だった。
しかし1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により阪神間の鉄道路線が壊滅の憂き目に遭ってしまった。
その為、最初に復旧したJR神戸線に阪神間の鉄道路線の利用者が集中した事で輸送力増強が必要となり、急遽前倒しで登場した。
130km/h運転対応で登場し、1999年5月10日のダイヤ改正から2000番代と共に新快速で130km/h運転を、2003年からは快速でも130km/h運転を開始した。
8両編成9本と4両編成5本の92両が在籍する。網干総合車両所所属。

*3

  • 2000番台、6000番代
新快速の223系統一や快速からの113系追い出しなど、様々な理由で一番多く製造された車両。
2000番代は1000番代同様、最高速度130km/hに対応。6000番代は221系に性能を合わせている為、最高速度は120km/h。
8両編成30本、6両編成14本、4両編成82本の計648両が存在し、このうち4両編成26本前後が6000番代化されている。
網干総合車両所本所・網干総合車両所宮原支所所属。なお、宮原支所の車両は全て6000番代である。

*4

*5

  • 2500番代
編成組み替えの際に先頭車が足りなかった0番代の補充用や予備車増大、阪和線大阪環状線の直通列車増発用に製造された。
「2500」の番代が示す通り2000番代をベースに0番代に合わせた接客設備・機器類・外観の変更を行っている。
72両が製造され、一部のモハは0番代に組み込まれたり、逆に0番代のサハを組み込んだりしている。
下の画像がまさに0番代のサハを組み込んでいる編成で、前から3両目の側面の帯が太い車両が0番代である。
吹田総合車両所日根野支所所属。

*6

  • 5000番代
塩害によって老朽化した快速マリンライナーの213系置き換え用として登場した。
1000番代・2000番代同様、最高速度130km/hで運転される。
一時期2000番代のサハを組み込み3両編成となっていたが、乗客の減少により2両編成に戻った。
2両編成7本の計14両が存在する。岡山電車区所属。

*7

  • 5500番代
福知山線山陰本線の輸送改善の為に製造された。
実は御布施による製造ではなく、自社都合による製造である。
521系の後に出た為「521系の直流版」などと言われたりするが、実際には上記の5000番代をワンマン運転対応に変更した車両である。
構体は521系の321系ベースの構体*8ではなく223系用構体となっている*9ほか、台車が521系では2500番代と同様の120km/h運転対応の物*10なのに対し、5500番代は5000番代と同様に130km/h運転対応の台車*11を装備している。
*12
登場時は130km/h運転に対応した性能にされていたが、

  • 運用区間の都合上130km/h運転を必要としない


といった理由から221系性能に固定されている。
2両編成16本の計32両が存在する。福知山電車区所属。
因みに台車検査、重要部検査、全般検査は吹田総合車両所が担当しており、現状唯一の130km/h運転対応の装備を持った223系でありながら網干総合車両所が整備に関わっていない223系である。
*13

*14

  • JR四国5000系
JR四国版223系。5000番代と同じく、快速マリンライナー用の213系を置き換えるために製造された。
高松寄りの先頭車はE217系のグリーン車をベースとしているが、それ以外は完全に5000番代と同一である。
(唯一違う点はJRマークの色とスカートの厚さぐらい)
3両編成6本の計18両が存在する。
JR四国との分割保有になった理由は、213系時代はJR四国が一方的に車両使用料を支払う形になっていた為である。

*15

  • 9000番代
1998年に川崎重工業が2000番代量産に先立ち製造した試作車で、1両のみ製造された。
しばらくは工場内に留置されていたが、2004年9月にJR西日本が購入して吹田工場で改造され、在来線用技術試験車「U@tech(ユーテック)」となった。
その後、マリンライナー置き換えで余剰となった213系2両と共に3両編成を組み、様々な試験に使用された。
なお、213系との編成になっているが最高速度は130㎞/hとなっており、加減速の性能も223系2000番代と同等である。

*16

  • 鉄道総研R291形
2005年に鉄道総研向けに近畿車輛で製造された。
2000番代と同様の構体を持ち、足回りはJR東日本のE231系同等品となっている。
塗装は窓周りが223系標準の茶、窓下が紫の帯となっている。
クモヤR290-1とクヤR291-1の2両が存在する。
クヤR291-1は燃料電池試験車となっており、単独走行も可能である。
制御車ってなんだったっけ……。
*17
ちなみに車籍がないので鉄道総研内部の試験走行線の自走は出来るがそこから中央本線に出て本線走行したりというのは不可能。



兄弟車に2000番代の構体とシステムを流用したローカル線向け単行車125系がいる。
ちなみに5000・5500番代と外観のそっくりな521系はどちらかと言うと321系に683系の機器を載せて3ドア近郊形電車化した車両という立ち位置の方が近い。




追記・修正よろしくお願いします。

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