poca felicita

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poca felicita - (2013/06/24 (月) 07:35:05) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/03/25(金) 00:17:54
更新日:2021/02/24 Wed 14:21:48
所要時間:約 5 分で読めます




「ガンスリというのは記号化の空虚さをも隠し持った作品だと思っています。

世界にとって彼女がたったそれだけの存在であったとしても、
紛れもなく彼女は彼女自身の物語の主人公として生きている筈です。

彼女が壊れてしまった時、公社は事務的に新しい義体を補充するだけだったとしても……。
それは僕達の人生にも言えることかもしれなくて……。

でも、僕は抗いたい。僕の人生は代替えの利く部品ではない。」

  ――Revo


「原作は悲劇的な色合いの強い内容ですが、それは平和な瞬間、
幸せな一瞬を描くことでより印象的なものへ変化します。

この『poca felicita』にはその双方が緻密な構成で織り交ぜられています。

きっと原作の読者の方は作品世界のイメージを膨らませ、
未読の方には新たに興味を持っていただけることでしょう。」


  ――相田裕

    (付属冊子より編集抜粋)






poca felicitaは、GUNSLINGER GIRLのイメージアルバム。2005年発売。

ヴォーカルはアニメ第一期の声優達とイタリア人歌手JOSEFAが務め、
作詞・作曲はSound HorizonのRevoが一手に担った。


○概要

テロや独立運動等の社会問題を抱える架空の現代イタリアに設立された『社会福祉公社』は、
障害者による福祉事業を謳う公営組織である。

しかし正体は、人体改造と『条件付け』と呼ばれる洗脳によって、
障害を持ち生きる見込みのない少女を、半ば機械の暗殺者――
『義体』として育成する、政府の諜報機関であった。

だが少女達はそんな境遇にあってなお、思春期。同じく『義体』となった少女達や、
自身を訓練・監督する『担当官』との関係に時に悩み、喜び、泣き、笑いながら、日々を懸命に生きていく。

――二人で一組の『兄妹』として戦いながら。



構成は、登場人物のイメージソング7曲と弦楽四重奏1曲、ピアノ独奏1曲、対となるイタリア語の楽曲2曲。

Sound Horizonファンならお馴染みだが、
曲の要所々々でクラシックにおける主題というべき同一の旋律が登場するデザインとなっている。

また、やはりサンホラと同様に声優達の演技が曲の展開に華を添える。

全編に渡って登場するイタリア語や銃声、原作漫画の台詞、
上手すぎて少女の歌声に聴こえない」という理由で声優にNGが出された逸話等からはRevoのこだわりが感じられ、
たかがキャラクターソング集と思って聴くと度肝を抜かれる出来となっている一枚である。




○収録曲

1.La raggaza col fucile (ラ ラガッツァ コル フチーレ)

「銃を持った少女は 哀しみの雨の中を駈けてゆく」

題意は少女と銃。歌い手はJOSEFA。
シンフォニック・ロックの王道である。メタルと呼べる程の激しさを持つ。

銃弾の中で明日の命も知れず、洗脳の影響で寿命の短い少女達。
曲中には、残酷な運命を象徴する陰鬱な雨の音が響く。
しかし聴き終えた時には、小さな幸せを見つけながら生きる少女達に感じる爽やかな悲しみが、
それを切ない雨と感じさせてくれることだろう。

「嗚呼...彼女が明日天に召されるとしても その空は変わらないだろう……」


2.Il fratello (イル フラテッロ)

題意は兄妹。弦楽四重奏。

Revoには珍しく、遊び心も捻りも無いクラシック曲。それだけに旋律が気高い。

穏やかさの中に秘める想いが曲の経過と共に徐々に染み出し、主題となる旋律で堪えきれずに溢れ出す名曲。


3.Lui si chiama... (ルイ シ キアーマ)

「私、星を見るの初めてです!」

題意は『彼の名は...』。歌い手は南里侑香。

優しい担当官ジョゼを一途に慕うヘンリエッタ。実の兄妹のように睦まじい二人。

しかし、ある事件の終わり際にヘンリエッタが吐露した心情は……。

ヘンリエッタの強い愛情を表す転調が印象深い作。

近くて遠い距離の間に様々な想いが混在する二人の関係はまさに『兄妹』である。

「義体の私がジョゼさんのお役に立つには、普通の女の子じゃ駄目なんですよ……」


4.La principessa del regno del sole (ラ プリンチペッサ デル レーニョ デル ソーレ)

「良かった、動く。自由な体、素晴らしいことだ。」

題意は『太陽の国の姫』。歌い手は三橋加奈子。

義体となって初めて動く四肢を得たリコは、体を動かせること、生きることに喜びを感じる無垢な少女である。
そんな彼女が暗殺の仕事場で知り合いの少年に会って悩んだのは、何と言葉を掛けるかだけだった。

何かが欠落した楽しげな歌声と曲調と歌詞との間に感じるズレこそ、『条件付け』の悲しさと言うべきか。

「ええと……、こんなとき何て言うんだっけな……ああそうか、『ごめんね』」


5.Biancaneve bruno (ビアンカネーベ ブルーノ)

「『兄妹』だからって、仲睦まじいとは限らないわ」

題意は『褐色の白雪姫』。歌い手は仙台エリ。

条件付けが軽い為、他の義体とは違い担当官ヒルシャーに対しても単に従順ではない意志の強い少女、トリエラ。

彼に抱く感情が洗脳の産物なのか、自分本来の物なのか苦悩する中、
思い出の銃を奪った殺し屋ピノッキオと再戦するトリエラは、
普段の冷静さを脱ぎ捨て感情を爆発させる。

ポップな仕上がりにピノッキオの旋律が交錯し、可愛らしさと熱い展開が両方楽しめる一曲。

「よくも私を撃ったな……ヒルシャーさんのくれた大切な銃で!許さない――絶対に許さない!!」



6.Pinocchio (ピノッキオ)

題意は『ピノッキオ』。インストゥルメンタル。

本格的なジャズ。明らかに他とは違う大人な作りで、唯一どの曲とも対になっていない。



7.Claes tranquillo (クラエス トランクィッロ)

「私は無為に時を過ごす喜びを知っている」

題意は『大人しいクラエス』。歌い手は小清水亜美。

担当官をもたず、試験用の義体としてのんびり暮らすクラエスだが、本来条件付けで消えた筈の記憶は、

今も彼女に確かな影響を与えている――朧気な『パパか誰か』に教わったこととして。

イタリアを意識させる多彩な表情のギター音が鮮やかな曲。

「書き換え可能な命令じゃない、血の通った約束だ。」



8.La principessa del regno della pasta (ラ プリンチペッサ デル レーニョ デラ パスタ)

「昔々あるところに、パスタの国がありました」

題意は『パスタの国の姫』。歌い手は寺門仁美。


発展途上の条件付けと改造には、試行錯誤が必要だった――アンジェリカは、その犠牲となった最初期の義体である。
次々と思い出が消えることに無力感を抱く担当官マルコーが、最も動揺したこと……
それはアンジェリカが、かつて好きだった物語『パスタの国の王子様』すらも覚えていないことだった。

二転三転する曲調がアンジェリカの精神を思わせる作品。なんと劇中劇ならぬ歌中歌まで挿入される。

「アンジェリカは俺の作り話を気に入ったらしく、会う度に続きをせがんだ……」



9.Io mi chiamo... (イオ ミ キアーモ)

「私の時間は、全てラウーロさんの為に使うわ」

題意は『私の名は...』。歌い手は能登麻美子。

義体エルザは担当官ラウーロと共に遺体となって発見された。
彼女は最期の時間を主人の為に戦ったのか、それとも自分の為に使ったのか……。

妖艶な雰囲気の漂うダークな出来映え。偏執的に繰り返される旋律には狂気さえ覚える。

「貴方は何も覚えてはいない、覚えてたのは私だけ」


10.La ragazza (ラ ラガッツァ)

題意は『少女』。ピアノ独奏。

2曲目のテーマが義体の担当官に対する想いなら、
こちらのテーマは義体の自分自身に対する想い、つまり運命の悲哀だろうか。

救われぬ宿命を従容と受け入れることの悲しみが込み上げる一作。



11.La ragazza col fucile e poca felicita (ラ ラガッツァ コル フチーレ エ ポカ フェリチータ)

題意は『少女と銃と小さな幸せ』。歌い手はJOSEFA。

最後を飾るに相応しい、心の洗われる曲。
少女達を救うことが出来ない以上、周囲には幸せを祈る以外に無いのだ。





追記修正願います。



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