KRLジャボタベック(鉄道会社)

「KRLジャボタベック(鉄道会社)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

KRLジャボタベック(鉄道会社) - (2021/12/30 (木) 20:38:14) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/09/11(日) 17:15:50
更新日:2022/10/23 Sun 21:58:21
所要時間:約 5 分で読めます




KRLジャボタベックとはインドネシアのジャカルタ近郊を輸送する鉄道会社の事である。


〇概要
現在はインドネシアの鉄道公社を民営化した (PT. KAI) Commuter Jabodetabekが運営していて、インドネシア国鉄の線路を借りて運行している(日本でいうとJR貨物がそれにあたる)名前の由来は、KRLとはインドネシア語で電車を表し、ジャボタベックとはジャカルタ首都圏の都市であるジャカルタ、ボゴール、デポック、タンゲラン、ブカシの頭文字を組み合わせたものである。

元々、インドネシアには戦前のオランダが線路を既に建設していたが、電化はもとより、あまり延進もされなかった。東京23区に迫る人口を抱えているのに他のインフラ共々整備が全く進んでいなかったのだ。
そこでインドネシア政府は日本等に対して援助を要請し、日本の技術を元にして鉄道施設を整備した。ちなみに建設過程としては、JICA(国際協力機構)が、「ジャカルタ大都市圏鉄道輸送計画」を提案して、それに基づいて日本のODAの援助のを基に整備された。


〇路線・運行形態
中央線(ボゴール線)、東線、西線、ブカシ線、セルポン線、タンゲラン線、タンジュンプリオク線があるが、運行形態はは路線別ではなく列車別に細かく別れている(ある程度のパターンはある)。
中核となる駅はJakarta-Kota(ジャカルタ・コタ)という駅で駅構内は殆どがヨーロッパタイプの低いホームとなっている

運行種別は各停のみ。かつては急行もあったが、ダイヤ改正によって廃止となった。なお、各停はエアコンの有無によって更に区別され値段にも影響する。


〇車両
会社の概要とか路線形態とか説明してきたが、ぶっちゃけこれが今項目のメインディッシュ。KRLジャボタベックは現地向けの車両と共に、何と日本で使われた中古車両を使っているのだ。
他にもミャンマーやタイ、アルゼンチンでも同じような例があるが、特にインドネシアはその導入にも積極的である。
もちろんインドネシアとしては自国の産業を優先したいのだが、路線の拡大に対して国産電車の大量配備にめどがつかず、2014年で中古車導入を打ち切る予定が2019年まで延長されている。
以下、日本から導入された車両を紹介する。

◆東京都交通局6000形
最初に導入された車両。元の所属は都営三田線。現在は全面の改造によって顔が凄いことになっている車両がある。
日本では秩父鉄道や熊本電鉄に譲渡された車両が現役。

◆JR東日本103系
武蔵野線や京葉線の余りを導入。四両編成を二つ組み合わせて運行されていて、何故かJR東海風に塗装された車両まである。
流石に引退したらしいが、JR西日本では2021年現在未だ現役である()

◆東京急行電鉄8000系/8500系
同時期に導入された。一時期は8000系は伊豆の夏号塗装のままで走ったこともある。秩父鉄道の新車(中古)もこれと同じ車両。東急時代を上回る12両編成での運用が確認されている。
8000系は伊豆急で現役。8500系は秩父鉄道・長野電鉄・伊豆急に譲渡されたのみならず、2021年現在も東急で運用されている。オリンピックまでに置き換えられなかった…

◆東京地下鉄5000系
東西線から5000系が完全に置き換えられると同時に一部が導入された。
国内では引退済みだが、千代田線綾瀬支線で運用されていた編成が動態保存中。

◆東葉高速鉄道1000系
こちらも置き換え時に(Ry。ちなみに東葉1000系はメトロ5000系を改造した車両である。(ぶっちゃけ兄弟車)一時期は東葉高速鉄道時代のままで走行されていた。
国内に残存車はいない。

◆東京地下鉄 7000系
1000系の後、立て続けに投入された車両。元の所属はメトロ有楽町線。この車両から前面が真っ赤になり黄色いラインが付かれた。(通称:魔赤色)ちなみに副都心線に対応していない車両(通称:Y車)が対象だった。
過半数がメトロに残留し、更新工事を受けて2021年現在も運用されている。

◆東京地下鉄 05系
更に立て続けに投入。元の所属はメトロ東西線。やはり7000系と同じ魔赤色に。初期車のみが導入されている
日本から渡った中古電車の中で一番新しい電車。
こちらも過半数がメトロに残っており、その多くは更新済み。2021年時点では3本だけ未更新で残っているとか。


◆東京地下鉄 6000系
更に(ry。元の所属はメトロ千代田線。同じく魔赤色に塗装された。7000系の兄貴分であるためか、一見すると見分けがつかない
一応見分けるポイントは運転席横の非常用貫通扉の上の窓が無い方が6000系である。
国内では引退済みだが、第2編成が動態保存されている。

◆JR東日本203系
久々のJR車。元の所属は常磐緩行線。やはり魔赤色になった。ちなみにフィリピンにも導入されるらしい。
国内に残存車はいない。

◆JR東日本205系
埼京線、横浜線、南武線の廃車を大量に導入することが決定した。やはり魔赤色そして、初の12両編成での運用がなされている。VVVFへの更新済みの武蔵野線からも転用された。
日本の中古車両を含めて多数を置き換えて主力車種となる予定である。
かつては、インドネシア政府が205系の導入を要求していたが、何故かJR側が千葉地区の113系と共に買うようにと命じた。113系は3ドア車の為、インドネシア政府がそれを断り、205系は一旦インドネシアへの切符を失った。
千葉地区の113系の一部は信州の民宿に保存される事が決まった。
最終的に製造された約1400両中のうち800両強がインドネシアに渡っており、名実ともに主力と言ってよいだろう。国内に残存する車両は経年が進み状態が悪化したこと、編成が短すぎてインドネシア側の要望に合致しないなどの理由でこれ以上の譲渡はないとみられる。

JR東日本の地方線区及び西日本の阪和線において現役続行中。

はるばる日本からやって来た車両は、現地向けに改造するために塗装変更の他に、ステップの設置や投石により被害の防止の為に前面のガラスに網、さらに強化型スカート(連結機付近にある覆う為の板)を設置される。(理由としては線路内に人が立ち入ったりする他、まだ整備が不十分な為)
更に試運転の後は10両の車両は8両に減らされて(2両は予備車扱い)から営業運転に導入されるらしい。
こうした現地向けの改造がされていても、方向幕が弄られていない事があるため、103系の中には「東所沢」や東京の幕を表示しながらジャカルタ近郊を走るものもある。

あと、
日本では絶対にやらなさそうな細かな塗装は勿論、また前面スタイリッシュ改造によって顔が凄いことになっている車両もある。
興味のある方は画像を検索してみるといい。

ちなみに、日本の中古車は全て冷房付き各停(かつては急行もあった)として運行される。
現地の利用者からも冷房付きとあって好評らしい。


そんなジャボタベックだが、国産車も僅かながら存在している。本音では自国の産業育成の為に国産主体でやりたいのだが、技術やら様々な面で後れを取ってしまっており、道のりは困難である。

KRL-I
インドネシアの会社であるPT INKA社が生産した、インドネシア初の国産電車。技術支援として日本車輌が参加、電装品は東芝製のIGBT素子VVVFインバータ制御で、前面・側面・車内扉上部にLEDによる行先表示機が採用されるなど新機軸多数用いられた軽量ステンレス製20m3扉車4両編成2編成が2001年に製造されて2003年に導入された。インドネシア初の国産電車として非常に力の入ったものだったが、導入してから故障頻発して信用性は皆無。一時離脱後に改修されて2007年に復帰したものの…。


KfW I-9000形
PT INKA社製で、ドイツ復興金融公庫からの支援で2010年に生産される。電装品はドイツののボンバルディア・トランスポーテーション製でVVVFインバータ制御。4両10編成が在籍。性能自体はかなりのものらしいが、KRL-I同様に機器の不具合(それは時として、スピードメーターが表示されないというものも)等で工場に送り返されたりしたこともある。

そしてジャボタベックにおいて、かつて使われていた中にも日本製の物も多く存在した。

HITACHI(KL3-97)
1997年に4両6編成が導入されたステンレス製VVVF車。なんと日立製作所製作の日本製で、愛称もそこから。2013年の非冷房車全廃まで活躍していた。

HOLEC(KL3-94/96/97/98/99/2000/2001)
1994年から2001年にかけてベルギーのボンバルディアで生産されたステンレス製VVVF車。電装品生産元のオランダHOLEC車から愛称がとられている。
非冷房車であるが、極一部がPT INKAにて韓国・宇進産業の電装品を使って冷房改造してHOLEC ACとして生まれ変わったが、全車引退の憂き目に。

Hyundai(KL3-92/93)
1992年から1993年にかけて、韓国・ヒュンダイで生産されたステンレス製VVVF車。愛称も生産者から。

Rheostatik(KL3-76/78/83/84/86/87)
1976年から1987年にかけて導入された、日本車輌、川崎重工、日立によって生産された日本産の非冷房抵抗制御車。
年度によって普通鋼製だったりステンレスだったり、二扉だったり三扉だったりする。
愛称は抵抗制御を意味する"Rheostatik"から。
前述したVVVF制御車が故障する中、元気にコレが走っている光景もあったという…。
2013年の非冷房車全廃まで活躍した。


余談

  • ジャボタベック幹部がテレビ東京の『未来世紀ジパング』の取材を受けた際、「(205系のような)状態のいい中古車両をあと600両欲しい」と発言した画像が、鉄道模型ファンの間でネットミームと化している。2021年現在インドネシアに渡った205系は812両であり、ジャボタベックの要求は叶ったといえる。なお、2021年現在Nゲージで205系を600両揃えようとすると、消費税10%込み定価で'1800万円強'が必要になる…実現する人はいるのだろうか*1
  • ジャボタベック関係者からは、上記以外にも「E231系以降の車両はハイテク過ぎてメンテナンスできない」「新造された205系が欲しい」と言った発言が確認でき、鉄オタの笑いと愛着を買っている。なお、205系は国内では94年に製造が終了し、首都圏の通勤型電車は既に4回もモデルチェンジされている。*2
  • 首都圏では2020年からE217系の大量廃車が始まったが、ジャボタベックに譲渡される気配はない。VVVFを扱いきれないわけではない(武蔵野線から譲渡された205系5000番台はVVVF化されていた)ので、2階建てグリーン車を嫌った、鉄道車両の国産化を進めたい政府によって中古車両の導入が制限された、などの見方がある。




追記修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/