ATS(自動列車停止装置)

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ATS(自動列車停止装置) - (2019/09/26 (木) 14:18:45) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/11/15(火) 05:30:35
更新日:2022/04/12 Tue 20:42:39
所要時間:約 5 分で読めます




ATSとは、自動列車停止装置の事である。Automatic Train Stop systemの略。信号無視するとジリリリンッっと止まるシステムである。
決して、当たって止まるシステム(Atatte Tomaru System)の略ではない。





…これだけでは一般人はまずわからないと思うので、非・鉄道好きにもわかりやすく説明する。
まず、鉄道信号機について簡単な説明をしよう。

現在の鉄道信号機は、自動車のように時間制ではなく、「前方に列車がいるかどうか」で信号が変わる。


こういう事だね

                
  ←列車A           ←列車B


                
列車A          ←列車B
1.信号機Aとその次の信号機の間に列車がいたら、信号機Aは赤信号(止まれ)
2.信号機Aの次の信号機-その次の信号機間に列車があるなら、信号機Aは黄信号(速度落とせ)
3.そのいずれにも列車がいないなら、青信号(その区間の最高速でおk)

基本はこうである。実際には、さらに多くの色パターンがあるが(黄黄黄青点滅青青)、だいたいは同じである。

この信号機と信号機で区切られた区間のことを「閉そく」と呼び、閉そく内に列車がいるかいないかで信号の表示が変わる。
1つの閉そく区間に入れる列車は1本だけという原則があり、現代では追突や正面衝突というのは運転に関わる職員全員がよっぽどのヘマを起こさない限り起き得ない。


さて、鉄道信号機についてはだいたい理解していただけただろうか?それではATSについて説明しよう。
私鉄形などを含めると種類が非常に多いため、ここでは代表的なATSの、「S形・B形」「Sx形」「P形」および、ATSの前身の「車両警報装置」について説明する。

●車両警報装置
国鉄時代、信号無視による事故が多発していた。そのため、国鉄はATSの前身となる「車両警報装置」(警告音が鳴るだけ)を開発した。
しかし、反射的に警告音を消してしまう運転士が多い上に、居眠りや飲酒などの判断力が低下している状態ではほとんど役に立たないため、依然事故は多かった。そのため国鉄は、改良をしたATS-S形を開発した。



●ATS-S・ATS-B
前述の通り、車両警報装置はあまり意味がなかったため、国鉄は自動ブレーキ機能を付けた「ATS-S」と「ATS-B」を開発した。S形は地上に設置された地上子で、B形は線路を流れる微弱な電流を利用して列車へ停止信号などを送る。

前述の車両警報装置に比べて、居眠り・漫然運転などの事故を減らしたが、このシステムには重大な欠陥があった。

ATSの警報が鳴って5秒以内に確認ボタンを押してブレーキを掛けると、ブレーキが作動しないのだ。(これをATS確認という)
そして、運転士は反射的にATS確認をしてしまうので、本質的には車両警報装置と大して変わらないのだ。

そのため、JR各社はこれに改良を加えたATS-Sxを導入し、ATS-Sを淘汰した。

●ATS-Sx
ATS-Sからさらなる改良を加えたATS-Sx…。
これを導入してから、事故が相当減少した(ただし、国鉄民営化による体質改善の影響だという可能性あり)
このタイプの挙動は、信号機数百メートル手前で速度照査(速度をチェック)を行い、指示速度を超えているとベルが鳴り、ATS確認をしないと非常停止する。え?ATS-Sと同じじゃないかって?

ATS-Sxの本気はこんな物ではない

ATSを確認したあと運転を継続できるが、信号機数メートル手前で再び速度照査を行う。そして、もし速度超過をしていたら、直ちに非常ブレーキが動作する。

JR東日本が開発したATS-Sxを元にJR東海ではATS-STを開発した。これまで分岐・カーブで速度照査をするときは地上側のループコイルを必要としていたが、ATS-STでは速度照査を始める地点の地上子から車両側に搭載されたタイマーを起動させ、速度照査を終える地点の地上子で計測を終了し、2点間を通過した時間が一定時間以内であった場合に警報または非常ブレーキを動作させる仕組みとなっている。ATS-SW/SS/SK/SFとATS-Psはこの機能を標準で装備している他、JR東日本のATS-SN搭載車でこの機能を持つ車両には、ATS-SN表記に●印がついている。

しかし、これにも欠点がある。まず、一部を除いて、閉そく信号機(駅と駅の間に立っている閉そく区間の境目にある信号機)に対しては即時非常停止機能が無い。つまり、ATS-Sと変わらない
また、即時停止機能がある場所でも、即時停止は信号機のすぐ手前で発動するため、高速で進入したら減速が間に合わない。残念ながら、故意に暴走した場合は防ぎきれないのである。

これらの欠点を完全に無くしたのが次に紹介するATS-P形であるが、P形が開発された現在でも、Sx形は未だに多数残っている。
まあ、SxをPに変えるには金が掛かるし、Sx形でも大体の事故は防げるのでしょうがないのかもしれないが…。

ちなみに、福知山線脱線事故が発生した際、報道各社は「ATS-Pだったら防げた」「Sxだったからダメ」などと大々的に報道したが、実際にはSx形でも地上子さえ付ければ防げた。見事なマスゴミ



●ATS-P
Sx形の欠点を無くすべく開発されたのが、このP形。タイプによってP形・PT形・PF形・Ps形・拠点P形に分かれる。
これは以前のATSとは全く違う。
第一に、P形は常に速度照査し、その区間で出していい最高速度を車両のブレーキ性能や区間の情報を元にATSが計算・管理している。(これを「パターン」と呼ぶ。)

次に、速度超過した場合に非常停止する訳ではなく、制限速度まで減速するだけなのだ。これで、"うっかり数km/hだけ超過してしまって非常停止、ダイヤが乱れる"という事がなくなった。ただし、必要な場合はちゃんと非常ブレーキが掛かる。
そして、P形の最大の特徴と言えるのが、信号機までに減速出来るギリギリのパターンを計算して、そのパターンから外れた場合のみ減速するのだ。
ようするに、速度超過してから減速ではなく、速度超過しないように減速するのだ
これならば、Sx形のように減速が間に合わない事もない。

このように、多くの機能を有すP形は、どちらかと言うと、ATSよりATC(自動列車制御装置)に近い。もし制限速度を超えそうな場合は「パターン接近」の警告音が鳴る。
ただし、ATCは地上ではなく車内に信号機がある。※初期のATCは地上信号方式なので、ATS-P形に限りなく近いと言える。

従来のSx形と比較してあまりに高機能すぎるため、後述するPs形や拠点P形を除き、車両に専用の装置を搭載していないとP形導入区間を走ることが出来ない。

また、JR東日本では地方線区向けにSx形にパターン発生機能を追加したATS-Psを独自で開発。東北・信越地方を中心に導入している。こちらはSx形の上位互換であるため、Sx形のみを搭載した車両もPs区間への乗り入れが可能であり、Ps導入車両もSx区間への乗り入れが可能である。

JR西日本はPs形とはまた別の拠点P形というのを開発した。駅の場内・出発・入換信号機やポイント、一部の踏切などを 拠点 と定め、そこにP形の地上子を追加設置する。この区間ではP形とSx形を両方作動させることで安全を確保し、Sxしか搭載しない車両は全区間をSxによる方式で運転、P形も積んでいる車両はP形による運転が可能となる。コストはP形をフル設置するより安い。

JR東海のATS-PT形は、通常のP形と同様にパターンを生成しているというのは同じだが、速度超過した場合、即刻非常ブレーキが作動して列車は停車する。
P形というのはパターン生成のための地上装置をたくさん設置しなければならないが、PT形は地上装置の設置個数を減らしてコストダウンを図りつつ、安全性を確保しているのだ。停車後、運転司令室に連絡を入れて許可が下りればATSを再び走行可能な状態に戻して運転を再開できる。

JR貨物が導入しているATS-PF形というのもある。貨物列車というのは牽引する貨車によって最高速度が異なるため、運転開始前にその列車の最高速度を設定する。
速度超過すると非常ブレーキが作動するという点ではPT形と一緒。ただし貨物列車は機関車を2両以上連結して運転することもあるため、2両目以降の機関車のATSを止める機能がある。(ただし止めている間も列車の最高速度は常に監視している。)


余談だが、電車でGO!シリーズのATSは、異常に急なブレーキが掛かるので、TAITOが独自開発した「ATS-T形」だとか言われている。







追記・修正は、ベルが鳴ってから5秒以内にブレーキを掛けて編集ボタンを押す。

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