Pauper(MtG)

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Pauper(MtG) - (2019/05/28 (火) 22:51:29) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2015/02/04 (水) 14:02:18
更新日:2024/04/05 Fri 12:39:09
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Pauperとは、Magic:the Gatheringのフォーマットのひとつ。主にMagic Online上で行われるが、紙でプレイされることもあり大会も存在する。

その特徴は、Magic Online上でコモン、つまり最低レアリティで収録された経験を持つカードのみでデッキを組んで戦うというもの。

そんな貧乏デッキの極致といえるデッキ、弱いのばっかなんじゃないの?と思ったあなた。
まずはPauperの赤単バーン(火力でひたすら相手のライフを攻めるデッキ)の主力カードを見てみよう。

  • 稲妻(1マナ3点、モダンなどでおなじみの言わずと知れた汎用火力の最高峰)
  • 稲妻の連鎖(↑の調整版。1マナ3点ソーサリーで、撃たれた側がRRを支払えばコピーしてもう一発撃ちかえせる効果付き)
  • 溶岩の撃ち込み(本体にしか撃てない上ソーサリーだが、やはり1マナ3点)
  • 裂け目の稲妻(3マナ3点。ただし待機で唱えればタイムラグはあるもののこれまた1マナ3点)
  • 火炎破(山を二つ生贄に捧げれば、0マナ4点。これと上記の3点火力2枚で山2枚から計10点もっていける)
などなど。

……あれ?これレガシーのデッキだっけ?

そう、コモンのみとはいってもMagic Onlineでリリースされていて、かつ一度でもコモンで収録されていればどんなに昔のカードでも使用できるのである。確かに神の怒りのような派手なカードや悪斬の天使のような1枚で劣勢を覆せるようなパワークリーチャーはないものの、この長いMtGの歴史上、基本的で堅実、そして強力なカードがコモンには数多く存在するのである。あの対抗呪文暗黒の儀式も、怨恨もすべてコモンなのだ。




以下、色ごとにこの環境での特徴を見ていこう。

もともと白は良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏……な色である。
Pauperではその悪いほうが出ており、何かしら尖った強みのある他の色に対しこれといった特徴がない。

だが決して弱い色ではなく、《未達への旅》や《忘却の輪》といった優秀な除去に、《虹色の断片》や《心優しきボディガード》のようなクリーチャー保護手段、そしてかの《戦隊の鷹》をはじめとした白お得意の優良ウィニークリーチャーによって、白ウィニーは安定した動きができる。特に新規戦力である《スレイベンの検査官》は1マナのくせに1/2、おまけに手掛かりトークン1つついてくるとちょっとおかしい強さ。

その中で強力なトークン生成呪文である《金切るときの声》を軸にした白単トークンが結果を残している。最近は赤と組んだボロスキティ系が上記のカードを主軸にしている。新システム・統治者になれる《宮殿の歩哨》で毎ターンドローが出来るのは強力。

その他、対単色デッキ最終兵器である各種防御円もコモンであり、白を含むデッキのサイドボードにはよく積まれている。

Pauperのメタゲームの話になると必ず青単が挙がってくるほど、この環境の青は強い。

冒頭でも挙げた《対抗呪文》が現役(なおかつ強力な対抗馬となる《Force of Will》や《Mana Drain》がない)という環境ゆえ、必然的にパーミッションの要素を含んだデッキが多くなる。

それ以外の打ち消しも充実しており、クリーチャー限定かつ3マナながらキャントリップでアドバンテージを取れる《除外》、ややマイナーだがなかなか厄介な時間稼ぎができる《記憶の欠落》などデッキに合わせて様々な打ち消しが使える。

クリーチャーに関しても、あらゆる環境で猛威を振るいまくった青の1マナ最強生物、デルバーこと《秘密を掘り下げる者》を筆頭に、打ち消し能力でアドバンテージを取れる《呪文づまりのスプライト》、その呪文詰まりのスプライトとシナジーを形成する上に2体目以降の着地でアドも取れる《フェアリーの悪党》、これら飛行クリーチャーを種にハンドアドバンテージを稼ぎまくる《深き刻の忍者》、重いが出すだけでハンドアドバンテージを稼げる《熟考漂い》など、コモンながらアドバンテージ面で優れたものを大量に擁している。

さらにモダンで禁止されている《思案》・《定業》といったキャントリップ付きライブラリー操作、レガシーで青絡みなら必須のドロースペル《渦まく知識》まで備えており、アド取りや手札の質の安定化にかけては右に出る色はない。

単色としての弱点はクリーチャー除去に乏しいことだが、アドバンテージを失わないバウンスである《排撃》、タフネス1限定ではあるが貴重な青のマイナスタフネス修整効果を持つ《海賊の魔除け》、そしてアーティファクトであるが、それゆえに青でも使える優秀除去の《鋸刃の矢》など、弱点を補う手段も少なくない。それでも基本的には赤か黒と組んで除去は任せることが多い。


何と言っても除去の色である。特に布告系が充実しており、ライフロス付きの《ゲスの評決》、フラッシュバック付きの《チェイナーの布告》、自軍も巻き添えにするが1マナと軽い《無垢の血》とよりどりみどりである。

それ以外にも相手にも1点撃たせてしまうが2マナと軽いティムである《クォムバッジの魔女》、Pauperでは貴重な、特にタフネス2以上を除去できるものとしてはほとんど唯一の全体除去である《墓所のネズミ》、繰り返し使えフィニッシャーにもなる《エヴィンカーの正義》、そしてフィニッシャーにもなる強力ドレインである《堕落》(と《堕落の触手》)……と、黒単コントロール=クリーチャー絶対殺すデッキとでも言わんばかりの充実ぶりである。
破壊耐性やプロテクション(黒)クリーチャーへは《損ない》や《完全無視》など追放除去まで完備。

クリーチャーも優秀で、テーロスブロック構築でも大活躍した《アスフォデルの灰色商人》を筆頭に、相手のドローを一回止めつつ手札の枚数を減らせる《騒がしいネズミ》、それとは逆にこちらがカードを引ける《ファイレクシアの憤怒鬼》などCIPでアドバンテージを稼ぎ出せるクリーチャーを多く擁する。

そしてPauper界では最強クリーチャーとも言える《グルマグのアンコウ》。事実上1マナで5/5はもはや壊れの域。火力ではほぼ落とすことができず、黒でゾンビなためそれらを対象に取れない除去にも耐性がある。回避能力こそないがそこは黒、相手のクリーチャーをすべて消し去ってしまえば良いのだ。

黒のもう一つの代名詞であるハンデスも《強迫》や《村八分》、Pauper界のトーラックへの賛歌こと《精神ねじ切り》などよりどりみどり。場も手札もズタズタにしてやろう。なお本家《トーラックへの賛歌》はMagic Onlineでコモン収録経験が無いためほぼ使用不可である。
ライフロスがあるとはいえ優秀なドローソースの《血の署名》《夜の囁き》も使える。

なお、《カーノファージ》や《吸血鬼の裂断者》のような優秀なスーサイドウィニーや、かの《暗黒の儀式》もコモンであるため、往年のような黒単スーサイドを組むこともできる。現状では爆発力で赤単に、安定感で白単に見劣りし環境に食い込むには力不足ではあるものの、今後登場するコモンや未発見のシナジーで化けるポテンシャルは十分に秘めており、今後が期待されるアーキタイプである。

なお黒い《忘却の輪》こと《Oubliette》はPauperで一番高いカードとして有名である。

冒頭でも引き合いに出したように、火力の質はエターナルにも見劣りしない。《稲妻》や《稲妻の連鎖》のような1マナ3点火力や、《ケルドの匪賊》のような歩く火力、果ては赤単最強の切り札である《火炎破》まで使え、特化した際の攻撃力は他の追随を許さない。また、《炎の斬りつけ》や《炎の稲妻》、《電謀》のようなコントロール向けの火力もコモンに存在し、多色デッキで力を発揮している。また青いカードへの最高レベルのメタカード《紅蓮破》もある。青は青で《水流破》があるが。

一方、クリーチャーの質は全体的には高くはないものの、部族シナジーの強力なゴブリンの多くがコモンであり、それを軸にした赤単ゴブリンはロードこそいないものの高い爆発力を持つデッキとして知られている。

そしてモダンマスターズ2017でコモン落ちした《炎樹族の使者》によりついにスライやレッドデックウィンズ(RDW)が成立した。緑ストンピィとの違いは火力の存在と速攻。最速3ターンキルを誇るスピードは過去のスライを上回りかねない。

ただ、古くからの赤単の宿命としてピンポイント対策に非常に弱い。ライフゲインやプロテクション、防御円などでいとも簡単に凌がれてしまうという弱点も持ち合わせている。ある意味一番の対策は置かれたり唱えられる前・起動される前に倒してしまうことか。


言わずと知れたクリーチャーの色。なんとあの甲鱗様がコモン、つまりPauperリーガルである!ウラモグの破壊者?何のことかな?

真面目な話をするなら、単色デッキとしてはかの《怨恨》をはじめとした優秀なサポート呪文で小型クリーチャーをバックアップするストンピィがメタの一角を占めている。強化先としても緑単ならほとんど無視できるデメリットで1マナ2/2の《イラクサの歩哨》、怨恨と相性抜群で布告対策にも最適な1マナ不死持ちの《若き狼》など優秀なクリーチャーには事欠かない。やはり《炎樹族の使者》の登場でこちらも大幅に強化された。

また、モダンなどでおなじみZooのエースである《野生のナカティル》や、基本土地が全て揃えば3マナ5/5という他の環境基準で見ても驚異のサイズで出てくる《マトカの暴動者》、そしてそれらを1枚でサポートできる《ナイレアの存在》を擁し、もちろん土地サーチやマナ加速・色基盤補強も充実している緑なので、これらを組み合わせつつ各色のパワーカードを組み込むドメインZooと呼ばれるデッキも成果を上げている。
手札補充用に青をタッチすれば土地以外ほぼレガシーそのまんまの親和エルフ、黒などと組むと感染も組める。

また、Pauperリーガルな軽量呪禁持ちは緑に多く、また強力なオーラである《アルマジロの外套》や《天上の鎧》がコモンであるため、白や青と組んで呪禁オーラもたびたび組まれる。

土地

何と言ってもアーティファクト・土地が全部現役。ウルザの土地も全て揃っている。
そのため親和ウルザトロンなどのやや特殊なデッキも組める。(かつては8postも組めたが、雲上の座が禁止指定され消滅)。

前者は2、3ターン目から0マナ2/2・4/4などがぼんぼこ飛び出してくるし、後者は大量のマナから普通の構築環境では見向きもされなかった《ウラモグの破壊者》が一躍フィニッシャーとして大活躍するなど、他の構築環境ではあまり見られないような光景が見れる。

土地サーチのフェッチランドは《広漠なる変幻地》《進化する未開地》の二枚が使える。
どちらも同じ効果で、基本土地をタップインで出す。

多色土地はタップインのものだけで、普通の2色土地の隠れ家サイクルと門サイクル、場の土地一つをバウンスしないと出せない代わりに2色のマナが1つづつ出せるバウンスランドのサイクルが使用できる。隠れ家サイクルは出すと1点ライフを回復出来るので実質門サイクルの上位互換。

早めのデッキでは隠れ家サイクル、遅めのデッキではバウンスランドが用いられる事が多いが、ぶっちゃけほぼ好み。

その他

コモンというレアリティ(あまり複雑な効果は収録されにくい)の特性上、他の広いカードプールのような瞬殺コンボデッキは組まれにくい(かつてはストームデッキが猛威を振るっていたが、キーカードのほとんどを禁止され消滅)。

だが皆無というわけではなく、Familiarと呼ばれる無限マナコンボを軸にしたデッキが結果を残している。
がその後《フェアリーの大群》が禁止されて消滅。その後エターナルマスターズで何故かコモン落ちした《流浪のドレイク》を中心としたドレイク・フリッカーに移行した。
が、そちらも2度の禁止改訂を乗り切った結果環境占有率が20パーセントを超え、流石にまずいと思ったのか緊急制限改定で流浪のドレイクが禁止になり消滅した。
今ではDamned ComboThe Spyなどの瞬殺も可能なコンボがごく一部に存在している程度である。



この環境の最大の特徴はなんといっても参入費用が安いことである。

MOのコモンは一部の希少かつ高需要なものを除けば非常に安価で(ほとんど1tix=約100円を切っており、高いものでも2~3tixで済む)、(相対的に)高額なカードをガン積みにしたガチデッキを組んでも、オフラインでイベントデッキ買うのとそう変わらない値段で済んでしまう。

MtGでいろんなデッキで遊んでみたいけど、お金が……って人や、広いカードプールでデッキ考えたいけど、モダンやエターナルは高くつくし……って人には是非ともお勧めしたいフォーマットである。

なお、使用できるカードは正確には「MOでコモンでリリースされている」カードである。
たとえば《トーラックへの賛歌/Hymn to Tourach》はコモンとして印刷されているがMOではMasters EditionおよびVintage Mastersでのアンコモンでの収録しかされていないため使用できない。というかこんなもん使えたらメタゲームの関係で落ち込んでいる黒コンが再隆盛するだろう
逆に尊大なワームや堂々巡りはコモンとして印刷されたことはないが、Vintage Mastersにおいてコモンで収録されたためPauperで使用可能である。おかげでPauperでも往年と同じようなマッドネスが組めるよ!

その他、上でも軽く触れたが以下のカードも禁止カードに指定されている。
  • フェアリーの大群/Cloud of Faeries
  • 雲上の座/Cloudpost
  • 頭蓋囲い/Cranial Plating
  • 巣穴からの総出/Empty the Warrens
  • 大あわての捜索/Frantic Search
  • ぶどう弾/Grapeshot
  • 激励/Invigorate
  • 流浪のドレイク/Peregrine Drake
  • 時間の亀裂/Temporal Fissure
  • 宝船の巡航/Treasure Cruise
  • 目くらまし/Daze
  • 噴出/Gush
  • ギタクシア派の調査/Gitaxian Probe

このうち、頭蓋囲いはフォーマット制定時からの禁止カード。まあ親和においてはなんでコモンなんだかわかんない位壊れてるし……
雲上の座はおかしい量のマナが出る土地。これがいる限りウルザトロンが出てこれないので逮捕されている。
他は主にストーム持ちカードとフリースペル。フリースペルはかつてはノータッチだったが流石にヤバすぎたのでクリーチャーの2枚と大あわての捜索が規制されている。まあ大あわての捜索は今となっては最強のフリースペルと言われているし当然か。
宝船とギタ調と噴出に関してはヴィンテージ制限・レガシー禁止、宝船とギタ調はモダンでも禁止を喰らっており、 2枚しか無い禁止4冠王である 。むしろなんでコモンなんだ。一応最近までギタ調と噴出は許されていたがデルバーが強くなりすぎて逮捕された。
ピッチカウンターの目くらましもデルバーの弱体化の為に巻き添えで投獄された。
激励は一見なんで規制されてるんだかわからない地味なカードに見えるが、感染クリーチャーに使うと実質ノーデメリットの0マナ+4/+4(感染なので攻撃が通れば実質本体8点火力相当)というヤバさなので禁止された。
フリースペル3枚、ストーム3枚という陣容はMtGの負の歴史の象徴…かもしれない。

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