200勝(プロ野球)

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200勝(プロ野球) - (2021/01/27 (水) 09:27:49) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2015/09/30 (水) 23:45:23
更新日:2023/10/11 Wed 00:59:27
所要時間:約 5 分で読めます







金田正一「ワシを抜く奴はおらん」




200勝とは、項目名の通りプロ野球で投手として200回勝利することである。


解説


プロ野球の投手にとっては、一つの目標となる数字。

この記録を達成した選手は世間から称賛の声を浴びるとともに、その名前を球史に残すこととなる。
プロ野球においての伝説的存在になるといっても過言ではない。
なにせプロ野球が始まって以来、この記録の達成者は30人にも満たないのだ。
この滅茶苦茶とも思える難易度の高さは、野球というスポーツそのものの特殊性を反映しているともいえる。

いったいどういうことか?
プロ野球における投手の1勝は、本人の実力とともに『運』が必要なのだ。

まず、各球団のエースと呼ばれるクラスの先発投手が年間に得られる勝利数はおおよそ10~15勝ほど。
高卒の投手が1年目からローテーションに入り、毎年のように10勝したとしても計算上20年ほどの期間が必要となる。
毎年15勝という尋常ならざるペースだとしても、達成には14年ほどかかる。
毎年20勝したとしても10年は必要となるのだから、本当に気が遠くなる話である。
下の表にも名前を残す山本昌投手のように、30年以上現役を続けた結果200勝まで届いたというケースもあるが、
余程の才能か特殊性(当の山本昌選手の場合、左腕であるとともに異様な回転数を誇る直球があった)が必要とされることはもちろん、
投手として勝ちを得られるだけの能力を長期に渡って維持する必要があるため、はっきり言って現実的なことではない。

もっとも前述の金田選手は400勝を達成してしまったし、昔の選手でよければ300勝達成者も何人かいるのだが。
このへんは後述。

高卒投手ならばまだしも、大卒・社会人出身のプロ野球選手は難易度がさらに跳ね上がる。
高卒投手に比べ、大卒や社会人出身者はそもそもプロでの実働期間が短くなるからである。
プロ野球の平均在籍時間は9年程度であり、若い時分の数年をプロで過ごせるかどうかは非常に重要なのだ。

それに加えて、プロ野球の選手は年齢による身体能力の劣化との戦いがある。

当然のことではあるが、30歳を超えるころにもなれば選手たちも身体が衰えてくる。
先発投手は特にそれが目立ち、スタミナや球威の衰えを経験でカバーすることを強いられるようになる。
自然、勝利数を稼ぐのも難しくなってくる。
また、投手はプロ野球の中でも最も故障の多いポジションであり、肩肘を傷めてしまえば早くて数ヶ月、
悪ければ年単位の離脱を余儀なくされる。
そうした中で勝利数を積み上げ続けることは極めて困難であり、ほとんどの投手は半分の100勝ですら達成できずに
キャリアを終えるというのが現実である。

そして、投手の勝利は周りの環境にかなり左右される。

投手が勝つためには、味方打線が対戦相手よりも多く数字を稼がなければならない。
味方が点数を入れなくとも投手が0に抑えれば『負ける』ことは無いが、当然『勝つ』こともない。
打線が打たなければ投手は1失点でも負ける可能性があり、勝つためには極論1失点すらも許されない。

さらに言うと、先発投手の持つ勝ち投手の権利がリリーフによって消されることも日常茶飯事。
先発が9回もたずに降板した場合、中継ぎや抑えが炎上して逆転されれば勝利できないのだ。
実際、弱小チームや中継ぎが壊滅しているチームに在籍していなければ200勝はできていたといわれる選手もいる。
嫌なら完投しろという話ではあるが、そうすれば今度は身体の負担が問題になる。

なお、200勝を達成した投手のほとんどは昭和期の選手であり、90年代以降の200勝達成者は5人しかいない。
これは先発ローテーション制の確立と投手分業制の浸透が原因といわれている。
どういうことかといえば、昔のエース級投手は先発とリリーフを兼任するのが当たり前であり、
ろくな休養も取らず連投を繰り返すこともしばしばで、結果的にごく一部のハイレベルな投手が
現代の価値観では異常としか思えないほどの勝利数を稼ぎ出すに至ったのである。
現代では中6日のローテーションが確立されており、年間で挙げられる勝利数の天井そのものが低くなっているので、
今後このペースが上がる可能性は極めて低い。

200勝という数字がいかに偉大か、そしてどれだけ異常なものかということがおわかりいただけただろうか。


名球会との関係


200勝は名球会の入会条件でもある。

入会が認められるための注意点として、記録の計算はNPB入り時点からスタートする。
つまり、NPB以前にMLBや韓国リーグ等で積み上げた勝利数は考慮されない。
ただし、『NPB→MLB』の場合は日米通算記録として200勝の中に合算される。
また、大正時代に生まれた200勝達成者が入会することは不可能。

名球会には2015年時点で15人ほど投手が所属している。
その中で200勝達成者だけに絞ると、その数は12人ほど。
打者の所属会員に比べて相当少ないことがわかる。

このため、近年では200勝と打者の名球会入会条件である2000本安打との価値的議論が起こっている。
その詳細については、リンク先の2000本安打の項目で確認してもらいたい。

一部からは、投手の名球会入りの条件として『2000奪三振』や『100勝100S』等を追加するよう求める声もある。
先発ローテーション制や投手分業制が浸透した現在の状況から考えて、150勝達成の時点で名球会入りにしても良いのではと問う声も。
このあたりは非常に難しい問題であり、慎重に討論する必要はあるだろう。

余談ながら、名球会設立時点での200勝投手は15人、2000本安打達成者は11人である。
この当時は2000本安打達成者より200勝投手の方が多かったのだ。

とりあえず、200勝達成によって名球会員になれる選手が今後増えることを期待するのみである。


主な達成者(※2020年シーズン終了時点)


ここでは200勝達成者を記載する。

名球会員でなくとも、200勝を達成した選手であれば記載。
ただし、名球会に所属していない選手などは備考で記述する。


選手名 通算勝利数 備考
ヴィクトル・スタルヒン 303勝 故人/250勝達成者/300勝達成者/名球会入会資格なし
若林忠志 237勝 故人/名球会入会資格なし
野口二郎 237勝 故人/名球会入会資格なし
別所毅彦 310勝 故人/250勝達成者/300勝達成者/名球会入会資格なし
中尾碩志 209勝 故人/名球会入会資格なし
藤本英雄 200勝 故人/名球会入会資格なし
日本プロ野球史上初の完全試合達成者
杉下茂 215勝 「フォークボールの神様」
名球会入会資格なし
金田正一 400勝 故人
250勝達成者/300勝達成者/350勝達成者/400勝達成者
200勝最速達成記録保持者/プロ野球最多勝記録保持者
完全試合達成/名球会創設者/名球会退会
稲尾和久 276勝 故人
「神様、仏様、稲尾様」
250勝達成者
小山正明 320勝 250勝達成者/300勝達成者
米田哲也 350勝 「ガソリンタンク」
250勝達成者/300勝達成者/350勝達成者
梶本隆夫 254勝 故人/250勝達成者/名球会の200勝投手で唯一負け越し
皆川睦雄 221勝 故人
村山実 222勝 故人
昭和生まれの大卒初の200勝達成/戦後唯一の規定防御率0点台投手
鈴木啓示 317勝 「草魂」
現時点で最後の300勝達成者
堀内恒夫 203勝 名球会退会
山田久志 284勝 250勝達成者/アンダースロー投手通算最多勝利記録保持者
江夏豊 206勝 シーズン最多奪三振記録保持者(シーズン奪三振数世界記録)
平松政次 201勝
東尾修 251勝 現時点で最後の250勝達成者
村田兆治 215勝
北別府学 213勝
工藤公康 224勝 プロ野球史上最長実働記録保持者(29年)
野茂英雄 201勝 日米通算
山本昌 219勝 現時点で歴代最年長の200勝達成
黒田博樹 203勝 日米通算



200勝に近い現役選手(※2020年シーズン終了時点、残り50勝以内)


選手名 通算勝利数 備考
田中将大 177勝 日米通算
石川雅規 173勝
松坂大輔 170勝 日米通算
ダルビッシュ有 164勝 日米通算



追記・修正は、プロ野球選手となって200勝を達成してからお願いします。

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