陛下のSCP-MDLXI

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SCP-1561 - (2022/11/24 (木) 20:07:20) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/11/10 Thu 23:24:32
更新日:2024/02/07 Wed 06:36:32
所要時間:約 14 分で読めます




陛下の王冠はすばらしい栄光に満ち溢れております


陛下のSCP-MDLXIとは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場する魔法の品の一つです。
王からは「Glorious」の格付けを賜っております。


国王封印令

現在この王冠はサイトリダクテッド王国にて、高貴なる王の御頭にいただかれ、最低でも10名の騎士の警護を昼夜を問わず受けております。
[データ削除済]王の治世以前のものにつきましては、評議会政令MDLXI-Iをご参照ください。

ご説明

この品が何かと申しますと、最も優秀な鍛冶屋がこの地で最も価値ある宝石を巧みに用いて作り上げた、素晴らしい金色の王冠です。

この品はそれについて話される、記される、語られる時、魔法を引き起こします。
例えば、この高貴なる王冠が取るに足らぬ小作人の男の下賎なる頭に授けられし時、その逸品を視界に収める距離にいる平民たちは下賎なる着用者を、「その者らが今まで会った中で最も権威ある者である」と見なすようになります。これら臣民たちは王が戴冠されると新たに生まれ変わり、以前の身の丈に応じた新たな役割を授かることとなります。

例えば、警備員は騎士に、科学者は王宮学者となり、その他の平民は小作人(農民)となります。
陛下の統治下にある小作人どもは、手元にある最も上等な素材、時には自らの不潔な衣類を用い、新たな王がお召しになるためのローブを作り上げることが、己の正しき義務であると感じるようになるでしょう。

新しく戴冠された王もまた、素晴らしき統治の力を授かり、騎士団の設立、そして彼の王国の樹立を実現可能なものとします。
下賎なる着用者は更に、その立場に相応しく、素晴らしい顎鬚と口髭を伸ばすことでしょう。これらの効果は高貴なる王冠が進んで取り除かれる時、または下賎なる対象が死ぬ時に消えることとなります。

高貴なる王冠の偉大さを直接目にしていない人間は、堅い意思を以ってこれに抵抗することが出来ます。そして、その者は異教徒の烙印を押され、その地より追放されるか陛下の意向の下に処刑されます。

陛下のSCP-MDLXIに関する記述や会話もまた、王の貴き地位に相応しいものへと変化します。
陛下のSCP-MDLXIに関して単なる知識を所有しているのみであれば、その者はこの品を高貴なる王冠、あるいは陛下のSCP-MDLXIと称したい衝動を引き起こすでしょう。
しかし、高貴なる王冠に対する間接的な言及は、これらの影響を打ち消すこととなります。


評議会政令MDLXI-I

[データ削除済]王のご即位以前のある時期、サイトリダクテッド王国にて高貴なる王冠を用いた軽率なる実験が執り行われました。
この実験においては、卑劣なるD賤民の頭上に高貴なる王冠が被せられ、その振る舞いを観察することを目的としておりました。しかし、高貴なる王冠の魔力により、このD賤民は3か月の間、王としてサイトリダクテッド王国を統治しました。
その後、卑劣なるD賤民は偉大なる啓示により断頭刑に処されました。また、この結果を受けたO5大会議により、新たな不幸が起きないよう、陛下の王冠を用いた実験は禁じられ、高貴なる王冠に関するすべての情報は秘匿されました。
この情報の公開は、階位4の貴族またはそれよりも位の高い方のみに限定されておりました。


王からの政令MDLXI-I

[編集済み]年の初めて雪が降った日、新たなる王がご戴冠なされました。



陛下万歳!



サイトリダクテッド王国の統治者!



国王の末永き治世があらんことを!



陛下は恥ずかしき不道徳の評議会と戦われました!



国王万歳!



国王万歳!




国王万歳!






国王万歳!







国王万歳!!









国王万歳!!!

























これは正式なSCP報告書ではありませんが、我々にとっては現時点で最善の報告書です。陛下のSCP-1561に関する全研究データは事案1561-2で削除され、この報告書は文書1561-2を元に作成されました。事案1561-2が解決されるまで、この報告書で運用しなければなりません。 -██博士




















登録日:2016/11/10 Thu 23:24:32
更新日:2024/02/07 Wed 06:36:32
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SCP SCP Foundation SCP財団 王冠 ミーム汚染 認識災害 要注意団体が来い 深刻な収容違反 陛下のSCP-1561




SCP-1561は、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
オブジェクトクラスは不明。

外見は豪奢な王冠なのだが、実はコイツ、数あるSCPの中において、器物として存在するモノの中では極め付けに厄介なオブジェクトである。

というのはこのオブジェクト、SCPにはままある通常認識への干渉、いわゆる「ミーム汚染」を引き起こすのである。
もちろん、それだけならば他のSCPにも発生しうることである。
だからこそ、財団には記憶処理やミームの修復などの措置を施すためにあらゆる安全措置が取られているのだから。


しかし、SCP-1561についてはそう簡単には行かない。
なぜならこのオブジェクト、仮に「効果」としておくが、この効果の範囲が広く、さらに汚染力と感染力が凄まじいのである。ゆえに、セキュリティクリアランスは4に設定されていた

どれくらい凄いことになっているかというと、直接見ただけでミーム汚染される。しかも一発で。つまり、最強レベルの認識災害の発生装置でもあるのだ。
汚染された人間はどうなるのかというと、SCP-1561に関する記述や言及を中世の貴人、それも最高位の人物に対する尊敬語と謙譲語によって行うようになる。

鏡に映す、写真で見る、映像で見るなど、とにかく直接目視しなかった場合は助かるのかというと、そんなことは全くない。
その場合でも、強い抵抗の意志を固めていなければミーム汚染から逃げることはできないのである。間接的に言及することでこれらの影響を多少緩和できるが、一時しのぎである。

さらに単に知っているだけで実際には曝露していなくとも、その場合コイツを示す呼称が「陛下のSCP-1561」になってしまう上、「高貴なる王冠」「真の王」と自然に口にするようになる。

上記の報告を見てもらえればわかるだろうが、実はこれ、SCP-1561に直接曝露していない財団職員が、「文書1561-2」を元に書き上げたものである。
それであの有様なのだから、コイツの力の凄まじさがよくわかるだろう。
ちなみに「MDLXI」は1561をローマ数字にしたもの。

なお、上の報告書の部分では省いたが、実験記録が一つある。
恐らくは確保のすぐ後、実験のためにDクラス職員に被せてみたようだ。その結果、このDクラスは「王」となり、なんと3ヶ月にわたってそのサイトを統治。業務に支障が出たのと、記録によって十分に特性が判明した、ということで、O5評議会からの命令でこのDクラスは終了され、SCP-1561は収容室へ納められた。
誰も被らずただそこに置いてあるだけであれば、ミーム汚染は発生しない……と思われていた矢先にこれである。

ここで少し横道に逸れ、上記の報告書を通常の財団テンプレートで再現してみる。

これについて、事案1561-1という事件がある。
率直に言うと、これはこのオブジェクトの収容違反事件である。
2000年代のある日、陛下のSCP-1561が収容室から持ち出されていることが発覚。この日の15:00から19:00の間のエリアの監視映像が削除されていることが判明するに至り、エリア担当シフトの警備員に聴取を行った。
ところが、警備員たちは凶暴になって職員たちに暴行を働き、制圧の過程で1人を残して全員死亡。その一人も、面談の後に自殺してしまった。

こんなトンデモな王冠を放っておいたら大変だ、ということで当該サイトは即刻閉鎖されたが、その後事態収束に伴い解除、平常業務に復帰した。

が、ここでO5のコメント。
誰が許可したんだ?

ここで、収容違反発生時のインタビュー記録を見てみよう。

█████二等兵:████? ████、俺だよ。止めてくれ、自分を傷つけてるだけだ。
████軍曹:█████?
█████二等兵:そうだよ、なあ、目を覚ましてくれ。
████軍曹:お前と話ができて安心したよ。あいつらに殺されたのかと思った。
█████二等兵:誰が俺を殺すって? 何を言っているんだ。
████軍曹:異教徒たちだ、そこら中にいやがる。王は正しかった。王は常に正しい。
█████二等兵:異教徒? 王? 目を覚ませ! 陛下のSCP-1561がどこにあるか知ってるか?
████軍曹:何処にって、お前。真の王の御頭に、俺はその断固とした栄光を直接拝見したぞ。すぐに、哀れなサイト全体が、同じようにあの栄光を目にしただろう。お前も陛下の栄光を目にして同じことを思っているんだろう。
█████二等兵:どういうことだ? 高貴なる王冠は何処だ? 誰が真の王なんだ?
████軍曹:お前もすぐに栄光なる国王、[データ削除済]王を知るさ。
█████二等兵:[ため息]なあ、そんな戯言信じちゃダメだ。陛下のSCP-MDLXIに支配されているぞ。もう、俺たちに高貴なる王冠の場所を……
████軍曹:まずい!
█████二等兵:え?
████軍曹:ここは異教徒評議会の手に落ちてなかったと思っていたのだが。[叫び、監視カメラを直接見つめる]Est tempus nunc!Et Peregrinus incipit!Vivat Rex!*1


……相当である。直接暴露していない二等兵からしてこの有様だ。
そして、このオブジェクトは王冠である。つまり頭に被るものである。
目視しただけで王に傅き平伏するようになるのであれば、被ってしまった人間はどうなるのか?


大方の予想通り、王として振舞うようになるのである。
さらに、その周辺一帯を王国と称し、範囲内の人間を支配下に置いた国民とし、「統治・支配」するのだ。
某ひみつ道具の「アリガターヤ」を知っているなら、アレが出てきたエピソードを思い浮かべてほしい。ちょうどアレを使った場合と同じような状況が発生するのだ。ただし、被っている人間もミーム汚染を受けるのが違いである。


さらにその後、こんなメッセージが届いた。
当該サイトに勤務している一人の博士が、サイト-19に勤務する別の博士にファックスを送ったのだ。

サイト-[編集済]のぜん職員がへい陛下おうかんに感染したたすけてくれ
わたしは中央制御室に閉じこもっている時間はない
ここからサイトは隔離することはできた大型かくのうこは今のところ安全だ
[判読不能]で[判読不能]を使ってO5に
魅了された職い[判読不能]ボイラー室[判読不能][データ削除済]王[判読不能]数ヶ月
鏡と映像で[判読不能]王冠を直接みてはいけない
彼らは[判読不能]とわかっていて、私はモニターから外を見ることができる
こ[判読不能]を送ったらコンソールを破壊する急いでくれ
[編集済]博士

この情報により、当該サイトで何が起きているのかが判明した。
と同時に、これ以前に発生した事案1561-1の後、当該サイトの閉鎖が何者かの許可によって勝手に解除され、通常業務に復帰した経緯も連鎖的に明らかとなった。

うっかりコイツに曝露してしまった当該サイトの職員の一人が「王」となり、その姿≒王冠を目にした他の職員が片っ端から曝露、結果としてサイト全体が「王国」と化してしまったのだ。恐らくはこの「王」の命令により、サイトの閉鎖が解除されたものと思われる。
しかもどうやら、影響の大小を無視すればサイト職員のほぼすべてが「家臣」と化した模様。

しかも、元々存在していた研究データはこの時点で全て削除されてしまっていた。
事態を把握した以上、財団がこんな危険物の収容違反を見過ごすワケもなく、「王国」と化したサイトにこの手のミーム汚染事案専門の機動部隊エータ-10 ("シー・ノー・イーヴル")が向かったのだが、ほぼ全滅。しかも倒されたのではなく、ミーム汚染により支配下に収まってしまっている。
見なきゃいいと思ったら、話を聞いてもアウトだった模様、ダメだこりゃ。

現状、このサイトをどうにかする方法はまるでなく、「見るな、話すな、近づくな」を徹底し、ミーム汚染の拡散を水際で防止するのがやっとの有様である。
こんな状況ではクリアランスがどうのとなど言っていられるはずもなく、現在クリアランスは有名無実と化している(上で挙げたが、初期の報告書には「Glorious」と書かれている有様である)。

そして、事案1561-2。
サイトが「王国」となってから5ヶ月後、「国王」からO5評議会に向けて、SCPのひとつである動物とともに、一羽のウサギに括り付けられた文書が送られてきた。


添付されていた王冠に関する説明「文書1531-2」により、オブジェクト自体の詳細がやっと判明した。
これはSCP-1561による直接の影響下にあるサイト職員=「王」の綴ったものであるが、文面を無視して内容を噛み砕くと、「基本的に財団の意向と方針に従うから、何とかして欲しい」というものである。
いくら下手に出て礼儀を取ろうとしても、あくまでも「最上位の人間が、自分と同等かそれより下の人間に対する礼儀」に変えられてしまうのだ。

SCP-1561のミーム汚染下では我々の知る正常な思考は働かないが、その影響下における一定のルールに従う限りは職員としての自覚を維持できる、ということのようだ。

ただ、ここからすればどうやらサイト内の相当数のSCPの収容が破られている上、サイト外にもミーム災害に巻き込まれた職員が相当数いるようであり……。



財団の明日はどっちだ。






SCP-1561

The Tyrant's Pretext(暴君の託け)





追記・修正は国王陛下に対する最大限の敬意と尊崇を以て、かつ己の身分をわきまえつつお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-1561 - The Tyrant's Pretext
by Randomini
http://www.scp-wiki.net/scp-1561
http://ja.scp-wiki.net/scp-1561

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