SCP-650-JP

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SCP-650-JP - (2021/07/02 (金) 18:36:02) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/11/14 Mon 13:56:21
更新日:2024/04/11 Thu 19:08:00
所要時間:約 6 分で読めます






「わたしも少年の頃には、とくべつな能力を持って戦う青年たちの生き様に憧れ、自分なりにそういった能力を夢想したこともございます。」
「でもわたしは、それを本当に出来るだなんて思ったことはなかった!」



SCP-650-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「SCP Foundation」の日本支部におけるオブジェクトの一つである。

SCP-650-JPは、現実改変能力を持った人間の肉体…もとい人間の死体で、秒間286回現実改変によって通常の人間が行う心臓の収縮などの細胞が行うおおよそすべての運動を模倣している。
模倣と書いたとおり、この行為は生存に必要不可欠なわけではなく上記の改変をやめても異常性には影響はない。

また、自身が影響を与える実体に対しても現実改変を行使するらしく例えば彼が投げたボールははたから見れば、
普通に投げたボールが飛んでいるように見えるが、実際にこのボールには重力以外の力が働いておらず
秒間286回の現実改変によって妥当な放物線を描くように発生と消失を繰り返している。

これによってSCP-650-JPの付近では現実性(を示すヒューム値)が大きく揺らいでおり、
耐性のない人は乗り物酔いのような症状「現実酔い」を引き起こしてしまう。

さて、ここまで見た人の中には「これEuclidじゃなくてKeterとかじゃないの?」と思う人も居るかもしれない、
確かに、最強クラスの現実改変を持つSCP-239はKeterであるし、
SCP-019-JPの元となった身勝手な現実改変能力者もSCP-019-JPの元々のクラス的にKeterである。

しかしSCP-650-JPは自発的に収容され、オブジェクトクラスはEuclidである。

SCP-650-JPはその出生からおよそ30年の間、自身の異常性に気づくことなく、自らを一般的な人間であると考え、
通常の人間が生活するのと同様の動作を自身の現実改変能力を用いて模倣し、潜伏していました。

SCP-650-JPは、20██/██/██に突如財団サイト-81██内部に出現しました。
即座に財団職員によって拘束され、幾つかの実験ののち現在の収容が確立されました。

これがSCP-650-JPの収容までの経緯である。
SCP-650-JPが異常性に気づくまでの30年間、そしてそこから自発的に収容されるに至った経緯は「SCP-650-JPによる陳述」にて彼の口から語られる。

今になって思い返せば、私はそのはじまりから人では無かったのだと思います。私は恐らく流産だったのでしょう。
覚えているかぎり最初の記憶は、胎のなかで育てていた小さな存在がきちんと出てこられなかったことを嘆く母親の叫び声です。

何をするでもなく、何も出来なかった私は、その時にはじめて財団の皆様が仰る所の現実改変を行ったのであろうと思います。
私は自分の唇を、喉を、腹を、声帯の位置を動かしてとりあえず母の真似をしたのです。
それが偶然にも通常の赤子と同じであったことはまさしく奇跡でした。

彼の出生についての陳述。
彼は後天的に、生きている真似をする死体になったわけではなく産まれた時から自然な行為として生きている真似をしていたのである。

幼稚園で読んだ絵本であったでしょうか、人のからだの不思議に迫る絵本でした。
その中では、私とおなじくらいの年代の男の子が病に臥せり、からだの中で色々な、白血球やら、肝臓やらが病原菌を退治するのです。
私はそれを読んで、「なんでこの子は自分で体をいじってそれを退治せんのやろうか」と思ったのです。

彼が最初に異常について認識したことについての陳述。
しかしこの際は、「青い空は本当は緑色に見えているのに誰かに青い空だと教わっているから青い空だと言っているのではないか」と疑問を抱くように、他の人も自分の意識でどうにかできるのにそれを「それを意識外で行う行動である」と認識していることでそれは意識の外でやっていると思ってしまい、だから自分の意のままにならないのだと考え、それっきりにしたのである。

わたしは手を伸ばしました。いえ、手の位置をできるだけの速さでもとあった位置から移しながら、駆け出したのです。
何をしても無駄だと、冷静なわたしの心が告げていたのにです。
でもそうではなかったのです。わたしは次の瞬間、自分の腕がするりともげて、車の方へと飛んで行くすがたが、網膜に移ったことを理解しました。
わたしの心は網膜に移ったそれを脳細胞の電気信号を創造することで冷静に解析し、わたしは自分に何が起きたのかを理解できました。

そしてわたしは自分が、ヒトでないことを理解しました。

彼が自身の異常性に気づいた切欠についての陳述。
数年経ち、彼には家族が居た妻が居て子供が居て、ごく普通の人間の家庭を築き上げていた。

ある日、娘を連れて公園に行っていると信号無視のトラックが娘めがけて突っ込んで来た。
その瞬間彼は自身では全く自覚のなかった力を、現実改変能力を初めて外に向けて外部から観測できる形で行使した。
トラックを潰し、運転手を砂ねずみに変化させ、自分と娘とトラックを誰からも見えないようにした。
そして彼は、自分は何でも出来てしまうこと、生きている真似をした死体なことを…そして自身が人間ではないことを知った。

そのことを知ってしまった彼は自分の現実改変能力を無くすことが出来ないことを悟ると自暴自棄になり、
“わたしを殺してくれる所にいきたい”と思いながら自身の肉体の位置を改変し、収容されるに至った。

そう、彼が強力な現実改変を持ちながらEuclidであり自発的に収容された理由はあまりにも”普通の人間”すぎたからなのである。
幼さ故にその危険さを考慮できないわけでもなく、破綻しているが故にその力をあらぬ方向に使うわけでもなく、
普通の人間として育ち、普通の人間の感性を持つが故に、自身の正体と力に恐怖し絶望したのである。



財団はSCP-650-JPの肉体を破壊すること自体は容易だが、意図せぬ現実改変と肉体の破壊が無力化に繋がらない可能性を考慮してSCP-650-JPを破壊する試みを永久に保留としている。

わたしは自分を殺したいと思っているはずです。しかし、わたしはここに飛んできた。
殺し屋の家でも、地雷舞い踊る戦場のただなかでもなく、研究施設であり、収容施設であるこちらに飛んできた。
ここがわたしをいつか殺してくれる場所なのでしょうか?
それとも、わたしは自分が生きていてはいけない存在だというのに、
本当は殺されることが怖くて、自分を守ってくれそうな所をいつの間にか選んで飛んできてしまった、意気地なしで……

……人でなしなのでしょうか?






SCP-650-JP

人でなし、でく人形

オブジェクトクラス: Euclid


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-650-JP
by boatOB
http://ja.scp-wiki.net/scp-650-jp

SCP-650-JPによる陳述
by boatOB
http://ja.scp-wiki.net/statement-of-650-jp

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