SCP-1111-JP

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SCP-1111-JP - (2017/10/18 (水) 23:40:51) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2016/12/21 Wen 19:28:20
更新日:2023/12/09 Sat 14:56:14
所要時間:約 12 分で読めます





メッセージを受信しました。



SCP-1111-JPはシェアード・ワールド「The SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつ。JPのコードが示す通り日本支部の管轄である。
項目名は「国体護持」。
オブジェクトクラスは後述する。……まあこれと、上のメッセージがある時点で内実はある程度お分かりだろう。
この際なので先にぶっちゃけてしまうが、一番最後の情報以外は全部フェイクである。
新しく日本支部の理事“鵺”に昇進することが内定したあるサイト管理者が、前任の“鵺”から理事としての知るべき情報を教えてもらった、という体裁になっている。






SCiPNET

SCP-1111-JPについての情報を開示します、ログインID及びパスワードを入力してください。
ログイン履歴は記録情報セキュリティ管理室(RAISA)によって常時監視されており、位置情報についても同時に収集されます。
警告:不正アクセスは厳に禁じられています、保持セキュリティクリアランスレベルに関わらず許可された情報以外にアクセスした場合即座の終了、人格破壊といった不可逆な制裁を与えられる可能性があります。付与された権限外の情報にアクセス可能となっている場合、RAISAにその旨を報告して下さい。



職員コード:Site81-5_████
パスワード:**********


認証を確認しました。ようこそ。







セキュリティクリアランスレベル0~2職員公開情報


SCP-1111-JPとは、サイト-81政府との協力で収容されている、三つ一組の儀礼品である。
オブジェクトクラスはSafe。
それぞれ剣、鏡、勾玉の形状をしている。
特別収容プロトコルにより、現在はサイト-81政府の所有する高度重要物収容コンテナに収められ、宗教施設内に保管されている。また宗教的理由により観測は許可されていない。

コイツらが何をするのかというと、周辺のヒューム値、つまり現実性を調整するのである。SCP-1000-JPで問題となっているこの数値は、簡潔に言うと現実としての強さの値であり、高い方から低い方へ不可逆に影響する。
ヒューム値が高い存在の「現実」に、低い方が塗り潰されるのだ。

コイツらもそうなのかと言えばさにあらず、上昇ではなく「調整」する。
つまり、収容サイトでの現実改変を抑止するのである。
それぞれどういう風に作用するのかと言えば、

  1. 剣:サイト-81内に存在する人間のヒューム値を調整。ただし5以上の現実改変者には効かない
  2. 鏡:サイト-81内の宗教的重要人物であるSCP-1111-JP-Aの個体ヒューム値を上げる。ただし最大1.1
  3. 勾玉:SCP-1111-JP-Aの個体ヒューム値と同じレベルまでサイト-81内の空間ヒューム値をアップさせる

となる。
このため、サイト-81は他と比べて一個人による現実改変が少ない傾向にある。
さらに、SCP-1111-JP-Aはその直系血族から、サイト-81政府が定める後継者に対し、SCP-1111-JP群を模した宗教儀礼的物品を用いた「継承イベント」を行うことで効果対象を変更することが可能となっている。
SCP-1111-JP群がどのようにして継承イベントを認識しているかは不明であるが、サイト-81住人の集団深層心理にアクセスすることで認識しているのではないか、と考えられている。











セキュリティクリアランスレベル3職員公開情報

まあ、当然ながらカバーストーリーである。
オブジェクトクラスはEuclid
どうやらこのオブジェクトは相当に脆いらしく、「破損および異常性喪失を回避するために」接触が禁じられている。つまり宗教上の理由ではない。

コイツらのヒューム値はカント計測器を用いて常に測定され、5を超えた場合はクラス4の職員に通報するよう命じられている。

オブジェクトとしての特性は既に開示されているが、ここではさらに経緯について語られている。

SCP-1111-JP群は元々、つまり財団日本支部設立以前は皇室の協力の下、蒐集院において管理されていた。また連中である。
蒐集院での管理時、収容されていた建造物が戦乱、火災に罹災するという不運が重なり、SCP-1111-JP群は長期間の保管に伴い破損、劣化が進行しているらしい。
さらには、歴史的にSCP-1111-JP群が視認されたと考えられるケースにおいては、ヒューム値の急激な変動に伴う天変地異とみられる現象が発生している……つまり予期せぬ現実改変が起きている。
つまり、ここからすると目視されることで異常性の減衰、あるいは消失する可能性が示唆される。

万が一、SCP-1111-JP群の異常性が消失した場合、サイト-81内の基本のヒューム値の大幅な減少だったり多数の現実改変者の出現だったり、最悪の場合両方が発現することだって予測される。SCP-1111-JP群の影響が失われた際のサイト-81における基本のヒューム値に関する情報は本質的に得ることが不可能であり、破損による影響を予測することは困難である。
最悪の場合局所的なCK-クラス:再構築シナリオに繋がる恐れがあるため厳重な保管、監視がなされている。

わかりやすく言うと、このオブジェクトが異常性を失ってしまうと、サイト-81の基本の現実性が一気にガタ落ちし、周辺の「現実」に塗り潰される危険がある、という話である。
さらに、サイト-81の管理者はこのように述べている。

古代、国を興した人間の多くが神に近い存在であったとされている。単に歴史が進むにつれて神格化されただけである場合も多かったろうが、一部の国家創始者については何らかの現実改変能力を持っていた可能性を示唆している。能力を持った彼らの多くが死んだ後、現実改変によって発生した国家は殆ど姿を消した。
現実改変能力は多くの場合遺伝せず、後継はその政治的才覚でのみ国家を維持する必要があったからだ。ただし、一部の例外が存在する。サイト-81において、真に神格化されているものは個人そのものでなく"三種の神器"を所有する一族である、と定めたことでサイト-81を統括する存在は代々生き延びることとなった。
主要な国において古代の現実改変者の影響がこれほど強く、今日まで続いている事実は非常に興味深い。問題はこの影響が即座に消失した場合サイト-81がどういう形になるか予測ができない点にある。収容は万全の体制にて執り行う。


この時点でわかるだろうが、SCP-1111-JPの正体は、歴代天皇の証である「三種の神器」である。















セキュリティクリアランスレベル4職員公開情報

ここまでの情報は半分ほどカバーである。
オブジェクトクラスはKeter。またこのパターンかよ!! と思われるかもしれないが辛抱いただきたい。

実は、SCP-1111-JPはまだ収容されていない。職員の混乱と士気の低下を防ぐため、レプリカを用意して収容できているように装っている。
最初の情報で述べた「継承イベント」が発生した際は、それを手掛かりにオブジェクト実体の捜索に当たることになっている。

サイト-81政府および財団が保有しているのはいずれもレプリカであり、周囲の小型スクラントン現実錨によって、SCP-1111-JP-A=今上天皇と同一のヒューム値を保つよう仕掛けられている。
まあ、さすがに気づいただろうがサイト-81とは日本国そのものである。

また蒐集院による記録では、

  1. 剣:帝は朝敵を生れる前に滅殺する。
  2. 勾玉:帝は日本を総べる徳と権威を持つ。
  3. 鏡:帝はその徳と力を持って日本国の魑魅魍魎を調伏する。

という効果を与えられていることが判明している。

これらの記述と財団によるサイト-81内のヒューム値の解析により、具体的な影響が明らかになっている(セキュリティクリアランスレベル3以下の職員に公開された情報がその解析結果である)。
ただし、SCP-1111-JP群の現実改変的な効果はヒューム値1.1程度に限定されるため、あまりに高い個体ヒューム値を持つ現実改変者には効果がない。そのため、古来存在した「朝敵」は非常に高いヒューム値を保持していたと考えられている。

オリジナルのSCP-1111-JP群が散逸した経緯としては、1400年代にに蒐集院がSCP-1111-JP群の確保を実施しようとした際に生じた戦乱に伴い、レプリカと取り違えられたのが原因だと考えられている。現在収容されているオブジェクトがこのレプリカである。
蒐集院上層部はこの失態を隠蔽するため、レプリカをSCP-1111-JP群実体であると流布。その事実を知る人間を上層部のみに限定する措置を取った。
だが、オリジナルのSCP-1111-JP群による影響が未だに継続していることから、これらは財団が未だに捕捉していない宗教施設内、あるいはサイト-81領海を含む国土のどこかに現存していると考えられる。

SCP-1111-JP群の損失に伴い、サイト-81内の基底ヒューム値と各人間個体のヒューム値の大幅な変動が予見されているのが問題である。
しかも、変動イベントの発生の予測及びコントロールが現在全く不可能であることから、職員の士気低下を防止するため未収容である、という事実は秘匿されている。









お疲れ様でした、こちらから秘匿情報についてアクセスしてください
























レベル5セキュリティクリアランス/SCP-1111-JP統括管理者(日本支部理事"鵺")公開情報


以上は全てカバーストーリーである。
真のオブジェクトクラスはNeutralized/Thaumiel
財団の最終兵器となりうるオブジェクトであるが、本体は実はフェイク。その上、潜在的にはKeterとなりうる危険性まで秘めている問題児である。

正体としては三種の神器なのだが、実は裏にもう一つの真実がある。
真のオブジェクト、つまりSCP-1111-JP-0があるのだ。それは、「三種の神器は今上天皇を介して日本国に特別な効果を与える」というミーマチックエフェクトである。

財団が三種の神器を収容した当初、あらゆる検査が行われたが、それらには何らの異常も見受けられなかった。つまり、三種の神器そのものはSCPオブジェクトとしての特性を何一つ有していなかったのである。

特別収容プロトコルは、ここまで述べたカバーストーリー「国体護持」を「表向きの真実」として秘匿し、もし神器が破損した場合はクリアランスレベル4の情報を「隠匿していた真実」として公開するよう指示されている。

問題なのはこのミームの方で、これの影響を受けた日本人はSCP-1111-JP-Bとなり、ミームで述べられている効果を無自覚に発揮する。
さらにこのミームの内容は変異、あるいは変更可能であることが確認されている。

SCP-1111-JP-0が財団本部に捕捉、収容された1946年の時点では、「三種の神器を代々受け継いできた天皇は現人神としてこの世に存在し、日本国を拡大発展させる能力を持つ」という内容だったが、収容と共に上で述べたカバーストーリー-「国体護持」の内容に変更されている。

これは三種の神器に関して疑念を持った人間はSCP-1111-JP-Bとしての能力を失い、いかなる記憶処理を施しても能力は戻らないという特異性から施された処置である。

現在、財団外においてSCP-1111-JP-Bは日本人のうち数%しか存在しておらず、おまけに減少傾向にあることから、財団職員によるミームの維持が必要とされている。
面倒なことに、SCP-1111-JP-BがSCP-1111-JP-0がミーム的情報であるという事実を認識した場合においても能力を失うことが確認されている。このため、三種の神器の真の特異性についてはO5評議会員と日本支部理事"鵺”にのみ公開されることになる。

セキュリティクリアランスレベルに応じて各職員に与えられる情報は、それぞれ上で述べたSCP-1111-JP-0の内容となる。この内容は、初代の日本支部理事“鵺”及び財団本部によって策定されたものであり、SCP-1111-JP-0の収容を容易とするだけでなく、サイト-81内のヒューム値恒常性を保つために利用されている。

セキュリティクリアランスレベル4の職員に公開される「三種の神器は未回収でありレプリカが収容されている」という情報及び、蒐集院において保管されていたとされる記録は財団本部により改竄、捏造された欺瞞情報である。

これらの欺瞞情報は、天変地異等により政府宗教施設内に保管されている神器のいずれかあるいは複数の破損が明白となった場合における特別防備措置であり、最終的なフェイルセーフとしての役割を果たすことになる。
欺瞞情報を全日本支部職員に公開することで「真の神器はまだ存在しており、破損していない」というカバーストーリー「秘められた真実」を流布することになる。

日本におけるのSCP-1111-JP-Bの割合は第二次世界大戦時に最大となったたが、これは当時の政府及び軍部がミームの内容を変異させた上で日本人に対して強制的にミーム感染させたことに起因する。
ただし、当時の関係者はSCP-1111-JP-0というミームの存在や特性について全く把握しておらず、三種の神器を日本国における象徴として設定したための、偶発的な事象であることが確認されている。

散々述べたが、このミームによる現実改変効果には制限が存在しており、日本の存続と安定といった現状を維持するような効果については十分な効果を発揮するものの、日本の領土の拡大や急激な発展といった、影響範囲を拡大するような効果は非常に低い。
この結果、第二次世界大戦時に流布されたミームは十分な効果を発揮せず、これについて疑念を持ったために能力を損失したSCP-1111-JP-Bが多数発生。急速にSCP-1111-JPのミーム特性が失われた。
その後、終戦に伴い財団本部が蒐集院の蒐集物の調査を実施した際、三種の神器とミーム・SCP-1111-JP-0についての特性が明らかになっている。

つまり、太平洋戦争当時に流布されていたミームの内容とは「神風」である。
だが、神器を介して働くミームの現実改変は「国体護持」の名の通り日本を維持することに特化し、侵略や領土拡大には未対応。結果が敗戦であり、これにより流布された「神風のミーム」を信じない日本人が爆発的に増加、結果としてミーム自体が弱まり媒体である神器も機能停止した、というわけである。

最後に、初代“鵺”の覚書を引用する。




最初私は三種の神器、つまりSCP-1111-JP群の調査には反対した。当然だ、三種の神器は過去現在未来に渡って日本を守護する存在でなくてはならない、畏敬の念を忘れては天災が下ると信じていたからだ。しかし財団は「だからこそ我々と君たちはこのオブジェクトを知る必要がある、危険が及ばないよう最大限の措置を用意する。」と決して譲らなかった。数日続いた交渉の結果、財団監視の下、蒐集院主体で調査が行われることとなった。
私は調査員として立候補した。
現実改変による影響を最小限とするために実験は離れ小島で行われ、調査員もごく少数に限定された。あらゆる注意を払いながら数百年単位で開けられなかった箱を開け、私はこの目で三種の神器を確認した。私はあらゆる結果に対して覚悟していた、不敬によって死ぬこととなったとしてもこの偉大な神器に殺されるならば光栄だとすら考えていた。

そして、何も起きなかった。

カント計測機は正常に作動していた、あらゆる護符や式神による感知も正常に行われた。ただ何の反応もないということ以外は完全に順調だった。 あらゆる計測、霊視によって三種の神器に何の効果もないと判明した時、私は大きなため息をついたと記憶している。それが安堵だったのか失望だったのか、その両方だったのかはよく覚えていない。
ため息をついた途端、周囲のヒューム値は一気に下降し、現実性は薄れ、周囲は魑魅魍魎の跋扈する世界と変化した。すぐさま蒐集院の同僚や財団職員がやってきて事態は収拾した、というよりもやってきた途端に世界は元の姿を取り戻した。私が見た幻覚だった、ということでその場は収まったが私は三種の神器の持つ特性を理解していた。
これは信仰そのものだ。
信仰が失われると信仰が収めてきたあらゆる災厄は姿を現す、私は間違ってはいなかった、私の想像とは違う姿であったが。
財団と私は共謀し、この信仰というミームを守り続けることとした。一般市民の信仰に頼ることはできない。異常な物品の存在を信じさせることは異常な物品から無辜の民を守護し、隠匿する財団や蒐集院の理念と完全に相反していたからだ。例え一般市民に信じさせたとしてもいずれどこかの誰かが調査して三種の神器の真実を知ってしまうだろう。世界には異常な物品が多く存在していることを知っており、それが自然だと感じる人間でなければこの信仰を守ることなど不可能だ、財団日本職員によって信仰を守り続けることは必然的な帰結であった。
だからこそ私と私を引き継ぐ者だけは知らなければならない。これが私と君だけに課せられた使命だ、私が退いた後も十分な働きを期待している。
  • 初代財団日本支部理事"鵺"(旧蒐集院上級祈祷技師 ██祈祷官)



……つまり、日本にはSCPオブジェクトとなるだろう妖怪変化の類が存在しており、それらのヒューム値は恐らく1未満。神器が完全に機能を停止すれば日本のヒューム値はそれを下回り、悪鬼羅刹の世界になってしまう危険性が高いのである。



日本に明日はあるのか? 




SCP-1111-JP - 「国体護持」
by hannyahara
http://ja.scp-wiki.net/scp-1111-jp
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