SCP-245-JP

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SCP-245-JP - (2020/05/11 (月) 08:05:29) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/12/29 Thu 19:41:08
更新日:2024/02/23 Fri 16:40:42
所要時間:約 3 分で読めます




彼女の魂が永遠に安らかならんことを。


SCP-245-JPはシェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
オブジェクトクラスはEuclidを経てのNeutralized。

項目名は「浮かばれない駆逐艦」。危険・怖い・どうしようもないオブジェクト揃いの財団世界にあって、数少ないしんみり系である。


概要

コイツが何かというと、沈没船である。第二次大戦中、ドイツ軍の攻撃で沈没したアメリカ海軍駆逐艦「USSルーベン・ジェームズ」がその正体。
沈没したのは1941年10月31日だが、異常性の発現はその10年後である1951年からである。

この沈没船の異常性は、沈没した日付である10月31日の日没から、翌11月1日の日の出までの期間に発現する。
10月31日の日没直後、海底に沈んでいるこの船の残骸は海上へと浮上を開始。雷撃によって船体は分断されているが、海面に浮上するまでの間にその他の散逸した部品を呼び寄せて再結合、1941年当時の艦影に戻る。
そして、浮上後にSCP-245-JPは白い燐光を発しながら行動を開始する。ちなみにこの燐光について異常な効果などは確認されていないが、発光するような要素は周辺にはなかった。
つまり、いわゆる鬼火の類の光らしい。

行動を開始したSCP-245-JPは、他の船舶を探して沈没地点を中心に活動範囲を広げていく。
他の船舶が半径10km内に侵入した場合、遭難信号を発して救援を求めて来る。被害者からの聞き取りや無線交信の録音によって、メーデープロトコル*1は常に以下の内容で統一されていることがわかった。


メーデー メーデー メーデー
こちらUSSルーベン・ジェームズ USSルーベン・ジェームズ USSルーベン・ジェームズ
メーデー USSルーベン・ジェームズ 現在位置は北緯██度██分 西経██度██分
本艦は雷撃を受け急速に沈没しつつある 乗員は115名 救援を求む
メーデー USSルーベン・ジェームズ  オーバー


ルーベン・ジェームズが沈没した当時のクルー総数は159人だが、生存したのが44人いる。つまりこの通信は、船と共に海に消えた115人を救助してくれ、と伝えているのである。
それを示すように、遭難信号発信後、SCP-245-JPは侵入した船舶へ急速に接近、逃走を図るようであれば追いかける。
対象となった船舶に接近したSCP-245-JPは救命具の投下を要求、要求通りに救命具が海上へ投下された場合、ボートダビット(救命ボートなどを釣り上げるクレーンみたいなもの)によってそれらを回収、再び別の船舶に目標を移し同様のプロセスを繰り返す。

要求を拒否、あるいは遭難信号を無視し続けた場合、前部4インチ砲によって威嚇を行ってくる。
発砲の際の砲声と砲炎は、その主砲口径に対して著しく大きく、16インチクラス(著名な艦艇で言えばアイオワ級戦艦の主砲と同程度)であると推定されている(単純計算だと、このクラスの大砲をルーベン・ジェームズが積んだら沈没する)。
砲弾が着弾した瞬間、戦艦の主砲弾に匹敵する炸裂音や閃光、および爆炎が観測されている。が、この砲弾に船体を破壊したり乗組員を殺傷する能力が全くない。本当に単なる威嚇である。

そしてこの幽霊船、11月1日の日の出の時刻になる前に再び沈没地点の海上へと帰還する。
最も活動範囲が広かった事例では、遠く離れたアイルランドやニューブリテン島沖まで進出していたが、そのケースであっても、本来の性能を遥かに超える速度で航行して日の出前に必ず戻って来る。

日の出と同時にSCP-245-JPの燐光は消滅し、沈没地点へ向けて、逆回しのように分解しながら沈み始める。
そして、海底についた時点で活性化が終了したと判断される。



これらの事象から、財団は非活性状態のルーベン・ジェームズを秘匿するため沈没座標を偽装しそこにダミーの残骸を配置、10月31日から11月1日にかけては船舶の航行を制限することでプロトコルを組んでいた。
そして活性化が始まった場合、財団所有の船2隻が救命具を海面で引っ張って回収を阻み、日の出までルーベン・ジェームズを拘束し続けることになっていた。






しかし、それは突如として終わりを迎えることになった。


2001年10月31日。
封じ込め作業の当日、やって来た財団の船は異常現象を目撃した。SCP-245-JPの沈没地点に向けて、3隻の船が接近していたのである。
この船団のうち、先頭の船は旧型の貨物船で船首に「BAYCHIMO」の文字があった。随伴する残りの2隻はプロテウス型給炭艦に酷似していたが、3隻ともにAIS*2情報は受信されず、一切の応答はなかった。

なお、余談ながらこれらの船舶は(いずれも史実の船舶と同一のものと仮定すると)すべて行方不明になってそれきりになっている船であったりする。
ベイチモ号は無人の時に漂流し、その後数十年に渡って漂流し続けた有名な幽霊船であるし、プロテウス級給炭艦も4隻中2隻(ネレウス、サイクロプス)が現役時代消息を絶っている*3

3隻は数度に亘る警告と威嚇射撃にも反応を示さず航行。SCP-245-JPとの接触を図っている可能性が高かったことから海上司令部は撃沈命令を下した。
ところが、給炭艦の2隻は、フリゲート艦から放たれたミサイルを全て撃墜、船の進路を妨害して財団による阻止行動を逆に阻止。
止めるもののないまま、船団の旗艦「BAYCHIMO」は浮上したSCP-245-JPに接触した。

そして、「BAYCHIMO」は財団の船を無視して大量の救命胴衣を投下。SCP-245-JPはこれを順次回収していたが、その日の23時50分、日の出には遠いにも関わらず非活性状態に戻り、再び海の底へと消えていった。
「BAYCHIMO」率いる三隻の船は、SCP-245-JPの沈没後、不明な電波の輻射に続いて21発の空砲を放ち、南方へと退去。財団は追跡を行ったが、物理的追跡は振り切られ、衛星による追跡は低気圧の下に逃げ込まれたことで失敗に終わった。


この事件の後、SCP-245-JPは二度と活性化することはなく、2011年を持ってNeutralizedに認定された。




補遺

その後の調査で、SCP-245-JPが回収した救命胴衣は、「BAYCHIMO」が投下した分でぴったり115個だったことが判明している。
さらに、三隻の船が放った21発の空砲は本来は国旗≒国そのものや元首に対する、最大限の敬意を示す礼砲である。軍隊だとしても、本来なら一介の駆逐艦であるルーベン・ジェームズに対して行われるものではない。

だがそれは、「BAYCHIMO」が最後に輻射した不明な電波の解析結果がその意図を物語っていた。
財団が解析したところ、それは極めて低い強度で暗号化されたスウェーデン語の通信だった。
全くの余談だが、ベイチモ号は行方不明船舶の一つであるが、乗組員の全員脱出後に消息が途絶したため、死者は出ていない。
そんな船が、115人の命と共に海に消えたルーベン・ジェームスのもとに現れたのは、何を意味していたのだろうか。


だが少なくとも、







さらばだ、ルーベン・ジェームス。ゆっくりと眠れ。――艦隊司令部






長すぎた「戦争」を終えたルーベン・ジェームスが再び浮かび上がることは、二度とないのだろう。



CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-245-JP - 浮かばれない駆逐艦
by megabomb
http://ja.scp-wiki.net/scp-245-jp

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