Nyarlathotep

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Nyarlathotep - (2016/04/29 (金) 22:14:59) の編集履歴(バックアップ)


登録日: 2009/10/26(月) 19:28:15
更新日:2023/06/26 Mon 01:01:49
所要時間:約 5 分で読めます




「二度とふたたび千なる異形のわれに出会わぬことを宇宙に祈るがよい
さらばだ、ランドルフ・カーター。このことは忘れるでないぞ。われこそは這い寄る混沌、ナイアルラトホテップなれば」
――――――未知なるカダスに夢を求めて

クトゥルー神話体系に登場する神格。
『這い寄る混沌』『無貌の神』『暗黒神』『百万の愛でられし者の父』など無数の肩書を持つ外なる神、あるいは旧支配者の一角。

クトゥルー神話の産みの親、ラヴクラフトが悪夢の中で遭遇した存在であり、彼がその夢を『ナイアルラトホテップ』という作品として公開したのがこの存在の初出である。

俗に言う『ダーレス設定』ではNyarlathotepは旧支配者達の中で唯一旧神による追放・封印から逃れられた存在であるなど、他の旧支配者とはかなり異なった特殊な地位を占めている。
その役割は旧支配者、特にAzathothに仕えるメッセンジャーであり、旧神に追放・封印された旧支配者達の解放を目論み、日々暗躍している。
またNyarlathotep自身は他の神格の従者ながら、全ての旧支配者中最大級の力を持つ地の精でもある。基本的に目上の神々も軽蔑しているが、魔王Azathothへの忠誠心は絶大。
逆に天敵たる火の精Cthughaや旧き神Nodensとは完膚なきまでに敵対している。
特にCthughaには地球での彼の根城である『ンガイの森』を焼き尽くされるなど、小競り合いが絶えない。

ロバート・ブロックが肉付けした設定によると、この神は古代エジプトで最初に崇められた神であったが、長い年月を経て人々はこの暗黒の神を恐れるようになり
自分たちの記録や歴史、建造物からこの神に関する記録を全て消し去り、セトやトートといった他の神性に彼の属性・特質を割り当てたものとされている。

また、王家の谷から永久にその名を抹消された古代エジプトの王ネフレン=カは狂信的なNyarlathotepの信奉者であり、度々数十〜数百の生贄を捧げる大規模な儀式を執り行い、かの外なる神から極めて精緻な未来の予言を得たと言われている。
当然ネフレン=カは他の権力者や国民の恐怖と反感を買い、その王座を追われた。
しかし彼は落ち延びた最後の信者達と共に地下に巨大な神殿を建造し、その中で最後の儀式を催し、数百の生贄と共にNyarlathotepの眼前で死に絶えたと言う。その際に狂王は末期の力を振り絞り、余りに巨大で写実的な壁画を完成させた。
その壁画には、それまでの、そしてこれからの地球の歴史が全てが連続的に描かれていると言われている。この神殿に鎮座するNyarlathotepの巨像は、冒涜的な表情の類人猿として現されている。

『千の貌を持つもの』『無貌の神』の名の通り、この神は千(無限?)の化身を持ち、幾多の時代や場所に混沌と狂気をまき散らすべく出現し暗躍する。
例えば〈輝くトラペゾヘドロン〉を用いた場合、光を恐れ、三つの燃える眼と黒い翼を持つ『闇をさまようもの』として顕現し、
反対に、慈悲深い〈地球本来の神々〉の守護者として現れた時は、真紅の衣を纏い、古代エジプト王にも似た誇らしげな長身痩躯の若者の姿をとるといった具合である。

彼の者の化身は我々と同じ人間である事もあれば、得体の知れない化物、各地の神話にて語られる怪物や神格、果ては機械や方程式、霧や嵐といった無機物・無生物や概念のような化身も存在する。
科学・魔術に詳しく、時に人間に優れた技術や予言を授けるが、かの神格の叡智を受け取った人間は大概悲惨な最期を遂げる。

いずれの場合も、ひたすらに圧倒的で冒涜的な存在である他の旧支配者とは異なり、積極的に人間と関わっていることが目立つ。
その気になれば簡単に地球など消し飛ばせる力を持っていながら*1敢えて自身では直接的な行動は取らず、人類や他の神格の無知蒙昧さを楽しんでいるようですらあり、旧支配者中唯一のトリックスターであると言えよう。

また、別々の化身が同時に存在することも可能で、殺された化身について別の化身が犯人を探すこともある。

この神格に限ったことではないが名前の日本語読みが異常に多い。

〈例〉
  • ナイアルラトホテップ
  • ナイアーラソテップ
  • ニャルラトテップ
etc...

大まかに

  • “Nyar”
→「ナイアル」「ナイアー」「ニャル」

  • “la”
→「ラ」

  • “thotep”
→「トホテップ」「トテップ」「ソテップ」

の組み合わせとなる。
近年の創作ガジェットに使われやすいクトゥルー神話でも、その自由奔放ぶりから特に出演率が高い(主に黒幕として)。
押しかけ美少女セクシーな古本屋の女主人は少々やり過ぎな気もするが……。
流石日本である。
上から目線で嘲笑いながら状況をいじりまわし、調子に乗って人間に倒される、という姿としてはペルソナ2のそれが近い。

さて、ここで一つ思い出してほしい。元々クトゥルー神話は異なる作者によって作られた創作神話体系である。
ならこれらの萌え邪神やらセクシー邪神やらクソ邪神やらが、かの邪神の持つ千の貌の一つでないと言い切れるだろうか?
もしかしたら、そんな日本人の創作活動すら這い寄る混沌の手のひらなのかもしれない。


ちなみに、前述の地の精や火の精といった属性による分類分けは旧支配者の対立の構図と同様にA・ダーレスがラヴクラフトの死後に付け加えたものであり、そもそも人間の認識や倫理から遥かに逸脱した存在である旧支配者をこのようにカテゴライズする事は、
ラヴクラフトの描いた世界観とは根本的に矛盾する(旧支配者最強候補なのに、ただの精霊であるCthughaと力が拮抗している等)事が多い。

その辺りの認識の差が『クトゥルー神話ファン』と『ラヴクラフトファン』ないし『コズミックホラーファン』の間に厳然と横たわる深い海溝となってしまっているとか。

ラヴクラフト本人の描く神話世界と、後続の作家によって体系化された『クトゥルー神話』は別物と考えてしまうのが良いかも知れない。




クトゥルー神話に詳しい人、あるいは〈星の知慧〉派の追記・修正求む。

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