ねぎを植えた人

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ねぎを植えた人 - (2017/04/17 (月) 14:59:07) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/05/11 (水) 00:01:46
更新日:2024/01/03 Wed 23:35:24
所要時間:約 3 分で読めます




ねぎを植えた人」は、朝鮮に伝わる民話である。








~ねぎを植えた人~

これはまだ、人々がねぎを食べていなかった頃のお話。



昔々、人々はねぎを食べていませんでした。そもそも、ねぎというものを知らない人も多かったのです。

その頃の人々は、よく人間を食べていました。
というのは、例え家族や友人といった親しい人であっても、人々は人間がとても美味しそうな牛に見えていたからです。

そんな人々がまだねぎを食べていなかったある日。

牛と間違え、兄弟を食べてしまった若い男が呟きました。












「人がいねェ! 人見えねェ!
どいつも牛にしか見えねェ!


俺らこんな村いやだぁ
俺らこんな村いやだぁ


俺ら旅さ出るだぁ
俺ら旅さ出るだぁ


人が人に見える所さ行くだぁ」











男は何処かに人が人に見える国があるはずだ、とそんな国を探して旅に出ました。

山を、谷を、長い長い道のりを越えるうち、季節が幾度も巡りました。若かった男も、いつの間にか髪に白髪が混じる歳になっていました。

そんなある日。
男は、遂に探し求めていた国を見つけ出したのでした。そこでは人々はちゃんと牛と人とを識別し、仲睦まじく暮らしておりました。

男はそこの長に尋ねます。












「なぜこの国では、人と牛とを識別できているのですか?」












「フェッフェッ、旅のお方や、それはねぎのお陰じゃよ」












「ねぎ……だと……?」












「どれ、畑に来てみなされ。ここにあるのがねぎですじゃ」

見ると、畑には今まで男が見たこともなかった植物がたくさん植えられています。


「これがねぎですか?」


「That's right.昔はワシらも人が牛に見えとったのじゃが、このねぎを食べてからというものちゃんと人が人に見えるようになってな。
 そうじゃ、旅のお方にもねぎの種を分けて差し上げよう」

ねぎの種を分けてもらった男は嬉しくてたまりません。
これで人が人を食べる事もなくなる! そう思うと帰りの足取りも軽く、男はあっという間に村へ帰り着きました。

村に戻った男は、早速畑にねぎの種を撒きました。

それを済ませると、せっかく久しぶりに村に戻ったのだからと友人の家を訪ねる事にしました。どうせなら、ついでにねぎの話も聞かせてあげようと思ったのです。


「お久ー」


「おぉ、












これはこれは、












美味しそうな牛じゃないか」











男は食べられてしまいました。

それからしばらく経った日の事です。村人は畑に、見慣れない植物がたくさん生えているのを見つけました。

試しに食べてみると、今まで食べた事のないような味と共に、目から涙が溢れてきました。

気が付くと、ねぎの刺激で出た涙で目が清められた人々は人を人として見る事ができるようになっていました。

それからというもの、人々は幸せに仲良く暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。






追記・修正をした男は、
食べられてしまいました。

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