ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1039 藪の中から
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ankoss
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友人と待ち合わせしている男の前に、ゆっくりが現れた。
道を挟んだ向こうの薮の中から出てきたようだ。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
れいむとまりさ。
一番ポピュラーかつ面白味のない二匹だ。
男はその挨拶を無視した。視線を合わせる気すらなかった。野良のゆっくりに関わるとろくな事がないからだ。
関わるくらいならいっそ潰してしまえ。ただし加工所に後始末を頼め。
この地域のそんなルールを、男は心得ていた。
これが他のゆっくり――例えばありすやぱちゅりーだったとしても、もちろん同じことだ。
しかし、もし万が一相手が希少種だった場合はすぐに捕まえるべきだ。
そして飼うなり売り飛ばすなり、虐待するなり好きにしろ――これも地域のルールだった。
男とゆっくりの間を、若い女が通りすぎていった。
彼女がゆっくりに向けて侮蔑の視線を送ったのを、男は見た。
「ゆっくりしていってね! れいむはれいむだよ!」
「ゆっくりしていってね! まりさはまりさだよ!」
自己紹介なんてしてもらわなくて結構だ。おまえらと仲良くする気なんてない。
そんな意味を込めて男は、ちっ、と舌打ちした。
それにしても――なんだってこいつらは、見ればわかることをいちいち口に出すんだろう。
今まで幾度となく考えた事だが、もちろん答えはわからない。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
返事を期待しているのだろう。じっと見つめてくるが、男はあくまでも無視する。
「ゆっくり! していってね!」
「ゆっくり! していってね!」
――しつこいな。
男は苛立った。
つくづく思う。相手をしてもしなくても他人を苛立たせる存在だ。
普段ならば、無視していれば適当な所で帰ってくれるものなのだが――。
「むしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
二匹が初めて「ゆっくり」以外の言葉を発する。
あまりにも癇に障るその言いぐさに、男はついゆっくりの方を見てしまった。
「ゆっくりにらみつけたよ!」
「おお、こわいこわい」
二匹はそう言ってニヤニヤ笑う。人の神経を逆撫でして逆撫でして、それでもあまりある表情だ。
男の頭と腹の中が一瞬で熱くなった。
道を挟んだ向こうの薮の中から出てきたようだ。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
れいむとまりさ。
一番ポピュラーかつ面白味のない二匹だ。
男はその挨拶を無視した。視線を合わせる気すらなかった。野良のゆっくりに関わるとろくな事がないからだ。
関わるくらいならいっそ潰してしまえ。ただし加工所に後始末を頼め。
この地域のそんなルールを、男は心得ていた。
これが他のゆっくり――例えばありすやぱちゅりーだったとしても、もちろん同じことだ。
しかし、もし万が一相手が希少種だった場合はすぐに捕まえるべきだ。
そして飼うなり売り飛ばすなり、虐待するなり好きにしろ――これも地域のルールだった。
男とゆっくりの間を、若い女が通りすぎていった。
彼女がゆっくりに向けて侮蔑の視線を送ったのを、男は見た。
「ゆっくりしていってね! れいむはれいむだよ!」
「ゆっくりしていってね! まりさはまりさだよ!」
自己紹介なんてしてもらわなくて結構だ。おまえらと仲良くする気なんてない。
そんな意味を込めて男は、ちっ、と舌打ちした。
それにしても――なんだってこいつらは、見ればわかることをいちいち口に出すんだろう。
今まで幾度となく考えた事だが、もちろん答えはわからない。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
返事を期待しているのだろう。じっと見つめてくるが、男はあくまでも無視する。
「ゆっくり! していってね!」
「ゆっくり! していってね!」
――しつこいな。
男は苛立った。
つくづく思う。相手をしてもしなくても他人を苛立たせる存在だ。
普段ならば、無視していれば適当な所で帰ってくれるものなのだが――。
「むしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
二匹が初めて「ゆっくり」以外の言葉を発する。
あまりにも癇に障るその言いぐさに、男はついゆっくりの方を見てしまった。
「ゆっくりにらみつけたよ!」
「おお、こわいこわい」
二匹はそう言ってニヤニヤ笑う。人の神経を逆撫でして逆撫でして、それでもあまりある表情だ。
男の頭と腹の中が一瞬で熱くなった。
目の前にいるゆっくりは今時珍しいタイプなのかも知れないと、男は思った。
現在のゆっくりは語彙も表情も豊富で、人間ともそれなりの会話ができる。
もっとも、相変わらず話の通じないことも多いし、その存在を含めて常識外れなのは変わらないのだが――。
しかし最初期の、この世に発生した直後のゆっくりは、それこそ「ゆっくりしていってね!」くらいしかまともに話すことができなかった。
表情もニヤニヤと人をバカにしたようなもので固定だ。
うれしい時はうれしそうに「ゆっくりー!」だし、苦しい時もうれしそうに「ゆっくりー!」だ。
たとえ死にそうな時でもそれは変わらない。うれしそうに「ゆっくりー!」と死んでいく。
同じ口調の同じ言葉でも、ゆっくりはゆっくりなりの独特の微妙なニュアンスを表現していた――らしい、としか人間には言えない。
ゆっくり以外の生物にはとうてい理解不能な感情表現だった。それは正しく「単なる鳴き声」だ。
そして、
「あくまでもむしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
その言動から察するに、男の目の前にいる二匹は初期と現在、その過渡期にあったゆっくりに近いと言える。
進化――などと男は言いたくなかったが――途中の矮小な餡子脳では、感情と表情の処理が追いつかなかったのだろう。
かろうじて「ゆっくり」以外の言葉を発するようにはなったものの、感情の表現はとても十分とは言えなかった。
相変わらず、どんな時でも笑みを浮かべている。
さらに決定的に語彙が足りないから始末に終えない。とにかく何を考えているのか、何を言いたいのかがわからないのだ。
例えば先ほどの「あくまでもむしだってさ!」を今のゆっくり風に訳すなら「れいむたちをむししないでえええええ!」なのかもしれない。
「おお、こわいこわい」は「ゆんやあ! まりさこわいんだぜえええええ!」なのかもしれない。
同じゆっくり相手ならまだしも、人間にこれを理解しろというのは無茶だろう。
なまじ増えた語彙は「単なる鳴き声」という概念を忘れさせ、ともすれば人間に「ひょっとしたら意思の疎通ができるのではないか?」という錯覚を抱かせた。
そう思って話しかけても、返ってくるのはもれなくニヤニヤヅラをともなった、何とも要領を得ない返答――。
これに腹を立てる人間は少なくなかった。いや、非常に多かった。
いわゆる『虐待お兄さん』なる存在が確認され始めたのがちょうどこの過渡期だったことからも、それはよくわかるだろう。
「ゲラゲラゲラ!」
「ゲラゲラゲラ!」
こいつら――。
なぜか大爆笑しているれいむとまりさを前に、男も今、腹を立てていた。
男もご多分に漏れず――特別『虐待お兄さん』というわけではなかったが――この種のゆっくりが大嫌いだった。
おそらく以前より嫌悪感は強くなっている。
それなりの会話が可能になっている今のゆっくりに馴染んでしまった分、その腹立たしくふてぶてしい態度が一層際だって見えるからだ。
単なる先祖帰りなのか、それとも単にバカにしているのか、その辺りの判断がつかない所も質が悪い。
確かに『ゲス』や『れいぱー』、『しんぐるまざー』など、真に害悪と呼べるゆっくりは現在の方が多いだろう。男もそれは理解している。
自分勝手なのも重々承知しているが、この嫌悪感は理屈ではないのだ。
「だんまりだってさ!」
「おお、しずかしずか」
二匹には目の前から消えてもらうことにした。無視を決め込もうとしたが仕方ない。
待ちぼうけを食わされていることもあり、男は少々虫の居所が悪かった。
男はその場で、どんっ、と足を踏みならした。所詮はゆっくり、恐がって逃げると思ったのだ。
しかしその考えは甘かった。
「どんっ! だってさ!」
「おお、びっくりびっくり」
一瞬ビクッとしたものの、その場から動くことはせず、相変わらずニヤニヤしている。
ひょっとしたら恐くて足がすくんでいるのかもしれないが――その言葉と表情からはまったく読みとれない。
読みとれないので、男はとりあえず石を投げてみることにした。足もとの小石を拾い、下手投げで二匹の前に軽く放る。
二匹はやはり体をビクッとさせつつ、
「いしをなげたよ!」
「おお、こわいこわい」
なおも笑っている。
面倒なので当ててやろう。男は小石を二個、立て続けに投げた。今度は上からだ。――見事命中。
「ゆっくりいたいよ!」
「ゆっくりやめてね!」
言葉に反して、その表情と口調はあくまで不敵だ。挑発的とも言える。
あたかも「にやにやにや、いたいよにんげんさ~ん」、「やめてよ~う、へらへらへら」と、男をあざ笑っているかのようだ。
いや、あざ笑っているのだ。そうに違いない。
勝手に確信した男はさらに小石を見舞った。幸い砂利道なので、小石には事欠かない。
鷲掴みにした小石を何度も何度もぶつけると、やがて二匹は、
「やめでねっ! いだいよっ! ゆっぐりでぎないよっ!」
「やめであげでねっ! れいぶがいだがっでるよっ! まりざもいだいよっ!」
苦しそうに――とはとても言いがたい、涙こそ流しているが、むしろ楽しそうな声で呻きはじめた。
「れんぞぐでなげでぐるよ!!」
「おお、いだいいだい!」
いつの間にか、れいむの右目は潰れ、まりさの口からは餡子が漏れだしている。
それを確認して、男は手を止めた。二匹がこれからどんな反応を示すのか見てみたかったのだ。
すると二匹は、
「ゆっぐりざぜでね! れいぶをゆっぐりざぜでね!」
「ゆっぐりざぜでね! まりざをゆっぐりざぜでね!」
と、怪我のためか幾分ぎこちない足取りで男に近づいてきた。
傷ついていようが死にかけていようが、あくまでも笑顔だ。
「ゆっぐり! ゆっぐり!」
「ゆっぐり! ゆっぐり!」
文字どおりゆっくりと近づいてくる。男は「ゾンビー」という言葉を思い出した。
薮の中に逃げ帰ればいいのに、なぜそうしないのか。
ひょっとしたら命乞いのつもりなのかも知れない。下手に逃げるより、助けてもらった方が賢明だと思っているのだろうか。
今のゆっくりなら、さしずめ「ごべんだざい! ゆるじでぐだざい!」とでも言うだろう。――もっとも、これも鳴き声なのだが。
二匹はついに男の足元にまで来た。
「あいさつしたけっかがこれだよ!」
「ごらんのありさまだよ!」
ところどころ表皮が破れ、また黒ずんでいる二匹の、その「ぜんぜんきいていないよ! ばーかばーか!」とでも言わんばかりの表情と口調に、男の体が反射的に動いた。
まず、れいむを蹴った。
「おそらをとんでいるみたい!」という楽しそうな声を発しながら、れいむは薮の中に消えた。
続いて「ゆゆうっ! れいぶうううう!!」と涙を流しながら笑っているまりさも、薮の中に蹴り込んだ。
その際、まりさが「おびょらおっ!」という意味不明な声を発したのは、これは男の爪先が口にめり込んでいたためだ。
「ふうっ!」
男は短く息を吐いた。
ここまでする気はなかったのだが、ついやりすぎてしまった。
あの手のゆっくりはどうにも駄目だ。
まだ腹の虫が納まらない。靴の先についた餡子を見て、さらに頭に血が上りそうになった。
友人がやってきたら、少し八つ当たりしてやろうか。約束に遅れているんだ。たまには多少強めに出ても構わないだろう。
男は自分にそう言い聞かせて、気を鎮めた。
現在のゆっくりは語彙も表情も豊富で、人間ともそれなりの会話ができる。
もっとも、相変わらず話の通じないことも多いし、その存在を含めて常識外れなのは変わらないのだが――。
しかし最初期の、この世に発生した直後のゆっくりは、それこそ「ゆっくりしていってね!」くらいしかまともに話すことができなかった。
表情もニヤニヤと人をバカにしたようなもので固定だ。
うれしい時はうれしそうに「ゆっくりー!」だし、苦しい時もうれしそうに「ゆっくりー!」だ。
たとえ死にそうな時でもそれは変わらない。うれしそうに「ゆっくりー!」と死んでいく。
同じ口調の同じ言葉でも、ゆっくりはゆっくりなりの独特の微妙なニュアンスを表現していた――らしい、としか人間には言えない。
ゆっくり以外の生物にはとうてい理解不能な感情表現だった。それは正しく「単なる鳴き声」だ。
そして、
「あくまでもむしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
その言動から察するに、男の目の前にいる二匹は初期と現在、その過渡期にあったゆっくりに近いと言える。
進化――などと男は言いたくなかったが――途中の矮小な餡子脳では、感情と表情の処理が追いつかなかったのだろう。
かろうじて「ゆっくり」以外の言葉を発するようにはなったものの、感情の表現はとても十分とは言えなかった。
相変わらず、どんな時でも笑みを浮かべている。
さらに決定的に語彙が足りないから始末に終えない。とにかく何を考えているのか、何を言いたいのかがわからないのだ。
例えば先ほどの「あくまでもむしだってさ!」を今のゆっくり風に訳すなら「れいむたちをむししないでえええええ!」なのかもしれない。
「おお、こわいこわい」は「ゆんやあ! まりさこわいんだぜえええええ!」なのかもしれない。
同じゆっくり相手ならまだしも、人間にこれを理解しろというのは無茶だろう。
なまじ増えた語彙は「単なる鳴き声」という概念を忘れさせ、ともすれば人間に「ひょっとしたら意思の疎通ができるのではないか?」という錯覚を抱かせた。
そう思って話しかけても、返ってくるのはもれなくニヤニヤヅラをともなった、何とも要領を得ない返答――。
これに腹を立てる人間は少なくなかった。いや、非常に多かった。
いわゆる『虐待お兄さん』なる存在が確認され始めたのがちょうどこの過渡期だったことからも、それはよくわかるだろう。
「ゲラゲラゲラ!」
「ゲラゲラゲラ!」
こいつら――。
なぜか大爆笑しているれいむとまりさを前に、男も今、腹を立てていた。
男もご多分に漏れず――特別『虐待お兄さん』というわけではなかったが――この種のゆっくりが大嫌いだった。
おそらく以前より嫌悪感は強くなっている。
それなりの会話が可能になっている今のゆっくりに馴染んでしまった分、その腹立たしくふてぶてしい態度が一層際だって見えるからだ。
単なる先祖帰りなのか、それとも単にバカにしているのか、その辺りの判断がつかない所も質が悪い。
確かに『ゲス』や『れいぱー』、『しんぐるまざー』など、真に害悪と呼べるゆっくりは現在の方が多いだろう。男もそれは理解している。
自分勝手なのも重々承知しているが、この嫌悪感は理屈ではないのだ。
「だんまりだってさ!」
「おお、しずかしずか」
二匹には目の前から消えてもらうことにした。無視を決め込もうとしたが仕方ない。
待ちぼうけを食わされていることもあり、男は少々虫の居所が悪かった。
男はその場で、どんっ、と足を踏みならした。所詮はゆっくり、恐がって逃げると思ったのだ。
しかしその考えは甘かった。
「どんっ! だってさ!」
「おお、びっくりびっくり」
一瞬ビクッとしたものの、その場から動くことはせず、相変わらずニヤニヤしている。
ひょっとしたら恐くて足がすくんでいるのかもしれないが――その言葉と表情からはまったく読みとれない。
読みとれないので、男はとりあえず石を投げてみることにした。足もとの小石を拾い、下手投げで二匹の前に軽く放る。
二匹はやはり体をビクッとさせつつ、
「いしをなげたよ!」
「おお、こわいこわい」
なおも笑っている。
面倒なので当ててやろう。男は小石を二個、立て続けに投げた。今度は上からだ。――見事命中。
「ゆっくりいたいよ!」
「ゆっくりやめてね!」
言葉に反して、その表情と口調はあくまで不敵だ。挑発的とも言える。
あたかも「にやにやにや、いたいよにんげんさ~ん」、「やめてよ~う、へらへらへら」と、男をあざ笑っているかのようだ。
いや、あざ笑っているのだ。そうに違いない。
勝手に確信した男はさらに小石を見舞った。幸い砂利道なので、小石には事欠かない。
鷲掴みにした小石を何度も何度もぶつけると、やがて二匹は、
「やめでねっ! いだいよっ! ゆっぐりでぎないよっ!」
「やめであげでねっ! れいぶがいだがっでるよっ! まりざもいだいよっ!」
苦しそうに――とはとても言いがたい、涙こそ流しているが、むしろ楽しそうな声で呻きはじめた。
「れんぞぐでなげでぐるよ!!」
「おお、いだいいだい!」
いつの間にか、れいむの右目は潰れ、まりさの口からは餡子が漏れだしている。
それを確認して、男は手を止めた。二匹がこれからどんな反応を示すのか見てみたかったのだ。
すると二匹は、
「ゆっぐりざぜでね! れいぶをゆっぐりざぜでね!」
「ゆっぐりざぜでね! まりざをゆっぐりざぜでね!」
と、怪我のためか幾分ぎこちない足取りで男に近づいてきた。
傷ついていようが死にかけていようが、あくまでも笑顔だ。
「ゆっぐり! ゆっぐり!」
「ゆっぐり! ゆっぐり!」
文字どおりゆっくりと近づいてくる。男は「ゾンビー」という言葉を思い出した。
薮の中に逃げ帰ればいいのに、なぜそうしないのか。
ひょっとしたら命乞いのつもりなのかも知れない。下手に逃げるより、助けてもらった方が賢明だと思っているのだろうか。
今のゆっくりなら、さしずめ「ごべんだざい! ゆるじでぐだざい!」とでも言うだろう。――もっとも、これも鳴き声なのだが。
二匹はついに男の足元にまで来た。
「あいさつしたけっかがこれだよ!」
「ごらんのありさまだよ!」
ところどころ表皮が破れ、また黒ずんでいる二匹の、その「ぜんぜんきいていないよ! ばーかばーか!」とでも言わんばかりの表情と口調に、男の体が反射的に動いた。
まず、れいむを蹴った。
「おそらをとんでいるみたい!」という楽しそうな声を発しながら、れいむは薮の中に消えた。
続いて「ゆゆうっ! れいぶうううう!!」と涙を流しながら笑っているまりさも、薮の中に蹴り込んだ。
その際、まりさが「おびょらおっ!」という意味不明な声を発したのは、これは男の爪先が口にめり込んでいたためだ。
「ふうっ!」
男は短く息を吐いた。
ここまでする気はなかったのだが、ついやりすぎてしまった。
あの手のゆっくりはどうにも駄目だ。
まだ腹の虫が納まらない。靴の先についた餡子を見て、さらに頭に血が上りそうになった。
友人がやってきたら、少し八つ当たりしてやろうか。約束に遅れているんだ。たまには多少強めに出ても構わないだろう。
男は自分にそう言い聞かせて、気を鎮めた。
薮の中から、またれいむとまりさが現れた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
先ほどの二匹と同じ表情、同じ口調。違うのは小綺麗になったその体くらいだ。
男は思わず、痛めつけた二匹が薮の中で風呂にでも入って、それからまた外に出てきたのかと錯覚しそうになった。
「ゆっくりしていってね! まりさはまりさだよ!」
「ゆっくりしていってね! れいむはれいむだよ!」
違うところがもう一つあった。声を発する順番だ。
先ほどとは逆に、最初にまりさ、次にれいむという順になっている。
「むしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
問答無用だ。
男はまりさに向かって石を投げた。石は、汚い帽子のつばに当たった。
つばの奥から、まりさはニヤけた視線を男に送っている。
「もんどうむようだってさ!」
「おお、やばんやばん」
れいむに石を投げると、これは眉間のあたりに直撃した。
れいむの体が後ろにのけぞる。
「のうてんちょくげきだね!」
「おお、いだいいだい」
とても痛がっているとは思えない口調と表情だ。
キリッとつり上がった眉毛に、不敵な笑みをたたえた口元。
今まさに危険が迫っているというのに、なんでこうも自信に満ち満ちているのだろうか。
これが潰れた饅頭生首でなかったら、むしろかっこいいとさえ言えるかも知れない。
何となくムカついたので、男は先ほどと同じく石つぶての雨をお見舞いしてやる。
「いだいっ! いだいよっ!」
「ゆっぐりでぎないっ! ゆっぐりでぎないよっ!」
二匹は涙を流しながら笑って――すでに爆笑に近い声をあげている。
近づいてきたら今度も蹴飛ばしてやろうと思っていたのだが、二匹は自分から薮の中に戻っていった。
その際も、
「とんだにんげんさんだね! ゲラゲラゲラ!」
「ゆっくりできないね! ゲラゲラゲラ!」
神経に障る捨て台詞を忘れない。
語彙と表情が致命的なまでに欠落しているだけで、必ずしも悪意を持っているわけではないとはわかっている。
それでも、腹の底がどんどん熱くなっていくのを、男は感じていた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
先ほどの二匹と同じ表情、同じ口調。違うのは小綺麗になったその体くらいだ。
男は思わず、痛めつけた二匹が薮の中で風呂にでも入って、それからまた外に出てきたのかと錯覚しそうになった。
「ゆっくりしていってね! まりさはまりさだよ!」
「ゆっくりしていってね! れいむはれいむだよ!」
違うところがもう一つあった。声を発する順番だ。
先ほどとは逆に、最初にまりさ、次にれいむという順になっている。
「むしだってさ!」
「おお、こわいこわい」
問答無用だ。
男はまりさに向かって石を投げた。石は、汚い帽子のつばに当たった。
つばの奥から、まりさはニヤけた視線を男に送っている。
「もんどうむようだってさ!」
「おお、やばんやばん」
れいむに石を投げると、これは眉間のあたりに直撃した。
れいむの体が後ろにのけぞる。
「のうてんちょくげきだね!」
「おお、いだいいだい」
とても痛がっているとは思えない口調と表情だ。
キリッとつり上がった眉毛に、不敵な笑みをたたえた口元。
今まさに危険が迫っているというのに、なんでこうも自信に満ち満ちているのだろうか。
これが潰れた饅頭生首でなかったら、むしろかっこいいとさえ言えるかも知れない。
何となくムカついたので、男は先ほどと同じく石つぶての雨をお見舞いしてやる。
「いだいっ! いだいよっ!」
「ゆっぐりでぎないっ! ゆっぐりでぎないよっ!」
二匹は涙を流しながら笑って――すでに爆笑に近い声をあげている。
近づいてきたら今度も蹴飛ばしてやろうと思っていたのだが、二匹は自分から薮の中に戻っていった。
その際も、
「とんだにんげんさんだね! ゲラゲラゲラ!」
「ゆっくりできないね! ゲラゲラゲラ!」
神経に障る捨て台詞を忘れない。
語彙と表情が致命的なまでに欠落しているだけで、必ずしも悪意を持っているわけではないとはわかっている。
それでも、腹の底がどんどん熱くなっていくのを、男は感じていた。
予感はあった。
薮の中から、三度れいむとまりさが姿を現した。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
また鳴き声の順番が変わっているが、そんなことはどうでもよかった。
「ゆっくり――」
鳴き終わる前に男はれいむに近づき、おもむろに踏みつけた。
「じでびゅっ!?」
れいむの目から口から、あにゃるから吹き出す餡子で、男のズボンや靴が汚れたが、それすら気にならなかった。
「もっどゆっぐり」
その断末魔を遮るように、男は二度三度とれいむを踏み続ける。
目が潰れ、揉み上げがちぎれ、赤いリボンは頭皮と髪の毛ごと地面に落ちる。
「れいぶううううううう!?」
まりさの楽しそうな絶叫が響く中、れいむは静かになった。
男は餡子まみれの足をれいむから上げ、まりさを見た。
まりさはニヤニヤしながら男を見上げ、涙を流している。
人を小馬鹿にしたような、それでいて媚びているような笑みだ。
「ぎゃくさつだってさ!」
男はまりさの帽子をつまみ上げた。
「おぼうしさんっ!? ゆっくりできないっ!」
帽子を追うように飛び跳ねるまりさの横っ面を思いきり蹴った。サッカーで言うボレーシュートの格好だ。
「おそらをとんでいるみたい!」
低い軌道で宙を舞ったまりさは、顔面から地面に激突し、そのまま砂利道を滑った。
男はまりさに近づく。帽子はすでに薮の中に放った。
うつ伏せになっているまりさを足で蹴り起こしてやる。
まりさの顔面はところどころ破れ、餡子がこぼれ出している。砂利に激しくこすられたのだ。無理もない。
「ゆっぐりじでいっでね!」
それでもなお笑っているまりさの顔面を、男は一息で踏み抜いた。
断末魔の定型句は聞こえなかった。口が潰れているからだ。
その代わりとばかりに、まりさは尻を二度三度振って、そして動かなくなった。
少し気が晴れて、ふう、と息を吐いた男に、
「よう、兄ちゃん、やってんなあ!」
見知らぬ中年男が声をかけてきた。
男は愛想笑いを浮かべた。
野良ゆっくりを潰す人間など、この辺では珍しくもないが、ムキになったところを見られて決まりが悪くなったのだ。
「その薮の中、ゆっくりの野郎がいっぱい住み着いちゃってなあ」
中年男は苦虫を噛み潰したような顔で言い、「希少種ならまだしも」と付け加えた。
「そのうち加工所に連絡しようと思ってたトコなんだよ――ほら、あそこにもいた」
中年男が指差す方を見ると、四組目のれいむとまりさがいた。
男は早足でゆっくりに近づき、勢いそのまま、二匹を薮の中に蹴り込んだ。
「おそらをとんでいるみたい!」
「おそらをとんでいるみたい!」
そして自分自身も薮の中に飛び込む。
ズボンや靴だけでなく、上着や顔も餡子まみれになってしまうだろうが、もうどうでもいい。
友人との待ち合わせも関係ない。
「兄ちゃん! 終わる頃になったら加工所に後始末頼んでやっからよ!」
背後から聞こえる楽しそうな中年男の声に、男は一言、
「ヒャッハー!」
とだけ応えた。
薮の中から、三度れいむとまりさが姿を現した。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
また鳴き声の順番が変わっているが、そんなことはどうでもよかった。
「ゆっくり――」
鳴き終わる前に男はれいむに近づき、おもむろに踏みつけた。
「じでびゅっ!?」
れいむの目から口から、あにゃるから吹き出す餡子で、男のズボンや靴が汚れたが、それすら気にならなかった。
「もっどゆっぐり」
その断末魔を遮るように、男は二度三度とれいむを踏み続ける。
目が潰れ、揉み上げがちぎれ、赤いリボンは頭皮と髪の毛ごと地面に落ちる。
「れいぶううううううう!?」
まりさの楽しそうな絶叫が響く中、れいむは静かになった。
男は餡子まみれの足をれいむから上げ、まりさを見た。
まりさはニヤニヤしながら男を見上げ、涙を流している。
人を小馬鹿にしたような、それでいて媚びているような笑みだ。
「ぎゃくさつだってさ!」
男はまりさの帽子をつまみ上げた。
「おぼうしさんっ!? ゆっくりできないっ!」
帽子を追うように飛び跳ねるまりさの横っ面を思いきり蹴った。サッカーで言うボレーシュートの格好だ。
「おそらをとんでいるみたい!」
低い軌道で宙を舞ったまりさは、顔面から地面に激突し、そのまま砂利道を滑った。
男はまりさに近づく。帽子はすでに薮の中に放った。
うつ伏せになっているまりさを足で蹴り起こしてやる。
まりさの顔面はところどころ破れ、餡子がこぼれ出している。砂利に激しくこすられたのだ。無理もない。
「ゆっぐりじでいっでね!」
それでもなお笑っているまりさの顔面を、男は一息で踏み抜いた。
断末魔の定型句は聞こえなかった。口が潰れているからだ。
その代わりとばかりに、まりさは尻を二度三度振って、そして動かなくなった。
少し気が晴れて、ふう、と息を吐いた男に、
「よう、兄ちゃん、やってんなあ!」
見知らぬ中年男が声をかけてきた。
男は愛想笑いを浮かべた。
野良ゆっくりを潰す人間など、この辺では珍しくもないが、ムキになったところを見られて決まりが悪くなったのだ。
「その薮の中、ゆっくりの野郎がいっぱい住み着いちゃってなあ」
中年男は苦虫を噛み潰したような顔で言い、「希少種ならまだしも」と付け加えた。
「そのうち加工所に連絡しようと思ってたトコなんだよ――ほら、あそこにもいた」
中年男が指差す方を見ると、四組目のれいむとまりさがいた。
男は早足でゆっくりに近づき、勢いそのまま、二匹を薮の中に蹴り込んだ。
「おそらをとんでいるみたい!」
「おそらをとんでいるみたい!」
そして自分自身も薮の中に飛び込む。
ズボンや靴だけでなく、上着や顔も餡子まみれになってしまうだろうが、もうどうでもいい。
友人との待ち合わせも関係ない。
「兄ちゃん! 終わる頃になったら加工所に後始末頼んでやっからよ!」
背後から聞こえる楽しそうな中年男の声に、男は一言、
「ヒャッハー!」
とだけ応えた。
(了)
今回から「藪あき」を名乗らせていただきます。
コンゴトモヨロシク……
コンゴトモヨロシク……
以前書いたもの……
ふたば系ゆっくりいじめ 525 犬
ふたば系ゆっくりいじめ 532 川原の一家
ふたば系ゆっくりいじめ 554 ゴキブリ(前編)
ふたば系ゆっくりいじめ 555 ゴキブリ(後編)
ふたば系ゆっくりいじめ 569 ねとられいむ
ふたば系ゆっくりいじめ 622 格子越しの情景
ふたば系ゆっくりいじめ 654 奇跡の朝に
ふたば系ゆっくりいじめ 715 下拵え
ふたば系ゆっくりいじめ 729 ある日の公園で ~the Marisas and men~
ふたば系ゆっくりいじめ 740 彼女はそこにいた
ふたば系ゆっくりいじめ 759 Eyes
ふたば系ゆっくりいじめ 780 そして扉は閉ざされた
ふたば系ゆっくりいじめ 525 犬
ふたば系ゆっくりいじめ 532 川原の一家
ふたば系ゆっくりいじめ 554 ゴキブリ(前編)
ふたば系ゆっくりいじめ 555 ゴキブリ(後編)
ふたば系ゆっくりいじめ 569 ねとられいむ
ふたば系ゆっくりいじめ 622 格子越しの情景
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ふたば系ゆっくりいじめ 780 そして扉は閉ざされた
挿絵:車田あき