ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1025 泡と餡子の雅な出会い
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ankoss
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『泡と餡子の雅な出会い』
小ネタ・ゲス・制裁・調理・家族崩壊・妊娠・うんしー
「ゆぅ……おそとにいきたいのじぇ」
「れいみゅもおしょとでちゃい! どぼちておしょとにでれにゃいのぉ!?」
「ごめんねおちびちゃん。おかあさんもおそとにでたことがないんだよ」
豆電球の明かり一つで照らされた薄暗い籠の中で、ゆっくり家族が過ごしていた。
窓一つないその部屋からは、外の様子は窺い知れない。
「まりしゃ、もりにかえりたいのじぇ! いっぱいともだちをつくってゆっくりしたいんだじぇ! ちょうちょさんをむーちゃむーちゃしたいんだじぇ!」
「きゃわいいれいみゅたちをゆっくちさしぇるのがおやのちゅとめでしょおおおおっ!? しょんなこちょもわきゃりゃないの? ばきゃなの? ちぬの?」
「ゆうぅ……ごめんね! ごめんねおちびちゃんたち!」
「おちびたち、れいむおかあさんをこまらせちゃだめなんだぜ。みんなもりにかえりたいんだぜ」
このゆっくり一家、森に帰りたいと盛んに主張しているが、この部屋、この籠で生まれ育ったゆっくりなので、森に行ったことなどない。
全ては餡子の記憶に刻まれた、先祖の思い出なのである。
「おきゃーしゃん、ありちゅももりへきゃえりちゃいよぉ……ゆっぐ、ゆええ……っ!」
「ごめんね! ごめんねおちびちゃんたち! いつかとかいはなおうちにかえりましょうね!」
「ゆああああん……っ!」
「もうやじゃあっ! おうちかえりゅううううううっ!」
部屋の中を、悲しげな鳴き声が交差する。
棚にずらりと並べられた籠には、それぞれゆっくり家族が詰め込まれているのだ。
「いやじゃ! もりへかえるんだじぇ! こどもをゆっくちさせられないむのーなおやなんてちんじゃえ! ゆっくちちね!」
「ちねちねー!」
年が若ければ、本能に衝き動かされるのもまた早い。
子まりさも赤れいむも、生まれてこのかたゆっくりが真にゆっくりする為に必要なものが圧倒的に足りなかった。
お日様のぽーかぽーか、枯葉さんや乾し草さんを敷き詰めたおうちのふーわふーわ、虫や草花を狩って楽しむむーしゃむーしゃ。
そういったものの一切を享受できておらず、もはや我慢の限界であった。
「ゆああああん! おちびちゃんたちがふりょうになっちゃったよおおおっ!」
「ちがうんだぜ! わるいのはまりさたちをとじこめてるにんげんなんだぜ!」
「にんげんなんてゆっくちのどれいなのじぇ! どれいにいうこともきかせられないゆっくちなんて、むのうなゲスなんだじぇ!」
「れいみゅおこっちぇるんだよ!? ぷきゅうううううっ!!」
親ゆっくりたちの釈明など、少しもゆっくりできていない子ゆっくりにしてみれば何のいい訳にもならない。
ゆっくりにはゆっくりする事が何よりも重要であり、それを子ゆっくりに提供できない親ゆっくりに、親ゆたる資格は無いのだ。
ドアが開いた。
部屋に人間が入ってくる。
「ゆゆっ! にんげんがきちゃよ、おねーちゃん!」
「じじい! まりしゃをここからだすのじぇ! まりしゃのいうことをきかないと、いたいめにあわせるんだじぇ!?」
「ゆううっ! だめだよおちびちゃんたち! にんげんさんにそんなこといったらおしおきされちゃうんだよ! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」
毎日、餌やりと水の交換、籠の掃除にと定期的にやってきて、黙々と作業する人間。
子まりさも赤れいむも、そんな人間を奴隷だと思っている。
親ゆっくりたちも、かつてはそう思っていた。
「ゆっ?」
いつも入ってくる人間は一人だ。
しかし、今日はその人間の後に、ぞろぞろと入ってくる。
一人、二人、三人、いっぱい。
子ゆっくりたちのゆん生において、数え切れないほどの人間がこの部屋に入ってくるのは初めてだ。
親ゆっくりたちには、二度目の経験となる。
「ゆっゆっ! どれいがいっぱいきちゃよ! これでおそとにでりゃれるね!」
「まりしゃのいうことをきいたんだじぇ! やっぱりにんげんはどれいなんだじぇ!」
「しゅごいよ! さしゅがれーみゅのおねーちゃんだよ!」
勘違いした子ゆっくりたちがやいのやいのと騒ぐ中、親ゆっくりたちは戸惑い、かつ怯えていた。
自分たちの親と別れたのは−−−前に人間がいっぱい来た時ではなかったか?
「ゆうううっ!? ゆっくりやめてねっ! はなしてねぇっ!」
「ありすをはなすんだぜっ! ゆびぃっ!?」
向こうの棚から、ゆっくりありすが人間によって籠から引き出される。
それを阻もうとしたゆっくりまりさが容赦なく殴りつけられ、籠の端にぶつかって鳴く。
「ばでぃざああああっ! ごんなのどがいはじゃないいいっ!」
「おきゃあしゃああああん! ゆっくちしちぇえええっ!」
「ゆっゆっ! おきゃーしゃんをたしゅけるんだじぇ!」
「やべでよぉっ! おがあざんづれでがないでぇっ! ゆんやあああああっ!」
追い縋ろうとする子ありす、子まりさたちを、人間は傷つけないようにやんわりと押しのけ、奥で餡子を吐きながら呻いているまりさのおさげを乱暴に掴み、外へと引き摺り出す。
「ゆぎいいいいっ! いだいんだぜっ! おさげさんがぁっ! がわさんやぶげぢゃうっ!?」
引き摺られてボロボロになったまりさが、番のありすを追うようにして「回収BOX」と名付けられた大きな箱に投げ込まれる。
「ゆべぇっ!」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……!」
底の深い箱へと真っ先に投げ込まれ、底面に叩きつけられたありすとまりさは白目を剥きながら悶絶していた。
そんな光景を見て、親まりさははっきりと思いだした。
自分たちの親も、こうして籠から引き摺りだされて、二度と戻ってこなかったのだと。
「ゆひいいいいいっ! いやなんだぜっ! おそとにいきたくないんだぜぇっ!」
「おちびちゃんたちとはなれたくないよぉっ! れいむはここにいないよ! ゆっくりさがさないでね! あっちにいってねぇっ!」
親まりさと親れいむはもちもちの肌を真っ青にして、籠の奥へと逃げ込んだ。
隅っこで固まり、ガタガタと震えている。
「どれいをこわがるなんて、ほんとうにむのうなおやなんだじぇ!」
「こんなだめなおやきゃらうまれちゃなんて、れーみゅはじゅかちいんだよっ!? ゆっくりはんせいしちぇね! ぷきゅううううっ!」
子ゆっくりたちは知らない。
人間にぶたれた事がないのだから。
親が連れ去られてから、一転して虐待されるというのに。
子ゆっくりたちは知らないのだ。
「おちびちゃんたち、にんげんからはなれてね! にんげんはゆっくりできないよ!」
「はやくにげるんだぜ! おかあさんたちのおくちのなかにかくれるんだぜ!」
叫びながら、親まりさは舌をベロンと伸ばした。
その先にいる子まりさと、赤れいむをお口の中に避難させる為に。
しかし。
「ゆっ! おくびょうなだめゆっくちのいうことなんかきかないんだぜ!」
「しょーだしょーだ! れーみゅたちはもうおとなにゃんだよっ!」
「おちびちゃああああんっ! まりさのいうことをきいてねえええっ!」
積み重なったストレスに耐えきれなくなった子ゆっくりたちは、もはやその捌け口を親に求めるしかないのだ。
親たちが何を言っても、何をしようとも、子ゆっくりのストレスを加速させるばかりだった。
「ばかなゆっくちは、いちゃいめをみにゃいとわきゃらないんだね!」
「こんなきたないしたなんて、こうしてやるんだじぇ! ゆううっ!」
遂に子まりさは、親まりさの舌に噛みついた。
「いひゃいいいいいっ!?」
たまらず舌を引っ込める親まりさ。
「まりさああああっ! ゆっくりしてぇっ! ぺーろぺーろ!」
親まりさの腫れた舌先を、親れいむがぺーろぺーろして癒そうとする。
「まりしゃたちはもういちにんまえのゆっくりなんだじぇ! ばかでむのうなおやはいらないのじぇ!」
「ぷー☆くしゅくしゅ! おやなんていらにゃいよ! ゆっくちりきゃいできたら、ゆっくちちんでね!」
勝ち誇る子ゆっくりたちの後ろでは、人間たちが次々と成体ゆっくりを掴まえ、箱に投げ込んでいく。
「ゆっぐりいだいよっ! おりでねっ! れいむのうえがらおりでねぇっ!」
「ゆぎぎ……っ! づぶれるぅ……あんごさんがもれぢゃうっ!」
「ゆびいいいいっ! おそらとんでるみたいぎゅべっ!?」
「ゆべぇっ! ぐるじいんだぜっ! いだいんだぜぇっ!」
放り込まれるゆっくりの事など労わる風もなく、人間達は次々と無造作に箱の中へとゆっくりを放り込んでいく。
「いやじゃああああっ! おきゃあしゃあああんっ!」
「わからないよぉおおおっ! ちぇんをおいてかないでえええっ!」
「だめなおやはゆっくちちね! ちんじゃえ!」
「おじしゃん、ありちゅをゆっくちさせられにゃいゲスをしぇーさいしてね! ゆっくちさせにゃいでね!」
籠から、親と引き離されて泣き喚く子ゆっくり、親を見捨ててせせら笑う子ゆっくりと、二種類の反応が混ざり合って雑然とした騒ぎとなっていた。
そして遂に、親まりさたちの籠に人間の手が伸びてきた。
「にんげんさん、おねがいでずがらここでゆっぐりざせでぐだざいっ! おねがいじばす!」
「おちびたちにはまだおやがひつようなんだぜ! ちゃんとこそだてさせてほしいんだぜ!」
「にゃにいっちぇるの? おまえにゃんかもうおやじゃにゃいよ! ゆっくちでてけ!」
「れいみゅのいうとおりなんだじぇ! じじい! こいつらをさっさとつれてくんだじぇ! これはめいれいだじぇ!」
「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおっ!?」」
大いに騒ぐゆっくりとは違って、人間は黙々と親ゆっくり二匹へと手を伸ばす。
掴み上げ、引き摺り出す。
「ゆんやあああああっ! はなじでねっ! ゆっぐりさせでえっ!?」
「いやなんだぜぇっ! まりさはっ! まりさはここでゆっぐりじだいのぜっ!」
親まりさと親れいむは泣き喚きながら足掻く。
絶望的な体格差では、空しい抵抗だ。
煩わしいと思ったか、人間の握力が俄に強まる。
「ゆぎいいいいっ! やべでぇっ! つぶれぢゃううううっ!」
「ゆぎゅえっ!? ゆるじでっ! ゆるじでぐだざいっ! ごべんなざいっ! ばでぃざがわるがっだでずっ!」
「でいぶまだじにだぐないっ! にんげんざんごべんなざいゆるじでぐだざいいいいっ!」
子を宿すより前、激しく虐待された恐怖が餡子の芯にまで染み付いている親ゆっくりたちは、人間が暴力性を剥き出しにしただけで心を折られてしまう。
おそろしーしーまで漏らしながら、親ゆっくりたちは人間に平謝りを続けた。
従順になったのを確認した人間が、親まりさと親れいむをあっさり籠から引っ張り出す。
「ゆっぐ、えぐ……れいむ、なんにもわるいことしてないのにぃ……っ!」
「おちびたち……まりさがいなくてもゆっくりするんだぜ……っ!」
涙しながら子ゆっくりとの別れを惜しむ親ゆっくりに対して、
「おとなのくせにちーちーなんかもらしてるんだじぇ! おーぶざまぶざま!」
「おもらちなんかしゅるはずかちーおやがいなくなって、しぇーしぇーしゅるね!」
清々したとばかりに悪態をもってそれを見送る子ゆっくり。
それはいつか見た光景。
親まりさと親れいむが、自分達の親ゆっくりをそうして送り出したように。
この二匹が最後の回収であり、箱に山と積まれたゆっくりたちの、一番上に乗せられた。
成体ゆっくりの回収を終えた人間達が、箱を押しながらぞろぞろと部屋を出て行く。
子ゆっくりから引き離されていく事を改めて感じた箱の中のゆっくりたちが、口々に泣き叫ぶ。
が、中には人間に媚びて飼われようと足掻くゆっくりもいた。
「に、にんげんさん! ありすはこーでぃねーとがとくいなのよ! にんげんさんのおうちもとかいはにしてあげるから、ありすをかってね!?」
「かりがうまいまりさは、にんげんさんのごはんもとってくるんだぜ!」
「むきゅ、ぱちぇはごほんをよめるのよ。ごほんをよんであげられるわ」
「れいむおうたがうたえるよ! おうたでにんげんさんをゆっくりさせるよ! ゆ~ゆゆ~♪ れいむは~ゆっくり~して~る~♪」
ゆっくりたちの哀願も、れいむのおうたも、人間たちは聞いていない。
ゆっくりの言葉など、風音程度の扱いでしかないのだ。
やがて、箱とゆっくりと人間達の向かっていく先から、甘ったるい匂いが漂ってくるようになる。
変に甘ったるい、薬品のような匂い。
生まれて初めて嗅ぐそんな匂いに、ゆっくりたちは気持ち悪さを覚えて怯える。
あまあまが大好きなゆっくりであるにもかかわらずに。
この匂いは、なんだかゆっくりできない。
そう感じ取っているのである。
箱が止まる。
目的の部屋に着いたのだ。
「……ゆ?」
親まりさが恐る恐る脇を見ると、先にこの部屋に連れて来られたらしい同じような箱詰めのゆっくりたちが、狭い苦しいと苦悶の声を上げていた。
「ゆっくりしていってね!」
初めて会うゆっくりに挨拶しようと、親まりさが声を上げたその時。
声を掛けた先であった箱が前へと傾けられ、中のゆっくりたちが一斉に前の坂へと落とされていく。
坂の下には、赤茶色のお水さんが満たされており−−−−
「ゆぎゃあああっ! ごぼがぼっ!」
「おみずさんゆっぐりじでええええっ! ごぼぼっ! がぼばぁっ!」
「あんよがどげぢゃううううっ! いやじゃあっ! でいぶまだじにだぎゅぼぼぼごぼっ」
「ゆひいいいいっ! あわさんがぁっ! あわさんいじわるじないでぇっ!」
ごぼごぼと沸き立つように泡を噴き上げた水面が、ゆっくりたちを捕らえ、浸し、溶かしていく様が、まりさから一望できた。
「ゆああ……あ、ああ……ゆっぐり、ゆっぐりぃ……っ!」
「ごわいよぉ……っ! まりさぁ、れいむまだじにたくないよぉ……ゆええええ……っ!」
地獄のような光景に、ただ圧倒されるばかりの親まりさ。
怯えきって、ひたすら番のまりさに縋りつく親れいむ。
「なにぃっ!? なんなのぉっ!?」
「ゆっくりしてないなきごえがいっぱいだよぉっ! ゆっぐりでぎないよぉっ!」
「もうやだっ! おうちかえるうううううっ!」
二匹の下に詰め込まれている他のゆっくりたちは、何が起こっているかもわからずに悲鳴を上げるばかりだ。
親まりさと、人間の目が合った。
「にんげんさん……」
何かが吹っ切れたように、親まりさは人間に語りかけた。
「おねがいだよ。まりさのおちびたちを……ゆっくりさせてあげてね」
次の瞬間、箱が跳ね上げられた。
「やじゃあああっ! だじゅげでええええええっ!」
ひたすら泣き喚く親れいむ。
親まりさは人間に我が子を託し、悟りきったような顔で坂を転がり落ちていった。
人間達は、勿論ゆっくりの願いなど聞き取りすらしないというのに。
「ぎゅ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛っ゛!!??」
餡子と皮だけのナマモノが、そう簡単に忘我の境地に至れる筈もなかった。
親まりさは、己が身を灼くかのように荒ぶる炭酸水の気泡によって現実へと引き戻された。
泡がもち肌を撫でる度に、餡子が焼き切れるかのような激痛が走る。
それが親まりさの息絶えるまで、途絶える事なく続くのだ。
「ゆっゆっ! まりさはかわにうかべるんだぜ! これでにげるんだぜぇっ!」
一匹のゆっくりまりさが、咄嗟にお帽子を逆さにして着水、水面に浮かんで難を逃れていた。
どこに仕舞っていたのか木のオールまで取り出して、それをもって漕ぎ出そうとしている。
しかし、工場の水槽からどこへ逃げようというのか?
「ゆぎぎぎっ! ばでぃざものぜでえええええっ!」
親まりさは、水上まりさのお帽子のつばに噛り付いた。
「ゆゆっ!? はなすんだぜ! これはまりささまのおぼうしなんだぜ!」
驚いた水上まりさが、木のオールで何度も親まりさを叩く。
「ゆぎぃっ!? やべでるんだぜっ! ばでぃざもじにだぐないんだぜぇっ!」
「まりさがのってきたら、おぼうしがしずむんだぜ! そんなこともわからないゲスはゆっぐりじねぇっ!」
「ばでぃざああああっ! ありずもだずげでねえええええっ!」
「わがるよぉおおおっ! ぢぇんもだずがりだいよおおおっ!」
まだ生き残っている水中のゆっくりたちが、次々と水上まりさのお帽子のつばに噛り付く。
皆、生き延びようと必死だった。
結果。
「いやなんだぜえええええっ! もっどゆっぐりじだいんだぜええごぼがばばごばっ」
お帽子と水上まりさごと、ゆっくりたちの塊は水中へと沈んでいった。
(いだいいだいだいいいだいいだいいいいいいっ! どぼじでぇっ!? どぼじでごんなごどにぃいいいいいいっ!!!???)
親まりさは気絶する事すら許されずに、その身が溶けきるまで痛みと苦しみで苛まれ続けるのだ。
「という経緯から、これが生まれたんだよ。そうに違いないよ」
休日のとある公園。
お空から舞い降りてきた落ち葉が散らばったり吹き溜ったりと、寒々しい雰囲気を醸し出している。
そうした中で、二人の男がベンチに腰掛けて駄弁っていた。
「つまらねぇ都市伝説だなぁ、おい」
聞き手に回っていた男が、目の前につきつけられた小豆色の炭酸飲料を面倒臭そうに見ながら、投げ遣りに返す。
MJとかMCハマーが飲んだら元気になる方、社長に招いたスカリー捜査官を「このまま一生砂糖水売ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」とカリスマオヤジに横から引き抜かれた方のヤツだ。
カリスマオヤジからあんま酷い事を言われたせいか、最近は砂糖が入ってなかったり、発作的に胡瓜とか紫蘇とかぶちこんだり、毒々しい原色に染め上げてくるようになった。
そしてもって、この秋はAzukiである。
ミスマッチという、これまた遠い昔に流行った前世紀の遺物を想起させるような、よく分からない組み合わせだった。
「頭の良い奴らの考える事は、よく分からんな」
「おう、もっと褒めてくれていいぞ!」
「いや、お前の事じゃないから」
もしかしてゆっくりが原料だったりして、などと同じ発想をちょっとでも思い浮かべてしまった事を、男は何とも言えない気分で飲み下した。
「仮にそうだったとしたら、こいつは激甘になってる筈だが、もう飲んだのか?」
「いんや、まだ飲んでねぇよ」
「じゃあ飲んでみろよ」
「それもそうだな!」
男に煽られた相方が、キャップを外して景気よくペットボトルをぐびり呷る。
「どうよ、甘いか?」
「いやぁ……ちょっと、薄いわ、これ。つか、匂いきっつ! ゆっくりできえねよ!」
「ま、そんなもんだよ」
「なんだよ、夢がない奴だなぁ」
「何言ってんだ。ゆっくりなんてナマモノがゴロゴロしてるだけで、夢があるってもんだろ」
「そりゃ、なぁ。こいつらのおかげで、明日からもまたひと仕事頑張れるってもんだぜ」
かくいう男たちの足元には、
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ」
「ばでぃざぁ……ごぼっ、ゆっぐりっ、ゆっぐりぃ……っ!」
「も゛っぢょ……ゆ゛っぎゅぢ……がぼっ」
お飾りを破られ、もみあげもおさげも千切られ、ボコボコに殴打された死に掛けのゆっくり親子が転がっていた。
自分たちの垂れ流したしーしーとうんうん、吐き散らかした餡子の海に溺れながら、もはやお迎えを待つばかりだ。
そう、男たちは鬼意山、公園は街の野良ゆたちの溜まり場なのである。
「あと何匹か、遊んでやろうぜ」
「流石にもう逃げてんじゃね? こいつら、デカイ声で泣き喚いたしさぁ」
「なぁに、逃げやしないさ。こいつらが自分で“おうち”を捨てたりなんかできねえよ」
皮肉たっぷりに口元を歪めた男は、立ち上がるやいなや、ベンチ裏の茂みの中から不自然に飛び出している段ボール箱を軽く蹴っ飛ばした。
「おうコラ、出てこいやコラァ!」
「ゆひっ!? れ、れれれれいむはここにいないよ! こないでね! あっちいってね!」
「きょわいよぉ……ゆっぐ、ゆえええん……っ!」
「……マジかよ。すぐ後ろでヒャッハーしてたってのに!」
「ゆっくりしてるやつらだよなぁ」
「おお、ゆっくりゆっくり(笑)」
「よっしゃ、持ち上げんぞー!」
男と相方が、段ボール箱の両端を持ってベンチ前まで引き摺りだし、横倒しにする。
転がり出てきたのは、ゆっくりれいむの親子二匹。
「ゆぴぃっ! ゆっぐりいぢゃいっ!」
「や、やめてね……? れいむはかわいそうなしんぐるまざーなんだよ……? ゆっくり、させてね……?」
「ああ、いいとも」
「一緒にゆっくりしようぜ」
男たちは、満面の笑顔でゆっくり母子家庭に応えた。
「「ヒャッハー!! 虐待だぁッ!!!!」」
季節は秋。
この時期特有の高いお空に、ゆっくりたちの高らかな喚声が木霊する。
「ゆびゃあああああっ! やべちぇえええええっ!」
「いぢゃいのやぢゃああああっ! ゆっびいいいいいっ!」
豆電球の明かり一つで照らされた、薄暗い籠の中。
「ゆぎぃっ! だぢゅげでえぇ! おがーぢゃああんんっ! ぶびぃっ! ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!」
「どぼじでぇっ!? おぎゃーじゃああんっ! ゆぎゃっ! ぎゃわいいでいびゅをだじゅげでよおおおっ!」
独り立ちしたばかりの若い、ようやく大人になりかけたばかりでしかないまりさとれいむが声も嗄れよと泣き喚く。
黒光りするゴム製の棒っこで何度もぶたれて、頬も目蓋もぷっくりと腫れ上がっている。
「ごべんなぢゃいっ! まりぢゃがわるがっだのじぇっ!あやまりまじゅっ! あやばりましゅがりゃあっ!」
「ゆるぢでぐだじゃいっ! にんげんしゃんごべんなぢゃいいいっ!」
痛い。苦しい。
痛いから謝ろう。
謝れば許してくれる。
許してくれたら痛くなくなるから謝ろう。
まりさもれいむも、ただただそれだけの思いで何度も謝罪を繰り返す。
度重なる虐待に餃子の芯まで怯えきって、すっかり赤ちゃん言葉に戻りながら。
だが、人間は応えない。
そもそも、ゆっくりの声にも視線にも関心がない。
「いぢゃああああっ!? ゆぎぃっ! おねがいじましゅっ!」
「ゆひっ、ゆひぃ……っ! ぢぬぅ、ぢんじゃうううぅぅ…………っ!」
「ゆげぇっ! ゆるじでぇっ! もうぢんじゃうのじぇええっ!」
ゆっくりたちは、まだ懇願を繰り返している。
このただの鳴き声が止まるまで。
死を望むようになるまで、虐待は止まらない。
それが、ゆっくりの心を折るという作業の締めくくりなのだから。
「ぎっ……もう……もう、ごろぢでぇ……っ!」
「もうやじゃあ……ぢにぢゃい……ゆああ……っ!」
遂に、折れた。
ゆっくりたちが本当に死んでしまう前に、人間は手早くオレンジジュースをブッカケた。
やや間を置いて、ゆっくりたちの息が落ち着きかけたところを掴み上げ、互いの頬を擦り合わさせる。
「やあああ……っ! しゅっきりしたぐにゃいいい……っ!」
「れいみゅたち、しまいにゃのにぃ……っ!」
れいむもまりさも、身じろぎ一つする余裕もなく、泣きながらされるがままとなる他ない。
「「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっ」」
すっかり発情しきって濡れた鳴き声を上げるれいむとまりさを、人間は更に激しく擦り付ける。
「「すすすすすっきりいいいいいいいっ!!」」
ガクガクと痙攣しながら体液を撒き散らかしたゆっくりたちを、そっと籠の中に戻す。
まりさの額からにょきにょきと蔦が伸びてくるのを確認して、その実の数を記帳すると、人間は籠を棚の中に戻した。
次の籠を取り出す。
棚には、まだ手付かずの籠が半分は残っている。
あとがき
三ヶ月ほど前にコンビニ界隈に出没した、ファン○グレープみたいな色したアレです。
今探してもどこにもないと思う。寝かせ過ぎたなぁ……。
小ネタという事で、読み流していただけたら幸い。
小ネタ・ゲス・制裁・調理・家族崩壊・妊娠・うんしー
「ゆぅ……おそとにいきたいのじぇ」
「れいみゅもおしょとでちゃい! どぼちておしょとにでれにゃいのぉ!?」
「ごめんねおちびちゃん。おかあさんもおそとにでたことがないんだよ」
豆電球の明かり一つで照らされた薄暗い籠の中で、ゆっくり家族が過ごしていた。
窓一つないその部屋からは、外の様子は窺い知れない。
「まりしゃ、もりにかえりたいのじぇ! いっぱいともだちをつくってゆっくりしたいんだじぇ! ちょうちょさんをむーちゃむーちゃしたいんだじぇ!」
「きゃわいいれいみゅたちをゆっくちさしぇるのがおやのちゅとめでしょおおおおっ!? しょんなこちょもわきゃりゃないの? ばきゃなの? ちぬの?」
「ゆうぅ……ごめんね! ごめんねおちびちゃんたち!」
「おちびたち、れいむおかあさんをこまらせちゃだめなんだぜ。みんなもりにかえりたいんだぜ」
このゆっくり一家、森に帰りたいと盛んに主張しているが、この部屋、この籠で生まれ育ったゆっくりなので、森に行ったことなどない。
全ては餡子の記憶に刻まれた、先祖の思い出なのである。
「おきゃーしゃん、ありちゅももりへきゃえりちゃいよぉ……ゆっぐ、ゆええ……っ!」
「ごめんね! ごめんねおちびちゃんたち! いつかとかいはなおうちにかえりましょうね!」
「ゆああああん……っ!」
「もうやじゃあっ! おうちかえりゅううううううっ!」
部屋の中を、悲しげな鳴き声が交差する。
棚にずらりと並べられた籠には、それぞれゆっくり家族が詰め込まれているのだ。
「いやじゃ! もりへかえるんだじぇ! こどもをゆっくちさせられないむのーなおやなんてちんじゃえ! ゆっくちちね!」
「ちねちねー!」
年が若ければ、本能に衝き動かされるのもまた早い。
子まりさも赤れいむも、生まれてこのかたゆっくりが真にゆっくりする為に必要なものが圧倒的に足りなかった。
お日様のぽーかぽーか、枯葉さんや乾し草さんを敷き詰めたおうちのふーわふーわ、虫や草花を狩って楽しむむーしゃむーしゃ。
そういったものの一切を享受できておらず、もはや我慢の限界であった。
「ゆああああん! おちびちゃんたちがふりょうになっちゃったよおおおっ!」
「ちがうんだぜ! わるいのはまりさたちをとじこめてるにんげんなんだぜ!」
「にんげんなんてゆっくちのどれいなのじぇ! どれいにいうこともきかせられないゆっくちなんて、むのうなゲスなんだじぇ!」
「れいみゅおこっちぇるんだよ!? ぷきゅうううううっ!!」
親ゆっくりたちの釈明など、少しもゆっくりできていない子ゆっくりにしてみれば何のいい訳にもならない。
ゆっくりにはゆっくりする事が何よりも重要であり、それを子ゆっくりに提供できない親ゆっくりに、親ゆたる資格は無いのだ。
ドアが開いた。
部屋に人間が入ってくる。
「ゆゆっ! にんげんがきちゃよ、おねーちゃん!」
「じじい! まりしゃをここからだすのじぇ! まりしゃのいうことをきかないと、いたいめにあわせるんだじぇ!?」
「ゆううっ! だめだよおちびちゃんたち! にんげんさんにそんなこといったらおしおきされちゃうんだよ! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」
毎日、餌やりと水の交換、籠の掃除にと定期的にやってきて、黙々と作業する人間。
子まりさも赤れいむも、そんな人間を奴隷だと思っている。
親ゆっくりたちも、かつてはそう思っていた。
「ゆっ?」
いつも入ってくる人間は一人だ。
しかし、今日はその人間の後に、ぞろぞろと入ってくる。
一人、二人、三人、いっぱい。
子ゆっくりたちのゆん生において、数え切れないほどの人間がこの部屋に入ってくるのは初めてだ。
親ゆっくりたちには、二度目の経験となる。
「ゆっゆっ! どれいがいっぱいきちゃよ! これでおそとにでりゃれるね!」
「まりしゃのいうことをきいたんだじぇ! やっぱりにんげんはどれいなんだじぇ!」
「しゅごいよ! さしゅがれーみゅのおねーちゃんだよ!」
勘違いした子ゆっくりたちがやいのやいのと騒ぐ中、親ゆっくりたちは戸惑い、かつ怯えていた。
自分たちの親と別れたのは−−−前に人間がいっぱい来た時ではなかったか?
「ゆうううっ!? ゆっくりやめてねっ! はなしてねぇっ!」
「ありすをはなすんだぜっ! ゆびぃっ!?」
向こうの棚から、ゆっくりありすが人間によって籠から引き出される。
それを阻もうとしたゆっくりまりさが容赦なく殴りつけられ、籠の端にぶつかって鳴く。
「ばでぃざああああっ! ごんなのどがいはじゃないいいっ!」
「おきゃあしゃああああん! ゆっくちしちぇえええっ!」
「ゆっゆっ! おきゃーしゃんをたしゅけるんだじぇ!」
「やべでよぉっ! おがあざんづれでがないでぇっ! ゆんやあああああっ!」
追い縋ろうとする子ありす、子まりさたちを、人間は傷つけないようにやんわりと押しのけ、奥で餡子を吐きながら呻いているまりさのおさげを乱暴に掴み、外へと引き摺り出す。
「ゆぎいいいいっ! いだいんだぜっ! おさげさんがぁっ! がわさんやぶげぢゃうっ!?」
引き摺られてボロボロになったまりさが、番のありすを追うようにして「回収BOX」と名付けられた大きな箱に投げ込まれる。
「ゆべぇっ!」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……!」
底の深い箱へと真っ先に投げ込まれ、底面に叩きつけられたありすとまりさは白目を剥きながら悶絶していた。
そんな光景を見て、親まりさははっきりと思いだした。
自分たちの親も、こうして籠から引き摺りだされて、二度と戻ってこなかったのだと。
「ゆひいいいいいっ! いやなんだぜっ! おそとにいきたくないんだぜぇっ!」
「おちびちゃんたちとはなれたくないよぉっ! れいむはここにいないよ! ゆっくりさがさないでね! あっちにいってねぇっ!」
親まりさと親れいむはもちもちの肌を真っ青にして、籠の奥へと逃げ込んだ。
隅っこで固まり、ガタガタと震えている。
「どれいをこわがるなんて、ほんとうにむのうなおやなんだじぇ!」
「こんなだめなおやきゃらうまれちゃなんて、れーみゅはじゅかちいんだよっ!? ゆっくりはんせいしちぇね! ぷきゅううううっ!」
子ゆっくりたちは知らない。
人間にぶたれた事がないのだから。
親が連れ去られてから、一転して虐待されるというのに。
子ゆっくりたちは知らないのだ。
「おちびちゃんたち、にんげんからはなれてね! にんげんはゆっくりできないよ!」
「はやくにげるんだぜ! おかあさんたちのおくちのなかにかくれるんだぜ!」
叫びながら、親まりさは舌をベロンと伸ばした。
その先にいる子まりさと、赤れいむをお口の中に避難させる為に。
しかし。
「ゆっ! おくびょうなだめゆっくちのいうことなんかきかないんだぜ!」
「しょーだしょーだ! れーみゅたちはもうおとなにゃんだよっ!」
「おちびちゃああああんっ! まりさのいうことをきいてねえええっ!」
積み重なったストレスに耐えきれなくなった子ゆっくりたちは、もはやその捌け口を親に求めるしかないのだ。
親たちが何を言っても、何をしようとも、子ゆっくりのストレスを加速させるばかりだった。
「ばかなゆっくちは、いちゃいめをみにゃいとわきゃらないんだね!」
「こんなきたないしたなんて、こうしてやるんだじぇ! ゆううっ!」
遂に子まりさは、親まりさの舌に噛みついた。
「いひゃいいいいいっ!?」
たまらず舌を引っ込める親まりさ。
「まりさああああっ! ゆっくりしてぇっ! ぺーろぺーろ!」
親まりさの腫れた舌先を、親れいむがぺーろぺーろして癒そうとする。
「まりしゃたちはもういちにんまえのゆっくりなんだじぇ! ばかでむのうなおやはいらないのじぇ!」
「ぷー☆くしゅくしゅ! おやなんていらにゃいよ! ゆっくちりきゃいできたら、ゆっくちちんでね!」
勝ち誇る子ゆっくりたちの後ろでは、人間たちが次々と成体ゆっくりを掴まえ、箱に投げ込んでいく。
「ゆっぐりいだいよっ! おりでねっ! れいむのうえがらおりでねぇっ!」
「ゆぎぎ……っ! づぶれるぅ……あんごさんがもれぢゃうっ!」
「ゆびいいいいっ! おそらとんでるみたいぎゅべっ!?」
「ゆべぇっ! ぐるじいんだぜっ! いだいんだぜぇっ!」
放り込まれるゆっくりの事など労わる風もなく、人間達は次々と無造作に箱の中へとゆっくりを放り込んでいく。
「いやじゃああああっ! おきゃあしゃあああんっ!」
「わからないよぉおおおっ! ちぇんをおいてかないでえええっ!」
「だめなおやはゆっくちちね! ちんじゃえ!」
「おじしゃん、ありちゅをゆっくちさせられにゃいゲスをしぇーさいしてね! ゆっくちさせにゃいでね!」
籠から、親と引き離されて泣き喚く子ゆっくり、親を見捨ててせせら笑う子ゆっくりと、二種類の反応が混ざり合って雑然とした騒ぎとなっていた。
そして遂に、親まりさたちの籠に人間の手が伸びてきた。
「にんげんさん、おねがいでずがらここでゆっぐりざせでぐだざいっ! おねがいじばす!」
「おちびたちにはまだおやがひつようなんだぜ! ちゃんとこそだてさせてほしいんだぜ!」
「にゃにいっちぇるの? おまえにゃんかもうおやじゃにゃいよ! ゆっくちでてけ!」
「れいみゅのいうとおりなんだじぇ! じじい! こいつらをさっさとつれてくんだじぇ! これはめいれいだじぇ!」
「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおっ!?」」
大いに騒ぐゆっくりとは違って、人間は黙々と親ゆっくり二匹へと手を伸ばす。
掴み上げ、引き摺り出す。
「ゆんやあああああっ! はなじでねっ! ゆっぐりさせでえっ!?」
「いやなんだぜぇっ! まりさはっ! まりさはここでゆっぐりじだいのぜっ!」
親まりさと親れいむは泣き喚きながら足掻く。
絶望的な体格差では、空しい抵抗だ。
煩わしいと思ったか、人間の握力が俄に強まる。
「ゆぎいいいいっ! やべでぇっ! つぶれぢゃううううっ!」
「ゆぎゅえっ!? ゆるじでっ! ゆるじでぐだざいっ! ごべんなざいっ! ばでぃざがわるがっだでずっ!」
「でいぶまだじにだぐないっ! にんげんざんごべんなざいゆるじでぐだざいいいいっ!」
子を宿すより前、激しく虐待された恐怖が餡子の芯にまで染み付いている親ゆっくりたちは、人間が暴力性を剥き出しにしただけで心を折られてしまう。
おそろしーしーまで漏らしながら、親ゆっくりたちは人間に平謝りを続けた。
従順になったのを確認した人間が、親まりさと親れいむをあっさり籠から引っ張り出す。
「ゆっぐ、えぐ……れいむ、なんにもわるいことしてないのにぃ……っ!」
「おちびたち……まりさがいなくてもゆっくりするんだぜ……っ!」
涙しながら子ゆっくりとの別れを惜しむ親ゆっくりに対して、
「おとなのくせにちーちーなんかもらしてるんだじぇ! おーぶざまぶざま!」
「おもらちなんかしゅるはずかちーおやがいなくなって、しぇーしぇーしゅるね!」
清々したとばかりに悪態をもってそれを見送る子ゆっくり。
それはいつか見た光景。
親まりさと親れいむが、自分達の親ゆっくりをそうして送り出したように。
この二匹が最後の回収であり、箱に山と積まれたゆっくりたちの、一番上に乗せられた。
成体ゆっくりの回収を終えた人間達が、箱を押しながらぞろぞろと部屋を出て行く。
子ゆっくりから引き離されていく事を改めて感じた箱の中のゆっくりたちが、口々に泣き叫ぶ。
が、中には人間に媚びて飼われようと足掻くゆっくりもいた。
「に、にんげんさん! ありすはこーでぃねーとがとくいなのよ! にんげんさんのおうちもとかいはにしてあげるから、ありすをかってね!?」
「かりがうまいまりさは、にんげんさんのごはんもとってくるんだぜ!」
「むきゅ、ぱちぇはごほんをよめるのよ。ごほんをよんであげられるわ」
「れいむおうたがうたえるよ! おうたでにんげんさんをゆっくりさせるよ! ゆ~ゆゆ~♪ れいむは~ゆっくり~して~る~♪」
ゆっくりたちの哀願も、れいむのおうたも、人間たちは聞いていない。
ゆっくりの言葉など、風音程度の扱いでしかないのだ。
やがて、箱とゆっくりと人間達の向かっていく先から、甘ったるい匂いが漂ってくるようになる。
変に甘ったるい、薬品のような匂い。
生まれて初めて嗅ぐそんな匂いに、ゆっくりたちは気持ち悪さを覚えて怯える。
あまあまが大好きなゆっくりであるにもかかわらずに。
この匂いは、なんだかゆっくりできない。
そう感じ取っているのである。
箱が止まる。
目的の部屋に着いたのだ。
「……ゆ?」
親まりさが恐る恐る脇を見ると、先にこの部屋に連れて来られたらしい同じような箱詰めのゆっくりたちが、狭い苦しいと苦悶の声を上げていた。
「ゆっくりしていってね!」
初めて会うゆっくりに挨拶しようと、親まりさが声を上げたその時。
声を掛けた先であった箱が前へと傾けられ、中のゆっくりたちが一斉に前の坂へと落とされていく。
坂の下には、赤茶色のお水さんが満たされており−−−−
「ゆぎゃあああっ! ごぼがぼっ!」
「おみずさんゆっぐりじでええええっ! ごぼぼっ! がぼばぁっ!」
「あんよがどげぢゃううううっ! いやじゃあっ! でいぶまだじにだぎゅぼぼぼごぼっ」
「ゆひいいいいっ! あわさんがぁっ! あわさんいじわるじないでぇっ!」
ごぼごぼと沸き立つように泡を噴き上げた水面が、ゆっくりたちを捕らえ、浸し、溶かしていく様が、まりさから一望できた。
「ゆああ……あ、ああ……ゆっぐり、ゆっぐりぃ……っ!」
「ごわいよぉ……っ! まりさぁ、れいむまだじにたくないよぉ……ゆええええ……っ!」
地獄のような光景に、ただ圧倒されるばかりの親まりさ。
怯えきって、ひたすら番のまりさに縋りつく親れいむ。
「なにぃっ!? なんなのぉっ!?」
「ゆっくりしてないなきごえがいっぱいだよぉっ! ゆっぐりでぎないよぉっ!」
「もうやだっ! おうちかえるうううううっ!」
二匹の下に詰め込まれている他のゆっくりたちは、何が起こっているかもわからずに悲鳴を上げるばかりだ。
親まりさと、人間の目が合った。
「にんげんさん……」
何かが吹っ切れたように、親まりさは人間に語りかけた。
「おねがいだよ。まりさのおちびたちを……ゆっくりさせてあげてね」
次の瞬間、箱が跳ね上げられた。
「やじゃあああっ! だじゅげでええええええっ!」
ひたすら泣き喚く親れいむ。
親まりさは人間に我が子を託し、悟りきったような顔で坂を転がり落ちていった。
人間達は、勿論ゆっくりの願いなど聞き取りすらしないというのに。
「ぎゅ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛っ゛!!??」
餡子と皮だけのナマモノが、そう簡単に忘我の境地に至れる筈もなかった。
親まりさは、己が身を灼くかのように荒ぶる炭酸水の気泡によって現実へと引き戻された。
泡がもち肌を撫でる度に、餡子が焼き切れるかのような激痛が走る。
それが親まりさの息絶えるまで、途絶える事なく続くのだ。
「ゆっゆっ! まりさはかわにうかべるんだぜ! これでにげるんだぜぇっ!」
一匹のゆっくりまりさが、咄嗟にお帽子を逆さにして着水、水面に浮かんで難を逃れていた。
どこに仕舞っていたのか木のオールまで取り出して、それをもって漕ぎ出そうとしている。
しかし、工場の水槽からどこへ逃げようというのか?
「ゆぎぎぎっ! ばでぃざものぜでえええええっ!」
親まりさは、水上まりさのお帽子のつばに噛り付いた。
「ゆゆっ!? はなすんだぜ! これはまりささまのおぼうしなんだぜ!」
驚いた水上まりさが、木のオールで何度も親まりさを叩く。
「ゆぎぃっ!? やべでるんだぜっ! ばでぃざもじにだぐないんだぜぇっ!」
「まりさがのってきたら、おぼうしがしずむんだぜ! そんなこともわからないゲスはゆっぐりじねぇっ!」
「ばでぃざああああっ! ありずもだずげでねえええええっ!」
「わがるよぉおおおっ! ぢぇんもだずがりだいよおおおっ!」
まだ生き残っている水中のゆっくりたちが、次々と水上まりさのお帽子のつばに噛り付く。
皆、生き延びようと必死だった。
結果。
「いやなんだぜえええええっ! もっどゆっぐりじだいんだぜええごぼがばばごばっ」
お帽子と水上まりさごと、ゆっくりたちの塊は水中へと沈んでいった。
(いだいいだいだいいいだいいだいいいいいいっ! どぼじでぇっ!? どぼじでごんなごどにぃいいいいいいっ!!!???)
親まりさは気絶する事すら許されずに、その身が溶けきるまで痛みと苦しみで苛まれ続けるのだ。
「という経緯から、これが生まれたんだよ。そうに違いないよ」
休日のとある公園。
お空から舞い降りてきた落ち葉が散らばったり吹き溜ったりと、寒々しい雰囲気を醸し出している。
そうした中で、二人の男がベンチに腰掛けて駄弁っていた。
「つまらねぇ都市伝説だなぁ、おい」
聞き手に回っていた男が、目の前につきつけられた小豆色の炭酸飲料を面倒臭そうに見ながら、投げ遣りに返す。
MJとかMCハマーが飲んだら元気になる方、社長に招いたスカリー捜査官を「このまま一生砂糖水売ってんの? 馬鹿なの? 死ぬの?」とカリスマオヤジに横から引き抜かれた方のヤツだ。
カリスマオヤジからあんま酷い事を言われたせいか、最近は砂糖が入ってなかったり、発作的に胡瓜とか紫蘇とかぶちこんだり、毒々しい原色に染め上げてくるようになった。
そしてもって、この秋はAzukiである。
ミスマッチという、これまた遠い昔に流行った前世紀の遺物を想起させるような、よく分からない組み合わせだった。
「頭の良い奴らの考える事は、よく分からんな」
「おう、もっと褒めてくれていいぞ!」
「いや、お前の事じゃないから」
もしかしてゆっくりが原料だったりして、などと同じ発想をちょっとでも思い浮かべてしまった事を、男は何とも言えない気分で飲み下した。
「仮にそうだったとしたら、こいつは激甘になってる筈だが、もう飲んだのか?」
「いんや、まだ飲んでねぇよ」
「じゃあ飲んでみろよ」
「それもそうだな!」
男に煽られた相方が、キャップを外して景気よくペットボトルをぐびり呷る。
「どうよ、甘いか?」
「いやぁ……ちょっと、薄いわ、これ。つか、匂いきっつ! ゆっくりできえねよ!」
「ま、そんなもんだよ」
「なんだよ、夢がない奴だなぁ」
「何言ってんだ。ゆっくりなんてナマモノがゴロゴロしてるだけで、夢があるってもんだろ」
「そりゃ、なぁ。こいつらのおかげで、明日からもまたひと仕事頑張れるってもんだぜ」
かくいう男たちの足元には、
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ」
「ばでぃざぁ……ごぼっ、ゆっぐりっ、ゆっぐりぃ……っ!」
「も゛っぢょ……ゆ゛っぎゅぢ……がぼっ」
お飾りを破られ、もみあげもおさげも千切られ、ボコボコに殴打された死に掛けのゆっくり親子が転がっていた。
自分たちの垂れ流したしーしーとうんうん、吐き散らかした餡子の海に溺れながら、もはやお迎えを待つばかりだ。
そう、男たちは鬼意山、公園は街の野良ゆたちの溜まり場なのである。
「あと何匹か、遊んでやろうぜ」
「流石にもう逃げてんじゃね? こいつら、デカイ声で泣き喚いたしさぁ」
「なぁに、逃げやしないさ。こいつらが自分で“おうち”を捨てたりなんかできねえよ」
皮肉たっぷりに口元を歪めた男は、立ち上がるやいなや、ベンチ裏の茂みの中から不自然に飛び出している段ボール箱を軽く蹴っ飛ばした。
「おうコラ、出てこいやコラァ!」
「ゆひっ!? れ、れれれれいむはここにいないよ! こないでね! あっちいってね!」
「きょわいよぉ……ゆっぐ、ゆえええん……っ!」
「……マジかよ。すぐ後ろでヒャッハーしてたってのに!」
「ゆっくりしてるやつらだよなぁ」
「おお、ゆっくりゆっくり(笑)」
「よっしゃ、持ち上げんぞー!」
男と相方が、段ボール箱の両端を持ってベンチ前まで引き摺りだし、横倒しにする。
転がり出てきたのは、ゆっくりれいむの親子二匹。
「ゆぴぃっ! ゆっぐりいぢゃいっ!」
「や、やめてね……? れいむはかわいそうなしんぐるまざーなんだよ……? ゆっくり、させてね……?」
「ああ、いいとも」
「一緒にゆっくりしようぜ」
男たちは、満面の笑顔でゆっくり母子家庭に応えた。
「「ヒャッハー!! 虐待だぁッ!!!!」」
季節は秋。
この時期特有の高いお空に、ゆっくりたちの高らかな喚声が木霊する。
「ゆびゃあああああっ! やべちぇえええええっ!」
「いぢゃいのやぢゃああああっ! ゆっびいいいいいっ!」
豆電球の明かり一つで照らされた、薄暗い籠の中。
「ゆぎぃっ! だぢゅげでえぇ! おがーぢゃああんんっ! ぶびぃっ! ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん゛っ!」
「どぼじでぇっ!? おぎゃーじゃああんっ! ゆぎゃっ! ぎゃわいいでいびゅをだじゅげでよおおおっ!」
独り立ちしたばかりの若い、ようやく大人になりかけたばかりでしかないまりさとれいむが声も嗄れよと泣き喚く。
黒光りするゴム製の棒っこで何度もぶたれて、頬も目蓋もぷっくりと腫れ上がっている。
「ごべんなぢゃいっ! まりぢゃがわるがっだのじぇっ!あやまりまじゅっ! あやばりましゅがりゃあっ!」
「ゆるぢでぐだじゃいっ! にんげんしゃんごべんなぢゃいいいっ!」
痛い。苦しい。
痛いから謝ろう。
謝れば許してくれる。
許してくれたら痛くなくなるから謝ろう。
まりさもれいむも、ただただそれだけの思いで何度も謝罪を繰り返す。
度重なる虐待に餃子の芯まで怯えきって、すっかり赤ちゃん言葉に戻りながら。
だが、人間は応えない。
そもそも、ゆっくりの声にも視線にも関心がない。
「いぢゃああああっ!? ゆぎぃっ! おねがいじましゅっ!」
「ゆひっ、ゆひぃ……っ! ぢぬぅ、ぢんじゃうううぅぅ…………っ!」
「ゆげぇっ! ゆるじでぇっ! もうぢんじゃうのじぇええっ!」
ゆっくりたちは、まだ懇願を繰り返している。
このただの鳴き声が止まるまで。
死を望むようになるまで、虐待は止まらない。
それが、ゆっくりの心を折るという作業の締めくくりなのだから。
「ぎっ……もう……もう、ごろぢでぇ……っ!」
「もうやじゃあ……ぢにぢゃい……ゆああ……っ!」
遂に、折れた。
ゆっくりたちが本当に死んでしまう前に、人間は手早くオレンジジュースをブッカケた。
やや間を置いて、ゆっくりたちの息が落ち着きかけたところを掴み上げ、互いの頬を擦り合わさせる。
「やあああ……っ! しゅっきりしたぐにゃいいい……っ!」
「れいみゅたち、しまいにゃのにぃ……っ!」
れいむもまりさも、身じろぎ一つする余裕もなく、泣きながらされるがままとなる他ない。
「「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっ」」
すっかり発情しきって濡れた鳴き声を上げるれいむとまりさを、人間は更に激しく擦り付ける。
「「すすすすすっきりいいいいいいいっ!!」」
ガクガクと痙攣しながら体液を撒き散らかしたゆっくりたちを、そっと籠の中に戻す。
まりさの額からにょきにょきと蔦が伸びてくるのを確認して、その実の数を記帳すると、人間は籠を棚の中に戻した。
次の籠を取り出す。
棚には、まだ手付かずの籠が半分は残っている。
あとがき
三ヶ月ほど前にコンビニ界隈に出没した、ファン○グレープみたいな色したアレです。
今探してもどこにもないと思う。寝かせ過ぎたなぁ……。
小ネタという事で、読み流していただけたら幸い。