ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0978 越えられるものなら越えてみやがれ! 序章
最終更新:
ankoss
-
view
『越えられるものなら越えてみやがれ! 序章』
冬になると熊などの動物は冬眠する。こうした動物は変温動物と呼ばれており文字通り気温に応じて体温が変動する動物なのだ。
冬になると体温が下がってしまうため冬の間は冬眠をする。そして昨今冬眠をする生き物が1種類増えた。それはゆっくりである。
「おちびちゃん!!いまからあまをふさぐからね!」
「あきしゃんばいばい!」
「はるになったらでてくるからね!」
「おちびちゃん、おそとはさむいからおかあさんのところへおいで」
ゆっくりは饅頭と同じ構造をしている。冬になり寒くなれば中身の餡子も冷えてしまう。このため冬眠をするのだ。
晩夏から秋の間に食料を貯蓄し、運が良ければ人間の衣服や毛布などを集め冬に備える。冬になったら巣の穴を塞ぎ春まで外には出ない。
冬眠が成功するかは運に左右されることも多く完璧な準備をしていても失敗して春を迎えることができない場合もある。
"冬眠"と書いたが実際には巣の中で春まで眠り続ける種類と食事を切り詰めて巣の中で通常通りに生活する種類がある。
山林では地面や傾斜に穴を掘って生活するゆっくりが多い。冬に備えて巣を拡張し食料を貯蔵する。そして冬が来ると穴を塞ぐのだ。
中には洞窟で暮らすゆっくりもいる。大抵は複数の家族が暮らしているのだが洞窟は冬眠には向かない。穴を塞げないからだ。
こうした場合は冬に備えて越冬用の住居を作る。洞窟で冬眠が出来るのはドスのいる群れだけである。
ドスも洞窟の中に入り背中を外に向けて穴を塞ぐのだ。ドスは通常のゆっくりに比べて丈夫に出来ている。
ドス1匹だけなら冬眠する必要は無いくらいだ。このため洞窟の穴をドスの巨体で塞ぐことができる。結構ドスは頑張っているのだ。
一方都会に存在する大抵のゆっくりも冬眠をする。"大抵"と書いたのは例えば飼いゆっくりのように冬眠しない個体もいるからだ。
都会でもゆっくりを見かけることが多くなったが冬になれば人前に現れるゆっくりは激減するものである。
「おでがいじまずぅぅぅぅ!!!このごだげでも!!このごだげでももらっでぐだざいぃぃぃ!!!」
「とっでもゆっぐりじだこでずがらぁ!!おでがいじばず!!がっであげでぐだざいぃぃ!!!」
冬のある夜、とある戸建の門前でれいむとまりさが帰宅しようとしていた青年に必死に嘆願していた。
「はぁ?」
「おでがじばずぅぅ!!!れいぶだぢは…かいゆっぐりだっだんでずぅぅ!!」
「にんげんざんにはめいわぐかげまぜんがらぁぁぁ!!!がっでぐだざいぃぃ!!」
「ゆぴぃぃぃ!!!しゃみゅいよぉぉ!!」
「しゃむくちぇゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!」
冬なのに人前に現れるゆっくりには2つの種類に分かれる。1つは冬眠の準備不足のゆっくり、もしくは早くも冬眠に失敗したゆっくりだ。
人間に食料をせびったりあわよくば飼って貰おうという魂胆がある。こういうのは問答無用で駆除してしまおう。
もう1つは捨てられた元飼いゆっくりである。実は冬というのは飼いゆっくりが一番捨てられる時期でもあるのだ。
大抵飼いゆっくりが捨てられるのはゲス化したり許可無く子供を作ったりした場合だ。加工所が原因を調べた結果2つの理由が判明した。
2つの理由とも冬という季節に起因している。
『ゆぅぅ…さむいよぉ…』
『さむいのはゆっくりできないよぉ…』
冬は寒い。人間もゆっくりも寒いのは嫌なものである。
『すりすりしようよ!』
『そうだね!そしたらあったかくなるね!』
ゆっくりは親愛の印に頬擦りをするという。友達や子供、親や恋人とすりすりするのだ。
『す~りす~り…ゆ~ん。すこしあったかくなってきたね!』
『す~りす~り。ゆっくりできるね!』
時には寒くなった体を温めることもできる。
『『す~りす~り!』』
冬は寒い。少しすりすりしただけではすぐに寒くなってしまう。当然すりすりする時間も長くなる。
『な…なんだか…からだがあつくなってきたよ…』
『ゆ……ゆぅぅ…』
ゆっくりがどうやって子作りをするのかご存知であろうか。実は体を擦り合わせ続けることでも妊娠してしまうのだ。
『ゆぅぅぅぅ……ゆはぁぁぁ…』
『も…もう…がまんできないよ!』
すりすりは前戯でもある。長時間すりすりしたためすっかり発情してしまいそのまま交尾に発展してしまうのだ。
『『すっきりー!!』』
結局止まらず子供が出来てしまう。
『ゆぁぁぁ!!!どうしよう!!あがぢゃんがでぎぢゃっだぁ!!』
『ゆぅぅぅ!!どうじでぇ!!!?どうじであがぢゃんができぢゃっだのぉぉ!!?』
無許可で子供を作ってはならないとペットショップや飼い主から何回も言われてきた。飼いゆっくりにとって最早常識である。
子供が出来た頃にはもう遅い。いくら嘆いても子供が消えてくれたりはしない。
『うわっ!!餓鬼が出来てるじゃねえか!!』
『ゆぅぅ!!ち…ちがう!!ちがうよぉぉ!!』
『す…すりすりしてたら…あかちゃんができちゃったぁぁ!!』
『当たり前だボケェェェ!!!』
寒いからすりすりして温め合っていたら発情してすっきりまで発展してしまいました、なんて事をゆっくりが説明できるわけが無い。
子供を作ったということで捨てられてしまう。冬に善良なゆっくりに出会ったらこの可能性が高い。
もう1つの理由は冬にあるイベントだ。冬のイベントといえば…クリスマスでありお正月でありバレンタインデーである。
こうしたイベントに付き物なのがプレゼントや美味しいご馳走だ。飼いゆっくりがどこからかそのことを知ればどうなるだろうか。
『あまあまさんがたべたいよ!』
『ぷれじぇんとしゃんはいちゅくりぇるの?』
プレゼントやご馳走が貰える、ということで頭の中は一杯だ。それがいつしか自分を飼い主より上の存在だと誤解させてしまうのだ。
『いづになっだらあまあまさんぐれるのぉぉぉ!!?ゆっぐりしないでもっでごいぃぃ!!』
『きょのきゅじゅ!!ゆっくちちにゃいでちょうらいにぇ!!』
最早ゲスだ。ゲス化しなくても饅頭のくせに物を欲しがるのに嫌悪する飼い主もいる。それで捨てられてしまうのだ。
「ふぅん」
青年はゆっくり家族を眺めた。ゲス化しているようには見えない。となると子供を作って捨てられたようだ、と彼は判断した。
「ゆ…ゆぅ…にんげんしゃんの…おちぇちぇ…あっちゃきゃいよぉ……」
青年は赤れいむを掌に乗せた。ポケットの中に手を突っ込んでいたため掌は温く赤れいむはぴったりと頬をくっ付けていた。
「か…かわいいでしょ!!いいこでしょ!!ぜったいににんげんさんにめいわくかけませんからぁぁ!!」
「おでがいじまず!!そのこをもらっでぐだざいぃぃ!!」
「ま…まりちゃも…ゆっくち…ちちゃいよ…」
彼は赤れいむを見つめた。別に汚くは無い。野良にいるゆっくりではマシな方だろう。
「ふん。馬鹿馬鹿しい」
赤れいむを思いっきり地面に叩き付けた。
「ゆぴゃっ!!」
地面に叩き付けられた衝撃で赤れいむは弾け餡子が四散した。
「ゆぎゃぁぁぁ!!!!おちびぢゃんがぁぁぁ!!」
「ど…どぼじでぞんなごどずるのぉぉ!!!」
彼はそのまま赤まりさを捕まえると遠くの方へ投げ飛ばした。
「やぢゃぁぁ!!おろじぢぇぇ!!きょわいよぉぉ!!!」
赤まりさの叫び声が小さくなった。
「お…おちびぢゃぁぁん!!!」
「ゆわぁぁぁ!!!」
れいむとまりさは赤まりさが投げられた方向へ走り出した。
「飼わねぇよ。馬鹿」
青年は家の中へ入っていった。
「おちびぢゃぁぁぁん!!!へんじじでぇぇ!!」
「どこいっぢゃっだのぉぉ!!?おちびぢゃぁぁん!!!」
れいむとまりさは赤まりさを電灯の明かりを頼りに必死に探し回っていた。
「ゆ…ゆわぁぁぁ!!!じっがりじでぇぇ!!」
れいむが赤まりさを見つけたようだ。まりさがれいむの所へ走った。
「おちびぢゃぁぁぁぁん!!!じっがりじでぇ!!へんじじでよぉぉ!!!」
赤まりさは顔から地面に着地したようだ。赤まりさの小さな帽子は空中で脱げてどこかにいってしまった。
「おちびぢゃぁぁん!!おちび…ゆ…ゆぎゃぁぁぁ!!!」
れいむが赤まりさを舌で動かした。うつ伏せに倒れていた赤まりさがれいむの方向を向いた。
「な…なにごれぇぇ!!おちびぢゃぁぁん!!おちびぢゃぁぁん!!ゆっぐりじでいっでね!!ゆっくりじでいっでね!!」
まりさも悲鳴を上げた。赤まりさの顔面はぐちゃぐちゃで餡子で真っ黒だった。口から吐き出したのかどこから吹き出たのか分からない。
「ゆわぁぁぁん!!!じんじゃやだぁぁぁ!!おべべあげでよぉぉ!!!へんじじでよぉぉ!!!」
「どっでもゆっぐりじだおちびぢゃんだっだのにぃぃ!!!ひどいよぉぉぉ!!!ゆわあぁぁぁん!!!」
2匹は大いに泣いた。と、電灯で照らされていた2匹が急に大きな影に飲み込まれた。
「な…なに…?」
「ゆっぐ……な…なんなの…?」
2匹は振り向いた。2匹の目にまず入ったのは白い湯気であった。湯気の後ろには人間が立っていた。
「に…にんげんさん…な…なにかよう?」
まりさが恐る恐る口を開いた。人間はまりさを無視しれいむの目の前に立った。
「れ…れいむに…ひどいこど…しないでね…。お…おちびぢゃんが…じんじゃっだんだよ…」
れいむが縮こまって答えた。人間は何も答えず手に持っていたモノを傾けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!あづいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
人間が手にしていたモノとは薬缶だった。薬缶から注がれた熱湯を浴びたれいむは絶叫した。れいむの周りには白い湯気が立ち篭っていた。
「じぬぅぅぅ!!!!あづいぃぃ!!!やべでぇ!!!!とげぢゃうぅぅぅ!!!」
「ゆあぁぁぁ!!!!なにじでるのぉぉぉ!!!!れいぶにひどいごどじないでぇぇぇ!!!!」
まりさは慌てて人間に体当たりをした。だが人間は微動だにせず逆にまりさが弾き飛ばされてしまった。
「ゆぎぇっ!!!…っぐ……ゆ……あぁぁぁぁ!!……さ…さっぎの!!…」
れいむに熱湯をかけていたのは先程の青年であった。れいむとまりさを駆除するために態々お湯を沸かしてきたのだ。
薬缶は両手に1個ずつ持っていた。薬缶1個で1匹駆除する気なのだろう。
「ゆぎぃぃぃぃ!!!だずげでぇぇぇ!!じにだ…ゆぶびゅっっ!!!!」
効率良くゆっくりを溶かすにはまず熱湯をぶっかけ、熱湯でふやけた皮を思いっきり踏み付けてやることだ。
踏み付けられた衝撃でゆっくりの体が崩れる。そして晒された中身に残りの熱湯を注ぐのだ。
「…っゆ……っゆ……じ…に……だぐ…ない……だず……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
体の一部が崩れ呻いていたれいむの餡子に熱湯が直撃した。直接内臓を痛めつけられ否応無しにれいむは覚醒させられ絶叫した。
「ゆわぁぁぁぁん!!!やべろぉぉぉぉ!!!!でいぶぅぅ!!!!れいぶぅぅぅ!!!」
まりさは泣きながら青年に突進した。
「ゆわぁぁぁぁ!!……ゆごぉぉぉ!!!!!!」
青年は一旦熱湯を注ぐのを止めてまりさを蹴り返した。まりさを蹴飛ばすと再び薬缶を傾けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!じぬぅぅぅぅ!!!!あづいよぉぉぉぉ!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!」
薬缶から熱湯が出なくなった。
「ゆ………っ……ぃ……っゆ……ゆ……」
れいむは虫の息だ。れいむを中心に黒い水溜りが出来上がっていた。
「ゆ…っぐ……よぐぼ…よぐも…でいぶどおちびぢゃんを!!!ゆがぁぁぁぁぁ!!!じねぇぇぇぇぇ!!!!」
まりさが果敢に飛び掛ってきた。しかし所詮はゆっくり。動きは遅く青年は空になった薬缶で思いっ切りまりさを地面に叩き付けた。
「ゆびぇっ!!!……っゆ…っゆ……っぐ……っゆ……」
脳天を薬缶で思いっ切り殴られたまりさは悶絶した。青年はもう1個の薬缶を傾けた。
「っゆ……ゆぎぃぃぃぃ!!!あづぅぅぅぅぅぅ!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悶絶していたまりさが飛び上がった。ある程度熱湯をかけたところで彼はふやけたまりさの体を思いっきり踏み付けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!いぢゃいぃぃ!!やべで!!!!やべでぇぇぇぇぇ!!!!」
まりさの体の3分の1程が潰れ餡子が晒された。青年は晒された餡子に集中的に熱湯を注いだ。
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!あづいよぉぉぉ!!!やぢゃぁぁぁ!!じにだぐない!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
まりさの周りにも餡子が溶け込んだ黒い水溜りが出来上がっていった。
「だずげでぇぇぇ!!おねぇぇざぁん!!!おねぇざぁぁん!!ばりざじにだぐないぃぃぃぃ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!」
ペットショップの店員か飼い主が女性だったのだろうか。まりさは必死に助けを乞うた。
「ゆぎぃぃ……やぢゃ……ゆ…っぐり…じだい…」
青年は薬缶を空にすると帰ってしまった。辺りはまりさとれいむ以外誰もいない。ただただ静粛であった。
「じ……にだ…ぐ…ない……ゆ……っぐ……」
まりさはまだ死んでいなかった。が、最早思考は停止している。熱湯で溶かされて体外に流されていく餡子。
餡子はゆっくりにとって命であり記憶でもある。まりさの記憶は殆ど失われた。先程叫んでいたおねえさんが誰なのかもう分からない。
徐々に徐々にまりさの頭の中は真っ白になっていった。
「…っゆ………ぇ…ろ………ぺ………ろ……っゆ…っゆ…」
まりさは本能だけで動いていた。ただひたすら舌を伸ばし餡子を舐め取っていた。命である餡子を体内に戻さなければ死んでしまう。
本能的に分かっているのだ。
「……ぇ…………ぇ……っ……ゅ……ぇ……」
れいむもまりさと同じく餡子を舐めていた。が、こちらはもう舌が少しだけ動いているだけだった。
「……っ……ゅ……っり……じ………」
れいむは最期の言葉を満足に呟くこともできずに息を引き取った。最期の言葉はゆっくりにとって本能的なものなのだろう。
「ぺ……………ぇ………っゆ………っぐ……」
残されたまりさは必死に餡子を舐めていた。そのうち舌の動きが鈍くなってきた。
「べ…………ぇ……………………」
最期の言葉は言えたのだろうか。舌をだらりと出したまままりさが動かなくなった。
(げっ!まだ残ってやがる…。まぁ…そのうち回収してくれる…かな…)
翌朝、青年は昨夜ゆっくりを駆除した場所に目を向けた。まだ2匹の死骸は残っていた。
ゆっくりの死骸が転がっているのは珍しくは無いがこういう場合は彼が責任を持って袋詰めして処理すべきであった。
(時間無ぇな…帰ってきてまだ残っていたら処理しよう。ごめんなさ~い)
そんな事を思いつつ彼は車庫に向かった。
「…ゆ……っ……よ…」
「さ……ま………ね」
青年の耳にゆっくりらしき声が入ってきた。
(ん!?何処だ?)
青年は辺りを見回した。すると隣の家の玄関の前に2匹のゆっくりが見えた。今丁度敷地内に侵入したところであった。
(何だ。お隣か。じゃ大丈夫だ)
ゆっくりを止めることなく、お隣に忠告することなく青年は車を発進させた。
さて、ゆっくりが留守中の住宅に侵入して家の中を荒らすという話がある。石を投げたり体当たりしてガラスを割って中に侵入するのだ。
実はこれ…性質の悪い都市伝説なのだ。色々な人やTV番組が実験した。加工所も実験した。結果は1匹たりともガラスを割れなかった。
そもそもゆっくり如きに侵入されるくらいならとっくの昔に強盗が侵入している。それにゆっくりにたいした力は無い。
試しに人間が石を口に咥えて吹き出してみるといい。割れるはずがない。ゆっくりでは尚更無理であろう。
では誰がこんな都市伝説を流したのであろうか。様々な意見がネット上を駆け巡った。
有力なのは新しいガラスを売り込みたいガラス屋が流したデマ説や防犯グッズを売り込みたい量販店や加工所のデマ説だ。
最近では農村の古い民家で侵入されたという話が大きくなったのではないか、という意見もある。
この他にも防犯意識を高めるために警察が流した噂ではないかという声もある。結果として防犯意識は高まり空き巣は激減したらしい。
ただ窓や戸を開けっぱなしにしていたためゆっくりが侵入するというケースはある。これはもう人間のミスだ。
最近では態々シャッターを閉めてから外出する人もいるらしい。兎に角、ゆっくりが住宅に侵入することは普通ならありえないのだ。
余談だがゆっくりの侵入を防ぐために販売された防犯グッズで一番売れたのは合成樹脂の防犯フィルムだそうだ。
「おおきいね!!ここがれいむたちのおうちだね!!」
「ゆぅぅぅ!!さむいんだぜ。ゆっくりしないでおうちのなかにはいるんだぜ!!」
成体ゆっくりとしてはやや小振りなれいむとまりさ。人間で言えば青年くらいだろうか。
「あけてね!!れいむはゆっくりしたいんだよ!!」
ドアに向かって叫ぶが何か反応があるはずがない。
「れいむ、こっちだぜ!!こっちにまどさんがあるんだぜ!!」
まりさは既に庭の方へ回っていた。
「ゆ!!すっごいひろいよ!!」
戸から家の中の様子が伺える。家の中を見るれいむの目は輝いていた。
「ゆっくりしないでなかにはいろうよ!!」
「おちつくんだぜ…まずはいしをさがすんだぜ!!いしでまどさんをこわせばおうちはまりさたちのものなんだぜ!!」
早速庭中を探し回った。
「なんでいしがないんだぜぇぇぇ!!!?これじゃこわせなんだぜぇぇぇ!!!!」
「まりざぁぁ!!!!どうじだの!!!はなじがちがうでじょぉぉぉ!!!」
ゆっくりに力が無いという話以前に民家の庭に手頃な大きさの石はそうそう転がってはいないものだ。
どこからか運んでくるという手もありそうだが怠け者のゆっくりが態々そんなことするはずもない。となればやることは1つしかない。
「こうなったら…まりさのひっさつざわのたいあたりでまどさんをこわすんだぜ!!!!」
「さすがまりさだね!!がんばってね!!」
まりさは助走をつけてから思いっきり飛び上がった。
「ゆぉぉぉぉ!!!!……ゆびぃっ!!!!!……い…いだいぃぃぃ……」
まりさはアルミサッシに顔を直撃していた。顔の真ん中辺りに横一直線の窪みが出来上がってしまった。
通常戸や窓は地上からいくらか高い場所に設置されるものである。床と地面が同じ高さの家はほとんど無い。
ゆっくりはある程度の高さまで飛び上がらなければまずガラスに触れることが出来ない。
「ま…まりさ!!どうしたの!!!?じっがりじでぇぇぇ!!!」
「い…いだい!!!いだいよぉぉ!!まりざのびがおがぁぁぁ!!!」
ゆっくりは痛がり屋だ。よくそれでガラスに突撃する気になれるものである。
「ゆあぁぁぁぁ!!!いだいよぉぉぉ!!!!」
「まりさはそこでゆっくりしててね!!こんどはれいむがやるよ!!」
れいむも助走をつけて飛び上がった。タイミングが遅かったのかアルミサッシにヘディングしてしまった。
「ぎゅえっ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁ!!!あ…あだばがいだいぃぃぃぃぃ!!!」
この民家には無いが多くの民家ではテラスが設置されている。庭に出るとき靴が置いてある場所を浮かべていただきたい。
大きな長方形の石が敷いてあるだろう。あれをテラスというのだがその存在もゆっくりにとっては邪魔になっている。
人間視点ではたいした高さではないがゆっくりにとってはかなりのハードルである。テラスの手前で飛び上がっても戸には届かない。
戸の手前で着地。何とも馬鹿な画であろうか。前もってテラスに登ってから助走をつけてもたいした距離ではない。
意外なところにゆっくり防犯が備わっているものである。この他にウッドデッキも効果的だ。こちらも助走がつけられないからだ。
ここに気づいた植木屋がかなり儲けたという話もある。
「ゆぅぅぅぅ!!!!……ゆびぇっ!!!いぢゃいぃぃぃ!!!!いぢゃいよぉぉぉぉ!!!」
「おうぢぃ!!おうぢにいれろぉぉぉ!!!……ゆぎゃん!!!!ゆぎぃぃぃ!!!どぼじでわれないのぉぉぉぉ!!!!?」
2匹は何度もトライした。ガラスに届いたのは数回だけ。ほとんどがアルミサッシにぶつかったり戸の下の壁に直撃であった。
「ゆひぃぃぃぃ……い…いだいんだぜ……おかしいんだ…ぜ…」
「いだいよぉ……れいぶの…おがおさんがぁ……」
2匹はボロボロだった。顔も少し腫れている。仮に平均的な成体ゆっくりの大きさであってもガラスを割るには至らなかっただろう。
「こ…こんな…こんなゆっくりできないおうちは…こっちからねがいさげなんだぜ!」
「そ…そうだよ!!ゆっくりしたれいむには…あわないよ!!」
ゆっくりはやけにプライドが高い。悪態をつきながらそそくさと逃げ出した。
(何だ、あの人だかり?)
こちらは通勤中の青年。信号待ちの間ふと傍の河川敷を眺めた。かなりの人数がわらわらと集まっていた。
(何やってんだ?………あぁ、駆除か)
信号が青に変わった。青年は車を発進させた。
河川敷には作業服を来た男性が十数人。彼らの前にはゴミが山のように捨てられていた。
「派手に捨てられてますね。わ、冷蔵庫だ」
「こういう所には一杯いるぞ」
都会にいるゆっくりが住む場所は様々であるが大規模にゆっくりが住む場所がある。それはゴミが不法投棄されている場所である。
そのような所に人間は近付こうとしないし土地の所有者も行きたがらない。つまり天敵がいないのだ。
さらにそこに捨てられているゴミといえば冷蔵庫、TV、タイヤ…とゆっくりにとってはダンボールよりも住処に利用できるものばかりだ。
しかも時間が経てば新しいゴミが捨てられる。住処が増えるのだ。相当数のゆっくりが収容できる。
「何匹いますかね?」
「百は下らんぞ。逃げられると厄介だ。バリケードの用意をするぞ」
彼らの後方からトラックが数台やってきた。トラックからバリケードを降ろすとゴミの山の周囲に設置した。
さて、実は彼らは加工所の職員なのだ。彼らの業務は一応ゆっくりの駆除なのだが単にゆっくりを殲滅するだけではない。
こうした不法投棄されたゴミの処分も請け負っているのだ。言うまでも無く企業イメージのアップを狙っている。
現在のゆっくり市場は加工所の独占だが新興企業の成長もめざましい。他社への優位性を維持するためにこうした活動も行っているのだ。
ゴミを処分して街は綺麗になる。地域住民は喜ぶ。加工所の好感度も上がる。ゆっくりの駆除も出来る。何と素晴らしい活動だろう。
「煙幕の用意が出来ました」
「さっさと投げてくれ。おーい!!ゆっくりが出て来るまでに手袋はめたり準備しとけよ!!」
煙幕を焚きゴミ山へ投げた。強引にゆっくりを捕まえるのもいいが何処に隠れているのか分からないし結構面倒なのだ。
こうして煙幕で炙り出した方が捕まえやすいしゴミの処分もしやすい。
「ゆぅ~……ゆぅ~」
「ゆ~ん……ゆぴぃ……」
「ゆぅ~………」
一方ゴミ山の中では加工所職員の予想通り大量のゆっくりが住んでいた。皆ぐっすりと眠っている。
通常のゆっくりであれば警戒心がいくらか在り特に都会のゆっくりであれば朝早くから活動しているものである。
天敵からの脅威が薄くなりさらにダンボールハウスよりも温かい環境にいるため警戒心が消えてしまったのだ。
「まだですかね?」
「まだ充満してないよ。もう少し待とう」
煙はもくもくとゴミ山を包んでいった。
「ゆぅ……ゆぅ…」
呑気に涎を垂らしながら寝ているゆっくり。徐々に変化が出てきた。
「ゆぅ………ゆ?…ゆ!!」
「ゆぁ!!な…なんかへんなにおいがするよ!」
ゆっくりが次々と起き出した。
「げほっ!!げほっ!!」
「くしゃいよぉぉ!!ゆっぐりできにゃいぃぃ!!」
「きぇほっ!!くりゅしぃぃ…」
「ゆ…おちびぢゃん!!ゆっくりしないでおそとにでようね!!」
「おちびちゃん!!おかあさんのおくちにはいってね!!」
ぞろぞろとゴミ山の中から大勢のゆっくりが現れた。
「ゆぅぅ!!さむいぃぃ!!」
「しゃむいよぉぉ!!おきゃあしゃん!!しゅりしゅりしちぇ!!」
久々の外は寒かった。
「ゆ!!!!」
「な…なんで…なんでこんなところににんげんがいるのぉぉ!!!?」
ゆっくりの目の前には大勢の人間。果敢にも1匹のまりさが人間の前に立ちはだかった。
「ここはまりさたちのおうちだよ!!にんげんはゆっくりしないででていってね!!」
その声に励まされたのか加勢するゆっくりもちらほらと現れた。
「そうだよ!!ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!!さっさとでていってね!!」
「でちぇいっちぇね!!」
「あまあまおいてってね!!たくさんでいいよ!!」
段々五月蝿くなってきた。
「ゆぁ!!!おそらをういてるぅぅ!!」
一番最初に文句を言ったまりさが持ち上げられた。まりさを持ち上げた職員の手には袋。袋は3重に重なっていた。
「ゆ!!なにするの!!!?らんぼうしないでね!!」
まりさはゴミ袋の中に入れられた。まりさが入ったゴミ袋を地面に置くと思いっきり袋を踏み始めた。
「ゆぎぃぃ!!!いだい!!!ゆごっ!!!ぶっ!!!!やべっ!!!ゆぎぇぇぇぇ!!!!!」
袋を踏む足は鉄芯の入った硬い作業靴。まりさは袋の中でひしゃげ餡子を吐き出していた。
「ゆぁぁぁ!!!なにじでるのぉぉぉ!!!?」
「まりざをはなじでぇぇぇ!!!!」
「おきゃぁあしゃぁぁん!!!きょわいよぉぉ!!!」
ゆっくり達はすぐに状況を理解した。
「だずげっ!!!!ごっ!!!!じぬぅぅ!!ゆるじぢぇぇぇ!!!あぎゃぁぁぁ!!!!」
袋の中のまりさは体中が破れ全身から餡子を漏らしていた。
「に…にげるよ!!!れいむはにげるよぉぉ!!!」
「ごわいよぉぉぉぉ!!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
楽園は地獄と化した。ゆっくりは逃げ惑ったが次々と職員に捕まり袋の中に入れられ潰されていった。
「いやだぁぁぁ!!!はなじでぇぇぇ!!!」
「ゆっぐりじだいよぉぉ!!じにだぐないぃぃぃ!!!じにだぐないぃぃ!!」
「ゆぶっ!!!ゆぁぁぁ!!だじでぇぇぇ!!!だじでよぉぉぉ!!!ゆごっ!!!ゆぎぃっ!!!」
「つぶでるぅぅぅぅ!!!!いやだ!!!ゆっぐりじだいぃぃ!!!」
運良く職員を突破出来たゆっくりも突然目の前に現れたバリケードの前で止まってしまった。
「なにごれぇぇぇ!!!?あっぢにいがぜでぇぇぇ!!」
「かべざんどいで!!!ありずをゆっぐりさぜで!!!」
「わがらないよぉぉぉ!!!」
「いじわるじないでぇぇぇ!!!じんじゃうぅぅ!!!どいでよぉぉぉ!!!」
ゴミ山をぐるりと囲んだバリケードはどうしても赤ゆっくり位なら抜け出せそうな隙間が残ってしまう。
が、赤ゆっくりがバリケードの前まで逃げられるのは稀であるしこの状況で親から離れてでも逃げようとする赤ゆっくりは皆無だ。
「ゆぁぁぁ!!ういでるぅぅ!!!おぞらをういでるぅぅぅ!!!」
「おろじでぇぇ!!!ごろざないでぇぇぇ!!!」
「むぎゅぅぅぅ!!!ばぢぇをはなじでぇぇぇ!!!」
「どぼじでぞんなこどずるのぉぉ!!!!ありずはゆっぐりじでだだげなのにぃぃ!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!」
次々とバリケード前でオロオロしていたゆっくりが捕まえられていった。
「だじゅぎぇでぇぇ!!!」
「おどぅざぁぁぁん!!!!おがぁざぁぁん!!!どうじだらいいのぉぉ!!?」
「こっちににげるんだぜ!!!おうちならあんしんなんだぜ!!!」
「おちびぢゃん!!!おうちににげるんだよ!!」
大慌てでゴミ山に戻るゆっくりもいた。
「おきゃあしゃぁぁぁん!!!きょわいよぉぉぉ!!!」
「やぢゃぁぁ!!れいみゅちにちゃくにゃいよぉぉ!!」
「ゆっぐりじだいよぉぉ!!」
薄暗いゴミ山の中でぶるぶる震える小さなゆっくり。それを親ゆっくりが宥めた。
「だいじょうぶだよ!!このおうちはね、とってもがんじょうなんだよ!!だからにんげんはやってこれないよ!!」
確かにここにあるゴミはダンボールに比べて遥かに耐久性がある。頑丈ではあるがそれはあくまでゆっくりにとってだ。
「ほ…ほんちょだ!にんげんしゃんがこにゃいよ!!」
「もうすこしのしんぼうだよ!がまんしたらまたゆっくりできるからね!!」
「まりしゃがまんすりゅんだじぇ!!」
おうちの中は安全だった。だが外からは逃げ遅れた仲間のゆっくりの悲鳴が聞こえてくる。
「やぢゃぁぁぁぁ!!!!ゆっくちさせちぇぇぇ!!!」
「お…おちびぢゃぁぁぁん!!どごいっぢゃっだのぉぉ!!?ゆぎぃっ!!!いやぁぁぁ!!はなじでぇぇぇ!!」
一体このゴミ山にどれだけのゆっくりがいたのだろうか。いつの間にか餡子とクリームが詰まった袋がトラックの荷台の半分を占めていた。
「きょ…きょわいよぉ…」
「ゆぅぅぅ……」
外から聞こえる悲鳴にゴミ山に避難したゆっくりは縮こまっていた。
「も…もうすこし…。が…がんばろう…ね…」
ゆっくりは微かな期待に賭けた。目を瞑って悪夢が過ぎ去ることを願っていた。
「ゆぅぅぅ…」
「ゆっぐりじないで……がえっでよぉ……」
「ゆっぐりじだいぃぃぃ………」
数分が経った。気のせいだろうか、外から悲鳴が聞こえなくなった。
「も…もういっだ?」
ゆっくりはおそるおそる目を開けた。
「よ…よがっだぁ!!」
「も…もうゆっぐりじでいいよね…」
だがゆっくりが安堵の表情を浮かべる前に事態は急転した。
「ゆ!!!!?」
「ど…どぼじでおそどにでてるのぉぉ!!?」
薄暗かったゆっくりの視界が急に明るくなった。
「ゆぁぁ!!!!お…おうぢがぁぁぁ!!!!」
「どぼじでにんげんがいるんだぜぇぇぇ!!!?」
「がえっだんじゃないのぉぉぉ!!?」
ゆっくりにとって頑丈であっても人間からしてみればまだまだ貧弱で軽量だ。職員達はどんどんゴミを持ち上げた。
ゴミ山に隠れていたゆっくりが次々と姿を現した。
「ゆぴゅぅぅぅ!!!!」
「さ…さぶいぃぃぃ!!!」
外に晒されたゆっくりに冷たい風が吹いた。まるでゆっくりの淡い期待を嘲笑うかのようだった。
「おうちがぁぁぁ!!!」
「どぼじでぇぇぇ!!!!あんなにがんじょうなおうぢだっだのにぃぃぃ!!!」
職員達は別にゆっくりを期待させてから絶望させようとしていた訳ではない。
ある程度ゆっくりを捕まえてからゴミ掃除をした方が効率が良い為今までゴミ山に手を付けていなかっただけなのだ。
「しょ…しょれはまりちゃのひみちゅきちだよぉぉぉ!!!かえちちぇ!!!」
コンクリートブロックを持ち上げた職員に向かって赤まりさが叫んでいた。ブロックに空いた穴でかくれんぼでもしてたのだろうか。
「お…おちびぢゃん!!なにじでるのぉぉ!!?ゆっぐりじないでにげるんだよぉぉぉ!!!!!」
外に晒されたゆっくりはゴミ山の奥深くへ必死に逃げていた。
「かえちちぇにぇ!!!!ひみちゅきちかえちてにぇ!!」
逃げずに甲高い声で叫ぶ赤まりさ。
「ゆぁぁぁ!!おちびぢゃんにげでぇぇぇ!!!ゆっぐりじないでごっぢぐるんだよぉぉぉ!!!」
「まりしゃがいっしょじゃにゃいとゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!」
堪りかねた親まりさが赤まりさのもとへ引き返してきた。帽子の上には赤れいむが乗っかっている。
「…………」
職員は引き返してきたまりさに向けてブロックを放り投げた。
「おちびぢゃぁぁぁん!!!!ゆっぐ…ゆ?…ゆぶぅっ!!!!!」
ブロックは見事にまりさの顔面に直撃した。
「まりちゃのひみちゅき……ゆぎゃぁぁぁ!!!お…おぢょうじゃぁぁぁん!!!!」
赤まりさはブロックの軌道を目で追っていた。赤まりさは親まりさのもとへ走った。
「じっがりじでぇぇ!!おぢょうじゃん!!じんじゃやぢゃぁぁぁ!!!!」
被害を受けたのはまりさだけではない。帽子の上に乗っていた赤れいむも巻き添えを喰らった。
「……ぅ……ゅ………ゅ…」
「りぇ…りぇいみゅぅぅぅ!!!どびょじでぇぇ!!!!ゆっくちちちぇぇぇぇ!!!!」
赤れいむは体の3分の1程が抉れていた。これでも辛うじて生きているのだ。このしぶとさがゆっくりの厄介なところなのだ。
「ひみぢゅぎちしゃん!!おちょうじゃんからはなれぢぇね!!!ゆっくぢちにゃいではなれてにぇ!!!!」
赤まりさは必死にブロックを押していた。滑稽な画だ。押していると言うより寄りかかっていると言った方が良い。
「ゆぅぅぅぅぅ!!!いじわりゅじにゃいでぇぇぇ!!!うぎょいぢぇぇぇぇ!!!…ゆ!!!おしょらをういちぇりゅぅぅ!!!」
職員が赤まりさを摘んでいた。そのまま袋の中に放り込み瀕死の赤れいむも袋の中に放り込んだ。
「ぅ……ぅぅ………っ!!……!……ぅ…」
職員は2匹が入った袋をまりさに見せ付けた。まりさは口元にブロックがめり込んでいる為声を出せない。
「おぢょうじゃぁぁん!!!だじゅぎぇでぇぇぇぇ!!!!ここきゃらだじぢぇよぉぉぉ!!!!!」
袋の中から赤まりさの悲鳴が聞こえる。職員はまりさの目の前で袋を揉みしだいた。
「ゆぎぃ!!!!いぢゃい!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!だじ……ゆぎゅっ!!!!」
赤まりさがぐちゃぐちゃに潰されていった。
「っ!!!!!!ぅぅ…っ!!!!!!ぅ……!!!!!!」
まりさは声にならない悲鳴を上げた。目からは止め処無く涙が溢れていた。
「っ!!!!ゅ…ゅぅ…っ!!!!………!!!!」
赤まりさも赤れいむも原型が留めなくなるまで揉みしだかれた。
「…ひゅっ!!……ひゅっ!!……ゅ!……か…ひゅっ!!…」
職員はまりさにめり込んでいるブロックを持ち上げた。まりさの歯は粉々で口内から餡子が吹き出ていた。
「…ひゃっ!!…いひゃっ!!!………ひゅっ!!」
まりさはぐちゃぐちゃになった娘の死骸の入った袋の中に入れられた。抵抗らしい抵抗もできなかった。
「ひゅっ!!!…ひぃっ!!…」
彼は袋を置き踏み付けようと足を上げた。が、途中で何か思い付き足を下ろした。
「っ!!!!ひゃっ!!!…いひゃぁぁぁぁ……」
彼の手にはブロック。まりさにめり込んだあのブロック。袋の中のまりさの血走った目と職員の目が合った。
「………」
職員はニヤリと笑みを浮かべた。そしてブロックが落とされた。
さて残りのゆっくりは奥に逃げてはゴミを退かされて捕まり、また逃げては退かされて捕まるの繰り返しだった。
「ごないでぇぇぇ!!!」
「あっぢいっでよぉぉぉ!!!ゆっぐりさぜでぇぇぇ!!!!」
「はなすんだじぇ!!やぢゃぁぁ!!じにぢゃぐにゃい!!ゆっぐぢじぢゃいぃぃぃぃ!!!」
次々に捕まるゆっくり。残ったゆっくりも逃げ場はほとんど無い。
「どぼじでごんなごどずるのぉぉ!!!?れいぶだぢだっで!!……れいぶだちだっでいぎでるんだよ!!!!」
一体誰の入れ知恵なのか最近妙に哲学的なことを言うゆっくりがいるのだ。
「そうだよぉぉぉ!!!みんないぎでるんだよ!!!!いっじょうげんべいいぎでるのにぃぃぃ!!!!」
職員達はヤレヤレという表情をした。
「いいこと教えてあげるよ」
1人の職員が足元の赤れいむを摘みながら言った。
「たじゅげぢぇぇぇぇ!!!おぎゃあしゃぁぁぁん!!!ちにぢゃくないよぉぉぉ!!!」
赤れいむはじたばたした。
「でいぶのあがぢゃぁぁん!!!おろじでぇ!!おろじで!!あがぢゃんだっで…いぎでるんだよ!!」
彼は赤れいむを落とすと思いっきり踏み付けた。
「ゆぎゃぁぁぁ!!!あがぢゃん!!!あがぢゃんがぁ!!!!でいぶのゆっぐりじだあがぢゃんがぁぁぁ!!!」
彼は足を退けた。赤れいむの姿形は残っておらず丸い餡子の花が咲いていた。
「生きているとか死んでいるとか、そういうのはな俺達人間が決めることなんだよ。お前達が決める権利は無い!!!」
彼はきっぱりと言い切った。
「ぞんなのどがいはじゃないわぁぁぁぁ!!!!」
「そ…ぞんなぁぁぁ!!!!ひどずぎるぅぅ!!!!」
「いぎだいよぉぉ!!!まりざはいぎだいのにぃぃぃ!!!」
「いっじょにゆっぐりじようよぉぉ!!」
ゆっくりの戯言に付き合う職員は誰もいなかった。
「やぢゃぁぁぁ!!!だじでぇぇぇ!!!いやぁぁ!!!じにだぐない!!!じにだぐな…ゆぎょっ!!!」
「ごわいよぉぉぉぉぉ!!!!おぞどぉ!!おそどにだじでよぉぉぉ!!!」
「ゆぎぃっ!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!ぎゅえっ!!!!!」
ゆっくりは全て回収され潰された。結局トラック1台分の荷台をいっぱいにするくらいの数がいたようだ。
ゴミの山は昼頃には綺麗さっぱりに消えていた。後は所々に散らばった餡子やクリームの掃除だ。
掃除と言っても単に水を撒いてお仕舞い。ゴミもゆっくりも無くなった。
「ご苦労様です」
「あ、これはどうも。どうですか?綺麗になりましたか」
地元の有力者らしき初老の男がやってきた。
「綺麗になりましたよ。実は春になったらここに花壇を植えようと思うんです。そうしたらもうゴミは捨てられないでしょう」
「いいですね。あ、花壇でしたら我が社のゆうかりんはいかがですか?花壇の世話が大好きなんですよ。お安くしますよ」
「ハハハ。実はその話なんですよ。そうですね、5匹ほどいいですか」
次の日からゴミ山だった場所にレンガで花壇が作られるようになった。春になったら種が植えられ綺麗な花を咲かせることだろう。
(あ、そうだ。住民税払っちゃおう)
青年は帰宅途中コンビニに立ち寄った。ちゃっちゃと支払いを済ませ週刊誌をパラパラと捲っていた。
(ん?うぁぁ…ウザイのが来たよ)
窓の外を見ると数匹のゆっくりがこちらにやってくるのだ。入口付近で止まると泣き言を言い始めた
「いれぐだざい!!!おうぢにいれでぎだざいぃぃぃ!!!」
「さぶぐでゆっぐりでぎばぜん!!!おでがいじばず!!あげでぐだざいぃぃ!!!!」
「ゆっくちちちゃいよぉぉぉ!!!!しゃむいよぉぉぉ!!!」
「いれでよぉぉぉ!!!ゆぴぃぃぃぃぃ!!!!」
家族なのだろうか、それともたまたま集まっただけなのだろうか。成体ゆっくりから赤ゆっくりまで数匹のゆっくりが入口に集まっていた。
最近都会のゆっくりがコンビニや店の中にやってくるようになった。因みに自動ドアはセンサーが感知しないため開いてはくれない。
自動ドアではなく引きドアの場合もある。こちらはゆっくり程度の力ではドアを開けることは出来ない。
そのため人間が入るときに一緒に入ってくるのだ。当初は金バッジの飼いゆっくりが買い物にやってくることがあったため問題は無かった。
だがそのうち野良ゆっくりが食料を盗みにやってきたり外が寒いからだとか暑いからだとか雨が降ってるからだとかで頻繁にやってくるようになったのだ。
1匹で行動できる金バッジの飼いゆっくりならまだしもお金を持ってるはずも無い、持っていても硬貨1枚ぐらいの野良ゆっくりだ。
商品に手を出すしぎゃあぎゃあ五月蝿いし他の客が気付かず潰して店が汚れるしで迷惑千万なのだ。
「あ…あいたよ!!」
「いまだよ!!おちびぢゃん!!」
1人の客がゆっくりを跨いで入ってきた。自動ドアが開いた隙に入口付近に集まっていたゆっくりが店の中へ殺到した。
「ゆぎぇっ!!いだい!!いだいぃぃぃ!!!」
「あんよじゃんがいぢゃいぃぃぃぃ!!!」
「ゆわぁぁぁぁぁん!!!いぢゃいよぉぉぉ!!ゆっぐぢでぎにゃいぃぃ!!!」
「やぢゃぁぁ!!!おそどにでだぐないぃぃぃ!!」
ゆっくりを撃退するためコンビニや店の入口に靴吹きマットが敷かれている。学校や会社の入口に敷いてある緑色のマットを想像していただきたい。
あの突起物がゆっくりの底部に激痛を与えるのだ。マットは開店祝いに加工所が無料で提供してくれる。
予断だが実はこれには裏があるのだ。加工所が無償提供した靴吹きマットは、実は一部の成体ゆっくりが突破できることがあるのだ。
赤ゆっくりや子ゆっくりであれば撃退できる。成体ゆっくりもマットの上を歩くのは痛いのだが我慢すれば突破できなくもないのだ。
勿論全ての成体ゆっくりを撃退できるマットは存在する。それはステンレス製で出来たマットだ。学校で見たことがある人も多いだろう。
人間だって素足でこの上を歩くと痛みが走る。ゆっくりであれば尚更だ。ちなみにこのマットは購入しなくてはならない。
無償で提供されたマットでは撃退できないゆっくりが増えれば店側はこのマットを購入するだろう。無償提供の裏にはこういう狙いもあるのだ。
「あんよざん!!!じっがりじでぇぇぇ!!!ゆぎぃぃぃぃ!!!」
「いだいよぉぉぉ!!!」
「じぇんじぇんゆっくちでぎにゃいぃぃぃ!!!」
入口のマットの上で泣き叫ぶゆっくり。店員がやって来て駆除する。
「いやだぁぁぁ!!!ゆっぐぢさぜでよぉぉぉぉ!!!!いや!!いやぁぁぁ!!!」
既に一般化したゆっくり専用のゴミ箱。勿論コンビニにも燃えるゴミや燃えないゴミと共に設置されている。
「ゆあぁぁぁ!!!お…おみずさん!!やべでっ!!どげじゃうぅぅぅ!!どげじゃうよぉぉぉ!!!」
ゴミ箱の中は水が溜まっている。既に何匹か捨てられており餡子の溶けた黒い液体と化している。
「やびぇぢぇぇぇぇ!!!じにじゃぐにゃいぃぃぃ!!!!もっぢょゆっぐぢじぢゃいよぉぉぉぉ!!!」
「どぼじでゆっぐぢさぜでぐれないのぉぉぉぉ!!!いれでよぉぉ!!!おうぢぃぃぃ!!!おうぢぃぃぃぃ!!!」
次から次へとゴミ箱へ捨てられていく。まりさの場合は帽子を燃えるゴミに入れてから専用のゴミ箱に入れる。帽子で浮かんでいられては困るのだ。
「がぼっ…ゆぎゃぁぁぁ!!じぬぅぅぅぅ!!!!やぢゃぁぁぁ!!!たずげで!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
「どげぢゃうぅぅぅ!!!だれがぁぁぁ!!!だずげでぇぇぇ!!!ごごがらだじでぇぇぇぇ!!!」
「つべぢゃいぃぃぃぃ!!!!やぢゃぁぁぁぁ!!!もっぢょ…もっぢょゆっぐぢぢじゃかっちゃぁぁぁぁぁ!!!」
暫くはゴミ箱から悲鳴が聞こえてたが直にその声は小さくなっていった。
(おお。死んでる死んでる)
青年はコンビニを出た後ゴミ箱を少し覗いてみた。甘ったるい匂いが漂ってきた。
「ゆっくりってのはどこにでもいるもんだな。冬ぐらい大人しくしてろよ」
車に乗りながら青年は呟いた。
(そういえばゆっくりって中身が冷えて辛いから冬篭りするんだよな。別に凍死とかするわけじゃなさそうだし)
実はゆっくりも風邪をひく。寒さにやられて風邪をひいてしまうのだ。それが原因で死んでしまう場合もあるとか。
だがゆっくりが凍死するというケースはあまり無い。動物であれば心臓が止まれば死ぬがゆっくりにはそうした器官は無い。
餡子が無事であれば死にはしないのだ。極寒の中動かなくなったゆっくりが目撃されているがこれは死んでいるのではなく固まっただけだ。
体を温めてやれば蘇生する。言わば仮死状態である。つまり病気にならず食料もあれば一応冬でも生きてはいられるのだ。
勿論ゆっくりはできないが。
(…だったら冬篭りしなくても即死ぬ訳じゃないんだよな)
青年はニヤリとした。
(そういえばあそこら辺に昔秘密基地作ったよなぁ…)
彼の言うあそこら辺というのは自宅から少し離れたところにある公園だ。自然に囲まれており木々を抜けると少し開けたところがある。
人気の無いところでもあり子供の頃友人と秘密基地を作ってよく遊んでいたものだ。
(最近の子供達も秘密基地とか作ってんのかな?)
秘密基地といえばダンボールや新聞紙、古くなった毛布や布切れなどを持ち出してそれっぽいものを作っていたものである。
もし最近の子供達も秘密基地を作って遊んでいるならばそこにゆっくりが大量に住んでいる可能性はある。
(結構大掛かりになりそうだな。丁度良い。明日は土曜日だし)
青年は車を車庫に入れ帰宅した。帰宅する直前に例の2匹の死骸があった場所を眺めたが綺麗に除去されていた。
(加工所?近所の方?手間が省けたわ)
翌朝青年は早起きして色々と準備を進めた。
(庭はダメだな…バルコニーにするか。洗濯物は…庭に干そう)
ゆっくりを庭に放置というのもいいが穴を掘られたり小さな隙間から逃げられたりしたら面白くない。
コンクリートの地面であり逃げ場所の無い狭いバルコニーこそゆっくりの住居として相応しい。
物干し竿などをバルコニーから庭に移した後自宅から少し離れた公園に向かった。
続く
by エルダーあき
冬になると熊などの動物は冬眠する。こうした動物は変温動物と呼ばれており文字通り気温に応じて体温が変動する動物なのだ。
冬になると体温が下がってしまうため冬の間は冬眠をする。そして昨今冬眠をする生き物が1種類増えた。それはゆっくりである。
「おちびちゃん!!いまからあまをふさぐからね!」
「あきしゃんばいばい!」
「はるになったらでてくるからね!」
「おちびちゃん、おそとはさむいからおかあさんのところへおいで」
ゆっくりは饅頭と同じ構造をしている。冬になり寒くなれば中身の餡子も冷えてしまう。このため冬眠をするのだ。
晩夏から秋の間に食料を貯蓄し、運が良ければ人間の衣服や毛布などを集め冬に備える。冬になったら巣の穴を塞ぎ春まで外には出ない。
冬眠が成功するかは運に左右されることも多く完璧な準備をしていても失敗して春を迎えることができない場合もある。
"冬眠"と書いたが実際には巣の中で春まで眠り続ける種類と食事を切り詰めて巣の中で通常通りに生活する種類がある。
山林では地面や傾斜に穴を掘って生活するゆっくりが多い。冬に備えて巣を拡張し食料を貯蔵する。そして冬が来ると穴を塞ぐのだ。
中には洞窟で暮らすゆっくりもいる。大抵は複数の家族が暮らしているのだが洞窟は冬眠には向かない。穴を塞げないからだ。
こうした場合は冬に備えて越冬用の住居を作る。洞窟で冬眠が出来るのはドスのいる群れだけである。
ドスも洞窟の中に入り背中を外に向けて穴を塞ぐのだ。ドスは通常のゆっくりに比べて丈夫に出来ている。
ドス1匹だけなら冬眠する必要は無いくらいだ。このため洞窟の穴をドスの巨体で塞ぐことができる。結構ドスは頑張っているのだ。
一方都会に存在する大抵のゆっくりも冬眠をする。"大抵"と書いたのは例えば飼いゆっくりのように冬眠しない個体もいるからだ。
都会でもゆっくりを見かけることが多くなったが冬になれば人前に現れるゆっくりは激減するものである。
「おでがいじまずぅぅぅぅ!!!このごだげでも!!このごだげでももらっでぐだざいぃぃぃ!!!」
「とっでもゆっぐりじだこでずがらぁ!!おでがいじばず!!がっであげでぐだざいぃぃ!!!」
冬のある夜、とある戸建の門前でれいむとまりさが帰宅しようとしていた青年に必死に嘆願していた。
「はぁ?」
「おでがじばずぅぅ!!!れいぶだぢは…かいゆっぐりだっだんでずぅぅ!!」
「にんげんざんにはめいわぐかげまぜんがらぁぁぁ!!!がっでぐだざいぃぃ!!」
「ゆぴぃぃぃ!!!しゃみゅいよぉぉ!!」
「しゃむくちぇゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!」
冬なのに人前に現れるゆっくりには2つの種類に分かれる。1つは冬眠の準備不足のゆっくり、もしくは早くも冬眠に失敗したゆっくりだ。
人間に食料をせびったりあわよくば飼って貰おうという魂胆がある。こういうのは問答無用で駆除してしまおう。
もう1つは捨てられた元飼いゆっくりである。実は冬というのは飼いゆっくりが一番捨てられる時期でもあるのだ。
大抵飼いゆっくりが捨てられるのはゲス化したり許可無く子供を作ったりした場合だ。加工所が原因を調べた結果2つの理由が判明した。
2つの理由とも冬という季節に起因している。
『ゆぅぅ…さむいよぉ…』
『さむいのはゆっくりできないよぉ…』
冬は寒い。人間もゆっくりも寒いのは嫌なものである。
『すりすりしようよ!』
『そうだね!そしたらあったかくなるね!』
ゆっくりは親愛の印に頬擦りをするという。友達や子供、親や恋人とすりすりするのだ。
『す~りす~り…ゆ~ん。すこしあったかくなってきたね!』
『す~りす~り。ゆっくりできるね!』
時には寒くなった体を温めることもできる。
『『す~りす~り!』』
冬は寒い。少しすりすりしただけではすぐに寒くなってしまう。当然すりすりする時間も長くなる。
『な…なんだか…からだがあつくなってきたよ…』
『ゆ……ゆぅぅ…』
ゆっくりがどうやって子作りをするのかご存知であろうか。実は体を擦り合わせ続けることでも妊娠してしまうのだ。
『ゆぅぅぅぅ……ゆはぁぁぁ…』
『も…もう…がまんできないよ!』
すりすりは前戯でもある。長時間すりすりしたためすっかり発情してしまいそのまま交尾に発展してしまうのだ。
『『すっきりー!!』』
結局止まらず子供が出来てしまう。
『ゆぁぁぁ!!!どうしよう!!あがぢゃんがでぎぢゃっだぁ!!』
『ゆぅぅぅ!!どうじでぇ!!!?どうじであがぢゃんができぢゃっだのぉぉ!!?』
無許可で子供を作ってはならないとペットショップや飼い主から何回も言われてきた。飼いゆっくりにとって最早常識である。
子供が出来た頃にはもう遅い。いくら嘆いても子供が消えてくれたりはしない。
『うわっ!!餓鬼が出来てるじゃねえか!!』
『ゆぅぅ!!ち…ちがう!!ちがうよぉぉ!!』
『す…すりすりしてたら…あかちゃんができちゃったぁぁ!!』
『当たり前だボケェェェ!!!』
寒いからすりすりして温め合っていたら発情してすっきりまで発展してしまいました、なんて事をゆっくりが説明できるわけが無い。
子供を作ったということで捨てられてしまう。冬に善良なゆっくりに出会ったらこの可能性が高い。
もう1つの理由は冬にあるイベントだ。冬のイベントといえば…クリスマスでありお正月でありバレンタインデーである。
こうしたイベントに付き物なのがプレゼントや美味しいご馳走だ。飼いゆっくりがどこからかそのことを知ればどうなるだろうか。
『あまあまさんがたべたいよ!』
『ぷれじぇんとしゃんはいちゅくりぇるの?』
プレゼントやご馳走が貰える、ということで頭の中は一杯だ。それがいつしか自分を飼い主より上の存在だと誤解させてしまうのだ。
『いづになっだらあまあまさんぐれるのぉぉぉ!!?ゆっぐりしないでもっでごいぃぃ!!』
『きょのきゅじゅ!!ゆっくちちにゃいでちょうらいにぇ!!』
最早ゲスだ。ゲス化しなくても饅頭のくせに物を欲しがるのに嫌悪する飼い主もいる。それで捨てられてしまうのだ。
「ふぅん」
青年はゆっくり家族を眺めた。ゲス化しているようには見えない。となると子供を作って捨てられたようだ、と彼は判断した。
「ゆ…ゆぅ…にんげんしゃんの…おちぇちぇ…あっちゃきゃいよぉ……」
青年は赤れいむを掌に乗せた。ポケットの中に手を突っ込んでいたため掌は温く赤れいむはぴったりと頬をくっ付けていた。
「か…かわいいでしょ!!いいこでしょ!!ぜったいににんげんさんにめいわくかけませんからぁぁ!!」
「おでがいじまず!!そのこをもらっでぐだざいぃぃ!!」
「ま…まりちゃも…ゆっくち…ちちゃいよ…」
彼は赤れいむを見つめた。別に汚くは無い。野良にいるゆっくりではマシな方だろう。
「ふん。馬鹿馬鹿しい」
赤れいむを思いっきり地面に叩き付けた。
「ゆぴゃっ!!」
地面に叩き付けられた衝撃で赤れいむは弾け餡子が四散した。
「ゆぎゃぁぁぁ!!!!おちびぢゃんがぁぁぁ!!」
「ど…どぼじでぞんなごどずるのぉぉ!!!」
彼はそのまま赤まりさを捕まえると遠くの方へ投げ飛ばした。
「やぢゃぁぁ!!おろじぢぇぇ!!きょわいよぉぉ!!!」
赤まりさの叫び声が小さくなった。
「お…おちびぢゃぁぁん!!!」
「ゆわぁぁぁ!!!」
れいむとまりさは赤まりさが投げられた方向へ走り出した。
「飼わねぇよ。馬鹿」
青年は家の中へ入っていった。
「おちびぢゃぁぁぁん!!!へんじじでぇぇ!!」
「どこいっぢゃっだのぉぉ!!?おちびぢゃぁぁん!!!」
れいむとまりさは赤まりさを電灯の明かりを頼りに必死に探し回っていた。
「ゆ…ゆわぁぁぁ!!!じっがりじでぇぇ!!」
れいむが赤まりさを見つけたようだ。まりさがれいむの所へ走った。
「おちびぢゃぁぁぁぁん!!!じっがりじでぇ!!へんじじでよぉぉ!!!」
赤まりさは顔から地面に着地したようだ。赤まりさの小さな帽子は空中で脱げてどこかにいってしまった。
「おちびぢゃぁぁん!!おちび…ゆ…ゆぎゃぁぁぁ!!!」
れいむが赤まりさを舌で動かした。うつ伏せに倒れていた赤まりさがれいむの方向を向いた。
「な…なにごれぇぇ!!おちびぢゃぁぁん!!おちびぢゃぁぁん!!ゆっぐりじでいっでね!!ゆっくりじでいっでね!!」
まりさも悲鳴を上げた。赤まりさの顔面はぐちゃぐちゃで餡子で真っ黒だった。口から吐き出したのかどこから吹き出たのか分からない。
「ゆわぁぁぁん!!!じんじゃやだぁぁぁ!!おべべあげでよぉぉ!!!へんじじでよぉぉ!!!」
「どっでもゆっぐりじだおちびぢゃんだっだのにぃぃ!!!ひどいよぉぉぉ!!!ゆわあぁぁぁん!!!」
2匹は大いに泣いた。と、電灯で照らされていた2匹が急に大きな影に飲み込まれた。
「な…なに…?」
「ゆっぐ……な…なんなの…?」
2匹は振り向いた。2匹の目にまず入ったのは白い湯気であった。湯気の後ろには人間が立っていた。
「に…にんげんさん…な…なにかよう?」
まりさが恐る恐る口を開いた。人間はまりさを無視しれいむの目の前に立った。
「れ…れいむに…ひどいこど…しないでね…。お…おちびぢゃんが…じんじゃっだんだよ…」
れいむが縮こまって答えた。人間は何も答えず手に持っていたモノを傾けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!あづいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
人間が手にしていたモノとは薬缶だった。薬缶から注がれた熱湯を浴びたれいむは絶叫した。れいむの周りには白い湯気が立ち篭っていた。
「じぬぅぅぅ!!!!あづいぃぃ!!!やべでぇ!!!!とげぢゃうぅぅぅ!!!」
「ゆあぁぁぁ!!!!なにじでるのぉぉぉ!!!!れいぶにひどいごどじないでぇぇぇ!!!!」
まりさは慌てて人間に体当たりをした。だが人間は微動だにせず逆にまりさが弾き飛ばされてしまった。
「ゆぎぇっ!!!…っぐ……ゆ……あぁぁぁぁ!!……さ…さっぎの!!…」
れいむに熱湯をかけていたのは先程の青年であった。れいむとまりさを駆除するために態々お湯を沸かしてきたのだ。
薬缶は両手に1個ずつ持っていた。薬缶1個で1匹駆除する気なのだろう。
「ゆぎぃぃぃぃ!!!だずげでぇぇぇ!!じにだ…ゆぶびゅっっ!!!!」
効率良くゆっくりを溶かすにはまず熱湯をぶっかけ、熱湯でふやけた皮を思いっきり踏み付けてやることだ。
踏み付けられた衝撃でゆっくりの体が崩れる。そして晒された中身に残りの熱湯を注ぐのだ。
「…っゆ……っゆ……じ…に……だぐ…ない……だず……ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
体の一部が崩れ呻いていたれいむの餡子に熱湯が直撃した。直接内臓を痛めつけられ否応無しにれいむは覚醒させられ絶叫した。
「ゆわぁぁぁぁん!!!やべろぉぉぉぉ!!!!でいぶぅぅ!!!!れいぶぅぅぅ!!!」
まりさは泣きながら青年に突進した。
「ゆわぁぁぁぁ!!……ゆごぉぉぉ!!!!!!」
青年は一旦熱湯を注ぐのを止めてまりさを蹴り返した。まりさを蹴飛ばすと再び薬缶を傾けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!じぬぅぅぅぅ!!!!あづいよぉぉぉぉ!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!」
薬缶から熱湯が出なくなった。
「ゆ………っ……ぃ……っゆ……ゆ……」
れいむは虫の息だ。れいむを中心に黒い水溜りが出来上がっていた。
「ゆ…っぐ……よぐぼ…よぐも…でいぶどおちびぢゃんを!!!ゆがぁぁぁぁぁ!!!じねぇぇぇぇぇ!!!!」
まりさが果敢に飛び掛ってきた。しかし所詮はゆっくり。動きは遅く青年は空になった薬缶で思いっ切りまりさを地面に叩き付けた。
「ゆびぇっ!!!……っゆ…っゆ……っぐ……っゆ……」
脳天を薬缶で思いっ切り殴られたまりさは悶絶した。青年はもう1個の薬缶を傾けた。
「っゆ……ゆぎぃぃぃぃ!!!あづぅぅぅぅぅぅ!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
悶絶していたまりさが飛び上がった。ある程度熱湯をかけたところで彼はふやけたまりさの体を思いっきり踏み付けた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!いぢゃいぃぃ!!やべで!!!!やべでぇぇぇぇぇ!!!!」
まりさの体の3分の1程が潰れ餡子が晒された。青年は晒された餡子に集中的に熱湯を注いだ。
「ゆぎゃぁぁぁぁ!!あづいよぉぉぉ!!!やぢゃぁぁぁ!!じにだぐない!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
まりさの周りにも餡子が溶け込んだ黒い水溜りが出来上がっていった。
「だずげでぇぇぇ!!おねぇぇざぁん!!!おねぇざぁぁん!!ばりざじにだぐないぃぃぃぃ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁ!!!!」
ペットショップの店員か飼い主が女性だったのだろうか。まりさは必死に助けを乞うた。
「ゆぎぃぃ……やぢゃ……ゆ…っぐり…じだい…」
青年は薬缶を空にすると帰ってしまった。辺りはまりさとれいむ以外誰もいない。ただただ静粛であった。
「じ……にだ…ぐ…ない……ゆ……っぐ……」
まりさはまだ死んでいなかった。が、最早思考は停止している。熱湯で溶かされて体外に流されていく餡子。
餡子はゆっくりにとって命であり記憶でもある。まりさの記憶は殆ど失われた。先程叫んでいたおねえさんが誰なのかもう分からない。
徐々に徐々にまりさの頭の中は真っ白になっていった。
「…っゆ………ぇ…ろ………ぺ………ろ……っゆ…っゆ…」
まりさは本能だけで動いていた。ただひたすら舌を伸ばし餡子を舐め取っていた。命である餡子を体内に戻さなければ死んでしまう。
本能的に分かっているのだ。
「……ぇ…………ぇ……っ……ゅ……ぇ……」
れいむもまりさと同じく餡子を舐めていた。が、こちらはもう舌が少しだけ動いているだけだった。
「……っ……ゅ……っり……じ………」
れいむは最期の言葉を満足に呟くこともできずに息を引き取った。最期の言葉はゆっくりにとって本能的なものなのだろう。
「ぺ……………ぇ………っゆ………っぐ……」
残されたまりさは必死に餡子を舐めていた。そのうち舌の動きが鈍くなってきた。
「べ…………ぇ……………………」
最期の言葉は言えたのだろうか。舌をだらりと出したまままりさが動かなくなった。
(げっ!まだ残ってやがる…。まぁ…そのうち回収してくれる…かな…)
翌朝、青年は昨夜ゆっくりを駆除した場所に目を向けた。まだ2匹の死骸は残っていた。
ゆっくりの死骸が転がっているのは珍しくは無いがこういう場合は彼が責任を持って袋詰めして処理すべきであった。
(時間無ぇな…帰ってきてまだ残っていたら処理しよう。ごめんなさ~い)
そんな事を思いつつ彼は車庫に向かった。
「…ゆ……っ……よ…」
「さ……ま………ね」
青年の耳にゆっくりらしき声が入ってきた。
(ん!?何処だ?)
青年は辺りを見回した。すると隣の家の玄関の前に2匹のゆっくりが見えた。今丁度敷地内に侵入したところであった。
(何だ。お隣か。じゃ大丈夫だ)
ゆっくりを止めることなく、お隣に忠告することなく青年は車を発進させた。
さて、ゆっくりが留守中の住宅に侵入して家の中を荒らすという話がある。石を投げたり体当たりしてガラスを割って中に侵入するのだ。
実はこれ…性質の悪い都市伝説なのだ。色々な人やTV番組が実験した。加工所も実験した。結果は1匹たりともガラスを割れなかった。
そもそもゆっくり如きに侵入されるくらいならとっくの昔に強盗が侵入している。それにゆっくりにたいした力は無い。
試しに人間が石を口に咥えて吹き出してみるといい。割れるはずがない。ゆっくりでは尚更無理であろう。
では誰がこんな都市伝説を流したのであろうか。様々な意見がネット上を駆け巡った。
有力なのは新しいガラスを売り込みたいガラス屋が流したデマ説や防犯グッズを売り込みたい量販店や加工所のデマ説だ。
最近では農村の古い民家で侵入されたという話が大きくなったのではないか、という意見もある。
この他にも防犯意識を高めるために警察が流した噂ではないかという声もある。結果として防犯意識は高まり空き巣は激減したらしい。
ただ窓や戸を開けっぱなしにしていたためゆっくりが侵入するというケースはある。これはもう人間のミスだ。
最近では態々シャッターを閉めてから外出する人もいるらしい。兎に角、ゆっくりが住宅に侵入することは普通ならありえないのだ。
余談だがゆっくりの侵入を防ぐために販売された防犯グッズで一番売れたのは合成樹脂の防犯フィルムだそうだ。
「おおきいね!!ここがれいむたちのおうちだね!!」
「ゆぅぅぅ!!さむいんだぜ。ゆっくりしないでおうちのなかにはいるんだぜ!!」
成体ゆっくりとしてはやや小振りなれいむとまりさ。人間で言えば青年くらいだろうか。
「あけてね!!れいむはゆっくりしたいんだよ!!」
ドアに向かって叫ぶが何か反応があるはずがない。
「れいむ、こっちだぜ!!こっちにまどさんがあるんだぜ!!」
まりさは既に庭の方へ回っていた。
「ゆ!!すっごいひろいよ!!」
戸から家の中の様子が伺える。家の中を見るれいむの目は輝いていた。
「ゆっくりしないでなかにはいろうよ!!」
「おちつくんだぜ…まずはいしをさがすんだぜ!!いしでまどさんをこわせばおうちはまりさたちのものなんだぜ!!」
早速庭中を探し回った。
「なんでいしがないんだぜぇぇぇ!!!?これじゃこわせなんだぜぇぇぇ!!!!」
「まりざぁぁ!!!!どうじだの!!!はなじがちがうでじょぉぉぉ!!!」
ゆっくりに力が無いという話以前に民家の庭に手頃な大きさの石はそうそう転がってはいないものだ。
どこからか運んでくるという手もありそうだが怠け者のゆっくりが態々そんなことするはずもない。となればやることは1つしかない。
「こうなったら…まりさのひっさつざわのたいあたりでまどさんをこわすんだぜ!!!!」
「さすがまりさだね!!がんばってね!!」
まりさは助走をつけてから思いっきり飛び上がった。
「ゆぉぉぉぉ!!!!……ゆびぃっ!!!!!……い…いだいぃぃぃ……」
まりさはアルミサッシに顔を直撃していた。顔の真ん中辺りに横一直線の窪みが出来上がってしまった。
通常戸や窓は地上からいくらか高い場所に設置されるものである。床と地面が同じ高さの家はほとんど無い。
ゆっくりはある程度の高さまで飛び上がらなければまずガラスに触れることが出来ない。
「ま…まりさ!!どうしたの!!!?じっがりじでぇぇぇ!!!」
「い…いだい!!!いだいよぉぉ!!まりざのびがおがぁぁぁ!!!」
ゆっくりは痛がり屋だ。よくそれでガラスに突撃する気になれるものである。
「ゆあぁぁぁぁ!!!いだいよぉぉぉ!!!!」
「まりさはそこでゆっくりしててね!!こんどはれいむがやるよ!!」
れいむも助走をつけて飛び上がった。タイミングが遅かったのかアルミサッシにヘディングしてしまった。
「ぎゅえっ!!!!ゆぎゃぁぁぁぁ!!!あ…あだばがいだいぃぃぃぃぃ!!!」
この民家には無いが多くの民家ではテラスが設置されている。庭に出るとき靴が置いてある場所を浮かべていただきたい。
大きな長方形の石が敷いてあるだろう。あれをテラスというのだがその存在もゆっくりにとっては邪魔になっている。
人間視点ではたいした高さではないがゆっくりにとってはかなりのハードルである。テラスの手前で飛び上がっても戸には届かない。
戸の手前で着地。何とも馬鹿な画であろうか。前もってテラスに登ってから助走をつけてもたいした距離ではない。
意外なところにゆっくり防犯が備わっているものである。この他にウッドデッキも効果的だ。こちらも助走がつけられないからだ。
ここに気づいた植木屋がかなり儲けたという話もある。
「ゆぅぅぅぅ!!!!……ゆびぇっ!!!いぢゃいぃぃぃ!!!!いぢゃいよぉぉぉぉ!!!」
「おうぢぃ!!おうぢにいれろぉぉぉ!!!……ゆぎゃん!!!!ゆぎぃぃぃ!!!どぼじでわれないのぉぉぉぉ!!!!?」
2匹は何度もトライした。ガラスに届いたのは数回だけ。ほとんどがアルミサッシにぶつかったり戸の下の壁に直撃であった。
「ゆひぃぃぃぃ……い…いだいんだぜ……おかしいんだ…ぜ…」
「いだいよぉ……れいぶの…おがおさんがぁ……」
2匹はボロボロだった。顔も少し腫れている。仮に平均的な成体ゆっくりの大きさであってもガラスを割るには至らなかっただろう。
「こ…こんな…こんなゆっくりできないおうちは…こっちからねがいさげなんだぜ!」
「そ…そうだよ!!ゆっくりしたれいむには…あわないよ!!」
ゆっくりはやけにプライドが高い。悪態をつきながらそそくさと逃げ出した。
(何だ、あの人だかり?)
こちらは通勤中の青年。信号待ちの間ふと傍の河川敷を眺めた。かなりの人数がわらわらと集まっていた。
(何やってんだ?………あぁ、駆除か)
信号が青に変わった。青年は車を発進させた。
河川敷には作業服を来た男性が十数人。彼らの前にはゴミが山のように捨てられていた。
「派手に捨てられてますね。わ、冷蔵庫だ」
「こういう所には一杯いるぞ」
都会にいるゆっくりが住む場所は様々であるが大規模にゆっくりが住む場所がある。それはゴミが不法投棄されている場所である。
そのような所に人間は近付こうとしないし土地の所有者も行きたがらない。つまり天敵がいないのだ。
さらにそこに捨てられているゴミといえば冷蔵庫、TV、タイヤ…とゆっくりにとってはダンボールよりも住処に利用できるものばかりだ。
しかも時間が経てば新しいゴミが捨てられる。住処が増えるのだ。相当数のゆっくりが収容できる。
「何匹いますかね?」
「百は下らんぞ。逃げられると厄介だ。バリケードの用意をするぞ」
彼らの後方からトラックが数台やってきた。トラックからバリケードを降ろすとゴミの山の周囲に設置した。
さて、実は彼らは加工所の職員なのだ。彼らの業務は一応ゆっくりの駆除なのだが単にゆっくりを殲滅するだけではない。
こうした不法投棄されたゴミの処分も請け負っているのだ。言うまでも無く企業イメージのアップを狙っている。
現在のゆっくり市場は加工所の独占だが新興企業の成長もめざましい。他社への優位性を維持するためにこうした活動も行っているのだ。
ゴミを処分して街は綺麗になる。地域住民は喜ぶ。加工所の好感度も上がる。ゆっくりの駆除も出来る。何と素晴らしい活動だろう。
「煙幕の用意が出来ました」
「さっさと投げてくれ。おーい!!ゆっくりが出て来るまでに手袋はめたり準備しとけよ!!」
煙幕を焚きゴミ山へ投げた。強引にゆっくりを捕まえるのもいいが何処に隠れているのか分からないし結構面倒なのだ。
こうして煙幕で炙り出した方が捕まえやすいしゴミの処分もしやすい。
「ゆぅ~……ゆぅ~」
「ゆ~ん……ゆぴぃ……」
「ゆぅ~………」
一方ゴミ山の中では加工所職員の予想通り大量のゆっくりが住んでいた。皆ぐっすりと眠っている。
通常のゆっくりであれば警戒心がいくらか在り特に都会のゆっくりであれば朝早くから活動しているものである。
天敵からの脅威が薄くなりさらにダンボールハウスよりも温かい環境にいるため警戒心が消えてしまったのだ。
「まだですかね?」
「まだ充満してないよ。もう少し待とう」
煙はもくもくとゴミ山を包んでいった。
「ゆぅ……ゆぅ…」
呑気に涎を垂らしながら寝ているゆっくり。徐々に変化が出てきた。
「ゆぅ………ゆ?…ゆ!!」
「ゆぁ!!な…なんかへんなにおいがするよ!」
ゆっくりが次々と起き出した。
「げほっ!!げほっ!!」
「くしゃいよぉぉ!!ゆっぐりできにゃいぃぃ!!」
「きぇほっ!!くりゅしぃぃ…」
「ゆ…おちびぢゃん!!ゆっくりしないでおそとにでようね!!」
「おちびちゃん!!おかあさんのおくちにはいってね!!」
ぞろぞろとゴミ山の中から大勢のゆっくりが現れた。
「ゆぅぅ!!さむいぃぃ!!」
「しゃむいよぉぉ!!おきゃあしゃん!!しゅりしゅりしちぇ!!」
久々の外は寒かった。
「ゆ!!!!」
「な…なんで…なんでこんなところににんげんがいるのぉぉ!!!?」
ゆっくりの目の前には大勢の人間。果敢にも1匹のまりさが人間の前に立ちはだかった。
「ここはまりさたちのおうちだよ!!にんげんはゆっくりしないででていってね!!」
その声に励まされたのか加勢するゆっくりもちらほらと現れた。
「そうだよ!!ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!!さっさとでていってね!!」
「でちぇいっちぇね!!」
「あまあまおいてってね!!たくさんでいいよ!!」
段々五月蝿くなってきた。
「ゆぁ!!!おそらをういてるぅぅ!!」
一番最初に文句を言ったまりさが持ち上げられた。まりさを持ち上げた職員の手には袋。袋は3重に重なっていた。
「ゆ!!なにするの!!!?らんぼうしないでね!!」
まりさはゴミ袋の中に入れられた。まりさが入ったゴミ袋を地面に置くと思いっきり袋を踏み始めた。
「ゆぎぃぃ!!!いだい!!!ゆごっ!!!ぶっ!!!!やべっ!!!ゆぎぇぇぇぇ!!!!!」
袋を踏む足は鉄芯の入った硬い作業靴。まりさは袋の中でひしゃげ餡子を吐き出していた。
「ゆぁぁぁ!!!なにじでるのぉぉぉ!!!?」
「まりざをはなじでぇぇぇ!!!!」
「おきゃぁあしゃぁぁん!!!きょわいよぉぉ!!!」
ゆっくり達はすぐに状況を理解した。
「だずげっ!!!!ごっ!!!!じぬぅぅ!!ゆるじぢぇぇぇ!!!あぎゃぁぁぁ!!!!」
袋の中のまりさは体中が破れ全身から餡子を漏らしていた。
「に…にげるよ!!!れいむはにげるよぉぉ!!!」
「ごわいよぉぉぉぉ!!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
楽園は地獄と化した。ゆっくりは逃げ惑ったが次々と職員に捕まり袋の中に入れられ潰されていった。
「いやだぁぁぁ!!!はなじでぇぇぇ!!!」
「ゆっぐりじだいよぉぉ!!じにだぐないぃぃぃ!!!じにだぐないぃぃ!!」
「ゆぶっ!!!ゆぁぁぁ!!だじでぇぇぇ!!!だじでよぉぉぉ!!!ゆごっ!!!ゆぎぃっ!!!」
「つぶでるぅぅぅぅ!!!!いやだ!!!ゆっぐりじだいぃぃ!!!」
運良く職員を突破出来たゆっくりも突然目の前に現れたバリケードの前で止まってしまった。
「なにごれぇぇぇ!!!?あっぢにいがぜでぇぇぇ!!」
「かべざんどいで!!!ありずをゆっぐりさぜで!!!」
「わがらないよぉぉぉ!!!」
「いじわるじないでぇぇぇ!!!じんじゃうぅぅ!!!どいでよぉぉぉ!!!」
ゴミ山をぐるりと囲んだバリケードはどうしても赤ゆっくり位なら抜け出せそうな隙間が残ってしまう。
が、赤ゆっくりがバリケードの前まで逃げられるのは稀であるしこの状況で親から離れてでも逃げようとする赤ゆっくりは皆無だ。
「ゆぁぁぁ!!ういでるぅぅ!!!おぞらをういでるぅぅぅ!!!」
「おろじでぇぇ!!!ごろざないでぇぇぇ!!!」
「むぎゅぅぅぅ!!!ばぢぇをはなじでぇぇぇ!!!」
「どぼじでぞんなこどずるのぉぉ!!!!ありずはゆっぐりじでだだげなのにぃぃ!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!」
次々とバリケード前でオロオロしていたゆっくりが捕まえられていった。
「だじゅぎぇでぇぇ!!!」
「おどぅざぁぁぁん!!!!おがぁざぁぁん!!!どうじだらいいのぉぉ!!?」
「こっちににげるんだぜ!!!おうちならあんしんなんだぜ!!!」
「おちびぢゃん!!!おうちににげるんだよ!!」
大慌てでゴミ山に戻るゆっくりもいた。
「おきゃあしゃぁぁぁん!!!きょわいよぉぉぉ!!!」
「やぢゃぁぁ!!れいみゅちにちゃくにゃいよぉぉ!!」
「ゆっぐりじだいよぉぉ!!」
薄暗いゴミ山の中でぶるぶる震える小さなゆっくり。それを親ゆっくりが宥めた。
「だいじょうぶだよ!!このおうちはね、とってもがんじょうなんだよ!!だからにんげんはやってこれないよ!!」
確かにここにあるゴミはダンボールに比べて遥かに耐久性がある。頑丈ではあるがそれはあくまでゆっくりにとってだ。
「ほ…ほんちょだ!にんげんしゃんがこにゃいよ!!」
「もうすこしのしんぼうだよ!がまんしたらまたゆっくりできるからね!!」
「まりしゃがまんすりゅんだじぇ!!」
おうちの中は安全だった。だが外からは逃げ遅れた仲間のゆっくりの悲鳴が聞こえてくる。
「やぢゃぁぁぁぁ!!!!ゆっくちさせちぇぇぇ!!!」
「お…おちびぢゃぁぁぁん!!どごいっぢゃっだのぉぉ!!?ゆぎぃっ!!!いやぁぁぁ!!はなじでぇぇぇ!!」
一体このゴミ山にどれだけのゆっくりがいたのだろうか。いつの間にか餡子とクリームが詰まった袋がトラックの荷台の半分を占めていた。
「きょ…きょわいよぉ…」
「ゆぅぅぅ……」
外から聞こえる悲鳴にゴミ山に避難したゆっくりは縮こまっていた。
「も…もうすこし…。が…がんばろう…ね…」
ゆっくりは微かな期待に賭けた。目を瞑って悪夢が過ぎ去ることを願っていた。
「ゆぅぅぅ…」
「ゆっぐりじないで……がえっでよぉ……」
「ゆっぐりじだいぃぃぃ………」
数分が経った。気のせいだろうか、外から悲鳴が聞こえなくなった。
「も…もういっだ?」
ゆっくりはおそるおそる目を開けた。
「よ…よがっだぁ!!」
「も…もうゆっぐりじでいいよね…」
だがゆっくりが安堵の表情を浮かべる前に事態は急転した。
「ゆ!!!!?」
「ど…どぼじでおそどにでてるのぉぉ!!?」
薄暗かったゆっくりの視界が急に明るくなった。
「ゆぁぁ!!!!お…おうぢがぁぁぁ!!!!」
「どぼじでにんげんがいるんだぜぇぇぇ!!!?」
「がえっだんじゃないのぉぉぉ!!?」
ゆっくりにとって頑丈であっても人間からしてみればまだまだ貧弱で軽量だ。職員達はどんどんゴミを持ち上げた。
ゴミ山に隠れていたゆっくりが次々と姿を現した。
「ゆぴゅぅぅぅ!!!!」
「さ…さぶいぃぃぃ!!!」
外に晒されたゆっくりに冷たい風が吹いた。まるでゆっくりの淡い期待を嘲笑うかのようだった。
「おうちがぁぁぁ!!!」
「どぼじでぇぇぇ!!!!あんなにがんじょうなおうぢだっだのにぃぃぃ!!!」
職員達は別にゆっくりを期待させてから絶望させようとしていた訳ではない。
ある程度ゆっくりを捕まえてからゴミ掃除をした方が効率が良い為今までゴミ山に手を付けていなかっただけなのだ。
「しょ…しょれはまりちゃのひみちゅきちだよぉぉぉ!!!かえちちぇ!!!」
コンクリートブロックを持ち上げた職員に向かって赤まりさが叫んでいた。ブロックに空いた穴でかくれんぼでもしてたのだろうか。
「お…おちびぢゃん!!なにじでるのぉぉ!!?ゆっぐりじないでにげるんだよぉぉぉ!!!!!」
外に晒されたゆっくりはゴミ山の奥深くへ必死に逃げていた。
「かえちちぇにぇ!!!!ひみちゅきちかえちてにぇ!!」
逃げずに甲高い声で叫ぶ赤まりさ。
「ゆぁぁぁ!!おちびぢゃんにげでぇぇぇ!!!ゆっぐりじないでごっぢぐるんだよぉぉぉ!!!」
「まりしゃがいっしょじゃにゃいとゆっくちできにゃいよぉぉぉ!!」
堪りかねた親まりさが赤まりさのもとへ引き返してきた。帽子の上には赤れいむが乗っかっている。
「…………」
職員は引き返してきたまりさに向けてブロックを放り投げた。
「おちびぢゃぁぁぁん!!!!ゆっぐ…ゆ?…ゆぶぅっ!!!!!」
ブロックは見事にまりさの顔面に直撃した。
「まりちゃのひみちゅき……ゆぎゃぁぁぁ!!!お…おぢょうじゃぁぁぁん!!!!」
赤まりさはブロックの軌道を目で追っていた。赤まりさは親まりさのもとへ走った。
「じっがりじでぇぇ!!おぢょうじゃん!!じんじゃやぢゃぁぁぁ!!!!」
被害を受けたのはまりさだけではない。帽子の上に乗っていた赤れいむも巻き添えを喰らった。
「……ぅ……ゅ………ゅ…」
「りぇ…りぇいみゅぅぅぅ!!!どびょじでぇぇ!!!!ゆっくちちちぇぇぇぇ!!!!」
赤れいむは体の3分の1程が抉れていた。これでも辛うじて生きているのだ。このしぶとさがゆっくりの厄介なところなのだ。
「ひみぢゅぎちしゃん!!おちょうじゃんからはなれぢぇね!!!ゆっくぢちにゃいではなれてにぇ!!!!」
赤まりさは必死にブロックを押していた。滑稽な画だ。押していると言うより寄りかかっていると言った方が良い。
「ゆぅぅぅぅぅ!!!いじわりゅじにゃいでぇぇぇ!!!うぎょいぢぇぇぇぇ!!!…ゆ!!!おしょらをういちぇりゅぅぅ!!!」
職員が赤まりさを摘んでいた。そのまま袋の中に放り込み瀕死の赤れいむも袋の中に放り込んだ。
「ぅ……ぅぅ………っ!!……!……ぅ…」
職員は2匹が入った袋をまりさに見せ付けた。まりさは口元にブロックがめり込んでいる為声を出せない。
「おぢょうじゃぁぁん!!!だじゅぎぇでぇぇぇぇ!!!!ここきゃらだじぢぇよぉぉぉ!!!!!」
袋の中から赤まりさの悲鳴が聞こえる。職員はまりさの目の前で袋を揉みしだいた。
「ゆぎぃ!!!!いぢゃい!!!ゆぎゃぁぁぁ!!!だじ……ゆぎゅっ!!!!」
赤まりさがぐちゃぐちゃに潰されていった。
「っ!!!!!!ぅぅ…っ!!!!!!ぅ……!!!!!!」
まりさは声にならない悲鳴を上げた。目からは止め処無く涙が溢れていた。
「っ!!!!ゅ…ゅぅ…っ!!!!………!!!!」
赤まりさも赤れいむも原型が留めなくなるまで揉みしだかれた。
「…ひゅっ!!……ひゅっ!!……ゅ!……か…ひゅっ!!…」
職員はまりさにめり込んでいるブロックを持ち上げた。まりさの歯は粉々で口内から餡子が吹き出ていた。
「…ひゃっ!!…いひゃっ!!!………ひゅっ!!」
まりさはぐちゃぐちゃになった娘の死骸の入った袋の中に入れられた。抵抗らしい抵抗もできなかった。
「ひゅっ!!!…ひぃっ!!…」
彼は袋を置き踏み付けようと足を上げた。が、途中で何か思い付き足を下ろした。
「っ!!!!ひゃっ!!!…いひゃぁぁぁぁ……」
彼の手にはブロック。まりさにめり込んだあのブロック。袋の中のまりさの血走った目と職員の目が合った。
「………」
職員はニヤリと笑みを浮かべた。そしてブロックが落とされた。
さて残りのゆっくりは奥に逃げてはゴミを退かされて捕まり、また逃げては退かされて捕まるの繰り返しだった。
「ごないでぇぇぇ!!!」
「あっぢいっでよぉぉぉ!!!ゆっぐりさぜでぇぇぇ!!!!」
「はなすんだじぇ!!やぢゃぁぁ!!じにぢゃぐにゃい!!ゆっぐぢじぢゃいぃぃぃぃ!!!」
次々に捕まるゆっくり。残ったゆっくりも逃げ場はほとんど無い。
「どぼじでごんなごどずるのぉぉ!!!?れいぶだぢだっで!!……れいぶだちだっでいぎでるんだよ!!!!」
一体誰の入れ知恵なのか最近妙に哲学的なことを言うゆっくりがいるのだ。
「そうだよぉぉぉ!!!みんないぎでるんだよ!!!!いっじょうげんべいいぎでるのにぃぃぃ!!!!」
職員達はヤレヤレという表情をした。
「いいこと教えてあげるよ」
1人の職員が足元の赤れいむを摘みながら言った。
「たじゅげぢぇぇぇぇ!!!おぎゃあしゃぁぁぁん!!!ちにぢゃくないよぉぉぉ!!!」
赤れいむはじたばたした。
「でいぶのあがぢゃぁぁん!!!おろじでぇ!!おろじで!!あがぢゃんだっで…いぎでるんだよ!!」
彼は赤れいむを落とすと思いっきり踏み付けた。
「ゆぎゃぁぁぁ!!!あがぢゃん!!!あがぢゃんがぁ!!!!でいぶのゆっぐりじだあがぢゃんがぁぁぁ!!!」
彼は足を退けた。赤れいむの姿形は残っておらず丸い餡子の花が咲いていた。
「生きているとか死んでいるとか、そういうのはな俺達人間が決めることなんだよ。お前達が決める権利は無い!!!」
彼はきっぱりと言い切った。
「ぞんなのどがいはじゃないわぁぁぁぁ!!!!」
「そ…ぞんなぁぁぁ!!!!ひどずぎるぅぅ!!!!」
「いぎだいよぉぉ!!!まりざはいぎだいのにぃぃぃ!!!」
「いっじょにゆっぐりじようよぉぉ!!」
ゆっくりの戯言に付き合う職員は誰もいなかった。
「やぢゃぁぁぁ!!!だじでぇぇぇ!!!いやぁぁ!!!じにだぐない!!!じにだぐな…ゆぎょっ!!!」
「ごわいよぉぉぉぉぉ!!!!おぞどぉ!!おそどにだじでよぉぉぉ!!!」
「ゆぎぃっ!!!ゆぎゃぁぁぁぁぁ!!!!ぎゅえっ!!!!!」
ゆっくりは全て回収され潰された。結局トラック1台分の荷台をいっぱいにするくらいの数がいたようだ。
ゴミの山は昼頃には綺麗さっぱりに消えていた。後は所々に散らばった餡子やクリームの掃除だ。
掃除と言っても単に水を撒いてお仕舞い。ゴミもゆっくりも無くなった。
「ご苦労様です」
「あ、これはどうも。どうですか?綺麗になりましたか」
地元の有力者らしき初老の男がやってきた。
「綺麗になりましたよ。実は春になったらここに花壇を植えようと思うんです。そうしたらもうゴミは捨てられないでしょう」
「いいですね。あ、花壇でしたら我が社のゆうかりんはいかがですか?花壇の世話が大好きなんですよ。お安くしますよ」
「ハハハ。実はその話なんですよ。そうですね、5匹ほどいいですか」
次の日からゴミ山だった場所にレンガで花壇が作られるようになった。春になったら種が植えられ綺麗な花を咲かせることだろう。
(あ、そうだ。住民税払っちゃおう)
青年は帰宅途中コンビニに立ち寄った。ちゃっちゃと支払いを済ませ週刊誌をパラパラと捲っていた。
(ん?うぁぁ…ウザイのが来たよ)
窓の外を見ると数匹のゆっくりがこちらにやってくるのだ。入口付近で止まると泣き言を言い始めた
「いれぐだざい!!!おうぢにいれでぎだざいぃぃぃ!!!」
「さぶぐでゆっぐりでぎばぜん!!!おでがいじばず!!あげでぐだざいぃぃ!!!!」
「ゆっくちちちゃいよぉぉぉ!!!!しゃむいよぉぉぉ!!!」
「いれでよぉぉぉ!!!ゆぴぃぃぃぃぃ!!!!」
家族なのだろうか、それともたまたま集まっただけなのだろうか。成体ゆっくりから赤ゆっくりまで数匹のゆっくりが入口に集まっていた。
最近都会のゆっくりがコンビニや店の中にやってくるようになった。因みに自動ドアはセンサーが感知しないため開いてはくれない。
自動ドアではなく引きドアの場合もある。こちらはゆっくり程度の力ではドアを開けることは出来ない。
そのため人間が入るときに一緒に入ってくるのだ。当初は金バッジの飼いゆっくりが買い物にやってくることがあったため問題は無かった。
だがそのうち野良ゆっくりが食料を盗みにやってきたり外が寒いからだとか暑いからだとか雨が降ってるからだとかで頻繁にやってくるようになったのだ。
1匹で行動できる金バッジの飼いゆっくりならまだしもお金を持ってるはずも無い、持っていても硬貨1枚ぐらいの野良ゆっくりだ。
商品に手を出すしぎゃあぎゃあ五月蝿いし他の客が気付かず潰して店が汚れるしで迷惑千万なのだ。
「あ…あいたよ!!」
「いまだよ!!おちびぢゃん!!」
1人の客がゆっくりを跨いで入ってきた。自動ドアが開いた隙に入口付近に集まっていたゆっくりが店の中へ殺到した。
「ゆぎぇっ!!いだい!!いだいぃぃぃ!!!」
「あんよじゃんがいぢゃいぃぃぃぃ!!!」
「ゆわぁぁぁぁぁん!!!いぢゃいよぉぉぉ!!ゆっぐぢでぎにゃいぃぃ!!!」
「やぢゃぁぁ!!!おそどにでだぐないぃぃぃ!!」
ゆっくりを撃退するためコンビニや店の入口に靴吹きマットが敷かれている。学校や会社の入口に敷いてある緑色のマットを想像していただきたい。
あの突起物がゆっくりの底部に激痛を与えるのだ。マットは開店祝いに加工所が無料で提供してくれる。
予断だが実はこれには裏があるのだ。加工所が無償提供した靴吹きマットは、実は一部の成体ゆっくりが突破できることがあるのだ。
赤ゆっくりや子ゆっくりであれば撃退できる。成体ゆっくりもマットの上を歩くのは痛いのだが我慢すれば突破できなくもないのだ。
勿論全ての成体ゆっくりを撃退できるマットは存在する。それはステンレス製で出来たマットだ。学校で見たことがある人も多いだろう。
人間だって素足でこの上を歩くと痛みが走る。ゆっくりであれば尚更だ。ちなみにこのマットは購入しなくてはならない。
無償で提供されたマットでは撃退できないゆっくりが増えれば店側はこのマットを購入するだろう。無償提供の裏にはこういう狙いもあるのだ。
「あんよざん!!!じっがりじでぇぇぇ!!!ゆぎぃぃぃぃ!!!」
「いだいよぉぉぉ!!!」
「じぇんじぇんゆっくちでぎにゃいぃぃぃ!!!」
入口のマットの上で泣き叫ぶゆっくり。店員がやって来て駆除する。
「いやだぁぁぁ!!!ゆっぐぢさぜでよぉぉぉぉ!!!!いや!!いやぁぁぁ!!!」
既に一般化したゆっくり専用のゴミ箱。勿論コンビニにも燃えるゴミや燃えないゴミと共に設置されている。
「ゆあぁぁぁ!!!お…おみずさん!!やべでっ!!どげじゃうぅぅぅ!!どげじゃうよぉぉぉ!!!」
ゴミ箱の中は水が溜まっている。既に何匹か捨てられており餡子の溶けた黒い液体と化している。
「やびぇぢぇぇぇぇ!!!じにじゃぐにゃいぃぃぃ!!!!もっぢょゆっぐぢじぢゃいよぉぉぉぉ!!!」
「どぼじでゆっぐぢさぜでぐれないのぉぉぉぉ!!!いれでよぉぉ!!!おうぢぃぃぃ!!!おうぢぃぃぃぃ!!!」
次から次へとゴミ箱へ捨てられていく。まりさの場合は帽子を燃えるゴミに入れてから専用のゴミ箱に入れる。帽子で浮かんでいられては困るのだ。
「がぼっ…ゆぎゃぁぁぁ!!じぬぅぅぅぅ!!!!やぢゃぁぁぁ!!!たずげで!!!だずげでぇぇぇぇ!!!」
「どげぢゃうぅぅぅ!!!だれがぁぁぁ!!!だずげでぇぇぇ!!!ごごがらだじでぇぇぇぇ!!!」
「つべぢゃいぃぃぃぃ!!!!やぢゃぁぁぁぁ!!!もっぢょ…もっぢょゆっぐぢぢじゃかっちゃぁぁぁぁぁ!!!」
暫くはゴミ箱から悲鳴が聞こえてたが直にその声は小さくなっていった。
(おお。死んでる死んでる)
青年はコンビニを出た後ゴミ箱を少し覗いてみた。甘ったるい匂いが漂ってきた。
「ゆっくりってのはどこにでもいるもんだな。冬ぐらい大人しくしてろよ」
車に乗りながら青年は呟いた。
(そういえばゆっくりって中身が冷えて辛いから冬篭りするんだよな。別に凍死とかするわけじゃなさそうだし)
実はゆっくりも風邪をひく。寒さにやられて風邪をひいてしまうのだ。それが原因で死んでしまう場合もあるとか。
だがゆっくりが凍死するというケースはあまり無い。動物であれば心臓が止まれば死ぬがゆっくりにはそうした器官は無い。
餡子が無事であれば死にはしないのだ。極寒の中動かなくなったゆっくりが目撃されているがこれは死んでいるのではなく固まっただけだ。
体を温めてやれば蘇生する。言わば仮死状態である。つまり病気にならず食料もあれば一応冬でも生きてはいられるのだ。
勿論ゆっくりはできないが。
(…だったら冬篭りしなくても即死ぬ訳じゃないんだよな)
青年はニヤリとした。
(そういえばあそこら辺に昔秘密基地作ったよなぁ…)
彼の言うあそこら辺というのは自宅から少し離れたところにある公園だ。自然に囲まれており木々を抜けると少し開けたところがある。
人気の無いところでもあり子供の頃友人と秘密基地を作ってよく遊んでいたものだ。
(最近の子供達も秘密基地とか作ってんのかな?)
秘密基地といえばダンボールや新聞紙、古くなった毛布や布切れなどを持ち出してそれっぽいものを作っていたものである。
もし最近の子供達も秘密基地を作って遊んでいるならばそこにゆっくりが大量に住んでいる可能性はある。
(結構大掛かりになりそうだな。丁度良い。明日は土曜日だし)
青年は車を車庫に入れ帰宅した。帰宅する直前に例の2匹の死骸があった場所を眺めたが綺麗に除去されていた。
(加工所?近所の方?手間が省けたわ)
翌朝青年は早起きして色々と準備を進めた。
(庭はダメだな…バルコニーにするか。洗濯物は…庭に干そう)
ゆっくりを庭に放置というのもいいが穴を掘られたり小さな隙間から逃げられたりしたら面白くない。
コンクリートの地面であり逃げ場所の無い狭いバルコニーこそゆっくりの住居として相応しい。
物干し竿などをバルコニーから庭に移した後自宅から少し離れた公園に向かった。
続く
by エルダーあき