ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0837 餡動戦士ゆんだむⅡ 哀・ゆっくり編
最終更新:
ankoss
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こんばんは、これが、餡動戦士ゆんだむの、2部になります。
なんか、予想以上に長くなってしまい、虐待パートに入っていく直前で
切ることになってしまいました…。
という訳で、2部でもまだ虐待はありません…すいませんでした。
予定が狂ってしまったので、4部構成か、もしかしたら5部くらいになって
しまうかもしれません。すいませんがご了承ください。
なにはともあれ、読んでいただけたら嬉しいです。
「ゆっ!ここに、めじるしさんがあったよ!れいむがみつけたんだよ!
だかられいむにごほうびちょうだいね!たくさんのあまあまでいいよ!ぷくううう!」
そう、期待に目を輝かせ、頬をパンパンに膨らませて宣言したれいむを、
他の3匹は、いささか冷めた目で見つめた。
「むきゅ…れいむ、ここにめじるしさんがあるのは、ぜんいんわかってたことでしょ。
そもそも、ここにめじるしさんをつけることをかんがえたのはぱちゅだし、
めじるしさんをつけたのはまりさよ…だから、れいむにあまあまをあげなくちゃ
いけないりゆうは、なにひとつないのよ。むっきゅりりかいしてね」
「そもそも、どうしていちいちぷくーしなくちゃならないの?
とってもふゆかいだわ…ぷくーすれば、ありすたちがいうことをきくとでもおもってるの?
ばかなの?しぬの?とかいはさがかけらもなくて、ぜんぜんゆっくりできないわ」
「ありすのいうとおりなんだぜ、れいむ…せめて、そのすぐにぷくーするくせぐらいは
なんとかしないと、そのうちだれもすっきりしてくれない、かわいそうなむらはちぶゆっくりに
されちゃうんだぜ?」
「どっ…どぼじで…ぞんな…ごど…!がわいい…でいむにぃぃっ…!!」
口々に責め立てられ、れいむは尚更、破裂してしまわんばかりに頬を膨らませた。
その目はたちまち潤み、溢れて砂糖水の涙を流し、逆立てたもみあげと、
全身が小刻みにぷるぷると震え、顎の下辺りに開いた尿道からは、じょろじょろと
砂糖水を垂れ流し、失禁までしていた。
「いいかげんにするんだぜえ!!」
ぺっちーん、という、情けない音が、道野辺に響いた。
「ゆぴいいい!?」
まりさの、おさげを使った張り手(?)がさくれつ(笑)し、れいむは、草むらに倒れた。
倒れたというか、転がった。
「わがままとむのうもいいかげんにしないと、まりさがおさにおねがいして、
れいむなんか、さっさとむれからついっほうさせても、ぜんぜんかまわないんだぜ?
おさはまりさのぱちゅりーでもあるんだから、それくらいはおちゃのこさいさいなんだぜ?
ゆっくりりかいするんだぜ?ゆっくりりかいしたのぜ?ゆっくりりかいしたんなら、
さっさとだんぼーるさんをはこぶのを、ゆっくりてつだうんだぜ…!」
まりさは、群れの長であるぱちゅりーの番として、体が弱いぱちゅりーに代わり、
群れのゆっくり達を、力で統制していく役割を、ずっと果たし続けてきていた。
それだけあって、その恫喝はゆっくりなりに中々に威厳があり、迫力と強制力を備えていた。
「ゆぐぅっ…!れいぶは…むのうなんかじゃ…!どぼじで…ぞんな…ゆっ…ゆぐぅぅぅ…」
れいむにしろ、元々、なにかの意地や、決意に支えられての主張ではない。
単なる、幼児の駄々と何も変わらないのである。
まりさにこわい顔で凄まれると、あっさりと頬から空気を抜いて引っ込め、
それでもしぶしぶといった、ゆっくりしていない表情で、ダンボールを運びにかかった。
そもそも、この程度の出来事は、このゆっくり達には慣れたものなのである。
他の種に比べて、依存心や依頼心が特に強いとされているれいむ種の中でも、
この個体は更にそういった、幼児性の傾向が強く、また学習能力も低い為、
何か理不尽な我侭を周囲に喚き散らしては、まりさの制裁を受ける、という一連のくだりは、
ほぼ日常と化していたのである。
「むきゅっ!これにて、いっけんらくちゃくよ!
それじゃ、さっさとこの『きみつぶんしょ』と、だんぼーるさんを、ぱちゅたちの
とてもむっきゅりしたむっきゅりむらに、はこばなくちゃね。
おうちで、なかまたちやおちびちゃんたちが、ぱちゅたちのかえりを、むっきゅりまってるわ!」
「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたわよ!」
「ほら、れいむ、ゆっくりしないでさっさとうごくんだぜ!」
「ゆぐうう…!おぼえててね…いつか、さいきょうになったれいむがふくしゅうしてやるからね…」
そうして、ぱちゅりーは再度、太目の木の根元近くに刻み付けられた、
×の字の印を確認した。
「むきゅっ…まちがいなく、ここにめじるしさんがあるわね。あとは、ここからまっすぐいけば、
むっきゅりむらにむっきゅりかえれるわ」
ぱちゅりーはそういって、道を挟んだ、山と森の向こう側…
丈高い雑草にびっしりと埋め尽くされた、空き地の方向を、おさげで指した。
そこはどういう土地なのか、都市から目と鼻の先であるにも関わらず、
人の手が入った形跡というものが、全く見当たらない。
延び放題の雑草が、まるで壁のようにそびえ立ち、ゆっくり達の視界をそこで、厳然と遮っていた。
その高さは、ゆっくりの身長からすれば、5倍や6倍ではきかぬだろう。
子供であれば、その中にすっぽりと埋まってしまうに違いなかった。
しかし、ぱちゅりーが指(?)差した、木の目印からまっすぐ、その雑草の壁へ向かって
進み、ぶつかった辺り――
そこには確かに、雑草が僅かに倒れ、踏み固められて出来た隙間のような物が、
風に揺れる雑草の間から、見え隠れしていた。
その隙間へ、勝手知ったる者の気楽さ、といった風情で、まずぱちゅりーが先頭に立ち、
例の『きみつぶんしょ』をしっかりと抱え、分け入って行った。
続いて、ありすとれいむが、ダンボールの束を両端をくわえ、縦にして支えながら、
難儀そうに雑草の隙間へ入っていき、苦心しながら進んで行った。
最後にまりさが、これはありすとれいむよりも沢山のダンボールの束を、
口とおさげを器用に使って一匹で運び、雑草の壁の中へ消えて行った。
「むきゅっ!さんにんとも、むっきゅりついたわよ!むっきゅりしていってね!」
4匹がゆっくりと進んで行った、雑草の間の獣道。それは延々と続き、果てが無いようにさえ
思えたが、やがて唐突にそれは終わり、4匹の前に、広々とした視界が開けた。
その場所こそが、人間から狩り立てられたゆっくり達が、苦難と試行錯誤を
繰り返して、開拓したシャングリ・ラ――唯一無二の、『ゆっくりぷれいす』であった。
そこは、深い雑草の海の中に、雑草を倒し、踏み固め、あるいは引き抜いて、
かなりの範囲に渡る生活のスペースを確保して作った、広大な村の空間であった。
その光景は、ゆっくり達が築いたにしては、相当に見事で、確かなものだと、
褒めてやらねばならなかっただろう。それ程に、地勢的な条件や、また個々の建物なども、
ゆっくりの群れが生き延びてゆくために、理に適った、建設的なものだったのである。
まず目に入るのは、寝泊りに使われるのであろう、ゆっくり達の住居である。
ほとんどの物はダンボールで出来ていて、上にブルーシートを被せ、石の重しを乗せて
風に飛ばされないようにし、雨よけ、風よけになっている。
これだけなら、都会で野良ゆっくりがよく作る住居と同じで、ポピュラーで粗末で、
貧弱な物に過ぎないと、言わざるをえない。
しかし一般的なゆっくりハウスと違うのは、ほぼ全ての建物が、いくつかのダンボールを、
釘やガムテープなどで連結して中が広くなるように作られており、しかも、
下に木や金属の棒を柱にして、上にダンボールを2段重ねにし、2階建ての造りになっていた。
外側から2階へ登れるように、石を積み上げて踏み台にしたり、木の板を立て掛けてある。
さらに、ほぼ全ての住居に、ふんだんに乾かした雑草や、恐らく例のゴミの山から
拾って来たであろう、暖かそうな毛布などが敷かれ、寒さや雨への対策も万全であった。
贅沢な家だと、全体を毛布で覆った上に更にブルーシートを被せ、更に冷風や雨に対する防御を
鉄壁にしている。
その上、村のそこかしこに、成体から、小さな子ゆっくりまでが利用するのだろうとおぼしき、
大小様々な遊具らしき物まで、見受けられた。
アルミの棒を2本、互いに支え合わせるように、上の方で×の字になるように結び合わせて立て、
それを二つ作る。その上に棒を渡して、そこからビニールテープを2本垂らして
木の板と結んで作った、ブランコ。
土を盛って小山を作り、そこに木の板を立てかけ、板の両側をトタンで仕切って
転落防止柵にして作った、すべり台。
それも、大人用と子供用に、2種類の大きさの物が、いくつか作られていた。
そこかしこには、サッカーボールやテニスボール、ラジコンカーや超合金ロボなどの
玩具が転がり、全ゆっくりの憧れとも言われる、『スィー』と呼ばれる車輪付きの板の、
ゆっくりの乗り物もあった。
村全体の構造は、丁度蟻の巣の断面のように、雑草を抜いたり踏み倒したりして作った
大き目の広場がいくつもあり、同じく雑草を取り除いて作ったいくつもの通路で
連結され、それぞれの広場はある程度、用途・目的別に分けられているようだった。
村中央の一際大きな広場には、中央に完全に草を取り除いて、
円状に土の地面を露出させてあり、さらにその中心は、驚くべき事に真っ黒く焦げており、
どうやらこの群れは、なんと火まで使うことがあるようだ。
ゆっくりに摩擦熱で火を起こすほどの力は無いはずであるから、恐らくまた例のゴミ山脈から、
マッチかライターでも拾ってくるのであろう。
そして、村そのものだけでなく、村を含んだ周囲の環境も、ゆっくり達にとって、
まずこの上ない条件であると言えた。
まずはやはり、すぐ近くの不法投棄現場の存在が、大きいと言えた。
それがあるお陰で、この群れのゆっくり達は、ゆっくりならば誰もがこよなく欲しがる、
毛布やダンボールといった人間の資材を、タダで、しかもほぼ無尽蔵に手に入れる事が出来たのである。
しかも、それは当然廃材であるから、人間さんから奪ったり盗んだりという、
大きな危険も全く冒す必要もない。
しかもすぐ近くに、人間の都市環境と豊かな自然環境が共存しているということも、
大きなアドバンテージとなった。
何故なら、少し自然環境に入っていけば、そこにはゆっくりが好む木の実や虫、
清らかな小川などが豊かにあったし、少し贅沢な、美味しい人間さんの食べ物が
欲しいと思えば、これにはやはり相応の危険は伴うものの、
街へ探しに行く事も出来る。
「むきゅっ!おさのぱちゅりーとそのじゅうしゃたちが、むっきゅりかえったわよ!」
ぱちゅりー達4匹が帰って来たのは、そんな至高のゆっくりぷれいすであった。
「むきゅきゅ!まぁまぁ!ぱぁぱぁ!むっきゅちちていっちぇね!」
「ゆゆっ!おさがかえっちぇきたのじぇ!ゆっくちちていっちぇにぇ!」
まず4匹を出迎えたのは、長ぱちゅりーと、最後尾でダンボールを一匹で運んで来た
だぜまりさの子である赤ぱちゅりーと、その友達の赤まりさが、
小さなブランコで仲良く遊んでいる姿だった。
「むっきゅっきゅ!おちびちゃん、まりさとむっきゅりあそんでいたの?
だけど、ぶらんこであそぶときは、だれかおとながついてなくちゃ、だめっていったでしょ?
ままのいうこと、むっきゅりきいてね、おちびちゃん?」
「むきゅぅ…まぁまぁ…むっきゅりごみぇんなちゃい…」
「まあまあ、ここはへいわなゆっくりぷれいすなんだし、そうめくじらをたてることもないのぜ、おさ!
このだんぼーるさんをとうりょうにとどけたら、まりさがみててあげるから、
おちびちゃんたちはゆっくりいいこにしてまってるんだぜ!」
「むきゅっ、むっきゅりりきゃいしたわ!」
「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
そうして4匹は、今日も沢山の戦利品を抱え、意気揚々と自らの住む村へ、凱旋して来たのだった。
「おさ、おかえりなさい!」
「「ゆっくりおかえりなさい!!」」
「ぶじにかえってきたんだねーわかるよー」
「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」
「ちーんぽ!」
自分達の、村長とその一行の帰還に、家の中でくつろいでいたゆっくりも、
その辺で遊んでいた子ゆっくりも、まさしく老若男女、様々な大きさ、様々な種のゆっくり達が、
一行に駆け寄り、挨拶をし、労をねぎらった。
結局、村のほぼ全てのゆっくりが中央の大きな広場に集まったようだった。
その数は、成体のゆっくりが16、子ゆっくりが23、赤ゆっくりが30…
総数にして、69匹の、まさしく大所帯であった。
種別としては、やはり基本の4種が多いが、中には準希少種と呼ばれる、
ゆっくりちぇんやみょんの姿もちらほら見える。
「むきゅっ!とうりょう!とうりょうはいるかしら?」
「てやんでぇい!だいくのとうりょうことまりささまは、ここにいるんでぇい!」
とうりょう、と呼ばれて現れたまりさは、また他の一般的なまりさ種と、一味違っていた。
まりさ種には、言葉遣いの違いで亜種が存在し、通常のゆっくり言葉で話すまりさ種の他に、
語尾にやたらと「だぜ」を付ける、「だぜまりさ」と呼ばれるまりさが存在することは、
割と良く知られている。しかし、語尾に「でぇい」を付けるまりさ種などというものは、
少なくとも一般的には、知られた存在ではなかった。
強いて類別するなら、「えどっこまりさ」とでもいったところか。
その外見も微妙に違い、頬に大きな傷跡のようなものが走り、口には常に、葉っぱをくわえている。
表情も妙に自信ありげで、態度も横柄で豪快である。
ありす種が、自らが「とかいは」であることを、やたらと他にアピールしたがるのと同じように、
このまりさは、自らが「えどっこ」であることを、アピールしたくてたまらないようだ。
「てやんでぇい!またまたこのまりささまに、しごとのちゅうもんでぇい?」
「むっきゅっきゅ、わるいけどそのとおりよ、とうりょう。
ほらこのとおり、まただんぼーるさんをたくさんてにいれてきたわ!
たしか、さんちょうめのれいむとまりさのおうちと、ごちょうめのみょんとありすのおうちが、
あめさんでへたって、たおれかかっていたでしょ?
これでむっきゅりなおしてあげてくれないかしら?」
ゆっくりは、ゆっくりなりの言語を自在に操る割に、数字に弱く、
3以上の数は認識出来ないとも言われるが、この群れでは長のぱちゅりーだけが、
2ケタの数字を操る事が出来、群れのゆっくり達の住所を番号で管理し、
こういった指示の出し方が出来るのは、長ぱちゅりーだけなのである。
「かーっ!このむらは、このだいくのとうりょうまりささまがいなけりゃ、
とっくのむかしにつぶれてきえちまってらぁ!だがまかせとくんでぇい!
そんくらい、このだいくのとうりょうまりささまにかかれば、ちょちょいのちょいってもんでぇい!
さぶきち!はんぺら!しごとでぇい!しっかりついてくるんでぇい?」
「さぶきちじゃないよ!まりさはまりさだよ!」
「どぼじではんぺらとかいうのぉぉぉ!?」
棟梁まりさは、帽子からおさげで金づちを取り出すと、それをぶんぶんと振り回した。
そして指示された家へ向かって、まっしぐらに駆け出す。
棟梁まりさの弟子か部下とおぼしき何匹かのゆっくりが、あわててダンボールを抱え、
それについていった。
どうやら、このゆっくり達の村の、住居や遊具などの建物は全て、
この大工の棟梁と自ら名乗るまりさと、その徒弟達によって作られた物であるらしかった。
棟梁まりさに指示を出し終えると、長ぱちゅりーはようやく、危険で大変な仕事を一つ終えた、
とでもいうような満足げなため息をつき、ぱちゅりーにとっては今日一番の大収穫である、
『きみつぶんしょ』の表紙をあらためてしげしげと眺め、なにか、自らの物思いに耽る風だった。
広場に集まってきていた他のゆっくり達も、長の一行の出迎えを終え、三々五々、
それぞれの持ち場に戻って行く。持ち場と言っても、せいぜいが子供の面倒を見るか、
家の周辺で遊ぶか寝転がっているかして、ゆっくりするだけのことであるが。
ゆっくり達の仕事など、大工の一統以外は、長ぱちゅりー達のように時々物資を探しに行く以外では、
食料を取りに行くか、たまに雑草を刈って、村を広げるぐらいのものである。
食料に関しては、大工達の見事な働きによって、貯蔵用の大きな倉庫を持っているので、
せいぜい週に一回、帽子による高い輸送能力を持つまりさ種が、ほぼ総出で狩りに出かけ、
大量の食料を得てくるだけで、事足りる。
そんな、ゆっくりの群れにしては相当に恵まれた村であったから、
村のゆっくり達は、基本的には一日中、したいことをし、
勝手気ままに遊び暮らして、この上もなくゆっくりしていたのだった。
「ね、ねぇ、おさ…その、『きみつぶんしょ』なんだけど…」
絵本の表紙を凝視したまま、中々動こうとしないぱちゅりーに、ありすが声をかけた。
一緒にゴミ山へ出かけたありすである。
「むきゅ?ありす?」
「それ…とってもきけんで、ゆっくりできないかもしれないものなんでしょ?
ほんとうに…もらへもってかえってきちゃって、よかったの?あそこにほうっておいたほうが、
よかったんじゃ…」
ありすは、どうしてもこの絵本が気になるらしく、不安げに、ぱちゅりーに言った。
「むきゅむきゅ!ありすったらしんぱいしょうね!むっきゅりだいじょうぶよ!
たしかに、この『きみつぶんしょ』は、わるいやつがつかうと、すごくおそろしい、
むっきゅりできない『あくま』さんにだって、なっちゃうけど…
ぱちゅりーならそんなことはないし、それに、いますぐつかおうなんてかんがえてるわけ
じゃないから、むっきゅりだいじょうぶよ!とりあえずこの『きみつぶんしょ』は、
ぱちゅの『だいとしょかん』にふういんしておくから、むっきゅりあんしんしてね!」
そこまで聞いて、やっとありすの不安は解消されたようだ。
表情が晴れ、穏やかでゆっくりした顔に戻ってゆく。
「それなら、ゆっくりあんしんね!ありすもみんなといっしょにゆっくりするわ~。
あっ、そうそう、とかいはなおようふくをつくるおしごとが、まだのこってたんだっけ」
「むきゅきゅ、ありすとありすのおねえさんは、
とってもむっきゅりした『ぬいこさん』だものね。おちびちゃんたちも、
むっきゅりたのしみしてるわよ?」
そろそろ、日が傾きつつあった。ゆっくり達もそろそろそれぞれの住居に帰り、
毛布や雑草に包まり、夜の冷え込みに備え始める頃だろう。
「おーい!磯野ー!磯野ー!」
夕暮れの空き地に、少年の声が響いた。
「いつまで探してんだよー?まだボール見つからないのか?もう、みんな帰っちまったぞ?」
そう、大きな声で叫びながら、眼鏡をかけ、野球のバットにグローブをかけ、肩にかついだ
小学校高学年くらいの刈り上げの少年が、雑草がぼうぼうに生えた空き地の中へ、
踏み入った。
「磯野ってばよー…うわっ、すげえ草」
眼鏡の少年は、ほぼ自らの身長と同じ程に伸び、びっしりと生え揃っている草むらに、
思わず眉をしかめながら、それでもがさがさとめんどくさそうに草むらを手足で
かき分けかき分け、進んで行った。
「こんな所に飛び込んじまったら、もう無理だってー…どこにいんだ?磯野ー?」
少年は友達を探しながら、しかしすげえ草むらだ、こりゃもう森だな、などと
思いながら、草の壁に阻まれた周囲を見回した。
「あっ、中島、わりーわりー。まだ見つかんねーんだよぉ~。ボール~」
「ったく…」
中島は軽く舌打ちして、磯野の声のした方へ、草と格闘しながら向かって行った。
「お前どこまで探しに分け入ってんだよ…。もうあきらめろって」
「そー言われてもよぉ~。あれが、最後のボールだったんだよ…。今度無くしたら、
もうぜってぇ買って貰えねぇし…。貴重な小遣いで、野球のボールなんか買いたくねぇしよぉ~。
中島も探すの手伝ってくれよ、な!」
「ったく…もう暗くなるし、あと少しだけだぞ…」
中島は再び舌打ちしながらも、二人は気のいい親友同士であるらしく、
協力してボールを捜し始めた。
しかし、これほどに鬱蒼と茂りに茂った、しかも広大な雑草の海の中である。
その中から、小さな野球ボールを、たった二人だけで見つけようなどというのは、
実際、無謀に近い試みだった。
「ああー腰いてー!やっぱ無理だぜ、磯野よー!」
「ちぇっ…もう、日も沈むもんなぁ。あきらめるしかねーか…あ~あ」
磯野も探しに探し、既に疲労は困憊であった。
空腹で腹も鳴り始め、ようやくあきらめがついたようだ。
「…帰るか」
「はぁ~あ、すっげえ時間の無駄したよ~。風呂入りてぇ~」
意気消沈した磯野と、不平たらたらの中島が、雑草の海から脱出するべく、
元来た方向へ向かって足を踏み出した、その時であった。
「…ん?」
「どうした?磯野。帰るぞ」
磯野は怪訝な表情で、後ろを見つめている。
「中島…今なんか、聞こえなかった?」
「はぁ?聞こえたって、何がだよ?」
「いや、なんか、人の声みたいな…」
「人の声ぇぇ??」
磯野は、確かに何か、人の声らしきものを聞いたらしく、完全にその場に
立ち止まってしまった。
一方中島には、そんな声は全く聞こえていなかった。
どうせ空耳か聞き間違いだろうと決め付け、さっさと帰りたくてしょうがなさそうである。
「こんな草ばっかのとこに、人なんかいるわけねーだろーがよー」
「いや、だって、ぜったい…」
その時、今度は、僅かな風に乗って、小さくはあったが、ハッキリと二人の耳に、
その声が届いた。
(ゆんやあぁぁぁ…れいみゅのゆっくちちたおうちしゃんがぁぁぁぁ…)
「!?」
思わず二人とも、無言で顔を見合わせた。
「な、聞こえただろ、中島!?」
「ああ…。でも、なんだ?俺には、子供の声みたいに聞こえたけど…」
「はっ…まさか!」
磯野は何かに思い当たったらしく、急に真剣な表情になる。
「誰にも見られない草むらで、変態野郎が、小さい女の子に乱暴してるのかもしれないぜ…!?」
「な、なんだって!?マジかよ……?いや、でも、まじでそうかもしれねえ…。
こんな草むらで、あんな、女の子の悲鳴みたいなのが、聞こえるっつったら…。
よおし、それならよ…」
中島は、バットからグローブを外して地面に放り投げると、グリップをぎゅっ、と握った。
「こいつでボッコボコにして、おまわりさんに突き出してやるぜ…!」
磯野も、ボールを捜すのに草むらをかき分けるため、バットを持って来ていた。
磯野も、決意的な表情でバットを構えてみせる。
どうやら、少年らしい正義感に燃える二人の意見は、一致したようだった。
「行こうぜ、中島!」
「ああ!」
一度、お互いの顔を見詰め合ってうなずき交わすと、後はもう後を見ずに、
声のした方へ向かって、草むらを蹴倒して突進した。
ガサガサッ!
しかし、そんな二人の足は、唐突に止まってしまった。
それ程に、そこで二人の見たものは、あまりにも予想外な、拍子抜けさせられるものだったのである。
「な、なんだ…こりゃ?」
急に、二人の前で広々と視界を開いたそこは、かなりの広範囲に渡り、雑草を
取り除いたり踏み固めたりして確保したとおぼしき、広場のような空間だった。
それだけならまだしも、その空間に、点々と鎮座している物々…
ブルーシートや毛布を被ったダンボール、小さなブランコのような物、サッカーボールや
子供の玩具。
俺達は、雑草の海の中で、なにか、異世界への扉でもくぐってしまったのだろうか…。
目の前の光景を、現実的な理屈に結び付けて説明する術がどうしても見つからず、
磯野も中島も、困惑して立ち尽くすだけであった。
そして、次の、広場を仕切る壁となった雑草の後ろから、唐突に現れたモノが、
極め付けだった。
ぼよん、ぼよん…
「ゆ?」
「「…!?」」
雑草の壁の陰から、飛び跳ねて出たゆっくりれいむと、二人の目が、合った。
そして、ゆっくり達の運命が、悲劇へ向かって転がり始めたのである。
つづく
なんか、予想以上に長くなってしまい、虐待パートに入っていく直前で
切ることになってしまいました…。
という訳で、2部でもまだ虐待はありません…すいませんでした。
予定が狂ってしまったので、4部構成か、もしかしたら5部くらいになって
しまうかもしれません。すいませんがご了承ください。
なにはともあれ、読んでいただけたら嬉しいです。
「ゆっ!ここに、めじるしさんがあったよ!れいむがみつけたんだよ!
だかられいむにごほうびちょうだいね!たくさんのあまあまでいいよ!ぷくううう!」
そう、期待に目を輝かせ、頬をパンパンに膨らませて宣言したれいむを、
他の3匹は、いささか冷めた目で見つめた。
「むきゅ…れいむ、ここにめじるしさんがあるのは、ぜんいんわかってたことでしょ。
そもそも、ここにめじるしさんをつけることをかんがえたのはぱちゅだし、
めじるしさんをつけたのはまりさよ…だから、れいむにあまあまをあげなくちゃ
いけないりゆうは、なにひとつないのよ。むっきゅりりかいしてね」
「そもそも、どうしていちいちぷくーしなくちゃならないの?
とってもふゆかいだわ…ぷくーすれば、ありすたちがいうことをきくとでもおもってるの?
ばかなの?しぬの?とかいはさがかけらもなくて、ぜんぜんゆっくりできないわ」
「ありすのいうとおりなんだぜ、れいむ…せめて、そのすぐにぷくーするくせぐらいは
なんとかしないと、そのうちだれもすっきりしてくれない、かわいそうなむらはちぶゆっくりに
されちゃうんだぜ?」
「どっ…どぼじで…ぞんな…ごど…!がわいい…でいむにぃぃっ…!!」
口々に責め立てられ、れいむは尚更、破裂してしまわんばかりに頬を膨らませた。
その目はたちまち潤み、溢れて砂糖水の涙を流し、逆立てたもみあげと、
全身が小刻みにぷるぷると震え、顎の下辺りに開いた尿道からは、じょろじょろと
砂糖水を垂れ流し、失禁までしていた。
「いいかげんにするんだぜえ!!」
ぺっちーん、という、情けない音が、道野辺に響いた。
「ゆぴいいい!?」
まりさの、おさげを使った張り手(?)がさくれつ(笑)し、れいむは、草むらに倒れた。
倒れたというか、転がった。
「わがままとむのうもいいかげんにしないと、まりさがおさにおねがいして、
れいむなんか、さっさとむれからついっほうさせても、ぜんぜんかまわないんだぜ?
おさはまりさのぱちゅりーでもあるんだから、それくらいはおちゃのこさいさいなんだぜ?
ゆっくりりかいするんだぜ?ゆっくりりかいしたのぜ?ゆっくりりかいしたんなら、
さっさとだんぼーるさんをはこぶのを、ゆっくりてつだうんだぜ…!」
まりさは、群れの長であるぱちゅりーの番として、体が弱いぱちゅりーに代わり、
群れのゆっくり達を、力で統制していく役割を、ずっと果たし続けてきていた。
それだけあって、その恫喝はゆっくりなりに中々に威厳があり、迫力と強制力を備えていた。
「ゆぐぅっ…!れいぶは…むのうなんかじゃ…!どぼじで…ぞんな…ゆっ…ゆぐぅぅぅ…」
れいむにしろ、元々、なにかの意地や、決意に支えられての主張ではない。
単なる、幼児の駄々と何も変わらないのである。
まりさにこわい顔で凄まれると、あっさりと頬から空気を抜いて引っ込め、
それでもしぶしぶといった、ゆっくりしていない表情で、ダンボールを運びにかかった。
そもそも、この程度の出来事は、このゆっくり達には慣れたものなのである。
他の種に比べて、依存心や依頼心が特に強いとされているれいむ種の中でも、
この個体は更にそういった、幼児性の傾向が強く、また学習能力も低い為、
何か理不尽な我侭を周囲に喚き散らしては、まりさの制裁を受ける、という一連のくだりは、
ほぼ日常と化していたのである。
「むきゅっ!これにて、いっけんらくちゃくよ!
それじゃ、さっさとこの『きみつぶんしょ』と、だんぼーるさんを、ぱちゅたちの
とてもむっきゅりしたむっきゅりむらに、はこばなくちゃね。
おうちで、なかまたちやおちびちゃんたちが、ぱちゅたちのかえりを、むっきゅりまってるわ!」
「ゆゆっ!ゆっくりりかいしたわよ!」
「ほら、れいむ、ゆっくりしないでさっさとうごくんだぜ!」
「ゆぐうう…!おぼえててね…いつか、さいきょうになったれいむがふくしゅうしてやるからね…」
そうして、ぱちゅりーは再度、太目の木の根元近くに刻み付けられた、
×の字の印を確認した。
「むきゅっ…まちがいなく、ここにめじるしさんがあるわね。あとは、ここからまっすぐいけば、
むっきゅりむらにむっきゅりかえれるわ」
ぱちゅりーはそういって、道を挟んだ、山と森の向こう側…
丈高い雑草にびっしりと埋め尽くされた、空き地の方向を、おさげで指した。
そこはどういう土地なのか、都市から目と鼻の先であるにも関わらず、
人の手が入った形跡というものが、全く見当たらない。
延び放題の雑草が、まるで壁のようにそびえ立ち、ゆっくり達の視界をそこで、厳然と遮っていた。
その高さは、ゆっくりの身長からすれば、5倍や6倍ではきかぬだろう。
子供であれば、その中にすっぽりと埋まってしまうに違いなかった。
しかし、ぱちゅりーが指(?)差した、木の目印からまっすぐ、その雑草の壁へ向かって
進み、ぶつかった辺り――
そこには確かに、雑草が僅かに倒れ、踏み固められて出来た隙間のような物が、
風に揺れる雑草の間から、見え隠れしていた。
その隙間へ、勝手知ったる者の気楽さ、といった風情で、まずぱちゅりーが先頭に立ち、
例の『きみつぶんしょ』をしっかりと抱え、分け入って行った。
続いて、ありすとれいむが、ダンボールの束を両端をくわえ、縦にして支えながら、
難儀そうに雑草の隙間へ入っていき、苦心しながら進んで行った。
最後にまりさが、これはありすとれいむよりも沢山のダンボールの束を、
口とおさげを器用に使って一匹で運び、雑草の壁の中へ消えて行った。
「むきゅっ!さんにんとも、むっきゅりついたわよ!むっきゅりしていってね!」
4匹がゆっくりと進んで行った、雑草の間の獣道。それは延々と続き、果てが無いようにさえ
思えたが、やがて唐突にそれは終わり、4匹の前に、広々とした視界が開けた。
その場所こそが、人間から狩り立てられたゆっくり達が、苦難と試行錯誤を
繰り返して、開拓したシャングリ・ラ――唯一無二の、『ゆっくりぷれいす』であった。
そこは、深い雑草の海の中に、雑草を倒し、踏み固め、あるいは引き抜いて、
かなりの範囲に渡る生活のスペースを確保して作った、広大な村の空間であった。
その光景は、ゆっくり達が築いたにしては、相当に見事で、確かなものだと、
褒めてやらねばならなかっただろう。それ程に、地勢的な条件や、また個々の建物なども、
ゆっくりの群れが生き延びてゆくために、理に適った、建設的なものだったのである。
まず目に入るのは、寝泊りに使われるのであろう、ゆっくり達の住居である。
ほとんどの物はダンボールで出来ていて、上にブルーシートを被せ、石の重しを乗せて
風に飛ばされないようにし、雨よけ、風よけになっている。
これだけなら、都会で野良ゆっくりがよく作る住居と同じで、ポピュラーで粗末で、
貧弱な物に過ぎないと、言わざるをえない。
しかし一般的なゆっくりハウスと違うのは、ほぼ全ての建物が、いくつかのダンボールを、
釘やガムテープなどで連結して中が広くなるように作られており、しかも、
下に木や金属の棒を柱にして、上にダンボールを2段重ねにし、2階建ての造りになっていた。
外側から2階へ登れるように、石を積み上げて踏み台にしたり、木の板を立て掛けてある。
さらに、ほぼ全ての住居に、ふんだんに乾かした雑草や、恐らく例のゴミの山から
拾って来たであろう、暖かそうな毛布などが敷かれ、寒さや雨への対策も万全であった。
贅沢な家だと、全体を毛布で覆った上に更にブルーシートを被せ、更に冷風や雨に対する防御を
鉄壁にしている。
その上、村のそこかしこに、成体から、小さな子ゆっくりまでが利用するのだろうとおぼしき、
大小様々な遊具らしき物まで、見受けられた。
アルミの棒を2本、互いに支え合わせるように、上の方で×の字になるように結び合わせて立て、
それを二つ作る。その上に棒を渡して、そこからビニールテープを2本垂らして
木の板と結んで作った、ブランコ。
土を盛って小山を作り、そこに木の板を立てかけ、板の両側をトタンで仕切って
転落防止柵にして作った、すべり台。
それも、大人用と子供用に、2種類の大きさの物が、いくつか作られていた。
そこかしこには、サッカーボールやテニスボール、ラジコンカーや超合金ロボなどの
玩具が転がり、全ゆっくりの憧れとも言われる、『スィー』と呼ばれる車輪付きの板の、
ゆっくりの乗り物もあった。
村全体の構造は、丁度蟻の巣の断面のように、雑草を抜いたり踏み倒したりして作った
大き目の広場がいくつもあり、同じく雑草を取り除いて作ったいくつもの通路で
連結され、それぞれの広場はある程度、用途・目的別に分けられているようだった。
村中央の一際大きな広場には、中央に完全に草を取り除いて、
円状に土の地面を露出させてあり、さらにその中心は、驚くべき事に真っ黒く焦げており、
どうやらこの群れは、なんと火まで使うことがあるようだ。
ゆっくりに摩擦熱で火を起こすほどの力は無いはずであるから、恐らくまた例のゴミ山脈から、
マッチかライターでも拾ってくるのであろう。
そして、村そのものだけでなく、村を含んだ周囲の環境も、ゆっくり達にとって、
まずこの上ない条件であると言えた。
まずはやはり、すぐ近くの不法投棄現場の存在が、大きいと言えた。
それがあるお陰で、この群れのゆっくり達は、ゆっくりならば誰もがこよなく欲しがる、
毛布やダンボールといった人間の資材を、タダで、しかもほぼ無尽蔵に手に入れる事が出来たのである。
しかも、それは当然廃材であるから、人間さんから奪ったり盗んだりという、
大きな危険も全く冒す必要もない。
しかもすぐ近くに、人間の都市環境と豊かな自然環境が共存しているということも、
大きなアドバンテージとなった。
何故なら、少し自然環境に入っていけば、そこにはゆっくりが好む木の実や虫、
清らかな小川などが豊かにあったし、少し贅沢な、美味しい人間さんの食べ物が
欲しいと思えば、これにはやはり相応の危険は伴うものの、
街へ探しに行く事も出来る。
「むきゅっ!おさのぱちゅりーとそのじゅうしゃたちが、むっきゅりかえったわよ!」
ぱちゅりー達4匹が帰って来たのは、そんな至高のゆっくりぷれいすであった。
「むきゅきゅ!まぁまぁ!ぱぁぱぁ!むっきゅちちていっちぇね!」
「ゆゆっ!おさがかえっちぇきたのじぇ!ゆっくちちていっちぇにぇ!」
まず4匹を出迎えたのは、長ぱちゅりーと、最後尾でダンボールを一匹で運んで来た
だぜまりさの子である赤ぱちゅりーと、その友達の赤まりさが、
小さなブランコで仲良く遊んでいる姿だった。
「むっきゅっきゅ!おちびちゃん、まりさとむっきゅりあそんでいたの?
だけど、ぶらんこであそぶときは、だれかおとながついてなくちゃ、だめっていったでしょ?
ままのいうこと、むっきゅりきいてね、おちびちゃん?」
「むきゅぅ…まぁまぁ…むっきゅりごみぇんなちゃい…」
「まあまあ、ここはへいわなゆっくりぷれいすなんだし、そうめくじらをたてることもないのぜ、おさ!
このだんぼーるさんをとうりょうにとどけたら、まりさがみててあげるから、
おちびちゃんたちはゆっくりいいこにしてまってるんだぜ!」
「むきゅっ、むっきゅりりきゃいしたわ!」
「ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
そうして4匹は、今日も沢山の戦利品を抱え、意気揚々と自らの住む村へ、凱旋して来たのだった。
「おさ、おかえりなさい!」
「「ゆっくりおかえりなさい!!」」
「ぶじにかえってきたんだねーわかるよー」
「ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」
「ちーんぽ!」
自分達の、村長とその一行の帰還に、家の中でくつろいでいたゆっくりも、
その辺で遊んでいた子ゆっくりも、まさしく老若男女、様々な大きさ、様々な種のゆっくり達が、
一行に駆け寄り、挨拶をし、労をねぎらった。
結局、村のほぼ全てのゆっくりが中央の大きな広場に集まったようだった。
その数は、成体のゆっくりが16、子ゆっくりが23、赤ゆっくりが30…
総数にして、69匹の、まさしく大所帯であった。
種別としては、やはり基本の4種が多いが、中には準希少種と呼ばれる、
ゆっくりちぇんやみょんの姿もちらほら見える。
「むきゅっ!とうりょう!とうりょうはいるかしら?」
「てやんでぇい!だいくのとうりょうことまりささまは、ここにいるんでぇい!」
とうりょう、と呼ばれて現れたまりさは、また他の一般的なまりさ種と、一味違っていた。
まりさ種には、言葉遣いの違いで亜種が存在し、通常のゆっくり言葉で話すまりさ種の他に、
語尾にやたらと「だぜ」を付ける、「だぜまりさ」と呼ばれるまりさが存在することは、
割と良く知られている。しかし、語尾に「でぇい」を付けるまりさ種などというものは、
少なくとも一般的には、知られた存在ではなかった。
強いて類別するなら、「えどっこまりさ」とでもいったところか。
その外見も微妙に違い、頬に大きな傷跡のようなものが走り、口には常に、葉っぱをくわえている。
表情も妙に自信ありげで、態度も横柄で豪快である。
ありす種が、自らが「とかいは」であることを、やたらと他にアピールしたがるのと同じように、
このまりさは、自らが「えどっこ」であることを、アピールしたくてたまらないようだ。
「てやんでぇい!またまたこのまりささまに、しごとのちゅうもんでぇい?」
「むっきゅっきゅ、わるいけどそのとおりよ、とうりょう。
ほらこのとおり、まただんぼーるさんをたくさんてにいれてきたわ!
たしか、さんちょうめのれいむとまりさのおうちと、ごちょうめのみょんとありすのおうちが、
あめさんでへたって、たおれかかっていたでしょ?
これでむっきゅりなおしてあげてくれないかしら?」
ゆっくりは、ゆっくりなりの言語を自在に操る割に、数字に弱く、
3以上の数は認識出来ないとも言われるが、この群れでは長のぱちゅりーだけが、
2ケタの数字を操る事が出来、群れのゆっくり達の住所を番号で管理し、
こういった指示の出し方が出来るのは、長ぱちゅりーだけなのである。
「かーっ!このむらは、このだいくのとうりょうまりささまがいなけりゃ、
とっくのむかしにつぶれてきえちまってらぁ!だがまかせとくんでぇい!
そんくらい、このだいくのとうりょうまりささまにかかれば、ちょちょいのちょいってもんでぇい!
さぶきち!はんぺら!しごとでぇい!しっかりついてくるんでぇい?」
「さぶきちじゃないよ!まりさはまりさだよ!」
「どぼじではんぺらとかいうのぉぉぉ!?」
棟梁まりさは、帽子からおさげで金づちを取り出すと、それをぶんぶんと振り回した。
そして指示された家へ向かって、まっしぐらに駆け出す。
棟梁まりさの弟子か部下とおぼしき何匹かのゆっくりが、あわててダンボールを抱え、
それについていった。
どうやら、このゆっくり達の村の、住居や遊具などの建物は全て、
この大工の棟梁と自ら名乗るまりさと、その徒弟達によって作られた物であるらしかった。
棟梁まりさに指示を出し終えると、長ぱちゅりーはようやく、危険で大変な仕事を一つ終えた、
とでもいうような満足げなため息をつき、ぱちゅりーにとっては今日一番の大収穫である、
『きみつぶんしょ』の表紙をあらためてしげしげと眺め、なにか、自らの物思いに耽る風だった。
広場に集まってきていた他のゆっくり達も、長の一行の出迎えを終え、三々五々、
それぞれの持ち場に戻って行く。持ち場と言っても、せいぜいが子供の面倒を見るか、
家の周辺で遊ぶか寝転がっているかして、ゆっくりするだけのことであるが。
ゆっくり達の仕事など、大工の一統以外は、長ぱちゅりー達のように時々物資を探しに行く以外では、
食料を取りに行くか、たまに雑草を刈って、村を広げるぐらいのものである。
食料に関しては、大工達の見事な働きによって、貯蔵用の大きな倉庫を持っているので、
せいぜい週に一回、帽子による高い輸送能力を持つまりさ種が、ほぼ総出で狩りに出かけ、
大量の食料を得てくるだけで、事足りる。
そんな、ゆっくりの群れにしては相当に恵まれた村であったから、
村のゆっくり達は、基本的には一日中、したいことをし、
勝手気ままに遊び暮らして、この上もなくゆっくりしていたのだった。
「ね、ねぇ、おさ…その、『きみつぶんしょ』なんだけど…」
絵本の表紙を凝視したまま、中々動こうとしないぱちゅりーに、ありすが声をかけた。
一緒にゴミ山へ出かけたありすである。
「むきゅ?ありす?」
「それ…とってもきけんで、ゆっくりできないかもしれないものなんでしょ?
ほんとうに…もらへもってかえってきちゃって、よかったの?あそこにほうっておいたほうが、
よかったんじゃ…」
ありすは、どうしてもこの絵本が気になるらしく、不安げに、ぱちゅりーに言った。
「むきゅむきゅ!ありすったらしんぱいしょうね!むっきゅりだいじょうぶよ!
たしかに、この『きみつぶんしょ』は、わるいやつがつかうと、すごくおそろしい、
むっきゅりできない『あくま』さんにだって、なっちゃうけど…
ぱちゅりーならそんなことはないし、それに、いますぐつかおうなんてかんがえてるわけ
じゃないから、むっきゅりだいじょうぶよ!とりあえずこの『きみつぶんしょ』は、
ぱちゅの『だいとしょかん』にふういんしておくから、むっきゅりあんしんしてね!」
そこまで聞いて、やっとありすの不安は解消されたようだ。
表情が晴れ、穏やかでゆっくりした顔に戻ってゆく。
「それなら、ゆっくりあんしんね!ありすもみんなといっしょにゆっくりするわ~。
あっ、そうそう、とかいはなおようふくをつくるおしごとが、まだのこってたんだっけ」
「むきゅきゅ、ありすとありすのおねえさんは、
とってもむっきゅりした『ぬいこさん』だものね。おちびちゃんたちも、
むっきゅりたのしみしてるわよ?」
そろそろ、日が傾きつつあった。ゆっくり達もそろそろそれぞれの住居に帰り、
毛布や雑草に包まり、夜の冷え込みに備え始める頃だろう。
「おーい!磯野ー!磯野ー!」
夕暮れの空き地に、少年の声が響いた。
「いつまで探してんだよー?まだボール見つからないのか?もう、みんな帰っちまったぞ?」
そう、大きな声で叫びながら、眼鏡をかけ、野球のバットにグローブをかけ、肩にかついだ
小学校高学年くらいの刈り上げの少年が、雑草がぼうぼうに生えた空き地の中へ、
踏み入った。
「磯野ってばよー…うわっ、すげえ草」
眼鏡の少年は、ほぼ自らの身長と同じ程に伸び、びっしりと生え揃っている草むらに、
思わず眉をしかめながら、それでもがさがさとめんどくさそうに草むらを手足で
かき分けかき分け、進んで行った。
「こんな所に飛び込んじまったら、もう無理だってー…どこにいんだ?磯野ー?」
少年は友達を探しながら、しかしすげえ草むらだ、こりゃもう森だな、などと
思いながら、草の壁に阻まれた周囲を見回した。
「あっ、中島、わりーわりー。まだ見つかんねーんだよぉ~。ボール~」
「ったく…」
中島は軽く舌打ちして、磯野の声のした方へ、草と格闘しながら向かって行った。
「お前どこまで探しに分け入ってんだよ…。もうあきらめろって」
「そー言われてもよぉ~。あれが、最後のボールだったんだよ…。今度無くしたら、
もうぜってぇ買って貰えねぇし…。貴重な小遣いで、野球のボールなんか買いたくねぇしよぉ~。
中島も探すの手伝ってくれよ、な!」
「ったく…もう暗くなるし、あと少しだけだぞ…」
中島は再び舌打ちしながらも、二人は気のいい親友同士であるらしく、
協力してボールを捜し始めた。
しかし、これほどに鬱蒼と茂りに茂った、しかも広大な雑草の海の中である。
その中から、小さな野球ボールを、たった二人だけで見つけようなどというのは、
実際、無謀に近い試みだった。
「ああー腰いてー!やっぱ無理だぜ、磯野よー!」
「ちぇっ…もう、日も沈むもんなぁ。あきらめるしかねーか…あ~あ」
磯野も探しに探し、既に疲労は困憊であった。
空腹で腹も鳴り始め、ようやくあきらめがついたようだ。
「…帰るか」
「はぁ~あ、すっげえ時間の無駄したよ~。風呂入りてぇ~」
意気消沈した磯野と、不平たらたらの中島が、雑草の海から脱出するべく、
元来た方向へ向かって足を踏み出した、その時であった。
「…ん?」
「どうした?磯野。帰るぞ」
磯野は怪訝な表情で、後ろを見つめている。
「中島…今なんか、聞こえなかった?」
「はぁ?聞こえたって、何がだよ?」
「いや、なんか、人の声みたいな…」
「人の声ぇぇ??」
磯野は、確かに何か、人の声らしきものを聞いたらしく、完全にその場に
立ち止まってしまった。
一方中島には、そんな声は全く聞こえていなかった。
どうせ空耳か聞き間違いだろうと決め付け、さっさと帰りたくてしょうがなさそうである。
「こんな草ばっかのとこに、人なんかいるわけねーだろーがよー」
「いや、だって、ぜったい…」
その時、今度は、僅かな風に乗って、小さくはあったが、ハッキリと二人の耳に、
その声が届いた。
(ゆんやあぁぁぁ…れいみゅのゆっくちちたおうちしゃんがぁぁぁぁ…)
「!?」
思わず二人とも、無言で顔を見合わせた。
「な、聞こえただろ、中島!?」
「ああ…。でも、なんだ?俺には、子供の声みたいに聞こえたけど…」
「はっ…まさか!」
磯野は何かに思い当たったらしく、急に真剣な表情になる。
「誰にも見られない草むらで、変態野郎が、小さい女の子に乱暴してるのかもしれないぜ…!?」
「な、なんだって!?マジかよ……?いや、でも、まじでそうかもしれねえ…。
こんな草むらで、あんな、女の子の悲鳴みたいなのが、聞こえるっつったら…。
よおし、それならよ…」
中島は、バットからグローブを外して地面に放り投げると、グリップをぎゅっ、と握った。
「こいつでボッコボコにして、おまわりさんに突き出してやるぜ…!」
磯野も、ボールを捜すのに草むらをかき分けるため、バットを持って来ていた。
磯野も、決意的な表情でバットを構えてみせる。
どうやら、少年らしい正義感に燃える二人の意見は、一致したようだった。
「行こうぜ、中島!」
「ああ!」
一度、お互いの顔を見詰め合ってうなずき交わすと、後はもう後を見ずに、
声のした方へ向かって、草むらを蹴倒して突進した。
ガサガサッ!
しかし、そんな二人の足は、唐突に止まってしまった。
それ程に、そこで二人の見たものは、あまりにも予想外な、拍子抜けさせられるものだったのである。
「な、なんだ…こりゃ?」
急に、二人の前で広々と視界を開いたそこは、かなりの広範囲に渡り、雑草を
取り除いたり踏み固めたりして確保したとおぼしき、広場のような空間だった。
それだけならまだしも、その空間に、点々と鎮座している物々…
ブルーシートや毛布を被ったダンボール、小さなブランコのような物、サッカーボールや
子供の玩具。
俺達は、雑草の海の中で、なにか、異世界への扉でもくぐってしまったのだろうか…。
目の前の光景を、現実的な理屈に結び付けて説明する術がどうしても見つからず、
磯野も中島も、困惑して立ち尽くすだけであった。
そして、次の、広場を仕切る壁となった雑草の後ろから、唐突に現れたモノが、
極め付けだった。
ぼよん、ぼよん…
「ゆ?」
「「…!?」」
雑草の壁の陰から、飛び跳ねて出たゆっくりれいむと、二人の目が、合った。
そして、ゆっくり達の運命が、悲劇へ向かって転がり始めたのである。
つづく