ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0750 U.N.オーエンは彼女なのか?~可愛い時計
最終更新:
ankoss
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後編です
副題とかにも挑戦してみました
今作群は挑戦の塊です
思春期によくお世話になり、あとで顔から火を吐かせてくれるポエムにも挑戦です
ちなみに発条(ぜんまい)です
ではどうぞ
可愛い時計、止まって泣いた
優しい発条、笑って巻いた
時計と発条、仲良しこよし
何時も一組、笑ってる
「ちびちゃん、あさだよ」
「あちゃだよ、おねーしゃん!おねぼーさんはゆっくりできないよ」
「ゆ…、おかあ、さん?」
目を開けるとそこにはお母さんと妹の姿があった
「あたりまえだよ!れいむはちびちゃんのおかあさんにきまってるよ
ゆふ、まだねぼけてるんだね」
そういって自分の顔をぺーろぺーろしてくれる
しかし、震えが止まらない
何故だろう?
ああ、そうか…
「ゆゆ…にゃんだかゆっくりできないゆめをみてたきがしゅるの…
みゃみゃもぴゃぴゃもれーみゅもみんなどっかにいっちゃうの…」
「ゆふふ、うん、それはたしかにゆめだよ
おかあさんもおとうさんもちびちゃんもちゃんとここにいるよ…」
まだ震えている体を丹念にペーろぺーろしていく
その懐かしくゆっくりとした感覚に徐々に震えが収まって行く
「ゆゆ、もうだいじょうぶだよ!
ぜんぶゆめだったんだね!
ままもれーむもぱぱもちゃんといるね!」
半ば自分に言い聞かせるように、半ば確かめるようにはっきりとした口調で言った
「そうだよ、じゃあ、あさごはんだよ!」
「いっちょにむーちゃむーちゃしようね!」
元気の無い姉を気遣ってか仔れいむも元気一杯に話しかける
そんな何気ない日常
かけがえのない日常
「今日」も何事も無く始まって行く…
みんなで朝ごはんをむーしゃむーしゃした後
しばらくみんなでゆっくりした
何とも無い風を装っているがどこか元気の無い仔まりさが気になったのだろう
仔まりさがゆっくりしたのを確認し、父まりさは狩りに出かけて行った
「きょうもいっぱい、おいしいごはんさんとってくるよ!
たのしみにしててね!
れいむ、ちびちゃんたちをおねがいね!」
「ゆっくりまかせてね!まりさもけがしないようきをつけてね!」
何時ものやり取りの後、母れいむは朝ごはんの片づけをし仔とゆっくりし始めた
ゆっくりと言ってもゆっくりしているのは子供ばかり
おかしなことをしているんじゃないかと、危ない目に遭っているんじゃないかと母れいむは目が離せない、気が抜けない
命よりも大切な仔だ、絶対ゆっくりさせる
そんな気持ちが無ければとてもじゃないが親なんてやっていられない
お歌を歌ってもらったり、一緒になって練習したり
日向ぼっこをしたり、追いかけっこをしたり、一日はあっという間に過ぎていく
「ゆ!いまかえったよ!ごはんさんいっぱいとれたよ!」
父まりさがご飯を手(帽子)に帰って来た
夕ご飯を食べてゆっくりとした一日もこのまま終わる
そう思った時だった
「たいへんだよー!」
ひどくゆっくりとしてない叫び声が群れに響く
なにか大変なことが起きたと思い、れいむと仔を巣に残し父まりさが様子を見に行った
「どうしたの?」
辺りを跳ねまわるちぇんを捕まえて事情を聞いた
「ゲスだよ!むれのはじっこにいたゆっくりのおうちがおそわれたんだよー!
すごくたくさんなんだよー!
ゆっくりしないでにげるんだよー!」
そう言うや否やすぐさま他の所へ告げに行く
「ゆう…まずいよ…」
父まりさの体に冷や汗が流れる
この辺りは比較的安全な地域で今まで群れが襲撃を受けた事が無い
だから此処には集団的な戦闘経験のあるゆっくりはいない
早くもパニックが起きているようだ
本来は戦闘要員をかき集める役目のちぇんがあの調子では仕方がない
とにかく一度お家に戻ろう
…
「というわけなんだよ、みんなはまりさがもどるまでぜったいにおうちのそとにでないでね!」
「ゆ、わかったよ。ちびちゃんはれいむにまかせてね!…けが、しないでね…」
巣に戻ると、家族に状況を知らせた
そして総崩れの群れを立て直すべく、長の所に近所の成体を連れて行くと父まりさは言った
それを聞いて仔まりさはひどくゆっくり出来なくなった
お父さんがもう帰って来ない…そんな気がしてならなかった
しかし、群れに生きる以上戦いは義務である
それに大切な人を守るために戦う事の大事さを繰り返し教えられて育ってきたまりさには止められなかった
「おとーしゃん…」
「どうしたのちびちゃん、あかちゃんことばになってるよ!」
「はやく…かえってきてね」
「ゆ!もちろんだよ!おとうさんならげすなんてあっというまにやっつけちゃうよ!」
これしか言えなかった
手近のお家から順に覗いていく
しかし、パニックが起きてから暫く経つ、近所に残っていたゆっくりは少なかった
それでもいっぱい(具体的には8体)集められた
「ゆ、それじゃみんなおさのところにいくよ!」
「「「「「「「えい、えい、ゆー!!!!!!!」」」」」」」
互いに鼓舞しあい今や敵地となった群れを進んでいく
慎重に敵の姿を探りながら行くが今の所、ゲスらしき物は居ない
「まちがいだったのかな…」
次第にはそんな事を言い出す始末
なんとか宥めながらなんとか長の所まで導いた
警戒なんてあったもんじゃない
「おさ?まりさだよ!しつれいするよ!」
返事も待たずお家へ入って行く
しかしそこに「あった」物は…
「「「「「「「「おざああああああああ!?」」」」」」」」
体を食いちぎられたうえ、れいぷされたのか全身から餡子を流し、茎を生やしている長だった物だった
如何に体格が大きいとはいえ、所詮はぱちゅりー、もみあげで二,三体を道連れにするので精一杯だったようだ
「おさがゆっくりさせられたよ!」
「もうだめだよ!さっさとにげるよ!」
「おさぁぁぁぁぁ」
元々無い戦意がさらに下がっていく
「ゆ、でもまだぱちゅりーがいるよ!」
まだ若いが長老一粒種、厳しく躾けられ、親の威光無しに見ても次期長確実とされている
それを担ぎ上げ、群れに統制を取り戻そうと考えたのだ
「そうだね!まだぱちゅりーがいたね!」
「ぱちゅりーさえいれば、あと…でもたたかえる!」
僅かな希望に盛り上がる中一人のれいむが言った
「ぱちゅ、りー?」
「うんそうだよ!あのぱちゅりーならおさのかわりになれるよ!」
そう言いながられいむの視線の先を追う
「………」
人はあまりの衝撃を受けると話せなくなるという
ゆっくりでも同様の様だ
長が庇うように立ちふさがる奥にそれはあった
二/三程が食われて無くなっている、次期長の骸が
「「「「「「ぱぢゅりぃぃぃぃぃいいいいい」」」」」」
もう駄目だ…
群れを掌握できる人材はもう居ないだろう
群れの中心に位置している長が屠られている以上、その周辺に居住していた長老達も無事ではないだろう
こうなったら、ここを捨てるしかもう道は無い
「みんな、ゆっくりきいてね、もうむれはおしまいだよ!」
「ゆゆゆゆゆ?」
「どぼじでそんなこというのぉぉぉぉぉ!?」
「嘘だっ!」
「それでどうするの?」
なんか違うの混じっていたような気がするけど…まあ、いいや
「みんなでげすのこないところにおひっこしするよ!」
「でも、とちゅうでおそわれちゃうよ…」
「あかちゃんは?まだちいさくてとおくにはいけないよ?」
「ごはんは?おひっこしのじゅんびなんてしてないよ?」
問題は山積みだ
でもやらなければ死を待つだけだ
それに今の調子でばらばらに逃げるのではただ被害を増やすだけ、何とかして一定以上の規模で疎開したい
「じゃあ、みんなはここにのこってげすとたたかうの?」
「ゆう、そうはいわないけど…」
という物も居れば
「ゆ!おさのかたきうちだよ!げすにめにものみせてやるんだよ!」
等と盛り上がっている物も居る
会議は踊る、むしろ転がる
理性的な考えが苦手で、感情的なゆっくりがそんなにすぐに纏まる訳が無い
まりさはこの後何かあっても長にはなりたくないなと痛感していた
「とりあえず、おそとにでよう!おはなしはそれからだよ!」
強引にでも話を進ませる
そうしないと何時までも此処でゆっくりすることになるからだ
玄関を抜けるとそこには絶望があった
沢山のゲスがいた
予想通り、長老達のお飾りを持っている個体が散見される
皆やられてしまったのだろう
「ゆああああああああ」
景気のいい事を言っていた個体までも悲鳴を上げる
「みんなにげるよ!」
その場から逃げ出した
幸い、ゲス達は奪った食料を貪ったり、れいぷするのに忙しかったりして追いかけては来なかった
「みんな、いそいでね!」
皆を急かした後、お家へ入る
「みんな、ゆっくりしないできいてね!」
「まりさ、どうしたの?」
只事ではない、そう察した
「おひっこしするよ!みんなでげすのこないところでゆっくりするよ!」
「だからどうして?」
「おさも、おさのぱちゅりーも、ちょーろーもみんなゆっくりしちゃったんだよ!
だからおひっこしするんだよ!」
よく分からないがこれ以上問いかけている時間は無さそうだ
「おちびちゃん、おひっこしするよ!みんなでごはんさんもっていこうね!」
「「わかった(ちゃ)よ!」」
片っ端からご飯を口へ詰め込み、家を出た
もう帰る事の無い、お家…ゆっくり出来ない気分で眺め振り切った
「みんな、じゅんびはできたね!おやまにいくよ!おやまならかくれるところがたくさんあるからだいじょうぶだよ!」
そう言って導いていく父まりさ
しかし
「いきのいい、ゆっくりがいたんだぜ!」
「でいぶはしんぐるまざーなんだよ!ゆっくりごはんさんになってね!」
「にげられないんだよー、でもにげまわってたのしませてほしーんだよー、むごたらしくしんでね!」
無数のげす達が追いかけてくる
このままじゃ逃げきれない!
「みんな、かぞくをまもるよ!いっしょにたたかってね!」
足止めするべく立ち止まり、他の一家の父親に一緒に戦うよう求める
「いやなのぜ!まりさはにげるのぜ!」
「れいむもにげるよ!かてないたたかいをするのはゆっくりできないよ!」
「かちめのないたたかいはとかいはじゃないわ!」
皆まりさを置いて逃げ出してしまった
「ゆううう、まりさひとりでもくいとめるよ!れいむはちびちゃんをおねがいね!」
「まりさ、だめだよ、いっしょににげよう!」
「だいじょうぶ、まりさはふじみなのぜ、おぼうしさんをれいむにあずけるから、かならずあとからおいつくのぜ」
危機を前に男性性が強くなったのか、ぜ言葉が出るまりさ
愛しのれいむにお帽子を押し付け後は振り返らず、げす達へ突っ込んでいく
「まりさ!…いぐよおちびちゃん、いそいでれいむのおくちにはいってね!」
こうなったらご飯どころではない
口に入れていた食糧を吐き出し、ちびちゃんを入れて跳ねる
…
どれくらい経っただろう、山へ入りしばしの休憩をとった
すると声が近付いてきた
「にげられないんだよー!あきらめてねー!」
ちぇん!
一番厄介な奴が追いついてきた…
(ゆう、れいむのあんよじゃ逃げきれないよ…)
こうなったら…
ちびちゃんたちの布団代わりに使っているまりさのお帽子を見つめる
(やるしかないよ!…ゆふふ、たしかにおいつくね、まりさ…)
「ちびちゃん、いや、まりさ」
「なに?おかーさん?」
「これからおかーさんは…おかーさんはちょっとおはなししてくるよ
おなじゆっくりだもん、はなせばわかるよ!」
「おかーしゃん…」
「だからちょっとのあいだれいむをおねがいするよ…
おねーさんなんだからいもーとをゆっくりさせてあげてね!
れいむ、おねーちゃんにわがままいっちゃだめだよ!」
「わかったよ、わかったからすぐかえってきてね!まりさとやくそくだよ!」
「わがみゃみゃいわにゃいよ!じゃからすぎゅかえってきてにぇ!」
「やくそくしたよ、だからふたりともゆっくりしてね!」
まりさの形見を目深にかぶり、茂みを飛び出していく
「れいみゅ…いくよ!」
「うん…」
「ゆがあああ、ゆっくりできないげすはじねええええええ」
凄まじい形相でちぇんに迫るれいむ
此処だけ見るとどちらが悪役か分からない
その後夜を徹し、茂みに隠れながら逃げ続けた
分散したことが幸いしたのか、追手も分散し発見を免れた
その後も山奥を目指し進み続ける
数日間逃げ続け、やっと雨宿りできそうな木の根元に落ち着く
何とか逃げ伸びる事は出来たようだ
しかし、まだ狩りもできない子ども
草を食べて飢えをしのごうとした
しかしまだ赤ゆに近いれいむの体はそれを受け付けなかった
家を出るときは真ん丸で可愛らしい赤ゆだったれいむ、今は見る影もなく萎んでしまった
「おねぇーしゃん…ゆっくりできなくて…ごめんね…」
「れいみゅ、れいみゅ!しんじゃだめだよ!ゆっくりしてね!」
懸命に声をかけ励まそうとする
「ごめんね…ごめんね…」
うわ言の様に繰り返し、最後に微かに痙攣を残し、れいむの短い生涯は終わった
「れいみゅうううううううううううう」
その後、数日間仔まりさの泣き声が途切れることはなかった
「ごべんねえええ、ゆっぐりざぜられなぐっで、ごべんねえええええ」
……
…
その後小規模な群れの被害が相次ぎ、ようやく事態を重く見たどすたちにより群連合が締結された
各群れから抽出された精鋭で討伐軍が編成され、ゲス集団は壊滅していった
ゲスの集団が消滅した今もその組織は残り、この地域の群の防衛にあたっている
「ごべんねえぇぇぇえ」
「おねえしゃん?おねえしゃん、ゆっくりしてね?」
ゆさゆさと体が揺すられる
「おねえしゃんだいじょうびゅ?」
「れいむ?」
「ゆ?ふりゃんだよ?」
「…」
しばし中に視線を彷徨わせる
「ゆ…ゆ!ごめんね、おこしちゃったかな?」
漸く状況が飲みこめた
夢を見ていたようだ
魘されて寝言を言ったらしい
「ううん、ねみゅれなかっちゃの…」
「そう、よかった…おひるねしすぎちゃったのかな?」
そうではない事は分かっているがその事を敢えて言うほど無神経ではない
「いっしょにすーやすーやしようね…ゆ、おうたさんうたってあげるよ」
♪~
柔らかな音色が紡がれていく
(このこはぜったいにゆっくりさせるよ!れいむみたいにはぜったいしないよ、だからみまもっててね…れーみゅ…)
今度こそ二人は安息の世界へと沈みこんでいく…
まりさとふらんが出会ってからもう一月近くたった
毎日草むら周辺をうろついて親ふらんの迎えを待っているが、いまだ邂逅を果たせていない
もう待つのは限界だ、冬支度を始めなければならない
特にふらんが好きな茸はかなり少なくなっていた
「ふらん、今日はおねーさんと一緒に茸さん狩りに行こう!」
「ゆう?きのこしゃん?いきゅー」
「ゆん、じゃあ、おねーさんのおぼうしさんにのってね!ちょっととおくにいくよ!」
「おぼうしさんにのりゅの?」
「そうだよー、ゆいしょっと」
お帽子の縁にふらんを載せる
「ゆわああ、たきゃいよぉ、ふりゃんおそりゃをとんでるみちゃい」
「ゆふふ、どう?おちびちゃんきもちいい?」
「うん、きもちいい…」
羽に風を受け、まるで飛ぶような仕草をする
「ゆふふ、それじゃあ、おちないようにしっかりつかまっててね!」
「う~♪」
跳ねる事によって増した風にうっとりとして、ご機嫌な声が出る
(ゆふふ、ちびちゃんゆっくりしてるね!)
「さあ、ついたよ!」
何時も茸をとる辺りに着いた
ちびちゃんがはしゃぐもんだからつい張り切って跳ねてしまった
帰りはゆっくり帰ろう…
「きょきょでとりゅの?」
「そうだよー、こうしてね、木さんのしたとかにね、よくあるんだよー」
瞬く間に次々と茸を見つけて行く
ふらんの目には何もないように見えたのにあっという間に集まっていく
「しゅごいよ!おねえしゃんしゅごいよ!」
「ゆへん、でもなれればちびちゃんにもすぐにできるようになるよ!」
「う~、ふりゃん、がんばりゅ!」
お帽子の上からきょろきょろとあたりを見回す
「おねーしゃん、あっちにきれいなきのこしゃんがありゅよ!」
「ゆー、どれどれ、…ゆう、ちびちゃんこのきのこさんはたべられないよ」
「そうにゃの?」
「たべるとあんこさんはくのがとまらなくなってゆっくりできないんだよ!
ちびちゃんもきをつけてね!おねーちゃんもいっかいたべてひどいめにあったよ!」
「ゆゆ!?きょわいよ…」
「たべなければだいじょうぶだよ、あんしんしてね」
震えるふらんをあやす様にお帽子を跳ねさせ、高い高いをする
「うー!ふりゃんおしょらをとんじぇるみちゃい!」
山の天気の様に目まぐるしく変化するふらんの表情
まりさにはそんなちびちゃんが可愛らしくてたまらなかった
遊んでるんだか狩りしてるんだか、兎に角茸を集めて行く
そうしていると近くにゆっくりの気配を感じた
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅちちていってね!」
この辺は偶に他のゆっくりと会う
過去の記憶からゆっくり嫌いを患っているまりさだがちゃんと挨拶を交わす
まねしてふらんもちぇんに声を投げかける
まりさに仔が居るなどとは思いもよらなかったから驚き帽子の上に視線を向ける
「ゆぴ!?ふ、ふらん!?」
お帽子に載せたふらんを見るなりちぇんは顔を強張らせた
「そうだよー、まりさのおちびちゃんだよ!ゆっくりしてるでしょ?」
「う、うん…そ、それじゃ、ちぇんはようじがあるからさよならーだよー」
そう言うなり逃げ出すように跳ねて行く
「ゆう?にゃんだったの?」
「わからないよー、ゆっくりできないこだったんだろうねー」
「おねーしゃん…」
ちぇんの口癖を真似てみると不安げな顔をしていたふらんの顔に笑顔が戻る
(なんだったんだろう)
そう思いつつ狩りを続けた
間もなく冬だ、もっと沢山のご飯を集めないと!
暫く跳ねていると茸だけでなく、色々な木の実も沢山見つけられた
お帽子の中に獲物を詰めているとふらんも真似してYUN帽に詰めようとする
しかし、底が浅くて僅かな量しか入らない
「ゆう、おねーしゃんのおぼうししゃんすごいよ!
ごはんしゃんたくさんはいるし、ふりゃんものれりゅよ!
ふりゃんもおねーしゃんみたいなおぼうしさんほしいよ!」
などと駄々をこね始めた
「ちびちゅんのおぼうしさんもかわいくってとってもゆっくりしてるよ!
もっとおおきくなったらいっぱいごはんさんつめられるよ!」
と宥める
まりさ自身も昔、お父さんに同じような事をよく言ったものだ
しかしちゃんと大きくなって詰められるようになった
形は違うけど多分ちゃんと出来る様になるだろう
そんな実感の籠った言葉を聞き機嫌を直す
「ゆ!ふりゃんもはやくおおききゅなりゅよ!」
「ゆふふ、たのしみにしてるよ…」
そうなったら別れの日は近い
その時を想像してまりさはちょっと泣きそうになる
「ゆ~!きのこしゃんもっとさがしゅよ!」
しんみりしていると先にふらんが行ってしまった
「まってね!」
「はやきゅ、おねーしゃん!」
追いかけると更に逃げ、追いかけっこへ発展していった
恵みの秋はまたたく間に過ぎ去り、
冬は次第に深さを増していく…
出会ってから半年以上が経ち、冬を越し春を迎えた
久しぶりに外に出るとはしゃいで飛び回った
冬の間にすっかり成長し、赤ゆから仔ゆっくりへと成長を果たしていた
羽をぐんと伸ばして伸びをすると何だか飛べそうな気がしてきた
「ゆ!ふらん、おそらをとんでるよ!」
気がするだけではない、実際に飛んでいた
それを見たまりさは仰天する
「おちびちゃんがおそらをとんでる!!!!」
「みてみておねーちゃん!」
驚くまりさを見て調子に乗って輪を描いて飛び、そばへ下りた
「すごいよ、おちびちゃん!まりさおそらをとぶゆっくりなんてみたことがないよ!」
興奮して頬を擦りつける
「あつい、あついよおねえちゃん!」
あまりに気を入れてすーりすーりをしたものだから、頬が熱を持ったのだ
「ごめんね、おちびちゃん」
ちょっと赤くなった頬をペーろぺーろしてあげる
「ゆうううう♪~」
半ベソかいていたがすぐに機嫌を直す
ころころと笑顔を浮かべるのを見て、ぺろぺろをやめて言った
「それじゃあ、おちびちゃん、おねーちゃんかりにいってくるよ!」
そろそろ一人でいても大丈夫だろう
連れて行きたいがまだ雪解けから間もない、
「うん、ふらんおるすばんしてるよ!」
「とおくにいっちゃだめだよ!かわさんはあぶないからちかづいちゃだめだよ!」
念を押してから狩り場へと出かけて行った
しかし、駄目と言われればやりたくなるのが子供と言う物
ちょっとだけならと川へ行ってしまった
「ゆう、すごいよ!」
雪解けを集めて速し、どっかの川
一時程ではないがまだまだ流量は多い
河原へ下りて行くとじんわりと水っけがあんよへ伝わってくる
「ちゅべたいっ!」
あんよも冷たいし、おねーさんにも注意されているしもう帰ろうと思った時
ふらんの目にある物が映った
「ゆう?」
そっと摘みあげる
「ゆああ、きれいだよ!ふらんのたからものにするよ!」
狩りを終えて帰って来たまりさを何も無いかったかの様に出迎える
「おちびちゃん、とおくにいってたね!」
あんよについた泥を見咎められ、怒られた
「もう、とおくへいかないよ。ゆるじてぇ」
泣きながら謝り、その後二人でご飯を食べた
何事もない(今日はあったけど)平穏な日々、今日からまた続くと信じていた
……
…
だが、その日は唐突に訪れた
群との交流が無いまりさの巣に5体ものゆっくりが訪れたのだ
どうしても話したい事がある、だから子供を連れてついて来て欲しいと彼らは言う
善良そうな顔をしていて、手土産のご飯も沢山渡され
何より、来なければどうなるか、と声に出さずに凄んでくる
1対5では勝ち目が無い
何とか穏便に済ませようと要求をのみ、ふらんを連れ巣を出た
そして彼らは言った
「ふらんをわたせ」
何故自分のおちびちゃんを取り上げようとするのかと語尾を荒げると
「ふらんはゆっくりをたべるゆっくり、そんなあくまのようなゆっくりがちかくにいられるとこまる」
「れみりゃいじょうのかいりきをほこるばけもの、おとなになられたらてにおえない」
「ゆっくりにとってしにがみのようなものだ、あれのおやをころすにもただいなひがいがでた」
ちびちゃんのお母さんを殺したのはお前たちか!
怒りにわなわなと体が震える
「ははおやだけではない、ちちおやもだ」
一体が誇らしげに言う
ふらんに勝ったのだ、誇らしくないはずが無い
「はねなしだからなんとかてにおえた」
「はねなしのゆっくりしてないこだからみすててもしかたがない」
「はねなしでかりもできないおやだった、だからそいつはほんとうはもうしんでいたはずだ」
「そうだったはずをそうにするだけ、きにやむことはない」
親ふらんを悪しざまに侮蔑しながら説得しようとして来る
その顔にはゆっくりしてない親から生まれたゆっくりしてない子どもを何故わざわざ育てようとするのか、という拭い切れない差別意識があった
まりさには羽無しの意味は分からなかったが、兎に角ふらんのお母さんを見下しているのは分かる
不完全な物を嫌うゆっくり、生まれつき羽が無い奇形は捕食種と言えど軽侮の対象らしい
これ以上をちびちゃんに聞かせられない
そう思い、少しの間離れているように言った
だがそれだけではない
まりさの心にふらんを見捨ててゆっくりしたい
元々見ず知らずの仔だ、命をかけて守る必要はない
そんな気持ちが生まれ、そばに居られなくなったからだ
「それにしてもゆっくりをくらい、そらをかけるゆっくりがじべたをはいずり、きのこやらくさやらをすにはこんでいくのはあわれだったぜ」
茸…そうかなんでちびちゃんが茸が好きだったのか
それは親の愛情そのものの味、ゆっくりできる記憶が刺激されたんだろう
その後も散々罵り、子供を見捨てることの正当さをまくしたてたのち、最後にこう言った
「ゆ、まりさはまいごのちびちゃんをそだててあげる、とってもゆっくりしたゆっくりだよ!
だからおとなしくふらんをわたせばまりさにはなにもしないよ!」
「まりさたちはむれをだいひょーするしこゆなんだよ!つよいんだよ!おとなしくゆうこときいてね!」
こいつらは善良だ
大人しく言う事を聞き、ふらんを渡せば間違いなく自分を見逃すだろう
死ぬのは怖い
ゆっくりしたい
しかし…
不意に虚空へ今は亡き家族の顔が投影される
お父さんだ
(まりさの弱虫さんを叱っているのかな…すごく怖い顔だよ…)
お母さんだ
(まりさの卑怯を悲しんでいるのかな…すごく悲しそうだよ…)
れいむだ
いや、これは…
(まりさの顔だ、それも小さいときの…
泣いてるの?怒ってるの?どうしてそんな顔をしてるの?)
ああ、これは…またやるの?たいせつなひとをまたしなせるの?…憤っているんだ
最後に…ふらんの顔が浮かんだ
寝ている時、食べている時、一緒に遊んだ時、他愛のない顔ばかり思い出す
死神…悪魔…
れみりゃ以上の化け物…ゆっくりの天敵
(だけど、だけど、だけど!ふらんはまりさのこだよ!)
そう思い定めた直後、虚空に浮かぶ顔は無数の笑顔に変わった
それが正しいと言わんばかりに
「ふらんは…わたさないよ!まりさはふらんのおかあさんだよ、なにがあってもぜったいにまもるんだよ!
ふらんをわたせばみのがす?
ばかなの?しぬの?
じぶんのおちびちゃんをみすてていきのびるゆっくりがどこにいるの?
はじをしってよね!ゆっくりできないよ!」
言ってしまった
それを聞いたふらんの目から涙が溢れる
「ちび、にげろおおお」
ふらんの涙に違うものが混じる
この言葉は偶然だろうが親ふらんがふらんに掛けた最後の言葉と同じだったからだ
逃げるふらんを背中で見ながらゆっくりと正対する
捕食種とやらを狩るほどの手慣れだ
まず助からないだろう
しかし、後悔は微塵もない
もし生まれ変わりとやらが実在したとしてもまた同じ選択をするだろう
それほどまでにこれが正しい事だと信じた
そして…ゆっくりの信じる気持ちは力となる…!
「ゆああああああああ!!!」
多勢に無勢しかし果敢に挑んでいく
ばぐん!
「ゆっぎいいいいい、あでぃずのおべべがあああああ」
一番手近に居た「饅頭」の目を噛み千切る
力が籠り過ぎていたせいか、ありすの大きくなった眼窩には何本か砕けた歯が残る
この瞬間まりさはゆっくりではない化け物となったのだろう
「ゆがああああああああああああ!!!!」
どこん!
「ゆべえ、あぁぁ、ごほぅ、わがらないよー」
自身の体にも亀裂が走るほどの体当たりをかます
開いた傷口から餡子が流れる
だが、痛みなど最早感じない
すると
「ゆぎいいぃい?」
「ゆっくりできないばけものはさっさとしんでね!」
「おねえちゃん?」
その悲鳴を聞き思わず立ち止まるふらん
「ぐるなあああ、いげええええええ」
怒鳴り、追い返す
背中に違和感を感じる…
ああ、刺されたんだ…
これが枝さんの感触、いや、死の感触
だが
「ゆうううああああああああああ!!!」
渾身の力でそれを払う
今はまだお前はお呼びじゃない!
「へ、へいふほおふひは…」
「があああああ」
「ゆべっ…」
やたら口のでかい「饅頭」を潰し、次の敵を探す
まだだ、まだ二匹いるはず!
横合いから旋風の様にやや小ぶりな影が襲う
「よくもみんなをぉおぉ!!!」
みょんの振り下ろすけんがまりさの眼球を砕く
普通のゆっくりならこれで怯む、間違ってはいない
しかし…死を悟ったゆっくりが眼球一つで怯むわけがない
死を覚悟したゆっくりと戦った事が無い、それが致命的だった
「おああああああああ!!」
もはやゆっくり特有のゆ付きの叫びですらなくなった咆哮を上げ、怯むみょんに体当たりをかける
「ゆああああ、おびょ」
恐怖のあまり躱す事を忘れ青眼に構えたまま固まっていた
そこに体当たりを受けたのだから、そのまま咽喉の奥まで突き刺さる
無論まりさも唯では済まなかった
あごの下から突きぬけ、貫通したけんは口内で僅かに残っていた歯列を歯肉ごと吹き飛ばした
あと…あと一人…
「うぱあぁぁ」
側面から刺された
みょんの様な怯ます剣筋ではない、殺意の塊の一撃
こいつは…
「まりざああああああ」
突き破れよ、とばかりに突き刺されたけんに向け力を込めた
自棄になった訳ではない
その方角には…
「ゆべ!?」
地肌がむき出しな崖があった
崖に叩き付けられ、さしものまりさも口からけんを離す
しかし今の自分の力ではもう潰せない
でも
あとちょっと
あとちょっと力が加われば!
「ゆぐ、へへそんなたいあたりきかないのぜ?」
余裕を取り戻したまりさが挑発する
「ゆぐ、ぐふぁ…ならまりさがてほんをみせてみるといい「のぜ」?」
オウム返しというのは案外効くものだ、特に餡子脳なゆっくりならば
自分の語尾をからかわれていきり立ったまりさは襤褸雑巾になったまりさに体当たりする
それが罠とも気が付かずに
「ゆべええええ」
攻撃が当たるなり、大量の餡子を噴き出す
口からだけでなく、全身の傷から流れる
「それだけあんこさんはけばもうおしまいなのぜ。もうあきらめるのぜ、まりさはよくたたかったのぜ…」
ニヤ
親まりさが正にゆっくりらしいニヤけ面を浮かべる
「そうそう、あきらめどきがかんじんなのz」
「ぐおおああああああああああ!!」
勝利を確信した憎たらしい面に齧り付く
「むだなのz…ゆ?なんのおと?」
ずずずと何かが滑る音が聞こえる
まりさ!上から来るぞ!
「うえ?」
上をみると大きな岩(人間目線では石)が滑り落ちてくる
「はなぜええええええ」
渾身の力を込めて親まりさを引き離そうとする
「やだよ!そんなたのみは…きけないよ!」
「ゆがああああああああああはなぜえええええええええ」
執念勝ちかまりさが親まりさを剥がすのに成功した
だが時すでに遅し
「やっt」
ずん!
まりさの体に深々と石が突き刺さり、そして裂ける
勝った…
しかしもう動けそうにない
ちびちゃんは逃げ延びただろうか…
追手がこれだけならいいんだけど
そしてゆっくりと視界が狭まり、全てが暗黒へ包まれようとした時
機能を停止しようとしていたまりさの目に小さな影が飛び込んできた
「ふ、らん…きちゃだめって…にげてっていったでしょ…」
「でも、でもおねえちゃんがしんぱいだったの」
「しかたないこだね…ほら…なかないで…ゆっくりできないこたちは…もういないよ…」
「おねえじゃん…」
ああ、泣かないで…
でももうすーりすーりもペーろぺーろもできない…
できないよ…
どうしたら…
…
そうだ…
「ふらん…」
「にゃ…に゛?」
「まえ…ほしが…てた…まりさ…のいちば…んだいじ…なおぼうしさ…んあげる…よ…だから…なきやんでね…」
「おねええじゃんん」
これを受け取ってしまったら、すぐにまりさがゆっくりしてしまうのではないかと思えて受取れなかった
「ふら…おぼ…し…まりさ…おも…て…ゆ…くりして…ね…」
「やじゃ、やじゃよ、おねえじゃんとずっといっしょにいるううう
おねえじゃんしんじゃやだあああああ」
「も…とゆっ…りさせたか…た…ごめんね…」
ゆっくりしたかったではない、ゆっくりさせたかった
そう最後に残し、静かに痙攣して、やがて止まった
まりさの命は燃え尽き、体はゆっくりと唯の餡子へと還って往く
徐々に失われていくゆっくりとしての存在を感じ、ふらんの体が弛緩する
するとふらんのお帽子が脱げてしまい、転がる
ゆっくりにとって命と同程度の価値を持つお飾り、しかし今はそれに気をかけることすらなかった
そしてその中から或る物が顔を覗かせる…
「あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
それは…水晶
一緒に永遠にゆっくりしようと「えんげーじりんぐ」としてまりさに渡そうとしていたもの…
もう渡せない
もう一緒にゆっくりできない
もう…まりさは居ない
もう、もう、もう、もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう!!!!!!
幼い子供が親に向ける無垢な愛情
そう言うには彼女のそれは深すぎた…
可愛い時計、またまた泣いてる
優しい発条、ただただ見てる
時計と発条、離れ離れ
可愛い時計、もう動かない
作者です
最後までお読みいただき、ありがとうございます
何か前篇後篇と言いながら、明らかに分量が変ですね
一つに纏めるか、前中後に別けるべきでした
前作コメントより
>愛ででもいける
ありがとうございます
実はこの話、元々の題は「ふらまり」で
ただまったりとした愛で話のつもりでネタづくりしていました
しかし、ちょっと魔が差しちゃいましてこんな話になりました
どうしてこうなった…
ではまた二部でお会いしましょう
追記
あと、この連話を書き終えたら名前を持とうかと思ってます
現在は一作目の名から観察あきとなっています
それがいい、もしくはこっちの名の方がいい!
というご意見ありましたらよろしくお願いします
ふたば系ゆっくりいじめ 468 ありす観察日誌
ふたば系ゆっくりいじめ 556 ゆっくりこしていってね!
ふたば系ゆっくりいじめ 606 うんうん
ふたば系ゆっくりいじめ 620 ゆうかを量産工場
ふたば系ゆっくりいじめ 626 U.N.オーエンは彼女なのか?前半
副題とかにも挑戦してみました
今作群は挑戦の塊です
思春期によくお世話になり、あとで顔から火を吐かせてくれるポエムにも挑戦です
ちなみに発条(ぜんまい)です
ではどうぞ
可愛い時計、止まって泣いた
優しい発条、笑って巻いた
時計と発条、仲良しこよし
何時も一組、笑ってる
「ちびちゃん、あさだよ」
「あちゃだよ、おねーしゃん!おねぼーさんはゆっくりできないよ」
「ゆ…、おかあ、さん?」
目を開けるとそこにはお母さんと妹の姿があった
「あたりまえだよ!れいむはちびちゃんのおかあさんにきまってるよ
ゆふ、まだねぼけてるんだね」
そういって自分の顔をぺーろぺーろしてくれる
しかし、震えが止まらない
何故だろう?
ああ、そうか…
「ゆゆ…にゃんだかゆっくりできないゆめをみてたきがしゅるの…
みゃみゃもぴゃぴゃもれーみゅもみんなどっかにいっちゃうの…」
「ゆふふ、うん、それはたしかにゆめだよ
おかあさんもおとうさんもちびちゃんもちゃんとここにいるよ…」
まだ震えている体を丹念にペーろぺーろしていく
その懐かしくゆっくりとした感覚に徐々に震えが収まって行く
「ゆゆ、もうだいじょうぶだよ!
ぜんぶゆめだったんだね!
ままもれーむもぱぱもちゃんといるね!」
半ば自分に言い聞かせるように、半ば確かめるようにはっきりとした口調で言った
「そうだよ、じゃあ、あさごはんだよ!」
「いっちょにむーちゃむーちゃしようね!」
元気の無い姉を気遣ってか仔れいむも元気一杯に話しかける
そんな何気ない日常
かけがえのない日常
「今日」も何事も無く始まって行く…
みんなで朝ごはんをむーしゃむーしゃした後
しばらくみんなでゆっくりした
何とも無い風を装っているがどこか元気の無い仔まりさが気になったのだろう
仔まりさがゆっくりしたのを確認し、父まりさは狩りに出かけて行った
「きょうもいっぱい、おいしいごはんさんとってくるよ!
たのしみにしててね!
れいむ、ちびちゃんたちをおねがいね!」
「ゆっくりまかせてね!まりさもけがしないようきをつけてね!」
何時ものやり取りの後、母れいむは朝ごはんの片づけをし仔とゆっくりし始めた
ゆっくりと言ってもゆっくりしているのは子供ばかり
おかしなことをしているんじゃないかと、危ない目に遭っているんじゃないかと母れいむは目が離せない、気が抜けない
命よりも大切な仔だ、絶対ゆっくりさせる
そんな気持ちが無ければとてもじゃないが親なんてやっていられない
お歌を歌ってもらったり、一緒になって練習したり
日向ぼっこをしたり、追いかけっこをしたり、一日はあっという間に過ぎていく
「ゆ!いまかえったよ!ごはんさんいっぱいとれたよ!」
父まりさがご飯を手(帽子)に帰って来た
夕ご飯を食べてゆっくりとした一日もこのまま終わる
そう思った時だった
「たいへんだよー!」
ひどくゆっくりとしてない叫び声が群れに響く
なにか大変なことが起きたと思い、れいむと仔を巣に残し父まりさが様子を見に行った
「どうしたの?」
辺りを跳ねまわるちぇんを捕まえて事情を聞いた
「ゲスだよ!むれのはじっこにいたゆっくりのおうちがおそわれたんだよー!
すごくたくさんなんだよー!
ゆっくりしないでにげるんだよー!」
そう言うや否やすぐさま他の所へ告げに行く
「ゆう…まずいよ…」
父まりさの体に冷や汗が流れる
この辺りは比較的安全な地域で今まで群れが襲撃を受けた事が無い
だから此処には集団的な戦闘経験のあるゆっくりはいない
早くもパニックが起きているようだ
本来は戦闘要員をかき集める役目のちぇんがあの調子では仕方がない
とにかく一度お家に戻ろう
…
「というわけなんだよ、みんなはまりさがもどるまでぜったいにおうちのそとにでないでね!」
「ゆ、わかったよ。ちびちゃんはれいむにまかせてね!…けが、しないでね…」
巣に戻ると、家族に状況を知らせた
そして総崩れの群れを立て直すべく、長の所に近所の成体を連れて行くと父まりさは言った
それを聞いて仔まりさはひどくゆっくり出来なくなった
お父さんがもう帰って来ない…そんな気がしてならなかった
しかし、群れに生きる以上戦いは義務である
それに大切な人を守るために戦う事の大事さを繰り返し教えられて育ってきたまりさには止められなかった
「おとーしゃん…」
「どうしたのちびちゃん、あかちゃんことばになってるよ!」
「はやく…かえってきてね」
「ゆ!もちろんだよ!おとうさんならげすなんてあっというまにやっつけちゃうよ!」
これしか言えなかった
手近のお家から順に覗いていく
しかし、パニックが起きてから暫く経つ、近所に残っていたゆっくりは少なかった
それでもいっぱい(具体的には8体)集められた
「ゆ、それじゃみんなおさのところにいくよ!」
「「「「「「「えい、えい、ゆー!!!!!!!」」」」」」」
互いに鼓舞しあい今や敵地となった群れを進んでいく
慎重に敵の姿を探りながら行くが今の所、ゲスらしき物は居ない
「まちがいだったのかな…」
次第にはそんな事を言い出す始末
なんとか宥めながらなんとか長の所まで導いた
警戒なんてあったもんじゃない
「おさ?まりさだよ!しつれいするよ!」
返事も待たずお家へ入って行く
しかしそこに「あった」物は…
「「「「「「「「おざああああああああ!?」」」」」」」」
体を食いちぎられたうえ、れいぷされたのか全身から餡子を流し、茎を生やしている長だった物だった
如何に体格が大きいとはいえ、所詮はぱちゅりー、もみあげで二,三体を道連れにするので精一杯だったようだ
「おさがゆっくりさせられたよ!」
「もうだめだよ!さっさとにげるよ!」
「おさぁぁぁぁぁ」
元々無い戦意がさらに下がっていく
「ゆ、でもまだぱちゅりーがいるよ!」
まだ若いが長老一粒種、厳しく躾けられ、親の威光無しに見ても次期長確実とされている
それを担ぎ上げ、群れに統制を取り戻そうと考えたのだ
「そうだね!まだぱちゅりーがいたね!」
「ぱちゅりーさえいれば、あと…でもたたかえる!」
僅かな希望に盛り上がる中一人のれいむが言った
「ぱちゅ、りー?」
「うんそうだよ!あのぱちゅりーならおさのかわりになれるよ!」
そう言いながられいむの視線の先を追う
「………」
人はあまりの衝撃を受けると話せなくなるという
ゆっくりでも同様の様だ
長が庇うように立ちふさがる奥にそれはあった
二/三程が食われて無くなっている、次期長の骸が
「「「「「「ぱぢゅりぃぃぃぃぃいいいいい」」」」」」
もう駄目だ…
群れを掌握できる人材はもう居ないだろう
群れの中心に位置している長が屠られている以上、その周辺に居住していた長老達も無事ではないだろう
こうなったら、ここを捨てるしかもう道は無い
「みんな、ゆっくりきいてね、もうむれはおしまいだよ!」
「ゆゆゆゆゆ?」
「どぼじでそんなこというのぉぉぉぉぉ!?」
「嘘だっ!」
「それでどうするの?」
なんか違うの混じっていたような気がするけど…まあ、いいや
「みんなでげすのこないところにおひっこしするよ!」
「でも、とちゅうでおそわれちゃうよ…」
「あかちゃんは?まだちいさくてとおくにはいけないよ?」
「ごはんは?おひっこしのじゅんびなんてしてないよ?」
問題は山積みだ
でもやらなければ死を待つだけだ
それに今の調子でばらばらに逃げるのではただ被害を増やすだけ、何とかして一定以上の規模で疎開したい
「じゃあ、みんなはここにのこってげすとたたかうの?」
「ゆう、そうはいわないけど…」
という物も居れば
「ゆ!おさのかたきうちだよ!げすにめにものみせてやるんだよ!」
等と盛り上がっている物も居る
会議は踊る、むしろ転がる
理性的な考えが苦手で、感情的なゆっくりがそんなにすぐに纏まる訳が無い
まりさはこの後何かあっても長にはなりたくないなと痛感していた
「とりあえず、おそとにでよう!おはなしはそれからだよ!」
強引にでも話を進ませる
そうしないと何時までも此処でゆっくりすることになるからだ
玄関を抜けるとそこには絶望があった
沢山のゲスがいた
予想通り、長老達のお飾りを持っている個体が散見される
皆やられてしまったのだろう
「ゆああああああああ」
景気のいい事を言っていた個体までも悲鳴を上げる
「みんなにげるよ!」
その場から逃げ出した
幸い、ゲス達は奪った食料を貪ったり、れいぷするのに忙しかったりして追いかけては来なかった
「みんな、いそいでね!」
皆を急かした後、お家へ入る
「みんな、ゆっくりしないできいてね!」
「まりさ、どうしたの?」
只事ではない、そう察した
「おひっこしするよ!みんなでげすのこないところでゆっくりするよ!」
「だからどうして?」
「おさも、おさのぱちゅりーも、ちょーろーもみんなゆっくりしちゃったんだよ!
だからおひっこしするんだよ!」
よく分からないがこれ以上問いかけている時間は無さそうだ
「おちびちゃん、おひっこしするよ!みんなでごはんさんもっていこうね!」
「「わかった(ちゃ)よ!」」
片っ端からご飯を口へ詰め込み、家を出た
もう帰る事の無い、お家…ゆっくり出来ない気分で眺め振り切った
「みんな、じゅんびはできたね!おやまにいくよ!おやまならかくれるところがたくさんあるからだいじょうぶだよ!」
そう言って導いていく父まりさ
しかし
「いきのいい、ゆっくりがいたんだぜ!」
「でいぶはしんぐるまざーなんだよ!ゆっくりごはんさんになってね!」
「にげられないんだよー、でもにげまわってたのしませてほしーんだよー、むごたらしくしんでね!」
無数のげす達が追いかけてくる
このままじゃ逃げきれない!
「みんな、かぞくをまもるよ!いっしょにたたかってね!」
足止めするべく立ち止まり、他の一家の父親に一緒に戦うよう求める
「いやなのぜ!まりさはにげるのぜ!」
「れいむもにげるよ!かてないたたかいをするのはゆっくりできないよ!」
「かちめのないたたかいはとかいはじゃないわ!」
皆まりさを置いて逃げ出してしまった
「ゆううう、まりさひとりでもくいとめるよ!れいむはちびちゃんをおねがいね!」
「まりさ、だめだよ、いっしょににげよう!」
「だいじょうぶ、まりさはふじみなのぜ、おぼうしさんをれいむにあずけるから、かならずあとからおいつくのぜ」
危機を前に男性性が強くなったのか、ぜ言葉が出るまりさ
愛しのれいむにお帽子を押し付け後は振り返らず、げす達へ突っ込んでいく
「まりさ!…いぐよおちびちゃん、いそいでれいむのおくちにはいってね!」
こうなったらご飯どころではない
口に入れていた食糧を吐き出し、ちびちゃんを入れて跳ねる
…
どれくらい経っただろう、山へ入りしばしの休憩をとった
すると声が近付いてきた
「にげられないんだよー!あきらめてねー!」
ちぇん!
一番厄介な奴が追いついてきた…
(ゆう、れいむのあんよじゃ逃げきれないよ…)
こうなったら…
ちびちゃんたちの布団代わりに使っているまりさのお帽子を見つめる
(やるしかないよ!…ゆふふ、たしかにおいつくね、まりさ…)
「ちびちゃん、いや、まりさ」
「なに?おかーさん?」
「これからおかーさんは…おかーさんはちょっとおはなししてくるよ
おなじゆっくりだもん、はなせばわかるよ!」
「おかーしゃん…」
「だからちょっとのあいだれいむをおねがいするよ…
おねーさんなんだからいもーとをゆっくりさせてあげてね!
れいむ、おねーちゃんにわがままいっちゃだめだよ!」
「わかったよ、わかったからすぐかえってきてね!まりさとやくそくだよ!」
「わがみゃみゃいわにゃいよ!じゃからすぎゅかえってきてにぇ!」
「やくそくしたよ、だからふたりともゆっくりしてね!」
まりさの形見を目深にかぶり、茂みを飛び出していく
「れいみゅ…いくよ!」
「うん…」
「ゆがあああ、ゆっくりできないげすはじねええええええ」
凄まじい形相でちぇんに迫るれいむ
此処だけ見るとどちらが悪役か分からない
その後夜を徹し、茂みに隠れながら逃げ続けた
分散したことが幸いしたのか、追手も分散し発見を免れた
その後も山奥を目指し進み続ける
数日間逃げ続け、やっと雨宿りできそうな木の根元に落ち着く
何とか逃げ伸びる事は出来たようだ
しかし、まだ狩りもできない子ども
草を食べて飢えをしのごうとした
しかしまだ赤ゆに近いれいむの体はそれを受け付けなかった
家を出るときは真ん丸で可愛らしい赤ゆだったれいむ、今は見る影もなく萎んでしまった
「おねぇーしゃん…ゆっくりできなくて…ごめんね…」
「れいみゅ、れいみゅ!しんじゃだめだよ!ゆっくりしてね!」
懸命に声をかけ励まそうとする
「ごめんね…ごめんね…」
うわ言の様に繰り返し、最後に微かに痙攣を残し、れいむの短い生涯は終わった
「れいみゅうううううううううううう」
その後、数日間仔まりさの泣き声が途切れることはなかった
「ごべんねえええ、ゆっぐりざぜられなぐっで、ごべんねえええええ」
……
…
その後小規模な群れの被害が相次ぎ、ようやく事態を重く見たどすたちにより群連合が締結された
各群れから抽出された精鋭で討伐軍が編成され、ゲス集団は壊滅していった
ゲスの集団が消滅した今もその組織は残り、この地域の群の防衛にあたっている
「ごべんねえぇぇぇえ」
「おねえしゃん?おねえしゃん、ゆっくりしてね?」
ゆさゆさと体が揺すられる
「おねえしゃんだいじょうびゅ?」
「れいむ?」
「ゆ?ふりゃんだよ?」
「…」
しばし中に視線を彷徨わせる
「ゆ…ゆ!ごめんね、おこしちゃったかな?」
漸く状況が飲みこめた
夢を見ていたようだ
魘されて寝言を言ったらしい
「ううん、ねみゅれなかっちゃの…」
「そう、よかった…おひるねしすぎちゃったのかな?」
そうではない事は分かっているがその事を敢えて言うほど無神経ではない
「いっしょにすーやすーやしようね…ゆ、おうたさんうたってあげるよ」
♪~
柔らかな音色が紡がれていく
(このこはぜったいにゆっくりさせるよ!れいむみたいにはぜったいしないよ、だからみまもっててね…れーみゅ…)
今度こそ二人は安息の世界へと沈みこんでいく…
まりさとふらんが出会ってからもう一月近くたった
毎日草むら周辺をうろついて親ふらんの迎えを待っているが、いまだ邂逅を果たせていない
もう待つのは限界だ、冬支度を始めなければならない
特にふらんが好きな茸はかなり少なくなっていた
「ふらん、今日はおねーさんと一緒に茸さん狩りに行こう!」
「ゆう?きのこしゃん?いきゅー」
「ゆん、じゃあ、おねーさんのおぼうしさんにのってね!ちょっととおくにいくよ!」
「おぼうしさんにのりゅの?」
「そうだよー、ゆいしょっと」
お帽子の縁にふらんを載せる
「ゆわああ、たきゃいよぉ、ふりゃんおそりゃをとんでるみちゃい」
「ゆふふ、どう?おちびちゃんきもちいい?」
「うん、きもちいい…」
羽に風を受け、まるで飛ぶような仕草をする
「ゆふふ、それじゃあ、おちないようにしっかりつかまっててね!」
「う~♪」
跳ねる事によって増した風にうっとりとして、ご機嫌な声が出る
(ゆふふ、ちびちゃんゆっくりしてるね!)
「さあ、ついたよ!」
何時も茸をとる辺りに着いた
ちびちゃんがはしゃぐもんだからつい張り切って跳ねてしまった
帰りはゆっくり帰ろう…
「きょきょでとりゅの?」
「そうだよー、こうしてね、木さんのしたとかにね、よくあるんだよー」
瞬く間に次々と茸を見つけて行く
ふらんの目には何もないように見えたのにあっという間に集まっていく
「しゅごいよ!おねえしゃんしゅごいよ!」
「ゆへん、でもなれればちびちゃんにもすぐにできるようになるよ!」
「う~、ふりゃん、がんばりゅ!」
お帽子の上からきょろきょろとあたりを見回す
「おねーしゃん、あっちにきれいなきのこしゃんがありゅよ!」
「ゆー、どれどれ、…ゆう、ちびちゃんこのきのこさんはたべられないよ」
「そうにゃの?」
「たべるとあんこさんはくのがとまらなくなってゆっくりできないんだよ!
ちびちゃんもきをつけてね!おねーちゃんもいっかいたべてひどいめにあったよ!」
「ゆゆ!?きょわいよ…」
「たべなければだいじょうぶだよ、あんしんしてね」
震えるふらんをあやす様にお帽子を跳ねさせ、高い高いをする
「うー!ふりゃんおしょらをとんじぇるみちゃい!」
山の天気の様に目まぐるしく変化するふらんの表情
まりさにはそんなちびちゃんが可愛らしくてたまらなかった
遊んでるんだか狩りしてるんだか、兎に角茸を集めて行く
そうしていると近くにゆっくりの気配を感じた
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅちちていってね!」
この辺は偶に他のゆっくりと会う
過去の記憶からゆっくり嫌いを患っているまりさだがちゃんと挨拶を交わす
まねしてふらんもちぇんに声を投げかける
まりさに仔が居るなどとは思いもよらなかったから驚き帽子の上に視線を向ける
「ゆぴ!?ふ、ふらん!?」
お帽子に載せたふらんを見るなりちぇんは顔を強張らせた
「そうだよー、まりさのおちびちゃんだよ!ゆっくりしてるでしょ?」
「う、うん…そ、それじゃ、ちぇんはようじがあるからさよならーだよー」
そう言うなり逃げ出すように跳ねて行く
「ゆう?にゃんだったの?」
「わからないよー、ゆっくりできないこだったんだろうねー」
「おねーしゃん…」
ちぇんの口癖を真似てみると不安げな顔をしていたふらんの顔に笑顔が戻る
(なんだったんだろう)
そう思いつつ狩りを続けた
間もなく冬だ、もっと沢山のご飯を集めないと!
暫く跳ねていると茸だけでなく、色々な木の実も沢山見つけられた
お帽子の中に獲物を詰めているとふらんも真似してYUN帽に詰めようとする
しかし、底が浅くて僅かな量しか入らない
「ゆう、おねーしゃんのおぼうししゃんすごいよ!
ごはんしゃんたくさんはいるし、ふりゃんものれりゅよ!
ふりゃんもおねーしゃんみたいなおぼうしさんほしいよ!」
などと駄々をこね始めた
「ちびちゅんのおぼうしさんもかわいくってとってもゆっくりしてるよ!
もっとおおきくなったらいっぱいごはんさんつめられるよ!」
と宥める
まりさ自身も昔、お父さんに同じような事をよく言ったものだ
しかしちゃんと大きくなって詰められるようになった
形は違うけど多分ちゃんと出来る様になるだろう
そんな実感の籠った言葉を聞き機嫌を直す
「ゆ!ふりゃんもはやくおおききゅなりゅよ!」
「ゆふふ、たのしみにしてるよ…」
そうなったら別れの日は近い
その時を想像してまりさはちょっと泣きそうになる
「ゆ~!きのこしゃんもっとさがしゅよ!」
しんみりしていると先にふらんが行ってしまった
「まってね!」
「はやきゅ、おねーしゃん!」
追いかけると更に逃げ、追いかけっこへ発展していった
恵みの秋はまたたく間に過ぎ去り、
冬は次第に深さを増していく…
出会ってから半年以上が経ち、冬を越し春を迎えた
久しぶりに外に出るとはしゃいで飛び回った
冬の間にすっかり成長し、赤ゆから仔ゆっくりへと成長を果たしていた
羽をぐんと伸ばして伸びをすると何だか飛べそうな気がしてきた
「ゆ!ふらん、おそらをとんでるよ!」
気がするだけではない、実際に飛んでいた
それを見たまりさは仰天する
「おちびちゃんがおそらをとんでる!!!!」
「みてみておねーちゃん!」
驚くまりさを見て調子に乗って輪を描いて飛び、そばへ下りた
「すごいよ、おちびちゃん!まりさおそらをとぶゆっくりなんてみたことがないよ!」
興奮して頬を擦りつける
「あつい、あついよおねえちゃん!」
あまりに気を入れてすーりすーりをしたものだから、頬が熱を持ったのだ
「ごめんね、おちびちゃん」
ちょっと赤くなった頬をペーろぺーろしてあげる
「ゆうううう♪~」
半ベソかいていたがすぐに機嫌を直す
ころころと笑顔を浮かべるのを見て、ぺろぺろをやめて言った
「それじゃあ、おちびちゃん、おねーちゃんかりにいってくるよ!」
そろそろ一人でいても大丈夫だろう
連れて行きたいがまだ雪解けから間もない、
「うん、ふらんおるすばんしてるよ!」
「とおくにいっちゃだめだよ!かわさんはあぶないからちかづいちゃだめだよ!」
念を押してから狩り場へと出かけて行った
しかし、駄目と言われればやりたくなるのが子供と言う物
ちょっとだけならと川へ行ってしまった
「ゆう、すごいよ!」
雪解けを集めて速し、どっかの川
一時程ではないがまだまだ流量は多い
河原へ下りて行くとじんわりと水っけがあんよへ伝わってくる
「ちゅべたいっ!」
あんよも冷たいし、おねーさんにも注意されているしもう帰ろうと思った時
ふらんの目にある物が映った
「ゆう?」
そっと摘みあげる
「ゆああ、きれいだよ!ふらんのたからものにするよ!」
狩りを終えて帰って来たまりさを何も無いかったかの様に出迎える
「おちびちゃん、とおくにいってたね!」
あんよについた泥を見咎められ、怒られた
「もう、とおくへいかないよ。ゆるじてぇ」
泣きながら謝り、その後二人でご飯を食べた
何事もない(今日はあったけど)平穏な日々、今日からまた続くと信じていた
……
…
だが、その日は唐突に訪れた
群との交流が無いまりさの巣に5体ものゆっくりが訪れたのだ
どうしても話したい事がある、だから子供を連れてついて来て欲しいと彼らは言う
善良そうな顔をしていて、手土産のご飯も沢山渡され
何より、来なければどうなるか、と声に出さずに凄んでくる
1対5では勝ち目が無い
何とか穏便に済ませようと要求をのみ、ふらんを連れ巣を出た
そして彼らは言った
「ふらんをわたせ」
何故自分のおちびちゃんを取り上げようとするのかと語尾を荒げると
「ふらんはゆっくりをたべるゆっくり、そんなあくまのようなゆっくりがちかくにいられるとこまる」
「れみりゃいじょうのかいりきをほこるばけもの、おとなになられたらてにおえない」
「ゆっくりにとってしにがみのようなものだ、あれのおやをころすにもただいなひがいがでた」
ちびちゃんのお母さんを殺したのはお前たちか!
怒りにわなわなと体が震える
「ははおやだけではない、ちちおやもだ」
一体が誇らしげに言う
ふらんに勝ったのだ、誇らしくないはずが無い
「はねなしだからなんとかてにおえた」
「はねなしのゆっくりしてないこだからみすててもしかたがない」
「はねなしでかりもできないおやだった、だからそいつはほんとうはもうしんでいたはずだ」
「そうだったはずをそうにするだけ、きにやむことはない」
親ふらんを悪しざまに侮蔑しながら説得しようとして来る
その顔にはゆっくりしてない親から生まれたゆっくりしてない子どもを何故わざわざ育てようとするのか、という拭い切れない差別意識があった
まりさには羽無しの意味は分からなかったが、兎に角ふらんのお母さんを見下しているのは分かる
不完全な物を嫌うゆっくり、生まれつき羽が無い奇形は捕食種と言えど軽侮の対象らしい
これ以上をちびちゃんに聞かせられない
そう思い、少しの間離れているように言った
だがそれだけではない
まりさの心にふらんを見捨ててゆっくりしたい
元々見ず知らずの仔だ、命をかけて守る必要はない
そんな気持ちが生まれ、そばに居られなくなったからだ
「それにしてもゆっくりをくらい、そらをかけるゆっくりがじべたをはいずり、きのこやらくさやらをすにはこんでいくのはあわれだったぜ」
茸…そうかなんでちびちゃんが茸が好きだったのか
それは親の愛情そのものの味、ゆっくりできる記憶が刺激されたんだろう
その後も散々罵り、子供を見捨てることの正当さをまくしたてたのち、最後にこう言った
「ゆ、まりさはまいごのちびちゃんをそだててあげる、とってもゆっくりしたゆっくりだよ!
だからおとなしくふらんをわたせばまりさにはなにもしないよ!」
「まりさたちはむれをだいひょーするしこゆなんだよ!つよいんだよ!おとなしくゆうこときいてね!」
こいつらは善良だ
大人しく言う事を聞き、ふらんを渡せば間違いなく自分を見逃すだろう
死ぬのは怖い
ゆっくりしたい
しかし…
不意に虚空へ今は亡き家族の顔が投影される
お父さんだ
(まりさの弱虫さんを叱っているのかな…すごく怖い顔だよ…)
お母さんだ
(まりさの卑怯を悲しんでいるのかな…すごく悲しそうだよ…)
れいむだ
いや、これは…
(まりさの顔だ、それも小さいときの…
泣いてるの?怒ってるの?どうしてそんな顔をしてるの?)
ああ、これは…またやるの?たいせつなひとをまたしなせるの?…憤っているんだ
最後に…ふらんの顔が浮かんだ
寝ている時、食べている時、一緒に遊んだ時、他愛のない顔ばかり思い出す
死神…悪魔…
れみりゃ以上の化け物…ゆっくりの天敵
(だけど、だけど、だけど!ふらんはまりさのこだよ!)
そう思い定めた直後、虚空に浮かぶ顔は無数の笑顔に変わった
それが正しいと言わんばかりに
「ふらんは…わたさないよ!まりさはふらんのおかあさんだよ、なにがあってもぜったいにまもるんだよ!
ふらんをわたせばみのがす?
ばかなの?しぬの?
じぶんのおちびちゃんをみすてていきのびるゆっくりがどこにいるの?
はじをしってよね!ゆっくりできないよ!」
言ってしまった
それを聞いたふらんの目から涙が溢れる
「ちび、にげろおおお」
ふらんの涙に違うものが混じる
この言葉は偶然だろうが親ふらんがふらんに掛けた最後の言葉と同じだったからだ
逃げるふらんを背中で見ながらゆっくりと正対する
捕食種とやらを狩るほどの手慣れだ
まず助からないだろう
しかし、後悔は微塵もない
もし生まれ変わりとやらが実在したとしてもまた同じ選択をするだろう
それほどまでにこれが正しい事だと信じた
そして…ゆっくりの信じる気持ちは力となる…!
「ゆああああああああ!!!」
多勢に無勢しかし果敢に挑んでいく
ばぐん!
「ゆっぎいいいいい、あでぃずのおべべがあああああ」
一番手近に居た「饅頭」の目を噛み千切る
力が籠り過ぎていたせいか、ありすの大きくなった眼窩には何本か砕けた歯が残る
この瞬間まりさはゆっくりではない化け物となったのだろう
「ゆがああああああああああああ!!!!」
どこん!
「ゆべえ、あぁぁ、ごほぅ、わがらないよー」
自身の体にも亀裂が走るほどの体当たりをかます
開いた傷口から餡子が流れる
だが、痛みなど最早感じない
すると
「ゆぎいいぃい?」
「ゆっくりできないばけものはさっさとしんでね!」
「おねえちゃん?」
その悲鳴を聞き思わず立ち止まるふらん
「ぐるなあああ、いげええええええ」
怒鳴り、追い返す
背中に違和感を感じる…
ああ、刺されたんだ…
これが枝さんの感触、いや、死の感触
だが
「ゆうううああああああああああ!!!」
渾身の力でそれを払う
今はまだお前はお呼びじゃない!
「へ、へいふほおふひは…」
「があああああ」
「ゆべっ…」
やたら口のでかい「饅頭」を潰し、次の敵を探す
まだだ、まだ二匹いるはず!
横合いから旋風の様にやや小ぶりな影が襲う
「よくもみんなをぉおぉ!!!」
みょんの振り下ろすけんがまりさの眼球を砕く
普通のゆっくりならこれで怯む、間違ってはいない
しかし…死を悟ったゆっくりが眼球一つで怯むわけがない
死を覚悟したゆっくりと戦った事が無い、それが致命的だった
「おああああああああ!!」
もはやゆっくり特有のゆ付きの叫びですらなくなった咆哮を上げ、怯むみょんに体当たりをかける
「ゆああああ、おびょ」
恐怖のあまり躱す事を忘れ青眼に構えたまま固まっていた
そこに体当たりを受けたのだから、そのまま咽喉の奥まで突き刺さる
無論まりさも唯では済まなかった
あごの下から突きぬけ、貫通したけんは口内で僅かに残っていた歯列を歯肉ごと吹き飛ばした
あと…あと一人…
「うぱあぁぁ」
側面から刺された
みょんの様な怯ます剣筋ではない、殺意の塊の一撃
こいつは…
「まりざああああああ」
突き破れよ、とばかりに突き刺されたけんに向け力を込めた
自棄になった訳ではない
その方角には…
「ゆべ!?」
地肌がむき出しな崖があった
崖に叩き付けられ、さしものまりさも口からけんを離す
しかし今の自分の力ではもう潰せない
でも
あとちょっと
あとちょっと力が加われば!
「ゆぐ、へへそんなたいあたりきかないのぜ?」
余裕を取り戻したまりさが挑発する
「ゆぐ、ぐふぁ…ならまりさがてほんをみせてみるといい「のぜ」?」
オウム返しというのは案外効くものだ、特に餡子脳なゆっくりならば
自分の語尾をからかわれていきり立ったまりさは襤褸雑巾になったまりさに体当たりする
それが罠とも気が付かずに
「ゆべええええ」
攻撃が当たるなり、大量の餡子を噴き出す
口からだけでなく、全身の傷から流れる
「それだけあんこさんはけばもうおしまいなのぜ。もうあきらめるのぜ、まりさはよくたたかったのぜ…」
ニヤ
親まりさが正にゆっくりらしいニヤけ面を浮かべる
「そうそう、あきらめどきがかんじんなのz」
「ぐおおああああああああああ!!」
勝利を確信した憎たらしい面に齧り付く
「むだなのz…ゆ?なんのおと?」
ずずずと何かが滑る音が聞こえる
まりさ!上から来るぞ!
「うえ?」
上をみると大きな岩(人間目線では石)が滑り落ちてくる
「はなぜええええええ」
渾身の力を込めて親まりさを引き離そうとする
「やだよ!そんなたのみは…きけないよ!」
「ゆがああああああああああはなぜえええええええええ」
執念勝ちかまりさが親まりさを剥がすのに成功した
だが時すでに遅し
「やっt」
ずん!
まりさの体に深々と石が突き刺さり、そして裂ける
勝った…
しかしもう動けそうにない
ちびちゃんは逃げ延びただろうか…
追手がこれだけならいいんだけど
そしてゆっくりと視界が狭まり、全てが暗黒へ包まれようとした時
機能を停止しようとしていたまりさの目に小さな影が飛び込んできた
「ふ、らん…きちゃだめって…にげてっていったでしょ…」
「でも、でもおねえちゃんがしんぱいだったの」
「しかたないこだね…ほら…なかないで…ゆっくりできないこたちは…もういないよ…」
「おねえじゃん…」
ああ、泣かないで…
でももうすーりすーりもペーろぺーろもできない…
できないよ…
どうしたら…
…
そうだ…
「ふらん…」
「にゃ…に゛?」
「まえ…ほしが…てた…まりさ…のいちば…んだいじ…なおぼうしさ…んあげる…よ…だから…なきやんでね…」
「おねええじゃんん」
これを受け取ってしまったら、すぐにまりさがゆっくりしてしまうのではないかと思えて受取れなかった
「ふら…おぼ…し…まりさ…おも…て…ゆ…くりして…ね…」
「やじゃ、やじゃよ、おねえじゃんとずっといっしょにいるううう
おねえじゃんしんじゃやだあああああ」
「も…とゆっ…りさせたか…た…ごめんね…」
ゆっくりしたかったではない、ゆっくりさせたかった
そう最後に残し、静かに痙攣して、やがて止まった
まりさの命は燃え尽き、体はゆっくりと唯の餡子へと還って往く
徐々に失われていくゆっくりとしての存在を感じ、ふらんの体が弛緩する
するとふらんのお帽子が脱げてしまい、転がる
ゆっくりにとって命と同程度の価値を持つお飾り、しかし今はそれに気をかけることすらなかった
そしてその中から或る物が顔を覗かせる…
「あ、あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
それは…水晶
一緒に永遠にゆっくりしようと「えんげーじりんぐ」としてまりさに渡そうとしていたもの…
もう渡せない
もう一緒にゆっくりできない
もう…まりさは居ない
もう、もう、もう、もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう!!!!!!
幼い子供が親に向ける無垢な愛情
そう言うには彼女のそれは深すぎた…
可愛い時計、またまた泣いてる
優しい発条、ただただ見てる
時計と発条、離れ離れ
可愛い時計、もう動かない
作者です
最後までお読みいただき、ありがとうございます
何か前篇後篇と言いながら、明らかに分量が変ですね
一つに纏めるか、前中後に別けるべきでした
前作コメントより
>愛ででもいける
ありがとうございます
実はこの話、元々の題は「ふらまり」で
ただまったりとした愛で話のつもりでネタづくりしていました
しかし、ちょっと魔が差しちゃいましてこんな話になりました
どうしてこうなった…
ではまた二部でお会いしましょう
追記
あと、この連話を書き終えたら名前を持とうかと思ってます
現在は一作目の名から観察あきとなっています
それがいい、もしくはこっちの名の方がいい!
というご意見ありましたらよろしくお願いします
ふたば系ゆっくりいじめ 468 ありす観察日誌
ふたば系ゆっくりいじめ 556 ゆっくりこしていってね!
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