ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1980 過ぎ去りし日々
最終更新:
ankoss
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D.O一周年記念
『過ぎ去りし日々』
D.O
夏の日は長い。
私は今日も、薄暗くなり始めた町中を、とぼとぼと歩き続ける。
「はぁ・・・厳しい世間様に比べれば楽なお仕事だけど、やっぱり去年よりはきつくなったなぁ。」
私の仕事は、男性を喜ばせる・・・というようなものではもちろんなく、
しいて言えば研究所関連の主任程度と言ったところだ。
自分の時間が多く取れるのは良いが、給料はちょっと安い。
「潤いもないし・・・このまま歳ばっかりとっちゃうのかなぁ。」
若い頃は(と言ってもまだ20代だが)それなりに遊んでいたものだが、
いい歳して合コンなんぞに参加するのもアレだし、胸も小さい(無い)オタク趣味の女じゃ、
そうそう若い子は引っ掛けられないだろうなーとは自覚している。
そんな私にも、以前はささやかな趣味があった。
あまり大声では言えない、自慢できない趣味が・・・・・・
---------------------------------------------
『ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってよー! 』
『ゆっくちしちぇっちぇにぇ!』
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていた時、広い歩道の脇の自販機の前で、
懐かしい姿に出会った。
それは、ゆっくりれいむの親子だった。
『ゆぅ・・・ゆっくりしていってよぉ。』
『ゆぁーん、みゃみゃー。ゆっくちしちぇー。』
バレーボール大の母れいむと、テニスボール大の子れいむ。
親子は通行人に声をかけ、ゆっくりしていって欲しい、と呼びかけ続けている。
かつての都会の町では、さほど珍しい光景ではなかったのだが・・・。
数年前、人間社会に突然現れた不思議な生物、『ゆっくり』。
その姿は巨大な饅頭、あるいは人間の頭部にそっくりで、しかも人間の言葉を操った。
体は饅頭にそっくりで中身は餡子そのもの、どうやって生きているのかはわからなかったが、
確かに呼吸し、食事し、排泄し、生殖し、生物として活動していた。
いつ生まれたのかも、どこからやってきたのかもわからなかった。
ただ、いつの間にか人間の近くに住み着くようになっていたのだった。
まるで古い隣人のように。
人間達は、最初は驚いた。
そして危険が無いとわかると、興味を持った。
町はゆっくりを飼う人間で溢れ、公園や神社の境内などにもゆっくりが溢れた。
ゆっくりは人語を話し、人間の良きパートナーになれそうに見えたのだ。
・・・しかし、いつからだろう。
人間が、ゆっくりへの興味を、急速に失っていったのは。
ゆっくりを取り巻く環境は、いつの間にか、
というほどに、気づかない間に変化していった。
まるで、服の流行り廃りのように、いつの間にか・・・
『ゆっくりしていってね!ゆっくり!』
「あ?ゆっくりかよ。懐かしー。じゃあなー。」
『ゆっくりしていってよー。・・・ゆぅぅ。』
声をかけられても、誰も大して気にも留めない。
昔は、餌をやるか、蹴り飛ばすか、とまではいかないまでも、
「おおぅ。ゆっくりしてけー。」くらいは返事してあげていたものだったのに。
では、流行りが去ったペット達の様に、町中に捨てゆっくりが溢れたか、
というと、そんな事も全く起きなかったのだ。
どこから来たのかもわからなかったゆっくり達は、
人間の関心が薄れるにしたがい、徐々にどこかへと消えていった。
飼いゆっくり達は飼い主達の元で天寿を全うし、その飼い主達は、
なぜか再びゆっくりを飼おうとはしなかった。
町のゆっくり達は、いつの間にか公園からも広場からも、神社の境内からも姿を消した。
公園でゆっくり達に餌を与えていた老人は、今では鳩に餌を与えて苦情を受けている。
姿も、痕跡も、もちろん大量の死体も残さず、
ゆっくり達は、現れた時同様、どこか人間の知らない遠くへと消えていったのだった。
あのれいむ親子は、仲間たちに取り残されたのだろうか?
それとも、他の仲間が消えていった後も、あえてこの世界に留まったのだろうか。
私は、泣きそうになりながら通行人達に声をかける、
そのれいむ親子に近づいた。
『ゆぅ、おねーさん、ゆっくりしていってね!』
『ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!』
「・・・ええ、れいむ達も、ゆっくりしていってね。」
私の返事を聞いたれいむ親子は、その瞬間ぱぁっと表情を明るくして、
さらに私に挨拶してきた。
『ゆわぁーい!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!』
『ゆっくち!ゆっくち!』
「うん。ゆっくりしていってね。」
『『ゆっくりー!!』』
れいむ親子は、とても満足げに私の顔を見上げてくる。
その体は、町中を跳ね回っているにしてはチリ一つついておらず、
その瞳も、髪の毛も、活き活きと輝いていた。
「ねぇ、れいむ。」
私は、そんなれいむ親子に出会えたことが嬉しくて、
「れいむ、私のおうちに来ない?」
この、れいむ親子を私の家に招待することにした。
---------------------------------------------
「ただいまー。」
「「ゆっくりしていってね!!」」
誰も返事を返す者はいないが、これも習慣だからしょうがない。
でも今日は、胸に抱えて連れてきたれいむ親子が、
ちゃんと返事を返してくれたから、少しだけ幸せな気分になれた。
私は一人暮らしには少々広すぎる、真っ暗な我が家に入り、
電気をつけると、胸に抱えていたれいむ親子をリビングの床におろしてあげた。
「れいむ、何か食べる?あまあまもあるよ。」
『ゆぅん?・・・いらないよ。』
『ゆっくちしたから、ぽんぽんいっぱいにゃんだよ!ゆっくち!』
れいむ親子は・・・ゆっくりできたから、お腹はいっぱいだと言う。
「ふぅん。もう、だいぶ生き物っぽくなくなっちゃったのねぇ。」
『ゆっくり』とは、そういう存在らしい。
だから、人間の関心が薄れるとともに、姿を消していったのだろうか。
『ゆ?どうしたの?おねーさん。ゆっくりしてね?』
『ゆぁーん。ゆっくちしちぇー。』
「ええ、大丈夫。ちょっと、昔の事を思い出してたのよ。」
そう言うと私は、昔使っていた古いハードディスクを押入れから取り出し、
パソコンにつないで、もう長い間開いていなかったフォルダを開いた。
「あのね、れいむ。」
『ゆ?』
「私ね。昔、まあ、それほど昔でもないんだけど、人に言えない趣味があったの。」
『『ゆぅ?』』
私はそう言うと、フォルダ内に保存されたテキストファイルの一つを開き、
れいむ親子に優しく囁くように、ゆっくりとその文章を読んであげた。
****************************************
「ゆぴぃぃいいいい!!いぢゃぁぁああい!!みゃみゃぁぁぁあああ!!!」
話にならないので、
私はとりあえず、子れいむの頭頂部にマチ針を一本刺した。
ちくっ、ちくっ、ちくっ。
「ゆっくちさせちぇぇぇぇ!ちくちくしにゃいでぇぇぇええ!!おうぢがえりゅぅぅううう!!!」
****************************************
****************************************
私は、赤れいむを新聞紙で包んで踏み潰し、ゴミ箱に捨てた。
このまま追い出したら、よその家に迷惑をかけるかも知れなかったので。
我ながらいいことをしたと思う。
****************************************
・・・・・・。
『ゆぁーん、ゆっくちできにゃいよー!』
『おねーさん、ゆっくりしてね!ゆっくりだよ!』
とても驚いたような表情をする2匹に、私は優しく教えてあげた。
「お姉さんはね。ゆっくりがゆっくりできなくなるお話を考えるのが、とっても好きだったんだよ。」
私には、以前はささやかな趣味があった。
あまり大声では言えない、自慢できない趣味・・・
『ゆっくり虐待』をテーマにした、SSを書くという趣味が。
ここまで話して、私は、ちょっとだけ嫌な気持ちになった。
れいむ親子に、もう嫌われてしまった、と思ったから。
でも、昔取ったなんとやら、というやつか、私を信頼しきっているれいむ親子の表情が曇る姿を、
私の本当の姿を知った後の表情を、どうしても見てみたかったのだ・・・。
我ながら、どうしようも無いと思う。
だが、そんな私に、母れいむは予想外の言葉をかけてきた。
『おねーさん・・・』
「ん?なぁに?」
『おねーさん、そのおはなしをかいて、ゆっくりできたの?』
私は、少しだけ考えて、正直に答えてあげた。
「・・・うん。れいむ達の泣き顔とか、叫び声とかを考えてたら、とってもゆっくりできたよ。」
・・・・・・。
『ゆっくりできたの!?ゆわーい!!ゆっくりしていってね!』
『ゆぁーい!!ゆっくちー!!』
予想外の反応が返ってきた。
「う~ん。・・・いや、あなた達酷い目にあってるのよ。」
『ゆっくりできたなら、どうでもいいよ!ゆっくりしてね!ゆっくり!』
---------------------------------------------
れいむ親子は、それからしばらく私とお話して、
今は満足したように、親子仲良く座布団の上でゆっくり眠っている。
「・・・昔は、あんなに一緒に遊んでたのにね。どうしてみんな、忘れちゃったんだろ。」
私は、幸せそうに頬を寄せ合って眠るれいむ親子を見ながら、
ゆっくりSSを書きまくって、毎週のように投稿していた頃のことを思い出していた。
その頃私は、ゆっくりと関わるのが楽しくてしょうがなかった。
夏には、焼けるように熱くなったマンホールの蓋に、赤ゆっくりをのせてあげた。
あの叫び声は、とても心地よく耳を楽しませてくれた。
秋には、柿の木の枝に子ゆっくり達を放置して、下ろしてほしいと泣く姿を眺めては、
枝を揺らしてさらに怯えさせてあげた。
冬には、越冬中のゆっくりのおうちに温風を送って春と勘違いさせ、
おうちから飛び出した後の愕然とした表情をみて、ゾクゾクとくる快感を味わっていた。
だが、私も他の多くの人たち同様、いつの間にかゆっくりへの関心を失い、
SSを書く頻度は減っていった。
結局、シリーズものとして書き続けていた作品も、未だに完結していない。
「・・・久しぶりに、スレを見てみようかな。」
恐らくもう、ゆっくりスレを立てる者は居なくなっているだろう、
そんなことを思いながらも、私はかつて24時間『ゆっくりスレ』が立ち続けていた、
ネット掲示板を見に行くことにした。
「野菜フ××クスレ・・・ハ○ター×2完結記念スレ・・・政治家美少女化スレ・・・あ、ゆっくりスレ。」
そこには、かつて一晩で200000レスを越えていたとは思えないほど慎ましい、
しかし、懐かしいスレが、確かにあった。
「ああ、懐かしいなぁ。・・・あ、ばっぢょさん、まだ現役だったんだぁ。
・・・履かないさん、YUNさん・・・あ、嘆木さん、みんな裸の女の子ばっかり描いて・・・ふふっ。」
昔から知っている作家さんも、ちらほら見える。
でもそれ以上に、私の知らない作家さんもたくさんいて、
普段あれほどゆっくりに無関心な世間からすれば、意外なくらい多くの新作が掲載されていた。
「みんな・・・ゆっくりの事、今でも大好きなんだね。」
『『ゆぅ・・・ゆわぁ・・・』』
私の後ろでは、いつのまにかれいむ親子も目を覚ましていた。
ゆっくり虐待漫画の貼られたスレを見ながら、
自分の居場所を見つけたような、とても嬉しそうな表情をしている。
『おねーさん。』
「ん?なぁに?」
『おねーさんも、おはなししないの?』
「ん?ああ、あなた、これがどういうものか、わかってるの?」
『はじめてみたよ・・・でも、なんだか、とってもなつかしいよ。』
「ふぅん。・・・そういうものなんだ。」
私は、キーボードの上に指を置き、数行の文を書き込むと、
『返信する』と書かれたボタンをクリックしたのだった。
---------------------------------------------
****************************************
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:29:10 No.814157549 del
お久しぶりでーす
シリーズ放置してごめんなさい・・・
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:29:18 No.814157557 del
おま・・・本物!?
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:35:22 No.814157611 del
ホンモノですよー
しばらく離れてたんですけど・・・
今日町で、ゆっくりに出会っちゃって、懐かしくてついー
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:35:25 No.814157618 del
はよ続き書け!!
残念 Name まだお 19/07/15(豚)16:35:52 No.814157637 del
ていうか脱げ
どすおっぱい!おっぱ・・・おや、誰か来たようだ
残念 Name のり中尉 19/07/15(豚)16:36:20 No.814157727 del
>どすおっぱい!おっぱ・・・おや、誰か来たようだ
D.Oのサイズは計測不能~AAの間らしいぞ
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:38:00 No.814157991 del
いなくなってる間に、イロイロあったんだよー
おねにぃちゃんが、リアル下半身露出写真投下して、しょっぴかれたよー
N1がメ○ストアでデビューしたよー
余百はおんにゃのこ絵が上手くなったよー
>No.814157521
を参照だねー
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:40:00 No.814158004 del
>余百
え!?これ絵本さんの絵じゃないの!?
****************************************
相変わらず、ゆっくり関係の話題にはならなかったけど・・・でも、みんな忘れちゃったわけじゃない。
お互いの顔も、名前も知らないけれど、でも、みんなゆっくりのことが大好きなんだ。
そう気づいた時、私の胸の奥から、
初めてゆっくりを見たときの、
初めてゆっくりSSを読んだときの、
あの、後ろめたいような、それでいてゾワゾワくる気持ちが、再び鼓動を始めたのがわかった。
****************************************
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:47:00 No.814158115 del
目標!!
シリーズ完結!
お題消化!(ゆっくりゴミ処理場・ゆうかりん牧場)
じょりさんが連載を終えるまでに必ず書くよ!!
残念 Name 無双のり 19/07/15(豚)16:48:00 No.814158140 del
>じょりさんが連載を終えるまでに必ず書くよ!!
ちょっと前に無事完結しましたよ(笑)
じょりさん、あのハイクオリティな絵で毎日2~3ページ投下し始めちゃって
今頃燃え尽きてるかも・・・
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:49:31 No.814158184 del
うそぉ!?
****************************************
まあ、ともかく、私は私で残していた宿題を、今度こそ片付けないとね。
---------------------------------------------
久しぶりのゆっくりトークにすっかり没頭していると、
背後から母れいむの、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『おねーさん。』
「ん?」
『おねーさん・・・れいむ、ここにずっといていい?』
・・・・・・。へ?
「いいっていうかー。えーと、どうして?」
『なんとなく、ここが、れいむのいばしょなきがするんだよ・・・。』
「んー。ゆっくりプレイスってこと?」
だが、母れいむは顔を横に振った。
『ゆ、お、おねーさんのおうちはゆっくりできるよ!でも、そうじゃなくて・・・』
私は、れいむ親子の表情に、何か思い出すものがあった。
・・・・・・。
そうだ。
これは、ずっと昔に私と妹がそろってデパートで迷子になった時、迷子コーナーで母を待っていた、
あの、居場所を失ったかのように不安に包まれた、妹の表情だった。
「うん。いいよ。」
『『ゆゆっ!?』』
「そうね。あなたがヨボヨボになって、永遠にゆっくりしちゃうまでは、
私もがんばっちゃおうかな。」
しょうがないか。
あんな表情を見せられて、追い出すことなんてできない。
まあ、わざわざれいむ親子を家に招きいれた時点で、この結果は決まっていたんだろう。
『ゆっくりー!!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!ゆわーい!!』
『ゆぁーい!おにぇーしゃん!しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!!』
「うん、ゆっくりしていってね。よろしく、れいむ。」
遠くないいつか、このれいむ親子も天寿を全うするだろう。
そして、私もゆっくりSSから完全に引退する日は来るだろう。
それは、そんなに遠くない、しかもほぼ確実な未来だ。
でも、今度こそ、私は忘れない。
私がゆっくりに与えられたもの。
ゆっくりを通じて得た仲間たち。
多くの、多くのかけがえの無いものを。
そして、ゆっくりSSを書いているうちに失った、膨大な時間のことを・・・
別に後悔してませんよ(笑)
『過ぎ去りし日々』
D.O
夏の日は長い。
私は今日も、薄暗くなり始めた町中を、とぼとぼと歩き続ける。
「はぁ・・・厳しい世間様に比べれば楽なお仕事だけど、やっぱり去年よりはきつくなったなぁ。」
私の仕事は、男性を喜ばせる・・・というようなものではもちろんなく、
しいて言えば研究所関連の主任程度と言ったところだ。
自分の時間が多く取れるのは良いが、給料はちょっと安い。
「潤いもないし・・・このまま歳ばっかりとっちゃうのかなぁ。」
若い頃は(と言ってもまだ20代だが)それなりに遊んでいたものだが、
いい歳して合コンなんぞに参加するのもアレだし、胸も小さい(無い)オタク趣味の女じゃ、
そうそう若い子は引っ掛けられないだろうなーとは自覚している。
そんな私にも、以前はささやかな趣味があった。
あまり大声では言えない、自慢できない趣味が・・・・・・
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『ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってよー! 』
『ゆっくちしちぇっちぇにぇ!』
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていた時、広い歩道の脇の自販機の前で、
懐かしい姿に出会った。
それは、ゆっくりれいむの親子だった。
『ゆぅ・・・ゆっくりしていってよぉ。』
『ゆぁーん、みゃみゃー。ゆっくちしちぇー。』
バレーボール大の母れいむと、テニスボール大の子れいむ。
親子は通行人に声をかけ、ゆっくりしていって欲しい、と呼びかけ続けている。
かつての都会の町では、さほど珍しい光景ではなかったのだが・・・。
数年前、人間社会に突然現れた不思議な生物、『ゆっくり』。
その姿は巨大な饅頭、あるいは人間の頭部にそっくりで、しかも人間の言葉を操った。
体は饅頭にそっくりで中身は餡子そのもの、どうやって生きているのかはわからなかったが、
確かに呼吸し、食事し、排泄し、生殖し、生物として活動していた。
いつ生まれたのかも、どこからやってきたのかもわからなかった。
ただ、いつの間にか人間の近くに住み着くようになっていたのだった。
まるで古い隣人のように。
人間達は、最初は驚いた。
そして危険が無いとわかると、興味を持った。
町はゆっくりを飼う人間で溢れ、公園や神社の境内などにもゆっくりが溢れた。
ゆっくりは人語を話し、人間の良きパートナーになれそうに見えたのだ。
・・・しかし、いつからだろう。
人間が、ゆっくりへの興味を、急速に失っていったのは。
ゆっくりを取り巻く環境は、いつの間にか、
というほどに、気づかない間に変化していった。
まるで、服の流行り廃りのように、いつの間にか・・・
『ゆっくりしていってね!ゆっくり!』
「あ?ゆっくりかよ。懐かしー。じゃあなー。」
『ゆっくりしていってよー。・・・ゆぅぅ。』
声をかけられても、誰も大して気にも留めない。
昔は、餌をやるか、蹴り飛ばすか、とまではいかないまでも、
「おおぅ。ゆっくりしてけー。」くらいは返事してあげていたものだったのに。
では、流行りが去ったペット達の様に、町中に捨てゆっくりが溢れたか、
というと、そんな事も全く起きなかったのだ。
どこから来たのかもわからなかったゆっくり達は、
人間の関心が薄れるにしたがい、徐々にどこかへと消えていった。
飼いゆっくり達は飼い主達の元で天寿を全うし、その飼い主達は、
なぜか再びゆっくりを飼おうとはしなかった。
町のゆっくり達は、いつの間にか公園からも広場からも、神社の境内からも姿を消した。
公園でゆっくり達に餌を与えていた老人は、今では鳩に餌を与えて苦情を受けている。
姿も、痕跡も、もちろん大量の死体も残さず、
ゆっくり達は、現れた時同様、どこか人間の知らない遠くへと消えていったのだった。
あのれいむ親子は、仲間たちに取り残されたのだろうか?
それとも、他の仲間が消えていった後も、あえてこの世界に留まったのだろうか。
私は、泣きそうになりながら通行人達に声をかける、
そのれいむ親子に近づいた。
『ゆぅ、おねーさん、ゆっくりしていってね!』
『ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!』
「・・・ええ、れいむ達も、ゆっくりしていってね。」
私の返事を聞いたれいむ親子は、その瞬間ぱぁっと表情を明るくして、
さらに私に挨拶してきた。
『ゆわぁーい!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!』
『ゆっくち!ゆっくち!』
「うん。ゆっくりしていってね。」
『『ゆっくりー!!』』
れいむ親子は、とても満足げに私の顔を見上げてくる。
その体は、町中を跳ね回っているにしてはチリ一つついておらず、
その瞳も、髪の毛も、活き活きと輝いていた。
「ねぇ、れいむ。」
私は、そんなれいむ親子に出会えたことが嬉しくて、
「れいむ、私のおうちに来ない?」
この、れいむ親子を私の家に招待することにした。
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「ただいまー。」
「「ゆっくりしていってね!!」」
誰も返事を返す者はいないが、これも習慣だからしょうがない。
でも今日は、胸に抱えて連れてきたれいむ親子が、
ちゃんと返事を返してくれたから、少しだけ幸せな気分になれた。
私は一人暮らしには少々広すぎる、真っ暗な我が家に入り、
電気をつけると、胸に抱えていたれいむ親子をリビングの床におろしてあげた。
「れいむ、何か食べる?あまあまもあるよ。」
『ゆぅん?・・・いらないよ。』
『ゆっくちしたから、ぽんぽんいっぱいにゃんだよ!ゆっくち!』
れいむ親子は・・・ゆっくりできたから、お腹はいっぱいだと言う。
「ふぅん。もう、だいぶ生き物っぽくなくなっちゃったのねぇ。」
『ゆっくり』とは、そういう存在らしい。
だから、人間の関心が薄れるとともに、姿を消していったのだろうか。
『ゆ?どうしたの?おねーさん。ゆっくりしてね?』
『ゆぁーん。ゆっくちしちぇー。』
「ええ、大丈夫。ちょっと、昔の事を思い出してたのよ。」
そう言うと私は、昔使っていた古いハードディスクを押入れから取り出し、
パソコンにつないで、もう長い間開いていなかったフォルダを開いた。
「あのね、れいむ。」
『ゆ?』
「私ね。昔、まあ、それほど昔でもないんだけど、人に言えない趣味があったの。」
『『ゆぅ?』』
私はそう言うと、フォルダ内に保存されたテキストファイルの一つを開き、
れいむ親子に優しく囁くように、ゆっくりとその文章を読んであげた。
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「ゆぴぃぃいいいい!!いぢゃぁぁああい!!みゃみゃぁぁぁあああ!!!」
話にならないので、
私はとりあえず、子れいむの頭頂部にマチ針を一本刺した。
ちくっ、ちくっ、ちくっ。
「ゆっくちさせちぇぇぇぇ!ちくちくしにゃいでぇぇぇええ!!おうぢがえりゅぅぅううう!!!」
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私は、赤れいむを新聞紙で包んで踏み潰し、ゴミ箱に捨てた。
このまま追い出したら、よその家に迷惑をかけるかも知れなかったので。
我ながらいいことをしたと思う。
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・・・・・・。
『ゆぁーん、ゆっくちできにゃいよー!』
『おねーさん、ゆっくりしてね!ゆっくりだよ!』
とても驚いたような表情をする2匹に、私は優しく教えてあげた。
「お姉さんはね。ゆっくりがゆっくりできなくなるお話を考えるのが、とっても好きだったんだよ。」
私には、以前はささやかな趣味があった。
あまり大声では言えない、自慢できない趣味・・・
『ゆっくり虐待』をテーマにした、SSを書くという趣味が。
ここまで話して、私は、ちょっとだけ嫌な気持ちになった。
れいむ親子に、もう嫌われてしまった、と思ったから。
でも、昔取ったなんとやら、というやつか、私を信頼しきっているれいむ親子の表情が曇る姿を、
私の本当の姿を知った後の表情を、どうしても見てみたかったのだ・・・。
我ながら、どうしようも無いと思う。
だが、そんな私に、母れいむは予想外の言葉をかけてきた。
『おねーさん・・・』
「ん?なぁに?」
『おねーさん、そのおはなしをかいて、ゆっくりできたの?』
私は、少しだけ考えて、正直に答えてあげた。
「・・・うん。れいむ達の泣き顔とか、叫び声とかを考えてたら、とってもゆっくりできたよ。」
・・・・・・。
『ゆっくりできたの!?ゆわーい!!ゆっくりしていってね!』
『ゆぁーい!!ゆっくちー!!』
予想外の反応が返ってきた。
「う~ん。・・・いや、あなた達酷い目にあってるのよ。」
『ゆっくりできたなら、どうでもいいよ!ゆっくりしてね!ゆっくり!』
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れいむ親子は、それからしばらく私とお話して、
今は満足したように、親子仲良く座布団の上でゆっくり眠っている。
「・・・昔は、あんなに一緒に遊んでたのにね。どうしてみんな、忘れちゃったんだろ。」
私は、幸せそうに頬を寄せ合って眠るれいむ親子を見ながら、
ゆっくりSSを書きまくって、毎週のように投稿していた頃のことを思い出していた。
その頃私は、ゆっくりと関わるのが楽しくてしょうがなかった。
夏には、焼けるように熱くなったマンホールの蓋に、赤ゆっくりをのせてあげた。
あの叫び声は、とても心地よく耳を楽しませてくれた。
秋には、柿の木の枝に子ゆっくり達を放置して、下ろしてほしいと泣く姿を眺めては、
枝を揺らしてさらに怯えさせてあげた。
冬には、越冬中のゆっくりのおうちに温風を送って春と勘違いさせ、
おうちから飛び出した後の愕然とした表情をみて、ゾクゾクとくる快感を味わっていた。
だが、私も他の多くの人たち同様、いつの間にかゆっくりへの関心を失い、
SSを書く頻度は減っていった。
結局、シリーズものとして書き続けていた作品も、未だに完結していない。
「・・・久しぶりに、スレを見てみようかな。」
恐らくもう、ゆっくりスレを立てる者は居なくなっているだろう、
そんなことを思いながらも、私はかつて24時間『ゆっくりスレ』が立ち続けていた、
ネット掲示板を見に行くことにした。
「野菜フ××クスレ・・・ハ○ター×2完結記念スレ・・・政治家美少女化スレ・・・あ、ゆっくりスレ。」
そこには、かつて一晩で200000レスを越えていたとは思えないほど慎ましい、
しかし、懐かしいスレが、確かにあった。
「ああ、懐かしいなぁ。・・・あ、ばっぢょさん、まだ現役だったんだぁ。
・・・履かないさん、YUNさん・・・あ、嘆木さん、みんな裸の女の子ばっかり描いて・・・ふふっ。」
昔から知っている作家さんも、ちらほら見える。
でもそれ以上に、私の知らない作家さんもたくさんいて、
普段あれほどゆっくりに無関心な世間からすれば、意外なくらい多くの新作が掲載されていた。
「みんな・・・ゆっくりの事、今でも大好きなんだね。」
『『ゆぅ・・・ゆわぁ・・・』』
私の後ろでは、いつのまにかれいむ親子も目を覚ましていた。
ゆっくり虐待漫画の貼られたスレを見ながら、
自分の居場所を見つけたような、とても嬉しそうな表情をしている。
『おねーさん。』
「ん?なぁに?」
『おねーさんも、おはなししないの?』
「ん?ああ、あなた、これがどういうものか、わかってるの?」
『はじめてみたよ・・・でも、なんだか、とってもなつかしいよ。』
「ふぅん。・・・そういうものなんだ。」
私は、キーボードの上に指を置き、数行の文を書き込むと、
『返信する』と書かれたボタンをクリックしたのだった。
---------------------------------------------
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残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:29:10 No.814157549 del
お久しぶりでーす
シリーズ放置してごめんなさい・・・
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:29:18 No.814157557 del
おま・・・本物!?
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:35:22 No.814157611 del
ホンモノですよー
しばらく離れてたんですけど・・・
今日町で、ゆっくりに出会っちゃって、懐かしくてついー
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:35:25 No.814157618 del
はよ続き書け!!
残念 Name まだお 19/07/15(豚)16:35:52 No.814157637 del
ていうか脱げ
どすおっぱい!おっぱ・・・おや、誰か来たようだ
残念 Name のり中尉 19/07/15(豚)16:36:20 No.814157727 del
>どすおっぱい!おっぱ・・・おや、誰か来たようだ
D.Oのサイズは計測不能~AAの間らしいぞ
残念 Name たけのり 19/07/15(豚)16:38:00 No.814157991 del
いなくなってる間に、イロイロあったんだよー
おねにぃちゃんが、リアル下半身露出写真投下して、しょっぴかれたよー
N1がメ○ストアでデビューしたよー
余百はおんにゃのこ絵が上手くなったよー
>No.814157521
を参照だねー
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:40:00 No.814158004 del
>余百
え!?これ絵本さんの絵じゃないの!?
****************************************
相変わらず、ゆっくり関係の話題にはならなかったけど・・・でも、みんな忘れちゃったわけじゃない。
お互いの顔も、名前も知らないけれど、でも、みんなゆっくりのことが大好きなんだ。
そう気づいた時、私の胸の奥から、
初めてゆっくりを見たときの、
初めてゆっくりSSを読んだときの、
あの、後ろめたいような、それでいてゾワゾワくる気持ちが、再び鼓動を始めたのがわかった。
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残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:47:00 No.814158115 del
目標!!
シリーズ完結!
お題消化!(ゆっくりゴミ処理場・ゆうかりん牧場)
じょりさんが連載を終えるまでに必ず書くよ!!
残念 Name 無双のり 19/07/15(豚)16:48:00 No.814158140 del
>じょりさんが連載を終えるまでに必ず書くよ!!
ちょっと前に無事完結しましたよ(笑)
じょりさん、あのハイクオリティな絵で毎日2~3ページ投下し始めちゃって
今頃燃え尽きてるかも・・・
残念 Name D.O 19/07/15(豚)16:49:31 No.814158184 del
うそぉ!?
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まあ、ともかく、私は私で残していた宿題を、今度こそ片付けないとね。
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久しぶりのゆっくりトークにすっかり没頭していると、
背後から母れいむの、私を呼ぶ声が聞こえてきた。
『おねーさん。』
「ん?」
『おねーさん・・・れいむ、ここにずっといていい?』
・・・・・・。へ?
「いいっていうかー。えーと、どうして?」
『なんとなく、ここが、れいむのいばしょなきがするんだよ・・・。』
「んー。ゆっくりプレイスってこと?」
だが、母れいむは顔を横に振った。
『ゆ、お、おねーさんのおうちはゆっくりできるよ!でも、そうじゃなくて・・・』
私は、れいむ親子の表情に、何か思い出すものがあった。
・・・・・・。
そうだ。
これは、ずっと昔に私と妹がそろってデパートで迷子になった時、迷子コーナーで母を待っていた、
あの、居場所を失ったかのように不安に包まれた、妹の表情だった。
「うん。いいよ。」
『『ゆゆっ!?』』
「そうね。あなたがヨボヨボになって、永遠にゆっくりしちゃうまでは、
私もがんばっちゃおうかな。」
しょうがないか。
あんな表情を見せられて、追い出すことなんてできない。
まあ、わざわざれいむ親子を家に招きいれた時点で、この結果は決まっていたんだろう。
『ゆっくりー!!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!ゆわーい!!』
『ゆぁーい!おにぇーしゃん!しゅーりしゅーり、ちあわちぇー!!』
「うん、ゆっくりしていってね。よろしく、れいむ。」
遠くないいつか、このれいむ親子も天寿を全うするだろう。
そして、私もゆっくりSSから完全に引退する日は来るだろう。
それは、そんなに遠くない、しかもほぼ確実な未来だ。
でも、今度こそ、私は忘れない。
私がゆっくりに与えられたもの。
ゆっくりを通じて得た仲間たち。
多くの、多くのかけがえの無いものを。
そして、ゆっくりSSを書いているうちに失った、膨大な時間のことを・・・
別に後悔してませんよ(笑)