ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2080 ゆっくりフライヤーズ「山岳を渡る熱波」
最終更新:
ankoss
-
view
ゆっくりフライヤーズ「山岳を渡る熱波」
羽付きあき
・独自設定ゆっくりと、いくつかの独自設定を入れています
・善良なゆっくりがひどい目に会いますご注意を
・ミリタリー物
加工所職員達がハンガーの中で机を並べていた。
そこに群がる胴付きゆっくり達
お目当ては「嗜好品」「日常生活品」である。
週に一回買い出しが行われ、販売されるのである。
胴付きゆっくり達は一応プラチナバッジ扱いを受けており、申請すれば外出許可も下りるのだが、好んで申請するものは少ない。
なぜなら、強制出撃の際に出遅れてしまうからだ。
加工所による指令の出撃は、大半が「共同報酬」の形を取る。
つまり戦果に如何に左右されずに安定した報酬がもらえるのだ。
出撃頻度が多いとはいえ、完全歩合制に近いゆっくり飛行隊にとってこの共同報酬は重要な収入源である。
「ラムネだ!ラムネを20本くれ!」
「"胴付きゆっくりグラビア"の最新号はあるか!?」
「注文していた"月刊ゆうかにゃん"を受理を申請する!早急に準備されたし!」
「ゆっくり用サングラスを15個!UVカット用の奴だ!」
「こらっ!押すんじゃねぇ!」
「てめぇこそ割り込むな!後で背中に気をつけろよ!」
「むぎゅううう!押さないでええええ!」
一斉に群がる胴付きゆっくり達、後方では殴り合いのケンカにまで発展していた。
加工所職員達が宥めるが一向に言う事を聞かない。
「落ち着いて!まだまだ在庫はあります!ありますから!」
「ラムネは在庫切れだ!注文は受け付けるから!早く後ろに譲れ!」
「あーこら!勝手に取るな!それは注文されてた奴だぞ!」
その様子はまるで戦場の様である。
胴付きまりさはその様子を加工所の整備員と眺めていた。
「まるで戦場だな。」
「まぁ外出しにくい事情があるからね。こっちはさ」
「胴付きは何か買わないのか?」
「割高になるけど嗜好品はちゃんと注文してるんだ。」
「そこらへんちゃっかりしてるよな。お前・・・」
「そんな事より機体の調子はどうだい?整備員さん」
・・・胴付きが深刻そうに整備員に問う。
整備員は視線を下に下げて申し訳なさそうに答えた
「はっきり言ってC整備までやって分解してみないとわからない。エンジンもフラップもな・・・」
「もう分解整備しなきゃあっちこっちにガタが来てる・・・何とか一日で出来ないか?」
「そりゃワシの上のお偉いさんに聞いてくれ。連日の機体調達で、そこまで整備に人が回らないんだ。」
「整備も出来ないのに休む事は出来ない・・・せめて今日5時間は空いてくれればな・・・」
「ああ、5時間空けば何とかひと通りはチェックできる。」
「スクランブル要請が無い事を祈るばかりだよ・・・」
胴付きはそういうとハンガーを後にした。
陽炎が揺らぐ滑走路を立ち止まって眺める。
(もう機体もボロボロだ・・・長期作戦なんてされたらまともに飛ぶ保証がない・・・)
胴付きの願いも空しく、基地内にサイレンが鳴り響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「作戦内容を説明する!」
スクリーンに地図座標を映し出し、勇壮に加工所職員が声をあげた。
「現加工所から南に200kmほど言った所に森林地帯が広がっているのは知っているだろう!これが今回の作戦地点だ!」
スクリーンに映し出された森林地帯を見て、胴付きゆっくりの一体が声をあげる。
「確かあそこは銅バッジ認定のドスが群れを束ねてるだろ?なんでそんな所にまりさ達がでばるのかぜ?」
「その銅バッジドスとその群れは現在最寄りの加工所で避難中だ!クイーンありすの群れが出現してな!」
「なるほど。森林地帯にクイーンありすの群れが侵入したからそれを殲滅しろってことかぜ?」
「そうだ。しかし無軌道に攻撃しても森林に散り散りに逃げて再び再結集するので意味がない!よって今回は共同報酬の形を取る!南西の端にある開けた崖っぷちにクイーンありすの群れを追いこんで、そのまま長期間釘づけにしろ!れいぱーありすどもを一体たりとも逃すな!報酬はいつもの3倍!・・・3万だ!」
胴付きゆっくり達からどよめきが上がる。
共同報酬で3倍とはかなり美味しい作戦だ。しか加工所主導の作戦なので、整備、補給も加工所持ちになる。
おまけに長期戦である。日が続けば続くほど、報酬は増えるのだ。
早速攻撃編成が発表された。
胴付きまりさはそれを聞いて背筋に冷たい汗が流れる感触を持つ。
(群れを兵糧攻めで200km地点が作戦地域だと・・・完全な長期作戦じゃないか・・・)
胴付きまりさの焦りを知るものは、誰もいない。
・・・・・・
・・・
「機体を回せ!」
胴付きまりさがハンガーに駆けてきた。
すぐに胴付きが梯子を伝ってコックピットに滑り込む。
整備員がキャノピーを閉めようとする胴付きに声をあげて呼んだ
「胴付き!」
「整備員さん!機体の整備は!」
「まだ万全じゃない!戦闘速度は出せるだろうが!無理はするなよ!エンジンの内圧が下がってるから下手すれば飛んでる最中にエンストするぞ!」
「わかった!留意する!」
「気をつけろ!調子が悪くなったらすぐに増槽を捨てて引き返してこい!」
風防がしまった。ハンガーからP-193が引っ張り出されて行く。
胴付きが胸中に違和感を抱く。しかしそれもすぐに押し込められた。
機体がアイドル・アップを経て軽い振動が伝わる。
プロペラが回転を上げ、円に見えた。
滑走路が一直線に空への道を照らしだす。
口の中に広がる緊張感。徐々に機体が動いて行った。
すぐさま滑走を開始して、唸り声をあげて加速する機体。
僅かな浮遊感の後に、視界が空を向いた。
先に出撃した機体にどんどん追いついていく。
機体の不調は感じない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「加工所より第一攻撃隊へ。クイーンありすは現在森林地帯北東15kmを移動中」
「5セクションより各機へ!ありすの場所が割れた!方位を変えろ!北東にヘッドオン!」
胴付きの指示に従い後続3機のP-193が方向を変えた
胴付きを中心にダイアモンドを作って飛行する。
暫く飛ぶと黄色い何かが蠢いていた。
間違いない。クイーンありすの群れだ。
「13より後続機へ!クイーンありすの群れを発見!クイーンを先頭に後ろに伸びてれいぱーありすがついて言っている」
操縦桿の安全装置を指ではじいた。戦闘準備だ。
「後ろからかますぞ!各機ついてこい!アタック!」
機体を急降下させて落ちてゆく
胴付きまりさが引き金を引いた。
轟音とともに機体が揺れて、弾丸がありすの群れに吸い込まれて行く。
「追いたて」が始まった。
「「ゆぎゃあああああああ!」」
「あでぃずのっ!あでぃずのどがいばなあんよざんがぁぁ!!いだいいいいい!!」
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
「おぢびぢゃああああん!どがいばっ!どがいばあああああ!」
「いぢゃいわぁぁ!ぐりーむざんながれないぢぇええええ!」
後続のありすの群れに叩きこまれた弾丸は、一瞬にしてありす達をバラバラの弾け飛ばした。
カスタードクリームと小麦粉の皮が辺りに飛び散る。
直撃こそ免れたありすも、悲惨であった。
跳ねた石が底部を切り裂き、身動きが取れなくなっているありす。
折れた木の枝が突き刺さって痙攣をおこしている子ありすと、それを見て泣き叫ぶ親ありす。
切り裂かれた小麦粉の皮からカスタードクリームが流れ出て、砂糖水の涙と涎をまき散らしてもがき苦しんでいる
「み、みんなあああ!」
クイーンありすが異変に気付いて叫ぶ。
後続は成体サイズのありすが中心であったが、群れの中心にいる子ありすや蔓をはやしたありす等の一部に被害が出たのだ。
「みんな!もりのなかにちりぢりになってにげるのよ!」
クイーンありすの声とともに一気にバラバラになって逃げようとするゆっくり、
その瞬間、群れの外郭にいたありす達が轟音をあげて飛ぶうーぱっくによってバラバラに吹き飛んだ。
「ゆ!ゆ!ゆっくりにげるわぼぉっ!」
「とかいはなおちびちゃんは!ゆ!ゆ!ありすがまもるぶぇっ!」
「みゃみゃ!まっちぇえええ!ありしゅをおぼぉっ!」
「ゆ”!ゆ”!ゆ”!」
小麦粉の体の半分を残して吹っ飛ぶありす。
胎生型のありすがグチャグチャに弾け飛んだ辺りに、中にいた子ありすが横たわっている。
風圧で木の枝に突き刺さって白目をむいて痙攣する子ありすもいた。
「ゆがああああああ!?」
「くいーんのところにいればあんぜんだわ!」
「く、くいーん!まってぇえええ!」
波が返す様に一斉にクイーンありすの方へと寄っていくありすの群れ。
クイーンありすを先頭に、後ろへ伸びるように続いていた群れの形が、クイーンありすを囲う様に円形になっている。
「こ、これじゃすすめないわ・・・!」
クイーンありすは悩んだ。
自分の周りにいれば被害は受けないとはわかったが、この状態ではクイーンありすはまともに前に進めない。
「み、みんな!ありすのちかくにいればあんぜんだからしっかりくっつくのよ!すこしづつでいいからいどうしましょう!」
・・・「群れ」を見捨てるわけにはいかない。クイーンありすの苦渋の決断であった。
このクイーンありすの群れは実は「れいぱー」ではない。
れいぱーありすに「いなかものなありす」と迫害を受けないために善良なありすが寄り集まった群れなのだ。
しかし、ゆっくり飛行隊はこの事実を知らない。
クイーンありすの頭上には、不気味な音を立てて獲物を狙うかのように旋回を繰り返す「P-193」があった。
「(なにをしているんだ・・・!あれじゃあ、崖っぷちに追い込むまでに時間がかかり過ぎる・・・)」
胴付きまりさは焦っていた。
本来の予定ならば、あのままクイーンありすを先頭に再び群れの隊伍を戻して進むはずだった。
クイーンありすが先頭ならば、後続もつかえずに進めるからだ。
しかしクイーンありすを中心に団子状に固まってしまった以上、クイーンありすは緩やかな遅滞移動をしなければならない。
南西の崖まで20Km・・・予定通りなら2~3時間で到達するはずだが、これではその倍以上かかってしまうだろう。
(・・・止むを得ん)
胴付きまりさがエンジンの出力を絞った。巡航速度まで速度を落とす。
「クイーンの群れは遅滞移動を開始した!各機は交代機が来るまで上空を旋回!動きが止まるたびに、後ろに威嚇射撃をかけろ!」
交代機が来るまで後15分。胴付きの長い長い焦りが始まった。
・・・・・・
・・・
「ゆっくり!ゆっくりすすむのよ!みんな!ありすのまわりからはなれないでね!」
「ゆ!ゆ!・・・こわいわぁぁ・・・!」
「ま、まだあのうーぱっくがとんでるわ・・・」
「い、いつになったらいなくなるのぉぉ・・・?」
「ずーりずーり・・・ゆゆ・・・ありしゅちゅかれちゃわ・・・」
「ゆっくりがまんするのよ!おちびちゃん!ゆっくりでいいからついきて!」
ずーりずーりとはいえ、飲まず食わずで移動をしているのだ。
体力のない子ありす等が必然的にペースを落とす。そしてクイーンありすもそれに合わせてペースを落とさざる負えなかった。
しかし、移動速度を少しでも落とした瞬間に後ろから「かみなりさん」が降ってくるのだ。
雷鳴の様な音を立てて、地面がえぐれ、舞いあがる。
「ゆんやああああああ!?きょわいわあああああ!」
「ゆ、ゆっきゅりいしょぐわ・・・!」
「おちびちゃんっ!ありすのおくちのなかにはいってね!ゆ!ゆ!」
驚いたありす達が疲れ果てた子ゆっくりを頭の上や口の中に入れ、ペースを再び上げて進む。
ゆっくりと、だが確実にクイーンありすの群れは疲弊していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(まだか・・・まだか・・・!)
焦りが冷や汗となって顔から噴き出る。
喉がからからに乾いていた。
スティックを動かす手以外がカチコチに固まっていく。
時刻を見てさらに驚きを重ねる。
(・・・!!・・・まだ10分も経ってないじゃないか・・・!)
一秒が十分以上にも感じるこの緊張感の中で、一寸の狂いもなく威嚇射撃をし続け、編隊を指揮し続けなければならない。
少しでも群れに損害が出ればそれでアウトだ。「くいーんのまわりにいてもあんぜんじゃない」とわかれば一気に散り散りに逃げられるだろう。そうなれば、追いたてる術はもう、無い。
仮に機体に限界が来て編隊指揮権を委譲すれば、残り3機の内、胴付きまりさに護衛機をつけなけらばならない為に二機に減ってしまう。
機数が減ったとわかれば、群れが一気に散り散りに逃げると無いと言う保証はどこにもない。
現状維持をし続けなければならないのだ。
群れの上空をグルグルと旋回する。
燃料計は、「F」へと一刻一刻と目盛を動かし始めていた。
「ゆ!ゆ!みんな!つかれたらありすのあたまのうえにのるのよ!」
「ゆふぅ・・・ゆふぅ・・・わ、わかっちゃわ・・・!」
「あ、ありすはまだいいわ・・・おちびちゃんをのせてあげて・・・」
「みゃみゃ・・・ちゅれちゃわぁぁ・・・あんよしゃんがいちゃいわぁぁ・・・」
クイーンありすの群れもまた、ほんの少しの狂いも許されない遅滞移動を繰り返していた。
既に小麦粉の皮の底部が薄い赤ありす等は、底部が擦り切れ、破れているゆっくりまで現れたのだ。
ずーりずーりする体力がなくなった子ありす達をクイーンありすの頭の上に載せていく。
クイーンありすの負担が、どんどん大きくなっていった。
・・・れいぱー気質の群れならば、脱落したありす等お構いなしに逃げるだろう。
だが、このクイーンありすは「みんなでとかいは」と言う概念を非常に重んじている。絶対に見捨てる事などしないのだ。
(みんな・・・ゆっくりがんばるのよ・・・!みんなは・・・みんなはありすがまもるわ・・・!)
クイーンありすの決意の最中、P-193の交代機が現れた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「帰ってきたか!」
フラップを降ろして着地したP-193に走って近づいていく整備員。
風防が開くと、中から胴付きまりさが飛び出した。
「早くハンガーへ!」
「わかってる!調子はどうだった!?」
「まだ大丈夫だ!だが先はわからん!早くグランド・チェックを!」
「ハンガーへ胴付きの機体を回せ!一秒たりとも無駄にするな!」
降乗した胴付きまりさは、ヘルメットを取ると、加工所職員の持ってきたオレンジジュースを飲み干す。
「どんな感じだ?」
「まだ崖まで移動していない・・・多分、次の編隊が行ってようやくって所だろう・・・」
「相当疲れてるみたいだな・・・」
汗をぬぐう事もせず、息を整える胴付きまりさに加工所職員が問う。
「いつエンジンが止まるかどうかわからない中で空中待機を続けるんだ・・・爆弾の上に座ってるような気分だよ・・・」
「・・・いずれにしろ次の再出撃まで3時間は稼げるな」
「整備員さんだって頑張ってるんだ。こっちも気を引き締めないと・・・」
胴付きまりさはそうつぶやくと、沈み始めた夕陽を眺めた。
ようやく、ようやく日が沈む
「ゆはぁっ・・・ゆはぁっ・・・」
「ゆっ・・・!ゆっ・・・!」
「こんなの・・・ゆはぁっ・・・!とかいはじゃ・・・ないわ・・・!」
夜になってもクイーンありすの群れの移動は続く。
既にすべてのありす達に疲労の色が見て取れた。
当り前だ。昼前から飲まず食わずで移動を繰り返しているのだ。
しかもあの「うーぱっく」が来てから、ペースを落とす事も出来ない。
既に300体いるありすの内、三分の一がクイーンありすの頭の上に乗っていた。つまり子ありすの数だ。
軽いとはいえ100体も載せて進むのはかなりの負担である。
通常のゆっくりよりも高い体力を持っていると言ってもゆっくりなのだ。
周りのありす以上にクイーンありすは疲弊していた。
「み、みんな・・・!ゆっくり・・・がんばるのよ・・・!もうちょっと・・・!もうちょっとで・・・!もりをぬけるわ・・・!」
・・・抜けた先が逃げ場のない断崖絶壁とは知らずに、クイーンありすの群れは、動かぬ底部に鞭打って、ずーりずーりと移動していた。
「ゆ・・・!も、もりが・・・!もりがおわったわ・・・!」
先頭にいたありすが声を上げた。もう出口である。
「みんな!ゆっくりがんばるのよ!」
・・・クイーンありすの激励で、力を振り絞って移動するありす達。
もう少し、後わずか・・・
「ぬ、ぬけたわ!・・・ゆ・・・!」
森を抜けた先に会ったのは
「どぼじでがげざんがああああああああ!?ごれじゃにげられないわああああああああ!」
開けた土地の、崖っぷちだった。
空には、まだあの「うーぱっく」が不気味に旋回を続けている。
・・・・・・
・・・
(ようやくついたな・・・!)
胴付きまりさは、ひとまずの安堵を感じていた。
機体を左右にバンクさせ、攻撃合図を送る。
「威嚇射撃だ!10分おきに撃て!れいぱーありすどもを釘づけにしろっ!」
「「「了解!」」」
胴付きまりさはスティックを倒して機体をダイブさせると、一気に引き金に指をかけた。
「「「「ゆわあああああああ!?」」」」
クイーンありす達の群れの周りからバチバチと火花が上がる。
先ほどの緩い攻撃とは打って変わって、かなり強めの射撃だ。
「み、みんな!ありすのちかくにいるかぎりわねらわれねいわ!もっとくっつくのよ!とにかくここでじっとしましょう!」
「わ、わかったわ・・・!」
「ゆぇぇん・・・みゃみゃ・・・きょわいよぉぉ・・・」
「だいじょうぶよ!くいーんがまもってくれるわ!」
そう、クイーンありすの周りにいる限りは決して当たりはしない。
そのかわり、逃げ場は何処にも無いのだが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日の昼。
日はまた強く照りつけ、炎天下とも言える猛暑となっていた。
息をするのも苦しいほどの熱波がクイーンありすの群れを襲う。
「ゆひっ・・・!ゆひっ・・・!みゃみゃ・・・おみずしゃんがのみちゃいわぁぁ・・・」
「ゆはぁ・・・!ゆはぁ・・・!ゆっくり、ゆっくりがまんするのよ・・・おちびちゃん・・・!」
「あづい・・・あづいわぁぁ・・・」
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・」
「おぢびぢゃぁぁぁん!ゆゆ!ありずのかげにばいっでね!」
飲まず食わずで炎天下に釘づけにされたありす達は、異変を起こし始めるに至っていた。
息が浅く、早くなっていく。モチモチの小麦粉の皮が、カサカサに乾いていく。
親ありすは、子ありすの負担を何とか和らげようと、自身の陰に入れていた。
「みんな!ありすのかげにはいってね!」
クイーンありすに出来る大きな影に退避するありす達・・・
しかしカバーできる数は限られている。
何度も交代で変わるしかなかった。
(ゆぐ・・・でもあのうーぱっくだっていつかはあきらめるはずだわ・・・!みんな・・・!もうすこしのしんぼうよ・・・!)
決して疲れぬ鉄の「うーぱっく」はありす達の頭上を旋回し続ける・・・
「ゆゆ・・・!おちびちゃんがうまれるわ・・・!」
疲弊しきったあるありすの頭上に生えた蔓から、フルフルと蔓が落ちかけていた。
三つともありす種である。すぐにポトリと三つ落ちると、フルフルと震えだした。
「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!」
・・・だが赤ありすは「ゆっくりしていってね」と返してくる事はなかった。
「ゆ・・・!ゆっきゅ・・・ち・・・!・・・!!・・・!」
「ゆっきゅ・・・~~~!!・・・!」
「ゆ・・・!ゆっきゅ・・・!!・・・!」
あまりにも陽射しに当たり過ぎたのだ、モチモチの小麦粉の皮がパサパサになり、うまく口を動かせない。
それどころか蔓から送られてきたなけなしの水分まで遮断されたとあっては、既に八方ふさがりだろう。
「おぢびぢゃん!?ゆっぐりじでいっでねっ!ぢゃんどいうのよ!ゆっぐり!ゆっぐりじでいっでね!ゆっぐり!どがいば!」
言える単語を叫び続けるが、赤ありす達は苦しそうに小麦粉の体をくねらせて、口をパクパクと動かしているだけだ。
さらに直射日光が当たり、下からは反射した日光の熱波が押し上げている。
本来赤ゆっくりは、涼しい快適な所にいなければならないのに、この環境はあまりにも過酷すぎた。
「ゅ・・・ひゅー・・・ゅっきゅ・・・ひゅー・・・」
「ゅひゅー・・・ゅひゅー・・・」
「ときゃ・・・ときゃい・・・ゆっきゅ・・・ゆひゅっ・・・ゆひゅっ・・・」
熱波で呼吸まで阻害され、赤ありすが小麦粉の体をくねらせてもがき苦しむ。
徐々に、徐々に動きが小さくなっていき、そして動かなくなった。
「ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!どがいばあああああああああ!!」
なけなしの水分を流して叫ぶありす。
今や、そこらかしこでこれと同じような事が立て続けに起きていた。
・・・またあるありす親子は、親ありすの方が先に弱っていく。
「ゆひっ・・・ゆはっ・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」
寒天の両目の視点もさだならぬまま宙空を見据え、小さくしか動かなくなったありす。
「みゃみゃ!ゆっきゅちちちぇえええええ!」
「ときゃいは!みゃみゃ!ときゃいはああああ!」
子ゆっくりと思わしき子ありす二体が、砂糖水の涙を流しながらすーりすーりを繰り返している。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!べいぎ・・・よ・・・!ごれぐ・・・らい・・・ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・まま・・・は・・・なんども・・・ない・・・わ・・・」
「みゃみゃ!ちょっちぇもきゅるししょうぢゃわ!うしょちゅかにゃいぢぇね!」
「みゃみゃぁぁ!みゃみゃがげんきににゃりゅようにありしゅおうちゃをうちゃうわ!ぢゃから!ぢゃからげんきになっちぇぇぇ・・・!ちょかいはっ!ちょかいはーっ!」
・・・子ありす達は陰に隠れていたため比較的消耗はしなかった。
だが、子ありす達の為に影を作り続けた親ありすは、もうとっくに限界を超えていた。
「お・・・ぢび・・・ぢゃ・・・どがい・・・ば・・・な・・・ゆっぐり・・・に・・・な・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」
「みゃみゃぁぁぁ!ゆっきゅりよくなっちぇぇぇ!ぺーろぺーろ!」
「ちょかいはーっ!みんなちょっちぇもちょかいはーっ!みゃみゃ!ゆっきゅり!ゆっきゅりよくなっちぇね!」
浅い呼吸が頻度が小さくなっていき、そしてありすはただのカピカピの乾いた饅頭となり果ててしまった。
「「みゃみゃあああああああああ・・・!!」」
子ありす達の叫びが轟く。
この日の夕暮れになる頃には、既に200体以上のありすが乾いた饅頭となり果てていた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
さらにもう一日目の日が昇る。
この頃には熱波と、さらに何も食べていないと言う要因がクイーンありす達の群れに圧し掛かった。
・・・既に動く体力すらも無くなり、どれがまだゆっくりとしての機能を消失していないありすか見分けがつかない程に、やせ衰えている。
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・あづいわぁぁ・・・おながずいだわぁぁ・・・」
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!ゅ”・・・!」
「ひゅー・・・ひゅー・・・」
クイーンありすはいまだ無事であったが、それはクイーンありすが「ドス種」であると言う特性の他ならない。
「みんな・・・!もうちょっとよ・・・!もうちょっとで・・・!ゆぅぅっ・・・!」
・・・クイーンありすもそろそろ限界であった。
何も摂取しなくても二カ月以上生きられるのは、森の中でと言う話だ。
こんな熱波と日射が降り注ぐこの場所では、その数字は当てにはならない。
皮肉にもクイーンありすの言った事は正しかった。
痺れを切らしたのはあの「うーぱっく」の方であった・・・
急降下して、あのうーぱっくがこれまで無い以上に肉薄する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「運が無かったな・・・」
胴付きまりさはそうつぶやくと、機体を降下させてクイーンをありすめがけて突っ込んでいった。
安全装置を指ではじき、ヘッドアップディスプレイに重なったクイーンありすに向けて、引き金を引く。
・・・轟音とともに、機関砲が火を噴いた。
「ゆぐがががががががっ!!」
四機編隊・・・つまり32門の機関砲をくらい、クイーンありすはあっという間に穴だらけになっていく。
頭上をあのうーぱっくがかすめ、再び降下してくる。
「ゆひゅー・・・!ゆひゅー・・・!みんな・・・は・・・あり・・・すが・・・まもる・・・わ・・・!」
再びうーぱっくの編隊が、火を吹いて突っ込んでくる。
「・・・ゆぎゅがぁぁぁぁっ!!!」
小麦粉の皮をカスタードクリームや砂糖細工の髪の毛ごと「削り取られ」て行く。
既に上部右半分はバラバラに吹き飛んでいた、それでもありす達の前から一歩も動かず盾になり続ける。
・・・三度目の降下音が響く。
クイーンありすは、がくりと項垂れた視界の先に、大小の石がある事に気がついた。
「ゆぐ・・・むぐ・・・っ・・・!」
最後の力を振り絞って、ありったけの石を口の中に入れる。
そして突っ込む「うーぱっく」に向けて、それを放った。
「ぶふううううううう・・・ゆばばばばばぁっ!!」
その直後、クイーンありすはその巨体の半分以上を削り取られ、前のめりに崩れ落ちた。
「うーぱっく」の幾つかが、煙を上げて飛んでいる。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
(もう少し・・・もう少しだけ持ってくれ・・・!)
煙を噴き上げてヨタヨタと飛ぶP-193を、何とか操縦しながら、滑走路への着陸をするために、降りていく。
最後のあのクイーンありすの攻撃で、一機が風防を割られバランスを崩して墜落した。
もう一機も、帰投途中でエンジンが爆発し、空で散った。
無事な一機が着陸した後に、胴付きまりさは何とかアプローチをしようと機体を操作する。
おりしも風が強く、ただでさえ止まりかけて出力の下がったエンジンが、気流を受けて左右にグラグラと動いている。
冷や汗どころの騒ぎではない。タガをはずしたかのように胸の鼓動が高まり、手足がカタカタと震えた。
気が狂いそうな緊張の中で、機体を水平に保ってフラップを降ろす。
地面に着く直前。胴付きまりさは自身のすぐ後方で何かが爆発する音を聞いた。
ガクンと落ちて行く感触。
機体が空中で爆発した。
・・・・・・
・・・
「肝が冷えたぜよ・・・全く」
加工所職員が心配そうに胴付きまりさを眺めた。
「もうダメかと思ったよ」
「危機一髪で間に合うなんてな・・・運がいいぜ全く」
もうもうと黒煙を上げる機体の残骸を、ブルドーザーがどかしているのを眺めて、胴付きが言った。
後ろから、整備員が声をかける。
「なんとか持ったみたいだな。よかったよかった」
「よくないよ、死にかけたんだぜ?」
「ちゃんと脱出装置を整備したワシに感謝するんだな」
「しかし暫くは、借用機で飛ばなきゃいけないなぁ」
「それだけしこたま稼いでるんだ。一日1000のレンタル代なんて安いもんだろう」
「一か月で幾らになると思ってるんだ」
二人と一体を沈む夕日が照らし出す。
命を預けた者たちの、しばしの交わりを照らす様に・・・
羽付きあき
・独自設定ゆっくりと、いくつかの独自設定を入れています
・善良なゆっくりがひどい目に会いますご注意を
・ミリタリー物
加工所職員達がハンガーの中で机を並べていた。
そこに群がる胴付きゆっくり達
お目当ては「嗜好品」「日常生活品」である。
週に一回買い出しが行われ、販売されるのである。
胴付きゆっくり達は一応プラチナバッジ扱いを受けており、申請すれば外出許可も下りるのだが、好んで申請するものは少ない。
なぜなら、強制出撃の際に出遅れてしまうからだ。
加工所による指令の出撃は、大半が「共同報酬」の形を取る。
つまり戦果に如何に左右されずに安定した報酬がもらえるのだ。
出撃頻度が多いとはいえ、完全歩合制に近いゆっくり飛行隊にとってこの共同報酬は重要な収入源である。
「ラムネだ!ラムネを20本くれ!」
「"胴付きゆっくりグラビア"の最新号はあるか!?」
「注文していた"月刊ゆうかにゃん"を受理を申請する!早急に準備されたし!」
「ゆっくり用サングラスを15個!UVカット用の奴だ!」
「こらっ!押すんじゃねぇ!」
「てめぇこそ割り込むな!後で背中に気をつけろよ!」
「むぎゅううう!押さないでええええ!」
一斉に群がる胴付きゆっくり達、後方では殴り合いのケンカにまで発展していた。
加工所職員達が宥めるが一向に言う事を聞かない。
「落ち着いて!まだまだ在庫はあります!ありますから!」
「ラムネは在庫切れだ!注文は受け付けるから!早く後ろに譲れ!」
「あーこら!勝手に取るな!それは注文されてた奴だぞ!」
その様子はまるで戦場の様である。
胴付きまりさはその様子を加工所の整備員と眺めていた。
「まるで戦場だな。」
「まぁ外出しにくい事情があるからね。こっちはさ」
「胴付きは何か買わないのか?」
「割高になるけど嗜好品はちゃんと注文してるんだ。」
「そこらへんちゃっかりしてるよな。お前・・・」
「そんな事より機体の調子はどうだい?整備員さん」
・・・胴付きが深刻そうに整備員に問う。
整備員は視線を下に下げて申し訳なさそうに答えた
「はっきり言ってC整備までやって分解してみないとわからない。エンジンもフラップもな・・・」
「もう分解整備しなきゃあっちこっちにガタが来てる・・・何とか一日で出来ないか?」
「そりゃワシの上のお偉いさんに聞いてくれ。連日の機体調達で、そこまで整備に人が回らないんだ。」
「整備も出来ないのに休む事は出来ない・・・せめて今日5時間は空いてくれればな・・・」
「ああ、5時間空けば何とかひと通りはチェックできる。」
「スクランブル要請が無い事を祈るばかりだよ・・・」
胴付きはそういうとハンガーを後にした。
陽炎が揺らぐ滑走路を立ち止まって眺める。
(もう機体もボロボロだ・・・長期作戦なんてされたらまともに飛ぶ保証がない・・・)
胴付きの願いも空しく、基地内にサイレンが鳴り響いた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「作戦内容を説明する!」
スクリーンに地図座標を映し出し、勇壮に加工所職員が声をあげた。
「現加工所から南に200kmほど言った所に森林地帯が広がっているのは知っているだろう!これが今回の作戦地点だ!」
スクリーンに映し出された森林地帯を見て、胴付きゆっくりの一体が声をあげる。
「確かあそこは銅バッジ認定のドスが群れを束ねてるだろ?なんでそんな所にまりさ達がでばるのかぜ?」
「その銅バッジドスとその群れは現在最寄りの加工所で避難中だ!クイーンありすの群れが出現してな!」
「なるほど。森林地帯にクイーンありすの群れが侵入したからそれを殲滅しろってことかぜ?」
「そうだ。しかし無軌道に攻撃しても森林に散り散りに逃げて再び再結集するので意味がない!よって今回は共同報酬の形を取る!南西の端にある開けた崖っぷちにクイーンありすの群れを追いこんで、そのまま長期間釘づけにしろ!れいぱーありすどもを一体たりとも逃すな!報酬はいつもの3倍!・・・3万だ!」
胴付きゆっくり達からどよめきが上がる。
共同報酬で3倍とはかなり美味しい作戦だ。しか加工所主導の作戦なので、整備、補給も加工所持ちになる。
おまけに長期戦である。日が続けば続くほど、報酬は増えるのだ。
早速攻撃編成が発表された。
胴付きまりさはそれを聞いて背筋に冷たい汗が流れる感触を持つ。
(群れを兵糧攻めで200km地点が作戦地域だと・・・完全な長期作戦じゃないか・・・)
胴付きまりさの焦りを知るものは、誰もいない。
・・・・・・
・・・
「機体を回せ!」
胴付きまりさがハンガーに駆けてきた。
すぐに胴付きが梯子を伝ってコックピットに滑り込む。
整備員がキャノピーを閉めようとする胴付きに声をあげて呼んだ
「胴付き!」
「整備員さん!機体の整備は!」
「まだ万全じゃない!戦闘速度は出せるだろうが!無理はするなよ!エンジンの内圧が下がってるから下手すれば飛んでる最中にエンストするぞ!」
「わかった!留意する!」
「気をつけろ!調子が悪くなったらすぐに増槽を捨てて引き返してこい!」
風防がしまった。ハンガーからP-193が引っ張り出されて行く。
胴付きが胸中に違和感を抱く。しかしそれもすぐに押し込められた。
機体がアイドル・アップを経て軽い振動が伝わる。
プロペラが回転を上げ、円に見えた。
滑走路が一直線に空への道を照らしだす。
口の中に広がる緊張感。徐々に機体が動いて行った。
すぐさま滑走を開始して、唸り声をあげて加速する機体。
僅かな浮遊感の後に、視界が空を向いた。
先に出撃した機体にどんどん追いついていく。
機体の不調は感じない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「加工所より第一攻撃隊へ。クイーンありすは現在森林地帯北東15kmを移動中」
「5セクションより各機へ!ありすの場所が割れた!方位を変えろ!北東にヘッドオン!」
胴付きの指示に従い後続3機のP-193が方向を変えた
胴付きを中心にダイアモンドを作って飛行する。
暫く飛ぶと黄色い何かが蠢いていた。
間違いない。クイーンありすの群れだ。
「13より後続機へ!クイーンありすの群れを発見!クイーンを先頭に後ろに伸びてれいぱーありすがついて言っている」
操縦桿の安全装置を指ではじいた。戦闘準備だ。
「後ろからかますぞ!各機ついてこい!アタック!」
機体を急降下させて落ちてゆく
胴付きまりさが引き金を引いた。
轟音とともに機体が揺れて、弾丸がありすの群れに吸い込まれて行く。
「追いたて」が始まった。
「「ゆぎゃあああああああ!」」
「あでぃずのっ!あでぃずのどがいばなあんよざんがぁぁ!!いだいいいいい!!」
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!」
「おぢびぢゃああああん!どがいばっ!どがいばあああああ!」
「いぢゃいわぁぁ!ぐりーむざんながれないぢぇええええ!」
後続のありすの群れに叩きこまれた弾丸は、一瞬にしてありす達をバラバラの弾け飛ばした。
カスタードクリームと小麦粉の皮が辺りに飛び散る。
直撃こそ免れたありすも、悲惨であった。
跳ねた石が底部を切り裂き、身動きが取れなくなっているありす。
折れた木の枝が突き刺さって痙攣をおこしている子ありすと、それを見て泣き叫ぶ親ありす。
切り裂かれた小麦粉の皮からカスタードクリームが流れ出て、砂糖水の涙と涎をまき散らしてもがき苦しんでいる
「み、みんなあああ!」
クイーンありすが異変に気付いて叫ぶ。
後続は成体サイズのありすが中心であったが、群れの中心にいる子ありすや蔓をはやしたありす等の一部に被害が出たのだ。
「みんな!もりのなかにちりぢりになってにげるのよ!」
クイーンありすの声とともに一気にバラバラになって逃げようとするゆっくり、
その瞬間、群れの外郭にいたありす達が轟音をあげて飛ぶうーぱっくによってバラバラに吹き飛んだ。
「ゆ!ゆ!ゆっくりにげるわぼぉっ!」
「とかいはなおちびちゃんは!ゆ!ゆ!ありすがまもるぶぇっ!」
「みゃみゃ!まっちぇえええ!ありしゅをおぼぉっ!」
「ゆ”!ゆ”!ゆ”!」
小麦粉の体の半分を残して吹っ飛ぶありす。
胎生型のありすがグチャグチャに弾け飛んだ辺りに、中にいた子ありすが横たわっている。
風圧で木の枝に突き刺さって白目をむいて痙攣する子ありすもいた。
「ゆがああああああ!?」
「くいーんのところにいればあんぜんだわ!」
「く、くいーん!まってぇえええ!」
波が返す様に一斉にクイーンありすの方へと寄っていくありすの群れ。
クイーンありすを先頭に、後ろへ伸びるように続いていた群れの形が、クイーンありすを囲う様に円形になっている。
「こ、これじゃすすめないわ・・・!」
クイーンありすは悩んだ。
自分の周りにいれば被害は受けないとはわかったが、この状態ではクイーンありすはまともに前に進めない。
「み、みんな!ありすのちかくにいればあんぜんだからしっかりくっつくのよ!すこしづつでいいからいどうしましょう!」
・・・「群れ」を見捨てるわけにはいかない。クイーンありすの苦渋の決断であった。
このクイーンありすの群れは実は「れいぱー」ではない。
れいぱーありすに「いなかものなありす」と迫害を受けないために善良なありすが寄り集まった群れなのだ。
しかし、ゆっくり飛行隊はこの事実を知らない。
クイーンありすの頭上には、不気味な音を立てて獲物を狙うかのように旋回を繰り返す「P-193」があった。
「(なにをしているんだ・・・!あれじゃあ、崖っぷちに追い込むまでに時間がかかり過ぎる・・・)」
胴付きまりさは焦っていた。
本来の予定ならば、あのままクイーンありすを先頭に再び群れの隊伍を戻して進むはずだった。
クイーンありすが先頭ならば、後続もつかえずに進めるからだ。
しかしクイーンありすを中心に団子状に固まってしまった以上、クイーンありすは緩やかな遅滞移動をしなければならない。
南西の崖まで20Km・・・予定通りなら2~3時間で到達するはずだが、これではその倍以上かかってしまうだろう。
(・・・止むを得ん)
胴付きまりさがエンジンの出力を絞った。巡航速度まで速度を落とす。
「クイーンの群れは遅滞移動を開始した!各機は交代機が来るまで上空を旋回!動きが止まるたびに、後ろに威嚇射撃をかけろ!」
交代機が来るまで後15分。胴付きの長い長い焦りが始まった。
・・・・・・
・・・
「ゆっくり!ゆっくりすすむのよ!みんな!ありすのまわりからはなれないでね!」
「ゆ!ゆ!・・・こわいわぁぁ・・・!」
「ま、まだあのうーぱっくがとんでるわ・・・」
「い、いつになったらいなくなるのぉぉ・・・?」
「ずーりずーり・・・ゆゆ・・・ありしゅちゅかれちゃわ・・・」
「ゆっくりがまんするのよ!おちびちゃん!ゆっくりでいいからついきて!」
ずーりずーりとはいえ、飲まず食わずで移動をしているのだ。
体力のない子ありす等が必然的にペースを落とす。そしてクイーンありすもそれに合わせてペースを落とさざる負えなかった。
しかし、移動速度を少しでも落とした瞬間に後ろから「かみなりさん」が降ってくるのだ。
雷鳴の様な音を立てて、地面がえぐれ、舞いあがる。
「ゆんやああああああ!?きょわいわあああああ!」
「ゆ、ゆっきゅりいしょぐわ・・・!」
「おちびちゃんっ!ありすのおくちのなかにはいってね!ゆ!ゆ!」
驚いたありす達が疲れ果てた子ゆっくりを頭の上や口の中に入れ、ペースを再び上げて進む。
ゆっくりと、だが確実にクイーンありすの群れは疲弊していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(まだか・・・まだか・・・!)
焦りが冷や汗となって顔から噴き出る。
喉がからからに乾いていた。
スティックを動かす手以外がカチコチに固まっていく。
時刻を見てさらに驚きを重ねる。
(・・・!!・・・まだ10分も経ってないじゃないか・・・!)
一秒が十分以上にも感じるこの緊張感の中で、一寸の狂いもなく威嚇射撃をし続け、編隊を指揮し続けなければならない。
少しでも群れに損害が出ればそれでアウトだ。「くいーんのまわりにいてもあんぜんじゃない」とわかれば一気に散り散りに逃げられるだろう。そうなれば、追いたてる術はもう、無い。
仮に機体に限界が来て編隊指揮権を委譲すれば、残り3機の内、胴付きまりさに護衛機をつけなけらばならない為に二機に減ってしまう。
機数が減ったとわかれば、群れが一気に散り散りに逃げると無いと言う保証はどこにもない。
現状維持をし続けなければならないのだ。
群れの上空をグルグルと旋回する。
燃料計は、「F」へと一刻一刻と目盛を動かし始めていた。
「ゆ!ゆ!みんな!つかれたらありすのあたまのうえにのるのよ!」
「ゆふぅ・・・ゆふぅ・・・わ、わかっちゃわ・・・!」
「あ、ありすはまだいいわ・・・おちびちゃんをのせてあげて・・・」
「みゃみゃ・・・ちゅれちゃわぁぁ・・・あんよしゃんがいちゃいわぁぁ・・・」
クイーンありすの群れもまた、ほんの少しの狂いも許されない遅滞移動を繰り返していた。
既に小麦粉の皮の底部が薄い赤ありす等は、底部が擦り切れ、破れているゆっくりまで現れたのだ。
ずーりずーりする体力がなくなった子ありす達をクイーンありすの頭の上に載せていく。
クイーンありすの負担が、どんどん大きくなっていった。
・・・れいぱー気質の群れならば、脱落したありす等お構いなしに逃げるだろう。
だが、このクイーンありすは「みんなでとかいは」と言う概念を非常に重んじている。絶対に見捨てる事などしないのだ。
(みんな・・・ゆっくりがんばるのよ・・・!みんなは・・・みんなはありすがまもるわ・・・!)
クイーンありすの決意の最中、P-193の交代機が現れた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「帰ってきたか!」
フラップを降ろして着地したP-193に走って近づいていく整備員。
風防が開くと、中から胴付きまりさが飛び出した。
「早くハンガーへ!」
「わかってる!調子はどうだった!?」
「まだ大丈夫だ!だが先はわからん!早くグランド・チェックを!」
「ハンガーへ胴付きの機体を回せ!一秒たりとも無駄にするな!」
降乗した胴付きまりさは、ヘルメットを取ると、加工所職員の持ってきたオレンジジュースを飲み干す。
「どんな感じだ?」
「まだ崖まで移動していない・・・多分、次の編隊が行ってようやくって所だろう・・・」
「相当疲れてるみたいだな・・・」
汗をぬぐう事もせず、息を整える胴付きまりさに加工所職員が問う。
「いつエンジンが止まるかどうかわからない中で空中待機を続けるんだ・・・爆弾の上に座ってるような気分だよ・・・」
「・・・いずれにしろ次の再出撃まで3時間は稼げるな」
「整備員さんだって頑張ってるんだ。こっちも気を引き締めないと・・・」
胴付きまりさはそうつぶやくと、沈み始めた夕陽を眺めた。
ようやく、ようやく日が沈む
「ゆはぁっ・・・ゆはぁっ・・・」
「ゆっ・・・!ゆっ・・・!」
「こんなの・・・ゆはぁっ・・・!とかいはじゃ・・・ないわ・・・!」
夜になってもクイーンありすの群れの移動は続く。
既にすべてのありす達に疲労の色が見て取れた。
当り前だ。昼前から飲まず食わずで移動を繰り返しているのだ。
しかもあの「うーぱっく」が来てから、ペースを落とす事も出来ない。
既に300体いるありすの内、三分の一がクイーンありすの頭の上に乗っていた。つまり子ありすの数だ。
軽いとはいえ100体も載せて進むのはかなりの負担である。
通常のゆっくりよりも高い体力を持っていると言ってもゆっくりなのだ。
周りのありす以上にクイーンありすは疲弊していた。
「み、みんな・・・!ゆっくり・・・がんばるのよ・・・!もうちょっと・・・!もうちょっとで・・・!もりをぬけるわ・・・!」
・・・抜けた先が逃げ場のない断崖絶壁とは知らずに、クイーンありすの群れは、動かぬ底部に鞭打って、ずーりずーりと移動していた。
「ゆ・・・!も、もりが・・・!もりがおわったわ・・・!」
先頭にいたありすが声を上げた。もう出口である。
「みんな!ゆっくりがんばるのよ!」
・・・クイーンありすの激励で、力を振り絞って移動するありす達。
もう少し、後わずか・・・
「ぬ、ぬけたわ!・・・ゆ・・・!」
森を抜けた先に会ったのは
「どぼじでがげざんがああああああああ!?ごれじゃにげられないわああああああああ!」
開けた土地の、崖っぷちだった。
空には、まだあの「うーぱっく」が不気味に旋回を続けている。
・・・・・・
・・・
(ようやくついたな・・・!)
胴付きまりさは、ひとまずの安堵を感じていた。
機体を左右にバンクさせ、攻撃合図を送る。
「威嚇射撃だ!10分おきに撃て!れいぱーありすどもを釘づけにしろっ!」
「「「了解!」」」
胴付きまりさはスティックを倒して機体をダイブさせると、一気に引き金に指をかけた。
「「「「ゆわあああああああ!?」」」」
クイーンありす達の群れの周りからバチバチと火花が上がる。
先ほどの緩い攻撃とは打って変わって、かなり強めの射撃だ。
「み、みんな!ありすのちかくにいるかぎりわねらわれねいわ!もっとくっつくのよ!とにかくここでじっとしましょう!」
「わ、わかったわ・・・!」
「ゆぇぇん・・・みゃみゃ・・・きょわいよぉぉ・・・」
「だいじょうぶよ!くいーんがまもってくれるわ!」
そう、クイーンありすの周りにいる限りは決して当たりはしない。
そのかわり、逃げ場は何処にも無いのだが。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日の昼。
日はまた強く照りつけ、炎天下とも言える猛暑となっていた。
息をするのも苦しいほどの熱波がクイーンありすの群れを襲う。
「ゆひっ・・・!ゆひっ・・・!みゃみゃ・・・おみずしゃんがのみちゃいわぁぁ・・・」
「ゆはぁ・・・!ゆはぁ・・・!ゆっくり、ゆっくりがまんするのよ・・・おちびちゃん・・・!」
「あづい・・・あづいわぁぁ・・・」
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・」
「おぢびぢゃぁぁぁん!ゆゆ!ありずのかげにばいっでね!」
飲まず食わずで炎天下に釘づけにされたありす達は、異変を起こし始めるに至っていた。
息が浅く、早くなっていく。モチモチの小麦粉の皮が、カサカサに乾いていく。
親ありすは、子ありすの負担を何とか和らげようと、自身の陰に入れていた。
「みんな!ありすのかげにはいってね!」
クイーンありすに出来る大きな影に退避するありす達・・・
しかしカバーできる数は限られている。
何度も交代で変わるしかなかった。
(ゆぐ・・・でもあのうーぱっくだっていつかはあきらめるはずだわ・・・!みんな・・・!もうすこしのしんぼうよ・・・!)
決して疲れぬ鉄の「うーぱっく」はありす達の頭上を旋回し続ける・・・
「ゆゆ・・・!おちびちゃんがうまれるわ・・・!」
疲弊しきったあるありすの頭上に生えた蔓から、フルフルと蔓が落ちかけていた。
三つともありす種である。すぐにポトリと三つ落ちると、フルフルと震えだした。
「おちびちゃん!ゆっくりしていってね!」
・・・だが赤ありすは「ゆっくりしていってね」と返してくる事はなかった。
「ゆ・・・!ゆっきゅ・・・ち・・・!・・・!!・・・!」
「ゆっきゅ・・・~~~!!・・・!」
「ゆ・・・!ゆっきゅ・・・!!・・・!」
あまりにも陽射しに当たり過ぎたのだ、モチモチの小麦粉の皮がパサパサになり、うまく口を動かせない。
それどころか蔓から送られてきたなけなしの水分まで遮断されたとあっては、既に八方ふさがりだろう。
「おぢびぢゃん!?ゆっぐりじでいっでねっ!ぢゃんどいうのよ!ゆっぐり!ゆっぐりじでいっでね!ゆっぐり!どがいば!」
言える単語を叫び続けるが、赤ありす達は苦しそうに小麦粉の体をくねらせて、口をパクパクと動かしているだけだ。
さらに直射日光が当たり、下からは反射した日光の熱波が押し上げている。
本来赤ゆっくりは、涼しい快適な所にいなければならないのに、この環境はあまりにも過酷すぎた。
「ゅ・・・ひゅー・・・ゅっきゅ・・・ひゅー・・・」
「ゅひゅー・・・ゅひゅー・・・」
「ときゃ・・・ときゃい・・・ゆっきゅ・・・ゆひゅっ・・・ゆひゅっ・・・」
熱波で呼吸まで阻害され、赤ありすが小麦粉の体をくねらせてもがき苦しむ。
徐々に、徐々に動きが小さくなっていき、そして動かなくなった。
「ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!どがいばあああああああああ!!」
なけなしの水分を流して叫ぶありす。
今や、そこらかしこでこれと同じような事が立て続けに起きていた。
・・・またあるありす親子は、親ありすの方が先に弱っていく。
「ゆひっ・・・ゆはっ・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」
寒天の両目の視点もさだならぬまま宙空を見据え、小さくしか動かなくなったありす。
「みゃみゃ!ゆっきゅちちちぇえええええ!」
「ときゃいは!みゃみゃ!ときゃいはああああ!」
子ゆっくりと思わしき子ありす二体が、砂糖水の涙を流しながらすーりすーりを繰り返している。
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!べいぎ・・・よ・・・!ごれぐ・・・らい・・・ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・まま・・・は・・・なんども・・・ない・・・わ・・・」
「みゃみゃ!ちょっちぇもきゅるししょうぢゃわ!うしょちゅかにゃいぢぇね!」
「みゃみゃぁぁ!みゃみゃがげんきににゃりゅようにありしゅおうちゃをうちゃうわ!ぢゃから!ぢゃからげんきになっちぇぇぇ・・・!ちょかいはっ!ちょかいはーっ!」
・・・子ありす達は陰に隠れていたため比較的消耗はしなかった。
だが、子ありす達の為に影を作り続けた親ありすは、もうとっくに限界を超えていた。
「お・・・ぢび・・・ぢゃ・・・どがい・・・ば・・・な・・・ゆっぐり・・・に・・・な・・・ひゅー・・・ひゅー・・・」
「みゃみゃぁぁぁ!ゆっきゅりよくなっちぇぇぇ!ぺーろぺーろ!」
「ちょかいはーっ!みんなちょっちぇもちょかいはーっ!みゃみゃ!ゆっきゅり!ゆっきゅりよくなっちぇね!」
浅い呼吸が頻度が小さくなっていき、そしてありすはただのカピカピの乾いた饅頭となり果ててしまった。
「「みゃみゃあああああああああ・・・!!」」
子ありす達の叫びが轟く。
この日の夕暮れになる頃には、既に200体以上のありすが乾いた饅頭となり果てていた。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
さらにもう一日目の日が昇る。
この頃には熱波と、さらに何も食べていないと言う要因がクイーンありす達の群れに圧し掛かった。
・・・既に動く体力すらも無くなり、どれがまだゆっくりとしての機能を消失していないありすか見分けがつかない程に、やせ衰えている。
「ゆひゅー・・・ゆひゅー・・・あづいわぁぁ・・・おながずいだわぁぁ・・・」
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!ゅ”・・・!」
「ひゅー・・・ひゅー・・・」
クイーンありすはいまだ無事であったが、それはクイーンありすが「ドス種」であると言う特性の他ならない。
「みんな・・・!もうちょっとよ・・・!もうちょっとで・・・!ゆぅぅっ・・・!」
・・・クイーンありすもそろそろ限界であった。
何も摂取しなくても二カ月以上生きられるのは、森の中でと言う話だ。
こんな熱波と日射が降り注ぐこの場所では、その数字は当てにはならない。
皮肉にもクイーンありすの言った事は正しかった。
痺れを切らしたのはあの「うーぱっく」の方であった・・・
急降下して、あのうーぱっくがこれまで無い以上に肉薄する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「運が無かったな・・・」
胴付きまりさはそうつぶやくと、機体を降下させてクイーンをありすめがけて突っ込んでいった。
安全装置を指ではじき、ヘッドアップディスプレイに重なったクイーンありすに向けて、引き金を引く。
・・・轟音とともに、機関砲が火を噴いた。
「ゆぐがががががががっ!!」
四機編隊・・・つまり32門の機関砲をくらい、クイーンありすはあっという間に穴だらけになっていく。
頭上をあのうーぱっくがかすめ、再び降下してくる。
「ゆひゅー・・・!ゆひゅー・・・!みんな・・・は・・・あり・・・すが・・・まもる・・・わ・・・!」
再びうーぱっくの編隊が、火を吹いて突っ込んでくる。
「・・・ゆぎゅがぁぁぁぁっ!!!」
小麦粉の皮をカスタードクリームや砂糖細工の髪の毛ごと「削り取られ」て行く。
既に上部右半分はバラバラに吹き飛んでいた、それでもありす達の前から一歩も動かず盾になり続ける。
・・・三度目の降下音が響く。
クイーンありすは、がくりと項垂れた視界の先に、大小の石がある事に気がついた。
「ゆぐ・・・むぐ・・・っ・・・!」
最後の力を振り絞って、ありったけの石を口の中に入れる。
そして突っ込む「うーぱっく」に向けて、それを放った。
「ぶふううううううう・・・ゆばばばばばぁっ!!」
その直後、クイーンありすはその巨体の半分以上を削り取られ、前のめりに崩れ落ちた。
「うーぱっく」の幾つかが、煙を上げて飛んでいる。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
(もう少し・・・もう少しだけ持ってくれ・・・!)
煙を噴き上げてヨタヨタと飛ぶP-193を、何とか操縦しながら、滑走路への着陸をするために、降りていく。
最後のあのクイーンありすの攻撃で、一機が風防を割られバランスを崩して墜落した。
もう一機も、帰投途中でエンジンが爆発し、空で散った。
無事な一機が着陸した後に、胴付きまりさは何とかアプローチをしようと機体を操作する。
おりしも風が強く、ただでさえ止まりかけて出力の下がったエンジンが、気流を受けて左右にグラグラと動いている。
冷や汗どころの騒ぎではない。タガをはずしたかのように胸の鼓動が高まり、手足がカタカタと震えた。
気が狂いそうな緊張の中で、機体を水平に保ってフラップを降ろす。
地面に着く直前。胴付きまりさは自身のすぐ後方で何かが爆発する音を聞いた。
ガクンと落ちて行く感触。
機体が空中で爆発した。
・・・・・・
・・・
「肝が冷えたぜよ・・・全く」
加工所職員が心配そうに胴付きまりさを眺めた。
「もうダメかと思ったよ」
「危機一髪で間に合うなんてな・・・運がいいぜ全く」
もうもうと黒煙を上げる機体の残骸を、ブルドーザーがどかしているのを眺めて、胴付きが言った。
後ろから、整備員が声をかける。
「なんとか持ったみたいだな。よかったよかった」
「よくないよ、死にかけたんだぜ?」
「ちゃんと脱出装置を整備したワシに感謝するんだな」
「しかし暫くは、借用機で飛ばなきゃいけないなぁ」
「それだけしこたま稼いでるんだ。一日1000のレンタル代なんて安いもんだろう」
「一か月で幾らになると思ってるんだ」
二人と一体を沈む夕日が照らし出す。
命を預けた者たちの、しばしの交わりを照らす様に・・・