ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0510 僕と『あの子』とゴミ饅頭と
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ankoss
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最初に
・初投稿だよ!つたない文章でも大目に見てね!!
・かなり長いし、台詞が多いよ!時間と心に余裕のある人推奨だよ!!!
・虐待とは少し違うかもしれないよ!気をつけてね!!!
・感想や批判があると嬉しいよ!厳しい意見もあるとなおいいよ!!!
・作者は希少種が好きでたまらないよ!嫌いな人は気をつけてね!!!
・最後に、自己満足の塊ではありますがこれを呼んだ方々が
少しでも楽しんでいただけるならこの上なく嬉しいです。
それでは、ゆっくりしていってね!!!
――――――――――
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「どぼじでぇ…?どぼじでがわい゛い゛でいぶがこんな゛め゛にぃ……」
「でいぶのおぢびぢゃんがぁぁ……」
「おがーざぁん、おどーじゃ゛ぁん、だれがばでぃざざばをだずげるんだぜぇ゛……」
「ゆ゛っゆ゛ぐっ……ゆっぐちぃ………」
「ごんなはずじゃながっだのにぃ、ばでぃざはなんのだめに゛ぃ……
ゆっ゛っゆ゛っゆ゛がぁ……」
「ゆっ…くち……できにゃい…よ……ぉ…」
僕の目の前に転がって、ずたぼろな風体でなにやら呟いている汚い7つの饅頭。
サッカーボール大のものが二つ、テニスボールくらいのが3つ。
そしてピンポン玉ぐらいの大きさのが2つだ。
饅頭には黒い帽子をかぶった金髪おさげと紅白のリボンをつけ、もみあげ(?)
をぶらさげた黒髪の二種類がいる。
ちなみにこの饅頭のもみあげ、何故かわさわさ動く。すこぶるキモい。
この汚い饅頭は、かつてゆっくりと呼ばれた動く不思議饅頭だ。
その昔どこからともなく現れたこいつらは、生物学界に
一大旋風を巻き起こしたり、人々のペットとして一時期流行したりと
紆余曲折を経て、今ではただの害虫というポジションに収まっている。
昔はこいつらも害虫と呼ばれるほどの厄介な存在では
なかったらしいが、まあそれは今話すようなことでもないだろう。
とにかく、現代におけるゆっくりの定義は
「ペットショップで売られている、バッジ付きのもの。」
「加工所産の虐待用のもの。」
「希少種。」
以上にあてはまる物のみらしい。
それ以外の野良なんかは問答無用で害虫として、駆除を条例で義務付けられている。
別にそれを疑問に思う者も、不満に思う者も居ない。
割と昔からこれらの認識が成されていて専門の駆除業者までいる現代において、
人々のこいつらへの認識はゴキブリなんかとそう変わらないんだろう。
さて、先程の言い方で気付いただろうか。目の前のこいつらは「ゆっくり」ではない。
つまり虐待用などではなく、このご時世に珍しい野良饅頭の方だ。
ズタボロなのは一部僕がやったからだけど、それ以外と、外見が汚いのは元からだ。
よくもまあこの厳しい世の中でここまで大量に繁殖できたものだと
見つけたときは思わず感心してしまい「どぼじで…?」そ……うん?
「どぼじでごんな゛ごどにな゛っだのぉ゛……?」
でかい紅白饅頭がこっちに向かって呻いている。
まあ大体言おうとしていることは想像がつくが、一応聞いてみるか。
「何か言ったかい?」
「でいぶだぢはがわいぞう゛なんだよぉ…
やさじぐしな゛きゃいげない゛んだよぉ……」
「まりちゃたちにいちゃいことちないでぇ…」
「ゆっ…くち……させちぇ……」
「さあ?たまには自分で考えてみれば?僕に聞かれてもねー。」
やれやれ、それぐらいしか言うことが思いつかないのかなぁ?
予想の斜め下を行く常套文句に、
相も変わらず貧弱な語彙力だなぁと呆れながら饅頭の訴えを適当に聞き流す。
そもそも何故こんなことになっているかをもう忘れているのだろうか?
まあ忘れてるかもなぁ。それが餡子脳ってやつらしいし。
まだそんなにあれから時間は経ってないんだけど―――――
――――約1時間前、家への帰り道――――
正午、ぽつぽつと降り始めた雨の中。
みんな天気予報を見て家にこもっているのか、人気のない住宅街を僕は走っていた。
「あぁ、嘘だろ?降ってきちゃったよ……
やっぱりさっさと決めて帰ってくればよかったなぁ…
でもできるだけ上手いもの食べさせてやりたいし、仕方ないよな……」
午後から雨が降ると天気予報で聞いた僕は、少し早いけど夕食の支度のため
近くのスーパーまで買い物に出かけていた。
さっさと終わらせて帰ろうと思っていたのだが
献立に迷った挙句大目に買い込んで時間を浪費した結果がこれだよ!
でも家族の分もあるし、ついつい凝りたくなってしまうのだ。
そこら辺の気持ちはわかってほしい。
おまけに、近いからといって調子に乗って
迂闊にも傘を持っていかなかった結果がこの様だが、
走れば割とすぐのところに自宅がある。そう問題はないだろう。
「くそっ、午後からって言ってたくせにわざわざ示し合わせたように今降らなくてもさ。
誰か僕に恨みでもあるのか?いっつもそうなんだよなぁ。」
などとブツブツ言いながら走る僕。
もし通りすがりの人が見たら妙な視線を向けられそうだが、
流石に周りに人がいるか、いないかでわきまえるくらいの常識は持っている。
あぁ…雨が強くなってきた……
「そもそも天気予報ってのはさ……ん?なんだ、あれ。
まさか……」
もうすぐ家に着こうかという所まで走ってきたそのとき
僕の家の門の向こうから何か騒がしい声が聞こえた。
泥棒ならこんなに大勢で、しかも玄関の前で話し込んだりはしないはずだ。
それに、このなんとなく癇に障る声。こんな声が出せるやつといえば
おそらく十中八九あれしかないだろう。
「やっぱりか……」
「ゆーん…つめたくてゆっくりできないよ……」
「おかーさん。れいむさむいよぉ…」
「ゆ?にんげんさんだ!!おかーさん、にんげんさんだよ!!!」
「ほんとだね!にんげんさん、れいむたちはわるいゆっくりじゃないよ!!
すこしあまやどりさせてもらってるだけだよ!!」
「そうだよ!あめさんはゆっくりできないから
まりさたち、すこしここをかりてるんだよ!!りかいしてね!!!」
「「りかいしちぇね!!!」」
やっぱりゴミ饅頭か。
どこかのスライムみたいな事を言いおってからに。
大きさと言動から見るにどうやら家族らしく、紅白が親1、子1、赤1で
白黒が親1、子2、赤1の割合だ。
体から飾りまで何もかもが汚らしく、少し生ゴミのような腐臭がする。
正に教科書に"これが害虫饅頭だ!"と乗せるのにピッタリなゴミっぷりだ。
きっと印象操作の効果も抜群になることだろう。
しかし、えらく暢気にしてるけど人間の前に出てきた以上は
生きて帰れないといい加減学習してもいいはずなんだけどなぁ……
まあこいつらが雨に濡れると困るのは本当だ。
なんせ饅頭だし。少し強めの雨でも命取りだ。
「で、なんで僕の家の前で雨宿りしてるんだ?
雨が怖いなら自分達の巣に帰ればいいだろう。
人間に見つかったら潰されるって、わかんないのか?」
すると僕の問いにでかい白黒が(饅頭にしては)礼儀正しく答えた。
「ゆぅ……それはもちろんわかってるよ。
でも、まりさたちのおうちはここからとおすぎて
おちびちゃんたちがえいえんにゆっくりしちゃうんだよ。
だからにんげんさんはこわいけどここにいさせてもらってたんだよ……」
「おとーさんをおこらないでね!
おとーさんたちはれいむやいもうとたちのごはんさんをとるために
いっしょうけんめいがんばってたんだよ!!!」
「そうだよ!さいきんごはんさんがすくないから
みんなでがんばってここまできたんだよ!」
「おとーさん、だいじょうぶだよ!
みんなでがんばればきっとたくさんごはんさんみつかるよ!
まりさたちもがんばるからあきらめないでね!!」
「おちびちゃんたち……
まりさは……おとーさんはうれしいよ……
まりさげんきがでたよ!!!みんなでがんばろうね!!!」
「おかーしゃん。れーみゅおなかすいちゃよぉ……」
「まっててねおちびちゃんたち。
あめさんあがったらごはんさがそうね。
いっぱいみんなでむーしゃむーしゃしようね。」
「ほんちょ…?まりしゃもいっぱいむーちゃむーちゃできりゅの……?」
「きっとできるよ!みんなでがんばってごはんさんあつめるから
れいむのおちびちゃんたちもがんばっておうえんしてね!!!」
「ゆっ!れーみゅ(まりちゃ)いいこだからがんばりゅよ!!!」
で、何時までこの三文芝居を観てればいいのだろうか。
冷めた目で饅頭達を見下ろしながら、僕はうんざりしていた。
しかし、それはともかくこいつらなかなか頭はいいほうらしい。
いずれにせよ見つけてしまったことだし、このまま家に居ても
夕食の仕込みくらいしかすることはない。
せっかくの機会だ。
今日の午後の予定は変更しよう。
一通り考え終わった僕は、目の前の饅頭達に優しげに告げた。
「なあ。お前達にそこに居られても
僕が家に入れないし、雨も結構強くなってきたし
玄関先で騒がれるのも迷惑なんだ。
良かったら僕の家に入らないか?」
「ゆっ!?いいの?
にんげんさんたちにめいわくかけるつもりはないけど
れいむたちじゃまにならない?」
「ああ。雨が降ってる間だけならかまわないよ。
お前達がそのつもりならね。」
「おかーさん!にんげんさんのおうちにはいれるの?」
「いいの?にんげんさん!ありがとー!」
「「やっちゃー!やっちゃー!!」」
「でもおにいさん、れいむたちおうちよごしちゃうかもしれないし、
もしそうなっておにいさんがおこっておいだされたられいむたち
いくところがなくなってみんなえいえんにゆっくりしちゃうよ…」
「ああ。それくらいのことはわかってるって。別に家が汚れたくらいで
怒ったりはしないさ。雨宿り程度の間くらい我慢できないわけでもないし。
何なら、約束だ。お互いにさ。」
「ゆぅ、れいむしってるよ!
やくそくはまもらなきゃゆっくりできないんだよね!
やくそくするならだいじょうぶかなあ。
まりさどうしよっか?」
「ゆぅ……しかたないね。じゃあにんげんさん、
おうちにあまやどりさせてもらうね!
あめがあがったらでていくから
それまではゆっくりさせてもらうね!!!」
「ああ、かまわない。
安心しなよ。僕は絶対に約束は守るから。
そのかわりお前達も、ね。」
「もちろんだよ!
れいむたちもちゃんとやくそくはまもるよ!!!
いいこにしてるよ!!!」
――――やっぱり。予想通り――――
渋々といった感じのでかい白黒に微笑みかけながら、僕は家の鍵を空けた。
―――さあ、楽しくなりそうだ。
――――――――――
「ゆわぁ~、すごいね!!これがにんげんさんのおうちなんだね!!!」
「すっごくおっきいし、なんだかあったかいね!!!」
「そうだね!ここならあめなんかへっちゃらだね!!!」
「ここならゆっくちできゆね!!!」
「よかったね!おちびちゃんたち!!!」
あれこれと騒ぐ饅頭達を尻目に僕はあいつらを家に上げるためにタオルを取りに行った。
僕はあんな汚い饅頭触りたくもないし、だからといってあの風体で廊下を跳ね回られても困るからだ。
それにあいつらがいる間の部屋も用意しなくちゃならない。
とは言ってもあの部屋には何もないし、それには時間はかからないのだけれど。
勿論、今お昼寝中の「あの子」を起こすなど論外だ。
それだけは、断じてあってはならない。
「あの子」は繊細なのだ。
あんなゴミ饅頭の声など絶対に聞かせられない。
色々と考えながら、僕はバスタオルを数枚持って玄関に戻った。
「おい、ここにタオルを敷くから順番にこれに乗って
足の汚れを落とすんだぞ。」
「ゆっ!ゆっくりりかいしたよ!!」
「わかったよ!」
「うわぁ~、ふかふかだよ!れいむこんなのはじめて!!」
「まりさにもやらせるんだぜ!!」
「おちびちゃん!!!!……にんげんさんはじゅんばんにっていってるよ。
じゅんばんはまもろうね!」
「そうだよ。おかーさんのいうことちゃんときこうね!!」
タオルの上で跳ねながら騒いでいる饅頭を見ながら笑う僕。
実際今とても愉快な気分だ。遊園地のアトラクション前の行列に並んでいるときの気持ち。
あれに近いものがある。
「さあ、おわったか?ならそこで待っててくれ。
このタオルを片付けたら、部屋まで案内しよう。
僕が戻るまでそこら辺をうろうろしないようにね。」
「「「「「「「ゆっくり(ち)りかいした(ちゃ)よ!!!」」」」」」」
黒ずんで、ゴミのような臭いを発するタオルに顔をしかめた僕は、
それを急いで洗濯機にかけ、戻って饅頭達を部屋へと案内した。
ドアを開けると、そこには何もなかった。
テレビも、テーブルも、イスもベッドも一切何もなかった。
窓は上の方に天窓のようなものがいくつかあるだけ。
他はガラスとは違った少しツルツルした壁と
一枚板のように滑らかな床。
しばらく使われていなかったので少し湿っぽいというか、埃っぽい感じがするが
そんなことは饅頭達にとっては関係がなかったようだ。
「ゆわぁ~、すごいよ!ここがれいむたちの………」
「おちびちゃん!!!!……よかったね。ここもとってもひろいね!」
「ほんとだね!とってもひろいね!それになんだかつるつるするよ!!」
「きょんにゃにひろいおへやみちゃこちょないよ!!」
「ゆ~♪ゆっくりできるね~♪」
「ゆっくち♪ゆっくち♪」
「おちびちゃんたち!あんまりはしゃぐとあぶないよ!!!」
ニコニコしながらはしゃぎまわるチビ饅頭達とそれを見て笑うでかい饅頭。
僕は何をするでもなくその様子をじっと見ていた。
しばらくするとはしゃぐのにも飽きたのか、饅頭達は集まってこそこそと話し合っていた。
まあそのつもりなのはむこうだけで、実際は声の調節ができてないせいで丸聞こえなんだけど。
それを見て、今度は僕が笑顔になる。
ようやく開幕だ。
「ここならだいじょうぶそうだね!」
「うん!れいむきにいったよ!!」
「しー、きこえちゃうよ!!」
「じゃあきまりでいいね!」
「うん!!」
「たのちみだにぇ!!」
「ゆっくち~♪」
「「「「「「「せーの!!!」」」」」」」
どうやら話がまとまったらしい。
饅頭達は一斉にあさっての方向を向き、声をそろえて叫んだ。
「「「「「「「れいむ(まりさ)たちはここがきにいったよ!!!
ここをれいむ(まりさ)たちのおうちに「駄目に決まってるだろ?馬鹿か、お前ら。」 ゆっ!!?」」」」」」」
――――ほら、本性を出した。
いきなりおうち宣言をかまそうとした饅頭達の言葉を拒否で遮ってやる。
予想もしなかった僕の言葉に、一斉に固まって素の馬鹿面をさらすゴミ饅頭。
これを見れただけで汚れてしまったタオル分くらいはスッキリできるというものだ。
一方、驚きから醒めた饅頭達は信じられないと言わんばかりにうろたえていた。
「な゛んでぇぇぇぇぇぇぇ!?どおじでだめなんでいう゛の゛ぉぉぉぉぉぉ!!?」
「どういうごどなんだぜぇ!?おうちせんげんがしっぱいしたのぜ!!?」
「おかーしゃんなんで?ここおうちになるんじゃなかったのぉ!?」
「「おかーしゃんのうそちゅき!!」」
「おぢびちゃん、どぼじでぞんなごど(以下略」
どうやら本気で成功するものだと思ってたらしい。
こんなゴミ饅頭達の計画なぞ聞かずとも分かるが
こんなことをするに踏み切った理由も含めて一応聞いておこうか。
「あー、お前ら。騒ぐのは勝手だけどさ、僕の質問にも答えてくれない?」
「もどはどいえば、ばりざがわるい゛んでじょぉぉぉぉ!!
だいじょうぶだっでいっだの゛に゛ぃぃぃぃ!!!」
「「「おどーざんのばがぁぁぁ!!!」」」
「う゛あぁぁぁ!ばり゛ざざまをばがにずるどゆるざないんだぜぇぇぇ!!!」
だめだ、聞いちゃいない。
と言うか、こんな状況で家族同士で罪のなすりつけ合いって……真性の馬鹿だな、こいつら。
やっぱり醜いのは見た目だけじゃないみたいだ。
まあそれはともかく、このまま話が進まないのも困る。
別に向こうの都合なんか知ったことじゃないし。
「うそつきのおとーさんなんかゆっく「おーい!」ぴぃ!?」
「おちびっ………」
「あ、しまった。加減間違えたかな……」
でかい白黒を罵るのに熱中していたチビ白黒を軽く壁に蹴り飛ばす。
妙な声を上げて飛んだチビ白黒はバウンドせず
壁にべチャリとぶつかって地面に落ちた。
でかい紅白のほうは言葉も出ないようだ。
でかい白黒の方はそれを見ていいザマだと笑っている。なんなんだ、こいつら。
蹴られたチビは餡子を少し、尻と口から出しながら「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
と妙なうめき声を上げているがどうやらまだ大丈夫そうだ。
にしても、本当にきったないなあ。
昔使っていた運動靴を履いておいて正解だった。
あいつら凄く汚い。つま先部分がドロドロになっちゃったよ。なんか臭うし。
「あー、よかった。やっぱり加工所の子まりさと比べるとデリケートだよなぁ。
なかなか慣れないや。次は気をつけよ。」
「おぢびぢゃぁぁぁぁん゛!!!」
「れいみゅのおねぇしゃんがぁぁぁ!!」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁぁぁ!!」チョロチョロ
「「ばりざぁぁぁぁ!!ゆ゛っぐりしでぇぇぇぇぇ!!」」
「はいはい!騒ぐのはいいからさ、いい加減こっちの話聞いてくんないかなぁ?
わざわざ痛い目見たくないでしょ?」
「ゆっ!?なんだぜ?あのばかをせいさいするとはぐずなにんげんにしては
なかなか「はい、答える気無いなら黙っててねー。」ゆびぃ!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのばりざがぁぁぁぁ!!!」
「「おとーしゃぁぁぁぁぁぁん!!!」」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!いだいよおおおおおお!!
ばりざざまをだず「うるさいって。」ぶげぇ!!!」
「ばでぃざぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛!!!」
くだらないことをほざくでかい饅頭を潰れない程度に蹴飛ばして(馬鹿って、一応自分の子だろ?それ……)
まだうるさいので追い討ちをかけて黙らせた後、騒ぐほかの饅頭に対して一応警告しておく。
「いいから黙れって。
これから意味なく騒ぐやつや乱暴な言葉を使ったやつは
言ったことに応じて蹴るなり踏むなりするから。
まあ約束事みたいなもんさ。
理解したら黙って僕の質問に答えてほしいんだけど?」
「「「「「ゆっぐり(ち)りがいし(ち)まじだ!!!」」」」」
心底どうでもよさそうな男の口調を読み取り、
言葉とは裏腹にれいむたちは即座に理解した。
この人間は本当に、こちらの事など全く気にせずに痛めつけようとするだろうと。
それこそ、お前達など死のうがどうでもいいとばかりに。
ならばここはおとなしくしておこう。
そうして少しでもゆっくり逃げれる方法を探そうと
れいむたちは考えた。
まあそれを狙っての話だったのだから、そう思うのは当然なのだが。
「はい、よろしい。今後ともその調子でね。
さて、まず最初に。お前達はどうしたかったんだ?
何故こんなことを思いついて、何が欲しかったんだ?
そこのでかいの。答えろ。」
「でいぶだぢはおうぢをどら「もう少しちゃんと喋ってくれない?」はい゛ぃぃぃ!!!」
「……れいむたちはおうちをとられちゃったんだよ。
いきなりたくさんのまりさやありすがやってきて、
ここはれいむたちにはもったいないからつかってやるって
そういってれいむたちあっというまにおいだされちゃったんだよ。
それからまりさとどうしようかってはなしてたら、
まりさにいいかんがえがあるって……」
「ふーん。それで?」
「まりさはにんげんのおうちをもらおうっていったんだよ。
にんげんはたくさんおうちをもってるから
そのうちのひとつをもらっちゃおうって。
いえにいれてくれるようなあまいにんげんなららくしょうだって。
みつかったらなにをいってもれいむたちみんな
ぜったいえいえんにゆっくりさせられちゃうよってれいむはいったのに、
いざとなったらおちびちゃんのかわいさでなんとかなるって……」
「で、お前もまんまと乗せられたってわけかい。」
「はいぃ……」
「で、家族総出で子供にも必死になって演技を叩き込んで
善良なゆっくりの真似して
隙を突いて部屋一つ奪って
あわよくば飼ってもらおうと
人を騙そうとした挙句、その結果がこれだよってわけね…」
「ゆっ!?な…なんで……」
「なんでわがっだんだぜ!?ばりざのけいがぐはがんべきだっだはずなんだぜ!?」
「まりさ!」
「「「「おとーさ(しゃ)ん!!」」」」
おっ、もう起きたのか。
たしかに潰すつもりはなかったけど、どうやら今度は蹴りが弱すぎたらしい。
やっぱり難しいな……まあいいか、別に困るわけでもなし。
次がある次がある。
それはともかく何でって、本気で言ってるのか?こいつ………
「何でって…バレバレだって。
っていうか完璧じゃないし。穴だらけだし。」
「ゆぐぅ…じゃあどこからきがついたんだぜ?
ばかなにんげんなんかにわかるような……」
「はぁ…何度も加減して蹴るのも面倒なんだけどなぁ。」ボソッ
「っ!!?ごめんなざい!ごめんなざい゛!!
ばりさちゃんとじゃべりまずがら!!もうけらないでぐだざいぃ!!
いだいのいやだぁぁぁぁ!!!」
一家の主の貫禄も何もないな、こいつ。
まあ実の子を馬鹿呼ばわりする時点で、そんなもの無いか……
とりあえずやっぱり理解が早い分、頭は悪くないみたいだけど。
「で、 な ん だ っ て ?」
「はい゛…まりざのけいがぐは、いづがらわがっでたんでずか……」
「ちゃんと喋ろうなー。僕そういうのキチッとしないと気が済まないからさ。
…まあいいや。何時からと聞かれるなら、お前達と話したときから。
早い話が最初からだな。」
「うぞ……」
信じられないといった顔をするでかい饅頭を笑いながら僕は続けた。
「嘘じゃないって。言っただろ?バレバレだって。」
「なんで?なんでわかったの??」
まりさはわからなかった。どうしてこんなにも簡単に人間にバレてしまったのか。
あんなにも必死に人間に飼われてるゆっくりを影から観察して
良いゆっくりがどんなものなのかを研究して
子供にも演技を教え込んだのに。
人間のおうちを手に入れて、あのまりさたちのおうちをブン盗った
野蛮なゲスどもを見返してやろうと思ってたのに。
あいつらは暴力だけしか能がない。まりさはあんなやつらよりも
ずっと頭が良くてすごいってところを見せてやろうと思ってたのに。
……まさかあのチビどもが、あの馬鹿な役立たずどもが途中で口を滑らせたせいで!?
だとしたら許せない。まりさの完璧な「言っとくけど演技は関係ないぞー。」
……え?
またもや、何故わかった?と言いたげな顔をするでかい饅頭。
やっぱりそうか。面白いくらいに短絡的な思考回路だ。
「お前あれだろ?どうせ悪いのは自分の計画云々じゃなく子供が~とか思ってたんだろ?
そんなわけないって。たしかにチビも途中でボロ出して、それをお前達が
必死にたしなめようとしてさ。思わず吹き出しそうになって危なかったけど
別にそれのせいじゃないって。第一あれは家に入ってからだろ?
全然最初からじゃないだろうに。」
ゴミ饅頭達は相変わらず、なら何故なんだ、といった顔をしている。
いつの間にか聞き入っていたチビたちは話に付いてこれてるのだろうか?
まあいくら頭がいいといっても野良の餡子脳ならここらへんが限界かもね。
それじゃあ回答編と行きますか。まあホントに大したことじゃないんだけど、さ。
「はぁ…じゃあ、なにが悪いのか教えてやろうか?
正直お前の計画、演技の話だけど。
あれは割と良くできてたよ。ボケたお年寄りや、底抜けのお人よしなら
少しくらいは騙せたかもね。」
「ゆっ。な、なら……」
「でも予選はその程度だし、その他は最悪。
まずお前の計画だけどさ。
お前達は善良ぶって油断させたところで
いきなりおうち宣言かまして、反論させずに
おうち宣言を成立させようとしたんだろ?」
こいつらの言う「おうちせんげん」とは
よその家で、ここは自分の家だと宣言して
反応が返ってこなければ所有権が
宣言を行なった方に移るという
わけのわからない決まりのことだ。
宣言が成功すれば、元の持ち主がいくら文句を言ったところで
それが覆ることは絶対にないし、無理矢理取り返そうとするのも許されない。
正に不条理な、不思議饅頭らしい決まりごとだと思う。
しかし、こいつらの巣が宣言関係なく
無理矢理とられたことからもわかるように
今のゴミ饅頭達にはもうとっくにそんな風習無くなっていた
ものだと思っていたんだけど。
まあ自分達より強い人間から家を奪い取るには
これくらいしか方法がなかったのだろう。
「そうだよ!
でもなんでおうちせんげんするってわかったの?」
「とりあえずそれは後で話すとしてさ。
お前根本的な部分間違えてるよ。」
「ゆ?」
「つまりさ、お前達ゴミ饅頭同士ならともかく
人間相手じゃおうち宣言のルールは適応されないってこと。」
「ゆっ!?そ、そんなのずるいよ!」
「お前達のルールなんて知らないよ。
お前達だって、人間の都合なんてどうでもいいだろ?
とにかく、お前達の間ならともかく
人間にとって、お前達がおうち宣言をしようが何しようが関係ないんだって。
つまり、お前が宣言を成功させてもさせなくても
人間が気に入らなければお前達は潰されるしかなかったってわけさ。」
「ぞんなぁ・・・・・・じゃあ゛ばりざはなんのだめ゛に・・・・・・・・・」
「それは知らないけど、
全くの無駄足だったってことだけは確かだね。
いや、そうでもないか。
何せわざわざ潰されに来たようなものなんだし。」
今頃になって打ちひしがれるゴミ饅頭。
本当にこいつ頭が良いのか悪いのかわからないな。
とりあえず話は聞こえてるだろうし、サクサク行こう。
「それで、次に何でお前がゲスだってわかったのかって話だ。
こいつの問題はさ、お前らの習性にあるんだよ。
ゲス口調やおうち宣言がうっかり出ちゃうとか
それ以前の問題でね?
簡単に言うとさ、おまえら
"ゆっくり"じゃないんだよ。」
「「「「「「ゆ!?
……………ゆ゛あぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁ!!ふざ(じゃ)けるな゛ぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」」」」」」
僕の言葉に、さっきまでへこんでいたゴミ饅頭達は
一斉に明らかな反感を持って騒ぎ出した。
それはそうだろう。
自分達はゆっくりだ。
自分達はゆっくりしてる。
そういった"勘違い"はこのゴミ饅頭達の数少ないアイデンティティのひとつだ。
それをこうも真っ向から否定されては黙っていられないだろう。
「ふざけたこといわないでね!!れいむたちはどうみてもゆっくりしてるよ!!」
「そうだよ!ゆっくりしてないにんげんなんかにいわれたくないよ!!」
「まりさたちがいつまでもだまってるとおもったらおおまちがいなんだぜ!!!」
「しょうだしょうだ!!にんげんにゃんかに ぴぎぃ!!!」
「「「「「!!!?」」」」」
「はぁ…、何度言わせればわかるのかな。騒ぐと踏むって言ったよね?
覚えてないか。餡子脳だもんね。」
ギャーギャーと騒ぎたてるゴミ饅頭達にうんざりした僕は
今度は警告なしに一番小さいチビ紅白を踏んだ。
勿論まともに踏めばそれだけであっさりと潰れてしまうので
片方のもみ上げの根元を踏みちぎっただけだけど(意外とあっさり千切れた。小さいうちは脆いらしい)。
それでも効果は抜群だったらしい。
チビチビ紅白はもがき呻きながら、開いたところから少しずつ餡子を漏らしている。絶妙な加減だ。
もしかしたら僕は蹴るよりも踏む方が上手いのかもしれない。
次からは踏んでみようか?
試しに――――
「ゆ?なにするの!?おもい!おもいよ!やめてね!!まりさつぶれちゃう!!
あんこでぢゃうぅ゛ぅ!!おかーさん!たすけげぇ゛ぇぇ゛!!!!」
さっき、何時までも黙っていると思ったらどうのとか言っていたチビ白黒を踏んでみた。
よし、大体予想通りに潰れた! やっぱりこっちの方がいいかな。
踏み潰したチビ白黒は両目が飛び出て、口と穴が開いた目から餡子を出しながら
そんな状態になってもまだ弱弱しい声で、見えない誰かに助けを求めていた。
そんな饅頭には構わず、目の前の惨劇を見て一斉に固まった
ゴミ饅頭達に、僕は告げた。
「後は誰と誰と誰と誰が騒いでたっけ?
ついでだし潰れとく?」
僕の問いに一番のチビも含めた全部の饅頭が器用にも横に首を振る。
普通なら助けを呼ぶ目無し饅頭に反応するのだろうが
ようやく僕の警告を思い出したのか、どいつも黙って
怯えた目でこちらを見ていた。やはりこういう事に関しては聞き分けがいい。
「さて……何の話だったっけ?
そうそう、お前達がゆっくりじゃないって話。
……何だい?まだ何か言いたいことあるかい?」
「「「「ありませ(しぇ)ん……」」」」
「そう。じゃあいちいち反応しないでね。
用も無いのにそうやってピクピク意味ありげに動かれちゃ
思わず踏んで黙らせちゃうかもしれないから。」
「「「「ゆっくり(ち)りかいし(ち)ました……」」」」
「はい、よろしい。
で、その根拠なんだけどさ。
ちょっと長い話になるから餡子脳全開にして聴いておくようにね。
昔々、お前達の親の親の………まあお前達じゃ到底わからないくらい前の
お前達のご先祖様はさ、自分も、他の皆もゆっくりすることが全てだって、
そう思ってたらしいんだ。
その証拠に誰にでも「ゆっくりしていってね!!!」
って挨拶をしてたらしいよ?
それこそ人間にも、虫にも、花にも、太陽にさえも。
で、ご先祖様は誰かにゆっくりしてもらうことで、自分達がゆっくりさせることで
自分達もゆっくりしようって考えてたわけだ。
彼女達の誰かを"ゆっくりさせる"ことに対する執着は
凄いものがあったそうだよ。
実際にお前達のご先祖様はすばらしいゆっくりっぷりだったらしいね。
彼女達のおかげで彼女達だけでなく、皆が皆すごくゆっくりできてたんだってさ。
で、そこからどう捻じ曲がったのかは知らないけど、
その終着点の一つがお前たちだ。
お前達はどうだ?家族身内以外の誰かに
ゆっくりしてもらおうなんて考えたことはあるかい?
ないだろうね。
それどころか、最悪自分さえ良ければいいと思ってるだろ?
どうした?きちんとした反論があるなら言っていいよ?
……ない、だろうねぇ。
わかったかい?お前達は所詮その程度なのさ。
自分が"ゆっくりする"ことだけに精一杯。それだけで手一杯。
いや、それすらもできないというのに明らかに自分には手の届かないものを欲しがる。
今回の件だって、どうせ家を盗られた腹いせだろ。違うかい?
……当たってるみたいだね。
これでわかったかい?
お前達の考えてることなんて丸わかりなんだよ。
少し考えればお前達のちっぽけな見栄で得られるものなんか
何も無いってことに気付けると思うんだけど。
なのに、何でわざわざ命を粗末にして痛い目にあいに来るのかなぁ。
こればっかりは全くわからないよ。
餡子脳、永遠の研究課題ってやつ?
で、さ。
お前達がいくら上手く演技をしようと簡単に、どうしようもないゲスだって
見抜ける方法、教えてあげようか。
なに?聞きたくない?そういうなよ、あれだけ聞きたがってたじゃないか。
それはね、
おまえたち、相手をゆっくりさせようとする言葉を一切言わないんだよ。
全くもって、簡単なものだよ。
なにせ最初から「ゆっくりしていってね!!!」の一言も無いんだから。
この挨拶はお前達の基本みたいなものだろ?
なのにそれが全く無きゃ今のご時世、誰だっておかしいと思うさ。
それどころか、僕が家に入れてあげようって言ったとき、
感謝の言葉の一つすら無かったもんね。
善良な饅頭気取るなら当然あるべき一言だよね?
なのにそれすらも言わないって事は、もう決定的だよね。
ある意味徹底してるなって思わず笑っちゃったよ。」
これだけを言い切る間、ずっと黙ってゴミ饅頭達は聞いていた。
と、言うより一部の饅頭を除き理解が追いつかないみたいだ。
そして言い切ってしばらく経った後、プルプル震えていたでかい白黒が
感情の向くままにぶちまけようとしたのか
変な液体でぐしゃぐしゃになった醜い顔を上げ、口を開いた。
まだこっちの話は終わってないんだけど。
「うるさいんだぜぇぇ!!まりさは…まりさは……」
「わかってるよ。そんなこと思いつきもしなかったんだろ?」
「………ゆ?ち…ちが」
「そうだろうね。あれだけ綿密に計画を立てたっていうのにそんなこと、
そんな基本的なことも思いつきやしなかった。
いつも家族には忘れずに言っていた一言。
いつも自分の心の真ん中にあった一言。
その言葉を、最も言うべきである"他人"に、
その一言が、お前達にとってもっとも相応しいだろう"他人"に言うことを思いつかなかったんだろ?
流石だね、真のゲスじゃないとそこまでにはならないよ。
僕はさ、お前達が考えている、お前達にとっての"ゆっくり"がなんなのか
なんて知らないよ。
でもお前達の根源的な部分をお前達が自ら捨て去った時点で、
―――――お前達はゆっくりなんかじゃない。ただのゴミ饅頭なのさ。
……ってね。
これで僕の説明はおしまい。これを抑えておけば、誰でもゲスを見破ることができるってわけ。
どう?わからないところとか、言いたいこと、ある?
あるなら質問受け付けるけど。」
まりさは震えていた。
―――自身の根源的な部分を否定されたから?
それもある。
―――己が絶対的に自信を持っていた作戦が、あっさりと穴を付かれて見抜かれてしまったたから?
それもある。
しかし何より衝撃的だったのは、それらを突きつけられて
一言もまともに言い返すことができない、ということである。
言い返すことができないということは、それが事実だと認めるということ。
中途半端に頭のいいまりさには、それがわかってしまうのが何よりも辛かった。
そして
――――アノニンゲンノイウコトガジジツナラ、ジブンハイッタイナンダトイウノカ?
ワカラナイ、ワカラナイ。
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
「ゆ……ゆ゛………ゆっくりー!ゆっくりー!ゆっぐり゛ぃ゛!!!」
「「おとーさ(しゃ)ん……?おとーさ(しゃ)ん!おとーさ(しゃ)ん!!」」
「ばり゛ざぁぁぁぁぁぁ!!ばぁでぃ゛ざぁぁぁぁぁぁぁ!!!
じっがりじでぇ゛ぇぇ゛ぇぇ゛ぇ゛!!!」
予想通り、精神が壊れそうになったでかい白黒を蹴り飛ばして無理やり引き止める。
少々強めに蹴り飛ばしたせいで胴体に大きな穴が開いて、餡子が飛び出た片目や
開いた穴とかから割と沢山漏れ出てるが、ちゃんと痛がっているので壊れてはいないようだ。
よってそれほど気にすることは無い。
何故なら、この時点で僕の仕込みは八割方終わっているのだが、
逆を言えばここからが仕上げだからだ。
こんなところで壊れられた方がよっぽど(消化不良で僕が)困る。
他のゴミ饅頭達も話を聞いて呆然としていたのか、全く動かなかったが、
でかい白黒の重体姿を見て意識を引き戻されたらしい。
警告も忘れて騒ぎ立てている。腐っても家族ということだろうか。
さて、ここまできたら、もう五体(?)無事なやつを残しておく意味も無いんだよなぁ。
警告も無視したことだし、さっさと全部瀕死状態になってもらいますか!
僕は別に体を痛めつけるのには興味ないし、ちゃっちゃと済ませてしまおう。
ていっ!!
「おどーざゆ゛ゅ゛ん!!!」
「おねーしゃん!?たしゅけぢぶぇ゛!!!」
「ま、までぃざ…おじび……
や…やめてね……やめてね!やだ!やだ!やだやだやだぁ!!
こっちごないでぇ!!でいぶじにだくなぁあ゛!!!」
だから潰さないってば。………今はね。
――――――――――
――――ってな具合で現在に至るってわけ。
さて、先程まで今にも息絶えそうなゴミ饅頭ではあったけど
ちゃんと加減はしたので、一応ほぼ全員が会話が可能なくらいまで回復してる。
その上で、代表のでかい白黒に聞いてみた。
「そういえば聞いておきたいことがもう一つだけあってさ。
いや、むしろこれが本命かな。どうしても解らないんだよねー。」
「……っ…っゆ゛……?」
息も絶え絶えな状態でありながらもおとなしく聞く姿勢になるゴミ饅頭。
「お前達……というよりも、お前さ。
何で数ある家の中から、僕を選んだんだ?
僕の家は別にそこまで豪邸ってわけでもないし、
僕は誰にでも優しさを振りまくほど心が広いわけでもない。
選ぶならもっと相応しい人は一杯いたはずだ。
なのにどうして僕だったんだ?
なあ、お前が決めたんだろう?」
「ほ……ほかの……にんげんが、いってたんだよ………
このいえの、お…おにいさんは……すごくゆっくりをだいじにしてるって……
だから……だからばりざたちも…もしかしたら……だいじに……
しらなかっだ……じらながっだんだよ……ばりざだちが…
ゆっぐりじゃなかったなんて………そんなのじらながっだんだよぉ……」
なるほど、こいつは近所の人の噂を聞いて来たのか。
僕がゆっくりをを大事にするから、だから自分達ももしかしたら、と。
なるほどそういった勘違いが働いてたなら間違える可能性も無い訳ではないだろう。
それにしても冗談みたいな理由だな。
………まあ確かに僕はゆっくりと一緒に住んでるけどさ。
僕は
うちの「あの子」とこの汚いゴミ饅頭が同列だなんて……全く………
そこらへんに落ちてたゴミを掴んで
「冗談にしては……」
「っ!!?なんなんだぜ!?まりさにさわってるのはだれなんだぜ!?
やめるんだぜ、どうなってるんだぜ、なにもみえないんだぜ!!!
たすけてぇ!おかーざん!おどーざん!だれがぁーー!!
まりざじにだぐない!じにだぐないぃぃぃ!!!!」
おもいっきり振りかぶって
「や……やめて、でいぶのおぢびじゃん……
とってもゆっぐりした………
……ゆっぐり……じでない?
でいぶたちは…ゆっくりじゃない……?
じ……じゃあおちびちゃんは……おぢびじゃんわぁ………
やべでぇぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛!!!」
「笑えないんだよ!!!」
力の限り叩き付けた
パチュン!!!
「ピュ!!!!」
「あ゛あ………あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……………」
「でいぶ…の…いもう………と……」
「うぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ!ばでぃざのごどもがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
意外と軽い音と一緒に弾けた小さめのゴミ饅頭。
叩き付けた地面には、不細工に散った餡子と黒ずんだ皮。
そしてその中央には使い古した雑巾よりもなお汚く、
ボロボロになった帽子。
――――ああ、潰れても尚醜いなぁ。こいつらは――――
などと、どうでもいいことを考えながら、
僕は急速に頭が冷えていくのを感じた。
そして嘆息する。
「駄目だ、やっちゃった……
とっさに目の無いやつを選んだからまだ良かったけど、
もう少し忍耐強くならないとなぁ。
うぇ……すっごい臭い。吐きそうだ………」
後に残ったのは手に付いたゴミの臭いと
まるでこの世の終わりみたいに嘆くゴミ饅頭達。
ああ、そうだ。まだ残ってたんじゃないか。
「でいぶのおちびじゃん………」
「まあそう気にするなよ、お前たちもすぐに同じ様になるんだし。
なんなら、そろそろ始めるかい?こっちはいつでもいいけど。」
「「「「「「!!!?」」」」」」
「ちょ、ちょっとまってね!でいぶたちは…えーっとえーっと」
自分達の番が回ってこようとすると、
手のひらを返したように騒々しくなるゴミ饅頭達。
もっとも、今していることが時間稼ぎなのは明白なのだけど
それでも足掻く姿はなかなか「おにいさん!」……何か見つけたかな?
「何だ?順番が決まったのかい?」
気だるげに聞く僕に対して、でかい紅白は
まるで鬼の首を取ったように堂々と声を張り上げた。
「ちがうよ!そこのまどさんみたらおひさまがでてたから
きっとあめさんがやんだんだよ!!
れいむたちあめさんがあがったからおそとにかえるよ!!
あめさんがやむまでここにいるってやくそくだったもんね!!!
やくそくはちゃんとまもるんでしょ?
ゆっくりしないでさっさとおそとにだしてね!!!
あとおちびちゃんをころしたじじいはゆっくりしないでしね!!!」
「おかーしゃんしゅごーい!!!」
「じじいはゆっくりせずにしね!!!」
「ゆっくちちね♪ゆっくちちね♪」
「………………………………」
一斉に死ね死ねコールが巻き起こる。
………本当に面白い饅頭達だ。
世界中探したってこうも次から次へと上手く
こちらの思惑通りに動いてくれるような奴はいないだろう。
でも、そろそろさようならかな。
「喜んでるところ悪いんだけどさ。」
「ゆ?なに?くやしいの?きもちはわかるけど
ちゃんとやくそくはまもってよね!!
それともあれだけいっておいて
やくそくもまもれないの?ばかなの?しぬの?」
「いや?約束はちゃんと守るさ。
だから――――
お前達には、死んでもらうね。」
「「「「「…………ゆ?」」」」」
「な…なんで?どぼじでぇ!?だって、やぐぞぐがぁ!!」
「ああ。たしかに約束はしたね。
でも約束の内容、ちゃんと思い出したかい?」
「ちゃんとおぼえてるよ!!「あめさんがやむまではじじいのおうちにいる」
でしょぉ!?どこがまちがってるのぉ!!?」
「おいおい、勝手に区切るなって。もう少し餡子脳絞って思い出してみなよ。
………駄目?そうか……じゃあ教えてあげるよ。
正確にはその約束はお前達が「雨宿りに来たときのみ」有効なんだよ。
言っただろ?お前達が雨宿りする気ならかまわないってさ。
その逆も同じで、騒いだから追い出すってのも無しだから。
………ところでお前達、何しに僕の家に来たんだっけ?」
「ゆ!?っで…でも……」
「お前達からすれば、本当に甘っちょろい人間か見極めようと
試すつもりでペラペラ喋ってたんだろうけど、
それで逆に尻尾捕まれてれば世話無いな。
そもそも無事に帰してやる、なんて誰も言ってないし。
で、誰から潰れる?」
「ゆっ……ゆっ…………ゆっ!!
そうだよ!たしかにおそとにはでられないけど、
べつにれいむたちがしんじゃうなんてやくそくにはなかったよ!!
なんでしななきゃならないの!?ゆっくりりかいしてね!!」
だから手を出さない、とも言ってないっていうのに。
何でその程度で「何もかも解決だ!助かった!」
みたいな顔ができるのかがわからない。
でもまあいいか、別にやることは変わらないし。
「その自分に都合のいいことしか覚えない餡子脳、
いいかげんなんとかしたほうがいいんじゃない?
ま、もう遅いけどね。
あれだけ痛い目にあって、もう忘れたのかい?
僕は何をしたら君達を蹴ったり踏んだりするって言ったっけ?」
「覚えてるよ!たしか
「さわいだりらんぼうなことばをつかうとことばにおうじてゆっくりさせなくする」
だったよ!!かんぺきでしょ!!」
「ああ、完璧だね。その調子で思い出そうか。
で、君達ついさっきこの家から出て行けるって思ったとき、なんて言ったっけ?」
「ゆ?そんなこともおぼえてないの?あたまわるいの?
れいむはちゃんとやくそくまもってねっていったんだよ!
あとおちびちゃんをころしたじじいは……ゆっ…く…り………」
ゴミ饅頭達の顔が一気に絶望と恐怖に彩られる。
こういう時に頭がいいと理解が早くてこちらも助かる。
「そう、死ねっていったよね。言葉によって変えるんだから
死ねって言ったやつはみんな死ななきゃいけないよね?
ゆっくり理解したかい?してないわけないよね。
あの時皆大きな声で返事したもんね。
ああ、あと最初に蹴られて聞いてなかったやつも含まれてるからさっさと諦めてね!」
「あ……あ゛………あ゛ぁ゛………ああ゛ぁ゛………」
「いや…いやじゃ……ちにちゃく……」
「うあぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!ああ゛ぁぁ………あ…あぁ゛………」
もはや逃げ場が無いと悟ったのか、ゴミ饅頭達は次々と項垂れ、
諦めきれないと思っていても、諦めざるを得ない状況に呆然としている。
やっぱこれだよなぁ。
そう、僕の目的は
「生粋のゲスがどうしようもない現実の死を前に絶望する様」を見る事。
こいつらはゲスであればゲスであるほど、生に執着しようとする傾向がある。
現代に残ったゴミ饅頭であれば、それはゲス中のゲス。
ゲスのサラブレッドと言っても、言い過ぎではないだろう。
そんなゲスどもの自尊心を徹底的に壊し、逃げ場を一つずつ断った上で
最後に死刑判決をくれてやる。
その時の諦めと、それでも尚足掻こうとする意思と、
死への絶望が入り混じった表情を見ることで
僕は心洗われ、まるで憑き物が落ちたような気分になれる。
加工所産のゆっくりでは、決して味わえない
遺伝レベルでの生粋のゲスでこそ、この快感が得られる。
ある意味敷居の高い遊びだ。
とはいっても、難易度自体は、至極低い。
幸いこいつらゴミ饅頭は無駄に高い自尊心と、
なけなしの警戒心を持つという
非常に扱いやすいタイプの、いわゆるバカだ。
そして、どうやら頭の回転の速さと餡子脳云々は
全く別の話らしく、双方はお互いに依存しないらしい。
よって野生の害虫にあるまじき餡子脳のおかげで、
個体差による多少の誤差はあるものの
全て許容範囲内で簡単にいくつかのパターンで行動を誘導し、陥れることができる。
だからこそ、僕も確実にチャンスをモノにし、
唯一の趣味といえるくらいに楽しむことができるのだ。
ただ、うちにゴミ饅頭が来る確立はどうなのかというと、非常に低い。
この僕の趣味専用の部屋も、最後に使ったのはもう二ヶ月ほど前になる。
それに、今回は特別といっていいほど頭の回転が速い個体だからスムーズにいったが、
普通ならもう綿密な説明なんかもしなければならないので
今回よりも手間がかかる。今回は天気なんかも味方してくれたしね。
まあその手間を差し引いても、
僕にとっては止められない魅力的な遊びなのだけど。
それにしても、以前と比べるとそれほどこの遊びに
それほど自分が依存していないことに今しがた気付いた。
昔はそれこそ病的といっていい程だったので、
それと比べる方がどうかと思うが、その理由も予想が付く。
人間、切っ掛けがあれば丸くなるもんだなあ。
さて、ここらでひと段落ついでに中身のなくなったおもちゃを片付けますかっと。
――――――――――
「ま、まつんだぜ!」
「うん?何だい、今頃。」
絶望しきって抜け殻になったゴミ饅頭達を潰していたところに、
今回の計画(笑)の首謀者であるでかい白黒が声をかけてきた。
まあどうせ潰すんだし、話くらいは聞いてあげようか。
つまらなかったら潰せばいいだけだし。
「ま、まりさは……まりさはにんげんさんにしねなんていってないんだぜ!!
だからしななきゃならないやくそくなんてまりさにはないんだぜ!!!」
ああ、そういえばこいつだけ他が騒いでたときに隅っこの方でじっとしてたっけ。
たしかに言ってないのだろう。少なくとも僕には聞こえなかった。
なら咎めることはできない。
家族にもそれを伝えず自分だけ、というのがいかにもゲスらしいが。
それにしても、こうなることがわかってて黙っていたのだとしたら
やっぱりこいつは頭抜けて頭がいいのだろう。
ゲスでなければ、野良でなければもう少し待遇が違ってたかもね。
まあ、この状況においてそんな事はなんの関係もないのだけど。
「ふむ……そうだねぇ。確かに言ってはいなかったし、
別に約束はどうのってのはお前には関係ないね。
…………で?だからどうしたいの?」
「ゆ゛!?」
「雨宿りの方の約束は無効だから、お前は外に出さないし
まさかまだ僕に飼ってもらえるなんて甘いこと、考えてないよね?」
「………………」
いくら頭の回転が速くても、所詮は餡子脳。
一つのことを潜り抜けるのに精一杯でそこから先は考えてなかったみたいだ。
ま、ゴミ饅頭にしては大分頑張ったほうでしょ。
「それにお前にはわからいことだろうけど、別に僕が"約束"している相手は
お前だけに限ったことじゃないんだよ。
僕はね、小さな頃からずっと約束してることが一つあるんだ。
教えてあげようか?」
「………な……に………?」
「それはね、「街で見かけたゴミ饅頭は、必ずきちんと潰しましょう」ってことさ。」
「!!!!!」
「ところでさ、お前はゆっくりじゃないよね?お前は、何?」
「…………………」
「あー、なんか動かないゴミが落ちてるね。潰さないと。」
「………!!!
……っ…い……ゅ…す……」
「ゴメン、よく聞こえなかった。もっと大きな声でもう一回!」
「……くり……い…み……じゅう…す……」
「もう一声!」
「ばりざはゆっぐりじでないごみまんじゅうでずぅ!!!」
この瞬間のためにやってるようなもんだよなぁ、この遊びも。
「……はい!よく言えたね!じゃあゴミはゴミらしく潰れようか!!」
「どぼじで…どぼじでぇ………!!!」
「どうしてもこうしてもないさ、お前が望んでここに"雨宿り"に来たんだろ?」
「だずげでくだざい、ばでぃざまだじにだぐないんでずぅ…
づぶされだぐないぃぃ……」
「まあ別にいいじゃないか。ここで潰されるのも、雨に降られて溶けるのも、
お前達にとっては同じことなんだしさ。
わざわざご苦労様。まあ通り雨にでも遭ったと思って諦めなよ。
ってことでさ、じゃあね。楽しかったよ。」
「どぼじでごんなごどにぃぃ……ゆ゛ん゛!!!」
グシャリと、いとも簡単に饅頭は潰れ、二度と喋らなくなった。
―――――数十分後、饅頭専用廃棄場――――
「やれやれ、あれだけの量の饅頭抱えて
来るには少し遠すぎるんだよな、この廃棄場。」
遊び終わった僕は手っ取り早く部屋を片付け
饅頭の残骸を袋に詰めた後、住宅街から少し外れた饅頭廃棄場にゴミを捨てにきた。
遊んだ後のおもちゃは片付けるのがマナーというものだ。
それは子供も大人も関係ない。
条例って名前の“約束”もあることだしね。
しっかし、毎度最後に言うことは変わらないんだよな。
「どうしてこんなことに、しにたくない」 か……
その帰り道、河川敷を歩いていると、
濡れて潰れたダンボールと計五つほどの帽子とカチューシャだけを残し、
ドロドロに溶けたゴミ饅頭の跡があった。
多分さっきの通り雨でやられたんだろう。
――――これが饅頭と人間の差、越えられない壁だ。
いくら死にたくないとあいつらが喚いても
所詮は軽く雨に降られた程度で消えてしまう命。
そんな物に重みを感じろというのが無理な話だ。
だからこそ僕はこう思えるし、あいつらにああも軽く言えるのだろう。
運が悪かったと思って諦めろ、と。
いくらあいつらが、自分達だって生きているのに
どうしてこんなことをするのか、と訴えても
世間のゴミ饅頭に対する対応が変わるわけではない。
何をどうしようがゴミ饅頭は駆除され続けるだろうし
人々はあいつらを害虫としか認識せずに、
ペットショップで売られているゆっくりをかわいがるだろう。
僕だってそれは同じだ。
最終的に害虫は駆除するし、ゆっくりだって嫌いじゃない。
違うのは、あいつらをただのゴミ、害虫だと見るか
僕の歪んだ性癖の為のオモチャと見るか、それだけだ。
あいつらがあいつらである限り、それは変わらない。
生きていてもなんの益にもならず、全てに害のみをもたらす、
自分の命の軽さにも気付かずまるで対等のように話す滑稽な饅頭。
そして、それに気がつかないのも、あいつらゴミ饅頭だけ。
精々的外れな、届かない言葉を叫んでいるといい。
それが僕の楽しみになるのだから―――
っと、いらないことを考えている内に
結構時間が過ぎちゃったな。
もうそろそろ「あの子」が起きる時間だし
晩御飯の支度も始めないと。
一ヶ月ほど前に出会った、
人の心を読むことができるあの子―――
さとりと呼ばれる種のゆっくりが僕の家族になってから、
今まで事情があって一人寂しく暮らしていた、
僕の生活は周りが何もかもが違って見えるほど心豊かなものになった。
それまでは無くてはならなかったほどの
僕の趣味に、ほとんど執着心がなくなってしまうほどに。
そして僕が持てる限りの愛情で彼女と接した結果、
家に来たばかりの頃は心を殆ど閉ざしかけていたあの子も
今ではそれなりに、コミュニケーションを取れるようになっている。
友人に言わせれば、僕は他にそうはいないほどの親バカ(?)らしい。
まあ否定はしないけど、僕のさとりが一番可愛いのは事実だ。
少なくとも僕の中では。
いずれにせよ僕が確実に言える事は
絶対にあの子と、あんなゴミ共が同じ種の生き物などではない
ということである。
「さあ、あの子が心配しないうちに帰ろう。」
そう思って少し急ぎだした僕の頭には、もうあのゴミ饅頭のことは残っていなかった。
――――――――――
「ただいまー。
ああさとり、やっぱり起きてた?
ゆっくりしていってね。」
「お帰りなさい。
ええ、今さっきですけどね。
はい。ゆっくりしていってね!」
相変わらずゆっくりらしからぬ流暢さで話すね。
まあ希少種ではそう珍しい話ってわけでもないらしいんだけど。
それでも少しは誇らしくなるってもんだ。
「何でそんなことであなたが誇らしくなるんですか。」
仕方がない人だ、とでも言うような顔でさとりが答える。
そうすると、さとりは何かに気付いたようで、僕に聞いてきた。
「そういえば随分すっきりした顔をしてるんですね。
何かいいことでもあったんですか?
『少し楽しいことがあってね』…ですか?
まあ、いいです。
あなたの機嫌が良いに越したことはありませんから。」
「うん。思ったよりも熱中しちゃってさ。
ごめんね、君が起きる前に帰ってきたかったんだけど…」
「いいですよ、そんなこと気にしなくても。
……もう、本当にいいですってば。
そんなに心の底から悪いと思わなくっても、
私だって寝起きくらいならもう一人で十分です!」
まあ饅頭を騙したり陥れたりするのもいいんだけどさ
「『今日の夕食は何がいいか』ですか?なんでもいいですよ。
…あ、あなたの作ったものなら……」
―――やっぱりこの笑顔に勝る物なんか、無いよな。
少し照れくさそうに微笑む彼女を、心には浮かべないけど心底愛しく思いながら
僕は自分ができる最高の笑顔を見せて、彼女に答えた―――
・あとがき
自分の中にあるフラストレーションをぶつけた結果、
何がどうなったのかこうなりました。
個人的には凄くスッキリです。
さとりはゆっくりいち可愛いよ!でもてんこも負けず劣らず可愛いよ!!
希少種万歳!!
では、ここまで読んでくださった皆さんに感謝の言葉を。
どうもありがとうございました!
・初投稿だよ!つたない文章でも大目に見てね!!
・かなり長いし、台詞が多いよ!時間と心に余裕のある人推奨だよ!!!
・虐待とは少し違うかもしれないよ!気をつけてね!!!
・感想や批判があると嬉しいよ!厳しい意見もあるとなおいいよ!!!
・作者は希少種が好きでたまらないよ!嫌いな人は気をつけてね!!!
・最後に、自己満足の塊ではありますがこれを呼んだ方々が
少しでも楽しんでいただけるならこの上なく嬉しいです。
それでは、ゆっくりしていってね!!!
――――――――――
「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
「どぼじでぇ…?どぼじでがわい゛い゛でいぶがこんな゛め゛にぃ……」
「でいぶのおぢびぢゃんがぁぁ……」
「おがーざぁん、おどーじゃ゛ぁん、だれがばでぃざざばをだずげるんだぜぇ゛……」
「ゆ゛っゆ゛ぐっ……ゆっぐちぃ………」
「ごんなはずじゃながっだのにぃ、ばでぃざはなんのだめに゛ぃ……
ゆっ゛っゆ゛っゆ゛がぁ……」
「ゆっ…くち……できにゃい…よ……ぉ…」
僕の目の前に転がって、ずたぼろな風体でなにやら呟いている汚い7つの饅頭。
サッカーボール大のものが二つ、テニスボールくらいのが3つ。
そしてピンポン玉ぐらいの大きさのが2つだ。
饅頭には黒い帽子をかぶった金髪おさげと紅白のリボンをつけ、もみあげ(?)
をぶらさげた黒髪の二種類がいる。
ちなみにこの饅頭のもみあげ、何故かわさわさ動く。すこぶるキモい。
この汚い饅頭は、かつてゆっくりと呼ばれた動く不思議饅頭だ。
その昔どこからともなく現れたこいつらは、生物学界に
一大旋風を巻き起こしたり、人々のペットとして一時期流行したりと
紆余曲折を経て、今ではただの害虫というポジションに収まっている。
昔はこいつらも害虫と呼ばれるほどの厄介な存在では
なかったらしいが、まあそれは今話すようなことでもないだろう。
とにかく、現代におけるゆっくりの定義は
「ペットショップで売られている、バッジ付きのもの。」
「加工所産の虐待用のもの。」
「希少種。」
以上にあてはまる物のみらしい。
それ以外の野良なんかは問答無用で害虫として、駆除を条例で義務付けられている。
別にそれを疑問に思う者も、不満に思う者も居ない。
割と昔からこれらの認識が成されていて専門の駆除業者までいる現代において、
人々のこいつらへの認識はゴキブリなんかとそう変わらないんだろう。
さて、先程の言い方で気付いただろうか。目の前のこいつらは「ゆっくり」ではない。
つまり虐待用などではなく、このご時世に珍しい野良饅頭の方だ。
ズタボロなのは一部僕がやったからだけど、それ以外と、外見が汚いのは元からだ。
よくもまあこの厳しい世の中でここまで大量に繁殖できたものだと
見つけたときは思わず感心してしまい「どぼじで…?」そ……うん?
「どぼじでごんな゛ごどにな゛っだのぉ゛……?」
でかい紅白饅頭がこっちに向かって呻いている。
まあ大体言おうとしていることは想像がつくが、一応聞いてみるか。
「何か言ったかい?」
「でいぶだぢはがわいぞう゛なんだよぉ…
やさじぐしな゛きゃいげない゛んだよぉ……」
「まりちゃたちにいちゃいことちないでぇ…」
「ゆっ…くち……させちぇ……」
「さあ?たまには自分で考えてみれば?僕に聞かれてもねー。」
やれやれ、それぐらいしか言うことが思いつかないのかなぁ?
予想の斜め下を行く常套文句に、
相も変わらず貧弱な語彙力だなぁと呆れながら饅頭の訴えを適当に聞き流す。
そもそも何故こんなことになっているかをもう忘れているのだろうか?
まあ忘れてるかもなぁ。それが餡子脳ってやつらしいし。
まだそんなにあれから時間は経ってないんだけど―――――
――――約1時間前、家への帰り道――――
正午、ぽつぽつと降り始めた雨の中。
みんな天気予報を見て家にこもっているのか、人気のない住宅街を僕は走っていた。
「あぁ、嘘だろ?降ってきちゃったよ……
やっぱりさっさと決めて帰ってくればよかったなぁ…
でもできるだけ上手いもの食べさせてやりたいし、仕方ないよな……」
午後から雨が降ると天気予報で聞いた僕は、少し早いけど夕食の支度のため
近くのスーパーまで買い物に出かけていた。
さっさと終わらせて帰ろうと思っていたのだが
献立に迷った挙句大目に買い込んで時間を浪費した結果がこれだよ!
でも家族の分もあるし、ついつい凝りたくなってしまうのだ。
そこら辺の気持ちはわかってほしい。
おまけに、近いからといって調子に乗って
迂闊にも傘を持っていかなかった結果がこの様だが、
走れば割とすぐのところに自宅がある。そう問題はないだろう。
「くそっ、午後からって言ってたくせにわざわざ示し合わせたように今降らなくてもさ。
誰か僕に恨みでもあるのか?いっつもそうなんだよなぁ。」
などとブツブツ言いながら走る僕。
もし通りすがりの人が見たら妙な視線を向けられそうだが、
流石に周りに人がいるか、いないかでわきまえるくらいの常識は持っている。
あぁ…雨が強くなってきた……
「そもそも天気予報ってのはさ……ん?なんだ、あれ。
まさか……」
もうすぐ家に着こうかという所まで走ってきたそのとき
僕の家の門の向こうから何か騒がしい声が聞こえた。
泥棒ならこんなに大勢で、しかも玄関の前で話し込んだりはしないはずだ。
それに、このなんとなく癇に障る声。こんな声が出せるやつといえば
おそらく十中八九あれしかないだろう。
「やっぱりか……」
「ゆーん…つめたくてゆっくりできないよ……」
「おかーさん。れいむさむいよぉ…」
「ゆ?にんげんさんだ!!おかーさん、にんげんさんだよ!!!」
「ほんとだね!にんげんさん、れいむたちはわるいゆっくりじゃないよ!!
すこしあまやどりさせてもらってるだけだよ!!」
「そうだよ!あめさんはゆっくりできないから
まりさたち、すこしここをかりてるんだよ!!りかいしてね!!!」
「「りかいしちぇね!!!」」
やっぱりゴミ饅頭か。
どこかのスライムみたいな事を言いおってからに。
大きさと言動から見るにどうやら家族らしく、紅白が親1、子1、赤1で
白黒が親1、子2、赤1の割合だ。
体から飾りまで何もかもが汚らしく、少し生ゴミのような腐臭がする。
正に教科書に"これが害虫饅頭だ!"と乗せるのにピッタリなゴミっぷりだ。
きっと印象操作の効果も抜群になることだろう。
しかし、えらく暢気にしてるけど人間の前に出てきた以上は
生きて帰れないといい加減学習してもいいはずなんだけどなぁ……
まあこいつらが雨に濡れると困るのは本当だ。
なんせ饅頭だし。少し強めの雨でも命取りだ。
「で、なんで僕の家の前で雨宿りしてるんだ?
雨が怖いなら自分達の巣に帰ればいいだろう。
人間に見つかったら潰されるって、わかんないのか?」
すると僕の問いにでかい白黒が(饅頭にしては)礼儀正しく答えた。
「ゆぅ……それはもちろんわかってるよ。
でも、まりさたちのおうちはここからとおすぎて
おちびちゃんたちがえいえんにゆっくりしちゃうんだよ。
だからにんげんさんはこわいけどここにいさせてもらってたんだよ……」
「おとーさんをおこらないでね!
おとーさんたちはれいむやいもうとたちのごはんさんをとるために
いっしょうけんめいがんばってたんだよ!!!」
「そうだよ!さいきんごはんさんがすくないから
みんなでがんばってここまできたんだよ!」
「おとーさん、だいじょうぶだよ!
みんなでがんばればきっとたくさんごはんさんみつかるよ!
まりさたちもがんばるからあきらめないでね!!」
「おちびちゃんたち……
まりさは……おとーさんはうれしいよ……
まりさげんきがでたよ!!!みんなでがんばろうね!!!」
「おかーしゃん。れーみゅおなかすいちゃよぉ……」
「まっててねおちびちゃんたち。
あめさんあがったらごはんさがそうね。
いっぱいみんなでむーしゃむーしゃしようね。」
「ほんちょ…?まりしゃもいっぱいむーちゃむーちゃできりゅの……?」
「きっとできるよ!みんなでがんばってごはんさんあつめるから
れいむのおちびちゃんたちもがんばっておうえんしてね!!!」
「ゆっ!れーみゅ(まりちゃ)いいこだからがんばりゅよ!!!」
で、何時までこの三文芝居を観てればいいのだろうか。
冷めた目で饅頭達を見下ろしながら、僕はうんざりしていた。
しかし、それはともかくこいつらなかなか頭はいいほうらしい。
いずれにせよ見つけてしまったことだし、このまま家に居ても
夕食の仕込みくらいしかすることはない。
せっかくの機会だ。
今日の午後の予定は変更しよう。
一通り考え終わった僕は、目の前の饅頭達に優しげに告げた。
「なあ。お前達にそこに居られても
僕が家に入れないし、雨も結構強くなってきたし
玄関先で騒がれるのも迷惑なんだ。
良かったら僕の家に入らないか?」
「ゆっ!?いいの?
にんげんさんたちにめいわくかけるつもりはないけど
れいむたちじゃまにならない?」
「ああ。雨が降ってる間だけならかまわないよ。
お前達がそのつもりならね。」
「おかーさん!にんげんさんのおうちにはいれるの?」
「いいの?にんげんさん!ありがとー!」
「「やっちゃー!やっちゃー!!」」
「でもおにいさん、れいむたちおうちよごしちゃうかもしれないし、
もしそうなっておにいさんがおこっておいだされたられいむたち
いくところがなくなってみんなえいえんにゆっくりしちゃうよ…」
「ああ。それくらいのことはわかってるって。別に家が汚れたくらいで
怒ったりはしないさ。雨宿り程度の間くらい我慢できないわけでもないし。
何なら、約束だ。お互いにさ。」
「ゆぅ、れいむしってるよ!
やくそくはまもらなきゃゆっくりできないんだよね!
やくそくするならだいじょうぶかなあ。
まりさどうしよっか?」
「ゆぅ……しかたないね。じゃあにんげんさん、
おうちにあまやどりさせてもらうね!
あめがあがったらでていくから
それまではゆっくりさせてもらうね!!!」
「ああ、かまわない。
安心しなよ。僕は絶対に約束は守るから。
そのかわりお前達も、ね。」
「もちろんだよ!
れいむたちもちゃんとやくそくはまもるよ!!!
いいこにしてるよ!!!」
――――やっぱり。予想通り――――
渋々といった感じのでかい白黒に微笑みかけながら、僕は家の鍵を空けた。
―――さあ、楽しくなりそうだ。
――――――――――
「ゆわぁ~、すごいね!!これがにんげんさんのおうちなんだね!!!」
「すっごくおっきいし、なんだかあったかいね!!!」
「そうだね!ここならあめなんかへっちゃらだね!!!」
「ここならゆっくちできゆね!!!」
「よかったね!おちびちゃんたち!!!」
あれこれと騒ぐ饅頭達を尻目に僕はあいつらを家に上げるためにタオルを取りに行った。
僕はあんな汚い饅頭触りたくもないし、だからといってあの風体で廊下を跳ね回られても困るからだ。
それにあいつらがいる間の部屋も用意しなくちゃならない。
とは言ってもあの部屋には何もないし、それには時間はかからないのだけれど。
勿論、今お昼寝中の「あの子」を起こすなど論外だ。
それだけは、断じてあってはならない。
「あの子」は繊細なのだ。
あんなゴミ饅頭の声など絶対に聞かせられない。
色々と考えながら、僕はバスタオルを数枚持って玄関に戻った。
「おい、ここにタオルを敷くから順番にこれに乗って
足の汚れを落とすんだぞ。」
「ゆっ!ゆっくりりかいしたよ!!」
「わかったよ!」
「うわぁ~、ふかふかだよ!れいむこんなのはじめて!!」
「まりさにもやらせるんだぜ!!」
「おちびちゃん!!!!……にんげんさんはじゅんばんにっていってるよ。
じゅんばんはまもろうね!」
「そうだよ。おかーさんのいうことちゃんときこうね!!」
タオルの上で跳ねながら騒いでいる饅頭を見ながら笑う僕。
実際今とても愉快な気分だ。遊園地のアトラクション前の行列に並んでいるときの気持ち。
あれに近いものがある。
「さあ、おわったか?ならそこで待っててくれ。
このタオルを片付けたら、部屋まで案内しよう。
僕が戻るまでそこら辺をうろうろしないようにね。」
「「「「「「「ゆっくり(ち)りかいした(ちゃ)よ!!!」」」」」」」
黒ずんで、ゴミのような臭いを発するタオルに顔をしかめた僕は、
それを急いで洗濯機にかけ、戻って饅頭達を部屋へと案内した。
ドアを開けると、そこには何もなかった。
テレビも、テーブルも、イスもベッドも一切何もなかった。
窓は上の方に天窓のようなものがいくつかあるだけ。
他はガラスとは違った少しツルツルした壁と
一枚板のように滑らかな床。
しばらく使われていなかったので少し湿っぽいというか、埃っぽい感じがするが
そんなことは饅頭達にとっては関係がなかったようだ。
「ゆわぁ~、すごいよ!ここがれいむたちの………」
「おちびちゃん!!!!……よかったね。ここもとってもひろいね!」
「ほんとだね!とってもひろいね!それになんだかつるつるするよ!!」
「きょんにゃにひろいおへやみちゃこちょないよ!!」
「ゆ~♪ゆっくりできるね~♪」
「ゆっくち♪ゆっくち♪」
「おちびちゃんたち!あんまりはしゃぐとあぶないよ!!!」
ニコニコしながらはしゃぎまわるチビ饅頭達とそれを見て笑うでかい饅頭。
僕は何をするでもなくその様子をじっと見ていた。
しばらくするとはしゃぐのにも飽きたのか、饅頭達は集まってこそこそと話し合っていた。
まあそのつもりなのはむこうだけで、実際は声の調節ができてないせいで丸聞こえなんだけど。
それを見て、今度は僕が笑顔になる。
ようやく開幕だ。
「ここならだいじょうぶそうだね!」
「うん!れいむきにいったよ!!」
「しー、きこえちゃうよ!!」
「じゃあきまりでいいね!」
「うん!!」
「たのちみだにぇ!!」
「ゆっくち~♪」
「「「「「「「せーの!!!」」」」」」」
どうやら話がまとまったらしい。
饅頭達は一斉にあさっての方向を向き、声をそろえて叫んだ。
「「「「「「「れいむ(まりさ)たちはここがきにいったよ!!!
ここをれいむ(まりさ)たちのおうちに「駄目に決まってるだろ?馬鹿か、お前ら。」 ゆっ!!?」」」」」」」
――――ほら、本性を出した。
いきなりおうち宣言をかまそうとした饅頭達の言葉を拒否で遮ってやる。
予想もしなかった僕の言葉に、一斉に固まって素の馬鹿面をさらすゴミ饅頭。
これを見れただけで汚れてしまったタオル分くらいはスッキリできるというものだ。
一方、驚きから醒めた饅頭達は信じられないと言わんばかりにうろたえていた。
「な゛んでぇぇぇぇぇぇぇ!?どおじでだめなんでいう゛の゛ぉぉぉぉぉぉ!!?」
「どういうごどなんだぜぇ!?おうちせんげんがしっぱいしたのぜ!!?」
「おかーしゃんなんで?ここおうちになるんじゃなかったのぉ!?」
「「おかーしゃんのうそちゅき!!」」
「おぢびちゃん、どぼじでぞんなごど(以下略」
どうやら本気で成功するものだと思ってたらしい。
こんなゴミ饅頭達の計画なぞ聞かずとも分かるが
こんなことをするに踏み切った理由も含めて一応聞いておこうか。
「あー、お前ら。騒ぐのは勝手だけどさ、僕の質問にも答えてくれない?」
「もどはどいえば、ばりざがわるい゛んでじょぉぉぉぉ!!
だいじょうぶだっでいっだの゛に゛ぃぃぃぃ!!!」
「「「おどーざんのばがぁぁぁ!!!」」」
「う゛あぁぁぁ!ばり゛ざざまをばがにずるどゆるざないんだぜぇぇぇ!!!」
だめだ、聞いちゃいない。
と言うか、こんな状況で家族同士で罪のなすりつけ合いって……真性の馬鹿だな、こいつら。
やっぱり醜いのは見た目だけじゃないみたいだ。
まあそれはともかく、このまま話が進まないのも困る。
別に向こうの都合なんか知ったことじゃないし。
「うそつきのおとーさんなんかゆっく「おーい!」ぴぃ!?」
「おちびっ………」
「あ、しまった。加減間違えたかな……」
でかい白黒を罵るのに熱中していたチビ白黒を軽く壁に蹴り飛ばす。
妙な声を上げて飛んだチビ白黒はバウンドせず
壁にべチャリとぶつかって地面に落ちた。
でかい紅白のほうは言葉も出ないようだ。
でかい白黒の方はそれを見ていいザマだと笑っている。なんなんだ、こいつら。
蹴られたチビは餡子を少し、尻と口から出しながら「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ」
と妙なうめき声を上げているがどうやらまだ大丈夫そうだ。
にしても、本当にきったないなあ。
昔使っていた運動靴を履いておいて正解だった。
あいつら凄く汚い。つま先部分がドロドロになっちゃったよ。なんか臭うし。
「あー、よかった。やっぱり加工所の子まりさと比べるとデリケートだよなぁ。
なかなか慣れないや。次は気をつけよ。」
「おぢびぢゃぁぁぁぁん゛!!!」
「れいみゅのおねぇしゃんがぁぁぁ!!」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわぁぁぁぁぁぁ!!」チョロチョロ
「「ばりざぁぁぁぁ!!ゆ゛っぐりしでぇぇぇぇぇ!!」」
「はいはい!騒ぐのはいいからさ、いい加減こっちの話聞いてくんないかなぁ?
わざわざ痛い目見たくないでしょ?」
「ゆっ!?なんだぜ?あのばかをせいさいするとはぐずなにんげんにしては
なかなか「はい、答える気無いなら黙っててねー。」ゆびぃ!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのばりざがぁぁぁぁ!!!」
「「おとーしゃぁぁぁぁぁぁん!!!」」
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!いだいよおおおおおお!!
ばりざざまをだず「うるさいって。」ぶげぇ!!!」
「ばでぃざぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛!!!」
くだらないことをほざくでかい饅頭を潰れない程度に蹴飛ばして(馬鹿って、一応自分の子だろ?それ……)
まだうるさいので追い討ちをかけて黙らせた後、騒ぐほかの饅頭に対して一応警告しておく。
「いいから黙れって。
これから意味なく騒ぐやつや乱暴な言葉を使ったやつは
言ったことに応じて蹴るなり踏むなりするから。
まあ約束事みたいなもんさ。
理解したら黙って僕の質問に答えてほしいんだけど?」
「「「「「ゆっぐり(ち)りがいし(ち)まじだ!!!」」」」」
心底どうでもよさそうな男の口調を読み取り、
言葉とは裏腹にれいむたちは即座に理解した。
この人間は本当に、こちらの事など全く気にせずに痛めつけようとするだろうと。
それこそ、お前達など死のうがどうでもいいとばかりに。
ならばここはおとなしくしておこう。
そうして少しでもゆっくり逃げれる方法を探そうと
れいむたちは考えた。
まあそれを狙っての話だったのだから、そう思うのは当然なのだが。
「はい、よろしい。今後ともその調子でね。
さて、まず最初に。お前達はどうしたかったんだ?
何故こんなことを思いついて、何が欲しかったんだ?
そこのでかいの。答えろ。」
「でいぶだぢはおうぢをどら「もう少しちゃんと喋ってくれない?」はい゛ぃぃぃ!!!」
「……れいむたちはおうちをとられちゃったんだよ。
いきなりたくさんのまりさやありすがやってきて、
ここはれいむたちにはもったいないからつかってやるって
そういってれいむたちあっというまにおいだされちゃったんだよ。
それからまりさとどうしようかってはなしてたら、
まりさにいいかんがえがあるって……」
「ふーん。それで?」
「まりさはにんげんのおうちをもらおうっていったんだよ。
にんげんはたくさんおうちをもってるから
そのうちのひとつをもらっちゃおうって。
いえにいれてくれるようなあまいにんげんなららくしょうだって。
みつかったらなにをいってもれいむたちみんな
ぜったいえいえんにゆっくりさせられちゃうよってれいむはいったのに、
いざとなったらおちびちゃんのかわいさでなんとかなるって……」
「で、お前もまんまと乗せられたってわけかい。」
「はいぃ……」
「で、家族総出で子供にも必死になって演技を叩き込んで
善良なゆっくりの真似して
隙を突いて部屋一つ奪って
あわよくば飼ってもらおうと
人を騙そうとした挙句、その結果がこれだよってわけね…」
「ゆっ!?な…なんで……」
「なんでわがっだんだぜ!?ばりざのけいがぐはがんべきだっだはずなんだぜ!?」
「まりさ!」
「「「「おとーさ(しゃ)ん!!」」」」
おっ、もう起きたのか。
たしかに潰すつもりはなかったけど、どうやら今度は蹴りが弱すぎたらしい。
やっぱり難しいな……まあいいか、別に困るわけでもなし。
次がある次がある。
それはともかく何でって、本気で言ってるのか?こいつ………
「何でって…バレバレだって。
っていうか完璧じゃないし。穴だらけだし。」
「ゆぐぅ…じゃあどこからきがついたんだぜ?
ばかなにんげんなんかにわかるような……」
「はぁ…何度も加減して蹴るのも面倒なんだけどなぁ。」ボソッ
「っ!!?ごめんなざい!ごめんなざい゛!!
ばりさちゃんとじゃべりまずがら!!もうけらないでぐだざいぃ!!
いだいのいやだぁぁぁぁ!!!」
一家の主の貫禄も何もないな、こいつ。
まあ実の子を馬鹿呼ばわりする時点で、そんなもの無いか……
とりあえずやっぱり理解が早い分、頭は悪くないみたいだけど。
「で、 な ん だ っ て ?」
「はい゛…まりざのけいがぐは、いづがらわがっでたんでずか……」
「ちゃんと喋ろうなー。僕そういうのキチッとしないと気が済まないからさ。
…まあいいや。何時からと聞かれるなら、お前達と話したときから。
早い話が最初からだな。」
「うぞ……」
信じられないといった顔をするでかい饅頭を笑いながら僕は続けた。
「嘘じゃないって。言っただろ?バレバレだって。」
「なんで?なんでわかったの??」
まりさはわからなかった。どうしてこんなにも簡単に人間にバレてしまったのか。
あんなにも必死に人間に飼われてるゆっくりを影から観察して
良いゆっくりがどんなものなのかを研究して
子供にも演技を教え込んだのに。
人間のおうちを手に入れて、あのまりさたちのおうちをブン盗った
野蛮なゲスどもを見返してやろうと思ってたのに。
あいつらは暴力だけしか能がない。まりさはあんなやつらよりも
ずっと頭が良くてすごいってところを見せてやろうと思ってたのに。
……まさかあのチビどもが、あの馬鹿な役立たずどもが途中で口を滑らせたせいで!?
だとしたら許せない。まりさの完璧な「言っとくけど演技は関係ないぞー。」
……え?
またもや、何故わかった?と言いたげな顔をするでかい饅頭。
やっぱりそうか。面白いくらいに短絡的な思考回路だ。
「お前あれだろ?どうせ悪いのは自分の計画云々じゃなく子供が~とか思ってたんだろ?
そんなわけないって。たしかにチビも途中でボロ出して、それをお前達が
必死にたしなめようとしてさ。思わず吹き出しそうになって危なかったけど
別にそれのせいじゃないって。第一あれは家に入ってからだろ?
全然最初からじゃないだろうに。」
ゴミ饅頭達は相変わらず、なら何故なんだ、といった顔をしている。
いつの間にか聞き入っていたチビたちは話に付いてこれてるのだろうか?
まあいくら頭がいいといっても野良の餡子脳ならここらへんが限界かもね。
それじゃあ回答編と行きますか。まあホントに大したことじゃないんだけど、さ。
「はぁ…じゃあ、なにが悪いのか教えてやろうか?
正直お前の計画、演技の話だけど。
あれは割と良くできてたよ。ボケたお年寄りや、底抜けのお人よしなら
少しくらいは騙せたかもね。」
「ゆっ。な、なら……」
「でも予選はその程度だし、その他は最悪。
まずお前の計画だけどさ。
お前達は善良ぶって油断させたところで
いきなりおうち宣言かまして、反論させずに
おうち宣言を成立させようとしたんだろ?」
こいつらの言う「おうちせんげん」とは
よその家で、ここは自分の家だと宣言して
反応が返ってこなければ所有権が
宣言を行なった方に移るという
わけのわからない決まりのことだ。
宣言が成功すれば、元の持ち主がいくら文句を言ったところで
それが覆ることは絶対にないし、無理矢理取り返そうとするのも許されない。
正に不条理な、不思議饅頭らしい決まりごとだと思う。
しかし、こいつらの巣が宣言関係なく
無理矢理とられたことからもわかるように
今のゴミ饅頭達にはもうとっくにそんな風習無くなっていた
ものだと思っていたんだけど。
まあ自分達より強い人間から家を奪い取るには
これくらいしか方法がなかったのだろう。
「そうだよ!
でもなんでおうちせんげんするってわかったの?」
「とりあえずそれは後で話すとしてさ。
お前根本的な部分間違えてるよ。」
「ゆ?」
「つまりさ、お前達ゴミ饅頭同士ならともかく
人間相手じゃおうち宣言のルールは適応されないってこと。」
「ゆっ!?そ、そんなのずるいよ!」
「お前達のルールなんて知らないよ。
お前達だって、人間の都合なんてどうでもいいだろ?
とにかく、お前達の間ならともかく
人間にとって、お前達がおうち宣言をしようが何しようが関係ないんだって。
つまり、お前が宣言を成功させてもさせなくても
人間が気に入らなければお前達は潰されるしかなかったってわけさ。」
「ぞんなぁ・・・・・・じゃあ゛ばりざはなんのだめ゛に・・・・・・・・・」
「それは知らないけど、
全くの無駄足だったってことだけは確かだね。
いや、そうでもないか。
何せわざわざ潰されに来たようなものなんだし。」
今頃になって打ちひしがれるゴミ饅頭。
本当にこいつ頭が良いのか悪いのかわからないな。
とりあえず話は聞こえてるだろうし、サクサク行こう。
「それで、次に何でお前がゲスだってわかったのかって話だ。
こいつの問題はさ、お前らの習性にあるんだよ。
ゲス口調やおうち宣言がうっかり出ちゃうとか
それ以前の問題でね?
簡単に言うとさ、おまえら
"ゆっくり"じゃないんだよ。」
「「「「「「ゆ!?
……………ゆ゛あぁぁ゛ぁぁ゛ぁ゛ぁ!!ふざ(じゃ)けるな゛ぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」」」」」」
僕の言葉に、さっきまでへこんでいたゴミ饅頭達は
一斉に明らかな反感を持って騒ぎ出した。
それはそうだろう。
自分達はゆっくりだ。
自分達はゆっくりしてる。
そういった"勘違い"はこのゴミ饅頭達の数少ないアイデンティティのひとつだ。
それをこうも真っ向から否定されては黙っていられないだろう。
「ふざけたこといわないでね!!れいむたちはどうみてもゆっくりしてるよ!!」
「そうだよ!ゆっくりしてないにんげんなんかにいわれたくないよ!!」
「まりさたちがいつまでもだまってるとおもったらおおまちがいなんだぜ!!!」
「しょうだしょうだ!!にんげんにゃんかに ぴぎぃ!!!」
「「「「「!!!?」」」」」
「はぁ…、何度言わせればわかるのかな。騒ぐと踏むって言ったよね?
覚えてないか。餡子脳だもんね。」
ギャーギャーと騒ぎたてるゴミ饅頭達にうんざりした僕は
今度は警告なしに一番小さいチビ紅白を踏んだ。
勿論まともに踏めばそれだけであっさりと潰れてしまうので
片方のもみ上げの根元を踏みちぎっただけだけど(意外とあっさり千切れた。小さいうちは脆いらしい)。
それでも効果は抜群だったらしい。
チビチビ紅白はもがき呻きながら、開いたところから少しずつ餡子を漏らしている。絶妙な加減だ。
もしかしたら僕は蹴るよりも踏む方が上手いのかもしれない。
次からは踏んでみようか?
試しに――――
「ゆ?なにするの!?おもい!おもいよ!やめてね!!まりさつぶれちゃう!!
あんこでぢゃうぅ゛ぅ!!おかーさん!たすけげぇ゛ぇぇ゛!!!!」
さっき、何時までも黙っていると思ったらどうのとか言っていたチビ白黒を踏んでみた。
よし、大体予想通りに潰れた! やっぱりこっちの方がいいかな。
踏み潰したチビ白黒は両目が飛び出て、口と穴が開いた目から餡子を出しながら
そんな状態になってもまだ弱弱しい声で、見えない誰かに助けを求めていた。
そんな饅頭には構わず、目の前の惨劇を見て一斉に固まった
ゴミ饅頭達に、僕は告げた。
「後は誰と誰と誰と誰が騒いでたっけ?
ついでだし潰れとく?」
僕の問いに一番のチビも含めた全部の饅頭が器用にも横に首を振る。
普通なら助けを呼ぶ目無し饅頭に反応するのだろうが
ようやく僕の警告を思い出したのか、どいつも黙って
怯えた目でこちらを見ていた。やはりこういう事に関しては聞き分けがいい。
「さて……何の話だったっけ?
そうそう、お前達がゆっくりじゃないって話。
……何だい?まだ何か言いたいことあるかい?」
「「「「ありませ(しぇ)ん……」」」」
「そう。じゃあいちいち反応しないでね。
用も無いのにそうやってピクピク意味ありげに動かれちゃ
思わず踏んで黙らせちゃうかもしれないから。」
「「「「ゆっくり(ち)りかいし(ち)ました……」」」」
「はい、よろしい。
で、その根拠なんだけどさ。
ちょっと長い話になるから餡子脳全開にして聴いておくようにね。
昔々、お前達の親の親の………まあお前達じゃ到底わからないくらい前の
お前達のご先祖様はさ、自分も、他の皆もゆっくりすることが全てだって、
そう思ってたらしいんだ。
その証拠に誰にでも「ゆっくりしていってね!!!」
って挨拶をしてたらしいよ?
それこそ人間にも、虫にも、花にも、太陽にさえも。
で、ご先祖様は誰かにゆっくりしてもらうことで、自分達がゆっくりさせることで
自分達もゆっくりしようって考えてたわけだ。
彼女達の誰かを"ゆっくりさせる"ことに対する執着は
凄いものがあったそうだよ。
実際にお前達のご先祖様はすばらしいゆっくりっぷりだったらしいね。
彼女達のおかげで彼女達だけでなく、皆が皆すごくゆっくりできてたんだってさ。
で、そこからどう捻じ曲がったのかは知らないけど、
その終着点の一つがお前たちだ。
お前達はどうだ?家族身内以外の誰かに
ゆっくりしてもらおうなんて考えたことはあるかい?
ないだろうね。
それどころか、最悪自分さえ良ければいいと思ってるだろ?
どうした?きちんとした反論があるなら言っていいよ?
……ない、だろうねぇ。
わかったかい?お前達は所詮その程度なのさ。
自分が"ゆっくりする"ことだけに精一杯。それだけで手一杯。
いや、それすらもできないというのに明らかに自分には手の届かないものを欲しがる。
今回の件だって、どうせ家を盗られた腹いせだろ。違うかい?
……当たってるみたいだね。
これでわかったかい?
お前達の考えてることなんて丸わかりなんだよ。
少し考えればお前達のちっぽけな見栄で得られるものなんか
何も無いってことに気付けると思うんだけど。
なのに、何でわざわざ命を粗末にして痛い目にあいに来るのかなぁ。
こればっかりは全くわからないよ。
餡子脳、永遠の研究課題ってやつ?
で、さ。
お前達がいくら上手く演技をしようと簡単に、どうしようもないゲスだって
見抜ける方法、教えてあげようか。
なに?聞きたくない?そういうなよ、あれだけ聞きたがってたじゃないか。
それはね、
おまえたち、相手をゆっくりさせようとする言葉を一切言わないんだよ。
全くもって、簡単なものだよ。
なにせ最初から「ゆっくりしていってね!!!」の一言も無いんだから。
この挨拶はお前達の基本みたいなものだろ?
なのにそれが全く無きゃ今のご時世、誰だっておかしいと思うさ。
それどころか、僕が家に入れてあげようって言ったとき、
感謝の言葉の一つすら無かったもんね。
善良な饅頭気取るなら当然あるべき一言だよね?
なのにそれすらも言わないって事は、もう決定的だよね。
ある意味徹底してるなって思わず笑っちゃったよ。」
これだけを言い切る間、ずっと黙ってゴミ饅頭達は聞いていた。
と、言うより一部の饅頭を除き理解が追いつかないみたいだ。
そして言い切ってしばらく経った後、プルプル震えていたでかい白黒が
感情の向くままにぶちまけようとしたのか
変な液体でぐしゃぐしゃになった醜い顔を上げ、口を開いた。
まだこっちの話は終わってないんだけど。
「うるさいんだぜぇぇ!!まりさは…まりさは……」
「わかってるよ。そんなこと思いつきもしなかったんだろ?」
「………ゆ?ち…ちが」
「そうだろうね。あれだけ綿密に計画を立てたっていうのにそんなこと、
そんな基本的なことも思いつきやしなかった。
いつも家族には忘れずに言っていた一言。
いつも自分の心の真ん中にあった一言。
その言葉を、最も言うべきである"他人"に、
その一言が、お前達にとってもっとも相応しいだろう"他人"に言うことを思いつかなかったんだろ?
流石だね、真のゲスじゃないとそこまでにはならないよ。
僕はさ、お前達が考えている、お前達にとっての"ゆっくり"がなんなのか
なんて知らないよ。
でもお前達の根源的な部分をお前達が自ら捨て去った時点で、
―――――お前達はゆっくりなんかじゃない。ただのゴミ饅頭なのさ。
……ってね。
これで僕の説明はおしまい。これを抑えておけば、誰でもゲスを見破ることができるってわけ。
どう?わからないところとか、言いたいこと、ある?
あるなら質問受け付けるけど。」
まりさは震えていた。
―――自身の根源的な部分を否定されたから?
それもある。
―――己が絶対的に自信を持っていた作戦が、あっさりと穴を付かれて見抜かれてしまったたから?
それもある。
しかし何より衝撃的だったのは、それらを突きつけられて
一言もまともに言い返すことができない、ということである。
言い返すことができないということは、それが事実だと認めるということ。
中途半端に頭のいいまりさには、それがわかってしまうのが何よりも辛かった。
そして
――――アノニンゲンノイウコトガジジツナラ、ジブンハイッタイナンダトイウノカ?
ワカラナイ、ワカラナイ。
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ
「ゆ……ゆ゛………ゆっくりー!ゆっくりー!ゆっぐり゛ぃ゛!!!」
「「おとーさ(しゃ)ん……?おとーさ(しゃ)ん!おとーさ(しゃ)ん!!」」
「ばり゛ざぁぁぁぁぁぁ!!ばぁでぃ゛ざぁぁぁぁぁぁぁ!!!
じっがりじでぇ゛ぇぇ゛ぇぇ゛ぇ゛!!!」
予想通り、精神が壊れそうになったでかい白黒を蹴り飛ばして無理やり引き止める。
少々強めに蹴り飛ばしたせいで胴体に大きな穴が開いて、餡子が飛び出た片目や
開いた穴とかから割と沢山漏れ出てるが、ちゃんと痛がっているので壊れてはいないようだ。
よってそれほど気にすることは無い。
何故なら、この時点で僕の仕込みは八割方終わっているのだが、
逆を言えばここからが仕上げだからだ。
こんなところで壊れられた方がよっぽど(消化不良で僕が)困る。
他のゴミ饅頭達も話を聞いて呆然としていたのか、全く動かなかったが、
でかい白黒の重体姿を見て意識を引き戻されたらしい。
警告も忘れて騒ぎ立てている。腐っても家族ということだろうか。
さて、ここまできたら、もう五体(?)無事なやつを残しておく意味も無いんだよなぁ。
警告も無視したことだし、さっさと全部瀕死状態になってもらいますか!
僕は別に体を痛めつけるのには興味ないし、ちゃっちゃと済ませてしまおう。
ていっ!!
「おどーざゆ゛ゅ゛ん!!!」
「おねーしゃん!?たしゅけぢぶぇ゛!!!」
「ま、までぃざ…おじび……
や…やめてね……やめてね!やだ!やだ!やだやだやだぁ!!
こっちごないでぇ!!でいぶじにだくなぁあ゛!!!」
だから潰さないってば。………今はね。
――――――――――
――――ってな具合で現在に至るってわけ。
さて、先程まで今にも息絶えそうなゴミ饅頭ではあったけど
ちゃんと加減はしたので、一応ほぼ全員が会話が可能なくらいまで回復してる。
その上で、代表のでかい白黒に聞いてみた。
「そういえば聞いておきたいことがもう一つだけあってさ。
いや、むしろこれが本命かな。どうしても解らないんだよねー。」
「……っ…っゆ゛……?」
息も絶え絶えな状態でありながらもおとなしく聞く姿勢になるゴミ饅頭。
「お前達……というよりも、お前さ。
何で数ある家の中から、僕を選んだんだ?
僕の家は別にそこまで豪邸ってわけでもないし、
僕は誰にでも優しさを振りまくほど心が広いわけでもない。
選ぶならもっと相応しい人は一杯いたはずだ。
なのにどうして僕だったんだ?
なあ、お前が決めたんだろう?」
「ほ……ほかの……にんげんが、いってたんだよ………
このいえの、お…おにいさんは……すごくゆっくりをだいじにしてるって……
だから……だからばりざたちも…もしかしたら……だいじに……
しらなかっだ……じらながっだんだよ……ばりざだちが…
ゆっぐりじゃなかったなんて………そんなのじらながっだんだよぉ……」
なるほど、こいつは近所の人の噂を聞いて来たのか。
僕がゆっくりをを大事にするから、だから自分達ももしかしたら、と。
なるほどそういった勘違いが働いてたなら間違える可能性も無い訳ではないだろう。
それにしても冗談みたいな理由だな。
………まあ確かに僕はゆっくりと一緒に住んでるけどさ。
僕は
うちの「あの子」とこの汚いゴミ饅頭が同列だなんて……全く………
そこらへんに落ちてたゴミを掴んで
「冗談にしては……」
「っ!!?なんなんだぜ!?まりさにさわってるのはだれなんだぜ!?
やめるんだぜ、どうなってるんだぜ、なにもみえないんだぜ!!!
たすけてぇ!おかーざん!おどーざん!だれがぁーー!!
まりざじにだぐない!じにだぐないぃぃぃ!!!!」
おもいっきり振りかぶって
「や……やめて、でいぶのおぢびじゃん……
とってもゆっぐりした………
……ゆっぐり……じでない?
でいぶたちは…ゆっくりじゃない……?
じ……じゃあおちびちゃんは……おぢびじゃんわぁ………
やべでぇぇ゛ぇ゛ぇぇ゛ぇ゛!!!」
「笑えないんだよ!!!」
力の限り叩き付けた
パチュン!!!
「ピュ!!!!」
「あ゛あ………あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……………」
「でいぶ…の…いもう………と……」
「うぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ!ばでぃざのごどもがあ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
意外と軽い音と一緒に弾けた小さめのゴミ饅頭。
叩き付けた地面には、不細工に散った餡子と黒ずんだ皮。
そしてその中央には使い古した雑巾よりもなお汚く、
ボロボロになった帽子。
――――ああ、潰れても尚醜いなぁ。こいつらは――――
などと、どうでもいいことを考えながら、
僕は急速に頭が冷えていくのを感じた。
そして嘆息する。
「駄目だ、やっちゃった……
とっさに目の無いやつを選んだからまだ良かったけど、
もう少し忍耐強くならないとなぁ。
うぇ……すっごい臭い。吐きそうだ………」
後に残ったのは手に付いたゴミの臭いと
まるでこの世の終わりみたいに嘆くゴミ饅頭達。
ああ、そうだ。まだ残ってたんじゃないか。
「でいぶのおちびじゃん………」
「まあそう気にするなよ、お前たちもすぐに同じ様になるんだし。
なんなら、そろそろ始めるかい?こっちはいつでもいいけど。」
「「「「「「!!!?」」」」」」
「ちょ、ちょっとまってね!でいぶたちは…えーっとえーっと」
自分達の番が回ってこようとすると、
手のひらを返したように騒々しくなるゴミ饅頭達。
もっとも、今していることが時間稼ぎなのは明白なのだけど
それでも足掻く姿はなかなか「おにいさん!」……何か見つけたかな?
「何だ?順番が決まったのかい?」
気だるげに聞く僕に対して、でかい紅白は
まるで鬼の首を取ったように堂々と声を張り上げた。
「ちがうよ!そこのまどさんみたらおひさまがでてたから
きっとあめさんがやんだんだよ!!
れいむたちあめさんがあがったからおそとにかえるよ!!
あめさんがやむまでここにいるってやくそくだったもんね!!!
やくそくはちゃんとまもるんでしょ?
ゆっくりしないでさっさとおそとにだしてね!!!
あとおちびちゃんをころしたじじいはゆっくりしないでしね!!!」
「おかーしゃんしゅごーい!!!」
「じじいはゆっくりせずにしね!!!」
「ゆっくちちね♪ゆっくちちね♪」
「………………………………」
一斉に死ね死ねコールが巻き起こる。
………本当に面白い饅頭達だ。
世界中探したってこうも次から次へと上手く
こちらの思惑通りに動いてくれるような奴はいないだろう。
でも、そろそろさようならかな。
「喜んでるところ悪いんだけどさ。」
「ゆ?なに?くやしいの?きもちはわかるけど
ちゃんとやくそくはまもってよね!!
それともあれだけいっておいて
やくそくもまもれないの?ばかなの?しぬの?」
「いや?約束はちゃんと守るさ。
だから――――
お前達には、死んでもらうね。」
「「「「「…………ゆ?」」」」」
「な…なんで?どぼじでぇ!?だって、やぐぞぐがぁ!!」
「ああ。たしかに約束はしたね。
でも約束の内容、ちゃんと思い出したかい?」
「ちゃんとおぼえてるよ!!「あめさんがやむまではじじいのおうちにいる」
でしょぉ!?どこがまちがってるのぉ!!?」
「おいおい、勝手に区切るなって。もう少し餡子脳絞って思い出してみなよ。
………駄目?そうか……じゃあ教えてあげるよ。
正確にはその約束はお前達が「雨宿りに来たときのみ」有効なんだよ。
言っただろ?お前達が雨宿りする気ならかまわないってさ。
その逆も同じで、騒いだから追い出すってのも無しだから。
………ところでお前達、何しに僕の家に来たんだっけ?」
「ゆ!?っで…でも……」
「お前達からすれば、本当に甘っちょろい人間か見極めようと
試すつもりでペラペラ喋ってたんだろうけど、
それで逆に尻尾捕まれてれば世話無いな。
そもそも無事に帰してやる、なんて誰も言ってないし。
で、誰から潰れる?」
「ゆっ……ゆっ…………ゆっ!!
そうだよ!たしかにおそとにはでられないけど、
べつにれいむたちがしんじゃうなんてやくそくにはなかったよ!!
なんでしななきゃならないの!?ゆっくりりかいしてね!!」
だから手を出さない、とも言ってないっていうのに。
何でその程度で「何もかも解決だ!助かった!」
みたいな顔ができるのかがわからない。
でもまあいいか、別にやることは変わらないし。
「その自分に都合のいいことしか覚えない餡子脳、
いいかげんなんとかしたほうがいいんじゃない?
ま、もう遅いけどね。
あれだけ痛い目にあって、もう忘れたのかい?
僕は何をしたら君達を蹴ったり踏んだりするって言ったっけ?」
「覚えてるよ!たしか
「さわいだりらんぼうなことばをつかうとことばにおうじてゆっくりさせなくする」
だったよ!!かんぺきでしょ!!」
「ああ、完璧だね。その調子で思い出そうか。
で、君達ついさっきこの家から出て行けるって思ったとき、なんて言ったっけ?」
「ゆ?そんなこともおぼえてないの?あたまわるいの?
れいむはちゃんとやくそくまもってねっていったんだよ!
あとおちびちゃんをころしたじじいは……ゆっ…く…り………」
ゴミ饅頭達の顔が一気に絶望と恐怖に彩られる。
こういう時に頭がいいと理解が早くてこちらも助かる。
「そう、死ねっていったよね。言葉によって変えるんだから
死ねって言ったやつはみんな死ななきゃいけないよね?
ゆっくり理解したかい?してないわけないよね。
あの時皆大きな声で返事したもんね。
ああ、あと最初に蹴られて聞いてなかったやつも含まれてるからさっさと諦めてね!」
「あ……あ゛………あ゛ぁ゛………ああ゛ぁ゛………」
「いや…いやじゃ……ちにちゃく……」
「うあぁぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!ああ゛ぁぁ………あ…あぁ゛………」
もはや逃げ場が無いと悟ったのか、ゴミ饅頭達は次々と項垂れ、
諦めきれないと思っていても、諦めざるを得ない状況に呆然としている。
やっぱこれだよなぁ。
そう、僕の目的は
「生粋のゲスがどうしようもない現実の死を前に絶望する様」を見る事。
こいつらはゲスであればゲスであるほど、生に執着しようとする傾向がある。
現代に残ったゴミ饅頭であれば、それはゲス中のゲス。
ゲスのサラブレッドと言っても、言い過ぎではないだろう。
そんなゲスどもの自尊心を徹底的に壊し、逃げ場を一つずつ断った上で
最後に死刑判決をくれてやる。
その時の諦めと、それでも尚足掻こうとする意思と、
死への絶望が入り混じった表情を見ることで
僕は心洗われ、まるで憑き物が落ちたような気分になれる。
加工所産のゆっくりでは、決して味わえない
遺伝レベルでの生粋のゲスでこそ、この快感が得られる。
ある意味敷居の高い遊びだ。
とはいっても、難易度自体は、至極低い。
幸いこいつらゴミ饅頭は無駄に高い自尊心と、
なけなしの警戒心を持つという
非常に扱いやすいタイプの、いわゆるバカだ。
そして、どうやら頭の回転の速さと餡子脳云々は
全く別の話らしく、双方はお互いに依存しないらしい。
よって野生の害虫にあるまじき餡子脳のおかげで、
個体差による多少の誤差はあるものの
全て許容範囲内で簡単にいくつかのパターンで行動を誘導し、陥れることができる。
だからこそ、僕も確実にチャンスをモノにし、
唯一の趣味といえるくらいに楽しむことができるのだ。
ただ、うちにゴミ饅頭が来る確立はどうなのかというと、非常に低い。
この僕の趣味専用の部屋も、最後に使ったのはもう二ヶ月ほど前になる。
それに、今回は特別といっていいほど頭の回転が速い個体だからスムーズにいったが、
普通ならもう綿密な説明なんかもしなければならないので
今回よりも手間がかかる。今回は天気なんかも味方してくれたしね。
まあその手間を差し引いても、
僕にとっては止められない魅力的な遊びなのだけど。
それにしても、以前と比べるとそれほどこの遊びに
それほど自分が依存していないことに今しがた気付いた。
昔はそれこそ病的といっていい程だったので、
それと比べる方がどうかと思うが、その理由も予想が付く。
人間、切っ掛けがあれば丸くなるもんだなあ。
さて、ここらでひと段落ついでに中身のなくなったおもちゃを片付けますかっと。
――――――――――
「ま、まつんだぜ!」
「うん?何だい、今頃。」
絶望しきって抜け殻になったゴミ饅頭達を潰していたところに、
今回の計画(笑)の首謀者であるでかい白黒が声をかけてきた。
まあどうせ潰すんだし、話くらいは聞いてあげようか。
つまらなかったら潰せばいいだけだし。
「ま、まりさは……まりさはにんげんさんにしねなんていってないんだぜ!!
だからしななきゃならないやくそくなんてまりさにはないんだぜ!!!」
ああ、そういえばこいつだけ他が騒いでたときに隅っこの方でじっとしてたっけ。
たしかに言ってないのだろう。少なくとも僕には聞こえなかった。
なら咎めることはできない。
家族にもそれを伝えず自分だけ、というのがいかにもゲスらしいが。
それにしても、こうなることがわかってて黙っていたのだとしたら
やっぱりこいつは頭抜けて頭がいいのだろう。
ゲスでなければ、野良でなければもう少し待遇が違ってたかもね。
まあ、この状況においてそんな事はなんの関係もないのだけど。
「ふむ……そうだねぇ。確かに言ってはいなかったし、
別に約束はどうのってのはお前には関係ないね。
…………で?だからどうしたいの?」
「ゆ゛!?」
「雨宿りの方の約束は無効だから、お前は外に出さないし
まさかまだ僕に飼ってもらえるなんて甘いこと、考えてないよね?」
「………………」
いくら頭の回転が速くても、所詮は餡子脳。
一つのことを潜り抜けるのに精一杯でそこから先は考えてなかったみたいだ。
ま、ゴミ饅頭にしては大分頑張ったほうでしょ。
「それにお前にはわからいことだろうけど、別に僕が"約束"している相手は
お前だけに限ったことじゃないんだよ。
僕はね、小さな頃からずっと約束してることが一つあるんだ。
教えてあげようか?」
「………な……に………?」
「それはね、「街で見かけたゴミ饅頭は、必ずきちんと潰しましょう」ってことさ。」
「!!!!!」
「ところでさ、お前はゆっくりじゃないよね?お前は、何?」
「…………………」
「あー、なんか動かないゴミが落ちてるね。潰さないと。」
「………!!!
……っ…い……ゅ…す……」
「ゴメン、よく聞こえなかった。もっと大きな声でもう一回!」
「……くり……い…み……じゅう…す……」
「もう一声!」
「ばりざはゆっぐりじでないごみまんじゅうでずぅ!!!」
この瞬間のためにやってるようなもんだよなぁ、この遊びも。
「……はい!よく言えたね!じゃあゴミはゴミらしく潰れようか!!」
「どぼじで…どぼじでぇ………!!!」
「どうしてもこうしてもないさ、お前が望んでここに"雨宿り"に来たんだろ?」
「だずげでくだざい、ばでぃざまだじにだぐないんでずぅ…
づぶされだぐないぃぃ……」
「まあ別にいいじゃないか。ここで潰されるのも、雨に降られて溶けるのも、
お前達にとっては同じことなんだしさ。
わざわざご苦労様。まあ通り雨にでも遭ったと思って諦めなよ。
ってことでさ、じゃあね。楽しかったよ。」
「どぼじでごんなごどにぃぃ……ゆ゛ん゛!!!」
グシャリと、いとも簡単に饅頭は潰れ、二度と喋らなくなった。
―――――数十分後、饅頭専用廃棄場――――
「やれやれ、あれだけの量の饅頭抱えて
来るには少し遠すぎるんだよな、この廃棄場。」
遊び終わった僕は手っ取り早く部屋を片付け
饅頭の残骸を袋に詰めた後、住宅街から少し外れた饅頭廃棄場にゴミを捨てにきた。
遊んだ後のおもちゃは片付けるのがマナーというものだ。
それは子供も大人も関係ない。
条例って名前の“約束”もあることだしね。
しっかし、毎度最後に言うことは変わらないんだよな。
「どうしてこんなことに、しにたくない」 か……
その帰り道、河川敷を歩いていると、
濡れて潰れたダンボールと計五つほどの帽子とカチューシャだけを残し、
ドロドロに溶けたゴミ饅頭の跡があった。
多分さっきの通り雨でやられたんだろう。
――――これが饅頭と人間の差、越えられない壁だ。
いくら死にたくないとあいつらが喚いても
所詮は軽く雨に降られた程度で消えてしまう命。
そんな物に重みを感じろというのが無理な話だ。
だからこそ僕はこう思えるし、あいつらにああも軽く言えるのだろう。
運が悪かったと思って諦めろ、と。
いくらあいつらが、自分達だって生きているのに
どうしてこんなことをするのか、と訴えても
世間のゴミ饅頭に対する対応が変わるわけではない。
何をどうしようがゴミ饅頭は駆除され続けるだろうし
人々はあいつらを害虫としか認識せずに、
ペットショップで売られているゆっくりをかわいがるだろう。
僕だってそれは同じだ。
最終的に害虫は駆除するし、ゆっくりだって嫌いじゃない。
違うのは、あいつらをただのゴミ、害虫だと見るか
僕の歪んだ性癖の為のオモチャと見るか、それだけだ。
あいつらがあいつらである限り、それは変わらない。
生きていてもなんの益にもならず、全てに害のみをもたらす、
自分の命の軽さにも気付かずまるで対等のように話す滑稽な饅頭。
そして、それに気がつかないのも、あいつらゴミ饅頭だけ。
精々的外れな、届かない言葉を叫んでいるといい。
それが僕の楽しみになるのだから―――
っと、いらないことを考えている内に
結構時間が過ぎちゃったな。
もうそろそろ「あの子」が起きる時間だし
晩御飯の支度も始めないと。
一ヶ月ほど前に出会った、
人の心を読むことができるあの子―――
さとりと呼ばれる種のゆっくりが僕の家族になってから、
今まで事情があって一人寂しく暮らしていた、
僕の生活は周りが何もかもが違って見えるほど心豊かなものになった。
それまでは無くてはならなかったほどの
僕の趣味に、ほとんど執着心がなくなってしまうほどに。
そして僕が持てる限りの愛情で彼女と接した結果、
家に来たばかりの頃は心を殆ど閉ざしかけていたあの子も
今ではそれなりに、コミュニケーションを取れるようになっている。
友人に言わせれば、僕は他にそうはいないほどの親バカ(?)らしい。
まあ否定はしないけど、僕のさとりが一番可愛いのは事実だ。
少なくとも僕の中では。
いずれにせよ僕が確実に言える事は
絶対にあの子と、あんなゴミ共が同じ種の生き物などではない
ということである。
「さあ、あの子が心配しないうちに帰ろう。」
そう思って少し急ぎだした僕の頭には、もうあのゴミ饅頭のことは残っていなかった。
――――――――――
「ただいまー。
ああさとり、やっぱり起きてた?
ゆっくりしていってね。」
「お帰りなさい。
ええ、今さっきですけどね。
はい。ゆっくりしていってね!」
相変わらずゆっくりらしからぬ流暢さで話すね。
まあ希少種ではそう珍しい話ってわけでもないらしいんだけど。
それでも少しは誇らしくなるってもんだ。
「何でそんなことであなたが誇らしくなるんですか。」
仕方がない人だ、とでも言うような顔でさとりが答える。
そうすると、さとりは何かに気付いたようで、僕に聞いてきた。
「そういえば随分すっきりした顔をしてるんですね。
何かいいことでもあったんですか?
『少し楽しいことがあってね』…ですか?
まあ、いいです。
あなたの機嫌が良いに越したことはありませんから。」
「うん。思ったよりも熱中しちゃってさ。
ごめんね、君が起きる前に帰ってきたかったんだけど…」
「いいですよ、そんなこと気にしなくても。
……もう、本当にいいですってば。
そんなに心の底から悪いと思わなくっても、
私だって寝起きくらいならもう一人で十分です!」
まあ饅頭を騙したり陥れたりするのもいいんだけどさ
「『今日の夕食は何がいいか』ですか?なんでもいいですよ。
…あ、あなたの作ったものなら……」
―――やっぱりこの笑顔に勝る物なんか、無いよな。
少し照れくさそうに微笑む彼女を、心には浮かべないけど心底愛しく思いながら
僕は自分ができる最高の笑顔を見せて、彼女に答えた―――
・あとがき
自分の中にあるフラストレーションをぶつけた結果、
何がどうなったのかこうなりました。
個人的には凄くスッキリです。
さとりはゆっくりいち可愛いよ!でもてんこも負けず劣らず可愛いよ!!
希少種万歳!!
では、ここまで読んでくださった皆さんに感謝の言葉を。
どうもありがとうございました!