ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2133 4WDちぇん
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ankoss
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夜中の9時頃、都内にある安アパートの玄関の前で自宅を背後にあやは目の前に突きつけられたものに対してどうやって断りを入れればいいのかと難儀していた。
「あの、頼めないでしょうか」
幸薄そうに困り顔を見せるお隣の奥さんの顔が余計に断り難さを醸し出している。あやの顔が段々と渋くなっているのを見て、隣の奥さんは腰を曲げ、更に断り難い空気を作り始めた。
「お願いします!!」
それなら最初からペットを飼うなよとあやは心の中でため息を付いた。引越しをするからペットを引きとってくれないかと、そんな都合の良い話があるわけがない。説教の一つでもたれようかと思ったが、奥さんの腕の間に抱き抱えられているちぇんをみて言う気すら失ってしまった。
「わからないよ………」
ちぇんはあやの目に焦点をあわせてボソりと呟いた。何が分からないのか、そして何が分かるのか、あやはちぇんを見返して問いたい気持ちを抑えた。
一週間後、お隣が引越し、あやはルーチンワークである仕事を終えた帰りだった。飲みの誘いや男性とのデートもない、独り身の女性には冷たい社会ではあるが、あやは昔からの夢だった新聞記者の立ち位置に満足していた。
帰りのさなか、アパート付近の電柱からひょこっと丸いものが現れた。
「おねえさん、ゆっくりしていってねぇ……」
あの時、お隣さんがあやに勧めてきたちぇんである。
「ゆっくりしてないね」
普通のゆっくりだと見分けがつかないものだが、このちぇんは普通ではない。ゆっくりの亜種である四股付きゆっくりである。通常種とは別に足の裏に4本の足が生えているのが特徴だ。突然変異種なので稀少性が高く、この辺りでは見かけないゆっくりである。それなのに、加工場に預けずにバッジを外し野良として離してしまうあの家族にあやは辟易した。
「で、どうしたの? お姉さんは貴方を飼う気はないわ」
ちぇんは自分の言いたい事を突かれ、更には拒絶されてしまった。一瞬、信じられない気持ちで目の前が暗くなったが、現実がちぇんの目を覚まさせた。
「わ、わからないよぉ……」
ちぇんが唯一顔を知っていて気心を許せるのはあやだけであった。その為、あやが仕事から帰ってくるのを待っていたのだ。
「私だって忙しいの。貴方を飼う余裕はないわ」
更に絶望に顔を染められるちぇんにあやはトドメの一言を与えた。
「それに、貴方の胴にマジックで“4WD”って落書きされているじゃない。そんな薄汚いゆっくりを誰が好んで飼うと思っているの?」
ちぇんの右側の胴には確かに“4WD”と書かれている。以前の飼い主の子供に落書きされたのだ。
「でも、ちぇんは……」
顔を伏して考えこむちぇんを後にあやはそのままアパートの階段を登る。
あやも可哀相だと同情してやりたい気持ちはあったが、だからといって自分を犠牲にする気はなかった。
多分、これからちぇんは他の野良ゆっくりに迫害されながら生きていくしか無いのだろう。ゆっくりは胴付き等の亜種を許さない。この町の人間社会と共存するゆっくりの群にも馴染めない。そして、あの“4WD”の文字はちぇんを呪い続け、人間にすら馬鹿にされる続ける。
一ヶ月後、それでもちぇんは生き続けた。
あやの考えていたとおりに人間にも馬鹿にされ、他のゆっくりにも拒絶され、ひとりで生きていくしか無かった。
「ゆ! ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!! でていってね!!!」
ある時は公園内で寝泊りをしていたときに追い出されたり、
「へんなゆっくりがいるのぜ!! せいっさいだよ!!!」
「わがらっ……!!」
ある時はゴミあさりをしているときにゲスに襲撃され右耳をもがれたり、
「“4WD”だって! 誰だよ書いたヤツ!!」
ある時は小学生によってたかってなじられたり。
「わからないよ……」
ちぇんはゆっくりできなかった。物乞いをしようにも出会い頭に石を投げつけてくる人間すらいる状況でちぇんはこの街で孤立していた。だが、あやだけは声をかけてくれた。
「今日はどうしたの?」
いつものアパート前の電柱であやがロングスカートを気にしながらしゃがみ、ちぇんの目線に合わせた。
「ちぇんは、なにもしてないのにまりさにたいあたりされたよ……」
町のゆっくり達の清掃活動中に公園を横切ろうとしたら便所周りの掃除をしていたまりさに体当たりをされた。それもゲスな笑を浮かべながら。だが、反論しようにも周りのゆっくりがにらみを利かしているのでできない。
「どうして、こんなめにあうの、わからないよ……」
ちぇんは無意識に嘘を付いた。本当は分かっている。ちぇんは自分が差別されていることを分かっているのだ。
「今日もありがとうね。これ、おすそ分け」
胸ポケットから常備しているキャラメルを一つちぇんの口の中に放り込んだ。
「ありがとー!! わかるよぉ!!!!」
興奮しながらキャラメルをしゃぶるちぇん。それをあやは傍観しながらサラサラとメモを取った。
「それじゃあね」
「まってね!!」
流れるように帰ろうとするあやをちぇんは引き止めた。
「あのね、ちぇんを!」
「嫌だよ」
ちぇんを飼ってね。その一言も言えずちぇんは無表情のまま立ち去るあやの後ろ姿を眺めた。
あやは自宅に着くと今日一日撮った写真を机の上に拡げた。
「今日の写真はこれね」
写真に写っているのは先程のちぇんだ。あやはちぇんを観察してゆっくりについての記事を作成していた。
「こんどの、コンクールに間に合うかしら」
ゆっくり愛護団体が主催のゆっくり専門のコンクール。あやは四股というゆっくりの中では被差別対象である亜種がいかにして社会と共存していくかを取り扱ったレポートを提出するつもりなのである。
「これに優勝できれば私の名前は」
腹黒い願望を原動力にあやは文章を書き綴っていった。だが、予想以上にちぇんが追い詰められていることにあやは気づいていなかった。
“強盗ゆっくりあらわる”
『〇〇都内の7月下旬に人気の少ない川原を歩いていた40代女性の買い物バッグがゆっくりらしき生き物にひったくられた。なんとか取り返そうと追ってみたもののゆっくりとは思えぬ速さで逃走してしまった。警察は地元ゆっくりを当たっている』
その記事を読み上げてあやは今日も電柱に居るちぇんに問いかけた。
「犯人はお前か?」
「そうだよー」
ちぇんは悪びれること無く答えた。
「どうしてこんなことをする」
あくまで冷静に、あやはちぇんに聞いた。
「ちぇんがゆっくりするためにだよーわかれよー」
他にもちぇんは人間以外に町のゆっくりを襲っていることを克明に話してくれた。
「ちぇんはね、まえにたいあたりしたまりさのれいむをゆうかいしてすっきりーしてころしたよ! それから、れいむをゆんじちにしてまりさをおびきだしてきのえださんでたくさんさしてころしたよ!! とってもゆっくりできたよー!!!!」
ちぇんは四足がある分、足が早く、通常種よりも戦闘能力がある。そのため、押し入り強盗の真似ができる。ちぇんはそのことに気づき、ゲスとして生きることにしたのだ。
「ほかにはね、かいゆっくりのらんしゃまもすっきりーしたよ!! らんしゃまはちぇんのあいをいやがってたけど、きのえださんでほっぺさんをさしたらゆうことをきいてくれたよ!! あれはさいこうにゆっくりできたよー!!!」
「もういい……」
「ほかにはね!」
「もういいよ」
ちぇんは口を閉じた。あやから発せられる怒気に似た威圧感に押されたからだ。
「お前は、傲慢だな……所詮ゆっくりだよ……」
あやはちぇんの犯行を知っていた。仕事としてちぇんを追いかけていたから。人間に迷惑をかけるその姿まであやは見ていたのに、あやは警察にそのことを連絡しなかった。
あやも傲慢なのだ。ちぇんと言う題材を称え過ぎたあまりに人間としての義務を忘れてしまった。付け加えれば、ちぇんを正しい道に導いてやるのも隣人の勤めであった。
「あのにんげんはつかえないんだねーわかるよー!!」
あやと別れてから、ちぇんは自分のうちに込め続けていた怒りを顕にした。
「このいだいなちぇんさまのどれいにしてやるのにー」
最初はあやと一緒にゆっくりしたいだけだった。だが、人間やゆっくりが自分に冷たく、更には攻撃的であることから、ちぇんは自分を傷つけられたくない一心でゲスに変わった。非差別的なポジションが世の中への諦観を作り出し、ちぇんは流されるようにどっぷりとその思想に漬かったのだ。
ちぇんが歩いていると目の前にあまあまを詰めた袋を持った人間がいる。あたりを見回しても誰もいない。
「はらいせなんだねーわかるよー」
四肢を動かし、袋へと駆け抜ける。
相手側の歩くタイミングで手が前後に動いている。袋を持つ手が前に大きくふられるタイミングを見計らい袋の取っ手にかぶり付いた。
「うわっ!」
「わぎゃ」
だが、手からビニール袋は外れなかった。持ち主はビニールの取ってを交差して握っていたのだ。だから、外れなかった。
「じばっ」
作戦は失敗。急いで口からビニールを話して逃亡をはかろうとするが、
「お前!!」
恐ろしく大きく見える手がちぇんの髪の毛をつかんだ。そして、そのまま男の目の前へと持ち上げられた。
「てめぇ……」
男の目にちぇんは生まれて初めて死を感じた。瞳孔の色が濃すぎてどこまでも目が大きく見えるのだ。本当にヤバイ、逃げたい。その本能がちぇんの体を巡らせ膠着状態を緩和させるが時はすでに遅し。
バチンと景気のいい音が夜の静寂に響く。髪をつかんだまま張り手をかまされた。
「がぁああああ!!!!」
体中に振動が行き渡り、口からもチョコがこぼれた。なによりも、叩かれた部分に焼けるような痛みが走るのだ。
「やべでえええ!!!!」
声むなしく、何度も何度も平手打ちにされた。その度に口や肛門、目からも少量ながらあんこが出てくるのだ。男は腹いせにやった行動だが、この姿が滑稽に思い行為をエスカレートさせた。
「ハハハハハハハ!!!!」
数十回の平手打ちを終え、生きているのが不思議なほどに弱ったちぇんは地面にたたきつけられた。その地面の横には先程からこぼしていったチョコと圧力で吹っ飛んでしまった両目が落ちている。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
痙攣する体。痛みを超越し体が感じなくなってしまったときにちぇんは走馬灯のような疎明な思考空間を開いた。なぜ、こんな目に会うのだろうか。順々に度れば、自分の失敗であり、または、
「わが、わ、わ、ああ」
あやが自分を飼ってくれなかったから。元の飼い主が自分を飼い続けなかったから。ひいては自分の胴に“4WD”の呪いをかけたから!!
「わがあああああああああ!!!」
最後に全てを理解し、恨みに満ちた人生は男の容赦のない踏みつけで終わった。
ちぇんの死をニュースで確認したあやは今まで集めた写真を見比べる。その目はいつも通りどこか冷淡で優しさを秘めた目だ。
書いたやつ
anko1864 まりさは“英雄ん”なのぜ! 1
anko1876 まりさは“英雄ん”なのぜ! 2
anko1986 まりさは“英雄ん”なのぜ! 3
anko1992 まりさは“英雄ん”なのぜ! 番外編
anko1995 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 前編
anko1999 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 後編
anko2026 ゆっくりの権利
anko2089 此の世のひがん
anko2108 ゆっくりしていってねだどー☆
anko2129 『四股付きゆっくり』
anko2132 ゆっくり学
あとがき
・リベンジ作。いまだにSSらしいSSが出来てない。
・4WDはある画像が元ネタ。この文字のせいでちぇんは加工場には送れなかった。
・四股付きゆっくりとは別に考えていたもう一つを書いてみました。終始善良なゆっくりで社会に振り回されるものの方が面白かったかもしれませんが、労力的にきついのでゲスに逃げました。また四股物を書くときは善良なものを書いてみたい。
・固定概念に踊らされた気がしてなりません。次は四股も認められている世界観を書いてみたい。
・嘘をついている。私は嘘をついている。要するに猜疑心を持って欲しいと言う意味を込めて嘘をついていると私は常に言い続けます。ウザったいと思うなら見ない方がいいですよ。
・ぶっちゃけこれもノリで書いただろ。うん、そうです。本当、ノリでしか書けない場合が多いので文句は言わないで。普通のSSさんを書こうとしても気分が乗らないのです。本当に無理です。書けないのです。書かないという選択肢を選んだら、本当に書けなくなってしまいます。稚拙な文章を見せ続けるかもしれませんが、どうか寛大なお心で。
・正直、私の性格自体に文句を言われてゆっくりできない。あとがきやめる。
「あの、頼めないでしょうか」
幸薄そうに困り顔を見せるお隣の奥さんの顔が余計に断り難さを醸し出している。あやの顔が段々と渋くなっているのを見て、隣の奥さんは腰を曲げ、更に断り難い空気を作り始めた。
「お願いします!!」
それなら最初からペットを飼うなよとあやは心の中でため息を付いた。引越しをするからペットを引きとってくれないかと、そんな都合の良い話があるわけがない。説教の一つでもたれようかと思ったが、奥さんの腕の間に抱き抱えられているちぇんをみて言う気すら失ってしまった。
「わからないよ………」
ちぇんはあやの目に焦点をあわせてボソりと呟いた。何が分からないのか、そして何が分かるのか、あやはちぇんを見返して問いたい気持ちを抑えた。
一週間後、お隣が引越し、あやはルーチンワークである仕事を終えた帰りだった。飲みの誘いや男性とのデートもない、独り身の女性には冷たい社会ではあるが、あやは昔からの夢だった新聞記者の立ち位置に満足していた。
帰りのさなか、アパート付近の電柱からひょこっと丸いものが現れた。
「おねえさん、ゆっくりしていってねぇ……」
あの時、お隣さんがあやに勧めてきたちぇんである。
「ゆっくりしてないね」
普通のゆっくりだと見分けがつかないものだが、このちぇんは普通ではない。ゆっくりの亜種である四股付きゆっくりである。通常種とは別に足の裏に4本の足が生えているのが特徴だ。突然変異種なので稀少性が高く、この辺りでは見かけないゆっくりである。それなのに、加工場に預けずにバッジを外し野良として離してしまうあの家族にあやは辟易した。
「で、どうしたの? お姉さんは貴方を飼う気はないわ」
ちぇんは自分の言いたい事を突かれ、更には拒絶されてしまった。一瞬、信じられない気持ちで目の前が暗くなったが、現実がちぇんの目を覚まさせた。
「わ、わからないよぉ……」
ちぇんが唯一顔を知っていて気心を許せるのはあやだけであった。その為、あやが仕事から帰ってくるのを待っていたのだ。
「私だって忙しいの。貴方を飼う余裕はないわ」
更に絶望に顔を染められるちぇんにあやはトドメの一言を与えた。
「それに、貴方の胴にマジックで“4WD”って落書きされているじゃない。そんな薄汚いゆっくりを誰が好んで飼うと思っているの?」
ちぇんの右側の胴には確かに“4WD”と書かれている。以前の飼い主の子供に落書きされたのだ。
「でも、ちぇんは……」
顔を伏して考えこむちぇんを後にあやはそのままアパートの階段を登る。
あやも可哀相だと同情してやりたい気持ちはあったが、だからといって自分を犠牲にする気はなかった。
多分、これからちぇんは他の野良ゆっくりに迫害されながら生きていくしか無いのだろう。ゆっくりは胴付き等の亜種を許さない。この町の人間社会と共存するゆっくりの群にも馴染めない。そして、あの“4WD”の文字はちぇんを呪い続け、人間にすら馬鹿にされる続ける。
一ヶ月後、それでもちぇんは生き続けた。
あやの考えていたとおりに人間にも馬鹿にされ、他のゆっくりにも拒絶され、ひとりで生きていくしか無かった。
「ゆ! ここはまりさたちのゆっくりぷれいすだよ!! でていってね!!!」
ある時は公園内で寝泊りをしていたときに追い出されたり、
「へんなゆっくりがいるのぜ!! せいっさいだよ!!!」
「わがらっ……!!」
ある時はゴミあさりをしているときにゲスに襲撃され右耳をもがれたり、
「“4WD”だって! 誰だよ書いたヤツ!!」
ある時は小学生によってたかってなじられたり。
「わからないよ……」
ちぇんはゆっくりできなかった。物乞いをしようにも出会い頭に石を投げつけてくる人間すらいる状況でちぇんはこの街で孤立していた。だが、あやだけは声をかけてくれた。
「今日はどうしたの?」
いつものアパート前の電柱であやがロングスカートを気にしながらしゃがみ、ちぇんの目線に合わせた。
「ちぇんは、なにもしてないのにまりさにたいあたりされたよ……」
町のゆっくり達の清掃活動中に公園を横切ろうとしたら便所周りの掃除をしていたまりさに体当たりをされた。それもゲスな笑を浮かべながら。だが、反論しようにも周りのゆっくりがにらみを利かしているのでできない。
「どうして、こんなめにあうの、わからないよ……」
ちぇんは無意識に嘘を付いた。本当は分かっている。ちぇんは自分が差別されていることを分かっているのだ。
「今日もありがとうね。これ、おすそ分け」
胸ポケットから常備しているキャラメルを一つちぇんの口の中に放り込んだ。
「ありがとー!! わかるよぉ!!!!」
興奮しながらキャラメルをしゃぶるちぇん。それをあやは傍観しながらサラサラとメモを取った。
「それじゃあね」
「まってね!!」
流れるように帰ろうとするあやをちぇんは引き止めた。
「あのね、ちぇんを!」
「嫌だよ」
ちぇんを飼ってね。その一言も言えずちぇんは無表情のまま立ち去るあやの後ろ姿を眺めた。
あやは自宅に着くと今日一日撮った写真を机の上に拡げた。
「今日の写真はこれね」
写真に写っているのは先程のちぇんだ。あやはちぇんを観察してゆっくりについての記事を作成していた。
「こんどの、コンクールに間に合うかしら」
ゆっくり愛護団体が主催のゆっくり専門のコンクール。あやは四股というゆっくりの中では被差別対象である亜種がいかにして社会と共存していくかを取り扱ったレポートを提出するつもりなのである。
「これに優勝できれば私の名前は」
腹黒い願望を原動力にあやは文章を書き綴っていった。だが、予想以上にちぇんが追い詰められていることにあやは気づいていなかった。
“強盗ゆっくりあらわる”
『〇〇都内の7月下旬に人気の少ない川原を歩いていた40代女性の買い物バッグがゆっくりらしき生き物にひったくられた。なんとか取り返そうと追ってみたもののゆっくりとは思えぬ速さで逃走してしまった。警察は地元ゆっくりを当たっている』
その記事を読み上げてあやは今日も電柱に居るちぇんに問いかけた。
「犯人はお前か?」
「そうだよー」
ちぇんは悪びれること無く答えた。
「どうしてこんなことをする」
あくまで冷静に、あやはちぇんに聞いた。
「ちぇんがゆっくりするためにだよーわかれよー」
他にもちぇんは人間以外に町のゆっくりを襲っていることを克明に話してくれた。
「ちぇんはね、まえにたいあたりしたまりさのれいむをゆうかいしてすっきりーしてころしたよ! それから、れいむをゆんじちにしてまりさをおびきだしてきのえださんでたくさんさしてころしたよ!! とってもゆっくりできたよー!!!!」
ちぇんは四足がある分、足が早く、通常種よりも戦闘能力がある。そのため、押し入り強盗の真似ができる。ちぇんはそのことに気づき、ゲスとして生きることにしたのだ。
「ほかにはね、かいゆっくりのらんしゃまもすっきりーしたよ!! らんしゃまはちぇんのあいをいやがってたけど、きのえださんでほっぺさんをさしたらゆうことをきいてくれたよ!! あれはさいこうにゆっくりできたよー!!!」
「もういい……」
「ほかにはね!」
「もういいよ」
ちぇんは口を閉じた。あやから発せられる怒気に似た威圧感に押されたからだ。
「お前は、傲慢だな……所詮ゆっくりだよ……」
あやはちぇんの犯行を知っていた。仕事としてちぇんを追いかけていたから。人間に迷惑をかけるその姿まであやは見ていたのに、あやは警察にそのことを連絡しなかった。
あやも傲慢なのだ。ちぇんと言う題材を称え過ぎたあまりに人間としての義務を忘れてしまった。付け加えれば、ちぇんを正しい道に導いてやるのも隣人の勤めであった。
「あのにんげんはつかえないんだねーわかるよー!!」
あやと別れてから、ちぇんは自分のうちに込め続けていた怒りを顕にした。
「このいだいなちぇんさまのどれいにしてやるのにー」
最初はあやと一緒にゆっくりしたいだけだった。だが、人間やゆっくりが自分に冷たく、更には攻撃的であることから、ちぇんは自分を傷つけられたくない一心でゲスに変わった。非差別的なポジションが世の中への諦観を作り出し、ちぇんは流されるようにどっぷりとその思想に漬かったのだ。
ちぇんが歩いていると目の前にあまあまを詰めた袋を持った人間がいる。あたりを見回しても誰もいない。
「はらいせなんだねーわかるよー」
四肢を動かし、袋へと駆け抜ける。
相手側の歩くタイミングで手が前後に動いている。袋を持つ手が前に大きくふられるタイミングを見計らい袋の取っ手にかぶり付いた。
「うわっ!」
「わぎゃ」
だが、手からビニール袋は外れなかった。持ち主はビニールの取ってを交差して握っていたのだ。だから、外れなかった。
「じばっ」
作戦は失敗。急いで口からビニールを話して逃亡をはかろうとするが、
「お前!!」
恐ろしく大きく見える手がちぇんの髪の毛をつかんだ。そして、そのまま男の目の前へと持ち上げられた。
「てめぇ……」
男の目にちぇんは生まれて初めて死を感じた。瞳孔の色が濃すぎてどこまでも目が大きく見えるのだ。本当にヤバイ、逃げたい。その本能がちぇんの体を巡らせ膠着状態を緩和させるが時はすでに遅し。
バチンと景気のいい音が夜の静寂に響く。髪をつかんだまま張り手をかまされた。
「がぁああああ!!!!」
体中に振動が行き渡り、口からもチョコがこぼれた。なによりも、叩かれた部分に焼けるような痛みが走るのだ。
「やべでえええ!!!!」
声むなしく、何度も何度も平手打ちにされた。その度に口や肛門、目からも少量ながらあんこが出てくるのだ。男は腹いせにやった行動だが、この姿が滑稽に思い行為をエスカレートさせた。
「ハハハハハハハ!!!!」
数十回の平手打ちを終え、生きているのが不思議なほどに弱ったちぇんは地面にたたきつけられた。その地面の横には先程からこぼしていったチョコと圧力で吹っ飛んでしまった両目が落ちている。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
痙攣する体。痛みを超越し体が感じなくなってしまったときにちぇんは走馬灯のような疎明な思考空間を開いた。なぜ、こんな目に会うのだろうか。順々に度れば、自分の失敗であり、または、
「わが、わ、わ、ああ」
あやが自分を飼ってくれなかったから。元の飼い主が自分を飼い続けなかったから。ひいては自分の胴に“4WD”の呪いをかけたから!!
「わがあああああああああ!!!」
最後に全てを理解し、恨みに満ちた人生は男の容赦のない踏みつけで終わった。
ちぇんの死をニュースで確認したあやは今まで集めた写真を見比べる。その目はいつも通りどこか冷淡で優しさを秘めた目だ。
書いたやつ
anko1864 まりさは“英雄ん”なのぜ! 1
anko1876 まりさは“英雄ん”なのぜ! 2
anko1986 まりさは“英雄ん”なのぜ! 3
anko1992 まりさは“英雄ん”なのぜ! 番外編
anko1995 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 前編
anko1999 まりさは“英雄ん”なのぜ! 4 後編
anko2026 ゆっくりの権利
anko2089 此の世のひがん
anko2108 ゆっくりしていってねだどー☆
anko2129 『四股付きゆっくり』
anko2132 ゆっくり学
あとがき
・リベンジ作。いまだにSSらしいSSが出来てない。
・4WDはある画像が元ネタ。この文字のせいでちぇんは加工場には送れなかった。
・四股付きゆっくりとは別に考えていたもう一つを書いてみました。終始善良なゆっくりで社会に振り回されるものの方が面白かったかもしれませんが、労力的にきついのでゲスに逃げました。また四股物を書くときは善良なものを書いてみたい。
・固定概念に踊らされた気がしてなりません。次は四股も認められている世界観を書いてみたい。
・嘘をついている。私は嘘をついている。要するに猜疑心を持って欲しいと言う意味を込めて嘘をついていると私は常に言い続けます。ウザったいと思うなら見ない方がいいですよ。
・ぶっちゃけこれもノリで書いただろ。うん、そうです。本当、ノリでしか書けない場合が多いので文句は言わないで。普通のSSさんを書こうとしても気分が乗らないのです。本当に無理です。書けないのです。書かないという選択肢を選んだら、本当に書けなくなってしまいます。稚拙な文章を見せ続けるかもしれませんが、どうか寛大なお心で。
・正直、私の性格自体に文句を言われてゆっくりできない。あとがきやめる。