ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0216 割とどうでもいい話
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ankoss
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注意書き
スレでのとあるレスが元ネタです。
人間による虐待成分は皆無。
独自設定注意。
読んだらスッキリできない可能性があります。仕様です。
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「「「「「「ゆっくりしていってねっ!!」」」」」」
そこはゆっくり達にとって理想的なゆっくりプレイスだった。
いつからその場所が存在したのかゆっくり達は誰も知らないし知ろうともしない。森の
遠くには白いなにかが存在して、お日様も動いたりはしないけど、ここで産まれたゆっく
りにはそれが普通。
ここにいるのは巨大な群れであり群れでは無い。
なぜなら天敵はいないし餌にも困らない。時々雨が降るけれどよほどのろまなゆっくり
でも無い限り溶けはしない。生き残るための知恵として群れるという必要が無いのだ。
あるとすればそれはせいぜい繁殖のため。それだって軽く見渡せばあちこちにあらゆる
ゆっくりがいるのが分かる。
そこにはおよそ全ての種がいる。まりさやれいむ、ぱちゅりーやありす種は言うに及ば
ず、ちぇんにみょんにもこうにさなえにちるのにらんにゆかりんに………。
およそ捕食種と言われる種以外が自由に暮らしている。
そんな環境だからすっきりだってやりたい放題で、子育てだって真面目にやる番もあれ
ば適当に子供を放りだす個体もいる。それでもどれだけ増えてもゆっくり達が餌に困る事
は無い。
レイパーだってほとんど存在しない。もし現れてもすぐにどこかに消えてしまうからだ。
栄養豊富なゆっくり達ばかりのために大抵は親が干涸びても子供は大量に干涸びる事無く
産まれ落ちる。普通の群れならレイパーの子として迫害されるがまず餌の心配がない為に
物好きなゆっくりが育てる事も多い。
さて、なぜ餌の心配が無いかと言うと。
「ゆっ! にんげんさんがきたよっ!!」
めざといゆっくりの一匹が森の奥から現れた人間達を見つけて声を上げた。その複数の
人々は全てがリヤカーで巨大な餌の山を運んで来ていた。
「おちびちゃんごはんのじかんだよっ!!」
「にんげんはとっととあまあまをよこすんだぜっ!!」
「ばかなにんげんはとっととれいむのためにごはんをおいてってねっ!! かわりにれい
むのうんうんあげるからよろこんでたべてねっ!!」
「「「うんうんたべちぇねっ!!」」」
ほぼ全てのゆっくりはこの人間達を都合の良い奴隷か道具程度にしか思って無いので姿
をみるやいなや罵詈雑言を浴びせかける。中にはこれ見よがしに目の前でうんうんをして
みたり体当たりを仕掛けたり、人間にしーしーをかけようとするものもいる、が。
「ゆっくりとまってね! こっちこないでね!! たいやさんこっちぐるな…ばあっ!!」
「よぐもでいぶをぉぉぉ!! ゆっぐりじねぇぇ!!! ぶべぇ!!」
牽いて来たリヤカーの前に自ら出て来て潰されていくゆっくりが何匹か出るが、いつも
の事である。比較的頭が良く、学習しているゆっくり達はそんな潰れたゆっくり達を見て
蔑み笑うのもいつもの光景。
「ぷぷっ!! えささんがとまるまえにまえにでてつぶされるなんてゆっくりできてない
ねっ!!」
「ほんとだねっ!! ゆっくりできないばかなゆっくりだねっ!!」
中には潰れたゆっくりを食べ始めるゆっくりもいる。
「うっめっ!! これめっちゃうめっ!!」
「やべ…で……でいぶ…の……なかみ……だべない…………ゆ”っ…ゆ”っ………」
だがそんな行動を止めるゆっくりも人間もいない。人間はもってきた山盛りの餌をスコッ
プで乱雑に餌を掬っては周囲のゆっくりの群れにばらまいていくだけだし、ゆっくりは降っ
てくる餌を食べるのに夢中である。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」
「ここにあるごはんはぜんぶまりさのものだよっ!! たべないでねっ!!」
「これぜんぶたべるとかまりさはばかなの?」
「さいきょー!!」
「ばかなまりさはゆっくりできないみょんっ!!」
「ゆっくりできないゆっくりはゆっくりじゃないねー! わかるよー!」
餌を自分のもの宣言したまりさが潰されたりしてるが、基本的にはここにいるゆっくり
達が食べ切れない程度の量があるのでおおむね平和な食事光景ではある。
人間達は無言のまま餌を配り終えるとそのまま空のリアカーを牽いて戻っていく。また
何匹かそれに轢かれたり、人間に踏まれたりしたが誰も気にも止めない。
「おなかもいっぱいになったしおうたをうたってゆっくりしようねっ!!」
「ゆ~♪ ゆゆ~ん♪ ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪ ゆっ♪」
「まぁりさぁ!! すっきりしま”しょうね”ぇぇぇええ!!」
「やべでえぇぇぇ!! でいばーがいる”うぅぅぅぅ!!」
「むきゅ、おちびちゃんごはんをたべたらおべんきょうのじかんよっ!!」
「にゃにいっちぇるの? れいみゅはおにゃかいっぱいににゃったからにぇるんだよ!?」
「みゃみゃはゆっきゅりできゅにゃいよっ!! ぴゃちゅりーみょおひりゅねしゅりゅん
ぢゃからじゃみゃしにゃいでっ!」
「ゆっくりのひ~♪ まったりのひ~♪ すっきりのひ~♪」
「あたいったらさいきょうにゆっくりねっ!!」
食事が終われば大抵のゆっくりは好き勝手に遊び始める。中にも物足りなくて地面に転
がっている餌の滓を舐めとっているものや、その辺に生えている草や土を掘って虫を探し
たりするものとゆっくりした光景が広がっている。
大抵はこの時間ですっきりをする個体が大勢現れるため、ここでは個体数が日々数割程
度増えている。
が、それにも関わらずここにいる個体は精々が生体だけなら1000匹前後と言ったと
ころ。毎日毎日知り合いのゆっくりが少しづつ消えているのだが、四つ以上の数が数えら
れないゆっくりにはなんとなくでも増えても減ってもいないということを感じてすらいな
い。
────────────────────────────────────────
夜。全てのゆっくりが寝静まった頃、何人もの人間が大きな袋をもってやって来た。
ここはとある施設であり、彼等は職員である。人工的な森を模したこの施設は全国にあ
るが、内部でこうやってゆっくりを繁殖させていることを一般の人々はほとんど知らない
し、知ったとしても研究に使われることくらいにしか思わないだろう。
事実、ここで増やしたゆっくりはその幾らかを加工場に卸したり、希少種に関してはそ
のほとんどをペットショップなどに卸して活動資金の一部に換えている。たまにある爆発
的繁殖で増え過ぎればゆっくりの餌であるゆっくりフードの原材料になったりもするが、
基本的な目的は他にあった。
ここではたまたま屋内での擬似的な森での生育だが、他所では廃園になった動物園跡地
などを活用する事もある。産まれたゆっくりは全て一定数になるまで餌の供給以外人間の
関与を受けずに生活させる。
つまりは野生に近いゆっくりを大量に生産する施設だ。
餌が取れないのは問題では無い。どうせここにいるほとんどのゆっくりはそのゆっくり
した生活と栄養に寄り普通の野生にとって美ゆっくりに映り、大抵が母体役に回るからだ。
子育ては本能的に行うのでこれも問題は無い。時々自分勝手なのもいるがそこまでは関係
が無い。
ありす種についてはレイパーになった時点で自動的に捕獲され他の区画に集められる。
職員二名は夜の餌に混ぜられた睡眠薬で全く起きる気配のないゆっくりのなかから独り
立ちできる生体を選びだして袋の中へ詰め込んでいく。その際、動く事の出来ない妊娠個
体は除いていく。
「んー、今日は何匹?」
「300と少しくらいだろうなー。今回の希少種系はさなえ2にらん1な」
「ゆっくりらんかー。持ち帰って虐待してえなぁ……」
「最近すわこ種が増え過ぎたらしいから来週あたりそっちならなんとかなるんじゃね?」
「全部卸したら余裕で希少種値崩れするもんなー。俺としては安価で手に入った方がいい
んだが……」
「まあ処分品を処分する前に好きにできるからいいんじゃね?」
「そーでもしねーと毎日がストレスで全員死んでるって」
「そりゃそーだ」
職印の無駄話とともに選別され袋に詰められたゆっくり達はそのまま複数の車へと運び
込まれ、あらかじめ設定されている、人の生活圏から離れたゆっくりのいる森や山へと運
ばれていく。
「何でこんな山奥に放つかねぇ」
「人里近くのは駆除で一気に激減するし元々寄ってくるから意味無いんだよ。
まずはこういう奥地に放って繁殖させて溢れたのが移動してくるようにしないとな」
ゆっくりは繁殖能力が高い。が、それも当初の話。人間に害獣と認識されるようになっ
てからは徐々にその総個体数が減って来ているのだ。このままでは遠からず絶滅してしま
うかもしれない。
さて、その正体がたとえ動く饅頭であったとしても絶滅危惧種になると話は変わってく
る。というか問題にしようとする人々も現れる。たとえまだそうなるのが遠くても。
誰がとち狂ったのかそれとも利権でも動いたのか、様々な思惑に寄ってなぜか出来上がっ
てしまった特殊法人としてのこの施設の役割は表向きはゆっくりの研究である。
が、実際はこうして繁殖させたゆっくりを山奥に解き放っての個体調整と、増え過ぎた
箇所での間引きである。
一応ある程度の事前調査によって放たれる個体数が決められ、人の生活圏への被害が及
ばないよう計算されてはいる。が、そこは不思議饅頭生物。いざ現地に付いてみれば、す
でに野生種が見渡す限り大規模繁殖を重ねていたために駆除する事になってしまったり、
あっという間に生息範囲が人里に到達して被害を出したりなど日常茶飯事である。おかげ
で風当たりが強いのは火を見るより明らかであり、あまり表立って喧伝出来るような仕事
ではなくなってしまった。
ちなみに通常のゆっくりだけではバランスが悪くなるために捕食種も別区域で繁殖させ
ている。
そして先のようにレイパー判定されたありす種は、人の手が入らない増え過ぎた地域に
おける個体調整役として100匹単位で纏めて放たれる。実際のところ総数では減ってい
るとはいえ、人の手の届かないところでは増え過ぎる地域が多いため、駆除剤の変わりに
なるレイパーありすはある意味で希少種より貴重だったりする。道具としてだが。
個体調整役というのは、レイパーありすの被害が多くなるとその地域のゆっくりは激減
と同時に用心深くなり(ゆっくり基準でだが)、ありす種に不信を抱いてありす種全体の
総数が減る。ありす種が減るとまたゆっくりの総数が増える。全体が増えるとありす種も
増えていきレイパーありすの割り合いも増加する。そしてその頃には代替わりが重なり、
レイパーありすへの注意力がほぼなくなって最初に戻ると言うわけだ。
通常種の中で行われるサイクルだけに、捕食種を多く解き放つよりも長期的にみると増
減調整のバランスが良い具合に安定するのだ。
結局、ゆっくりの総数が減る最大の要員は捕食種でもレイパーなどではなく人の手によ
るものだ。
職員は森に入ってすぐの場所に持って来たゆっくりを全て地面にばらまくとそのまま車
で帰っていく。
後に残されたのは夜の森の中で無防備に眠るゆっくり達だけである。
────────────────────────────────────────
「「「「「「ゆっくりおきるよっ!!」」」」」」
「「「「「「ゆっくりおきたよっ!!」」」」」」
次の日、陽も高く上がった頃に放置されたゆっくり達が起きて騒ぎ始める。運が悪けれ
ば捕食種に見つかり四分の一程度は食われて消えていたり雨で溶けたりするがそれは稀で
ある。
そこはゆっくりの総数自体が少ない地域だからこそ放たれたわけだし、比例して捕食種
の生息数もすくないからだ。雨に関しては数日間は晴れになる予報を元に日にちを決めら
れているのでそう言う面では事故死は少ない。
「ゆーん。おなかがすいたよっ!! のろまなにんげんはまだこないのっ!?」
「ばかなにんげんだねっ!! こんなにまりささまがおなかすかせてるのにもってこない
なんてあほなの? あんこのうなの?」
産まれてこの方まともに餌をとっていない個体ばかりのため最初は来るはずも無い人間
を罵倒しながら待ってゆっくりはその場を動こうとはしない。
「ゆ、なんかおいしそうな匂いがするよっ?」
「むきゅっ! このお花は食べられるお花ねっ!」
「うっめ、このくさめっちゃうめっ!!」
そのため施設で与えられる餌は研究によりゆっくりにとって虫や花などよりもわずかに
美味しく無いものが作られて与えられている。このゆっくり達は産まれてからずっとその
餌を食べていたから、それが味覚の基準になっているが。
ここで手間を掛けてるのは舌が肥えていると野生の餌を取らずに餓死して全滅する確率
がほぼ100%になるからだ。
それでも貰う事に慣れたこの集団が一週間野生で生きられる確率は半分を割っている。
生体として独り立ちできる大きさにも関わらず。脆い生き物である。
「ゆっ!? いつものしろいかべさんがないよ?」
「ゆゆ~ん。なんかいつもとちがうにおいがするんだよー♪ たんけんだねわかるよー!」
お腹が空いてその辺の草を食べるもの、物珍しさに森の奥へと進んでいくゆっくりが出
始める。果たしてこの集団の何割が生き残り、子を成す事ができるのか。運がよければそ
の日の内に先住のゆっくりに出会う事もあるだろうが。
「あんなところにありすがいるんだぜっ!! ちょうどすっきりしたかったんだぜっ!!」
森の奥に入っていったゆっくり達の一匹がどうやら元々この森に住んでいたゆっくりを
見つけたようだ。このまりさは目に付く食べれそうな物を片っ端から口に入れていたため、
満腹になってすっきり欲がでてきたらしい。
「ゆっくりしていってねっ!!」
そのまりさは奥に見えるありすに向かって定番の挨拶をするが。
「んほぉぉぉ!! かわいいまりさぁぁ!! とかいはなあいをあげるわぁぁぁ!!」
「ゆんあぁぁぁ!! れいぱーありすだぁぁああぁ!!!!」
慌てて来た道を正反対に戻っていくまりさ。施設ではレイパーありすが定期的に発生し
ていたから反応は速く、仲間達のいる場所に向かって一直線に跳ねていく。
「まりさですってっ!?」
「まりさ?」「まりさ!?」「まりさなのねっ!!」「んほぉぉぉ!!!!」
だが大声を上げたのは致命的だったらしい。声に反応して周囲から出て来たありす達が
逃げていくまりさを見つけて、どんどんとそれを追うありすに合流していく。まりさはちょ
うど野生のレイパーの群れに飛び込んだ形になり、一匹のまりさが十数匹のレイパーあり
すを引き連れている状態になった。
餌の豊富なところでゆっくりしていただけに運動不足で追い付かれそうになるまりさ。
「でいばーはごっぢにぐるな”あぁぁ!!」
「にげるなんておくてなのねぇぇぇ!!!! おいかけっこももえるわあぁぁ!!」
結局逃げ切れずに最初にいた広場の手前で捕まるまりさ。全身余すところ無くありすに
埋め尽くされて、あっさりと茎まみれになって干涸びていく。
そして、そのまりさにありつけなくて不満を溜めていた一匹がその痴態を無視して声を
上げる。
「あんなところにもまりさがいるわ!!」
「あそこにはれいむもいるわ!!」
見つけたのは人間によってここに置いていかれたゆっくりの集団だった。二割程度は森
の中に散ってはいたが、施設の環境では移動することなど必要無かったため、ほとんどの
ゆっくりが永遠に来ない餌を求めて未だに騒ぎ続けていた。
「んほぉぉぉ!! よりどりみどりよぉぉぉ!!」
「とがいばなあ”い”をあげるわ”あぁぁあ!!」
「「「れいぱーはゆっぐりできないぃぃぃぃ!!!」」」
混乱に陥る百数十匹のゆっくりとそれに突撃していく十数匹のありす。どうやら集団の
中からもいまごろレイパー気質を発揮したありすまで出たようで、さらに混乱に拍車が掛
かる。
おそらく数時間もしない内にそこは黒ずんだ餡子の塊で埋め尽くされることが確定した。
今回の繁殖目的で放った個体はほぼ全滅のようである。
「やべでぇぇえええ!!」
「すっぎりじだぐないぃぃぃぃ!!」
「だれがでいぶをだずげろぉぉぉ!!」
「わがらないよぉぉぉ!!」
「すっきりした…エレエレエレ…………ゲブッ!」
「すべすべのおはだぎもぢい”い”わ”ぁぁ!!」
「ありすにすっきりさせられるなんてしあわせものよぉぉぉぉ!!」
「んほぉぉぉ!! でいぶのまむまむざいごうだわ”ぁぁぁ!!」
「ありすのあいがさいこうなのねぇぇぇ!! わかるわあぁぁ!!」
「なかみをはいたぱちゅりーもさいこうよぉぉ!! おはだがすべすべになるわぁぁ!!」
極めて脆く増減の激しい不思議生物。それだけにこのような事例は数多く存在する。だ
が彼等の役割はゆっくり達が生態系を壊滅的にしない程度に増殖させ、また減少させてあ
る程度の個体数を維持する事である。
全体として総個体数が減っている現在、一回放つ事で一匹でも繁殖に成功すればそれは
絶滅を防ぐと言う意味では一応の成功なのである。
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さて当然の話だが、人間の手が入ってゆっくりさせすぎてしまったゆっくり達は大抵ほ
とんどが増長する。それが原因で野生の群れに適応できなかったりする事も多々あるが、
元々のゆっくりの大半の形質はそうなので増減としては長期的には問題にはならず、数を
放つ事で個体数としてはプラスにはなっている。
が、施設の設立からして適当だっただけに上から下まで完全にゆっくりのことを考えて
るような人間はいない。すなわちゆっくりのことを本当の意味で良く知っている人間もい
ない。
「ゆへんっ!! まりさはつよいんだよっ!! やられたくなかったらにんげんさんはま
りさにあまあまちょうだいねっ!!」
ゆっくりに関わった人間なら一度は見た事のある光景。そのまりさは人間に向かって丸
い体躯をふんぞり返らせながら目の前に青年にそう要求した。
『にんげんさんはゆっくりできないんだよっ!!』
『にんげんさんにあったらゆっくりできなくさせられるよっ!!』
親ゆっくりはそう言ったが、この若いまりさはこの人里に近い群れの中では狩りは得意
でゆっくり同士での喧嘩も強いため増長していた。人里に近いために人間の恐ろしさを説
くゆっくりも多いがまりさはそんな話しを全く信じていない。
なぜなら。
(にんげんさんはゆっくりをゆっくりさせるためにそんざいしてるんだよっ!!)
餡子の奥底に、人間はゆっくりをゆっくりさせるというゆっくりできた記憶が受け継が
れていたから。
誰も知る由はないが、まりさの餡子を辿っていけばあの施設のゆっくりの一匹に辿り付
いただろう。
あの時、無言でただ餌を運んでくる人間を見てその時のゆっくりは人間を奴隷とみなし、
ゆっくりできる記憶は認識出来ない本能レベルの部分で静かにその子孫へと受け継がれて
いったのだ。
そしてゆっくりは多産であり、その命のサイクルは短い。数年前にこの地域の遥か山の
奥に解き放たれたゆっくりの子孫は、もはやこの近辺全ての餡に多かれ少なかれ受け継が
れている事になる。
人間がどんなにゆっくりを痛めつけて学習させても、人間を下にみるゆっくりが出るの
はこういう事になっていた。
なにしろゆっくりはゆっくりできる記憶を優先して親から受け継ぐ。赤ゆっくりの体積
からすればそのほとんどがゆっくりできる記憶ばかりであり、ゆっくりできない記憶はわ
ずかしか受け継がない。例えば捕食種に対する恐怖など。
人間に対して、ゆっくり出来ない記憶とゆっくりできる記憶が両方受け継がれるとゆっ
くりはその本能に従ってゆっくりできる記憶をより強く受けてしまうのだ。
「なにだまってるの? つよいまりささまにことばもないの? しーしーもらすの?」
青年は無言で足下のまりさを抱え上げる。
「ゆゆ~ん♪ おそらをとんでるみた~い♪」
「お兄さんのお家に来ればあまあまを沢山あげるけどくるかい? 拒否権はないけど」
あまあまの単語に反応したまりさはそれ以上の台詞など理解するはずも無く。
「ゆゆっ!! わかってるようだねっ!! ものわかりのいいにんげんはとくべつにまり
さのめしつかいにしてあげるよっ!!」
「ああ、そうかいそうかい。さてどうするかなー。
焼くか?
煮るか?
それとも切るか?
まてまて、最近潰す機会がなかったからまず増やしてから……」
ぶつぶつと呟きながら上機嫌でまりさを家に持ってかえる青年。まあ人間に向かっていっ
たゆっくりの末路などほぼ決まっているような物だ。
「うんうん。ひさしぶりだからなー! すぐにはつぶさないぞー」
「ゆ”?」
「足焼きがいいかー? お帽子破りもいいなぁ。でもまずはありすとすっきりだなー♪
いやー、この前ハッスルし過ぎて残りがそれ一匹だったし、ちょうどよかったぜー♪」
「ゆゆっ! なんだかゆっくりできなそうだよっ! もうやだおうちかえるっ!!」
「なにいってるんだ~♪ もう手後れだって♪ このおばかさんっ♪」
最近、虐待出来る野生ゆっくりが周辺から減ってきていただけにお兄さんはノリノリで
ある。
「ゆ”あぁぁ!! ゆっぐりじだいぃぃぃ!! はなぜぇええええ!!」
まりさの悲鳴とともにお兄さんは上機嫌で家へと帰っていった。
ゆっくりは減らない。それは局所的な部分で見た場合のみである。
ほとんどの人間はゆっくりを害獣とみなして駆除をする。絶滅させる事すら目指す者も
いる。
だが反対にそれを必要とする人々もいる。愛でたり虐待したり道具として利用したり様
々に。
ゆっくりは減っている。人の生活圏に入ったゆっくりは野生よりも遥かに死にやすい。
総数が変わらないように見えるのは単に森や山からやって来ているからである。
ゆっくりは人に近付く。例え万に一つ以下の可能性でも、ゆっくりできるその幸運が自
分に舞い降りるのだと言う根拠のない自信と共に。
ゆっくりは絶滅しない。それを望む者がいるのだから。
だから──
「さてまずは足焼きからいこうかー」
「ゆっぐりざぜでよおおぉぉぉ!!」
そんなゆっくりがゆっくりできるかどうかは割とどうでもいい話──
────────────────────────────────────────
終わり。
あとがき
生意気なゆっくりが減らないのは裏でこういうことをしているからだよっ!!
…って言ってみても正直こんなことしなくてもゆっくりは絶滅なんてしない気がするけどあえて書いてみた。そんな話。
スレでのとあるレスが元ネタです。
人間による虐待成分は皆無。
独自設定注意。
読んだらスッキリできない可能性があります。仕様です。
────────────────────────────────────────
「「「「「「ゆっくりしていってねっ!!」」」」」」
そこはゆっくり達にとって理想的なゆっくりプレイスだった。
いつからその場所が存在したのかゆっくり達は誰も知らないし知ろうともしない。森の
遠くには白いなにかが存在して、お日様も動いたりはしないけど、ここで産まれたゆっく
りにはそれが普通。
ここにいるのは巨大な群れであり群れでは無い。
なぜなら天敵はいないし餌にも困らない。時々雨が降るけれどよほどのろまなゆっくり
でも無い限り溶けはしない。生き残るための知恵として群れるという必要が無いのだ。
あるとすればそれはせいぜい繁殖のため。それだって軽く見渡せばあちこちにあらゆる
ゆっくりがいるのが分かる。
そこにはおよそ全ての種がいる。まりさやれいむ、ぱちゅりーやありす種は言うに及ば
ず、ちぇんにみょんにもこうにさなえにちるのにらんにゆかりんに………。
およそ捕食種と言われる種以外が自由に暮らしている。
そんな環境だからすっきりだってやりたい放題で、子育てだって真面目にやる番もあれ
ば適当に子供を放りだす個体もいる。それでもどれだけ増えてもゆっくり達が餌に困る事
は無い。
レイパーだってほとんど存在しない。もし現れてもすぐにどこかに消えてしまうからだ。
栄養豊富なゆっくり達ばかりのために大抵は親が干涸びても子供は大量に干涸びる事無く
産まれ落ちる。普通の群れならレイパーの子として迫害されるがまず餌の心配がない為に
物好きなゆっくりが育てる事も多い。
さて、なぜ餌の心配が無いかと言うと。
「ゆっ! にんげんさんがきたよっ!!」
めざといゆっくりの一匹が森の奥から現れた人間達を見つけて声を上げた。その複数の
人々は全てがリヤカーで巨大な餌の山を運んで来ていた。
「おちびちゃんごはんのじかんだよっ!!」
「にんげんはとっととあまあまをよこすんだぜっ!!」
「ばかなにんげんはとっととれいむのためにごはんをおいてってねっ!! かわりにれい
むのうんうんあげるからよろこんでたべてねっ!!」
「「「うんうんたべちぇねっ!!」」」
ほぼ全てのゆっくりはこの人間達を都合の良い奴隷か道具程度にしか思って無いので姿
をみるやいなや罵詈雑言を浴びせかける。中にはこれ見よがしに目の前でうんうんをして
みたり体当たりを仕掛けたり、人間にしーしーをかけようとするものもいる、が。
「ゆっくりとまってね! こっちこないでね!! たいやさんこっちぐるな…ばあっ!!」
「よぐもでいぶをぉぉぉ!! ゆっぐりじねぇぇ!!! ぶべぇ!!」
牽いて来たリヤカーの前に自ら出て来て潰されていくゆっくりが何匹か出るが、いつも
の事である。比較的頭が良く、学習しているゆっくり達はそんな潰れたゆっくり達を見て
蔑み笑うのもいつもの光景。
「ぷぷっ!! えささんがとまるまえにまえにでてつぶされるなんてゆっくりできてない
ねっ!!」
「ほんとだねっ!! ゆっくりできないばかなゆっくりだねっ!!」
中には潰れたゆっくりを食べ始めるゆっくりもいる。
「うっめっ!! これめっちゃうめっ!!」
「やべ…で……でいぶ…の……なかみ……だべない…………ゆ”っ…ゆ”っ………」
だがそんな行動を止めるゆっくりも人間もいない。人間はもってきた山盛りの餌をスコッ
プで乱雑に餌を掬っては周囲のゆっくりの群れにばらまいていくだけだし、ゆっくりは降っ
てくる餌を食べるのに夢中である。
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」
「ここにあるごはんはぜんぶまりさのものだよっ!! たべないでねっ!!」
「これぜんぶたべるとかまりさはばかなの?」
「さいきょー!!」
「ばかなまりさはゆっくりできないみょんっ!!」
「ゆっくりできないゆっくりはゆっくりじゃないねー! わかるよー!」
餌を自分のもの宣言したまりさが潰されたりしてるが、基本的にはここにいるゆっくり
達が食べ切れない程度の量があるのでおおむね平和な食事光景ではある。
人間達は無言のまま餌を配り終えるとそのまま空のリアカーを牽いて戻っていく。また
何匹かそれに轢かれたり、人間に踏まれたりしたが誰も気にも止めない。
「おなかもいっぱいになったしおうたをうたってゆっくりしようねっ!!」
「ゆ~♪ ゆゆ~ん♪ ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪ ゆっ♪」
「まぁりさぁ!! すっきりしま”しょうね”ぇぇぇええ!!」
「やべでえぇぇぇ!! でいばーがいる”うぅぅぅぅ!!」
「むきゅ、おちびちゃんごはんをたべたらおべんきょうのじかんよっ!!」
「にゃにいっちぇるの? れいみゅはおにゃかいっぱいににゃったからにぇるんだよ!?」
「みゃみゃはゆっきゅりできゅにゃいよっ!! ぴゃちゅりーみょおひりゅねしゅりゅん
ぢゃからじゃみゃしにゃいでっ!」
「ゆっくりのひ~♪ まったりのひ~♪ すっきりのひ~♪」
「あたいったらさいきょうにゆっくりねっ!!」
食事が終われば大抵のゆっくりは好き勝手に遊び始める。中にも物足りなくて地面に転
がっている餌の滓を舐めとっているものや、その辺に生えている草や土を掘って虫を探し
たりするものとゆっくりした光景が広がっている。
大抵はこの時間ですっきりをする個体が大勢現れるため、ここでは個体数が日々数割程
度増えている。
が、それにも関わらずここにいる個体は精々が生体だけなら1000匹前後と言ったと
ころ。毎日毎日知り合いのゆっくりが少しづつ消えているのだが、四つ以上の数が数えら
れないゆっくりにはなんとなくでも増えても減ってもいないということを感じてすらいな
い。
────────────────────────────────────────
夜。全てのゆっくりが寝静まった頃、何人もの人間が大きな袋をもってやって来た。
ここはとある施設であり、彼等は職員である。人工的な森を模したこの施設は全国にあ
るが、内部でこうやってゆっくりを繁殖させていることを一般の人々はほとんど知らない
し、知ったとしても研究に使われることくらいにしか思わないだろう。
事実、ここで増やしたゆっくりはその幾らかを加工場に卸したり、希少種に関してはそ
のほとんどをペットショップなどに卸して活動資金の一部に換えている。たまにある爆発
的繁殖で増え過ぎればゆっくりの餌であるゆっくりフードの原材料になったりもするが、
基本的な目的は他にあった。
ここではたまたま屋内での擬似的な森での生育だが、他所では廃園になった動物園跡地
などを活用する事もある。産まれたゆっくりは全て一定数になるまで餌の供給以外人間の
関与を受けずに生活させる。
つまりは野生に近いゆっくりを大量に生産する施設だ。
餌が取れないのは問題では無い。どうせここにいるほとんどのゆっくりはそのゆっくり
した生活と栄養に寄り普通の野生にとって美ゆっくりに映り、大抵が母体役に回るからだ。
子育ては本能的に行うのでこれも問題は無い。時々自分勝手なのもいるがそこまでは関係
が無い。
ありす種についてはレイパーになった時点で自動的に捕獲され他の区画に集められる。
職員二名は夜の餌に混ぜられた睡眠薬で全く起きる気配のないゆっくりのなかから独り
立ちできる生体を選びだして袋の中へ詰め込んでいく。その際、動く事の出来ない妊娠個
体は除いていく。
「んー、今日は何匹?」
「300と少しくらいだろうなー。今回の希少種系はさなえ2にらん1な」
「ゆっくりらんかー。持ち帰って虐待してえなぁ……」
「最近すわこ種が増え過ぎたらしいから来週あたりそっちならなんとかなるんじゃね?」
「全部卸したら余裕で希少種値崩れするもんなー。俺としては安価で手に入った方がいい
んだが……」
「まあ処分品を処分する前に好きにできるからいいんじゃね?」
「そーでもしねーと毎日がストレスで全員死んでるって」
「そりゃそーだ」
職印の無駄話とともに選別され袋に詰められたゆっくり達はそのまま複数の車へと運び
込まれ、あらかじめ設定されている、人の生活圏から離れたゆっくりのいる森や山へと運
ばれていく。
「何でこんな山奥に放つかねぇ」
「人里近くのは駆除で一気に激減するし元々寄ってくるから意味無いんだよ。
まずはこういう奥地に放って繁殖させて溢れたのが移動してくるようにしないとな」
ゆっくりは繁殖能力が高い。が、それも当初の話。人間に害獣と認識されるようになっ
てからは徐々にその総個体数が減って来ているのだ。このままでは遠からず絶滅してしま
うかもしれない。
さて、その正体がたとえ動く饅頭であったとしても絶滅危惧種になると話は変わってく
る。というか問題にしようとする人々も現れる。たとえまだそうなるのが遠くても。
誰がとち狂ったのかそれとも利権でも動いたのか、様々な思惑に寄ってなぜか出来上がっ
てしまった特殊法人としてのこの施設の役割は表向きはゆっくりの研究である。
が、実際はこうして繁殖させたゆっくりを山奥に解き放っての個体調整と、増え過ぎた
箇所での間引きである。
一応ある程度の事前調査によって放たれる個体数が決められ、人の生活圏への被害が及
ばないよう計算されてはいる。が、そこは不思議饅頭生物。いざ現地に付いてみれば、す
でに野生種が見渡す限り大規模繁殖を重ねていたために駆除する事になってしまったり、
あっという間に生息範囲が人里に到達して被害を出したりなど日常茶飯事である。おかげ
で風当たりが強いのは火を見るより明らかであり、あまり表立って喧伝出来るような仕事
ではなくなってしまった。
ちなみに通常のゆっくりだけではバランスが悪くなるために捕食種も別区域で繁殖させ
ている。
そして先のようにレイパー判定されたありす種は、人の手が入らない増え過ぎた地域に
おける個体調整役として100匹単位で纏めて放たれる。実際のところ総数では減ってい
るとはいえ、人の手の届かないところでは増え過ぎる地域が多いため、駆除剤の変わりに
なるレイパーありすはある意味で希少種より貴重だったりする。道具としてだが。
個体調整役というのは、レイパーありすの被害が多くなるとその地域のゆっくりは激減
と同時に用心深くなり(ゆっくり基準でだが)、ありす種に不信を抱いてありす種全体の
総数が減る。ありす種が減るとまたゆっくりの総数が増える。全体が増えるとありす種も
増えていきレイパーありすの割り合いも増加する。そしてその頃には代替わりが重なり、
レイパーありすへの注意力がほぼなくなって最初に戻ると言うわけだ。
通常種の中で行われるサイクルだけに、捕食種を多く解き放つよりも長期的にみると増
減調整のバランスが良い具合に安定するのだ。
結局、ゆっくりの総数が減る最大の要員は捕食種でもレイパーなどではなく人の手によ
るものだ。
職員は森に入ってすぐの場所に持って来たゆっくりを全て地面にばらまくとそのまま車
で帰っていく。
後に残されたのは夜の森の中で無防備に眠るゆっくり達だけである。
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「「「「「「ゆっくりおきるよっ!!」」」」」」
「「「「「「ゆっくりおきたよっ!!」」」」」」
次の日、陽も高く上がった頃に放置されたゆっくり達が起きて騒ぎ始める。運が悪けれ
ば捕食種に見つかり四分の一程度は食われて消えていたり雨で溶けたりするがそれは稀で
ある。
そこはゆっくりの総数自体が少ない地域だからこそ放たれたわけだし、比例して捕食種
の生息数もすくないからだ。雨に関しては数日間は晴れになる予報を元に日にちを決めら
れているのでそう言う面では事故死は少ない。
「ゆーん。おなかがすいたよっ!! のろまなにんげんはまだこないのっ!?」
「ばかなにんげんだねっ!! こんなにまりささまがおなかすかせてるのにもってこない
なんてあほなの? あんこのうなの?」
産まれてこの方まともに餌をとっていない個体ばかりのため最初は来るはずも無い人間
を罵倒しながら待ってゆっくりはその場を動こうとはしない。
「ゆ、なんかおいしそうな匂いがするよっ?」
「むきゅっ! このお花は食べられるお花ねっ!」
「うっめ、このくさめっちゃうめっ!!」
そのため施設で与えられる餌は研究によりゆっくりにとって虫や花などよりもわずかに
美味しく無いものが作られて与えられている。このゆっくり達は産まれてからずっとその
餌を食べていたから、それが味覚の基準になっているが。
ここで手間を掛けてるのは舌が肥えていると野生の餌を取らずに餓死して全滅する確率
がほぼ100%になるからだ。
それでも貰う事に慣れたこの集団が一週間野生で生きられる確率は半分を割っている。
生体として独り立ちできる大きさにも関わらず。脆い生き物である。
「ゆっ!? いつものしろいかべさんがないよ?」
「ゆゆ~ん。なんかいつもとちがうにおいがするんだよー♪ たんけんだねわかるよー!」
お腹が空いてその辺の草を食べるもの、物珍しさに森の奥へと進んでいくゆっくりが出
始める。果たしてこの集団の何割が生き残り、子を成す事ができるのか。運がよければそ
の日の内に先住のゆっくりに出会う事もあるだろうが。
「あんなところにありすがいるんだぜっ!! ちょうどすっきりしたかったんだぜっ!!」
森の奥に入っていったゆっくり達の一匹がどうやら元々この森に住んでいたゆっくりを
見つけたようだ。このまりさは目に付く食べれそうな物を片っ端から口に入れていたため、
満腹になってすっきり欲がでてきたらしい。
「ゆっくりしていってねっ!!」
そのまりさは奥に見えるありすに向かって定番の挨拶をするが。
「んほぉぉぉ!! かわいいまりさぁぁ!! とかいはなあいをあげるわぁぁぁ!!」
「ゆんあぁぁぁ!! れいぱーありすだぁぁああぁ!!!!」
慌てて来た道を正反対に戻っていくまりさ。施設ではレイパーありすが定期的に発生し
ていたから反応は速く、仲間達のいる場所に向かって一直線に跳ねていく。
「まりさですってっ!?」
「まりさ?」「まりさ!?」「まりさなのねっ!!」「んほぉぉぉ!!!!」
だが大声を上げたのは致命的だったらしい。声に反応して周囲から出て来たありす達が
逃げていくまりさを見つけて、どんどんとそれを追うありすに合流していく。まりさはちょ
うど野生のレイパーの群れに飛び込んだ形になり、一匹のまりさが十数匹のレイパーあり
すを引き連れている状態になった。
餌の豊富なところでゆっくりしていただけに運動不足で追い付かれそうになるまりさ。
「でいばーはごっぢにぐるな”あぁぁ!!」
「にげるなんておくてなのねぇぇぇ!!!! おいかけっこももえるわあぁぁ!!」
結局逃げ切れずに最初にいた広場の手前で捕まるまりさ。全身余すところ無くありすに
埋め尽くされて、あっさりと茎まみれになって干涸びていく。
そして、そのまりさにありつけなくて不満を溜めていた一匹がその痴態を無視して声を
上げる。
「あんなところにもまりさがいるわ!!」
「あそこにはれいむもいるわ!!」
見つけたのは人間によってここに置いていかれたゆっくりの集団だった。二割程度は森
の中に散ってはいたが、施設の環境では移動することなど必要無かったため、ほとんどの
ゆっくりが永遠に来ない餌を求めて未だに騒ぎ続けていた。
「んほぉぉぉ!! よりどりみどりよぉぉぉ!!」
「とがいばなあ”い”をあげるわ”あぁぁあ!!」
「「「れいぱーはゆっぐりできないぃぃぃぃ!!!」」」
混乱に陥る百数十匹のゆっくりとそれに突撃していく十数匹のありす。どうやら集団の
中からもいまごろレイパー気質を発揮したありすまで出たようで、さらに混乱に拍車が掛
かる。
おそらく数時間もしない内にそこは黒ずんだ餡子の塊で埋め尽くされることが確定した。
今回の繁殖目的で放った個体はほぼ全滅のようである。
「やべでぇぇえええ!!」
「すっぎりじだぐないぃぃぃぃ!!」
「だれがでいぶをだずげろぉぉぉ!!」
「わがらないよぉぉぉ!!」
「すっきりした…エレエレエレ…………ゲブッ!」
「すべすべのおはだぎもぢい”い”わ”ぁぁ!!」
「ありすにすっきりさせられるなんてしあわせものよぉぉぉぉ!!」
「んほぉぉぉ!! でいぶのまむまむざいごうだわ”ぁぁぁ!!」
「ありすのあいがさいこうなのねぇぇぇ!! わかるわあぁぁ!!」
「なかみをはいたぱちゅりーもさいこうよぉぉ!! おはだがすべすべになるわぁぁ!!」
極めて脆く増減の激しい不思議生物。それだけにこのような事例は数多く存在する。だ
が彼等の役割はゆっくり達が生態系を壊滅的にしない程度に増殖させ、また減少させてあ
る程度の個体数を維持する事である。
全体として総個体数が減っている現在、一回放つ事で一匹でも繁殖に成功すればそれは
絶滅を防ぐと言う意味では一応の成功なのである。
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さて当然の話だが、人間の手が入ってゆっくりさせすぎてしまったゆっくり達は大抵ほ
とんどが増長する。それが原因で野生の群れに適応できなかったりする事も多々あるが、
元々のゆっくりの大半の形質はそうなので増減としては長期的には問題にはならず、数を
放つ事で個体数としてはプラスにはなっている。
が、施設の設立からして適当だっただけに上から下まで完全にゆっくりのことを考えて
るような人間はいない。すなわちゆっくりのことを本当の意味で良く知っている人間もい
ない。
「ゆへんっ!! まりさはつよいんだよっ!! やられたくなかったらにんげんさんはま
りさにあまあまちょうだいねっ!!」
ゆっくりに関わった人間なら一度は見た事のある光景。そのまりさは人間に向かって丸
い体躯をふんぞり返らせながら目の前に青年にそう要求した。
『にんげんさんはゆっくりできないんだよっ!!』
『にんげんさんにあったらゆっくりできなくさせられるよっ!!』
親ゆっくりはそう言ったが、この若いまりさはこの人里に近い群れの中では狩りは得意
でゆっくり同士での喧嘩も強いため増長していた。人里に近いために人間の恐ろしさを説
くゆっくりも多いがまりさはそんな話しを全く信じていない。
なぜなら。
(にんげんさんはゆっくりをゆっくりさせるためにそんざいしてるんだよっ!!)
餡子の奥底に、人間はゆっくりをゆっくりさせるというゆっくりできた記憶が受け継が
れていたから。
誰も知る由はないが、まりさの餡子を辿っていけばあの施設のゆっくりの一匹に辿り付
いただろう。
あの時、無言でただ餌を運んでくる人間を見てその時のゆっくりは人間を奴隷とみなし、
ゆっくりできる記憶は認識出来ない本能レベルの部分で静かにその子孫へと受け継がれて
いったのだ。
そしてゆっくりは多産であり、その命のサイクルは短い。数年前にこの地域の遥か山の
奥に解き放たれたゆっくりの子孫は、もはやこの近辺全ての餡に多かれ少なかれ受け継が
れている事になる。
人間がどんなにゆっくりを痛めつけて学習させても、人間を下にみるゆっくりが出るの
はこういう事になっていた。
なにしろゆっくりはゆっくりできる記憶を優先して親から受け継ぐ。赤ゆっくりの体積
からすればそのほとんどがゆっくりできる記憶ばかりであり、ゆっくりできない記憶はわ
ずかしか受け継がない。例えば捕食種に対する恐怖など。
人間に対して、ゆっくり出来ない記憶とゆっくりできる記憶が両方受け継がれるとゆっ
くりはその本能に従ってゆっくりできる記憶をより強く受けてしまうのだ。
「なにだまってるの? つよいまりささまにことばもないの? しーしーもらすの?」
青年は無言で足下のまりさを抱え上げる。
「ゆゆ~ん♪ おそらをとんでるみた~い♪」
「お兄さんのお家に来ればあまあまを沢山あげるけどくるかい? 拒否権はないけど」
あまあまの単語に反応したまりさはそれ以上の台詞など理解するはずも無く。
「ゆゆっ!! わかってるようだねっ!! ものわかりのいいにんげんはとくべつにまり
さのめしつかいにしてあげるよっ!!」
「ああ、そうかいそうかい。さてどうするかなー。
焼くか?
煮るか?
それとも切るか?
まてまて、最近潰す機会がなかったからまず増やしてから……」
ぶつぶつと呟きながら上機嫌でまりさを家に持ってかえる青年。まあ人間に向かっていっ
たゆっくりの末路などほぼ決まっているような物だ。
「うんうん。ひさしぶりだからなー! すぐにはつぶさないぞー」
「ゆ”?」
「足焼きがいいかー? お帽子破りもいいなぁ。でもまずはありすとすっきりだなー♪
いやー、この前ハッスルし過ぎて残りがそれ一匹だったし、ちょうどよかったぜー♪」
「ゆゆっ! なんだかゆっくりできなそうだよっ! もうやだおうちかえるっ!!」
「なにいってるんだ~♪ もう手後れだって♪ このおばかさんっ♪」
最近、虐待出来る野生ゆっくりが周辺から減ってきていただけにお兄さんはノリノリで
ある。
「ゆ”あぁぁ!! ゆっぐりじだいぃぃぃ!! はなぜぇええええ!!」
まりさの悲鳴とともにお兄さんは上機嫌で家へと帰っていった。
ゆっくりは減らない。それは局所的な部分で見た場合のみである。
ほとんどの人間はゆっくりを害獣とみなして駆除をする。絶滅させる事すら目指す者も
いる。
だが反対にそれを必要とする人々もいる。愛でたり虐待したり道具として利用したり様
々に。
ゆっくりは減っている。人の生活圏に入ったゆっくりは野生よりも遥かに死にやすい。
総数が変わらないように見えるのは単に森や山からやって来ているからである。
ゆっくりは人に近付く。例え万に一つ以下の可能性でも、ゆっくりできるその幸運が自
分に舞い降りるのだと言う根拠のない自信と共に。
ゆっくりは絶滅しない。それを望む者がいるのだから。
だから──
「さてまずは足焼きからいこうかー」
「ゆっぐりざぜでよおおぉぉぉ!!」
そんなゆっくりがゆっくりできるかどうかは割とどうでもいい話──
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終わり。
あとがき
生意気なゆっくりが減らないのは裏でこういうことをしているからだよっ!!
…って言ってみても正直こんなことしなくてもゆっくりは絶滅なんてしない気がするけどあえて書いてみた。そんな話。