ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0209 れいむ視点と人間視点
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れいむ視点と人間視点
「ゆぅ・・・」
れいむが小さくため息をついた。
窓から見える景色は茜色に染まっていた。
ひらひらとれいむの元へ紅葉したもみじが舞い落ちる。
舌を伸ばしてそれを口にくわえようとしたが、舌は窓に邪魔されてぐにゃりと曲がった。
「うゆゆ・・・」
再びれいむが深いため息をつく。
振り返って視線を部屋の中に移す。そこには無造作に置かれた粗末な食器。
その中にはゴミとしか形容のできない物体が詰まっている。それを見て眉をしかめるれいむ。
狭い部屋。所狭しと転がるガラクタの山。
れいむは満たされていなかった。ゆっくりできていなかった。
そこにドスドスと床を鳴らしながられいむの部屋にノックも無しに入って来る人間。
ゆっくりできない元凶が来た。れいむの表情が更に暗くなる。
人間は皿に入ったゴミを一瞥すると、手をつけていないそれを睨みつけて舌打ちした。
「ゴミクズ、なんで食べて無いんだ?」
「ゆゆ・・・っ」
れいむは申し訳なさそうな表情を浮かべながらぼそぼそと語りだした。
「これは食べ物じゃないよ・・・ごみさんだよ、こんなの食べてもゆっくりできないよ」
弱々しいれいむの声。
いくら無理をしてお腹を膨らませても「ゆっくり」できなければ意味が無いのだ。
ゆっくりできなければれいむは精神的に餓死するだろう。人間はそれをわかっていなかった。
昔はおいしい食べ物を持ってきてれいむをゆっくりさせてくれた人間だったが、いつの間にか変わってしまった。
意図的にゆっくりさせずに苦しむれいむを見て心の中でせせら笑っている様だった。
どうして変わってしまったのだろうか?
れいむには全く心当たりが無かった。心当たりが無いのだから直す事もできない。
れいむは目に涙を滲ませながら人間を見上げる。
その視線は一瞬だけ合ったが、人間はすぐに顔を背ける。
全く心が通じ合ってない。れいむにゆっくりできないという事実だけが突きつけられた。
「次来るまでに食べておけよ、代わりは無いからな」
皿の上に盛り付けられたゴミを蹴り飛ばしながら
もっと汚い皿に盛り付けられた新しいゴミを乱暴に床に放り投げる人間。
れいむの凍りついた表情を一瞥してほくそ笑むと踵を返して部屋を出ていった。
ドスドスと耳障りな足音が消えるとようやくれいむの心が少しだけゆっくりした。
今日何度目になるだろうか?再び大きくため息をつくれいむ。
「ゆっ!かわいいれいむなんだぜ!」
突如窓の外から聞こえた声にれいむはピクリと体を振るわせた。
振り向くとそこには黒い三角帽子を被ったゆっくりまりさの姿があった。
久しぶりに目にする同属のゆっくりに目を輝かせるれいむ。
「ゆ・・・ゆっくりしていってねっ!」
久しぶりのゆっくり同士の挨拶に少し緊張しながらも、
艶やかな髪を棚引かせてにこっ!とれいむは精一杯の笑顔で挨拶をした。
久しぶりの挨拶。何かおかしな所は無かっただろうか?
高まる胸を押さえながらジッとまりさを見つめるれいむ。
「ゆっくりしていってね!」
ぽいん!と地面を跳ねながらまりさも元気に返事をする。
れいむは体の中にぽかぽかとした暖かい何かが流れてくるのを感じた。
それは久しく忘れていた「ゆっくり」だった。
「ゆっ!れいむ!どうしたのぜ?ゆっくりしてないのぜ?」
「ゆゆん?」
れいむの頬にはいつの間にか涙が零れていた。
人間とのゆっくりできない暮らしの最中、
目の前に現れたとてもゆっくりとしたまりさとのゆっくりで緊張の糸が切れてしまったのだ。
それと同時にれいむは一つの結論を導き出していた。
やはりれいむはゆっくりだ。人間とはゆっくりできない。
もうこんな生活には耐えられない。ゆっくりしたい。
そして願わくば目の前のゆっくりとしたまりさと一緒に森へ帰りたい。
「ゆっ・・・・ゆーん!ゆーん!」
感極まったれいむは泣き出してしまった。人間には恩義を感じていた。
今はあんな風になってしまったが、それでも昔はれいむをゆっくりさせてくれたのだ。
しかし人間は変わってしまった。揺るぎの無い事実である。
そしてもう二度と元のゆっくりとした人間に戻る事は無いだろう。
れいむには確信があった。ゆっくりできる事には敏感なゆっくりの勘である。
「ど、どうしたのぜ!?れいむ!?ゆっくり!ゆっくり!」
まりさはオロオロと慌てた表情を浮かべて窓に顔を押し付けてれいむに語りかける。
れいむはもみあげで涙を拭うと再び精一杯の笑顔を浮かべた。
「ゆゆん、ちがうよ・・・・れいむはとってもゆっくりしているよ」
れいむはゆっくりとまりさに今までのいきさつを語り始めた。
人間に拾われてとてもゆっくりできた事。
おいしいご飯を食べさせてもらってとっても幸せだった事。
ある日を境に人間が急に冷たくなってしまった事。
思い起こせばれいむは森の群れから連れ去れてここへ来た事。
最近に至っては狭い掃き溜めのような部屋にれいむを閉じ込めてゴミしか食べさせてくれない事。
辛い事だけでは無く、楽しかった事も包み隠さずにゆっくりとまりさに伝えた。
「ゆゆゆっ・・・・」
おさげで肘をつくような姿勢で考え込んでいたまりさだったが、
少し暗い表情でれいむを見つめて口を開いた。
「れいむは人間さんに飽きられてしまったのぜ」
「ゆぅ!!」
まりさが口にした人間像。
興味本位でゆっくりを捕まえてその日の気分が良ければ飼い、気分が悪ければ捨てる。
捨てるだけならばまだいい。多くのゆっくりは人間の気まぐれで殺されていた。
れいむの話を聞けばどうやらその日はそう遠くないとまりさは感じた。
「このままじゃれいむは捨てられてしまうのぜ」
「ゆゆぅ・・・れいむはどうすればいいの・・・?」
まりさは再びおさげをくいっ!と曲げて考え込む。
暫し沈黙。
そして「ゆん」と頷くとぽいん!と地面を蹴って大声で叫んだ。
「いこう!れいむ!まりさと森へかえろうね!」
「ゆっ!で、でもっ!れいむは」
「れいむ!ゆっくりと窓をあけてね」
あまりにも突然のまりさの申し出にれいむは戸惑う。
しかし、優しい口調だが力強いまりさの声にれいむの決心はついた。
「ゆっ!わかったよまりさ」
もみあげを器用に使って窓を開くれいむ。
その時、大きな音と共に部屋の扉が開かれる。そこにはバットを握った人間。
「おまえらそこで何をしてるんだ?」
目を血走らせて2匹を睨みつける人間。れいむがフルフルと身を震わせる。
そんなれいむの前にまりさが立ちはだかる。
そんな頼もしいまりさの影から恐る恐るれいむが口を開いた。
「ゆっ・・・人間さんゆっくり聞いてね・・・」
「うるさい!なんだ!この小汚いまりさは!」
怒りに身を震わせながら人間がバットを振りかぶる。
「ゆっくりきくんだぜ!人間さん!まりさは何も悪い事はしてないんだぜ!」
まりさの真っ直ぐな眼差しに人間は少し後ずさる。
れいむを蔑ろにし続けた負い目もあるのだろう。
人間は憎々しげにまりさを睨み付けながらもバットを下へ降ろした。
「れ、れいむはまりさと一緒に森にかえるよ・・・!」
弱々しいがはっきりとした口調でれいむは人間にその意志を伝える。
初めは2匹を威圧するような態度で睨みつけていた人間だったが、
いざ手元を離れるとなるとれいむを手放すのが惜しくなったのか、
急に態度を変えてれいむに甘い言葉を投げかけてくる人間。
まりさはそんな人間の醜い執着心を見透かしていた。
こんな態度は一時的なものである。
まりさが去れば、人間はすぐにれいむを蔑ろにするだろう。
コロコロと変わる態度からもそれは明らかだった。
意を決したようにまりさが人間との会話を打ち切って大きな声で叫んだ。
「ゆっ!そこまでなんだぜ!ゆっくりできない人間さん!行こうれいむ!」
「ゆっ!まりさっ!」
おさげでれいむのもみあげを優しく握ると外へ向かってまりさは歩き出した。
その力強い歩みに人間の甘い言葉に再び動揺していたれいむの心も決心がついた。
れいむの悪い癖だ。
また元の優しい人間に戻ってくれるかもしれないとありもしない希望にすがって
またゆっくりできない生活を続ける所だった。
どうせ遅かれ早かれれいむは捨てられる運命なのだ。
ならばこちらから勇気を持って踏み出そう。その方がきっと「ゆっくり」できる。
「さようなら人間さん・・・れいむが居なくてもゆっくりしていってね!」
ホロリと涙を零しながられいむがぽいんと跳ねて窓から飛び出した。
久しぶりの地面。ひんやりとした感触が心地いい。
ひらひらと紅葉がれいむの目の前を通る。それを舌を伸ばして口にくわえた。
その時何故だかわからないが、れいむの胸のつかえがスーッと取れていった。
「ゆっくりすすもうねっ!」
れいむがキラキラと目を輝かせながらまりさに微笑んだ。
その優しい笑顔にまりさが少し驚いたような表情を浮かべた後、
まりさも負けじと満面の笑顔でれいむの声に答えた。
「ゆっくり帰ろうねっ!」
ぽいんぽいん!と大地を踏みしめながら、2匹大地を跳ねていく。
その光景を人間は苦虫を噛み潰したような顔でいつまでもいつまでも眺めていた。
人間視点
「はぁ・・・」
少女が小さくため息をついた。
窓から見える景色は茜色に染まっていた。
調理を開始してからかれこれ2時間が経過していた。
最近は学校から帰ったられいむのごはんの支度でかかりきりだった。
いつもと変わらないお菓子の山。手は抜いていない。いない筈。
それなのにれいむの様子は最近おかしかった。
昔は「うめっ!これめっちゃうめぇっ!」と唾液を撒き散らしながら喜んでくれたのに
ここ最近、手をつけようともしないでそっぽを向いてしまう。
何か悪い病気では無いだろうか?ふとよぎった不安に少女の心が押しつぶされそうになる。
フルフルと首を振って、不安を振りほどく少女。
完成したお菓子をれいむが拾ったときに口にくわえていた粗末なお皿に盛り付ける。
(きょれは れいみゅの あまあま のおうちだからにぇ! ていちょうにあつかっちぇにぇ!)
れいむを拾ったときの光景を思い出してクスクスと手で口を押さえながら微笑む少女。
きっと取り越し苦労に違いない。お菓子の出来栄えも上々だ。
今日こそあの可愛い笑顔で元気に食べてくれるに違いない。
お皿を両手でもって慎重に廊下を進む少女。
「れいむのゆっくりプレイス」と書かれた紙が貼ってある部屋の前で立ち止まる少女。
最近、昼夜問わず喚き散らすようになってしまったれいむ。
少女は他の家族達の邪魔にならないように、
親や兄弟に頼み込んで物置の荷物を少しずつ部屋に置いてもらってれいむの部屋を用意した。
物置をノックして静かに戸を開ける少女。
部屋の中のれいむは少女がれいむの為に作った台に乗って窓から外を眺めている。
「またこんなに散らかして・・・」
部屋の中はれいむが外からかき集めてきた宝物と称するガラクタが散乱していた。
中には新しいタカラモノもある。これはもう明らかに生ゴミだった。
「ゆ゛っ!!」
れいむが少女に気づき眉間にシワを寄せながら少女を睨みつける。
不機嫌そうなれいむの表情が少女を見た途端に更に陰険なものなる。
少女はそれを見て少し困ったような表情を見せたが、取り繕う様に笑顔を浮かべると
わざとらしく部屋を見回して優しい口調でれいむに話しかけた。
「も、もう!だめだよれいむ!こんなにゴミを散らかして」
れいむは何も言わずに少女を睨みつけている。
まるで見ず知らずの他人を見るようなその目に少女は思わず泣きそうなるがグッとこらえる。
「なんでごはん食べないの?全部れいむが好きなものばかりでしょ?」
れいむは憎々しげに舌打ちをした。
「こんなのあまあまじゃないよっ!」
「・・・えっ?」
「れいむはもうこんなのじゃ満足できないよっ!もっとおいしいあまあまを持ってきてねっ!」
心無いれいむの一言に少女は堪えていた涙を零した。
どうして変わってしまったのだろうか?
少女には全く心当たりが無かった。心当たりが無いのだから直す事もできない。
少女は目に涙を滲ませながられいむを見る。そんな少女を親の敵のような視線で睨みつけるれいむ。
台からぼすん!と飛び降りると踏ん反り返りながら少女に向かって叫んだ。
「ゆっ!人間さんは本当にグズだねっ!はやくしてね!これ以上れいむを怒らせないでねっ!」
そう叫ぶとれいむは皿に盛り付けられたお菓子を踏み砕いてぷくぅ!と膨らみながら少女を睨みつける。
視線は一瞬だけ合ったが、少女はすぐにれいむから顔を背ける。
あんなに愛くるしかったれいむが、顔をビキビキと歪ませながら怒鳴りつけてくる様子を直視する事ができなかった。
それでもごしごしと涙を拭い、精一杯の笑顔をれいむに向ける少女。
「また来るからね・・・・それまでにはゆっくり食べてね」
小さく呟くてれいむが踏みつけたお皿のお菓子を片付けると、静かに持ってきたお菓子を置く少女。
れいむは塞ぎがちだった少女に会話する楽しさを教えてくれた。
生きる楽しさを教えてくれた。れいむはかけがえの無い少女の初めての友達だった。
少女の父親はこれ以上、喚き散らすようなられいむを捨てると少女に告げていた。
ゆっくりなど捨てて外で普通に友達と遊びなさいと少女を叱った。
少女にとってそれは絶対に飲めない提案だった。れいむを手放すなど考えられなかった。
「れいむの代わりなんて居ないんだからね・・・」
消え入りそうな声で呟くと踵を返して少女はれいむの部屋を後にした。
「もっとおいしいお菓子を作らないと・・・」
もっとおいしいお菓子を作ればれいむは機嫌をなおしてくれるかもしれない。
気がつかない内に手を抜いていたのかも知れない。悪いのは私かもしれない。
早くれいむに元気になってもらわないと、れいむが捨てられてしまう。
少女の頬を再び涙がボロボロと零れた。
ガシャーン!
その時、れいむの部屋から窓ガラスの割れる音が響く。
少女は驚いてれいむの部屋に駆けつける。
ドアに耳を寄せると何かねばねばしたものが絡みつくような粘着質な音が聞こえる。
「ひぃっ!」
何か得体の知れない事が扉の向こうで起こっている。
れいむが危ない!少女は兄の部屋に駆け込むと床に無造作に置いてあるバットを握り締めて
れいむの部屋に飛び込んだ!
「そ、そこに居るのは誰!?」
フルフルと身を震わせながらバットをかざす少女。
そこに居たのは一匹の小汚いまりさ。
ゴミをあさっていたのだろうか?生臭い臭いが周囲に漂っている。
れいむが少女を睨みつけながら素早くまりさの後ろに隠れる。
まりさは「ゆ゛っ?」と少し驚いた様な表情を浮かべた。
れいむはまりさの影からにょき!と顔を除かせるとニヤニヤとした笑みを浮かべて叫んだ。
「きいてねっ!バカな人間さん!れいむはまりさとゆっくりする事にしたよっ!」
「む゛ーじゃ!む゛ーじゃ!うっめっ!これめっちゃうめっ!」
少女がれいむの為に作ったお菓子をまりさがガツガツと食い散らかしてる。
そんなまりさにれいむが目を血走らせながら体を擦り付けている。
ゆっくり同士が行うスキンシップ「すりすり」である。先程外から聞こえた音の原因がこれだった。
そしてそれを無視して必死にお菓子を貪るまりさ。必死。とにかく必死だった。
「う゛め゛っ!!な゛ん゛ぞごれう゛っめ゛」
「う、うるさいよ!れいむ!なんなの?このまりさはっ!」
少女が目を潤ませながられいむに怒鳴りつける。
一生懸命作ったお菓子をこんなまりさに食べさせるなんて。
れいむが喜ぶ顔を見たくて精魂込めて作った料理を食い散らかすまりさを見て
再びポロポロと涙を零す少女。フルフルと力なくバットを振りかぶった。
「ゆ゛っ!!」
少女に握られたバットにようやく気がついたまりさは
プパッ!とお菓子を噴出すとジョロジョロとしーしーを漏らしながら震える声で少女に語りかけた。
「ゆ、ゆっくりきいてくださいぃ!まりさは何も悪い事してないですぅぅぅ!」
まりさのあまりにも情け無い表情に少女は思わず後ずさる。
こんな弱々しいゆっくりに手荒い真似をしてしまうなんて・・・
少女はまりさに「大丈夫だよ」と笑顔を浮かべてバットを下へ降ろした。
そんな様子を憎々しげに見つめていたれいむが少女に叫ぶ。
「れいむはまりさと森でゆっくりするよ!ゆふん!役立たずの人間さんは用済みだよっ!」
れいむの冷たい一言に少女の顔は凍りつく。
もはや無理やり笑顔を作る事もできずに取り乱した表情でれいむに叫ぶ
「そ、そんなこといわないでぇぇ!」
「ゆっ!うるさいよ!むこうへいってね!」
まりさのおさげにれいむが齧りついてグイグイと引っ張る。
まりさはここには危険は無いと理解したのか、再びご熱心に床に散らばったお菓子に舌鼓を打っている。
「いまこれ食べてるからねっ!あとにしてねっ!」
少女はれいむに近づこうとにじり寄るが、れいむは唾を飛ばして少女を追い払う。
唾を顔面に何度も直撃させながら、少女はれいむに懇願を続ける。
「ご、ごめんね!ちゃんとお菓子作るから出て行くとか言わないでよ!」
「ゆっ!やだよっ!お外の方がゆっくりできそうだから、れいむはゆっくり旅立つよっ!」
「な、なにいってるの!れいむはお外で死にそうになってて拾われたんでしょ!」
「ぞんなばけないでしょぉぉぉ!「ねつぞう」しないでね!れいむは生まれもっての美ゆっくりだよ!」
「ゆ゛っ!」
美ゆっくりという単語にまりさが即座に反応を示す。
食欲を満たしつつあるまりさの本能は次の欲である性欲にシフトしつつあった。
そういえば最近、生きる事に精一杯ですっきりをすっかり忘れていた。
目の前のれいむ、美ゆっくりには程遠かったが、
でっぷりと太ったその体格は食の水準の高さをまりさに確信させた。
まりさはれいむを自分のモノにしようと考え「ゆへへ」と汚い笑みを浮かべた。
そしてれいむと少女の間に割り込むと無駄に男前の表情でまりさが叫んだ。
「ゆっ!そこまでなんだぜ!ゆっくりできない人間さん!行こうれいむ!」
「ゆふぅぅぅ!ばりざぁぁぁぁ!!」
涎と変な液体を撒き散らしながら喜ぶれいむ。
おさげでれいむのもみあげを優しく握ると外へ向かってまりさは歩き出した。
フラフラと寄ってくる少女をぷくぅ!で追い払うまりさ
「ひっ!」
弱いと分かれば謙る必要も無い。
まりさの威嚇に身を震わせる少女を見てまりさがニヤニヤと汚い笑みを浮かべた。
いい気分だ。いつもゴミ捨て場でまりさを睨みつけてくる人間も実は弱いのかも知れない。
「さようならバカな人間さんっ!ゆっくり死ね!」
ペッ!と唾を吐きながられいむがぼすん!と跳ねて窓から飛び出した。
ひらひらと紅葉がれいむの目の前を通る。それを思ったより長く伸びた舌で「ジュルン!」と口にくわえた。
「かわいくてごめんねっ!」
れいむがキラキラと目を輝かせながらまりさに微笑んだ。
そのふてぶてしい笑顔にまりさが少し困ったような表情を浮かべた後、
まりさも負けじと満面の笑顔でれいむの声に答えた。
「早く帰ってすっきりしようねっ!」
ぼすんぼすん!と大地を踏みしめながら、2匹が大地を跳ねていく。
「れいむぅぅ!れいむぅぅぅ!」
「ぶるんぶるん!」と体を振るわせるれいむと
「んほぉんほぉ!」と舌をだらしなく垂れ流しながら前かがみで進んでいくまりさ。
そんな2匹を少女はいつまでもいつまでも眺めていた。
それから2日後。
景色はすっかりと紅色から純白へと変化していた。
雪は一日中降り積もり、街の交通網を一時的に麻痺させる程だった。
窓を手で擦って外の景色を眺める少女。赤く腫れた目。
この2日間少女はれいむの帰りを待ち続けていた。
しかしこの大雪の中、ゆっくりの様な脆弱な生物が生き残れる程自然は甘くない。
ただ外を眺め続ける時間が増えていた。
「もう泣くのはおよしなさい」
少女の父親が優しく肩に手を置く、
その手にそっと触れて少女がすんすんと泣き出した。
その時、ばすんばすん!と扉を叩く音。
来客に応対しようとトタトタと俯きながら玄関に向かう少女。
それを父親が声をかけて止める。
「そんな顔でお外へでるつもりかい?お父さんが出るからね」
あごひげをさすりながらニヤリと笑う父。
そして少女をテーブルに座らせると小さな箱を置いた。
「お父さんは要らなかったんだけどね。なんかもらったから。そういうことだから」
突然の父からの贈り物に小首を傾げる少女。
そして再び忙しなく扉を叩く音。
父は「せっかちさんだぜ」と呟くとゆっくりと玄関に向かっていった。
時折カタカタと振動する謎の箱。
その箱をつんつんと指で突付いて少女は怪訝な表情を浮かべた。
「なにしてるの!?はやくあけてね!!ばかなの?しぬの?」
玄関へ行き、扉を開けると予想通りそこには頭に雪を積もらせながらぷくぅ!と膨らんだれいむ。
膨らみながらも身を切るような寒さの為に時折プルプルと身を震わせている。
その傍らには全然かわいくない子れいむが3匹、鼻も無いくせに鼻水を垂らしながら
「ゆっ!ゆっ!」と眉毛をキリッ!とさせながら何故か誇らし気な表情でこちらを見つめている。
可愛くてごめんね!とでも言いたいのだろうか?主に存在がキモい。
「ゆっ!やっとあいたよっ!本当に人間さんはグズだね!かわいいれいむ達がゆっくり帰ってきたよっ!」
「「「きゃえってきてぃゃよ♪」」」
さも当然の権利のように悪態をつきながら少女の父親に暴言を吐き捨てると
ニコニコとした笑顔で赤ゆっくり達を従えて暖かい家の中へと入り込もうとするゆっくり達。
「ゆっ!ゆっ!いちばんにょりだよっ!」
「ゆっくちすすむにぇ!」
「あったきゃいにぇ!」
そんな赤れいむ達だったが、入り口を塞ぐ人間の足に邪魔されて中に入る事はできない。
「ゆっ?ゆっ?」と不思議そうな顔で一斉に親れいむに注がれる赤れいむの視線。
気の利かない父親の愚鈍な動きに親れいむのこめかみに餡の筋がビキィ!と浮んだ。
「とっととどいてね!バカな人間さん!それからはやくれいむ達にあまあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「あまあまを持ってきてね」といい終わる前に「ばぶちぃ!」と父に踏み潰される一匹の赤ゆっくり
足を上げると餡子を口から吐き出した赤れいむが痙攣しながら靴の裏にへばりついている。
「ゆ゛っ!」
少し遅れて姉妹が餡子まみれでお空を飛んでるみたいになっている事に気がついた赤ゆっくり。
クワッ!と形相を浮かべて、意外にも素早い動きで親れいむの後ろへ逃げ込む。
そして親れいむの背後からにゅる!と顔を出して「><」こんな目で
「ばきゃなの?」とか「ちんでね!」とか勝手な事を叫んでいる。
その饅頭の後ろは安全地帯でもなんでもない。むしろ被害を蒙る可能性で考えれば危険地帯の特等席であろう。
そんな危険地帯の塊がビキビキと筋を浮かべながら、
歯をギリギリと鳴らしてワナワナと震えている。
少女の申し出に一度も反対することなく、
それを飲み続けていた父親をれいむは家の中でのヒエラルキーの最下層と勝手に決め付けていた。
その最下層のありえない暴挙にれいむの怒りは頂点に達していた。
「それから・・・なんだって?」
悪びれない父親の口調。
れいむは父親に噛み付かん程の剣幕で大口を開けて叫んだ。
「なにじでるごのクズぅぅぅ!死んでわびでねぇぇぇぇ!それかられいむ達にあまあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
またしても「あまあまを持ってきてね」と言い終わる前に再び足が振り下ろされた。
足を上げると更に餡子を搾り出した赤ゆっくりが先程より早いテンポで痙攣をしている。
コロリと地面に落ちた赤れいむはフルフルと涙を零しながら男にその可憐な泣き顔を見せつけると
力を振り絞って声をあげた。ホロリと宝石のような涙が雪の上に落ちて溶けた。
「ゆぅ・・・ぐしゅぅん・・・れいみゅを・・・いじめにゃいでにぇ・・・・?」
キモイので足を叩きつけてすり潰した
「ぷぎょ!ぴへっ!ほだらっ!」
一瞬の内に柘榴のように砕ける赤れいむ。
プチプチと目玉と歯が潰れる音を立てながら赤れいむは粉々に砕け散って黒い染になった。
おもむろに服を脱ぎだす父。上半身の真っ赤なボディが露になり無駄に湯気とか立ち上る。
父は深く静かに怒りが有頂天になっていた。
このクソ饅頭の傲慢を許したのは全て自分の間違いであった。
少女の心の成長をこのクソ饅頭に委ねた自分の間違いであった。
全ては自分の過ち。しかしそれを差し引いても、炎のように父に立ち上る憎悪の感情。
ゆっくり許すまじ
真っ赤なボディが唸りを上げて咆哮する。
心底ゆっくりできない光景を目の当たりにしてゆっくり達は恐れおののいた。
「ゆわあ゛あ゛あ゛あ゛!!ゆっくりできないぃぃぃ!!」
仰け反るように倒れこんで雪の中で溺れるようにジタバタと暴れるゆっくり達。
しかしバケツに入った冷水を浴びせられるとその動きはピタリと止まった。
「づべだっ!!ひぎっ!ゆべっ!!」
更に空になったバケツを顔面にぶつけられて、顔を真っ赤にしながらゆっくりと親れいむが立ち上がった。
もはや今までの尊大な態度をぶら下げた面構えの面影も無い。
父の圧倒的な「ゆっくりできない」オーラによって親れいむの心は一瞬で折れて萎縮した。
そこには寒さに身を震わせながら涙を目に滲ませて謙った笑みを浮かべるクソ饅頭が居るだけであった。
「おっ・・・おでがいじばず!ざむぐでっ!おなががべっでじにぞうなんでずっ!」
ポロポロと涙を流しながら先程とは打って変わって謙虚な態度で父親に語りかけるれいむ。
そんな親れいむの情け無い様子を目を丸くしながら驚いた表情で見つめる子れいむ達。
可愛い姉妹が踏み潰されたのも関わらず、ヘコヘコと人間のご機嫌を伺う姿に子れいむが苛立ちの声をあげる。
「おきゃーしゃん!にゃにしてるにょぉぉぉ!」
「ばきゃなのぉぉ?はやくいもーちょのかたきをとってにぇ!」
ぷんぷん!と頬を膨らませて不甲斐ない親れいむを罵倒する子れいむ
もう一匹はぽこんぽこんと親に体当たりを繰り返している。
「うるさいよ!ちびどもっ!ゆっくり黙っててねっ!」
カッ!と赤ゆっくり達を一括して吹き飛ばす親れいむ。
「ゆっくりいたい」「しかもころがるよ」と雪の中に突き刺さる子れいむ達。
しかし水をかけられた事により体温は更に低下し、あまりおいしいリアクションを取る事もできずに
無言でそそくさと雪から這い出て親の側に擦り寄って「さむいからやめてね」と無表情で呟いた。
そんな子供たちを捨て置いて、ニコニコと冷や汗を浮かべながら親れいむが語りだした。
「に、人間さん?ゆっくりきいてね?だかられいむを」
ぴしゃり!
無言で締められる扉。
家の中から流れ込んでくる暖気すら遮断される。
外からは「ゆっ?ゆっ?」とれいむ達の声が微かに聞こえてくる。
れいむの助けて欲しい対象が地味に「れいむ達」から「れいむ」に変化している事にご注目頂きたい。
つまりれいむの中で赤ゆっくり達はこの時点で切り捨てられたのである。
もはや赤ゆっくりには一瞥もくれずに身を切る様な寒さに耐えるれいむ。
暫くしてようやく扉が開かれた。
そこには雪に半分埋もれかかってつららを生やしながら白目を剥く親れいむと
何とかして暖かい親れいむの口の中に入り込もうとする赤れいむ。
寒い塊が口の中に入る事を拒む親れいむと
必死に口に捕まって何とかしてこじ開けようとする子れいむ達との無言の戦い。
そんな戦いの最中に再び開け放たれた扉に親れいむは目を輝かす。
「まりさはどうした?」
「ばっ!ばばっ・・・ばでぃざばっ・・・」
れいむは凍りついた口をバリバリと鳴らしながら家を去った後の事を語りだした。
森へ帰ったれいむとまりさはとりあえずすっきりした。取るものもとりあえずすっきりした。
そして産まれたのはれいむ6匹とまりさ7匹。
しかし程なくして森に凄まじい寒気が押し寄せる。予期せぬ冬の到来だった。
当たり前だ。この時期に外をうろつくゆっくりなど無能以外の何者でも無い。
他のゆっくり達はとっくに冬眠の準備を終えて巣の中で眠りについているだろう。
それに予期せぬとか何か不慮の事故っぽく言うのはいかがなものか?
しかも餌集めもしないで子作りとは・・・バカだ。バカのエリートだ。
ようやく越冬の為の餌集めに奔走をはじめる2匹。
トロくさいまりさの緩慢とした動きにイラ立ちを覚えながら餌を探すれいむ。
しかし山には餌など何も無い。他のゆっくり達が取りつくしてしまったのだった。
ケーキさんもクッキーさんもハチミツさんも山には残ってなく
バカのまりさが草とか虫とかありえない物をかき集めて踏ん反り返っていたのでブン殴った。
娘が精魂かけて作ったお菓子をゴミと履き捨てる程、無駄に舌の肥えたクソ饅頭だ。
森の食料はさぞかしゆっくりできなかっただろう。
ケーキやクッキーが森にあるわけないでしょ?馬鹿なの?死ぬの?冬なのに頭の中は春真っ盛りなの?
ゴミばかり集めてくる馬鹿のまりさに説教をしていたら
馬鹿のクセに突然キレて暴れだした。その騒ぎに巻き込まれて赤れいむが怪我をした。
ゆっくりできないまりさを赤ゆっくり達と協力して叩きのめして下山を決意したれいむ。
そして現在に至る。
「至れるわけないだろ」
「ゆぷぇ!」
父はれいむを踏みつけた。ズモモ!と雪に沈んでいくれいむ。
なんで赤ゆっくりがれいむ3匹だけになってるんだ?なんかスパッと大事な所を省いて無いか?
雪に埋もれて顔だけを出したれいむが「ゆゆん?ゆゆん?」とスッとぼけた笑顔を浮かべたので
雪を盛り付けて埋めてやった。暫くは「だしてね?ばかなの?」と可愛らしい声を張り上げていたが、
早々に限界が来たのか押し殺した声で「ゆっくり食べました」と白状した。
どうやって食べたのか?と聞くと
基準が甚だ不明瞭だが、可愛くないまりさから順番に全員で襲って食べたらしい。
しかもそれを行っていく内に、痛みつければ痛みつけるほど味がよくなる事に気づき、
最後のほうはミンチになるまで全員で暴行を行ったと白状した。
凄いな。清々しいまでのゲスだ。逆に関心してしまった程だ。
「そんな事してお前はどう思った?」
一応聞いた。
返答によって処遇が変わるわけではない。何となく聞いただけだ。
その問いかけに対してれいむはポツリと斜め下の回答を示した。
「あまりおいしくなかったです」
「そうかそうか」
「話したんだからそろそろ出してね。寒いからね。ゆっくりさせてね」
もうもうと湯気をあげるやかんを取り出す。
先程この場を離れたのはこれを用意する為だった。
ぐらぐらに煮えたぎったそれをれいむの埋まっているあたりに流し込む。
一瞬にして雪は溶けて全身を埋めたれいむの姿が露になる。その顔面に熱湯を垂れ流してやる。
「ゆっ!すごく暖かっ・・・・づあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
熱湯の直撃を受けてれいむがおもしろい様に跳ね上がった。
熱湯から逃れようと必死に体を動かすれいむだがどんどん溶ける雪によって
体は逆に深く深く沈みこんでいった。あっという間にそこにマンホールの蓋くらいの小さな池が完成した。
「や゛べでえ゛ぇぇぇぇ!あ゛づい゛!!あ゛づい゛ぃぃぃぃ!」
池の中に潜り込んで熱湯から逃げるれいむ。
しかし息をする為に苦悶の表情を浮かべた顔が水面から時折出てくる。
そこへ正確に煮えたぎった熱湯を注ぐ。
「ひゃべ!ひゃべでぃえええええ!!!」
お湯を浴びる度にビクン!と体を振るわせてのた打ち回りながら沈んでいくれいむ。
お湯が尽きたので暫く放置しておくとプカリと顔面をグシャグシャに変形させた饅頭が浮かび上がった。
「はっ・・・!はひゅっ!はっひゅっ!」
よろよろと小さな池から脱出して顔面を雪に擦り付けて患部を冷やすれいむ。
心配して擦り寄ってきた赤れいむを払いのけてフラフラと逃走を開始した。
降りしきる雪の中をヒタヒタと身を引きずるようにして進むれいむ。
「この吹雪の中どこへいくんだ?こっちに来なさい」
「ゆ゛っ・・・・!」
パンパンに腫らした顔をグルリと回転させて父親を見るれいむ。
その憔悴しきった顔へ父親が先程とは違う優しい笑みを浮かべて語りかけた。
「もう終わりだよ」
「ゆゆっ・・・!」
「これでもう終わりだ、こっちに来なさい」
「ゆぅん!」
お仕置きは終了した。
父親の圧倒的な残虐行為にゆっくりとれいむは身の程を理解した。
れいむは自分が如何に恵まれた環境で過ごしていたということをこの2日間で痛感した。
しかしもう一度チャンスを与えられた。
れいむは変われる。もう一度この人間さんたちとゆっくりさせてもらえる。
れいむは涙を流しながら人間に駆け寄った。
「ごべんなざい!れいむはゆっくりと反省したよ!」
「そうかそうか」
父親の手には更なるやかん。
グラグラと煮えたぎった液体がもうもうと煙を放っている。
それを見てれいむのグシャグシャの顔が更にグシャグシャになった。
「ゆ゛っ!なにじでるの!?もうおわっだんでしょう??」
「そう、お前はもう終わりだ」
「な゛に゛い゛っでるのぉぉぉ!ゆびぇ!!うそでじょおお!?ゆっぐりざぜでえええええ」
再びれいむの顔面に降り注がれる熱湯。
れいむは憔悴し切ってもう逃げる事もできない。
「べびっ!ひぶべっ!い゛や゛っ!じぬのい゛や゛ぁぁぁぁぁ!!!」
ビクビクと痙攣するれいむに黙々と降り注がれる熱湯。
再び地面が溶け出して新たな池が形成される。
徐々に沈み込んでいくれいむの体。
その視線は完全に沈み込むまで開いた扉から微かに除かせる暖かい室内に注がれていた。
そして再びれいむが浮かび上がってくることは無かった。
「ゆっくちー♪」
「ゆっくちできるにぇ♪」
地面には二つの穴、その片方の黒く濁った小さな池にぷかぷかと浮いてゆっくりする赤れいむ達。
それは親が惨死した池というのに見事なゆっくりぶりである。
「きゃっきゃっ」と楽しそうな声をあげるゆっくり達が父を見上げて喚きだす。
「にゅるいよ?ばきゃなの?」
「はやく、あったきゃくちてにぇ!」
そんなバカ2匹を拾い上げて家に入る父。
家の暖気に目を輝かせて父親の手からにゅる!と体をはみ出しながら
キョロキョロと辺りを見回している。
向かった先はおトイレ。
素早くドアを閉めて便器の中に2匹を投げ入れる。
「ゆぴぇ!」
「ちゅめたい!」
驚いた表情を浮かべてにゅるにゅると便器から這い出そうともがく2匹。
しかし便器から脱出することはできずに少し登っては水の中にぽちゃん!と落ちる。
やがて2匹は互いを踏み台にして脱出しようともみ合いをはじめた。
「どいちぇにぇ!れいみゅはここからでるからにぇ!」
「ばきゃなの?れいみゅはここでちんでにぇ!」
父は「小」しようか「大」にしようかやや迷い、折角だからと「大」の方へツマミを捻った。
ズゴゴゴゴゴゴ!っと唸りを上げてゆっくり達にとっては大洪水が降り注ぐ。
2匹はシンクロした動きでカッ!と形相を浮かべて水に流された。
「ゆぴぃぃぃぃ!おきゃぁぁぁしゃん!なにちてるにょぉぉぉぉ!」
「はやくっ!はやくたしゅけてね!きゃわいいれいみゅがこまっちぇるよぉぉぉ!」
ズボッと便器に並んで詰まった為に即座に吸い込まれる事は無かったが、
徐々に水かさが増して目を見開きながら水没して苦悶の表情を浮かべる2匹。
やがて片方が力尽きて「ちゅるん!」と水流に飲まれて深い闇に飲まれていった。
溜まっていた水が流れ出して水流が強まる。もう一匹はそんな姉妹には目もくれず、
便器のへりに齧りついてぶるんぶるんと身を揺らしながら水流に耐えていた。
やがて弱まる水流。水かさがどんどん減っていき赤れいむが水面から顔を除かせた。
死にそうな顔で必死に「ぜひゅーぜひゅー」と呼吸をする赤れいむ。
顔をあげて父親に涙を零しながら懇願する。
「やべちぇぇぇぇ!きょきょからだしちぇぇぇぇぇ!」
ポロポロと涙を流しながら尻を振ってかわいさをアピールする赤れいむを他所に
物凄い勢いでタンクに補給されていく水。
次の水を流せる様になるまでにあと数十秒といった所か。
「なんだか「もよおして」きたな」
1人呟く父親。
そしてボロンと父親のズボンの中からこぼれ落ちた「たわわに実った山葡萄」
それを見た赤れいむはアマギった表情を浮かべて絶叫した。
「ぴゅみぃぃぃ!な゛に゛ちょれぇぇぇ!!ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃ!!!」
父から渡された箱の中には小さなベッドで「ゆぴぃゆぴぃ」と眠りにつく赤まりさが入っていた。
「水上まりちゃ だよ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」
「うわーまりさ、すごーい」
「ゆっくち!ゆっくち!だにぇ!」
コップの水の上に帽子を浮かべてその上に乗って誇らしげに
ぷりんぷりんと身を揺らすまりさを眺めながら少女は手を叩いて幸せそうに微笑んだ。
もはや我侭ばかり言うクソ饅頭の事など少女の心の片隅にも残っては居なかった。
おしまい
「ゆぅ・・・」
れいむが小さくため息をついた。
窓から見える景色は茜色に染まっていた。
ひらひらとれいむの元へ紅葉したもみじが舞い落ちる。
舌を伸ばしてそれを口にくわえようとしたが、舌は窓に邪魔されてぐにゃりと曲がった。
「うゆゆ・・・」
再びれいむが深いため息をつく。
振り返って視線を部屋の中に移す。そこには無造作に置かれた粗末な食器。
その中にはゴミとしか形容のできない物体が詰まっている。それを見て眉をしかめるれいむ。
狭い部屋。所狭しと転がるガラクタの山。
れいむは満たされていなかった。ゆっくりできていなかった。
そこにドスドスと床を鳴らしながられいむの部屋にノックも無しに入って来る人間。
ゆっくりできない元凶が来た。れいむの表情が更に暗くなる。
人間は皿に入ったゴミを一瞥すると、手をつけていないそれを睨みつけて舌打ちした。
「ゴミクズ、なんで食べて無いんだ?」
「ゆゆ・・・っ」
れいむは申し訳なさそうな表情を浮かべながらぼそぼそと語りだした。
「これは食べ物じゃないよ・・・ごみさんだよ、こんなの食べてもゆっくりできないよ」
弱々しいれいむの声。
いくら無理をしてお腹を膨らませても「ゆっくり」できなければ意味が無いのだ。
ゆっくりできなければれいむは精神的に餓死するだろう。人間はそれをわかっていなかった。
昔はおいしい食べ物を持ってきてれいむをゆっくりさせてくれた人間だったが、いつの間にか変わってしまった。
意図的にゆっくりさせずに苦しむれいむを見て心の中でせせら笑っている様だった。
どうして変わってしまったのだろうか?
れいむには全く心当たりが無かった。心当たりが無いのだから直す事もできない。
れいむは目に涙を滲ませながら人間を見上げる。
その視線は一瞬だけ合ったが、人間はすぐに顔を背ける。
全く心が通じ合ってない。れいむにゆっくりできないという事実だけが突きつけられた。
「次来るまでに食べておけよ、代わりは無いからな」
皿の上に盛り付けられたゴミを蹴り飛ばしながら
もっと汚い皿に盛り付けられた新しいゴミを乱暴に床に放り投げる人間。
れいむの凍りついた表情を一瞥してほくそ笑むと踵を返して部屋を出ていった。
ドスドスと耳障りな足音が消えるとようやくれいむの心が少しだけゆっくりした。
今日何度目になるだろうか?再び大きくため息をつくれいむ。
「ゆっ!かわいいれいむなんだぜ!」
突如窓の外から聞こえた声にれいむはピクリと体を振るわせた。
振り向くとそこには黒い三角帽子を被ったゆっくりまりさの姿があった。
久しぶりに目にする同属のゆっくりに目を輝かせるれいむ。
「ゆ・・・ゆっくりしていってねっ!」
久しぶりのゆっくり同士の挨拶に少し緊張しながらも、
艶やかな髪を棚引かせてにこっ!とれいむは精一杯の笑顔で挨拶をした。
久しぶりの挨拶。何かおかしな所は無かっただろうか?
高まる胸を押さえながらジッとまりさを見つめるれいむ。
「ゆっくりしていってね!」
ぽいん!と地面を跳ねながらまりさも元気に返事をする。
れいむは体の中にぽかぽかとした暖かい何かが流れてくるのを感じた。
それは久しく忘れていた「ゆっくり」だった。
「ゆっ!れいむ!どうしたのぜ?ゆっくりしてないのぜ?」
「ゆゆん?」
れいむの頬にはいつの間にか涙が零れていた。
人間とのゆっくりできない暮らしの最中、
目の前に現れたとてもゆっくりとしたまりさとのゆっくりで緊張の糸が切れてしまったのだ。
それと同時にれいむは一つの結論を導き出していた。
やはりれいむはゆっくりだ。人間とはゆっくりできない。
もうこんな生活には耐えられない。ゆっくりしたい。
そして願わくば目の前のゆっくりとしたまりさと一緒に森へ帰りたい。
「ゆっ・・・・ゆーん!ゆーん!」
感極まったれいむは泣き出してしまった。人間には恩義を感じていた。
今はあんな風になってしまったが、それでも昔はれいむをゆっくりさせてくれたのだ。
しかし人間は変わってしまった。揺るぎの無い事実である。
そしてもう二度と元のゆっくりとした人間に戻る事は無いだろう。
れいむには確信があった。ゆっくりできる事には敏感なゆっくりの勘である。
「ど、どうしたのぜ!?れいむ!?ゆっくり!ゆっくり!」
まりさはオロオロと慌てた表情を浮かべて窓に顔を押し付けてれいむに語りかける。
れいむはもみあげで涙を拭うと再び精一杯の笑顔を浮かべた。
「ゆゆん、ちがうよ・・・・れいむはとってもゆっくりしているよ」
れいむはゆっくりとまりさに今までのいきさつを語り始めた。
人間に拾われてとてもゆっくりできた事。
おいしいご飯を食べさせてもらってとっても幸せだった事。
ある日を境に人間が急に冷たくなってしまった事。
思い起こせばれいむは森の群れから連れ去れてここへ来た事。
最近に至っては狭い掃き溜めのような部屋にれいむを閉じ込めてゴミしか食べさせてくれない事。
辛い事だけでは無く、楽しかった事も包み隠さずにゆっくりとまりさに伝えた。
「ゆゆゆっ・・・・」
おさげで肘をつくような姿勢で考え込んでいたまりさだったが、
少し暗い表情でれいむを見つめて口を開いた。
「れいむは人間さんに飽きられてしまったのぜ」
「ゆぅ!!」
まりさが口にした人間像。
興味本位でゆっくりを捕まえてその日の気分が良ければ飼い、気分が悪ければ捨てる。
捨てるだけならばまだいい。多くのゆっくりは人間の気まぐれで殺されていた。
れいむの話を聞けばどうやらその日はそう遠くないとまりさは感じた。
「このままじゃれいむは捨てられてしまうのぜ」
「ゆゆぅ・・・れいむはどうすればいいの・・・?」
まりさは再びおさげをくいっ!と曲げて考え込む。
暫し沈黙。
そして「ゆん」と頷くとぽいん!と地面を蹴って大声で叫んだ。
「いこう!れいむ!まりさと森へかえろうね!」
「ゆっ!で、でもっ!れいむは」
「れいむ!ゆっくりと窓をあけてね」
あまりにも突然のまりさの申し出にれいむは戸惑う。
しかし、優しい口調だが力強いまりさの声にれいむの決心はついた。
「ゆっ!わかったよまりさ」
もみあげを器用に使って窓を開くれいむ。
その時、大きな音と共に部屋の扉が開かれる。そこにはバットを握った人間。
「おまえらそこで何をしてるんだ?」
目を血走らせて2匹を睨みつける人間。れいむがフルフルと身を震わせる。
そんなれいむの前にまりさが立ちはだかる。
そんな頼もしいまりさの影から恐る恐るれいむが口を開いた。
「ゆっ・・・人間さんゆっくり聞いてね・・・」
「うるさい!なんだ!この小汚いまりさは!」
怒りに身を震わせながら人間がバットを振りかぶる。
「ゆっくりきくんだぜ!人間さん!まりさは何も悪い事はしてないんだぜ!」
まりさの真っ直ぐな眼差しに人間は少し後ずさる。
れいむを蔑ろにし続けた負い目もあるのだろう。
人間は憎々しげにまりさを睨み付けながらもバットを下へ降ろした。
「れ、れいむはまりさと一緒に森にかえるよ・・・!」
弱々しいがはっきりとした口調でれいむは人間にその意志を伝える。
初めは2匹を威圧するような態度で睨みつけていた人間だったが、
いざ手元を離れるとなるとれいむを手放すのが惜しくなったのか、
急に態度を変えてれいむに甘い言葉を投げかけてくる人間。
まりさはそんな人間の醜い執着心を見透かしていた。
こんな態度は一時的なものである。
まりさが去れば、人間はすぐにれいむを蔑ろにするだろう。
コロコロと変わる態度からもそれは明らかだった。
意を決したようにまりさが人間との会話を打ち切って大きな声で叫んだ。
「ゆっ!そこまでなんだぜ!ゆっくりできない人間さん!行こうれいむ!」
「ゆっ!まりさっ!」
おさげでれいむのもみあげを優しく握ると外へ向かってまりさは歩き出した。
その力強い歩みに人間の甘い言葉に再び動揺していたれいむの心も決心がついた。
れいむの悪い癖だ。
また元の優しい人間に戻ってくれるかもしれないとありもしない希望にすがって
またゆっくりできない生活を続ける所だった。
どうせ遅かれ早かれれいむは捨てられる運命なのだ。
ならばこちらから勇気を持って踏み出そう。その方がきっと「ゆっくり」できる。
「さようなら人間さん・・・れいむが居なくてもゆっくりしていってね!」
ホロリと涙を零しながられいむがぽいんと跳ねて窓から飛び出した。
久しぶりの地面。ひんやりとした感触が心地いい。
ひらひらと紅葉がれいむの目の前を通る。それを舌を伸ばして口にくわえた。
その時何故だかわからないが、れいむの胸のつかえがスーッと取れていった。
「ゆっくりすすもうねっ!」
れいむがキラキラと目を輝かせながらまりさに微笑んだ。
その優しい笑顔にまりさが少し驚いたような表情を浮かべた後、
まりさも負けじと満面の笑顔でれいむの声に答えた。
「ゆっくり帰ろうねっ!」
ぽいんぽいん!と大地を踏みしめながら、2匹大地を跳ねていく。
その光景を人間は苦虫を噛み潰したような顔でいつまでもいつまでも眺めていた。
人間視点
「はぁ・・・」
少女が小さくため息をついた。
窓から見える景色は茜色に染まっていた。
調理を開始してからかれこれ2時間が経過していた。
最近は学校から帰ったられいむのごはんの支度でかかりきりだった。
いつもと変わらないお菓子の山。手は抜いていない。いない筈。
それなのにれいむの様子は最近おかしかった。
昔は「うめっ!これめっちゃうめぇっ!」と唾液を撒き散らしながら喜んでくれたのに
ここ最近、手をつけようともしないでそっぽを向いてしまう。
何か悪い病気では無いだろうか?ふとよぎった不安に少女の心が押しつぶされそうになる。
フルフルと首を振って、不安を振りほどく少女。
完成したお菓子をれいむが拾ったときに口にくわえていた粗末なお皿に盛り付ける。
(きょれは れいみゅの あまあま のおうちだからにぇ! ていちょうにあつかっちぇにぇ!)
れいむを拾ったときの光景を思い出してクスクスと手で口を押さえながら微笑む少女。
きっと取り越し苦労に違いない。お菓子の出来栄えも上々だ。
今日こそあの可愛い笑顔で元気に食べてくれるに違いない。
お皿を両手でもって慎重に廊下を進む少女。
「れいむのゆっくりプレイス」と書かれた紙が貼ってある部屋の前で立ち止まる少女。
最近、昼夜問わず喚き散らすようになってしまったれいむ。
少女は他の家族達の邪魔にならないように、
親や兄弟に頼み込んで物置の荷物を少しずつ部屋に置いてもらってれいむの部屋を用意した。
物置をノックして静かに戸を開ける少女。
部屋の中のれいむは少女がれいむの為に作った台に乗って窓から外を眺めている。
「またこんなに散らかして・・・」
部屋の中はれいむが外からかき集めてきた宝物と称するガラクタが散乱していた。
中には新しいタカラモノもある。これはもう明らかに生ゴミだった。
「ゆ゛っ!!」
れいむが少女に気づき眉間にシワを寄せながら少女を睨みつける。
不機嫌そうなれいむの表情が少女を見た途端に更に陰険なものなる。
少女はそれを見て少し困ったような表情を見せたが、取り繕う様に笑顔を浮かべると
わざとらしく部屋を見回して優しい口調でれいむに話しかけた。
「も、もう!だめだよれいむ!こんなにゴミを散らかして」
れいむは何も言わずに少女を睨みつけている。
まるで見ず知らずの他人を見るようなその目に少女は思わず泣きそうなるがグッとこらえる。
「なんでごはん食べないの?全部れいむが好きなものばかりでしょ?」
れいむは憎々しげに舌打ちをした。
「こんなのあまあまじゃないよっ!」
「・・・えっ?」
「れいむはもうこんなのじゃ満足できないよっ!もっとおいしいあまあまを持ってきてねっ!」
心無いれいむの一言に少女は堪えていた涙を零した。
どうして変わってしまったのだろうか?
少女には全く心当たりが無かった。心当たりが無いのだから直す事もできない。
少女は目に涙を滲ませながられいむを見る。そんな少女を親の敵のような視線で睨みつけるれいむ。
台からぼすん!と飛び降りると踏ん反り返りながら少女に向かって叫んだ。
「ゆっ!人間さんは本当にグズだねっ!はやくしてね!これ以上れいむを怒らせないでねっ!」
そう叫ぶとれいむは皿に盛り付けられたお菓子を踏み砕いてぷくぅ!と膨らみながら少女を睨みつける。
視線は一瞬だけ合ったが、少女はすぐにれいむから顔を背ける。
あんなに愛くるしかったれいむが、顔をビキビキと歪ませながら怒鳴りつけてくる様子を直視する事ができなかった。
それでもごしごしと涙を拭い、精一杯の笑顔をれいむに向ける少女。
「また来るからね・・・・それまでにはゆっくり食べてね」
小さく呟くてれいむが踏みつけたお皿のお菓子を片付けると、静かに持ってきたお菓子を置く少女。
れいむは塞ぎがちだった少女に会話する楽しさを教えてくれた。
生きる楽しさを教えてくれた。れいむはかけがえの無い少女の初めての友達だった。
少女の父親はこれ以上、喚き散らすようなられいむを捨てると少女に告げていた。
ゆっくりなど捨てて外で普通に友達と遊びなさいと少女を叱った。
少女にとってそれは絶対に飲めない提案だった。れいむを手放すなど考えられなかった。
「れいむの代わりなんて居ないんだからね・・・」
消え入りそうな声で呟くと踵を返して少女はれいむの部屋を後にした。
「もっとおいしいお菓子を作らないと・・・」
もっとおいしいお菓子を作ればれいむは機嫌をなおしてくれるかもしれない。
気がつかない内に手を抜いていたのかも知れない。悪いのは私かもしれない。
早くれいむに元気になってもらわないと、れいむが捨てられてしまう。
少女の頬を再び涙がボロボロと零れた。
ガシャーン!
その時、れいむの部屋から窓ガラスの割れる音が響く。
少女は驚いてれいむの部屋に駆けつける。
ドアに耳を寄せると何かねばねばしたものが絡みつくような粘着質な音が聞こえる。
「ひぃっ!」
何か得体の知れない事が扉の向こうで起こっている。
れいむが危ない!少女は兄の部屋に駆け込むと床に無造作に置いてあるバットを握り締めて
れいむの部屋に飛び込んだ!
「そ、そこに居るのは誰!?」
フルフルと身を震わせながらバットをかざす少女。
そこに居たのは一匹の小汚いまりさ。
ゴミをあさっていたのだろうか?生臭い臭いが周囲に漂っている。
れいむが少女を睨みつけながら素早くまりさの後ろに隠れる。
まりさは「ゆ゛っ?」と少し驚いた様な表情を浮かべた。
れいむはまりさの影からにょき!と顔を除かせるとニヤニヤとした笑みを浮かべて叫んだ。
「きいてねっ!バカな人間さん!れいむはまりさとゆっくりする事にしたよっ!」
「む゛ーじゃ!む゛ーじゃ!うっめっ!これめっちゃうめっ!」
少女がれいむの為に作ったお菓子をまりさがガツガツと食い散らかしてる。
そんなまりさにれいむが目を血走らせながら体を擦り付けている。
ゆっくり同士が行うスキンシップ「すりすり」である。先程外から聞こえた音の原因がこれだった。
そしてそれを無視して必死にお菓子を貪るまりさ。必死。とにかく必死だった。
「う゛め゛っ!!な゛ん゛ぞごれう゛っめ゛」
「う、うるさいよ!れいむ!なんなの?このまりさはっ!」
少女が目を潤ませながられいむに怒鳴りつける。
一生懸命作ったお菓子をこんなまりさに食べさせるなんて。
れいむが喜ぶ顔を見たくて精魂込めて作った料理を食い散らかすまりさを見て
再びポロポロと涙を零す少女。フルフルと力なくバットを振りかぶった。
「ゆ゛っ!!」
少女に握られたバットにようやく気がついたまりさは
プパッ!とお菓子を噴出すとジョロジョロとしーしーを漏らしながら震える声で少女に語りかけた。
「ゆ、ゆっくりきいてくださいぃ!まりさは何も悪い事してないですぅぅぅ!」
まりさのあまりにも情け無い表情に少女は思わず後ずさる。
こんな弱々しいゆっくりに手荒い真似をしてしまうなんて・・・
少女はまりさに「大丈夫だよ」と笑顔を浮かべてバットを下へ降ろした。
そんな様子を憎々しげに見つめていたれいむが少女に叫ぶ。
「れいむはまりさと森でゆっくりするよ!ゆふん!役立たずの人間さんは用済みだよっ!」
れいむの冷たい一言に少女の顔は凍りつく。
もはや無理やり笑顔を作る事もできずに取り乱した表情でれいむに叫ぶ
「そ、そんなこといわないでぇぇ!」
「ゆっ!うるさいよ!むこうへいってね!」
まりさのおさげにれいむが齧りついてグイグイと引っ張る。
まりさはここには危険は無いと理解したのか、再びご熱心に床に散らばったお菓子に舌鼓を打っている。
「いまこれ食べてるからねっ!あとにしてねっ!」
少女はれいむに近づこうとにじり寄るが、れいむは唾を飛ばして少女を追い払う。
唾を顔面に何度も直撃させながら、少女はれいむに懇願を続ける。
「ご、ごめんね!ちゃんとお菓子作るから出て行くとか言わないでよ!」
「ゆっ!やだよっ!お外の方がゆっくりできそうだから、れいむはゆっくり旅立つよっ!」
「な、なにいってるの!れいむはお外で死にそうになってて拾われたんでしょ!」
「ぞんなばけないでしょぉぉぉ!「ねつぞう」しないでね!れいむは生まれもっての美ゆっくりだよ!」
「ゆ゛っ!」
美ゆっくりという単語にまりさが即座に反応を示す。
食欲を満たしつつあるまりさの本能は次の欲である性欲にシフトしつつあった。
そういえば最近、生きる事に精一杯ですっきりをすっかり忘れていた。
目の前のれいむ、美ゆっくりには程遠かったが、
でっぷりと太ったその体格は食の水準の高さをまりさに確信させた。
まりさはれいむを自分のモノにしようと考え「ゆへへ」と汚い笑みを浮かべた。
そしてれいむと少女の間に割り込むと無駄に男前の表情でまりさが叫んだ。
「ゆっ!そこまでなんだぜ!ゆっくりできない人間さん!行こうれいむ!」
「ゆふぅぅぅ!ばりざぁぁぁぁ!!」
涎と変な液体を撒き散らしながら喜ぶれいむ。
おさげでれいむのもみあげを優しく握ると外へ向かってまりさは歩き出した。
フラフラと寄ってくる少女をぷくぅ!で追い払うまりさ
「ひっ!」
弱いと分かれば謙る必要も無い。
まりさの威嚇に身を震わせる少女を見てまりさがニヤニヤと汚い笑みを浮かべた。
いい気分だ。いつもゴミ捨て場でまりさを睨みつけてくる人間も実は弱いのかも知れない。
「さようならバカな人間さんっ!ゆっくり死ね!」
ペッ!と唾を吐きながられいむがぼすん!と跳ねて窓から飛び出した。
ひらひらと紅葉がれいむの目の前を通る。それを思ったより長く伸びた舌で「ジュルン!」と口にくわえた。
「かわいくてごめんねっ!」
れいむがキラキラと目を輝かせながらまりさに微笑んだ。
そのふてぶてしい笑顔にまりさが少し困ったような表情を浮かべた後、
まりさも負けじと満面の笑顔でれいむの声に答えた。
「早く帰ってすっきりしようねっ!」
ぼすんぼすん!と大地を踏みしめながら、2匹が大地を跳ねていく。
「れいむぅぅ!れいむぅぅぅ!」
「ぶるんぶるん!」と体を振るわせるれいむと
「んほぉんほぉ!」と舌をだらしなく垂れ流しながら前かがみで進んでいくまりさ。
そんな2匹を少女はいつまでもいつまでも眺めていた。
それから2日後。
景色はすっかりと紅色から純白へと変化していた。
雪は一日中降り積もり、街の交通網を一時的に麻痺させる程だった。
窓を手で擦って外の景色を眺める少女。赤く腫れた目。
この2日間少女はれいむの帰りを待ち続けていた。
しかしこの大雪の中、ゆっくりの様な脆弱な生物が生き残れる程自然は甘くない。
ただ外を眺め続ける時間が増えていた。
「もう泣くのはおよしなさい」
少女の父親が優しく肩に手を置く、
その手にそっと触れて少女がすんすんと泣き出した。
その時、ばすんばすん!と扉を叩く音。
来客に応対しようとトタトタと俯きながら玄関に向かう少女。
それを父親が声をかけて止める。
「そんな顔でお外へでるつもりかい?お父さんが出るからね」
あごひげをさすりながらニヤリと笑う父。
そして少女をテーブルに座らせると小さな箱を置いた。
「お父さんは要らなかったんだけどね。なんかもらったから。そういうことだから」
突然の父からの贈り物に小首を傾げる少女。
そして再び忙しなく扉を叩く音。
父は「せっかちさんだぜ」と呟くとゆっくりと玄関に向かっていった。
時折カタカタと振動する謎の箱。
その箱をつんつんと指で突付いて少女は怪訝な表情を浮かべた。
「なにしてるの!?はやくあけてね!!ばかなの?しぬの?」
玄関へ行き、扉を開けると予想通りそこには頭に雪を積もらせながらぷくぅ!と膨らんだれいむ。
膨らみながらも身を切るような寒さの為に時折プルプルと身を震わせている。
その傍らには全然かわいくない子れいむが3匹、鼻も無いくせに鼻水を垂らしながら
「ゆっ!ゆっ!」と眉毛をキリッ!とさせながら何故か誇らし気な表情でこちらを見つめている。
可愛くてごめんね!とでも言いたいのだろうか?主に存在がキモい。
「ゆっ!やっとあいたよっ!本当に人間さんはグズだね!かわいいれいむ達がゆっくり帰ってきたよっ!」
「「「きゃえってきてぃゃよ♪」」」
さも当然の権利のように悪態をつきながら少女の父親に暴言を吐き捨てると
ニコニコとした笑顔で赤ゆっくり達を従えて暖かい家の中へと入り込もうとするゆっくり達。
「ゆっ!ゆっ!いちばんにょりだよっ!」
「ゆっくちすすむにぇ!」
「あったきゃいにぇ!」
そんな赤れいむ達だったが、入り口を塞ぐ人間の足に邪魔されて中に入る事はできない。
「ゆっ?ゆっ?」と不思議そうな顔で一斉に親れいむに注がれる赤れいむの視線。
気の利かない父親の愚鈍な動きに親れいむのこめかみに餡の筋がビキィ!と浮んだ。
「とっととどいてね!バカな人間さん!それからはやくれいむ達にあまあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「あまあまを持ってきてね」といい終わる前に「ばぶちぃ!」と父に踏み潰される一匹の赤ゆっくり
足を上げると餡子を口から吐き出した赤れいむが痙攣しながら靴の裏にへばりついている。
「ゆ゛っ!」
少し遅れて姉妹が餡子まみれでお空を飛んでるみたいになっている事に気がついた赤ゆっくり。
クワッ!と形相を浮かべて、意外にも素早い動きで親れいむの後ろへ逃げ込む。
そして親れいむの背後からにゅる!と顔を出して「><」こんな目で
「ばきゃなの?」とか「ちんでね!」とか勝手な事を叫んでいる。
その饅頭の後ろは安全地帯でもなんでもない。むしろ被害を蒙る可能性で考えれば危険地帯の特等席であろう。
そんな危険地帯の塊がビキビキと筋を浮かべながら、
歯をギリギリと鳴らしてワナワナと震えている。
少女の申し出に一度も反対することなく、
それを飲み続けていた父親をれいむは家の中でのヒエラルキーの最下層と勝手に決め付けていた。
その最下層のありえない暴挙にれいむの怒りは頂点に達していた。
「それから・・・なんだって?」
悪びれない父親の口調。
れいむは父親に噛み付かん程の剣幕で大口を開けて叫んだ。
「なにじでるごのクズぅぅぅ!死んでわびでねぇぇぇぇ!それかられいむ達にあまあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
またしても「あまあまを持ってきてね」と言い終わる前に再び足が振り下ろされた。
足を上げると更に餡子を搾り出した赤ゆっくりが先程より早いテンポで痙攣をしている。
コロリと地面に落ちた赤れいむはフルフルと涙を零しながら男にその可憐な泣き顔を見せつけると
力を振り絞って声をあげた。ホロリと宝石のような涙が雪の上に落ちて溶けた。
「ゆぅ・・・ぐしゅぅん・・・れいみゅを・・・いじめにゃいでにぇ・・・・?」
キモイので足を叩きつけてすり潰した
「ぷぎょ!ぴへっ!ほだらっ!」
一瞬の内に柘榴のように砕ける赤れいむ。
プチプチと目玉と歯が潰れる音を立てながら赤れいむは粉々に砕け散って黒い染になった。
おもむろに服を脱ぎだす父。上半身の真っ赤なボディが露になり無駄に湯気とか立ち上る。
父は深く静かに怒りが有頂天になっていた。
このクソ饅頭の傲慢を許したのは全て自分の間違いであった。
少女の心の成長をこのクソ饅頭に委ねた自分の間違いであった。
全ては自分の過ち。しかしそれを差し引いても、炎のように父に立ち上る憎悪の感情。
ゆっくり許すまじ
真っ赤なボディが唸りを上げて咆哮する。
心底ゆっくりできない光景を目の当たりにしてゆっくり達は恐れおののいた。
「ゆわあ゛あ゛あ゛あ゛!!ゆっくりできないぃぃぃ!!」
仰け反るように倒れこんで雪の中で溺れるようにジタバタと暴れるゆっくり達。
しかしバケツに入った冷水を浴びせられるとその動きはピタリと止まった。
「づべだっ!!ひぎっ!ゆべっ!!」
更に空になったバケツを顔面にぶつけられて、顔を真っ赤にしながらゆっくりと親れいむが立ち上がった。
もはや今までの尊大な態度をぶら下げた面構えの面影も無い。
父の圧倒的な「ゆっくりできない」オーラによって親れいむの心は一瞬で折れて萎縮した。
そこには寒さに身を震わせながら涙を目に滲ませて謙った笑みを浮かべるクソ饅頭が居るだけであった。
「おっ・・・おでがいじばず!ざむぐでっ!おなががべっでじにぞうなんでずっ!」
ポロポロと涙を流しながら先程とは打って変わって謙虚な態度で父親に語りかけるれいむ。
そんな親れいむの情け無い様子を目を丸くしながら驚いた表情で見つめる子れいむ達。
可愛い姉妹が踏み潰されたのも関わらず、ヘコヘコと人間のご機嫌を伺う姿に子れいむが苛立ちの声をあげる。
「おきゃーしゃん!にゃにしてるにょぉぉぉ!」
「ばきゃなのぉぉ?はやくいもーちょのかたきをとってにぇ!」
ぷんぷん!と頬を膨らませて不甲斐ない親れいむを罵倒する子れいむ
もう一匹はぽこんぽこんと親に体当たりを繰り返している。
「うるさいよ!ちびどもっ!ゆっくり黙っててねっ!」
カッ!と赤ゆっくり達を一括して吹き飛ばす親れいむ。
「ゆっくりいたい」「しかもころがるよ」と雪の中に突き刺さる子れいむ達。
しかし水をかけられた事により体温は更に低下し、あまりおいしいリアクションを取る事もできずに
無言でそそくさと雪から這い出て親の側に擦り寄って「さむいからやめてね」と無表情で呟いた。
そんな子供たちを捨て置いて、ニコニコと冷や汗を浮かべながら親れいむが語りだした。
「に、人間さん?ゆっくりきいてね?だかられいむを」
ぴしゃり!
無言で締められる扉。
家の中から流れ込んでくる暖気すら遮断される。
外からは「ゆっ?ゆっ?」とれいむ達の声が微かに聞こえてくる。
れいむの助けて欲しい対象が地味に「れいむ達」から「れいむ」に変化している事にご注目頂きたい。
つまりれいむの中で赤ゆっくり達はこの時点で切り捨てられたのである。
もはや赤ゆっくりには一瞥もくれずに身を切る様な寒さに耐えるれいむ。
暫くしてようやく扉が開かれた。
そこには雪に半分埋もれかかってつららを生やしながら白目を剥く親れいむと
何とかして暖かい親れいむの口の中に入り込もうとする赤れいむ。
寒い塊が口の中に入る事を拒む親れいむと
必死に口に捕まって何とかしてこじ開けようとする子れいむ達との無言の戦い。
そんな戦いの最中に再び開け放たれた扉に親れいむは目を輝かす。
「まりさはどうした?」
「ばっ!ばばっ・・・ばでぃざばっ・・・」
れいむは凍りついた口をバリバリと鳴らしながら家を去った後の事を語りだした。
森へ帰ったれいむとまりさはとりあえずすっきりした。取るものもとりあえずすっきりした。
そして産まれたのはれいむ6匹とまりさ7匹。
しかし程なくして森に凄まじい寒気が押し寄せる。予期せぬ冬の到来だった。
当たり前だ。この時期に外をうろつくゆっくりなど無能以外の何者でも無い。
他のゆっくり達はとっくに冬眠の準備を終えて巣の中で眠りについているだろう。
それに予期せぬとか何か不慮の事故っぽく言うのはいかがなものか?
しかも餌集めもしないで子作りとは・・・バカだ。バカのエリートだ。
ようやく越冬の為の餌集めに奔走をはじめる2匹。
トロくさいまりさの緩慢とした動きにイラ立ちを覚えながら餌を探すれいむ。
しかし山には餌など何も無い。他のゆっくり達が取りつくしてしまったのだった。
ケーキさんもクッキーさんもハチミツさんも山には残ってなく
バカのまりさが草とか虫とかありえない物をかき集めて踏ん反り返っていたのでブン殴った。
娘が精魂かけて作ったお菓子をゴミと履き捨てる程、無駄に舌の肥えたクソ饅頭だ。
森の食料はさぞかしゆっくりできなかっただろう。
ケーキやクッキーが森にあるわけないでしょ?馬鹿なの?死ぬの?冬なのに頭の中は春真っ盛りなの?
ゴミばかり集めてくる馬鹿のまりさに説教をしていたら
馬鹿のクセに突然キレて暴れだした。その騒ぎに巻き込まれて赤れいむが怪我をした。
ゆっくりできないまりさを赤ゆっくり達と協力して叩きのめして下山を決意したれいむ。
そして現在に至る。
「至れるわけないだろ」
「ゆぷぇ!」
父はれいむを踏みつけた。ズモモ!と雪に沈んでいくれいむ。
なんで赤ゆっくりがれいむ3匹だけになってるんだ?なんかスパッと大事な所を省いて無いか?
雪に埋もれて顔だけを出したれいむが「ゆゆん?ゆゆん?」とスッとぼけた笑顔を浮かべたので
雪を盛り付けて埋めてやった。暫くは「だしてね?ばかなの?」と可愛らしい声を張り上げていたが、
早々に限界が来たのか押し殺した声で「ゆっくり食べました」と白状した。
どうやって食べたのか?と聞くと
基準が甚だ不明瞭だが、可愛くないまりさから順番に全員で襲って食べたらしい。
しかもそれを行っていく内に、痛みつければ痛みつけるほど味がよくなる事に気づき、
最後のほうはミンチになるまで全員で暴行を行ったと白状した。
凄いな。清々しいまでのゲスだ。逆に関心してしまった程だ。
「そんな事してお前はどう思った?」
一応聞いた。
返答によって処遇が変わるわけではない。何となく聞いただけだ。
その問いかけに対してれいむはポツリと斜め下の回答を示した。
「あまりおいしくなかったです」
「そうかそうか」
「話したんだからそろそろ出してね。寒いからね。ゆっくりさせてね」
もうもうと湯気をあげるやかんを取り出す。
先程この場を離れたのはこれを用意する為だった。
ぐらぐらに煮えたぎったそれをれいむの埋まっているあたりに流し込む。
一瞬にして雪は溶けて全身を埋めたれいむの姿が露になる。その顔面に熱湯を垂れ流してやる。
「ゆっ!すごく暖かっ・・・・づあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
熱湯の直撃を受けてれいむがおもしろい様に跳ね上がった。
熱湯から逃れようと必死に体を動かすれいむだがどんどん溶ける雪によって
体は逆に深く深く沈みこんでいった。あっという間にそこにマンホールの蓋くらいの小さな池が完成した。
「や゛べでえ゛ぇぇぇぇ!あ゛づい゛!!あ゛づい゛ぃぃぃぃ!」
池の中に潜り込んで熱湯から逃げるれいむ。
しかし息をする為に苦悶の表情を浮かべた顔が水面から時折出てくる。
そこへ正確に煮えたぎった熱湯を注ぐ。
「ひゃべ!ひゃべでぃえええええ!!!」
お湯を浴びる度にビクン!と体を振るわせてのた打ち回りながら沈んでいくれいむ。
お湯が尽きたので暫く放置しておくとプカリと顔面をグシャグシャに変形させた饅頭が浮かび上がった。
「はっ・・・!はひゅっ!はっひゅっ!」
よろよろと小さな池から脱出して顔面を雪に擦り付けて患部を冷やすれいむ。
心配して擦り寄ってきた赤れいむを払いのけてフラフラと逃走を開始した。
降りしきる雪の中をヒタヒタと身を引きずるようにして進むれいむ。
「この吹雪の中どこへいくんだ?こっちに来なさい」
「ゆ゛っ・・・・!」
パンパンに腫らした顔をグルリと回転させて父親を見るれいむ。
その憔悴しきった顔へ父親が先程とは違う優しい笑みを浮かべて語りかけた。
「もう終わりだよ」
「ゆゆっ・・・!」
「これでもう終わりだ、こっちに来なさい」
「ゆぅん!」
お仕置きは終了した。
父親の圧倒的な残虐行為にゆっくりとれいむは身の程を理解した。
れいむは自分が如何に恵まれた環境で過ごしていたということをこの2日間で痛感した。
しかしもう一度チャンスを与えられた。
れいむは変われる。もう一度この人間さんたちとゆっくりさせてもらえる。
れいむは涙を流しながら人間に駆け寄った。
「ごべんなざい!れいむはゆっくりと反省したよ!」
「そうかそうか」
父親の手には更なるやかん。
グラグラと煮えたぎった液体がもうもうと煙を放っている。
それを見てれいむのグシャグシャの顔が更にグシャグシャになった。
「ゆ゛っ!なにじでるの!?もうおわっだんでしょう??」
「そう、お前はもう終わりだ」
「な゛に゛い゛っでるのぉぉぉ!ゆびぇ!!うそでじょおお!?ゆっぐりざぜでえええええ」
再びれいむの顔面に降り注がれる熱湯。
れいむは憔悴し切ってもう逃げる事もできない。
「べびっ!ひぶべっ!い゛や゛っ!じぬのい゛や゛ぁぁぁぁぁ!!!」
ビクビクと痙攣するれいむに黙々と降り注がれる熱湯。
再び地面が溶け出して新たな池が形成される。
徐々に沈み込んでいくれいむの体。
その視線は完全に沈み込むまで開いた扉から微かに除かせる暖かい室内に注がれていた。
そして再びれいむが浮かび上がってくることは無かった。
「ゆっくちー♪」
「ゆっくちできるにぇ♪」
地面には二つの穴、その片方の黒く濁った小さな池にぷかぷかと浮いてゆっくりする赤れいむ達。
それは親が惨死した池というのに見事なゆっくりぶりである。
「きゃっきゃっ」と楽しそうな声をあげるゆっくり達が父を見上げて喚きだす。
「にゅるいよ?ばきゃなの?」
「はやく、あったきゃくちてにぇ!」
そんなバカ2匹を拾い上げて家に入る父。
家の暖気に目を輝かせて父親の手からにゅる!と体をはみ出しながら
キョロキョロと辺りを見回している。
向かった先はおトイレ。
素早くドアを閉めて便器の中に2匹を投げ入れる。
「ゆぴぇ!」
「ちゅめたい!」
驚いた表情を浮かべてにゅるにゅると便器から這い出そうともがく2匹。
しかし便器から脱出することはできずに少し登っては水の中にぽちゃん!と落ちる。
やがて2匹は互いを踏み台にして脱出しようともみ合いをはじめた。
「どいちぇにぇ!れいみゅはここからでるからにぇ!」
「ばきゃなの?れいみゅはここでちんでにぇ!」
父は「小」しようか「大」にしようかやや迷い、折角だからと「大」の方へツマミを捻った。
ズゴゴゴゴゴゴ!っと唸りを上げてゆっくり達にとっては大洪水が降り注ぐ。
2匹はシンクロした動きでカッ!と形相を浮かべて水に流された。
「ゆぴぃぃぃぃ!おきゃぁぁぁしゃん!なにちてるにょぉぉぉぉ!」
「はやくっ!はやくたしゅけてね!きゃわいいれいみゅがこまっちぇるよぉぉぉ!」
ズボッと便器に並んで詰まった為に即座に吸い込まれる事は無かったが、
徐々に水かさが増して目を見開きながら水没して苦悶の表情を浮かべる2匹。
やがて片方が力尽きて「ちゅるん!」と水流に飲まれて深い闇に飲まれていった。
溜まっていた水が流れ出して水流が強まる。もう一匹はそんな姉妹には目もくれず、
便器のへりに齧りついてぶるんぶるんと身を揺らしながら水流に耐えていた。
やがて弱まる水流。水かさがどんどん減っていき赤れいむが水面から顔を除かせた。
死にそうな顔で必死に「ぜひゅーぜひゅー」と呼吸をする赤れいむ。
顔をあげて父親に涙を零しながら懇願する。
「やべちぇぇぇぇ!きょきょからだしちぇぇぇぇぇ!」
ポロポロと涙を流しながら尻を振ってかわいさをアピールする赤れいむを他所に
物凄い勢いでタンクに補給されていく水。
次の水を流せる様になるまでにあと数十秒といった所か。
「なんだか「もよおして」きたな」
1人呟く父親。
そしてボロンと父親のズボンの中からこぼれ落ちた「たわわに実った山葡萄」
それを見た赤れいむはアマギった表情を浮かべて絶叫した。
「ぴゅみぃぃぃ!な゛に゛ちょれぇぇぇ!!ゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃ!!!」
父から渡された箱の中には小さなベッドで「ゆぴぃゆぴぃ」と眠りにつく赤まりさが入っていた。
「水上まりちゃ だよ! ゆっくちちちぇいっちぇにぇ!」
「うわーまりさ、すごーい」
「ゆっくち!ゆっくち!だにぇ!」
コップの水の上に帽子を浮かべてその上に乗って誇らしげに
ぷりんぷりんと身を揺らすまりさを眺めながら少女は手を叩いて幸せそうに微笑んだ。
もはや我侭ばかり言うクソ饅頭の事など少女の心の片隅にも残っては居なかった。
おしまい