ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2349 たたかい
最終更新:
ankoss
-
view
『たたかい』 21KB
虐待 小ネタ 不運 現代 小ネタ、ゆっくり同士の殺し合い
初めは真っ暗な部屋の中だったんだぜ。
まりさが生まれて、初めての”挨拶”をしたとき、返ってくるはずの声はなかったぜ。
代わりに帰ってきたのは、人間さんの声。
「誕生おめでとう、残念だけれどお前はこれからゆっくり出来ない運命にある」
まりさは必死に叫んだんだぜ。
「どうちて!?まりしゃはゆっくちしちゃいのじぇ!ゆっくちしゃせちぇにぇ!」
いくら言っても、人間さんはまりさをゆっくりさせてくれる様子はなかったんだぜ。
だけど人間さんはまりさに言ったんだぜ。
「一つだけ、ゆっくりする方法がある」
まりさはその言葉に耳をすませたんだぜ、ゆっくりできさえすればそれでいいんだぜ。
「生きろ、目の前の敵を殺し、自分一人で、生き続けろ。そうすればお前はゆっくり出来る」
「ほんとうに…?」
「あぁ、本当さ」
瞬間、目の前が真っ白になったんだぜ。
その時からまりさのゆっくりするための戦いが始まったんだぜ。
まりさはゆっくり、ゆっくりするために、生きる。
その明るさにまりさの目が慣れて、目の前に広がったのは、無機質な白い床と、同じく真白な壁だった。
そして自分の丁度向いの壁にいる、一匹のゆっくり。
「ゆんゆんゆ~ん♪かわいくっちぇぎょめんにぇ!」
ぷりんぷりんと身体をくねらせながら自分の世界に浸っている、ゆっくりれいむ。
そのれいむは、まりさと同じ生まれたての赤ゆで、大きさもまりさと同じ程度だった。
「ゆゆっ!きゃわいいれーみゅがいるんだじぇ」
幼いまりさは、生まれて初めて見る”同族”に強い興味を惹かれていた。
何せ生まれ堕ちてからほとんど時間が立っていないとはいえ、兄弟はおろか母親にすら出会っていないのだ。
満面の笑みを浮かべて近寄ろうとするまりさに、すぐ近くに男の声が響く。
「殺せ」
「えっ」
まりさは男が何を言っているのかわからなかった。
男の声は、まりさにしか聞こえていないようである、まりさが驚き硬直しているにも関わらず、
れいむは緊張感なく自らのゆっくりを謳歌していた。
「あいつがゆっくりしていると、お前はゆっくりできない」
「しょんなことないんだじぇ、まりさはあのこといっしょにゆっくちしゅるよ!」
「そうか、じゃあ死ぬんだな」
その声と同時に、まりさの体の真ん中に突然刺すような痛みが走る。
「ゆぴぃいいい!!?」
「痛いか」
まりさには全く仕掛けは分らなかったが、男の声と同時に痛みがやみ、男が何かしているのだということが分かった。
「まりしゃになにしゅるんだじぇ!?ゆっくちできにゃいいい!」
「次に逆らえば、お前の一生は終わりだ、あれを殺せ」
「でも…」
幼いまりさは男の言葉に素直に従うほど盲目ではなかったし、冷徹でもなかった。
しかしまりさのつぶやきに対して帰ってくる言葉はない、あるのはただ恐ろしいほどの沈黙と、遠くから聞こえるのんきなれいむの声だけだった。
「…」
まりさは無言でれいむに近付いていく、生まれたばかりの自分の命が脅かされていることもそうだが、まず確かめなければならないことがあった。
本当に目の前のあのこは敵なのか。
あんなにもゆっくりしていそうに見えるのに、あのこと一緒にゆっくりすることは本当に出来ないのか。
未だ使ったことのない未熟な餡子脳をフル回転させてまりさは考えた。
だが生まれたてのゆっくりの思考で高等な考えが浮かぶ筈もなく、まりさはすぐに能天気な考えに至ってしまう。
(ゆっくちできにゃいにゃんでうそなんだじぇ、まりさはあのことゆっくちするんだじぇ~)
今まで不安に陰っていた表情も、一歩また一歩と近づいて行くうちに、れいむの呑気に当てられたように緩んでいく。
ゆっくりと近づいていき、自分の体一個分くらいの間隔の所まで近づき、まりさは大きな声で挨拶をした。
「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
しかしれいむの反応は、まりさが予想していたものとは少し違っていた。
いままで幸せそうに身体をくねらせていたれいむの動きがピタリと止まり、代わりに冷たい視線がまりさに向けられる。
その口から発せられた言葉は、まりさの浮かれた気持ちを吹き飛ばすには十分だった。
「どうしてれーみゅのゆっくちをじゃましゅるにょ?」
「ゆ…?」
そんなつもりは決してない、けれどまりさはいいわけの言葉を言い出せずにいた。
生まれた瞬間から、本能に刻まれている、”ゆっくり”という言葉、感情、現象。
自分がゆっくりすれば、相手もゆっくり出来る、相手がゆっくりしていれば、自分もゆっくりできる。
ゆっくりしていってねと言えば、自然と空間を共有することができる。
そんな当たり前。
それがいの一番で否定されてしまった。
自分はなにか間違っていただろうか、誰にも教えてもらっていないから、違うことをしてしまっていたのだろうか。
そんなはずはないとまりさの中のまりさは言っている、けれどまりさと目の前のれいむは、同じゆっくりのはずが、違う生き物のようだった。
危険だ、まりさの本能に緊張が走った。
その瞬間、れいむが突然身を縮め、まりさの方に向って勢いをつけて飛び出してくる。
「れーみゅのじゃましゅるやつはゆっくちちね!」
咄嗟に避けようとするも、至近距離からの奇襲に身体が追い付かなかった。
まりさの体にれいむの体がもろにぶつかり、反動でまりさの体がころころと後ろに転がった。
「ゆっくちできにゃいこはちね!」
まりさが遠く離れても、れいむの攻撃がやむ気配はなかった。
「いじゃいいぃいぃぃいいい!!!」
このままでは殺される、そう思いながらも、幼いまりさはただただ自分の身に降りかかった痛みに泣き叫ぶことしか出来なかった。
そしてそのままれいむの体当たりを何度も食らうことになってしまう。
幸いまだ柔らかい生まれたての赤ゆ同士のぶつかり合いということもあり、本人が大袈裟に泣き叫んでいること以外のダメージは思いのほか少なかった。
「ゆひゃひゃ!ちね!じゃまもにょはちね!」
れいむはきゃっきゃと喜びの声をあげながら、ひたすらまりさに身体をぶつけ、踏みつけ続けた。
一方的に体当たりを食らい、このままじわじわとなぶり殺されていくかと思われたまりさだったが、ほんの些細なきっかけで事態は急展開を見せる。
「ゆがぁあぁぁあああ!!」
それは何でもない、ただの痛みから来るまりさの叫びだった。
しかしその時むきだしになったまりさの歯に、れいむのやわらかな頬が引っ掛かり、少しだけ傷をつけたのだ。
「ゆひいぃいっぃぃぃいいい!!!」
まりさに負けるとも劣らない多きな悲鳴をあげ、れいむが飛退く。
その頬の小さな傷からは、だらだらとれいむの中身である餡子が漏れ出していた。
「ゆ………?」
突然攻撃から解放されたまりさの口内に、じわりと柔らかな甘みが広がっていく。
それは初めて味わう食べ物、それも麻薬にも似た、あまあまの味だった。
「あみゃ…あみゃ……?」
もう泣き叫び疲れ、捏ね繰り回されて心身ともに疲労したまりさにとって、その甘みはまさに生きる気力となった。
生まれてからまだ何も口にしていない、まりさはそれまで感じていなかった空腹感が急に我慢出来ないほど強くなっていくのを感じた。
まりさは無言でのた打ち回っているれいむに近付いていく。
その目的は、れいむの頬から流れ出している”あまあま”だった。
「あみゃあみゃのにおいがするんだじぇ…」
れいむはまりさの接近に、自分の発する悲鳴のせいで気づいていない。
そしてまりさは、れいむにぴたりとくっつくと、大きな口を開けてれいむの傷口に思いきり齧りついた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
形容しがたい甲高い悲鳴をあげて、れいむがその身に降りかかった痛みにさらに激しく身をよじる。
しかしまりさも食らいついたまま離れず、その体制のまま母乳を吸うかのように、れいむの中の”あまあま”を吸い出していった。
「んくっ…んくっ…んくっ…」
行き着く暇もなくまりさはただ貪欲に、空腹に任せてれいむの中身をむさぼっていく。
「も…ゆっく………」
しばらくすると、れいむは生命維持に必要な量の餡子を吸いだされてほんの小さな断末魔を残して絶命した。
それでもまりさは食事をやめず、抵抗しなくなったとみると、がぶりと皮を齧り租借し、どんどんれいむを食っていった。
まりさの食欲が満たされたころには、れいむはお飾りを残してほとんどの部分をまりさに食いつくされていた。
「やればできるじゃないか」
それまで黙っていた男の声が、まりさの耳元で突然囁いた。
言葉もろくにかわしていない、名も知らぬゆっくりを食ったことで少し大きくなったまりさは、男の声にこたえずゆっくりと考えていた。
(これがゆっくちなんだじぇ…?たしかにまりしゃはおなかいっぴゃいになったけど、ゆっくちはできてないきがするんだじぇ…)
それからまりさは、真っ白な部屋の中で過ごし、時間を問わず壁が突然開いて中から現れるゆっくりを殺し続けた。
まりさは殺したゆっくりを全て喰って成長していった、なぜなら部屋にはゆっくり意外のものが何も送られてこなかったからだ。
ここにはまりさと、まりさの敵以外には何も存在しなかった。
最初の数匹はなんてことはない、種類こそ様々だったが、自分と同じような子ゆっくりにも満たない、闘争能力もない弱いゆっくり達だけだった。
しかしまりさが子ゆっくりサイズまで成長する頃、相手を殺すことに慣れてきた頃、相手もまたより明確に目的を持つ者が現れ始めた。
それぞれが、まりさと同じく”自分がゆっくりするために相手を殺す”ということを前提にまりさの前に立ちふさがってきた。
おそらくまりさと同じように、何匹ものゆっくりの犠牲の上にまりさと対峙しているのだろう。
しかしまりさも、本能のままゆっくりしたかった、何より死ぬのは嫌だった。
激しく体を動かして、相手の息の根を止めるために全身全霊をかける。
そして満たされぬ欲望を相手を喰うことで満たしていく。
生まれた時から、ゆっくりにとって長い長い間、それを何度も何度も繰り返した。
まりさも少しずつではあるが成長していき、成体と呼べる大きさになるまで生き抜くことができた。
いつの間にかまりさは、自分では気づかないうちに少しずつゆっくりと変わっていくことになる…
その日はいつもと違っていた。
真っ白い壁に突然黒い口が開いた、そこまではいつものとおりだ。
けれどいつもはそこからすぐに現れるはずのゆっくりが、今日に限っていつまでたっても現れない。
まりさが不思議がっていると、男が短く言い放った。
「進め」
「すすめって、このなかにはいるの?」
まりさが聞き返すも、男はそれに答えなかった。
仕方なくまりさはぽっかりと空いた壁の穴の中に入ることにした。
何が起こるかわからないと、以前ゆっくりようむを倒したときに手に入れた棒切れを口にくわえ、奥へ進んでいった。
光がまったく届かないその中は、目がなくなったのではないかと錯覚するほどに暗く、どこまでも続いていくかのようにさえ感じた。
しばらく進んでいくと、突然まりさは何も見えない空間に顔面を強打してしまう。
「ゆげっ!」
痛みに涙をこらえていると、ゆっくりと目の前の壁が口をあけていき、さっきまでまりさがいたのとそっくりの、真っ白な部屋に通じる穴が開いた。
そしてまりさの正面には、一匹のまりさが顔を伏せてたたずんでいた。
そのまりさは、まりさの気配を感じてゆっくりと顔を上げた。
するとその顔は、まったく見分けがつかないほどまりさとそっくりだった。
まりさはそれを直感的に感じていた。
(あのまりさはなんだかまりさににてるんだぜ…)
部屋にいたまりさも、目の前に現れたまりさを見て何か感じたようで、驚いたように目を見開いていた。
「そいつが今回の敵だ、殺せ」
男の声がまりさのすぐそばで冷たく響く。
しかしそれもいつものこと、若干の違和感を感じたものの、まりさはいつもと同じように目の前の敵を殺すために前に進んだ。
まりさがそばによっても、部屋のまりさは一向に動き出そうとはしなかった、ただじっとまりさの動きを見つめているだけだった。
おぼうしの鍔が触れ合うほどの距離まで近づいたとき、部屋のまりさが突然声を出した。
「まりさは…まりさなの?」
「まりさはまりさだぜ」
まりさには、部屋のまりさが言っている意味がよくわからなかった。
まりさの中で、これはすでに生死を賭けた戦いなのだ。
まりさは部屋のまりさのおぼうしの鍔を口にくわえ、体をひねって遠くに投げ飛ばした。
経験上、お飾りへの攻撃が一番相手の動揺を誘うことが出来るということを知っているからだ。
ある者はそれだけで泣き叫び、またある者は飛んでいったお飾りを拾おうと、まりさに無防備な背中を晒した。
けれど部屋のまりさは、まりさの予想に反して微動だにしなかった。
「っ!」
まりさは体を跳ねさせてすばやく距離をとり、棒をしっかりと咥えなおして身構えた。
何か攻撃がくるかと思い、体を緊張させていたが、部屋のまりさは一向に最初にいた位置を動こうとすらしなかった。
ただただまりさのことをじっと見つめている。
長い沈黙の後、部屋のまりさがぼそりと呟く。
「まりさは、まりさのいもうとだよ…」
「ゆ…?」
突然の発言にまりさは思わず棒を咥えていた口元を緩めてしまう。
しかしすぐに気を引き締め、もう一度強く咥えなおした。
「まりさにはわかるよ、まりさはまりさのいもうとだよ!」
「なにいってるんだぜ、まりさにはおやもきょーだいもいないのぜ」
「まっくらなへやでうまれたでしょ!?まりさもそうだったよ!それにまりさにはわかるんだよ!まりさはまりさのいもうとなんだよ!」
部屋のまりさは感情的になって一気にまくし立てる。
けれどまりさは、部屋のまりさが高ぶっていくごとに、どんどん醒めた気持ちになっていくのを感じていた。
(いみわかんないぜ、こいつきっとあたまおかしーんだぜ)
喚く部屋のまりさの言葉を意識してシャットアウトして、まりさは無造作に口に咥えた棒で部屋のまりさを貫いた。
「ゆ…?」
間抜けな声を上げて部屋のまりさが、目と目の間に刺さった棒を見つめた。
「い…いたいよ…ねぇまりさ、いっしょにゆっくりしようよ…」
「うるさいぜ、まりさはゆっくりするためにいきてかなきゃいけないんだぜ、おまえをころさなかったらまりさがころされるんだぜ」
「そんなことないよ…まりさはまりさをころさないよ…だからいっしょに…」
「………」
一緒にゆっくりする。
その響きが、乾ききったはずのまりさの心をほんの少しだけ揺り動かした。
しかしそれもほんの些細なこと、抵抗しないのならばただ殺すのみと、まりさはぐっと部屋のまりさを貫く棒に力をこめた。
そのまま中枢餡を貫くかと思われた棒は、部屋のまりさが歯を食いしばり体に力を入れたことでそれ以上進まなくなってしまう。
「ぐ…このっ…はやくしね!はやくしぬんだぜ!」
まりさの背筋に嫌な予感が走る。
今まりさと対峙しているということは、おそらくまりさと同じかそれ以上のゆっくりを相手にしているということなのだ。
まりさには、今まで戦ってきた相手の力量から、そのことがわかっていた。
今まで無抵抗だったことや、不可解な発言の全てがまりさを油断させるための罠だったかもしれない。
まりさはこのままでは危険と判断し、棒を口から話して後ずさりした。
けれどやはり部屋のまりさはその場から動くことはなかった。
その体に刺さった棒は中枢餡を抉るほどではないにせよ、深く刺さっている。
引き抜いてそれを武器にされる心配はないと思うが、まだ抵抗する余力は残っていそうだった。
まりさは警戒を解かず次の手を考えながらじっと部屋のまりさを見つめる。
痛みで潤んだ部屋のまりさと視線がぶつかり合った。
その目は、どこか哀れむような、慈しむような色を含んで、まりさをじっと見つめていた。
まりさは抵抗がないと判断して、すばやく部屋のまりさの横に回りこみ、その柔らかなほほに噛み付き、そのまま噛み千切った。
「いだぁっ!!!」
これには部屋のまりさもさすがにたまらず、悲鳴を上げる。
まりさはそれを口の中でたっぷりと転がしてから、ごくりと飲み込んだ。
口の中を濃厚な甘みが満たしていく。
まりさはもうこの味に病みつきだった、あまあまを食べている時が、ゆっくりを求めて殺し合いをするまりさの、唯一ゆっくりした時間だった。
「もういいんだぜ、ていこうしないんだったらさっさとしぬんだぜ、まりさはおまえをころして、ゆっくりするんだぜ」
そのまま2度3度と部屋のまりさのほほを噛み千切っては飲み下していく。
まりさは自然と歪んだ笑みを浮かべながら、ゆっくりと無抵抗の部屋のまりさを捕食していった。
痛みにぶるぶると身を震わせながら、部屋のまりさが言葉を紡ぐ。
「わかったよまりさ…まりさとはいっしょにゆっくりできないんだね…”おねーちゃん”かなしいよ…」
「まだそんなこといってるんだぜ、さっさとしぬんだぜ」
「おねーちゃんにはわかっちゃったから…まりさがいもーとだってわかっちゃったから…」
「だまれ!だまるんだぜ!」
「だから、もうこれいじょうまりさとあらそいたくないよ、まりさにはゆっくりいきてもらいたいよ…」
「まりさはゆっくりするんだぜ!それにはおまえがしなないといけないんだぜ!」
「そうだよね…そういう”るーる”だもんね…だから…」
さあ、おたべなさい。
突然、まりさの目の前で部屋のまりさの体が真っ二つに裂けた。
そのまま部屋のまりさは、物言わぬ饅頭となって、転がってしまう。
しかしその表情は、とても穏やかで、慈愛に満ちていた。
「なんなんだぜ…なんなんだぜ!」
まりさはひどく混乱していた、今までこんな相手を見たことなどなかったからだ。
まりさは迷いを振り切るように、部屋のまりさだったものに噛み付いた。
今まで感じたこともないほどの極上の甘みが口の中を駆け抜けた。
だが、それだけだった。
敵を殺して喰っている時のような高揚感も、ゆっくりした気分も何も感じられなかった。
甘みで吐きそうになりながらも、無理やり饅頭を口に詰め込み、のどの奥に押し込んでいく。
全て食べ終えるまで、何度も何度もまりさの中に疑問が浮かび上がった。
最初に部屋のまりさを見たときに感じた違和感の正体は、
もしかしたら本当に部屋のまりさが言っていたように、まりさ達が兄弟だったから感じたのではないだろうか。
まりさはそれを無視してしまったけれど、部屋のまりさはそれを確信していたからあのような行動に出たのではないだろうか。
ぐるぐると回る思考、けれど答えは出なかった。
出たところで、すでに”姉だったかもしれないもの”は死に、まりさの一部になってしまった後だ。
涙は出なかったが、まりさは言葉では言い表せないほど陰鬱な気分になってしまっていた。
そんなまりさのすぐそばで、男のうれしそうな声が響く。
「よくやった、さぁ、部屋に戻るんだ」
男に聞けば何かわかるかもしれない、ともおもったが、まりさは黙って声に従った。
真実を知ったからどうなるというのだ、結果はもう変わらない、過去に戻ることなどできないのだ。
部屋を出る途中、最初に投げ捨てた部屋のまりさのおぼうしがまりさの目に止まった。
まりさは少しだけ考えてから、おもむろに自分のおぼうしを投げ捨て、部屋のまりさのおぼうしを頭に乗せた。
「どうした?」
男が疑問の声を上げる。
「きにしないでほしいんだぜ」
まりさはそっけなく答えて、自らの部屋に戻っていった。
自分のおぼうし以外ではゆっくりできないはずなのに。
なぜか部屋のまりさのおぼうしは、まるで自分のものかのようにしっくりと、まりさの頭にフィットしていた。
自分の部屋に戻ったまりさは、それからも定期的に現れる敵を容赦なく殺していった。
かつて感じていたような高揚感はない、ただ目の前の火の粉を振り払うように、襲い掛かってくる敵を撃退するだけだった。
まりさは以前ほど死ぬことが怖くなくなっていた。
生きていればゆっくりできる、という人間さんの言葉は、もしかしたら嘘なのかも知れないと思うようにもなった。
敵を殺し、次の敵が現れるまでのあまり長くはない時間、まりさはお帽子を目深にかぶって、目を閉じてゆっくりと考え事をして過ごした。
(まりさはいま”ゆっくり”できてるのかな…こんなまりさをみて、どうおもうんだぜ…?ねぇ…”おねえちゃん”………)
そしてまた今日も目の前の白い壁にぽっかりと口が空き、中から狂気に満ちた目のゆっくりが飛び出してくる。
おぼうしの下から見えるその目を見て、まりさは今度の相手も何匹ものゆっくりを殺してきたゆっくりだということを感じた。
そして自分も、そんなやつと何も変わらない、しょせんゆっくり殺しのゆっくりなのだ。
だけどここでは、生きるために相手を殺さなければいけない。
部屋に残っていることが許されるのは、常に一匹だけなのだ。
まりさの戦いは、終わらない。
-------------------------------------------------
一部視聴者から絶大な支持を受けている、インターネット放送のアングラチャンネルがある。
『ゆっくりちゃんねる』と名づけられたそのチャンネルでは、様々な番組を配信していた。
『れいむの子育て日記』『お笑いゆっくりNo.1』『ゆっくりとまったり』
調教されたゆっくりが演じるものや、やらせ無しの天然のゆっくりを使った本格的な番組まで、
多種多様な番組が放送され、そのどれもが人気のあるものばかりだった。
しかし、その中でも、一部コアなファン向けに限定配信され、また熱狂的な人気のある番組。
それが『ゆっくりバトリング』だった。
番組の内容は、いたってシンプル。
ノーマル会員が見れるものは、小さな子ゆっくり程度がメインで、相手が泣くまで殴りあうというシンプルなもの。
通常課金会員になると、実際に殺し合いをするゆっくり達を、実況つきを見ることができる。
そして特別課金会員になると、より殺し合いになれたゆっくり達の死合を、生の音声そのままで視聴することができるのだ。
バトリング用のみに育成されたゆっくりは多かった。
理由は、ブリーダーの支持を体内に埋め込んだ小型スピーカーを通して指示することができ、比較的生産が容易だからだ。
スピーカーには小型モーターがついていて、赤ゆの時はこれを作動させることで脅し効果を期待することができる。
実際には成長したゆっくりを殺すような装置は内臓されていないのだが、
ゆっくりが環境になじむほど生き残るころには自発的に戦っているということになる。
また、野良ゆっくりで凶暴なものを捕獲し、参加させるブリーダーもいた。
ほかにも、戦闘用に改造処理を施したゆっくりを使用したブリーダーもいたが、現在のところ過度の改造はバランスを崩壊し、
視聴者の望む本物の殺し合いから遠ざかる、という理由で、別枠扱いとなっている。
このチャンネルで配信される試合には賞金もかけられており、ブリーダーはその試合に勝つと、賞金や賞品を獲得することができる。
そのため、マイナージャンルながらも、愛玩用ゆっくりブリーダーのみでは食をつなぐことができないブリーダーの参加希望は多かった。
まりさは特別会員配信の花形スターだった。
いつも狡猾かつ効率よく相手を狩り、そして全てを捕食するという残虐な殺しに、ファン達は魅了された。
まりさの殺しを楽しみ、またまりさが殺される瞬間をいつか見ようと、会員達はいつも熱狂しながらモニタの前にかじりついていた。
しかしまりさも、所詮番組のために飼育されたゆっくりに過ぎなかった。
この番組に、引退という概念は今のところない。
どんなに強いゆっくりも、あるときは油断し、またあるときは老いて若いゆっくりに殺される時がやってくる。
その時まで戦いは終わらないのだ。
おしまい。
--------------------------------------------------
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
今回はゆっくりの試合みたいなのをテーマに書いてみました。
もう少し試合シーンを濃厚にかければより満足していただけたのかもしれませんが、
いやはや、なんとも難しいものです。
次は”わけあり”の続きをかけたらなぁと考えています。
HENTAI嫌いな方には申し訳ありません。
それでは次の作品で会いましょう。
ばや汁でした。
この場を借りてお礼…
挿絵さんやばや汁のどろわをはやしていただけた絵師さんの方々、本当にありがとうございます。
スレを覗く時間があまり取れず、お礼レスをするタイミングを逃してしまうことが多々ありますが
きちんと拝見し、心の中であふれんばかりの感謝をしています。
こんな汁野郎ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。
いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます!
この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。
個人用感想スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/
今までの作品
anko1748 かみさま
anko1830-1831 とくべつ
anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん
anko1847 しろくろ
anko1869 ぬくもり
anko1896 いぢめて
anko1906 どうぐ・おかえし
anko1911 さくや・いぢめて おまけ
anko1915 ゆなほ
anko1939 たなばた
anko1943 わけあり
anko1959 続ゆなほ
anko1965 わたしは
anko1983 はこ
anko2001 でぃーおー
anko2007 ゆんりつせん
anko2023 あるむれ
anko2068 おしかけ
anko2110 とおりま
anko2111 おもちゃ
anko2112 ぼくとペット
anko2223 まちかどで
anko2241 かいゆ
anko2304 ぼうけん
anko2332 とかいは
餡小話では消されてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいなと思っていただけた方は
ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー
http://www26.atwiki.jp/ankoss/
をご活用ください。
虐待 小ネタ 不運 現代 小ネタ、ゆっくり同士の殺し合い
初めは真っ暗な部屋の中だったんだぜ。
まりさが生まれて、初めての”挨拶”をしたとき、返ってくるはずの声はなかったぜ。
代わりに帰ってきたのは、人間さんの声。
「誕生おめでとう、残念だけれどお前はこれからゆっくり出来ない運命にある」
まりさは必死に叫んだんだぜ。
「どうちて!?まりしゃはゆっくちしちゃいのじぇ!ゆっくちしゃせちぇにぇ!」
いくら言っても、人間さんはまりさをゆっくりさせてくれる様子はなかったんだぜ。
だけど人間さんはまりさに言ったんだぜ。
「一つだけ、ゆっくりする方法がある」
まりさはその言葉に耳をすませたんだぜ、ゆっくりできさえすればそれでいいんだぜ。
「生きろ、目の前の敵を殺し、自分一人で、生き続けろ。そうすればお前はゆっくり出来る」
「ほんとうに…?」
「あぁ、本当さ」
瞬間、目の前が真っ白になったんだぜ。
その時からまりさのゆっくりするための戦いが始まったんだぜ。
まりさはゆっくり、ゆっくりするために、生きる。
その明るさにまりさの目が慣れて、目の前に広がったのは、無機質な白い床と、同じく真白な壁だった。
そして自分の丁度向いの壁にいる、一匹のゆっくり。
「ゆんゆんゆ~ん♪かわいくっちぇぎょめんにぇ!」
ぷりんぷりんと身体をくねらせながら自分の世界に浸っている、ゆっくりれいむ。
そのれいむは、まりさと同じ生まれたての赤ゆで、大きさもまりさと同じ程度だった。
「ゆゆっ!きゃわいいれーみゅがいるんだじぇ」
幼いまりさは、生まれて初めて見る”同族”に強い興味を惹かれていた。
何せ生まれ堕ちてからほとんど時間が立っていないとはいえ、兄弟はおろか母親にすら出会っていないのだ。
満面の笑みを浮かべて近寄ろうとするまりさに、すぐ近くに男の声が響く。
「殺せ」
「えっ」
まりさは男が何を言っているのかわからなかった。
男の声は、まりさにしか聞こえていないようである、まりさが驚き硬直しているにも関わらず、
れいむは緊張感なく自らのゆっくりを謳歌していた。
「あいつがゆっくりしていると、お前はゆっくりできない」
「しょんなことないんだじぇ、まりさはあのこといっしょにゆっくちしゅるよ!」
「そうか、じゃあ死ぬんだな」
その声と同時に、まりさの体の真ん中に突然刺すような痛みが走る。
「ゆぴぃいいい!!?」
「痛いか」
まりさには全く仕掛けは分らなかったが、男の声と同時に痛みがやみ、男が何かしているのだということが分かった。
「まりしゃになにしゅるんだじぇ!?ゆっくちできにゃいいい!」
「次に逆らえば、お前の一生は終わりだ、あれを殺せ」
「でも…」
幼いまりさは男の言葉に素直に従うほど盲目ではなかったし、冷徹でもなかった。
しかしまりさのつぶやきに対して帰ってくる言葉はない、あるのはただ恐ろしいほどの沈黙と、遠くから聞こえるのんきなれいむの声だけだった。
「…」
まりさは無言でれいむに近付いていく、生まれたばかりの自分の命が脅かされていることもそうだが、まず確かめなければならないことがあった。
本当に目の前のあのこは敵なのか。
あんなにもゆっくりしていそうに見えるのに、あのこと一緒にゆっくりすることは本当に出来ないのか。
未だ使ったことのない未熟な餡子脳をフル回転させてまりさは考えた。
だが生まれたてのゆっくりの思考で高等な考えが浮かぶ筈もなく、まりさはすぐに能天気な考えに至ってしまう。
(ゆっくちできにゃいにゃんでうそなんだじぇ、まりさはあのことゆっくちするんだじぇ~)
今まで不安に陰っていた表情も、一歩また一歩と近づいて行くうちに、れいむの呑気に当てられたように緩んでいく。
ゆっくりと近づいていき、自分の体一個分くらいの間隔の所まで近づき、まりさは大きな声で挨拶をした。
「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
しかしれいむの反応は、まりさが予想していたものとは少し違っていた。
いままで幸せそうに身体をくねらせていたれいむの動きがピタリと止まり、代わりに冷たい視線がまりさに向けられる。
その口から発せられた言葉は、まりさの浮かれた気持ちを吹き飛ばすには十分だった。
「どうしてれーみゅのゆっくちをじゃましゅるにょ?」
「ゆ…?」
そんなつもりは決してない、けれどまりさはいいわけの言葉を言い出せずにいた。
生まれた瞬間から、本能に刻まれている、”ゆっくり”という言葉、感情、現象。
自分がゆっくりすれば、相手もゆっくり出来る、相手がゆっくりしていれば、自分もゆっくりできる。
ゆっくりしていってねと言えば、自然と空間を共有することができる。
そんな当たり前。
それがいの一番で否定されてしまった。
自分はなにか間違っていただろうか、誰にも教えてもらっていないから、違うことをしてしまっていたのだろうか。
そんなはずはないとまりさの中のまりさは言っている、けれどまりさと目の前のれいむは、同じゆっくりのはずが、違う生き物のようだった。
危険だ、まりさの本能に緊張が走った。
その瞬間、れいむが突然身を縮め、まりさの方に向って勢いをつけて飛び出してくる。
「れーみゅのじゃましゅるやつはゆっくちちね!」
咄嗟に避けようとするも、至近距離からの奇襲に身体が追い付かなかった。
まりさの体にれいむの体がもろにぶつかり、反動でまりさの体がころころと後ろに転がった。
「ゆっくちできにゃいこはちね!」
まりさが遠く離れても、れいむの攻撃がやむ気配はなかった。
「いじゃいいぃいぃぃいいい!!!」
このままでは殺される、そう思いながらも、幼いまりさはただただ自分の身に降りかかった痛みに泣き叫ぶことしか出来なかった。
そしてそのままれいむの体当たりを何度も食らうことになってしまう。
幸いまだ柔らかい生まれたての赤ゆ同士のぶつかり合いということもあり、本人が大袈裟に泣き叫んでいること以外のダメージは思いのほか少なかった。
「ゆひゃひゃ!ちね!じゃまもにょはちね!」
れいむはきゃっきゃと喜びの声をあげながら、ひたすらまりさに身体をぶつけ、踏みつけ続けた。
一方的に体当たりを食らい、このままじわじわとなぶり殺されていくかと思われたまりさだったが、ほんの些細なきっかけで事態は急展開を見せる。
「ゆがぁあぁぁあああ!!」
それは何でもない、ただの痛みから来るまりさの叫びだった。
しかしその時むきだしになったまりさの歯に、れいむのやわらかな頬が引っ掛かり、少しだけ傷をつけたのだ。
「ゆひいぃいっぃぃぃいいい!!!」
まりさに負けるとも劣らない多きな悲鳴をあげ、れいむが飛退く。
その頬の小さな傷からは、だらだらとれいむの中身である餡子が漏れ出していた。
「ゆ………?」
突然攻撃から解放されたまりさの口内に、じわりと柔らかな甘みが広がっていく。
それは初めて味わう食べ物、それも麻薬にも似た、あまあまの味だった。
「あみゃ…あみゃ……?」
もう泣き叫び疲れ、捏ね繰り回されて心身ともに疲労したまりさにとって、その甘みはまさに生きる気力となった。
生まれてからまだ何も口にしていない、まりさはそれまで感じていなかった空腹感が急に我慢出来ないほど強くなっていくのを感じた。
まりさは無言でのた打ち回っているれいむに近付いていく。
その目的は、れいむの頬から流れ出している”あまあま”だった。
「あみゃあみゃのにおいがするんだじぇ…」
れいむはまりさの接近に、自分の発する悲鳴のせいで気づいていない。
そしてまりさは、れいむにぴたりとくっつくと、大きな口を開けてれいむの傷口に思いきり齧りついた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
形容しがたい甲高い悲鳴をあげて、れいむがその身に降りかかった痛みにさらに激しく身をよじる。
しかしまりさも食らいついたまま離れず、その体制のまま母乳を吸うかのように、れいむの中の”あまあま”を吸い出していった。
「んくっ…んくっ…んくっ…」
行き着く暇もなくまりさはただ貪欲に、空腹に任せてれいむの中身をむさぼっていく。
「も…ゆっく………」
しばらくすると、れいむは生命維持に必要な量の餡子を吸いだされてほんの小さな断末魔を残して絶命した。
それでもまりさは食事をやめず、抵抗しなくなったとみると、がぶりと皮を齧り租借し、どんどんれいむを食っていった。
まりさの食欲が満たされたころには、れいむはお飾りを残してほとんどの部分をまりさに食いつくされていた。
「やればできるじゃないか」
それまで黙っていた男の声が、まりさの耳元で突然囁いた。
言葉もろくにかわしていない、名も知らぬゆっくりを食ったことで少し大きくなったまりさは、男の声にこたえずゆっくりと考えていた。
(これがゆっくちなんだじぇ…?たしかにまりしゃはおなかいっぴゃいになったけど、ゆっくちはできてないきがするんだじぇ…)
それからまりさは、真っ白な部屋の中で過ごし、時間を問わず壁が突然開いて中から現れるゆっくりを殺し続けた。
まりさは殺したゆっくりを全て喰って成長していった、なぜなら部屋にはゆっくり意外のものが何も送られてこなかったからだ。
ここにはまりさと、まりさの敵以外には何も存在しなかった。
最初の数匹はなんてことはない、種類こそ様々だったが、自分と同じような子ゆっくりにも満たない、闘争能力もない弱いゆっくり達だけだった。
しかしまりさが子ゆっくりサイズまで成長する頃、相手を殺すことに慣れてきた頃、相手もまたより明確に目的を持つ者が現れ始めた。
それぞれが、まりさと同じく”自分がゆっくりするために相手を殺す”ということを前提にまりさの前に立ちふさがってきた。
おそらくまりさと同じように、何匹ものゆっくりの犠牲の上にまりさと対峙しているのだろう。
しかしまりさも、本能のままゆっくりしたかった、何より死ぬのは嫌だった。
激しく体を動かして、相手の息の根を止めるために全身全霊をかける。
そして満たされぬ欲望を相手を喰うことで満たしていく。
生まれた時から、ゆっくりにとって長い長い間、それを何度も何度も繰り返した。
まりさも少しずつではあるが成長していき、成体と呼べる大きさになるまで生き抜くことができた。
いつの間にかまりさは、自分では気づかないうちに少しずつゆっくりと変わっていくことになる…
その日はいつもと違っていた。
真っ白い壁に突然黒い口が開いた、そこまではいつものとおりだ。
けれどいつもはそこからすぐに現れるはずのゆっくりが、今日に限っていつまでたっても現れない。
まりさが不思議がっていると、男が短く言い放った。
「進め」
「すすめって、このなかにはいるの?」
まりさが聞き返すも、男はそれに答えなかった。
仕方なくまりさはぽっかりと空いた壁の穴の中に入ることにした。
何が起こるかわからないと、以前ゆっくりようむを倒したときに手に入れた棒切れを口にくわえ、奥へ進んでいった。
光がまったく届かないその中は、目がなくなったのではないかと錯覚するほどに暗く、どこまでも続いていくかのようにさえ感じた。
しばらく進んでいくと、突然まりさは何も見えない空間に顔面を強打してしまう。
「ゆげっ!」
痛みに涙をこらえていると、ゆっくりと目の前の壁が口をあけていき、さっきまでまりさがいたのとそっくりの、真っ白な部屋に通じる穴が開いた。
そしてまりさの正面には、一匹のまりさが顔を伏せてたたずんでいた。
そのまりさは、まりさの気配を感じてゆっくりと顔を上げた。
するとその顔は、まったく見分けがつかないほどまりさとそっくりだった。
まりさはそれを直感的に感じていた。
(あのまりさはなんだかまりさににてるんだぜ…)
部屋にいたまりさも、目の前に現れたまりさを見て何か感じたようで、驚いたように目を見開いていた。
「そいつが今回の敵だ、殺せ」
男の声がまりさのすぐそばで冷たく響く。
しかしそれもいつものこと、若干の違和感を感じたものの、まりさはいつもと同じように目の前の敵を殺すために前に進んだ。
まりさがそばによっても、部屋のまりさは一向に動き出そうとはしなかった、ただじっとまりさの動きを見つめているだけだった。
おぼうしの鍔が触れ合うほどの距離まで近づいたとき、部屋のまりさが突然声を出した。
「まりさは…まりさなの?」
「まりさはまりさだぜ」
まりさには、部屋のまりさが言っている意味がよくわからなかった。
まりさの中で、これはすでに生死を賭けた戦いなのだ。
まりさは部屋のまりさのおぼうしの鍔を口にくわえ、体をひねって遠くに投げ飛ばした。
経験上、お飾りへの攻撃が一番相手の動揺を誘うことが出来るということを知っているからだ。
ある者はそれだけで泣き叫び、またある者は飛んでいったお飾りを拾おうと、まりさに無防備な背中を晒した。
けれど部屋のまりさは、まりさの予想に反して微動だにしなかった。
「っ!」
まりさは体を跳ねさせてすばやく距離をとり、棒をしっかりと咥えなおして身構えた。
何か攻撃がくるかと思い、体を緊張させていたが、部屋のまりさは一向に最初にいた位置を動こうとすらしなかった。
ただただまりさのことをじっと見つめている。
長い沈黙の後、部屋のまりさがぼそりと呟く。
「まりさは、まりさのいもうとだよ…」
「ゆ…?」
突然の発言にまりさは思わず棒を咥えていた口元を緩めてしまう。
しかしすぐに気を引き締め、もう一度強く咥えなおした。
「まりさにはわかるよ、まりさはまりさのいもうとだよ!」
「なにいってるんだぜ、まりさにはおやもきょーだいもいないのぜ」
「まっくらなへやでうまれたでしょ!?まりさもそうだったよ!それにまりさにはわかるんだよ!まりさはまりさのいもうとなんだよ!」
部屋のまりさは感情的になって一気にまくし立てる。
けれどまりさは、部屋のまりさが高ぶっていくごとに、どんどん醒めた気持ちになっていくのを感じていた。
(いみわかんないぜ、こいつきっとあたまおかしーんだぜ)
喚く部屋のまりさの言葉を意識してシャットアウトして、まりさは無造作に口に咥えた棒で部屋のまりさを貫いた。
「ゆ…?」
間抜けな声を上げて部屋のまりさが、目と目の間に刺さった棒を見つめた。
「い…いたいよ…ねぇまりさ、いっしょにゆっくりしようよ…」
「うるさいぜ、まりさはゆっくりするためにいきてかなきゃいけないんだぜ、おまえをころさなかったらまりさがころされるんだぜ」
「そんなことないよ…まりさはまりさをころさないよ…だからいっしょに…」
「………」
一緒にゆっくりする。
その響きが、乾ききったはずのまりさの心をほんの少しだけ揺り動かした。
しかしそれもほんの些細なこと、抵抗しないのならばただ殺すのみと、まりさはぐっと部屋のまりさを貫く棒に力をこめた。
そのまま中枢餡を貫くかと思われた棒は、部屋のまりさが歯を食いしばり体に力を入れたことでそれ以上進まなくなってしまう。
「ぐ…このっ…はやくしね!はやくしぬんだぜ!」
まりさの背筋に嫌な予感が走る。
今まりさと対峙しているということは、おそらくまりさと同じかそれ以上のゆっくりを相手にしているということなのだ。
まりさには、今まで戦ってきた相手の力量から、そのことがわかっていた。
今まで無抵抗だったことや、不可解な発言の全てがまりさを油断させるための罠だったかもしれない。
まりさはこのままでは危険と判断し、棒を口から話して後ずさりした。
けれどやはり部屋のまりさはその場から動くことはなかった。
その体に刺さった棒は中枢餡を抉るほどではないにせよ、深く刺さっている。
引き抜いてそれを武器にされる心配はないと思うが、まだ抵抗する余力は残っていそうだった。
まりさは警戒を解かず次の手を考えながらじっと部屋のまりさを見つめる。
痛みで潤んだ部屋のまりさと視線がぶつかり合った。
その目は、どこか哀れむような、慈しむような色を含んで、まりさをじっと見つめていた。
まりさは抵抗がないと判断して、すばやく部屋のまりさの横に回りこみ、その柔らかなほほに噛み付き、そのまま噛み千切った。
「いだぁっ!!!」
これには部屋のまりさもさすがにたまらず、悲鳴を上げる。
まりさはそれを口の中でたっぷりと転がしてから、ごくりと飲み込んだ。
口の中を濃厚な甘みが満たしていく。
まりさはもうこの味に病みつきだった、あまあまを食べている時が、ゆっくりを求めて殺し合いをするまりさの、唯一ゆっくりした時間だった。
「もういいんだぜ、ていこうしないんだったらさっさとしぬんだぜ、まりさはおまえをころして、ゆっくりするんだぜ」
そのまま2度3度と部屋のまりさのほほを噛み千切っては飲み下していく。
まりさは自然と歪んだ笑みを浮かべながら、ゆっくりと無抵抗の部屋のまりさを捕食していった。
痛みにぶるぶると身を震わせながら、部屋のまりさが言葉を紡ぐ。
「わかったよまりさ…まりさとはいっしょにゆっくりできないんだね…”おねーちゃん”かなしいよ…」
「まだそんなこといってるんだぜ、さっさとしぬんだぜ」
「おねーちゃんにはわかっちゃったから…まりさがいもーとだってわかっちゃったから…」
「だまれ!だまるんだぜ!」
「だから、もうこれいじょうまりさとあらそいたくないよ、まりさにはゆっくりいきてもらいたいよ…」
「まりさはゆっくりするんだぜ!それにはおまえがしなないといけないんだぜ!」
「そうだよね…そういう”るーる”だもんね…だから…」
さあ、おたべなさい。
突然、まりさの目の前で部屋のまりさの体が真っ二つに裂けた。
そのまま部屋のまりさは、物言わぬ饅頭となって、転がってしまう。
しかしその表情は、とても穏やかで、慈愛に満ちていた。
「なんなんだぜ…なんなんだぜ!」
まりさはひどく混乱していた、今までこんな相手を見たことなどなかったからだ。
まりさは迷いを振り切るように、部屋のまりさだったものに噛み付いた。
今まで感じたこともないほどの極上の甘みが口の中を駆け抜けた。
だが、それだけだった。
敵を殺して喰っている時のような高揚感も、ゆっくりした気分も何も感じられなかった。
甘みで吐きそうになりながらも、無理やり饅頭を口に詰め込み、のどの奥に押し込んでいく。
全て食べ終えるまで、何度も何度もまりさの中に疑問が浮かび上がった。
最初に部屋のまりさを見たときに感じた違和感の正体は、
もしかしたら本当に部屋のまりさが言っていたように、まりさ達が兄弟だったから感じたのではないだろうか。
まりさはそれを無視してしまったけれど、部屋のまりさはそれを確信していたからあのような行動に出たのではないだろうか。
ぐるぐると回る思考、けれど答えは出なかった。
出たところで、すでに”姉だったかもしれないもの”は死に、まりさの一部になってしまった後だ。
涙は出なかったが、まりさは言葉では言い表せないほど陰鬱な気分になってしまっていた。
そんなまりさのすぐそばで、男のうれしそうな声が響く。
「よくやった、さぁ、部屋に戻るんだ」
男に聞けば何かわかるかもしれない、ともおもったが、まりさは黙って声に従った。
真実を知ったからどうなるというのだ、結果はもう変わらない、過去に戻ることなどできないのだ。
部屋を出る途中、最初に投げ捨てた部屋のまりさのおぼうしがまりさの目に止まった。
まりさは少しだけ考えてから、おもむろに自分のおぼうしを投げ捨て、部屋のまりさのおぼうしを頭に乗せた。
「どうした?」
男が疑問の声を上げる。
「きにしないでほしいんだぜ」
まりさはそっけなく答えて、自らの部屋に戻っていった。
自分のおぼうし以外ではゆっくりできないはずなのに。
なぜか部屋のまりさのおぼうしは、まるで自分のものかのようにしっくりと、まりさの頭にフィットしていた。
自分の部屋に戻ったまりさは、それからも定期的に現れる敵を容赦なく殺していった。
かつて感じていたような高揚感はない、ただ目の前の火の粉を振り払うように、襲い掛かってくる敵を撃退するだけだった。
まりさは以前ほど死ぬことが怖くなくなっていた。
生きていればゆっくりできる、という人間さんの言葉は、もしかしたら嘘なのかも知れないと思うようにもなった。
敵を殺し、次の敵が現れるまでのあまり長くはない時間、まりさはお帽子を目深にかぶって、目を閉じてゆっくりと考え事をして過ごした。
(まりさはいま”ゆっくり”できてるのかな…こんなまりさをみて、どうおもうんだぜ…?ねぇ…”おねえちゃん”………)
そしてまた今日も目の前の白い壁にぽっかりと口が空き、中から狂気に満ちた目のゆっくりが飛び出してくる。
おぼうしの下から見えるその目を見て、まりさは今度の相手も何匹ものゆっくりを殺してきたゆっくりだということを感じた。
そして自分も、そんなやつと何も変わらない、しょせんゆっくり殺しのゆっくりなのだ。
だけどここでは、生きるために相手を殺さなければいけない。
部屋に残っていることが許されるのは、常に一匹だけなのだ。
まりさの戦いは、終わらない。
-------------------------------------------------
一部視聴者から絶大な支持を受けている、インターネット放送のアングラチャンネルがある。
『ゆっくりちゃんねる』と名づけられたそのチャンネルでは、様々な番組を配信していた。
『れいむの子育て日記』『お笑いゆっくりNo.1』『ゆっくりとまったり』
調教されたゆっくりが演じるものや、やらせ無しの天然のゆっくりを使った本格的な番組まで、
多種多様な番組が放送され、そのどれもが人気のあるものばかりだった。
しかし、その中でも、一部コアなファン向けに限定配信され、また熱狂的な人気のある番組。
それが『ゆっくりバトリング』だった。
番組の内容は、いたってシンプル。
ノーマル会員が見れるものは、小さな子ゆっくり程度がメインで、相手が泣くまで殴りあうというシンプルなもの。
通常課金会員になると、実際に殺し合いをするゆっくり達を、実況つきを見ることができる。
そして特別課金会員になると、より殺し合いになれたゆっくり達の死合を、生の音声そのままで視聴することができるのだ。
バトリング用のみに育成されたゆっくりは多かった。
理由は、ブリーダーの支持を体内に埋め込んだ小型スピーカーを通して指示することができ、比較的生産が容易だからだ。
スピーカーには小型モーターがついていて、赤ゆの時はこれを作動させることで脅し効果を期待することができる。
実際には成長したゆっくりを殺すような装置は内臓されていないのだが、
ゆっくりが環境になじむほど生き残るころには自発的に戦っているということになる。
また、野良ゆっくりで凶暴なものを捕獲し、参加させるブリーダーもいた。
ほかにも、戦闘用に改造処理を施したゆっくりを使用したブリーダーもいたが、現在のところ過度の改造はバランスを崩壊し、
視聴者の望む本物の殺し合いから遠ざかる、という理由で、別枠扱いとなっている。
このチャンネルで配信される試合には賞金もかけられており、ブリーダーはその試合に勝つと、賞金や賞品を獲得することができる。
そのため、マイナージャンルながらも、愛玩用ゆっくりブリーダーのみでは食をつなぐことができないブリーダーの参加希望は多かった。
まりさは特別会員配信の花形スターだった。
いつも狡猾かつ効率よく相手を狩り、そして全てを捕食するという残虐な殺しに、ファン達は魅了された。
まりさの殺しを楽しみ、またまりさが殺される瞬間をいつか見ようと、会員達はいつも熱狂しながらモニタの前にかじりついていた。
しかしまりさも、所詮番組のために飼育されたゆっくりに過ぎなかった。
この番組に、引退という概念は今のところない。
どんなに強いゆっくりも、あるときは油断し、またあるときは老いて若いゆっくりに殺される時がやってくる。
その時まで戦いは終わらないのだ。
おしまい。
--------------------------------------------------
最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。
今回はゆっくりの試合みたいなのをテーマに書いてみました。
もう少し試合シーンを濃厚にかければより満足していただけたのかもしれませんが、
いやはや、なんとも難しいものです。
次は”わけあり”の続きをかけたらなぁと考えています。
HENTAI嫌いな方には申し訳ありません。
それでは次の作品で会いましょう。
ばや汁でした。
この場を借りてお礼…
挿絵さんやばや汁のどろわをはやしていただけた絵師さんの方々、本当にありがとうございます。
スレを覗く時間があまり取れず、お礼レスをするタイミングを逃してしまうことが多々ありますが
きちんと拝見し、心の中であふれんばかりの感謝をしています。
こんな汁野郎ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。
いつも多数のご意見ご感想ありがとうございます!
この作品へのご意見ご感想も、どうぞお気軽にお寄せください。
個人用感想スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1278473059/
今までの作品
anko1748 かみさま
anko1830-1831 とくべつ
anko1837 ぼくのかわいいれいむちゃん
anko1847 しろくろ
anko1869 ぬくもり
anko1896 いぢめて
anko1906 どうぐ・おかえし
anko1911 さくや・いぢめて おまけ
anko1915 ゆなほ
anko1939 たなばた
anko1943 わけあり
anko1959 続ゆなほ
anko1965 わたしは
anko1983 はこ
anko2001 でぃーおー
anko2007 ゆんりつせん
anko2023 あるむれ
anko2068 おしかけ
anko2110 とおりま
anko2111 おもちゃ
anko2112 ぼくとペット
anko2223 まちかどで
anko2241 かいゆ
anko2304 ぼうけん
anko2332 とかいは
餡小話では消されてしまった作品も多数ありますので、過去作を読みたいなと思っていただけた方は
ふたば ゆっくりいじめSS保管庫ミラー
http://www26.atwiki.jp/ankoss/
をご活用ください。