ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2368 あなたの御趣味は
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『あなたの御趣味は』 21KB
虐待 自業自得 同族殺し 群れ 自然界 虐待人間 2作目。善良ゆ死にます。
*善良なゆっくり死にます
---------
あなたの御趣味は
森。夜が明けて間も無い頃。
まりさは、起こされた。
「まりさああああ、たいへんだよおおおおおおお!」
実に、ゆっくりしていない声だった。まだ重い目をおさげで擦り、声の主をみる。
「なんなのぜ、れいむ……。
ゆっくりしてないのは、かおとあんよとかみとかざりとおめめともみあげとかわとなかみだけにしてほしいのぜ……」
「それってぜんぶでしょおおおおおおお!」
「まだましだったこえがそれじゃ、たしかにぜんぶなのぜ」
いつもなら、まだ寝ている時間だ。それを、無理に起こされたのだから、皮肉の一つも言いたくはなる。
「で、なんなのぜ」
「ゆ、そうだよ!たいへんなんだよ!だから、ぱちゅりーがみんなをあつめてるんだよ!」
れいむが、なぜか自慢気に言い放つ。だが、その返答からは、なにが大変なのかはわからなかった。
まあ、群れの長であるぱちゅりーの指示なら、従わないわけにもいかないし、実際にある程度の大変なことは起こったのだろう。
朝食用に保存しておいた木の実を口に含むと、まりさはれいむとともに巣を出た。
本来、ぱちゅりーによる召集の際に集合するのは、群れの中心の、木の少ない開けた場所だ。
だが、今まりさたち大人ゆっくりは、ある巣の前にいる。ここは群れから少し離れた所にある木の下。
この巣に住んでいるゆっくりは、まりさたちの群れに所属していないのだろう。
「むきゅ。みんなあつまったわね。いまから、しょうっしゅう!のせつめいをするわ」
ぱちゅりーが言うと、側近であるみょんが、巣のけっかい!を外しにかかった。
枝や葉が、少しずつ取り払われていく。その度に、ゆっくりできない匂いが辺りに漂い始めた。ゆっくりたちはみな顔をしかめはじめる。
まりさもその例外ではなかったが、その匂いの正体に気が付いていた。
(これは……)
幾度となく嗅いだ匂い。父の、母の、友の。今はいないゆっくりたちが発していた、匂い。
「みんな。ゆっくりきいてね。この"す"では、まりさがくらしていたわ」
群れのゆっくりたちが息をのむ。気付くものは気付きはじめていた。この匂いは。
「このなかで、そのまりさがしんでいるわ」
死臭。
「ゆうううう!!」
「ゆっくりできないいいいいい!!」
ゆっくりたちが口々に悲鳴を上げはじめる。もし、子ゆっくりがこの場にいれば、餡子を吐いてしまっていただろう。
「みんな、きいて!じゅうようなのは、そこじゃないの。おちついて、おちついてみてね……」
ぱちゅりーが言い終るのとほぼ同時に、けっかい!が完全に取り払われた。
そこにあったのは。
「ゆげえええええええ!」
まりさ、だったのだろうか。
地面に転がっている、妙に小綺麗な帽子がなかったら、わからなかったかもしれない。
そう、綺麗なのは帽子だけだった。
散乱する髪。その中にちらちらと見えるのは、歯だろうか。根元からもがれたのだろう、先に餡子がこびりついている。
口は下顎からあんよまでを中心で裂かれており、左右の顎の間に、妙に黒い舌が挟まっていた。どうやら焼かれたらしい。
左目はない。右目は、わからなかった。瞼を縫いつけられていたから。中にあるのが、目なのか、そもそもなにかあるのか、ゆっくりたちにはわからなかった。
(こんな……)
まりさは、どうにか迫りくる嘔吐感を押さえ込んだ。死臭と気付いていた。当然、死体がそこにあることだってわかっていた。
だが、こんな。こんな惨状が巣の中に広がっていようとは思いもしなかった。
周囲のゆっくりたちの中には、こらえきれず餡子を吐いてしまっているものもいた。まりさを起こしにきたれいむもそのうちの一匹だった。
全員が落ち着いたころ、ぱちゅりーが再び話しはじめた。
「みんな。このまりさは、あきらかにころされているわ。もんだいは、だれがころしたかよ」
「こんな、こんなむごいころしかた、わたしたちゆっくりにはとてもできない。できるゆっくりがいたとしても、それはもはやゆっくりじゃないわ」
みな、ぱちゅりーの言葉にうなずく。
「このまりさの、みぎのおめめをみてちょうだい。これは、いとさんといって、にんげんさんがつかうどうぐよ」
「に……にんげんさん!」
再びざわめくゆっくりたち。
この群れは人間と協定を結んでおらず、また接触も少ない。しかしその恐しさは、ぱちゅりーによって何度も教え込まれていた。ゆっくりより強く、賢い。
ゆっくりが敵う相手ではない、ということを。
「で、でも!なんでにんげんさんがこのまりさを!?」
ありすが叫ぶ。
「このまりさが、にんげんさんになにかしたとしたら、それがげんいんだけど。たぶん、そうじゃないわ」
「にんげんさんのなかには、たのしいというりゆうでゆっくりをいじめるひとたちがいるの。このまりさのしたいは、そんなにんげんさんが、このちかくにくることがあるとしめしているわ」
「ゆうううううう!」
「わからないよおおお!」
「れいむおうちかえるうううう!」
「しずかに!」
ぱちゅりーは、語気を荒らげた。再び、静寂。
「いい?みんな、にんげんさんをみかけたら、いちもくさんでにげるのよ。まちがってもはむかっちゃだめよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!!!!」
今まで、言葉で聞いていただけの、人間の恐しさ。群れのゆっくりたちは、それを目の当たりにすることで、餡子に深く刻みこんだ。
召集は、それで解散となった。みなそれぞれ各自の巣に戻っていく。
巣を出る時、まりさは一度振り返った。
左目のない死体が、そこにはある。それに、なにか。
なにかが。
---------
その日、まりさはゆっくりできなかった。
あの、恐しい、むごたらしい、見知らぬまりさの死に様が、目に焼きついて離れない。
それは昼をすぎ、太陽が沈み、星が瞬いても変わらなかった。
そして。そして、なぜか。
まりさは、あの巣の前にいた。
なぜ、自分はここにいるのか。
わからないまま、巣の中へと入っていく。
中は、昼間と何も変わっていない。月と星の明りで、それがわかった。いや、なくてもわかったかもしれない。なにせ、こんな場所に入りたがるゆっくりなどいないだろうから。
死体もやはり、そこにあった。
見れば見るほど、恐しい。まりさの、あんよと、おくちの間に、もやもやとした、言い表せないなにかが溜っていった。朝にも感じた、なにか。
ただ。
まりさは、それを。そのもやもやを。
ゆっくりできないものだと、思わなかった。
---------
それ以降、まりさはたびたびその巣に入っていった。
日ごとに腐り、傷み、崩れていく死体。腐敗の進行と共に、まりさのもやもやは大きくなっていく。
そんなある日、もう死体も腐り切ろうという時。あの、まりさを起こしたれいむが行方不明になった。
もともとあのれいむは頭が悪く、時々問題を起こしていたので大した騒ぎにはならなかったが、人間のこともあり、まりさを含めた数名のゆっくりが捜索隊として群れを出発した。
最初は固まって行動していたが、日が傾いてきても見付からないため、最後に手分けして探し、だめなら明日に再捜索ということになった。
みなと別れて十数分、まりさはれいむを見付けた。
「ゆひっ、ゆひい……」
石か何かで、あんよを切ってしまったらしい。少し餡子が漏れてしまっている。
この場所では大声で助けを呼んでも聞こえないだろうし、その声があのまりさを殺した人間を呼び寄せないとも限らない。それくらいは考えることができたらしい。
「ようやく見付けたのぜ……」
れいむ。
そう、声をかけようとした。
その時。まりさは。
まりさの中のもやもやが、急激に大きくなるのを感じた。
あんよが傷ついている。れいむは動けない。
助けを呼ぶ声は聞こえない。誰もこない。
れいむが痛がっている。あの、あのまりさの死体にはりついていた。
苦しそうな、顔。
「まりさ!」
れいむは、本当に嬉しそうな顔をしていた。誰も助けにきてくれないと思っていた。きっと自分は、れみりゃにでも食べられて永遠にゆっくりしてしまうんだと。
そんなふうに考えていたから、まりさが見えたときは目をきらきらと輝かせたのだ。
まりさは、そんなおめめに。
どこかで拾ったのだろう、枝を突き剌したのだ。
「ゆ……っぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
動かないあんよを振り回し、のたうちまわった。
熱い。おめめが。おめめのあった場所が、熱い。
「ど……どぼじ……でえ」
「れいむ……まりさは、あのしたいをみたときから、なにかへんだったのぜ」
沈みかけている夕日の、赤い光りが、まりさの顔を照す。れいむの残っているほうのおめめは見てしまった。
まりさは、この瞬間。
れいむが、どうしようもなく苦しんでいる今。
とても、とてもゆっくりしているのを。
「いま、わかったのぜ。このもやもやは、ゆっくりできるものだぜ」
まりさは呟きながら、枝の先でれいむのあんよをほじる。再び悲鳴が森に響くが、誰かが来る気配はない。
「にんげんさんは、このもやもやのために、あんなことをしたんだぜ。まりさには、わかるのぜ」
「や、やべで……。まりざ……」
「れいむの、そのかお。とてもとてもゆっくりできるのぜ」
枝を深く差し込む。
「ゆぎゃあああああああああ!!!」
「はじめてだから、うまくできないかもしれないのぜ。だから」
にんげんさんの、まねをするのぜ、れいむ。
---------
れいむの死体が見付かったのは、それから三日経ってからだ。
れいむの両親は縋りついて泣いていたし、友人たちも悲しんでいた。まりさも、一応ふりはした。
ぱちゅりーはそれをやはり人間の仕業として、より警戒を強めるようみなに言い聞かせた。それから群れには、ゆっくりできない雰囲気が漂い始めたのだ。
まりさは、そんな群れの状態で、一匹だけゆっくりできていた。しかし、すぐに自分だけゆっくりしているのはおかしいことに気付いた。
できるだけみんなと同じように、ゆっくりできなさそうに振る舞った。
しかし、それは結構なストレスになったようだ。
(また、あのもやもやをあじわいたいのぜ)
あの、れいむをいたぶって殺した夜。あの時は本当にすっきりした。極上の美ゆっくりとすっきりー!をしても、あれほどの総快感は得られないだろう。
だが、リスクが大きい。この辺りには、群れはまりさがいるこの群れしかなく、あの殺されたまりさのような、独りで暮しているゆっくりはなかなか出会えない。
つまり、まりさがゆっくりを嬲り殺すには、群れのゆっくりを狙うしかない。
しかし、れいむの時のような特殊な場合以外で、ゆっくりが一匹だけに、助けも呼べない状況になるだろうか。またもしなっても、万が一逃げられてしまえば、まりさは群れのゆっくりたちに殺されてしまう。
せめて、まりさがまりさとわからなければ。
そこまで考えたとき、まりさの脳裏にあるものが浮んだ。
最初に、人間に殺されたまりさの帽子。
あれは妙に綺麗だった。ひょっとしたら、あの帽子は。
まりさはすぐに例の巣へとむかった。
やはり。
まりさは予想が的中したことに歓喜した。
この帽子は、もはや腐り果てたこのまりさが死ぬ前に脱がされた。
つまりこの帽子にはゆっくりが嫌がるあの死臭がない。流石に長時間この巣に放置されていただけあって、全く無臭とはいかないが、それでも耐えられないレベルではない。
この帽子によって、まりさは別人に、死人になれる。まりさとばれずに、あのすっきりをもう一度。
あまりの歓喜に、年がいもなく。
まりさは嬉しーしーをしてしまっていた。
---------
「ちぇん!はなしがあるのぜ」
「まりさー?どんなはなしかわからないよー?」
「まだいってないのぜ……」
まりさは、見掛けないゆっくりが、ちぇんと友達に、あわよくば番いになりたがっているといった。
「わからないよー。どんなゆっくりかわからないのに、ともだちならまだしもつがいなんてむりだよー」
「やっぱりなのぜ。まりさもそうだとおもってたけど、あんまりひっしだったから、ことわれなかったのぜ」
断ってくると言って、まりさは身を飜す。
去り際に、ぽつりと。
「それにしても、かわったゆっくりだったのぜ。しっぽがたくさんあって、ちぇんちぇんうるさい……」
「まってねー!」
ちぇんが大声で叫ぶ。
「ひょっとして、ら……らんしゃま?!」
「そうそう、そんなふうになのっt」
「そうならそうといえよー!わかれよー!」
まりさが肯定するや、暴言を残して、ちぇんは走り出した。その背に、まりさは告げる。
「むこうの、かわさんのちかくのおおきい"き"さんのしたでまってるっていってたのぜ!」
「わかったよー!らんしゃまああああぁぁぁ……」
ちぇんが見えなくなったのを確認して。
まりさはにやりと、笑みを浮べたのだ。
巨木の根元。水のせせらぎが聞こえるなか、ちぇんはきょろきょろと辺りを見回すが、らんの姿は見当たらない。
少々群れから離れ、遠くまで来てしまったこともあってか、ちぇんはだんだん不安になってきた。
「らんしゃまあああ!どこなのおおおお!」
「らんがどうかしたのz……どうかしたの?」
涙目になっていたちぇんに呼び掛ける声。ちぇんがふりむくと。
「ゆ?しらないまりさだね!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!らんをさがしているの?」
そのまりさは、巨木の空洞を視線で指した。
「さっき、らんがあの中に入っていくのを見たよ!」
「ほんとう!わかるよー、まりさはゆっくりできるんだねー」
言いおえるや否や、ちぇんは空洞へ飛び込んでしまった。
「ゆひっ」
これで、ちぇんの声は群れには届かず。ただ一匹、空洞のなか。
もう、口調を変える必要もない。
まずは、れいむの時のように。
あの、すばしこいあんよを。
「ど、どぼじて……らんしゃま……は……」
「そんなやつ、いないのぜ」
あんよを刔られ、動けなくなったちぇんは驚くほど弱かった。噛み千切った耳を吐き捨て、あんよの切れ込みから、ゆっくりと、皮をめくっていった。
「にゃあああああ!!!」
「いいいいいいこえなのぜ、ちぇん」
べりっ。
目元まで皮をめくられ、剥き出しになった中身──チョコレートに舌を突き刺された。
「あまくて、しあわせー!なのぜ」
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
鋭い悲鳴。それから、ちぇんの動きが鈍くなっていった。
「ゆうう?まちがったのぜ?」
「もっと……ゆっくり……」
「じゃあしぬのぜ」
そういって、まりさはちぇんを踏みつぶした。と同時に、飛び散るチョコを見て、まりさは合点がいったようだった。
「そうなのぜ!かわをめくったから、なかみがもれてすぐしんだのぜ!」
新しい発見に喜び、はしゃぐまりさ。その足元では、中身を全てもらしたちぇんが平べったくなっていた。
---------
それから。
ある時は、ありすに、とてもとかいはなまりさが呼んでいるといい。
ある時は、れいむに、おちびちゃんの育て形がわからないゆっくりがいるから教えてやってほしいといい。
まりさに、美れいむが淋しそうにしているから慰めてやってほしいといい。
ぱちゅりーに、まりさにはわからないが魔導書らしきものがあるといい。
まりさは、言葉巧みに、ゆっくりたちをおびきだしては虐待を続けた。
しかし、調子にのって虐待を続けたため、行方不明となるゆっくりの数が増えすぎ、ぱちゅりーはかいっげんっれいっ!を発令した。
これにより、狩り以外の外出を禁じられてしまった。他のゆっくりが外にでなければ虐待など出来るはずもなく、まりさの虐待生活は終焉をむかえた。
かのように見えた。
虐待をしなくなって数日がすぎた。これまで毎日のように虐待を行ってきたまりさは、ストレスの掃け口を失い、いらいらしていた。そんな時。
まりさは、出会った。
まりさより大きく。首が、胴が、腕が、足がある。強くて、賢い。
人間に。
「おお?最近ゆっくりを見ないから、もうどこかに逃げたかと思ったけど。まだいたんだな」
人間はまりさを見下ろして。
顔をくしゃっと歪めるように笑った。嫌な、嫌な笑み。
「に……にんげんさん」
その笑みは、つい最近まで。
自分も浮べていたものではないか。
「なんだ?命乞いならだめだぜ。鬼意三からは逃げられない」
「あの……にんげんさんが、あのまりさを……」
まりさの言葉に、人間は首を傾げた。
「まりさ?」
まりさはお前だろ。
人間はそんなことを思ったが、すぐに気付いた。だいぶ前に、この辺りでまりさを虐待したような。
「みぎのおめめがいとさんでとじられてた……」
「ああ。あれか。確かに俺だわ」
ぽん、と掌をたたく。
その言葉を聞いたまりさの顔が。
輝いた。
「にんげんさん!あの、あのね、まりさは……にんげんさんとおんなじなんだぜ!」
「一緒にすんな」
言うがはやいか、人間の足がまりさにめりこんでいた。まりさは転がりながら、必死に言葉を紡ぐ。
「ゆっ、ゆぶ……!き、きくのぜ、にんげんさん。まりさも、まりさもゆっくりをいじめるとしあわせー!なんだぜ!」
「……ほう」
人間はまりさの台詞に興味を抱いたのか、痛みに顔をしかめているまりさを持ち上げた。
「おそらをt」
「詳しく話せ」
人間の楽しそうな、なのに暗くて恐い視線に晒されながら、まりさはぽつぽつと、これまでのことを語りはじめた。
「なるほどね」
自分の虐待で、ゆっくりが虐待に目覚める。なかなか悪い気はしない。だが。
こいつは、勘違いしているな。
「あのね、あのねにんげんさん!いま、まりさたちのむれはみんなおうちにとじこもってるんだぜ!」
「だけど、おさがよんでるっていえば、みんなをいっかしょにあつめられるのぜ!」
「おさをさいごにすれば、ほんとにみんなになるのぜ!」
「にんげんさん、いっしょにゆっくりをいじめるのぜ!」
まりさは必死に語りかけた。これは、久し振りの虐待チャンスだから。人間と一緒なら、未だかつてないゆっくりいじめを行うことができる。今まで以上の、総快感を得ることができる。
「……いいぜ。どこにあつめる」
人間は、まりさの言葉に乗った。彼もまた、虐待をするチャンスを得たのは久し振りだったからだ。
「ここからちょっといくと、ひろいところがあるのぜ。そこにあつめるのぜ」
「わかった、集めるのはお前がやれ。俺は逃げ道をふさいでからいく」
こうして、人間とゆっくりの、束の間の共闘が始まった。
束の間の。
それから、三十分もしないうちに、子ゆっくりも大人ゆっくりも区別なく、群れの全員が広場に集められた。
最後に連れて来られたぱちゅりーとその側近は、みんなが広場に集まってるからぱちゅりーも来て、とあくまで異常事態を告げる体で呼出した。
「みんな、なんでおそとにでてるのおおおおおおおお?!」
ぱちゅりーは自身の発したかいっげんっれいを無視するほどの事態が起きたのかと群れのゆっくりたちに確認するが。
「ゆ?おさがよんだんでしょ?」
「ばかなの?わすれたの?」
「ぱちゅりーはばかじゃないわ!それに、しょうっしゅうをかけたおぼえはないわ!」
「そりゃそうだ」
どこからともなく、声。
その人間の言葉に、ぱちゅりーたちが反応するよりはやく。
金網で作られた、即興の柵が、ゆっくりたちを捕えた。
「むっぎゅうううう!に、にんげんさんんんんんんん!」
「ゆげええええ!」
ぱちゅりーの教育の成果か、人間という言葉だけで目の前の存在の恐しさを感じとったらしい。
柵は折畳み式の簡易なものだが、ゆっくり相手ならこれでも十分だろう。現に、みょんやまりさが体当りを繰り返しているが、一向に抜け出せる様子はない。
「やあ、ゆっくり諸君。その様子だと、俺がどういう人間かはわかってるみたいだな」
「にんげんさんがみんなをあつめたのね……」
他のゆっくりどもが騒ぐなか、ぱちゅりーだけは冷静を保っているようだ。最初の叫び声はともかくとしてだが。
「いや、ぱちゅりー。お前は誰に呼ばれてここにきた」
「それは……まさか」
「おさ」
俺の後ろからひょこっと、まりさが顔を出す。
「まりさ!」
群れのゆっくりたちが騒ぐのをやめ、一斉にこちらを見た。
「まさか。にんげんさん!あなた、まりさをおどして……」
「えっ」
「げれつよ!あんなにたくさんのゆっくりをころして、こんどはきょうっはく!なんて!」
ぱちゅりーの怒りの声。それに続けと言わんばかりに、ゆっくりたちの怒号が飛び交う。
「このいなかもの、まりさをはなして、わたしたちをここからだしなさい!」
「あまあまおいてとっとときえるのぜ!」
「ぐぞどr」
「黙れ」
人間は、奴隷と言い掛けたでいぶを持ち上げ、引き裂いた。人間の近くにいたゆっくりたちに、でいぶの餡子がかかる。
「お前ら、なにか勘違いしてるな。おい、まりさ」
一瞬で仲間を殺され、震えるゆっくりたちを尻目に、人間はまりさを持ち上げ囁く。
「あのな、────と言え。すると、きっと楽しいぞ」
「わかったのぜ、にんげんさん!」
下されたまりさは、柵を狭んで、ぱちゅりーたちと向いあった。ぱちゅりーは、自分たちを死地に追いやったまりさを責める様子もなく。
「こわかったでしょう、まりさ。だいじょうぶよ。みんなあなたをうらんではいn」
「おさ。れいむをおぼえてるのぜ?」
ぱちゅりーの、ゆっくりとしては驚きの発言を妨げたまりさの言葉。
「ええ。あのにんげんに、ころされた……!」
れいむを、群れの仲間を失った悲しみと怒りが再びぱちゅりーの中にこみ上げる。が、すぐに。一つの疑問。
なぜ、今、れいむの話を?
「おさは、れいむも、ちぇんも、ありすも、ほかのゆっくりも、みんなにんげんさんがころしたと思ってるのぜ?」
「……ええ」
「みんなも、そうなのぜ?」
群れのゆっくりがみな頷く。それを見たまりさは。
「ゆ……ゆひ……」
何かをこらえる様子を見せ。
爆発。
「ゆっひゃああははははははははは!!」
ごろごろと、柵の周りを転げまわった。
「な、なにがおかしいの!まりさ!」
「これがおかしくなくてなにがおかしいのぜ!れいむもちぇんも、みんな、みんなころしたのは」
「このまりさなのぜぇぇ!!!」
ぴたりと。時が止まったかのように、広場が静まりかえった。
「たのしかったのぜ!
あんよのうごかないれいむで、ゆっくりをいじめるれんしゅうのために、にんげんさんのまねをして!
ちぇんでまりさがかんがえたさくっせん!をためして!
ありすは、あのれいぱーのなりそこないはれいぷしてきざんでかわさんにすててやったのぜ!
まりさも、れいむもなかよくあのかわさんのなかでさかなさんのごはんなのぜぇぇ!」
げらげらげらげら。
「だけど、ちょっとやりすぎたのぜ。おかげで、おさがかいっげんっれい!なんてやっちゃうから。
まりさはゆっくりをいじめられなくてぜんっぜんゆっくりできなかったのぜ!」
まりさは笑っている。
先程まで、自分に、人間に捕われたことに対する憐愍の眼差しを向けていた連中が、裏切られた事実に打ちのめされているざまを。
「そんなとき、まりさはにんげんさんと、ついさっきであったのぜ。そして」
「いまから、みんなを!にんげんさんと!ぎゃくったいするのぜぇぇぇ!」
高らかに、死刑宣告。
まりさは、打ち震えた。
こんな、総快感。信じられない。目の前で、こんなにも多くのゆっくりが、絶望していく。
どんなむーしゃむーしゃも、すっきりーも、おちびちゃんも及ばない。
こんなゆっくりがあったなんて。
絶頂に達してしまいそうだった。
だから気付かない。
ぱちゅりーたちの、暗い眼差しと。
後ろに忍び寄る気配に。
「おそらをとんでるみたい!」
「よいしょっと」
人間はまりさを持ち上げ。置いた。
柵の内側、ぱちゅりーたちがいる、脱出不可能な檻へ。
「ゆ?」
「あのな、まりさ」
自分から離れていく手を、まりさは不思議そうに見つめていた。
「言ったろ。俺は鬼意三だって」
「どういうこと?」
人間の、冷たい、目。冷たいのに。
とても楽しそうで。
「虐待の手段の一つに、上げて落とすってのがある。さっきまでのお前は、上ってた」
で、今は。
人間の手が、まりさの後ろを指差す。
そこには。
怒りと、復讐に燃えたゆっくりたちが。
「落ちるところだ」
「しねぇええええぇえええええ!!!!!」
森に響きわたる叫び。
群れのゆっくりたちが、次々にまりさに飛びかかる。
「このげすがぁぁぁ!」
まりさのおさげが千切れる。
「おばえのぜいでにんげんにづがまっだんだあああ!」
帽子が破かれる。
「─────!!!!」
幾つも、幾つもの怒号。
絶叫。
あんよはずたずたにされた。
右目を引き抜かれた。
歯を砕かれた。
髪は引き抜かれた。
まむまむとあなるに石を詰められた。
れいむ、ぱちゅりー、ありす、まりさ。関係なくれいぷされ。
死にかけるたびに、人間がオレンジジュースをかけた。
もはやまりさは、言葉を発することもできず。
あらかたの暴力をやり尽されたところで、人間に持ち上げられた。
破れたボール、いや、ぼろ雑巾のようだった。生きているのが不思議なくらいだ。
「虐待、とはちょっとちがうかもしれんが。される側にまわった気分はどうだ?」
「……ゆっ……」
もはや、声ではなく音だな。ここまで弱れば、虐待など意味はない。なれば人間が興味を抱くはずもなく。
まりさは、雑巾のように、捻り切られ。
人間は、未だ怒号止まぬ柵の中へ。
「すっきりしたか、おまえら」
「うるざい!にんげんも、あのまりざもじねばいいんだ!」
「ぞうだ!じね!」
「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」
人間の死を望む、汚ならしいコーラス。
最早叫び過ぎて声が枯れている。それでも叫ぶのは、よほどの怒りなのだろうが。
「ずぅうあんぬぅぇぇぇんどぅえしたぁぁぁ!死ぬのはお前らでぇぇぇすぅぅぅ!」
一番手前にいたぱちゅりーを踏みつぶし。
虐待の、始まり。
---------
あとがき
読んでくださってありがとうございます。
anko2352 香りを書いた者です。
感想とかどっかで見れるかなとおもって、なにげなしに作品番号と作品名でぐぐったら、
感想掲示板と本スレにたどり付きまして。
まず賛否両論様々な御意見ありがとうございます。
次に、ごめんなさい。タグや注意書が足りませんでした。てか配慮が足りなかった。
申し訳ない。
それと、いくつかの御意見にお答えさせていただきます。
一行ごとの空行。
> 私自身が携帯から読むことが多いので、あのほうが読みやすいかと思ったのですが、そうでもなかったのですね。ごめんなさい。
荒れるのわかっててかいた。
> すいませんわかりませんでした。電車で思い付いたのをかいただけで、まさしく上にもかきましたが、配慮が足りませんでした。
人間苛めならそうかいておいて。
> ごめんなさい。次から書きます。
虐待 自業自得 同族殺し 群れ 自然界 虐待人間 2作目。善良ゆ死にます。
*善良なゆっくり死にます
---------
あなたの御趣味は
森。夜が明けて間も無い頃。
まりさは、起こされた。
「まりさああああ、たいへんだよおおおおおおお!」
実に、ゆっくりしていない声だった。まだ重い目をおさげで擦り、声の主をみる。
「なんなのぜ、れいむ……。
ゆっくりしてないのは、かおとあんよとかみとかざりとおめめともみあげとかわとなかみだけにしてほしいのぜ……」
「それってぜんぶでしょおおおおおおお!」
「まだましだったこえがそれじゃ、たしかにぜんぶなのぜ」
いつもなら、まだ寝ている時間だ。それを、無理に起こされたのだから、皮肉の一つも言いたくはなる。
「で、なんなのぜ」
「ゆ、そうだよ!たいへんなんだよ!だから、ぱちゅりーがみんなをあつめてるんだよ!」
れいむが、なぜか自慢気に言い放つ。だが、その返答からは、なにが大変なのかはわからなかった。
まあ、群れの長であるぱちゅりーの指示なら、従わないわけにもいかないし、実際にある程度の大変なことは起こったのだろう。
朝食用に保存しておいた木の実を口に含むと、まりさはれいむとともに巣を出た。
本来、ぱちゅりーによる召集の際に集合するのは、群れの中心の、木の少ない開けた場所だ。
だが、今まりさたち大人ゆっくりは、ある巣の前にいる。ここは群れから少し離れた所にある木の下。
この巣に住んでいるゆっくりは、まりさたちの群れに所属していないのだろう。
「むきゅ。みんなあつまったわね。いまから、しょうっしゅう!のせつめいをするわ」
ぱちゅりーが言うと、側近であるみょんが、巣のけっかい!を外しにかかった。
枝や葉が、少しずつ取り払われていく。その度に、ゆっくりできない匂いが辺りに漂い始めた。ゆっくりたちはみな顔をしかめはじめる。
まりさもその例外ではなかったが、その匂いの正体に気が付いていた。
(これは……)
幾度となく嗅いだ匂い。父の、母の、友の。今はいないゆっくりたちが発していた、匂い。
「みんな。ゆっくりきいてね。この"す"では、まりさがくらしていたわ」
群れのゆっくりたちが息をのむ。気付くものは気付きはじめていた。この匂いは。
「このなかで、そのまりさがしんでいるわ」
死臭。
「ゆうううう!!」
「ゆっくりできないいいいいい!!」
ゆっくりたちが口々に悲鳴を上げはじめる。もし、子ゆっくりがこの場にいれば、餡子を吐いてしまっていただろう。
「みんな、きいて!じゅうようなのは、そこじゃないの。おちついて、おちついてみてね……」
ぱちゅりーが言い終るのとほぼ同時に、けっかい!が完全に取り払われた。
そこにあったのは。
「ゆげえええええええ!」
まりさ、だったのだろうか。
地面に転がっている、妙に小綺麗な帽子がなかったら、わからなかったかもしれない。
そう、綺麗なのは帽子だけだった。
散乱する髪。その中にちらちらと見えるのは、歯だろうか。根元からもがれたのだろう、先に餡子がこびりついている。
口は下顎からあんよまでを中心で裂かれており、左右の顎の間に、妙に黒い舌が挟まっていた。どうやら焼かれたらしい。
左目はない。右目は、わからなかった。瞼を縫いつけられていたから。中にあるのが、目なのか、そもそもなにかあるのか、ゆっくりたちにはわからなかった。
(こんな……)
まりさは、どうにか迫りくる嘔吐感を押さえ込んだ。死臭と気付いていた。当然、死体がそこにあることだってわかっていた。
だが、こんな。こんな惨状が巣の中に広がっていようとは思いもしなかった。
周囲のゆっくりたちの中には、こらえきれず餡子を吐いてしまっているものもいた。まりさを起こしにきたれいむもそのうちの一匹だった。
全員が落ち着いたころ、ぱちゅりーが再び話しはじめた。
「みんな。このまりさは、あきらかにころされているわ。もんだいは、だれがころしたかよ」
「こんな、こんなむごいころしかた、わたしたちゆっくりにはとてもできない。できるゆっくりがいたとしても、それはもはやゆっくりじゃないわ」
みな、ぱちゅりーの言葉にうなずく。
「このまりさの、みぎのおめめをみてちょうだい。これは、いとさんといって、にんげんさんがつかうどうぐよ」
「に……にんげんさん!」
再びざわめくゆっくりたち。
この群れは人間と協定を結んでおらず、また接触も少ない。しかしその恐しさは、ぱちゅりーによって何度も教え込まれていた。ゆっくりより強く、賢い。
ゆっくりが敵う相手ではない、ということを。
「で、でも!なんでにんげんさんがこのまりさを!?」
ありすが叫ぶ。
「このまりさが、にんげんさんになにかしたとしたら、それがげんいんだけど。たぶん、そうじゃないわ」
「にんげんさんのなかには、たのしいというりゆうでゆっくりをいじめるひとたちがいるの。このまりさのしたいは、そんなにんげんさんが、このちかくにくることがあるとしめしているわ」
「ゆうううううう!」
「わからないよおおお!」
「れいむおうちかえるうううう!」
「しずかに!」
ぱちゅりーは、語気を荒らげた。再び、静寂。
「いい?みんな、にんげんさんをみかけたら、いちもくさんでにげるのよ。まちがってもはむかっちゃだめよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!!!!」
今まで、言葉で聞いていただけの、人間の恐しさ。群れのゆっくりたちは、それを目の当たりにすることで、餡子に深く刻みこんだ。
召集は、それで解散となった。みなそれぞれ各自の巣に戻っていく。
巣を出る時、まりさは一度振り返った。
左目のない死体が、そこにはある。それに、なにか。
なにかが。
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その日、まりさはゆっくりできなかった。
あの、恐しい、むごたらしい、見知らぬまりさの死に様が、目に焼きついて離れない。
それは昼をすぎ、太陽が沈み、星が瞬いても変わらなかった。
そして。そして、なぜか。
まりさは、あの巣の前にいた。
なぜ、自分はここにいるのか。
わからないまま、巣の中へと入っていく。
中は、昼間と何も変わっていない。月と星の明りで、それがわかった。いや、なくてもわかったかもしれない。なにせ、こんな場所に入りたがるゆっくりなどいないだろうから。
死体もやはり、そこにあった。
見れば見るほど、恐しい。まりさの、あんよと、おくちの間に、もやもやとした、言い表せないなにかが溜っていった。朝にも感じた、なにか。
ただ。
まりさは、それを。そのもやもやを。
ゆっくりできないものだと、思わなかった。
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それ以降、まりさはたびたびその巣に入っていった。
日ごとに腐り、傷み、崩れていく死体。腐敗の進行と共に、まりさのもやもやは大きくなっていく。
そんなある日、もう死体も腐り切ろうという時。あの、まりさを起こしたれいむが行方不明になった。
もともとあのれいむは頭が悪く、時々問題を起こしていたので大した騒ぎにはならなかったが、人間のこともあり、まりさを含めた数名のゆっくりが捜索隊として群れを出発した。
最初は固まって行動していたが、日が傾いてきても見付からないため、最後に手分けして探し、だめなら明日に再捜索ということになった。
みなと別れて十数分、まりさはれいむを見付けた。
「ゆひっ、ゆひい……」
石か何かで、あんよを切ってしまったらしい。少し餡子が漏れてしまっている。
この場所では大声で助けを呼んでも聞こえないだろうし、その声があのまりさを殺した人間を呼び寄せないとも限らない。それくらいは考えることができたらしい。
「ようやく見付けたのぜ……」
れいむ。
そう、声をかけようとした。
その時。まりさは。
まりさの中のもやもやが、急激に大きくなるのを感じた。
あんよが傷ついている。れいむは動けない。
助けを呼ぶ声は聞こえない。誰もこない。
れいむが痛がっている。あの、あのまりさの死体にはりついていた。
苦しそうな、顔。
「まりさ!」
れいむは、本当に嬉しそうな顔をしていた。誰も助けにきてくれないと思っていた。きっと自分は、れみりゃにでも食べられて永遠にゆっくりしてしまうんだと。
そんなふうに考えていたから、まりさが見えたときは目をきらきらと輝かせたのだ。
まりさは、そんなおめめに。
どこかで拾ったのだろう、枝を突き剌したのだ。
「ゆ……っぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
動かないあんよを振り回し、のたうちまわった。
熱い。おめめが。おめめのあった場所が、熱い。
「ど……どぼじ……でえ」
「れいむ……まりさは、あのしたいをみたときから、なにかへんだったのぜ」
沈みかけている夕日の、赤い光りが、まりさの顔を照す。れいむの残っているほうのおめめは見てしまった。
まりさは、この瞬間。
れいむが、どうしようもなく苦しんでいる今。
とても、とてもゆっくりしているのを。
「いま、わかったのぜ。このもやもやは、ゆっくりできるものだぜ」
まりさは呟きながら、枝の先でれいむのあんよをほじる。再び悲鳴が森に響くが、誰かが来る気配はない。
「にんげんさんは、このもやもやのために、あんなことをしたんだぜ。まりさには、わかるのぜ」
「や、やべで……。まりざ……」
「れいむの、そのかお。とてもとてもゆっくりできるのぜ」
枝を深く差し込む。
「ゆぎゃあああああああああ!!!」
「はじめてだから、うまくできないかもしれないのぜ。だから」
にんげんさんの、まねをするのぜ、れいむ。
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れいむの死体が見付かったのは、それから三日経ってからだ。
れいむの両親は縋りついて泣いていたし、友人たちも悲しんでいた。まりさも、一応ふりはした。
ぱちゅりーはそれをやはり人間の仕業として、より警戒を強めるようみなに言い聞かせた。それから群れには、ゆっくりできない雰囲気が漂い始めたのだ。
まりさは、そんな群れの状態で、一匹だけゆっくりできていた。しかし、すぐに自分だけゆっくりしているのはおかしいことに気付いた。
できるだけみんなと同じように、ゆっくりできなさそうに振る舞った。
しかし、それは結構なストレスになったようだ。
(また、あのもやもやをあじわいたいのぜ)
あの、れいむをいたぶって殺した夜。あの時は本当にすっきりした。極上の美ゆっくりとすっきりー!をしても、あれほどの総快感は得られないだろう。
だが、リスクが大きい。この辺りには、群れはまりさがいるこの群れしかなく、あの殺されたまりさのような、独りで暮しているゆっくりはなかなか出会えない。
つまり、まりさがゆっくりを嬲り殺すには、群れのゆっくりを狙うしかない。
しかし、れいむの時のような特殊な場合以外で、ゆっくりが一匹だけに、助けも呼べない状況になるだろうか。またもしなっても、万が一逃げられてしまえば、まりさは群れのゆっくりたちに殺されてしまう。
せめて、まりさがまりさとわからなければ。
そこまで考えたとき、まりさの脳裏にあるものが浮んだ。
最初に、人間に殺されたまりさの帽子。
あれは妙に綺麗だった。ひょっとしたら、あの帽子は。
まりさはすぐに例の巣へとむかった。
やはり。
まりさは予想が的中したことに歓喜した。
この帽子は、もはや腐り果てたこのまりさが死ぬ前に脱がされた。
つまりこの帽子にはゆっくりが嫌がるあの死臭がない。流石に長時間この巣に放置されていただけあって、全く無臭とはいかないが、それでも耐えられないレベルではない。
この帽子によって、まりさは別人に、死人になれる。まりさとばれずに、あのすっきりをもう一度。
あまりの歓喜に、年がいもなく。
まりさは嬉しーしーをしてしまっていた。
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「ちぇん!はなしがあるのぜ」
「まりさー?どんなはなしかわからないよー?」
「まだいってないのぜ……」
まりさは、見掛けないゆっくりが、ちぇんと友達に、あわよくば番いになりたがっているといった。
「わからないよー。どんなゆっくりかわからないのに、ともだちならまだしもつがいなんてむりだよー」
「やっぱりなのぜ。まりさもそうだとおもってたけど、あんまりひっしだったから、ことわれなかったのぜ」
断ってくると言って、まりさは身を飜す。
去り際に、ぽつりと。
「それにしても、かわったゆっくりだったのぜ。しっぽがたくさんあって、ちぇんちぇんうるさい……」
「まってねー!」
ちぇんが大声で叫ぶ。
「ひょっとして、ら……らんしゃま?!」
「そうそう、そんなふうになのっt」
「そうならそうといえよー!わかれよー!」
まりさが肯定するや、暴言を残して、ちぇんは走り出した。その背に、まりさは告げる。
「むこうの、かわさんのちかくのおおきい"き"さんのしたでまってるっていってたのぜ!」
「わかったよー!らんしゃまああああぁぁぁ……」
ちぇんが見えなくなったのを確認して。
まりさはにやりと、笑みを浮べたのだ。
巨木の根元。水のせせらぎが聞こえるなか、ちぇんはきょろきょろと辺りを見回すが、らんの姿は見当たらない。
少々群れから離れ、遠くまで来てしまったこともあってか、ちぇんはだんだん不安になってきた。
「らんしゃまあああ!どこなのおおおお!」
「らんがどうかしたのz……どうかしたの?」
涙目になっていたちぇんに呼び掛ける声。ちぇんがふりむくと。
「ゆ?しらないまりさだね!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!らんをさがしているの?」
そのまりさは、巨木の空洞を視線で指した。
「さっき、らんがあの中に入っていくのを見たよ!」
「ほんとう!わかるよー、まりさはゆっくりできるんだねー」
言いおえるや否や、ちぇんは空洞へ飛び込んでしまった。
「ゆひっ」
これで、ちぇんの声は群れには届かず。ただ一匹、空洞のなか。
もう、口調を変える必要もない。
まずは、れいむの時のように。
あの、すばしこいあんよを。
「ど、どぼじて……らんしゃま……は……」
「そんなやつ、いないのぜ」
あんよを刔られ、動けなくなったちぇんは驚くほど弱かった。噛み千切った耳を吐き捨て、あんよの切れ込みから、ゆっくりと、皮をめくっていった。
「にゃあああああ!!!」
「いいいいいいこえなのぜ、ちぇん」
べりっ。
目元まで皮をめくられ、剥き出しになった中身──チョコレートに舌を突き刺された。
「あまくて、しあわせー!なのぜ」
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
鋭い悲鳴。それから、ちぇんの動きが鈍くなっていった。
「ゆうう?まちがったのぜ?」
「もっと……ゆっくり……」
「じゃあしぬのぜ」
そういって、まりさはちぇんを踏みつぶした。と同時に、飛び散るチョコを見て、まりさは合点がいったようだった。
「そうなのぜ!かわをめくったから、なかみがもれてすぐしんだのぜ!」
新しい発見に喜び、はしゃぐまりさ。その足元では、中身を全てもらしたちぇんが平べったくなっていた。
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それから。
ある時は、ありすに、とてもとかいはなまりさが呼んでいるといい。
ある時は、れいむに、おちびちゃんの育て形がわからないゆっくりがいるから教えてやってほしいといい。
まりさに、美れいむが淋しそうにしているから慰めてやってほしいといい。
ぱちゅりーに、まりさにはわからないが魔導書らしきものがあるといい。
まりさは、言葉巧みに、ゆっくりたちをおびきだしては虐待を続けた。
しかし、調子にのって虐待を続けたため、行方不明となるゆっくりの数が増えすぎ、ぱちゅりーはかいっげんっれいっ!を発令した。
これにより、狩り以外の外出を禁じられてしまった。他のゆっくりが外にでなければ虐待など出来るはずもなく、まりさの虐待生活は終焉をむかえた。
かのように見えた。
虐待をしなくなって数日がすぎた。これまで毎日のように虐待を行ってきたまりさは、ストレスの掃け口を失い、いらいらしていた。そんな時。
まりさは、出会った。
まりさより大きく。首が、胴が、腕が、足がある。強くて、賢い。
人間に。
「おお?最近ゆっくりを見ないから、もうどこかに逃げたかと思ったけど。まだいたんだな」
人間はまりさを見下ろして。
顔をくしゃっと歪めるように笑った。嫌な、嫌な笑み。
「に……にんげんさん」
その笑みは、つい最近まで。
自分も浮べていたものではないか。
「なんだ?命乞いならだめだぜ。鬼意三からは逃げられない」
「あの……にんげんさんが、あのまりさを……」
まりさの言葉に、人間は首を傾げた。
「まりさ?」
まりさはお前だろ。
人間はそんなことを思ったが、すぐに気付いた。だいぶ前に、この辺りでまりさを虐待したような。
「みぎのおめめがいとさんでとじられてた……」
「ああ。あれか。確かに俺だわ」
ぽん、と掌をたたく。
その言葉を聞いたまりさの顔が。
輝いた。
「にんげんさん!あの、あのね、まりさは……にんげんさんとおんなじなんだぜ!」
「一緒にすんな」
言うがはやいか、人間の足がまりさにめりこんでいた。まりさは転がりながら、必死に言葉を紡ぐ。
「ゆっ、ゆぶ……!き、きくのぜ、にんげんさん。まりさも、まりさもゆっくりをいじめるとしあわせー!なんだぜ!」
「……ほう」
人間はまりさの台詞に興味を抱いたのか、痛みに顔をしかめているまりさを持ち上げた。
「おそらをt」
「詳しく話せ」
人間の楽しそうな、なのに暗くて恐い視線に晒されながら、まりさはぽつぽつと、これまでのことを語りはじめた。
「なるほどね」
自分の虐待で、ゆっくりが虐待に目覚める。なかなか悪い気はしない。だが。
こいつは、勘違いしているな。
「あのね、あのねにんげんさん!いま、まりさたちのむれはみんなおうちにとじこもってるんだぜ!」
「だけど、おさがよんでるっていえば、みんなをいっかしょにあつめられるのぜ!」
「おさをさいごにすれば、ほんとにみんなになるのぜ!」
「にんげんさん、いっしょにゆっくりをいじめるのぜ!」
まりさは必死に語りかけた。これは、久し振りの虐待チャンスだから。人間と一緒なら、未だかつてないゆっくりいじめを行うことができる。今まで以上の、総快感を得ることができる。
「……いいぜ。どこにあつめる」
人間は、まりさの言葉に乗った。彼もまた、虐待をするチャンスを得たのは久し振りだったからだ。
「ここからちょっといくと、ひろいところがあるのぜ。そこにあつめるのぜ」
「わかった、集めるのはお前がやれ。俺は逃げ道をふさいでからいく」
こうして、人間とゆっくりの、束の間の共闘が始まった。
束の間の。
それから、三十分もしないうちに、子ゆっくりも大人ゆっくりも区別なく、群れの全員が広場に集められた。
最後に連れて来られたぱちゅりーとその側近は、みんなが広場に集まってるからぱちゅりーも来て、とあくまで異常事態を告げる体で呼出した。
「みんな、なんでおそとにでてるのおおおおおおおお?!」
ぱちゅりーは自身の発したかいっげんっれいを無視するほどの事態が起きたのかと群れのゆっくりたちに確認するが。
「ゆ?おさがよんだんでしょ?」
「ばかなの?わすれたの?」
「ぱちゅりーはばかじゃないわ!それに、しょうっしゅうをかけたおぼえはないわ!」
「そりゃそうだ」
どこからともなく、声。
その人間の言葉に、ぱちゅりーたちが反応するよりはやく。
金網で作られた、即興の柵が、ゆっくりたちを捕えた。
「むっぎゅうううう!に、にんげんさんんんんんんん!」
「ゆげええええ!」
ぱちゅりーの教育の成果か、人間という言葉だけで目の前の存在の恐しさを感じとったらしい。
柵は折畳み式の簡易なものだが、ゆっくり相手ならこれでも十分だろう。現に、みょんやまりさが体当りを繰り返しているが、一向に抜け出せる様子はない。
「やあ、ゆっくり諸君。その様子だと、俺がどういう人間かはわかってるみたいだな」
「にんげんさんがみんなをあつめたのね……」
他のゆっくりどもが騒ぐなか、ぱちゅりーだけは冷静を保っているようだ。最初の叫び声はともかくとしてだが。
「いや、ぱちゅりー。お前は誰に呼ばれてここにきた」
「それは……まさか」
「おさ」
俺の後ろからひょこっと、まりさが顔を出す。
「まりさ!」
群れのゆっくりたちが騒ぐのをやめ、一斉にこちらを見た。
「まさか。にんげんさん!あなた、まりさをおどして……」
「えっ」
「げれつよ!あんなにたくさんのゆっくりをころして、こんどはきょうっはく!なんて!」
ぱちゅりーの怒りの声。それに続けと言わんばかりに、ゆっくりたちの怒号が飛び交う。
「このいなかもの、まりさをはなして、わたしたちをここからだしなさい!」
「あまあまおいてとっとときえるのぜ!」
「ぐぞどr」
「黙れ」
人間は、奴隷と言い掛けたでいぶを持ち上げ、引き裂いた。人間の近くにいたゆっくりたちに、でいぶの餡子がかかる。
「お前ら、なにか勘違いしてるな。おい、まりさ」
一瞬で仲間を殺され、震えるゆっくりたちを尻目に、人間はまりさを持ち上げ囁く。
「あのな、────と言え。すると、きっと楽しいぞ」
「わかったのぜ、にんげんさん!」
下されたまりさは、柵を狭んで、ぱちゅりーたちと向いあった。ぱちゅりーは、自分たちを死地に追いやったまりさを責める様子もなく。
「こわかったでしょう、まりさ。だいじょうぶよ。みんなあなたをうらんではいn」
「おさ。れいむをおぼえてるのぜ?」
ぱちゅりーの、ゆっくりとしては驚きの発言を妨げたまりさの言葉。
「ええ。あのにんげんに、ころされた……!」
れいむを、群れの仲間を失った悲しみと怒りが再びぱちゅりーの中にこみ上げる。が、すぐに。一つの疑問。
なぜ、今、れいむの話を?
「おさは、れいむも、ちぇんも、ありすも、ほかのゆっくりも、みんなにんげんさんがころしたと思ってるのぜ?」
「……ええ」
「みんなも、そうなのぜ?」
群れのゆっくりがみな頷く。それを見たまりさは。
「ゆ……ゆひ……」
何かをこらえる様子を見せ。
爆発。
「ゆっひゃああははははははははは!!」
ごろごろと、柵の周りを転げまわった。
「な、なにがおかしいの!まりさ!」
「これがおかしくなくてなにがおかしいのぜ!れいむもちぇんも、みんな、みんなころしたのは」
「このまりさなのぜぇぇ!!!」
ぴたりと。時が止まったかのように、広場が静まりかえった。
「たのしかったのぜ!
あんよのうごかないれいむで、ゆっくりをいじめるれんしゅうのために、にんげんさんのまねをして!
ちぇんでまりさがかんがえたさくっせん!をためして!
ありすは、あのれいぱーのなりそこないはれいぷしてきざんでかわさんにすててやったのぜ!
まりさも、れいむもなかよくあのかわさんのなかでさかなさんのごはんなのぜぇぇ!」
げらげらげらげら。
「だけど、ちょっとやりすぎたのぜ。おかげで、おさがかいっげんっれい!なんてやっちゃうから。
まりさはゆっくりをいじめられなくてぜんっぜんゆっくりできなかったのぜ!」
まりさは笑っている。
先程まで、自分に、人間に捕われたことに対する憐愍の眼差しを向けていた連中が、裏切られた事実に打ちのめされているざまを。
「そんなとき、まりさはにんげんさんと、ついさっきであったのぜ。そして」
「いまから、みんなを!にんげんさんと!ぎゃくったいするのぜぇぇぇ!」
高らかに、死刑宣告。
まりさは、打ち震えた。
こんな、総快感。信じられない。目の前で、こんなにも多くのゆっくりが、絶望していく。
どんなむーしゃむーしゃも、すっきりーも、おちびちゃんも及ばない。
こんなゆっくりがあったなんて。
絶頂に達してしまいそうだった。
だから気付かない。
ぱちゅりーたちの、暗い眼差しと。
後ろに忍び寄る気配に。
「おそらをとんでるみたい!」
「よいしょっと」
人間はまりさを持ち上げ。置いた。
柵の内側、ぱちゅりーたちがいる、脱出不可能な檻へ。
「ゆ?」
「あのな、まりさ」
自分から離れていく手を、まりさは不思議そうに見つめていた。
「言ったろ。俺は鬼意三だって」
「どういうこと?」
人間の、冷たい、目。冷たいのに。
とても楽しそうで。
「虐待の手段の一つに、上げて落とすってのがある。さっきまでのお前は、上ってた」
で、今は。
人間の手が、まりさの後ろを指差す。
そこには。
怒りと、復讐に燃えたゆっくりたちが。
「落ちるところだ」
「しねぇええええぇえええええ!!!!!」
森に響きわたる叫び。
群れのゆっくりたちが、次々にまりさに飛びかかる。
「このげすがぁぁぁ!」
まりさのおさげが千切れる。
「おばえのぜいでにんげんにづがまっだんだあああ!」
帽子が破かれる。
「─────!!!!」
幾つも、幾つもの怒号。
絶叫。
あんよはずたずたにされた。
右目を引き抜かれた。
歯を砕かれた。
髪は引き抜かれた。
まむまむとあなるに石を詰められた。
れいむ、ぱちゅりー、ありす、まりさ。関係なくれいぷされ。
死にかけるたびに、人間がオレンジジュースをかけた。
もはやまりさは、言葉を発することもできず。
あらかたの暴力をやり尽されたところで、人間に持ち上げられた。
破れたボール、いや、ぼろ雑巾のようだった。生きているのが不思議なくらいだ。
「虐待、とはちょっとちがうかもしれんが。される側にまわった気分はどうだ?」
「……ゆっ……」
もはや、声ではなく音だな。ここまで弱れば、虐待など意味はない。なれば人間が興味を抱くはずもなく。
まりさは、雑巾のように、捻り切られ。
人間は、未だ怒号止まぬ柵の中へ。
「すっきりしたか、おまえら」
「うるざい!にんげんも、あのまりざもじねばいいんだ!」
「ぞうだ!じね!」
「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」「じね!」
人間の死を望む、汚ならしいコーラス。
最早叫び過ぎて声が枯れている。それでも叫ぶのは、よほどの怒りなのだろうが。
「ずぅうあんぬぅぇぇぇんどぅえしたぁぁぁ!死ぬのはお前らでぇぇぇすぅぅぅ!」
一番手前にいたぱちゅりーを踏みつぶし。
虐待の、始まり。
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あとがき
読んでくださってありがとうございます。
anko2352 香りを書いた者です。
感想とかどっかで見れるかなとおもって、なにげなしに作品番号と作品名でぐぐったら、
感想掲示板と本スレにたどり付きまして。
まず賛否両論様々な御意見ありがとうございます。
次に、ごめんなさい。タグや注意書が足りませんでした。てか配慮が足りなかった。
申し訳ない。
それと、いくつかの御意見にお答えさせていただきます。
一行ごとの空行。
> 私自身が携帯から読むことが多いので、あのほうが読みやすいかと思ったのですが、そうでもなかったのですね。ごめんなさい。
荒れるのわかっててかいた。
> すいませんわかりませんでした。電車で思い付いたのをかいただけで、まさしく上にもかきましたが、配慮が足りませんでした。
人間苛めならそうかいておいて。
> ごめんなさい。次から書きます。