ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1429 ある朝、一匹の子まりさがいて
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朝の通勤ラッシュ時、駅前の交差点は多くの人で溢れかえっている。
あわただしく行き交う人々の流れから少し離れたところには自動販売機があり、その横に、小さくて丸っこいものがうずくまっていた。
あわただしく行き交う人々の流れから少し離れたところには自動販売機があり、その横に、小さくて丸っこいものがうずくまっていた。
「ゆぅぅ。にんげんしゃん、ゆっくちしていっちぇね」
それは一匹の子まりさだった。
肌にみずみずしさはなく、カサカサのボロボロ。
髪の毛も同様で、おぼうしに至っては、上半分が千切れて穴があいているという有り様だった。
子まりさは、道行く人々に向かって呼びかけている。
肌にみずみずしさはなく、カサカサのボロボロ。
髪の毛も同様で、おぼうしに至っては、上半分が千切れて穴があいているという有り様だった。
子まりさは、道行く人々に向かって呼びかけている。
「にんげんしゃあん」
どうして子ゆっくりがたった一匹でこんなところにいるのか。
そんな疑問を抱く人間はだれもいない。
そもそも子まりさの存在自体に、関心を持つ者がいなかった。
みな、一様に子まりさの前を通り過ぎていく。
そもそも子まりさの存在自体に、関心を持つ者がいなかった。
みな、一様に子まりさの前を通り過ぎていく。
「にんげんしゃん、ゆっくちしようよぉ」
子まりさは呼びかける。
スーツ姿のおじさんに。綺麗なお姉さんに。あくびをするお兄さんに。友達と笑い合う子どもに。
だれも返事をしてくれない。
子まりさのことを見てもくれない。
スーツ姿のおじさんに。綺麗なお姉さんに。あくびをするお兄さんに。友達と笑い合う子どもに。
だれも返事をしてくれない。
子まりさのことを見てもくれない。
「ゆぁぁぁん。にゃんで? にゃんでまりしゃのこと、みてくれにゃいの?」
黒くて真ん丸な瞳に涙をためて訴えても、何も変わらない。
「ゆぇぇぇぇん。ゆっくちしちゃい。ゆっくちしちゃいよぉ」
うつむいた子まりさの目からぽろぽろと涙がこぼれる。
ますますゆっくりできなくなってきた。
泣くのを堪えようと、子まりさが上を向いたとき、
ますますゆっくりできなくなってきた。
泣くのを堪えようと、子まりさが上を向いたとき、
「ん?」
自動販売機にコーヒーを買いにきた青年と、目が合った。
「ゆ、ゆぅぅぅぅ! にんげんしゃん、ゆっくち、ゆっくちしていっちぇね!」
初めて自分を認識してくれる人間が現れたことで、沈みきっていた子まりさの心は一気に明るくなる。
嬉しさのあまり、泣き腫らした顔など気にならない。
嬉しさのあまり、泣き腫らした顔など気にならない。
「ゆっくちしよう! ゆっくちだよ! ゆっくち!」
青年はそんな子まりさの姿をしばらく見つめると、無言のまま手を伸ばし、子まりさを摘み上げた。
「ゆわぁぁ、おしょらをとんでりゅみちゃいぃ! にんげんしゃんは、ゆっくちできりゅよ!」
生まれて初めての体験に、子まりさは目を輝かせて喜んだ。
青年は子まりさを持ったまま少し歩き、止まった。
青年は子まりさを持ったまま少し歩き、止まった。
「ゆ? にんげんしゃん、どうし……」
子まりさが笑顔のまま、青年に訊ねようとした瞬間。
青年は子まりさを、空っぽのゴミ箱の中に捨てた。
「ひゅ……?」
子まりさはきょとんとした顔で、自由落下し、ゴミ箱の底に背中を打ちつけた。
「ゅぴぃっ」
こぽっ、と口から餡子の飛沫が飛び散る。
体がひどく痛み、息ができない。
視界は、急速に狭くなっていく。
体がひどく痛み、息ができない。
視界は、急速に狭くなっていく。
(にんげんしゃん……にゃんで……)
子まりさには、何がなんだかわからなかった。
やっと、いっしょにゆっくりできる人間に出会えて、ゆっくりしていたはずなのに。
やっと、いっしょにゆっくりできる人間に出会えて、ゆっくりしていたはずなのに。
「もっちょ……ゆっくち……」
子まりさの最期の言葉は、青年がコーヒーを買った釣り銭を取り出す音に飲み込まれた。
その青年も、人々の中に溶け込んでいく。
その青年も、人々の中に溶け込んでいく。
もう、子まりさのことを気に留める人間など、ただの一人もいなかった。
(了)
挿絵:ゆんあき