ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1409 元気な赤ちゃんをゆっくり産んでいってね!
最終更新:
ankoss
-
view
ゆうかはその部屋から外に出たことがなかった。
その部屋はゆうかのすべてであった。
だが、これの他に必要なものはなにもなかった。
美味しい食べ物、ふかふかの寝床、楽しい玩具、そこにはなんでもあった。ゆうかの欲しいものはなんでもあった。
何よりもゆうかのことをかわいがってくれるおねえさんがいた。
おねえさんはゆうかが頼めばなんでもしてくれた。そもそもここまで育て上げてくれたのもおねえさんだ。
本来ならおかあさんと呼ぶのが実情に沿っているのだろうが、おねえさんは「おねえさんと呼んでほしい」と頼むので、
ゆうかはそれにわざわざ逆らったりはしなかった。
呼び方はどうあれ絶対的な庇護者であることに間違いはない。
漠然と別に産みの親がいることを認識していたが、どんな姿をしていたかなどは忘却の霧の彼方に呑まれている。
ゆうかが知っている自分以外の生き物はおねえさんだけだった。
いや、もう二匹いた。
ゆうかにとってはそれは真っ当な生き物とは言い難かったが。
ゆうかの部屋は見えない壁で仕切られていた。
見えない壁のもう一方は、寒々として汚らしい空間だった。
うちっぱなしの冷たく硬いコンクリートの部屋に、うんうんや食べ残しなどの汚れが片付けられもせずカビが生えている。
すべてが柔らかく暖かで清潔なゆうかの部屋とは対極だった。
これが二匹のための空間である。
一匹はまりさだった。
どこにでもいるありふれた無価値なゆっくりだ。
おねえさんが言うにはこのまりさは酷いゲスだそうだ。
おねえさんが言うことはいつも正しい。とはいえゆうかはこのまりさがゲスな行為をするところを見たことはなかった。
このまりさはいつも悄然としておねえさんの命令に逆らうことはなかった。
徹底的に制裁され、己の罪と無力さを悟ったのだろう。
もう一匹はれいむだった。
どこにでもいるありふれた無価値なゆっくりだが、姿が普通のれいむとはかなり異なっていた。
飾りどころか髪すらないはげまんじゅうで、体はまりさよりも随分大きい。ゆうかよりも少し大きい。
全身いたるところ古傷に覆われ、常に歪んだ異様な形相を顔面に貼り付けたままで、始終言葉にならぬうめき声をあげていた。
それはもはやゆっくりとさえ呼べない汚物の塊だった。喚き散らす汚物袋、それがれいむ。
このれいむはまともな餡子脳が壊れてしまってまともな言葉をしゃべることができなくなったそうだ。
「でいぶでいぶくそでいぶ!」
「あー!あー!あああああー!」
無気力で従順なまりさと違い、このれいむはおねえさんに対して反抗的だった。
あーあー喚き散らしながら歯をガチガチさせ、隙あらば噛み付かんという様だった。
でいぶと呼ばれるのが相当嫌いなのか、おねえさんがでいぶでいぶと囃し立てるたびにれいむは暴れた。
とはいえ足(底部)を焼き潰されているらしく、なにもできはしないのだが。
れいむが暴れるたびに、おねえさんはこのゲスゆっくりを制裁した。
おねえさんの制裁のやり方は制裁棒と呼んでいる黒くて長い棒をゲスゆっくりどもに押し付けるだけだ。
「ああああああああああああああああ!!あああああああああああ!!ああああああああああああああああああ!!!」
「ゆっ!いうごどぎぎまずがらやめでぐだざぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!ゆっゆるじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
その棒を押し当てられると、ゆっくりはとてもゆっくりできなくなるそうだ。
二匹の喚き声からして相当な苦痛が与えられるのだろう。
ちなみに、まりさ自身は従順だが連帯責任で制裁を受けている。
「どうしてあのにひきはきたないところにすんでいるの?どうしてゆっくりできなくされてるの?」
ゆうかは何度かおねえさんにそう尋ねたことがある。
「ゆうかちゃん、あの二匹はね、お姉さんにとてもゲスな行為を働いたのよ」
「ゲスなこういってどんなこと?」
「お姉さんの大切な財産を著しく損なったのよ」
「ざいさん?」
「ゆうかちゃんの食べ物や宝物を集めるのに必要なものよ」
「ゆうかもゲスなことしたら……」
「そんなことはないわ!あなたは特別なゆっくりなのよ!あなたは希少種なのよ!あなたは可愛がられるべき存在なのよ!」
「きしょうしゅ?」
「そう希少種。あの二匹はクズ種よ。クズ種には何をしてもいいの。殺してもいいの。無価値な存在なのだから。
生かしてあげているだけでもとても慈悲深いことなのよ」
「ふーん……」
二匹が痛めつけられて当然の存在だと言い聞かせられたゆうかは、むしろ二匹の惨めな境遇を楽しむようになった。
もともとゆうか種にはサディスティックな傾向がある。捕食種でないのに他のゆっくりを痛めつけて楽しむことがある。
実際、ゆうかは汚らしい二匹を見るととてもゆっくりできることに気がついた。
もともとゆっくりとした素晴らしいゆうかの天国が、クズ種どもの地獄によってますます高められたのだった。
両者の差異を並べ立てるだけでゆうかはとてもとてもゆっくりできた。
向こう側が見えるようになっているのはゆうかをゆっくりさせてあげるための、おねえさんの配慮だったのだろう。
また、二匹への制裁の一環でもあったのだろう。
まりさがたびたび悲哀と羨望に満ちた目でこちらの方を見ていることにゆうかは気がついた。
そういうときゆうかはこれ見よがしに美味しい食べ物を口いっぱいに頬張った。それからまりさを侮蔑を込めて一瞥したのだ。
そうすると美味しい食べ物がさらに美味しくなったように思われた。
あるとき、ゆうかは自分の手で直接この二匹を痛めつけてみたいと思い立った。
おねえさんはしばしば二匹を制裁し、それを見てゆうかはとてもゆっくりできたが、
自分の手で直接あの憎たらしいゲスの顔面を叩き潰せたらどれだけ爽快なのか……ゆうかはそのことを想像すると矢も盾も止まらなくなった。
「いいわよ。ゆうかちゃんが望むことはなんでも許してあげるわ」
おねえさんはあっさりと許してくれた。
「あのにくたらしいゲスなクズしゅのでいぶをせいさいしたいわ!」
ゆうかはクズ種二匹を同時に制裁するのは、おねえさんがついてくれてるとはいえ少し不安だった。
まりさの方が弱そうだが、ゆうかはれいむの方により強い怒りを抱いていた。
このれいむはクズ種の不具にされたはげまんじゅうの分際でおねえさんにまったく従わず、いつも不愉快な騒音を撒き散らしていたからだ。
いくら制裁されてもまったく従わないふてぶてしい様を見ると、ゆうかのゆっくりまでいくらか減ぜられるように思えた。
この無価値な存在に身の程を思い知らせてやりたいとゆうかは常々思っていた。
ゆうかの部屋にあの汚らしいれいむが連れてこられた。
おねえさんはれいむを紐のようなものでがんじがらめにして、引きずるようにして部屋まで持ってきた。
部屋には事前にシートが敷かれてある。
汚物そのもののれいむが入ってくるだけで部屋が汚れてしまうからだ。
「今紐を解くわ。念のために噛み付かないように猿轡をつけておくわ。……さあて準備よし。
さあ、ゆうかちゃん!このでいぶを好きにしていいわよ!」
「ああああああああああああ!あああああああああああああああ!」
見えない壁に隔てられてではなく、他のゆっくりを目の前にするのはゆうかにとって初めてのことであった。
向こうにいるところにはわからなかったれいむの臭い体臭がむっと匂う。
餡が熱くなるような思いだった。
隣の部屋からまりさが不安そうな面持ちでこちらを伺っている。でいぶのことを心配しているらしい。
このまりさはこんな汚物が好きなんだろうか?悪趣味といわざるをえない。クズ種らしいと言えたが。
「このゲスゆっくり!むかちなゆっくり!うんうんゆっくり!クズ!カス!でいぶ!くそでいぶ!」
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
ゆうかはれいむを罵ると、体当たりを加えた。
れいむは見た目は大きかったが、大した重量はないようで、軽々とすっ飛ばされ、餡を噴出しながらシートに覆われた壁に跳ね返った。
「なにこれぇ!?」
ゆうかはれいむに触れたときかつてない不快感を覚えた。
「どうしたのゆうかちゃん?」
「わからないの!でもぜんぜんゆっくりできないの!」
震えが止まらない。吐き出したい気分だ。
「くそでいぶが汚すぎたせいかしらね……。制裁はお姉さんにまかせてゆうかちゃんはゆっくりしなさい。
後で体を綺麗に拭いてあげるわね」
お姉さんは部屋の隅で突っ伏したれいむを無造作に掴み上げると、部屋の唯一の扉(ゆうかはこの外に出たことがない)から出ていった。
しばらくすると見えない壁で遮られた隣の部屋にれいむを連れたおねえさんが現れた。
おねえさんはれいむを床に放り捨て、あのゆっくりできない棒を押し当てた。
「このゲスでいぶ!私のゆうかちゃんをよくも気持ち悪がらせたわね!死んで償いなさい!」
「ああああああああああああああああ!!!あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「ゆゆっ!やめてほしいんだぜ!れいむをゆるしてやってほしんだぜ!」
まりさがおねえさんの足元にすがり付いて懇願する。
「あなたも連帯責任よ」
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
おねえさんは二匹のゲスに交互にゆっくりできない棒を押し当て続けた。
しばらくして二匹が悲鳴さえあげられなくなると、おねえさんは満足したのか部屋を出てゆうかのところに帰っていった。
「さあゆうかちゃん。綺麗綺麗にしましょうね。それから美味しいものを食べて、お歌を歌って、ふかふかの寝床でおねんねしましょうね!」
「うん……」
それからはゆうかは二匹を直接虐待したいと言い出すことはなかった。
ただ眺めるだけでも充分ゆっくりできるのだ。あんな胸の悪くなるような汚物にわざわざ触れることはなかったのだ。
ゆうかは好きなときに食べ、好きなときに遊び、好きなときに遊び、好きなだけゆっくりしていたが、
二匹はまずい食事と制裁の時間以外には仕事をしていた。
それはすっきりであった。
「ゆっ!ゆっ!ゆぅっ!」
「あああ……ああああ……あああああああああああああああああ!!!!」
それは厭わしい光景だった。
「おお、みにくいみにくい」
ゆうかは思わずそう呟いた。
まりさは何かあるごとにれいむを庇い立てしているところ、れいむのことが好きなようだが、すっきりしたい相手かというとそうでもないようだった。
明らかに不愉快そうに仕事をしている。れいむの方も、このゆっくりはもはや苦痛しか感じないのか、歪んだ形相をいっそう無残なものにしている。
この二匹はおねえさんに命じられてすっきりをしていた。
すっきりを拒否したり、さぼったりしたならばすぐさまあの棒で制裁された。
赤ちゃんゆっくりを作っているということはゆうかにも本能でわかっていた。
やがてれいむの頭から茎が伸び、ゆっくりの実がなった。言うまでもなくゆっくりの植物型にんっしんだ。
ゆっくりの残骸とでも言うべきれいむでも子を成せたことはゆうかには少しの驚きを与えた。まむまむは潰されていなかったらしい。
赤ゆたちも特に異常は見当たらない。といってもただの無価値なクズ種の赤れいむと赤まりさしか生まれなかったが。
「ふん……クズが……」
あるとき、おねえさんはれいむの赤ゆを見てそう呟いたことがある。
クズどもを制裁するときでも大抵は朗らかに笑い、憎しみよりも楽しみで虐待を行う(ゆうかのメンタリティに近い)おねえさんが、一瞬だけドス黒い憎悪を垣間見せたように思えた。
ゆうかは少しの不安を感じたが、それはゆうかではなくれいむとまりさに向けられていることを思い直すと不安は消え去った。
やがて、赤ゆっくりは茎から離れ、生まれでた。
「ゆっきゅちちていっちぇにぇ!」
舌足らずでうざくて騒がしい声でお決まりの挨拶を繰り返している。
「まりさのちびちゃんたちゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ああああああ!ああああああ!あああああああああああ!」
赤ゆはすさまじい姿の親れいむにも普通に懐いていた。本能で親だとわかるのだろう。この先成長することがあれば、違和感を覚えるかもしれないが。その心配はおそらく無用だろう。
新たなゆっくり一家たちはすりすりしあい、最初の食事である茎を分け合い、下手糞な歌を歌って、つかのまの幸せを満喫していた。
言うまでもなく、壊されるためにある幸せなのだが。
まりさだけはそのことがわかっているらしく、ふと暗い表情を端々で浮かべている。
ゆうかにもそのことはわかっていたが……しかし名状しがたい不快感を覚えた。
やつらはクズにすぎない、汚物にすぎないが家族の愛情、家族の幸せは本物のように見える。
汚物塗れの冷たい部屋でのまずい食事でも、赤ゆたちと「むーしゃーむーしゃーしあわせー!」と歌いながら食べているのを見ると、
ゆうかの最高級ゆっくりフードより美味しいそうに思えてくる。
「ゆぅぅぅぅぅぅ……」
それはゆうかにとって生まれてはじめての嫉妬であった。
だがそれを認めたくなかった。
「どうしたのゆうかちゃん?ごはんはまだまだたくさんあるわよ?」
「ううん……なんでもないよ……」
プライドゆえにおねえさんにもこの心中の葛藤を打ち開けることはできなかった。
しかしすぐにゆうかのその不満は解消されることとなった。
「さあゆうかちゃん!今日のごはんは特別よ!」
そうしておねえさんがゆうかの前に置いたのは、赤ちゃんゆっくりたちだった。
言うまでもなくれいむとまりさの子供たちである。
「だじゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おぎゃあしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「おどおしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
これがすなわち仕事の目的だったのだ。
この赤ゆたちはただゆうかに食べられるためだけに生まれてきたのだ。
赤ゆたちは足を焼き潰されていた。この密室ではどのみち逃げようもないだろうが、この赤ゆたちが終わった存在であることを示す烙印であった。
「ゆっおねがいでず!ばりざだぢのあがぢゃんをだずげでぐだざい!だべないでぐだざい!」
「あああああああああああ!ああああああああああああ!!」
まりさは透明な壁に顔をべったりと貼り付けて懇願している。
れいむもわかっているのかわかっていないのか普段よりいっそう大きな声で喚いている。
ゆうかは手近な赤れいむを一口齧った。
「ゆっん!?ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ばりざのあがぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
美味かった。
ゆうかはかつてこれほどの佳肴を味わったことはなかった。
足を焼かれ、食卓に供された苦痛と恐怖と絶望が赤ゆの餡を甘くしたのだろうが、ゆうかのメンタリティも大きく関わっていたことだろう。
空腹と感情に勝るソースはない。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
齧られた赤れいむは盛大に悲鳴をあげながら床を転げまわっている。
「おねがいじまず!おねがいじまず!なんでもゆうごどぎぎまず!おねがいじまずっ!」
「ああああああああああああああ!!!!!ああああああああああああああああああああああああああ!!!あああああああああああああああああ!!!!!」
目の前で子供を食べられゆく両親たちは狂ったように懇願し号泣している。
ゆうかはなるべくすぐに殺さないように、じっくりじっくりとこの最高のご馳走を味わった。
少しずつ少しずつ齧る。殺さないように。最大限の苦痛と恐怖を与えるために。
おねえさんはその様を満面の笑みを浮かべながら見守っている。
美味と悲鳴の饗宴は延々と続いた。
希望なき赤ゆたち。未来なき赤ゆたち。ただ苦しみながら食べられ、ゆうかの栄養に、両親の悲痛の種になるためだけに産まされた赤ゆたち。
地獄に生まれ、地獄に落ちていくだけの魂。
クズ種に生まれたゆっくりは全身全霊全存在を持って高貴なる希少種に奉仕する定めにあるのだ。
ゆうかの素晴らしい晩餐が終わってから数日後のこと。
そのとき部屋の明かりは落とされていた。
ゆうかが眠る時間が夜であり、そうでないときが昼であった。ゆうかの望むままに昼夜は巡っていた。
「ゆうか……ゆうか……」
「ん?なに?」
誰かがゆうかを呼んでいた。
おねえさんの声ではない。この声は……隣の部屋のまりさだ。
クズ種の分際で希少種であるゆうかを呼びつけるとは何様のつもりなのだろうか?
ゆうかはおねえさんを部屋に据え付けられたブザーで呼んで制裁してもらおうかと一瞬思った。
「ゆうか……はなしがあるんだぜ……きいてほしいんだぜ……」
だが、まりさが何を話すのか少し気になった。
どうせクズ種ごときたいした話ではないのだろうが、ゆうかは今まで他のゆっくりと話した事がない。
後学のためにはなるだろう。クズ種のクズ種たる由縁がわかるかもしれない。
「……話してみなさいよ」
「ゆゆっ、ゆうか……その……もうこれいじょう……ゆっ、れいむをいじめないでほしいんだぜ……」
クズ種らしい厚かましい頼みだった。
「ゆっ、まりさはどうなってもいいんだぜ……ぜんぶまりさがわるいのぜ……だから、れいむは……れいむだけはゆっくりさせてやりたいんだぜ……」
とはいえ、自分を犠牲にしてでもれいむを助けたいという思いは、クズ種にしてはあっぱれなものだった。
しかし、なんだってあの汚物を庇おうとするのだろうかこのまりさは。ゆうかには不可解でならなかった。
どう考えても悪いのはれいむの方だ。過去におねえさんにゲス行為を働いて制裁されるはめになったのもあのれいむのせいに違いない。
「まあいいけど。あのでいぶはきたなすぎるからたたきのめすきにもならないわ」
「ゆっ、それから、それから……おねえさんにもれいむをいじめないように、ゆうかからたのんでほしいんだぜ」
「なんですって!?」
ゆうかは思わず声を荒げてしまった。
たしかに、おねえさんはゆうかの頼みをなんでも聞いてくれる。どんな望みもかなえてくれる。
だが、制裁をやめさせることなどは明らかに出すぎた真似だ。それはおねえさんの裁定を疑うに等しい。
ゆうかは賢い希少種だ。愚かですぐにつけあがるクズ種どもとは違う。飼い主を奴隷呼ばわりする低脳のゲスとは断じて違う。
おねえさんの、人間さんの絶対的な優位性を理解している。いかに尽くしてくれていても、おねえさんが上、ゆうかが下なのだ。
おねえさんがまりされいむをゲスと断じ、制裁を加えるならばそれにはしかるべき理由がある。
おねえさんはゆうかの世界において絶対の正義なのだ。
「あんたなにいってるの!そんなことできるわけないじゃない!だいたいせいさいされるのはあんたらがゲスなんだからでしょ!
いかしてもらってるだけでありがとうございますっていうべきなのに、なにクズしゅのぶんざいでゆうかにさしずしてんのよ!?」
「ど、どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!」
「やっぱりクズはクズね。すこしやさしくしてやるとすぐつけあがるわ。
だいたいあんなくそでいぶどうだっていいじゃない。あんなうんうんのかたまりかばってやってどうしようっていうの?
あんなかざりもかみもない、きたなくてぶざまでみにくいはげまんじゅうなんかどうやったってゆっくりできるわけがないじゃない!」
ゆうかが怒りのままにまくしたてると、今度はまりさの方も怒り出した。
「ゆゆっ!どぼじで!どぼじで!どぼじでそんなことがいえるんだぜ!ひどすぎるんだぜ!このゆっくりなし!あんもなみだもないのかだぜ!
ゆゆっ!なんでそんなにえらそうなんだぜ!?なんでそんなにおもいやりがないんだぜ!?まりさたちとおなじゆっくりなんだぜ!
ゆっれいむは、れいむは、クズなんかじゃないんだぜ!れいむは、れいむは……」
「なんなのかしら?」
部屋に明かりがついた。
そこにはおねえさんがいた。制裁棒を持って。
「ゆぁ……ゆぁ……」
「私のゆうかちゃんと何をお話していたのかしら?ねえ、クズまりさ?」
「ゆる、ゆるしゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
制裁棒が普段より一際強く押し当てられた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まりさの悲鳴がいつもよりもすさまじい。相当ゆっくりできていない状態のようだ。棒の出力を上げているのだろうか。
「は~い連帯責任~」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
眠っていたれいむにも棒が押し当てられた。
制裁は果てしなく続いた。
悲鳴が出せなくなっても制裁は終わらなかった。
気絶したならば、頬をなんども叩いて無理やり起こし、さらなる制裁が加えられた。
おねえさんは相変わらず笑っている。鼻歌交じりに二匹を拷問している。だが、その笑顔の裏に隠された憤怒は相当なもののようだった。
おねえさんはこのゆっくりたちを殺すつもりなのかもしれない。
「お、おねえさん!」
「なあにゆうかちゃん?」
「そいつらをころさないで!」
「えっ?」
「ころしたらゆっくりしちゃうよ!ころさないでもっとせいさいしていってね!」
「まぁ……ゆうかちゃんったらお利口さんね!そうだわ!ゆうかちゃんの言うとおりね!
こいつらはもっともっと苦しめて、ゲスの償いをさせないとね!それにまあ、もしかすると……。
じゃあ今日のところは許してあげるわ。二度とゆうかちゃんに生意気な口を利かないことね!」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」
なぜ、ゆうかが二匹の助命を頼んだのだろうか?
それはゆうか自身にもわからない。
おねえさんの言ったとおり嗜虐心からか?それとも慈悲心?
どちらでもあったのだろう。
それからは、部屋に防音装置が取り付けられ、ほとんどの時間向こうの音が聞こえなくなった。
ゆうかが二匹の悲鳴を聞きたいと頼んだときにだけ防音が解かれた。
まりさは、ときどきゆうかのことを盗み見るようになった。
なにかを訴えるような、悲哀のこもった眼差しで。
ゆうかが睨み返すとまりさはすぐに視線を逸らした。
おねえさんに頼んで制裁してもらおうかとも思ったが、なんとなく気が乗らなかった。
「おねえさん!ゆうかあかちゃんがほしい!」
ゆうかは認めないだろうが、あのゆっくり一家の団欒(すぐに破壊されたが)が餡裏に焼きついていた。
自分も子供たちに囲まれてゆっくりしたいと思ったのだ。
「いいわよゆうかちゃん!ゆうかちゃんの赤ちゃんはきっととてもかわいいでしょうね!」
おねえさんはゆうかの望んだものはなんでも与えてくれる。
それからしばらくして、ゆうかは一本の注射を受けた。
「ちょっとチクっとするけど我慢してね。これはゆっくりの赤ちゃんの種なのよ」
ゆうかはてっきりつがいが与えられるのかと思っていたので少し拍子抜けした。
とはいえ、あのクズ種夫婦のような醜いまぐわいをしなくとも子を成せるというのは良い。
やはり希少種は特別なのだ。
日が経つにつれ、ゆうかの体が膨れていった。
ゆっくりの動物性にんっしんである。
こちらの産み方は時間がかかる上、母体が無防備になるが、丈夫な子供が生まれやすいという大きな長所がある。
植物性にんっしんですべての赤ゆが成体した事例はほぼ皆無といっていい。人間の手で飼育されていたとしてもだ。
「ゆっくり~のひ~、すっきり~のひ~、まったりのひ~、でいぶせいさいのひ~。
ゆうかのちびちゃんたちはやくげんきにうまれてきてね。そうしたら……」
いっぱいすりすりして、お歌を歌って、美味しいものをたくさん食べるのだ。
特に……れいむとまりさに産ませた赤ゆっくりを。
家族を奪われたみじめなクズ種を眺めながら、家族でクズ種の赤ゆを食べるのだ。
それはきっと美味の極致であろう……。
そして、幸せの、ゆっくりの絶頂でもある。
ゆうかは希少種に生まれたことを、おねえさんにかわいがってもらえることを、哀れなクズ種を高みから見下ろせることを感謝した。
やがて、ゆうかの出産の時が訪れた。
「がんばってねゆうかちゃん!」
「ゆぅぅぅん!ゆぅぅぅぅぅぅぅん!」
本来、動物性の出産にはすさまじい苦痛が伴うそうだが、ゆうかは事前に特別な呼吸法を教えられ、痛みがかなり緩和できた。
希少種は何事につけても優遇されるのだ。
「ゆぅぅぅぅぅん!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆぅ……ゆぅ……ゆうかのちびちゃんたちがうまれたよ!」
かわいい三匹の赤ちゃんゆっくりが生まれた。
「おめでとうゆうかちゃん」
おねえさんも祝福してくれる。喚起雀躍といった感じではなかったが優しい微笑みを浮かべてゆうかと赤ゆたちを見守っている。
「ゆうかのちびちゃんたち……ゆゆ?」
ゆうかが、赤ゆたちをよく眺めると、ゆうかにあまり似ていないことに気がついた。
それらには二股の尻尾と獣のような耳があった。ゆっくりが先天的に受け継ぐ祖先の記憶によると、これはちぇん種であった。
だが、ゆうかの子供であることに間違いはない。本能でわかる。
ゆうか種でなかったのは少し残念だが、子供を見れば愛情が際限なく込み上げてきて、そんなことも気にならなくなる。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆゆ~ん!ゆうかのちびちゃんたちかわいすぎちゃってごめんね!」
それからゆうかと赤ちぇんたちはたくさんすりすりして、お歌を歌って、おねえさんが用意してくれた美味しい食べ物をたくさん食べた。
「わきゃりゅよ~わきゃりゅよ~ちょっちぇもわきゃりゅよ~」
「ゆふふふふ……」
この世にこれほどの幸せがあったとは。ゆうかは幸せで頬が張り裂けそうだった。
ゆうかの世界が何倍にも広がったように思えた。
そのうち、赤ゆっくりたちは眠りについた。
ゆうかは子守唄を歌ってあやしていたが、自分もそのうち眠りに落ちていった。
「……しゃ……しゃ……わせー……」
「ゆん?」
ゆうかは奇妙な声を聞いて目覚めた。
「むーしゃーむーしゃーしあわせー」
これはゆっくりが美味しいものを食べるときの歌だ。
それを歌っているのは……あの隣の部屋のゲスまりさだ。
ゆうかは胸騒ぎがして、あたりを眺め回した。
部屋は明かりが落とされていて薄暗い。だが徐々に目が慣れていく。
いない!ゆうかの子供たちがいない!三匹の赤ちぇんたちがいない!
歌に混じってぐちゃぐちゃと咀嚼するような音が聞こえてきた。
ゆうかははっとして、隣の部屋を見た。目を凝らして見た。
「むーしゃーむーしゃーしあわせー」
「ああああああああああああああああ……」
「あんたたち……なにたべてるの!?」
まりさとれいむが食べているのは、赤ちぇんだった。
「わぎゃらにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ゆうきゃおきゃーしゃんだぢゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「むーしゃーむーしゃーしあわせー!」
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゆうかは部屋を隔てる透明な壁に向かって体当たりした。跳ね返された。何度も体当たりした。
だが、壁は傷ひとつつかない。
「やめろぉぉ!!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ゆうかのちびぢゃんをがえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むーぢゃ!むーぢゃ!」
「げぢゅ!ぶぢゅ!ずりゅ!」
「わぎゃらにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ゆうかの見ている前で、次々に赤ちぇんたちが頬張られ、ぐちゃぐちゃと咀嚼され、クズ種どもの栄養として吸収されていく。
クズ種どもは大きく口を開けて汚らしく咀嚼する。口の中に潰された赤ちぇんが見える。
かわいらしいゆうかの子供の破片が汚らしく飛び散る。
かけがえのないゆうかの赤ちゃんたちが厭わしい化け物のようなゲスでいぶの口の奥へ消えていく。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
やめで……やめで……やめでぐだざい!!おねがいじまずぅ!ゆうがのぢびぢゃんだべないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
憤怒の声はやがて哀訴へと変わっていった。
だが、れいむとまりさはゆうかの声には一切耳を貸さず、ひたすら咀嚼と消化を続けていた。
「やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
はっ!?えっ!?今のは……夢!?」
ゆうかが目覚めると、部屋は明るくなっていた。すなわちゆうかにとっての昼だ。
酷い寝汗をかいて全身がぐっしょりだ。
「どうしたのゆうかちゃん!?」
かけつけてきたおねえさんがゆうかを介抱した。
「ゆうかの……ゆうかの……ちびちゃん? ちびちゃんどこ? ちびちゃんたちどこにいったの!?」
「ゆうかちゃん落ち着いて!」
ゆうかはびくびくする眼球を回してで辺り調べた。
いない。ゆうかの三匹の赤ちゃんちぇんはどこにもいない。
まさか、あのゲスゆっくりたちに食われたのか?
「おねえさん! ゆうかのちびちゃんたちどこにいるの!?」
「ゆうかちゃん……ゆうかちゃんの赤ちゃんはまだ産まれてないわよ?」
「えっ?」
おねえさんは何を言っているのだろう?
ゆうかは一瞬思考停止に陥った。
「ゆうかちゃん、まだにんっしんしてから三日も経ってないのよ?
悪い夢を見たのね。あまり興奮するとお腹の赤ちゃんによくないわよ」
「えっ?ええっ!?」
「ほら、落ち着けるお水をあげますからね。はいゆっくり飲んで……」
「……」
おねえさんのくれた水を飲むと、ゆうかはすっかり落ち着いた。
夢……すべては夢だったのか……。
子供を食べられたのは夢?それどころか子供を産んだのも夢?
ゆうかはそう言われるとそんな感じもしてきた。
にんっしんしてからまだ三日……。
三日といっても、ゆうかの世界の日にちの概念は曖昧そのものだ。
数ヶ月が数日といわれても、数日が数ヶ月といわれても、判断する基準はない。
ゆうかの自我には一瞬一瞬過ぎ去っていく現在だけにあった。
おねえさんの言葉だけがゆうかの物差しであった。おねえさんが三日といえば三日なのだろう。
なにか釈然としないものがあったが、これ以上愚図るべきではない。
ゆうかは希少種なのだから。我侭を喚き散らすしか能のないクズ種ではないのだから。
それからゆうかは悶々とした日々を過ごした。
(ゆうかのちびちゃんたち……)
どこかでゆうかの子供たちが助けを求めているような気がした。
気の迷いだということはわかっている。
ゆうかにとってこの部屋が世界のすべてだ。この世界にないものはどこにもないのだ。
「ゆっ?」
隣の部屋のまりさがこちらをにらんでいた。
それはいつもの羨望を込めた眼差しではなく、嘲笑うかのような目だった。
それはクズ種が希少種に対してしていい表情ではなかった。クズ種は見下されるべきものであるのだから。
ゆうかは希少種の威厳と怒気を込めて思い上がったまりさを睨みつけた。
だが、まりさはいつものように視線を逸らさず、真っ向から視線を受け止めた。目と目があった。
ゆうかがどんなに気合を込めても、まりさは嘲りの表情を崩さない。
「この……ゲスゆっくり!」
ゆうかは怒鳴ったが、防音装置が働いているので、向こうに声は聞こえない。
まりさもなにやらゆうかに向かって話し始めた。やはり聞こえないので内容はわからない。
だが、ゆうかは嘲られているように思えた。
「思い知らせてやる!」
希少種がクズ種に舐められて黙っていられるわけがない。
ゆうかはブザーを鳴らして、おねえさんを呼んだ。
「おねえさん!クズまりさとゲスでいぶをせいさいしてね!ゆっくりせいさいしてね!たっぷりせいさいしてね!」
「わかったわゆうかちゃん!あいつらに思い知らせてあげるわ!」
あの晩、まりさがゆうかに嘆願した夜を越えた、さらに凄惨な制裁が始まった。
おねえさんは制裁棒はもちろん大いに使ったが、他にも様々な制裁道具を用いた。
それらは制裁棒と違って、ゆっくりの身体を傷つけるものであった。
焼き鏝が押し当てられた。針の山に座らされた。
口を無理やり開かされ、ドリルで歯を削られた。
皮を剥がれ、わさびをすり込まれた。
だが、ゲスゆっくりたちは屈しなかった。
れいむだけでなくまりさもだ。
可能な限りもがき、あがき、噛みつこうとし、逃れようとし、大口を開いて声の続く限り喚き続けた。
すさまじい憎悪の形相で何事かをおねえさんに喚いた。
ゆうかの方を向いて怒りと悲しみの混じった表情で何事かを訴え続けた。
だが、防音装置のためにそれらの言葉はゆうかの耳にはいっさい届くことはなかった。
ゆうかは憎憎しげに唾を吐いてみせた。たとえ聞こえるとしてもクズ種の言葉などに耳を貸すつもりはないと言わんばかりに。
いい気味だ。いい様だ。希少種様に逆らった報いだ。
ゆうかは溜飲が下がる思いだった。夢の中のちびちゃんたちの仇を討ったような気分になった。
そうだ、夢の中だとしてもクズ種は希少種に逆らってはならないのだ。
夢で犯した罪であってもクズ種は現実で償わねばならないのだ。
制裁は続いた。
まりさは屈したが、それは単に力尽きたためであった。
まりさはれいむと変わりないほどの、化け物じみた厭わしい姿に変わり果てた。
いつ終わるともしれぬ制裁も、やがて終わった。
二匹は殺されなかった。
ゆうかは二匹の死を期待していた。
もうこの二匹の顔を見たくはなかった。
だが、あえておねえさんに頼むことはなかった。
「ゆゆーん!ゆうかにんっしんしたよ!」
ゆうかの体が膨れ始めた。
あの注射を再び受けた覚えはない。
やはり、あれは夢だったのだ。
子供たちはこれから産まれてくるのだ。
「ゆっゆゆ~!ゆうかのちびちゃんたちはやくげんきにうまれてきてね!」
ゆうかが胎教にいそしんでいる最中も、隣の部屋のれいむとまりさはすっきりし続けていた。
「あああ……ああああああ!!!ああああああ!!」
「ああああああああああ!!!ああああああああああああああああ!!」
別室のおねえさんは監視カメラのモニターで二つに分けられた部屋を観察しながら、マイクに向かって声を送った。
「元気な赤ちゃんをゆっくり産んでいってね!」
おねえさんの声は部屋に設置されたスピーカーから三匹のゆっくりに分け隔てなく送られた。
その部屋はゆうかのすべてであった。
だが、これの他に必要なものはなにもなかった。
美味しい食べ物、ふかふかの寝床、楽しい玩具、そこにはなんでもあった。ゆうかの欲しいものはなんでもあった。
何よりもゆうかのことをかわいがってくれるおねえさんがいた。
おねえさんはゆうかが頼めばなんでもしてくれた。そもそもここまで育て上げてくれたのもおねえさんだ。
本来ならおかあさんと呼ぶのが実情に沿っているのだろうが、おねえさんは「おねえさんと呼んでほしい」と頼むので、
ゆうかはそれにわざわざ逆らったりはしなかった。
呼び方はどうあれ絶対的な庇護者であることに間違いはない。
漠然と別に産みの親がいることを認識していたが、どんな姿をしていたかなどは忘却の霧の彼方に呑まれている。
ゆうかが知っている自分以外の生き物はおねえさんだけだった。
いや、もう二匹いた。
ゆうかにとってはそれは真っ当な生き物とは言い難かったが。
ゆうかの部屋は見えない壁で仕切られていた。
見えない壁のもう一方は、寒々として汚らしい空間だった。
うちっぱなしの冷たく硬いコンクリートの部屋に、うんうんや食べ残しなどの汚れが片付けられもせずカビが生えている。
すべてが柔らかく暖かで清潔なゆうかの部屋とは対極だった。
これが二匹のための空間である。
一匹はまりさだった。
どこにでもいるありふれた無価値なゆっくりだ。
おねえさんが言うにはこのまりさは酷いゲスだそうだ。
おねえさんが言うことはいつも正しい。とはいえゆうかはこのまりさがゲスな行為をするところを見たことはなかった。
このまりさはいつも悄然としておねえさんの命令に逆らうことはなかった。
徹底的に制裁され、己の罪と無力さを悟ったのだろう。
もう一匹はれいむだった。
どこにでもいるありふれた無価値なゆっくりだが、姿が普通のれいむとはかなり異なっていた。
飾りどころか髪すらないはげまんじゅうで、体はまりさよりも随分大きい。ゆうかよりも少し大きい。
全身いたるところ古傷に覆われ、常に歪んだ異様な形相を顔面に貼り付けたままで、始終言葉にならぬうめき声をあげていた。
それはもはやゆっくりとさえ呼べない汚物の塊だった。喚き散らす汚物袋、それがれいむ。
このれいむはまともな餡子脳が壊れてしまってまともな言葉をしゃべることができなくなったそうだ。
「でいぶでいぶくそでいぶ!」
「あー!あー!あああああー!」
無気力で従順なまりさと違い、このれいむはおねえさんに対して反抗的だった。
あーあー喚き散らしながら歯をガチガチさせ、隙あらば噛み付かんという様だった。
でいぶと呼ばれるのが相当嫌いなのか、おねえさんがでいぶでいぶと囃し立てるたびにれいむは暴れた。
とはいえ足(底部)を焼き潰されているらしく、なにもできはしないのだが。
れいむが暴れるたびに、おねえさんはこのゲスゆっくりを制裁した。
おねえさんの制裁のやり方は制裁棒と呼んでいる黒くて長い棒をゲスゆっくりどもに押し付けるだけだ。
「ああああああああああああああああ!!あああああああああああ!!ああああああああああああああああああ!!!」
「ゆっ!いうごどぎぎまずがらやめでぐだざぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!ゆっゆるじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
その棒を押し当てられると、ゆっくりはとてもゆっくりできなくなるそうだ。
二匹の喚き声からして相当な苦痛が与えられるのだろう。
ちなみに、まりさ自身は従順だが連帯責任で制裁を受けている。
「どうしてあのにひきはきたないところにすんでいるの?どうしてゆっくりできなくされてるの?」
ゆうかは何度かおねえさんにそう尋ねたことがある。
「ゆうかちゃん、あの二匹はね、お姉さんにとてもゲスな行為を働いたのよ」
「ゲスなこういってどんなこと?」
「お姉さんの大切な財産を著しく損なったのよ」
「ざいさん?」
「ゆうかちゃんの食べ物や宝物を集めるのに必要なものよ」
「ゆうかもゲスなことしたら……」
「そんなことはないわ!あなたは特別なゆっくりなのよ!あなたは希少種なのよ!あなたは可愛がられるべき存在なのよ!」
「きしょうしゅ?」
「そう希少種。あの二匹はクズ種よ。クズ種には何をしてもいいの。殺してもいいの。無価値な存在なのだから。
生かしてあげているだけでもとても慈悲深いことなのよ」
「ふーん……」
二匹が痛めつけられて当然の存在だと言い聞かせられたゆうかは、むしろ二匹の惨めな境遇を楽しむようになった。
もともとゆうか種にはサディスティックな傾向がある。捕食種でないのに他のゆっくりを痛めつけて楽しむことがある。
実際、ゆうかは汚らしい二匹を見るととてもゆっくりできることに気がついた。
もともとゆっくりとした素晴らしいゆうかの天国が、クズ種どもの地獄によってますます高められたのだった。
両者の差異を並べ立てるだけでゆうかはとてもとてもゆっくりできた。
向こう側が見えるようになっているのはゆうかをゆっくりさせてあげるための、おねえさんの配慮だったのだろう。
また、二匹への制裁の一環でもあったのだろう。
まりさがたびたび悲哀と羨望に満ちた目でこちらの方を見ていることにゆうかは気がついた。
そういうときゆうかはこれ見よがしに美味しい食べ物を口いっぱいに頬張った。それからまりさを侮蔑を込めて一瞥したのだ。
そうすると美味しい食べ物がさらに美味しくなったように思われた。
あるとき、ゆうかは自分の手で直接この二匹を痛めつけてみたいと思い立った。
おねえさんはしばしば二匹を制裁し、それを見てゆうかはとてもゆっくりできたが、
自分の手で直接あの憎たらしいゲスの顔面を叩き潰せたらどれだけ爽快なのか……ゆうかはそのことを想像すると矢も盾も止まらなくなった。
「いいわよ。ゆうかちゃんが望むことはなんでも許してあげるわ」
おねえさんはあっさりと許してくれた。
「あのにくたらしいゲスなクズしゅのでいぶをせいさいしたいわ!」
ゆうかはクズ種二匹を同時に制裁するのは、おねえさんがついてくれてるとはいえ少し不安だった。
まりさの方が弱そうだが、ゆうかはれいむの方により強い怒りを抱いていた。
このれいむはクズ種の不具にされたはげまんじゅうの分際でおねえさんにまったく従わず、いつも不愉快な騒音を撒き散らしていたからだ。
いくら制裁されてもまったく従わないふてぶてしい様を見ると、ゆうかのゆっくりまでいくらか減ぜられるように思えた。
この無価値な存在に身の程を思い知らせてやりたいとゆうかは常々思っていた。
ゆうかの部屋にあの汚らしいれいむが連れてこられた。
おねえさんはれいむを紐のようなものでがんじがらめにして、引きずるようにして部屋まで持ってきた。
部屋には事前にシートが敷かれてある。
汚物そのもののれいむが入ってくるだけで部屋が汚れてしまうからだ。
「今紐を解くわ。念のために噛み付かないように猿轡をつけておくわ。……さあて準備よし。
さあ、ゆうかちゃん!このでいぶを好きにしていいわよ!」
「ああああああああああああ!あああああああああああああああ!」
見えない壁に隔てられてではなく、他のゆっくりを目の前にするのはゆうかにとって初めてのことであった。
向こうにいるところにはわからなかったれいむの臭い体臭がむっと匂う。
餡が熱くなるような思いだった。
隣の部屋からまりさが不安そうな面持ちでこちらを伺っている。でいぶのことを心配しているらしい。
このまりさはこんな汚物が好きなんだろうか?悪趣味といわざるをえない。クズ種らしいと言えたが。
「このゲスゆっくり!むかちなゆっくり!うんうんゆっくり!クズ!カス!でいぶ!くそでいぶ!」
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
ゆうかはれいむを罵ると、体当たりを加えた。
れいむは見た目は大きかったが、大した重量はないようで、軽々とすっ飛ばされ、餡を噴出しながらシートに覆われた壁に跳ね返った。
「なにこれぇ!?」
ゆうかはれいむに触れたときかつてない不快感を覚えた。
「どうしたのゆうかちゃん?」
「わからないの!でもぜんぜんゆっくりできないの!」
震えが止まらない。吐き出したい気分だ。
「くそでいぶが汚すぎたせいかしらね……。制裁はお姉さんにまかせてゆうかちゃんはゆっくりしなさい。
後で体を綺麗に拭いてあげるわね」
お姉さんは部屋の隅で突っ伏したれいむを無造作に掴み上げると、部屋の唯一の扉(ゆうかはこの外に出たことがない)から出ていった。
しばらくすると見えない壁で遮られた隣の部屋にれいむを連れたおねえさんが現れた。
おねえさんはれいむを床に放り捨て、あのゆっくりできない棒を押し当てた。
「このゲスでいぶ!私のゆうかちゃんをよくも気持ち悪がらせたわね!死んで償いなさい!」
「ああああああああああああああああ!!!あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「ゆゆっ!やめてほしいんだぜ!れいむをゆるしてやってほしんだぜ!」
まりさがおねえさんの足元にすがり付いて懇願する。
「あなたも連帯責任よ」
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
おねえさんは二匹のゲスに交互にゆっくりできない棒を押し当て続けた。
しばらくして二匹が悲鳴さえあげられなくなると、おねえさんは満足したのか部屋を出てゆうかのところに帰っていった。
「さあゆうかちゃん。綺麗綺麗にしましょうね。それから美味しいものを食べて、お歌を歌って、ふかふかの寝床でおねんねしましょうね!」
「うん……」
それからはゆうかは二匹を直接虐待したいと言い出すことはなかった。
ただ眺めるだけでも充分ゆっくりできるのだ。あんな胸の悪くなるような汚物にわざわざ触れることはなかったのだ。
ゆうかは好きなときに食べ、好きなときに遊び、好きなときに遊び、好きなだけゆっくりしていたが、
二匹はまずい食事と制裁の時間以外には仕事をしていた。
それはすっきりであった。
「ゆっ!ゆっ!ゆぅっ!」
「あああ……ああああ……あああああああああああああああああ!!!!」
それは厭わしい光景だった。
「おお、みにくいみにくい」
ゆうかは思わずそう呟いた。
まりさは何かあるごとにれいむを庇い立てしているところ、れいむのことが好きなようだが、すっきりしたい相手かというとそうでもないようだった。
明らかに不愉快そうに仕事をしている。れいむの方も、このゆっくりはもはや苦痛しか感じないのか、歪んだ形相をいっそう無残なものにしている。
この二匹はおねえさんに命じられてすっきりをしていた。
すっきりを拒否したり、さぼったりしたならばすぐさまあの棒で制裁された。
赤ちゃんゆっくりを作っているということはゆうかにも本能でわかっていた。
やがてれいむの頭から茎が伸び、ゆっくりの実がなった。言うまでもなくゆっくりの植物型にんっしんだ。
ゆっくりの残骸とでも言うべきれいむでも子を成せたことはゆうかには少しの驚きを与えた。まむまむは潰されていなかったらしい。
赤ゆたちも特に異常は見当たらない。といってもただの無価値なクズ種の赤れいむと赤まりさしか生まれなかったが。
「ふん……クズが……」
あるとき、おねえさんはれいむの赤ゆを見てそう呟いたことがある。
クズどもを制裁するときでも大抵は朗らかに笑い、憎しみよりも楽しみで虐待を行う(ゆうかのメンタリティに近い)おねえさんが、一瞬だけドス黒い憎悪を垣間見せたように思えた。
ゆうかは少しの不安を感じたが、それはゆうかではなくれいむとまりさに向けられていることを思い直すと不安は消え去った。
やがて、赤ゆっくりは茎から離れ、生まれでた。
「ゆっきゅちちていっちぇにぇ!」
舌足らずでうざくて騒がしい声でお決まりの挨拶を繰り返している。
「まりさのちびちゃんたちゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」
「ああああああ!ああああああ!あああああああああああ!」
赤ゆはすさまじい姿の親れいむにも普通に懐いていた。本能で親だとわかるのだろう。この先成長することがあれば、違和感を覚えるかもしれないが。その心配はおそらく無用だろう。
新たなゆっくり一家たちはすりすりしあい、最初の食事である茎を分け合い、下手糞な歌を歌って、つかのまの幸せを満喫していた。
言うまでもなく、壊されるためにある幸せなのだが。
まりさだけはそのことがわかっているらしく、ふと暗い表情を端々で浮かべている。
ゆうかにもそのことはわかっていたが……しかし名状しがたい不快感を覚えた。
やつらはクズにすぎない、汚物にすぎないが家族の愛情、家族の幸せは本物のように見える。
汚物塗れの冷たい部屋でのまずい食事でも、赤ゆたちと「むーしゃーむーしゃーしあわせー!」と歌いながら食べているのを見ると、
ゆうかの最高級ゆっくりフードより美味しいそうに思えてくる。
「ゆぅぅぅぅぅぅ……」
それはゆうかにとって生まれてはじめての嫉妬であった。
だがそれを認めたくなかった。
「どうしたのゆうかちゃん?ごはんはまだまだたくさんあるわよ?」
「ううん……なんでもないよ……」
プライドゆえにおねえさんにもこの心中の葛藤を打ち開けることはできなかった。
しかしすぐにゆうかのその不満は解消されることとなった。
「さあゆうかちゃん!今日のごはんは特別よ!」
そうしておねえさんがゆうかの前に置いたのは、赤ちゃんゆっくりたちだった。
言うまでもなくれいむとまりさの子供たちである。
「だじゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おぎゃあしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「おどおしゃあぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
これがすなわち仕事の目的だったのだ。
この赤ゆたちはただゆうかに食べられるためだけに生まれてきたのだ。
赤ゆたちは足を焼き潰されていた。この密室ではどのみち逃げようもないだろうが、この赤ゆたちが終わった存在であることを示す烙印であった。
「ゆっおねがいでず!ばりざだぢのあがぢゃんをだずげでぐだざい!だべないでぐだざい!」
「あああああああああああ!ああああああああああああ!!」
まりさは透明な壁に顔をべったりと貼り付けて懇願している。
れいむもわかっているのかわかっていないのか普段よりいっそう大きな声で喚いている。
ゆうかは手近な赤れいむを一口齧った。
「ゆっん!?ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ばりざのあがぢゃんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
美味かった。
ゆうかはかつてこれほどの佳肴を味わったことはなかった。
足を焼かれ、食卓に供された苦痛と恐怖と絶望が赤ゆの餡を甘くしたのだろうが、ゆうかのメンタリティも大きく関わっていたことだろう。
空腹と感情に勝るソースはない。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁ!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
齧られた赤れいむは盛大に悲鳴をあげながら床を転げまわっている。
「おねがいじまず!おねがいじまず!なんでもゆうごどぎぎまず!おねがいじまずっ!」
「ああああああああああああああ!!!!!ああああああああああああああああああああああああああ!!!あああああああああああああああああ!!!!!」
目の前で子供を食べられゆく両親たちは狂ったように懇願し号泣している。
ゆうかはなるべくすぐに殺さないように、じっくりじっくりとこの最高のご馳走を味わった。
少しずつ少しずつ齧る。殺さないように。最大限の苦痛と恐怖を与えるために。
おねえさんはその様を満面の笑みを浮かべながら見守っている。
美味と悲鳴の饗宴は延々と続いた。
希望なき赤ゆたち。未来なき赤ゆたち。ただ苦しみながら食べられ、ゆうかの栄養に、両親の悲痛の種になるためだけに産まされた赤ゆたち。
地獄に生まれ、地獄に落ちていくだけの魂。
クズ種に生まれたゆっくりは全身全霊全存在を持って高貴なる希少種に奉仕する定めにあるのだ。
ゆうかの素晴らしい晩餐が終わってから数日後のこと。
そのとき部屋の明かりは落とされていた。
ゆうかが眠る時間が夜であり、そうでないときが昼であった。ゆうかの望むままに昼夜は巡っていた。
「ゆうか……ゆうか……」
「ん?なに?」
誰かがゆうかを呼んでいた。
おねえさんの声ではない。この声は……隣の部屋のまりさだ。
クズ種の分際で希少種であるゆうかを呼びつけるとは何様のつもりなのだろうか?
ゆうかはおねえさんを部屋に据え付けられたブザーで呼んで制裁してもらおうかと一瞬思った。
「ゆうか……はなしがあるんだぜ……きいてほしいんだぜ……」
だが、まりさが何を話すのか少し気になった。
どうせクズ種ごときたいした話ではないのだろうが、ゆうかは今まで他のゆっくりと話した事がない。
後学のためにはなるだろう。クズ種のクズ種たる由縁がわかるかもしれない。
「……話してみなさいよ」
「ゆゆっ、ゆうか……その……もうこれいじょう……ゆっ、れいむをいじめないでほしいんだぜ……」
クズ種らしい厚かましい頼みだった。
「ゆっ、まりさはどうなってもいいんだぜ……ぜんぶまりさがわるいのぜ……だから、れいむは……れいむだけはゆっくりさせてやりたいんだぜ……」
とはいえ、自分を犠牲にしてでもれいむを助けたいという思いは、クズ種にしてはあっぱれなものだった。
しかし、なんだってあの汚物を庇おうとするのだろうかこのまりさは。ゆうかには不可解でならなかった。
どう考えても悪いのはれいむの方だ。過去におねえさんにゲス行為を働いて制裁されるはめになったのもあのれいむのせいに違いない。
「まあいいけど。あのでいぶはきたなすぎるからたたきのめすきにもならないわ」
「ゆっ、それから、それから……おねえさんにもれいむをいじめないように、ゆうかからたのんでほしいんだぜ」
「なんですって!?」
ゆうかは思わず声を荒げてしまった。
たしかに、おねえさんはゆうかの頼みをなんでも聞いてくれる。どんな望みもかなえてくれる。
だが、制裁をやめさせることなどは明らかに出すぎた真似だ。それはおねえさんの裁定を疑うに等しい。
ゆうかは賢い希少種だ。愚かですぐにつけあがるクズ種どもとは違う。飼い主を奴隷呼ばわりする低脳のゲスとは断じて違う。
おねえさんの、人間さんの絶対的な優位性を理解している。いかに尽くしてくれていても、おねえさんが上、ゆうかが下なのだ。
おねえさんがまりされいむをゲスと断じ、制裁を加えるならばそれにはしかるべき理由がある。
おねえさんはゆうかの世界において絶対の正義なのだ。
「あんたなにいってるの!そんなことできるわけないじゃない!だいたいせいさいされるのはあんたらがゲスなんだからでしょ!
いかしてもらってるだけでありがとうございますっていうべきなのに、なにクズしゅのぶんざいでゆうかにさしずしてんのよ!?」
「ど、どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉ!」
「やっぱりクズはクズね。すこしやさしくしてやるとすぐつけあがるわ。
だいたいあんなくそでいぶどうだっていいじゃない。あんなうんうんのかたまりかばってやってどうしようっていうの?
あんなかざりもかみもない、きたなくてぶざまでみにくいはげまんじゅうなんかどうやったってゆっくりできるわけがないじゃない!」
ゆうかが怒りのままにまくしたてると、今度はまりさの方も怒り出した。
「ゆゆっ!どぼじで!どぼじで!どぼじでそんなことがいえるんだぜ!ひどすぎるんだぜ!このゆっくりなし!あんもなみだもないのかだぜ!
ゆゆっ!なんでそんなにえらそうなんだぜ!?なんでそんなにおもいやりがないんだぜ!?まりさたちとおなじゆっくりなんだぜ!
ゆっれいむは、れいむは、クズなんかじゃないんだぜ!れいむは、れいむは……」
「なんなのかしら?」
部屋に明かりがついた。
そこにはおねえさんがいた。制裁棒を持って。
「ゆぁ……ゆぁ……」
「私のゆうかちゃんと何をお話していたのかしら?ねえ、クズまりさ?」
「ゆる、ゆるしゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
制裁棒が普段より一際強く押し当てられた。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まりさの悲鳴がいつもよりもすさまじい。相当ゆっくりできていない状態のようだ。棒の出力を上げているのだろうか。
「は~い連帯責任~」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
眠っていたれいむにも棒が押し当てられた。
制裁は果てしなく続いた。
悲鳴が出せなくなっても制裁は終わらなかった。
気絶したならば、頬をなんども叩いて無理やり起こし、さらなる制裁が加えられた。
おねえさんは相変わらず笑っている。鼻歌交じりに二匹を拷問している。だが、その笑顔の裏に隠された憤怒は相当なもののようだった。
おねえさんはこのゆっくりたちを殺すつもりなのかもしれない。
「お、おねえさん!」
「なあにゆうかちゃん?」
「そいつらをころさないで!」
「えっ?」
「ころしたらゆっくりしちゃうよ!ころさないでもっとせいさいしていってね!」
「まぁ……ゆうかちゃんったらお利口さんね!そうだわ!ゆうかちゃんの言うとおりね!
こいつらはもっともっと苦しめて、ゲスの償いをさせないとね!それにまあ、もしかすると……。
じゃあ今日のところは許してあげるわ。二度とゆうかちゃんに生意気な口を利かないことね!」
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ゛っ……」
なぜ、ゆうかが二匹の助命を頼んだのだろうか?
それはゆうか自身にもわからない。
おねえさんの言ったとおり嗜虐心からか?それとも慈悲心?
どちらでもあったのだろう。
それからは、部屋に防音装置が取り付けられ、ほとんどの時間向こうの音が聞こえなくなった。
ゆうかが二匹の悲鳴を聞きたいと頼んだときにだけ防音が解かれた。
まりさは、ときどきゆうかのことを盗み見るようになった。
なにかを訴えるような、悲哀のこもった眼差しで。
ゆうかが睨み返すとまりさはすぐに視線を逸らした。
おねえさんに頼んで制裁してもらおうかとも思ったが、なんとなく気が乗らなかった。
「おねえさん!ゆうかあかちゃんがほしい!」
ゆうかは認めないだろうが、あのゆっくり一家の団欒(すぐに破壊されたが)が餡裏に焼きついていた。
自分も子供たちに囲まれてゆっくりしたいと思ったのだ。
「いいわよゆうかちゃん!ゆうかちゃんの赤ちゃんはきっととてもかわいいでしょうね!」
おねえさんはゆうかの望んだものはなんでも与えてくれる。
それからしばらくして、ゆうかは一本の注射を受けた。
「ちょっとチクっとするけど我慢してね。これはゆっくりの赤ちゃんの種なのよ」
ゆうかはてっきりつがいが与えられるのかと思っていたので少し拍子抜けした。
とはいえ、あのクズ種夫婦のような醜いまぐわいをしなくとも子を成せるというのは良い。
やはり希少種は特別なのだ。
日が経つにつれ、ゆうかの体が膨れていった。
ゆっくりの動物性にんっしんである。
こちらの産み方は時間がかかる上、母体が無防備になるが、丈夫な子供が生まれやすいという大きな長所がある。
植物性にんっしんですべての赤ゆが成体した事例はほぼ皆無といっていい。人間の手で飼育されていたとしてもだ。
「ゆっくり~のひ~、すっきり~のひ~、まったりのひ~、でいぶせいさいのひ~。
ゆうかのちびちゃんたちはやくげんきにうまれてきてね。そうしたら……」
いっぱいすりすりして、お歌を歌って、美味しいものをたくさん食べるのだ。
特に……れいむとまりさに産ませた赤ゆっくりを。
家族を奪われたみじめなクズ種を眺めながら、家族でクズ種の赤ゆを食べるのだ。
それはきっと美味の極致であろう……。
そして、幸せの、ゆっくりの絶頂でもある。
ゆうかは希少種に生まれたことを、おねえさんにかわいがってもらえることを、哀れなクズ種を高みから見下ろせることを感謝した。
やがて、ゆうかの出産の時が訪れた。
「がんばってねゆうかちゃん!」
「ゆぅぅぅん!ゆぅぅぅぅぅぅぅん!」
本来、動物性の出産にはすさまじい苦痛が伴うそうだが、ゆうかは事前に特別な呼吸法を教えられ、痛みがかなり緩和できた。
希少種は何事につけても優遇されるのだ。
「ゆぅぅぅぅぅん!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆっきゅりー!」
「ゆぅ……ゆぅ……ゆうかのちびちゃんたちがうまれたよ!」
かわいい三匹の赤ちゃんゆっくりが生まれた。
「おめでとうゆうかちゃん」
おねえさんも祝福してくれる。喚起雀躍といった感じではなかったが優しい微笑みを浮かべてゆうかと赤ゆたちを見守っている。
「ゆうかのちびちゃんたち……ゆゆ?」
ゆうかが、赤ゆたちをよく眺めると、ゆうかにあまり似ていないことに気がついた。
それらには二股の尻尾と獣のような耳があった。ゆっくりが先天的に受け継ぐ祖先の記憶によると、これはちぇん種であった。
だが、ゆうかの子供であることに間違いはない。本能でわかる。
ゆうか種でなかったのは少し残念だが、子供を見れば愛情が際限なく込み上げてきて、そんなことも気にならなくなる。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆっきゅりちていっちぇにぇ!」
「ゆゆ~ん!ゆうかのちびちゃんたちかわいすぎちゃってごめんね!」
それからゆうかと赤ちぇんたちはたくさんすりすりして、お歌を歌って、おねえさんが用意してくれた美味しい食べ物をたくさん食べた。
「わきゃりゅよ~わきゃりゅよ~ちょっちぇもわきゃりゅよ~」
「ゆふふふふ……」
この世にこれほどの幸せがあったとは。ゆうかは幸せで頬が張り裂けそうだった。
ゆうかの世界が何倍にも広がったように思えた。
そのうち、赤ゆっくりたちは眠りについた。
ゆうかは子守唄を歌ってあやしていたが、自分もそのうち眠りに落ちていった。
「……しゃ……しゃ……わせー……」
「ゆん?」
ゆうかは奇妙な声を聞いて目覚めた。
「むーしゃーむーしゃーしあわせー」
これはゆっくりが美味しいものを食べるときの歌だ。
それを歌っているのは……あの隣の部屋のゲスまりさだ。
ゆうかは胸騒ぎがして、あたりを眺め回した。
部屋は明かりが落とされていて薄暗い。だが徐々に目が慣れていく。
いない!ゆうかの子供たちがいない!三匹の赤ちぇんたちがいない!
歌に混じってぐちゃぐちゃと咀嚼するような音が聞こえてきた。
ゆうかははっとして、隣の部屋を見た。目を凝らして見た。
「むーしゃーむーしゃーしあわせー」
「ああああああああああああああああ……」
「あんたたち……なにたべてるの!?」
まりさとれいむが食べているのは、赤ちぇんだった。
「わぎゃらにゃいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ゆうきゃおきゃーしゃんだぢゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「むーしゃーむーしゃーしあわせー!」
「あああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ゆうかは部屋を隔てる透明な壁に向かって体当たりした。跳ね返された。何度も体当たりした。
だが、壁は傷ひとつつかない。
「やめろぉぉ!!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!ゆうかのちびぢゃんをがえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「むーぢゃ!むーぢゃ!」
「げぢゅ!ぶぢゅ!ずりゅ!」
「わぎゃらにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ゆうかの見ている前で、次々に赤ちぇんたちが頬張られ、ぐちゃぐちゃと咀嚼され、クズ種どもの栄養として吸収されていく。
クズ種どもは大きく口を開けて汚らしく咀嚼する。口の中に潰された赤ちぇんが見える。
かわいらしいゆうかの子供の破片が汚らしく飛び散る。
かけがえのないゆうかの赤ちゃんたちが厭わしい化け物のようなゲスでいぶの口の奥へ消えていく。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
やめで……やめで……やめでぐだざい!!おねがいじまずぅ!ゆうがのぢびぢゃんだべないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
憤怒の声はやがて哀訴へと変わっていった。
だが、れいむとまりさはゆうかの声には一切耳を貸さず、ひたすら咀嚼と消化を続けていた。
「やめでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
はっ!?えっ!?今のは……夢!?」
ゆうかが目覚めると、部屋は明るくなっていた。すなわちゆうかにとっての昼だ。
酷い寝汗をかいて全身がぐっしょりだ。
「どうしたのゆうかちゃん!?」
かけつけてきたおねえさんがゆうかを介抱した。
「ゆうかの……ゆうかの……ちびちゃん? ちびちゃんどこ? ちびちゃんたちどこにいったの!?」
「ゆうかちゃん落ち着いて!」
ゆうかはびくびくする眼球を回してで辺り調べた。
いない。ゆうかの三匹の赤ちゃんちぇんはどこにもいない。
まさか、あのゲスゆっくりたちに食われたのか?
「おねえさん! ゆうかのちびちゃんたちどこにいるの!?」
「ゆうかちゃん……ゆうかちゃんの赤ちゃんはまだ産まれてないわよ?」
「えっ?」
おねえさんは何を言っているのだろう?
ゆうかは一瞬思考停止に陥った。
「ゆうかちゃん、まだにんっしんしてから三日も経ってないのよ?
悪い夢を見たのね。あまり興奮するとお腹の赤ちゃんによくないわよ」
「えっ?ええっ!?」
「ほら、落ち着けるお水をあげますからね。はいゆっくり飲んで……」
「……」
おねえさんのくれた水を飲むと、ゆうかはすっかり落ち着いた。
夢……すべては夢だったのか……。
子供を食べられたのは夢?それどころか子供を産んだのも夢?
ゆうかはそう言われるとそんな感じもしてきた。
にんっしんしてからまだ三日……。
三日といっても、ゆうかの世界の日にちの概念は曖昧そのものだ。
数ヶ月が数日といわれても、数日が数ヶ月といわれても、判断する基準はない。
ゆうかの自我には一瞬一瞬過ぎ去っていく現在だけにあった。
おねえさんの言葉だけがゆうかの物差しであった。おねえさんが三日といえば三日なのだろう。
なにか釈然としないものがあったが、これ以上愚図るべきではない。
ゆうかは希少種なのだから。我侭を喚き散らすしか能のないクズ種ではないのだから。
それからゆうかは悶々とした日々を過ごした。
(ゆうかのちびちゃんたち……)
どこかでゆうかの子供たちが助けを求めているような気がした。
気の迷いだということはわかっている。
ゆうかにとってこの部屋が世界のすべてだ。この世界にないものはどこにもないのだ。
「ゆっ?」
隣の部屋のまりさがこちらをにらんでいた。
それはいつもの羨望を込めた眼差しではなく、嘲笑うかのような目だった。
それはクズ種が希少種に対してしていい表情ではなかった。クズ種は見下されるべきものであるのだから。
ゆうかは希少種の威厳と怒気を込めて思い上がったまりさを睨みつけた。
だが、まりさはいつものように視線を逸らさず、真っ向から視線を受け止めた。目と目があった。
ゆうかがどんなに気合を込めても、まりさは嘲りの表情を崩さない。
「この……ゲスゆっくり!」
ゆうかは怒鳴ったが、防音装置が働いているので、向こうに声は聞こえない。
まりさもなにやらゆうかに向かって話し始めた。やはり聞こえないので内容はわからない。
だが、ゆうかは嘲られているように思えた。
「思い知らせてやる!」
希少種がクズ種に舐められて黙っていられるわけがない。
ゆうかはブザーを鳴らして、おねえさんを呼んだ。
「おねえさん!クズまりさとゲスでいぶをせいさいしてね!ゆっくりせいさいしてね!たっぷりせいさいしてね!」
「わかったわゆうかちゃん!あいつらに思い知らせてあげるわ!」
あの晩、まりさがゆうかに嘆願した夜を越えた、さらに凄惨な制裁が始まった。
おねえさんは制裁棒はもちろん大いに使ったが、他にも様々な制裁道具を用いた。
それらは制裁棒と違って、ゆっくりの身体を傷つけるものであった。
焼き鏝が押し当てられた。針の山に座らされた。
口を無理やり開かされ、ドリルで歯を削られた。
皮を剥がれ、わさびをすり込まれた。
だが、ゲスゆっくりたちは屈しなかった。
れいむだけでなくまりさもだ。
可能な限りもがき、あがき、噛みつこうとし、逃れようとし、大口を開いて声の続く限り喚き続けた。
すさまじい憎悪の形相で何事かをおねえさんに喚いた。
ゆうかの方を向いて怒りと悲しみの混じった表情で何事かを訴え続けた。
だが、防音装置のためにそれらの言葉はゆうかの耳にはいっさい届くことはなかった。
ゆうかは憎憎しげに唾を吐いてみせた。たとえ聞こえるとしてもクズ種の言葉などに耳を貸すつもりはないと言わんばかりに。
いい気味だ。いい様だ。希少種様に逆らった報いだ。
ゆうかは溜飲が下がる思いだった。夢の中のちびちゃんたちの仇を討ったような気分になった。
そうだ、夢の中だとしてもクズ種は希少種に逆らってはならないのだ。
夢で犯した罪であってもクズ種は現実で償わねばならないのだ。
制裁は続いた。
まりさは屈したが、それは単に力尽きたためであった。
まりさはれいむと変わりないほどの、化け物じみた厭わしい姿に変わり果てた。
いつ終わるともしれぬ制裁も、やがて終わった。
二匹は殺されなかった。
ゆうかは二匹の死を期待していた。
もうこの二匹の顔を見たくはなかった。
だが、あえておねえさんに頼むことはなかった。
「ゆゆーん!ゆうかにんっしんしたよ!」
ゆうかの体が膨れ始めた。
あの注射を再び受けた覚えはない。
やはり、あれは夢だったのだ。
子供たちはこれから産まれてくるのだ。
「ゆっゆゆ~!ゆうかのちびちゃんたちはやくげんきにうまれてきてね!」
ゆうかが胎教にいそしんでいる最中も、隣の部屋のれいむとまりさはすっきりし続けていた。
「あああ……ああああああ!!!ああああああ!!」
「ああああああああああ!!!ああああああああああああああああ!!」
別室のおねえさんは監視カメラのモニターで二つに分けられた部屋を観察しながら、マイクに向かって声を送った。
「元気な赤ちゃんをゆっくり産んでいってね!」
おねえさんの声は部屋に設置されたスピーカーから三匹のゆっくりに分け隔てなく送られた。