ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1478 身の程知らず
最終更新:
ankoss
-
view
「むきゅ、むきゅぅ」
ぱちゅりーが、唸っている。
「ぱちゅりー、おわったよ」
「ゆっくりしてないよ? どうしたの?」
れいむとまりさがやってきて、ぱちゅりーの様子を訝しげにしていた。
「むきゅぅ……ぱちゅは……すごいことを知ってしまったかもしれないわ」
「ゆゆ?」
「ゆ! それはにんげんさんのごほんだね!」
ぱちゅりーの前には一冊の週刊誌が広げて置いてあった。先ほどからそれを読んでぱち
ゅりーは唸っていたのである。
「さすがぱちゅりーだね! にんげんさんのごほんが読めるなんて!」
「いんてりだね! ゆっくりしてるね!」
尊敬の念を余すことなく現して褒め称えるれいむとまりさに、ぱちゅりーはいい気分に
なりつつも、すぐに険しい顔になった。
「むきゅ、とにかく、今日のおしごとは終わったのね」
「ゆん」
「ゆん」
「それじゃ、ゆっくりしてなさい。ぱちゅは……このごほんを読んでるから」
「「ゆん! ゆっくりするよ!」」
れいむとまりさがとてもゆっくりした顔でぽよんぽよんと跳ねていった。ぱちゅりーは
その後姿からすぐに視線を雑誌に転じる。
「むきゅきゅきゅきゅ……これは……大変なことだわ」
「たっりいなあ、ゆっくり当番なんて」
翌日、一人の青年が公園に足を踏み入れた。
「……あんなの、さっさと駆除しちゃえばいいのに」
ぼそりと小声で呟いた。
その公園には、野良ゆっくりが集められていた。当初は駆除する予定だったのだが、色
んなところから物言いがついたりした挙句、公園の清掃や野菜栽培などの仕事をさせる代
わりに地域猫ならぬ地域ゆっくりとして生活する権利を与えることになった。
むろん、それをしなければ駆除されるのだ。
公園の清掃など、人間がその気になればそれほどの手間ではない。
野菜の栽培と言っても少量で、ゆっくりたちが食べればそれでお仕舞いだ。お世辞にも
形や味がいいとは言い難く、余剰があってもあまり人間は食べたがらないだろう。
仕事といっても、それで人間が得するわけではない。
自分たちで作った野菜だけでは足りないので、結局は人間が食べ物を与えることになる
し、家を作る段ボール箱やらビニールシートやらも提供している。
トータルすれば、人間たちの持ち出しであり、人間たちにしてみれば野良ゆっくりたち
に温情をかけてやっていると思っている。
青年は、そのゆっくりたちの仕事ぶりを監視する当番だった。
「ま、ここの連中優秀だから、てきとーでいいけどな」
この公園の野良ゆっくりは、一匹の賢いぱちゅりーに率いられて極めて効率的に仕事を
していた。そのため、あまり細かく仕事を見ないでも大丈夫であった。
「あ、いたいた」
公園の一角に、ゆっくりたちが集まっている。
仕事をしている様子ではないのでもう終わったのかと青年は思った。
「じゃ、あとはこいつだな」
青年はポケットから一枚の紙を出した。そこには、ゆっくりたちは仕事をすることでこ
の公園に住ませてもらい、食べ物も貰っていることを説き、ゆえに人間への感謝を忘れぬ
ようにといったことが書かれている。
これを読み上げて、ゆっくりたちに復唱させるのだ。
「おーぅ」
「むきゅっ!」
「ゆゆ!」
「ゆぅぅぅ!」
「……ん?」
青年は何気なく声をかけたが、反応の剣呑さにやや戸惑った。まるで挑むような険しい
顔をどいつもこいつもしている。
「なんだよ。なんかあったんか」
さっさと終わると思っていたのに、なにやらトラブル発生かと青年はあからさまに億劫
そうな気だるい声で尋ねた。
「人間さん、ぱちゅたちは……もうだまされないわよ」
「んー?」
「むきゅ! その紙! いつものぱちゅたちは仕事をさせてもらってここに住ませてもら
ってるんだから感謝しろとか書いてあるんでしょ!」
「あ? うん、そうだけど」
青年は答えつつ、確かにゆっくりたちから敵意を感じた。
「なんなんだよ、いったい」
「人間さん、ぱちゅたちは、待遇の改善を要求するわ!」
「……は?」
「ぱちゅはごほんを読んで知ったのよ! 人間さんたちは、ぱちゅたちをだましてタダ同
然に働かせて莫大な利益を上げているわ!」
「……いや、なに言ってんの、お前」
青年は呆然としつつ言った。
「ゆっくりかいぜんしてね!」
「うそつきのにんげんさんはゆっくりはんせいしてあまあまをたくさんちょうだいね!」
「ぷくぅぅぅぅ、れいむたち、怒ってるんだよ!」
「ぱちゅにぜんぶ聞いたよ! よくもいままでだましてくれたね!」
「このいなかもの! 人間さんを信じていっしょうけんめいおしごとしてたのよ!」
「かいじぇん! かいじぇん!」
「もっちょゆっくちさせりょお!」
「「「えいえい、ゆー!」」」
「「「たいぐうがかいっぜんされるまで、ゆっくりしないで戦うよ!」」」
「「「ゆっくちたたきゃうよ!」」」
ゆっくりたちが一斉に声を上げる。
「……」
何が何やらわからぬ空白状態からなんとか立ち直った青年であったが、さて、なにをど
う言ったものかと困惑していた。
「むきゅ! 要求を伝えるわ!」
青年の沈黙を、なんか凄く都合よく解釈しているらしいぱちゅりーが堂々と言った。
要求の中身は、要するにもっとあまあまよこせを筆頭に、権利の拡大であった。
今は、この公園から出てはいけないことになっているが、それの撤廃も求めていた。
「あー、待ってろ。相談してくるから」
青年は、そう言って去って行った。
自分たちの勝利を疑っていないような、明るいゆっくりたちの声がその背中に浴びせら
れた。
「……というわけなんす」
「……はあ、それはまた」
青年は、自分の次の当番であり、日頃から親しくしている男の所に来て一部始終を報告
した。
「ごほんを読んだ……ねえ。なんか捨ててあった雑誌でも読んだのかな、あのぱちゅりー、
少しだけ漢字読めるんだよ」
「へえ、それは賢いすね。……そんな賢いのがなんでまたあんな馬鹿なこと言い出したの
やら」
「……所詮、ゆっくりだからねえ。自分のいいように考えちゃうんだろ」
「で、どうします?」
「まあ、他の連中にも相談しよう。その前に、俺も実際この目で見てみたいな」
男と青年は連れ立って公園に向かった。
「ああ!」
公園に近付いてくると、公園のそばに住んでいる老人がいて、男と青年に声をかけてき
た。
「大変なことになってるんだ。公園のゆっくりたちが」
「「え?」」
とにかく、見ればわかると言われて二人は公園に向かった。その間に手短に青年が見た
ことを話すと、老人は、
「ああ、そういうことか、確かにそんなようなことを言っていた」
と、言った。
「うわ! なんだこれ!」
「おいおいおい、なにやってんだ!」
「ごらんのとおりさ」
そこには、野良ゆっくりたちが歓声を上げながら公園を荒らす姿があった。
何匹ものゆっくりたちがゴミ箱を押し倒した。
いつもきれいに掃除されている地面にゴミがぶちまかれる。
花壇の花はめちゃくちゃに引き抜かれ踏み荒らされている。
野菜も収穫され、食い散らかされている。
「おいこら、何してんだ!」
「むきゅ! 人間さん! 遅いわよ!」
言われてみれば、男のところで話し込んでしまってけっこうな時間が経っていた。しか
し、まさかこんなことになっているとは思いもしなかった。
「待遇が改善されるまで、もうお仕事はしないわ! そのゴミも片付けないし、お花のお
手入れもしないし、野菜も作らないわ!」
「そうだよ! わかったらはやくかいぜんしてね!」
「ゆっへっへ、まりさたちがお仕事しないとにんげんさんたちも困るのぜ?」
「れいむたちのろーどーにせーとーなほーしゅーをちょうだいね!」
「「「せーとーなほーしゅーを!」」」
「「「えいえい、ゆー!」」」
気勢を上げるゆっくりたちを、青年と男と老人は、これ以上はありえないというぐらい
に冷めた目で見ていた。
三人が何も言わずに去った後も、ゆっくりたちのシュプレヒコールは続いた。
やがて、何人もの人間がやってきた。中には、先ほどの三人もいる。
「ゆふふ! にんげんさんたち、おおあわてだよ!」
「これならたいぐうがかいっぜんされるのもすぐなのぜ!」
「あまあまをむーしゃむーしゃできるね!」
「ゆわーい、あまあまはゆっくちできりゅよ!」
「ゆん、そうだね、ゆっくりできるね!」
「むきゅ! 確かあれは偉い人だわ」
ぱちゅりーが、一団の先頭に立っている男を見て言った。
「やあ……こりゃひどいな」
「むきゅ! にんげんさん! ぱちゅたちの要求については聞いてるわね?」
「ああ、聞いてるよ」
「それなら……」
「よーく聞いて欲しい」
男はそう言うと、説明を始めた。
ゆっくりたちの労働で、別段人間は得をしていないこと、この公園に住ませ食べ物を上
げるのは、人間の温情であることなど。
「むきゅ! もうだまされないって言ったはずよ!」
「そうだよ! ゆっくりできないうそをつかないでね!」
「いいかげんにするんだぜ! まりさたち、ほんとうに怒るのぜ!」
散々に罵声を浴びせられた男は、真剣な顔で言った。
「これで最後だよ」
と。
そして、さらに言った。
「すぐにゴミを片付けて、花壇にはお花の、畑にはお野菜の種をまくんだ」
「むきゅ! 断るわ!」
「「「ゆっくりおことわりだよ!」」」
ぱりゅりーたちは、断固として拒否した。
「こりゃ駄目だ」
男は後ろを振り返って言った。
「おし、じゃあ」
と、青年が前に出てきた。分厚いビニール袋を持っている。
「ゆっ! な、なにをするの!」
ぱちゅりーのすぐ隣にいたれいむの髪を掴んで持ち上げて袋に入れる。
「ゆ、ゆっくりできないよ! ここからだして!」
「ゆっくりできないって言ってるよ!」
「だしてあげてね! ぷくぅぅぅ!」
「おきゃあしゃんをかえちぇぇぇ!」
「むきゅ! 大丈夫よ!」
ぱちゅりーが自信満々に断言した。
「人間さんたちは、ぱちゅたちの労働力を失うわけにはいかないから、絶対に殺したりで
きないわ」
それを聞いて、ゆっくりたちはほっと安堵する。
「むきゅ、人間さん、下手な脅しは止めなさい」
ぱちゅりーがそう言った次の瞬間、青年の足が袋に入っていたれいむを思い切り踏み潰
した。
れいむの中身の餡子が飛び散ってビニール袋の内側に貼り付く。
「む、きゅ?」
「ゆぅ?」
「ゆゆゆ?」
「ゆ、ゆわああああ、れいむぅぅぅぅぅ!」
「おきゃあしゃんぎゃあああああ!」
袋の中で完全に潰れてぴくりとも動かなくなったれいむを見て、ゆっくりたちはパニッ
クに陥る。
「む……むきゅ! 人間さん! 一人殺せば言うことを聞くと思ってるのね! そうはい
かないわ! みんな、正当な権利のために死を覚悟して戦うつもりよ!」
ぱちゅりーが気丈に言い放った。
「よし、やれ」
袋を持った人間たちが進み出て、無造作にゆっくりを袋に入れて、先ほどのれいむのよ
うに袋越しに踏み潰し始めた。
一匹二匹三匹四匹。
死体の数が増えるたびに、ぱちゅりーの自信は揺らいでいく。
「や、やべでえええ! おしごとじます! おしごとするがら、ころざないでえええ!」
とうとう、一匹のまりさが言った。他の生き残りも一斉にそれに続く。
湧き上がった命乞いの声を聞きながら、ぱちゅりーは、むきゅ、むきゅ、ともはや半ば
精神を錯乱させて呟くだけだった。
「んー」
人間たちは顔を見合わせた。
「別に、こいつらに仕事してもらわないと困るわけじゃないし、またこんなことがあって
もアレだから、やっちゃいましょうよ」
青年が、言った。
内心、これでゆっくり当番なんてくだらないことに時間をとられないで済むようになる
ということしか考えていなかった。
人間たちは、それに背中を押されたのか、もう二度とゆっくりたちの懇願哀願に手を止
めることなく、淡々と作業を遂行した。
「むきゅ」
最後に残ったぱちゅりーも、仲間の死臭漂う袋の中で潰されて死んだ。
「ゆっくりただいま!」
「ゆっくりおかえりなさい、まりさ」
「「「ゆっくちおかえりなしゃい!」」」
「ごはんを貰ってきたからむーしゃむーしゃしようね!」
「ゆわぁい、むーちゃむーちゃすりゅよ!」
「ゆっくちできりゅね!」
「ゆっくちいただきま」
「ゆん! おちびちゃん、その前に、アレでしょ」
「ゆゆ!」
「ゆん! まりしゃちゃんとできりゅよ!」
「それじゃ、みんなでいっしょに言おうね!」
「「「にんげんしゃん、ゆっくちありがちょう!」」」
「ゆん! よく言えたね、それじゃむーしゃむーしゃしようね!」
「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇぇぇ!」」」
「ゆぅ、まりさぁ、ゆっくりしてるよぉ」
「ゆん、そうだね、それも人間さんのおかげだよ。おしごとをすればこの公園に住ませて
くれてごはんもくれるんだから」
「ここはさいこうのゆっくりぷれいすだね!」
ここは、あのぱちゅりーたちの住んでいた公園から少し離れたところにある公園で、こ
こでもまた、野良ゆっくりたちが清掃などのお仕事をする代わりに公園に住むことを許さ
れていた。
ぱちゅりーのような賢い指導者がいるわけではないので、仕事は効率的に行われてると
は言えず、皆苦労していた。
それでも、ゆっくりたちは現在の待遇に十分満足し、とてもゆっくりしていた。
終わり
書いたのは半端な知恵とか力が原因で滅びる系の話が好きなのるまあき。
そろそろボリュームのあるやつ書きたいのぜ。
過去作品
anko429 ゆっくりほいくえん
anko490 つむりとおねえさん
anko545 ドスハンター
anko580 やさしいまち
anko614 恐怖! ゆっくり怪人
anko810 おちびちゃん用のドア
anko1266 のるま
anko1328 しょうりしゃなのじぇ
anko1347 外の世界でデビュー
anko1370 飼いドス
anko1415 えーき裁き
ぱちゅりーが、唸っている。
「ぱちゅりー、おわったよ」
「ゆっくりしてないよ? どうしたの?」
れいむとまりさがやってきて、ぱちゅりーの様子を訝しげにしていた。
「むきゅぅ……ぱちゅは……すごいことを知ってしまったかもしれないわ」
「ゆゆ?」
「ゆ! それはにんげんさんのごほんだね!」
ぱちゅりーの前には一冊の週刊誌が広げて置いてあった。先ほどからそれを読んでぱち
ゅりーは唸っていたのである。
「さすがぱちゅりーだね! にんげんさんのごほんが読めるなんて!」
「いんてりだね! ゆっくりしてるね!」
尊敬の念を余すことなく現して褒め称えるれいむとまりさに、ぱちゅりーはいい気分に
なりつつも、すぐに険しい顔になった。
「むきゅ、とにかく、今日のおしごとは終わったのね」
「ゆん」
「ゆん」
「それじゃ、ゆっくりしてなさい。ぱちゅは……このごほんを読んでるから」
「「ゆん! ゆっくりするよ!」」
れいむとまりさがとてもゆっくりした顔でぽよんぽよんと跳ねていった。ぱちゅりーは
その後姿からすぐに視線を雑誌に転じる。
「むきゅきゅきゅきゅ……これは……大変なことだわ」
「たっりいなあ、ゆっくり当番なんて」
翌日、一人の青年が公園に足を踏み入れた。
「……あんなの、さっさと駆除しちゃえばいいのに」
ぼそりと小声で呟いた。
その公園には、野良ゆっくりが集められていた。当初は駆除する予定だったのだが、色
んなところから物言いがついたりした挙句、公園の清掃や野菜栽培などの仕事をさせる代
わりに地域猫ならぬ地域ゆっくりとして生活する権利を与えることになった。
むろん、それをしなければ駆除されるのだ。
公園の清掃など、人間がその気になればそれほどの手間ではない。
野菜の栽培と言っても少量で、ゆっくりたちが食べればそれでお仕舞いだ。お世辞にも
形や味がいいとは言い難く、余剰があってもあまり人間は食べたがらないだろう。
仕事といっても、それで人間が得するわけではない。
自分たちで作った野菜だけでは足りないので、結局は人間が食べ物を与えることになる
し、家を作る段ボール箱やらビニールシートやらも提供している。
トータルすれば、人間たちの持ち出しであり、人間たちにしてみれば野良ゆっくりたち
に温情をかけてやっていると思っている。
青年は、そのゆっくりたちの仕事ぶりを監視する当番だった。
「ま、ここの連中優秀だから、てきとーでいいけどな」
この公園の野良ゆっくりは、一匹の賢いぱちゅりーに率いられて極めて効率的に仕事を
していた。そのため、あまり細かく仕事を見ないでも大丈夫であった。
「あ、いたいた」
公園の一角に、ゆっくりたちが集まっている。
仕事をしている様子ではないのでもう終わったのかと青年は思った。
「じゃ、あとはこいつだな」
青年はポケットから一枚の紙を出した。そこには、ゆっくりたちは仕事をすることでこ
の公園に住ませてもらい、食べ物も貰っていることを説き、ゆえに人間への感謝を忘れぬ
ようにといったことが書かれている。
これを読み上げて、ゆっくりたちに復唱させるのだ。
「おーぅ」
「むきゅっ!」
「ゆゆ!」
「ゆぅぅぅ!」
「……ん?」
青年は何気なく声をかけたが、反応の剣呑さにやや戸惑った。まるで挑むような険しい
顔をどいつもこいつもしている。
「なんだよ。なんかあったんか」
さっさと終わると思っていたのに、なにやらトラブル発生かと青年はあからさまに億劫
そうな気だるい声で尋ねた。
「人間さん、ぱちゅたちは……もうだまされないわよ」
「んー?」
「むきゅ! その紙! いつものぱちゅたちは仕事をさせてもらってここに住ませてもら
ってるんだから感謝しろとか書いてあるんでしょ!」
「あ? うん、そうだけど」
青年は答えつつ、確かにゆっくりたちから敵意を感じた。
「なんなんだよ、いったい」
「人間さん、ぱちゅたちは、待遇の改善を要求するわ!」
「……は?」
「ぱちゅはごほんを読んで知ったのよ! 人間さんたちは、ぱちゅたちをだましてタダ同
然に働かせて莫大な利益を上げているわ!」
「……いや、なに言ってんの、お前」
青年は呆然としつつ言った。
「ゆっくりかいぜんしてね!」
「うそつきのにんげんさんはゆっくりはんせいしてあまあまをたくさんちょうだいね!」
「ぷくぅぅぅぅ、れいむたち、怒ってるんだよ!」
「ぱちゅにぜんぶ聞いたよ! よくもいままでだましてくれたね!」
「このいなかもの! 人間さんを信じていっしょうけんめいおしごとしてたのよ!」
「かいじぇん! かいじぇん!」
「もっちょゆっくちさせりょお!」
「「「えいえい、ゆー!」」」
「「「たいぐうがかいっぜんされるまで、ゆっくりしないで戦うよ!」」」
「「「ゆっくちたたきゃうよ!」」」
ゆっくりたちが一斉に声を上げる。
「……」
何が何やらわからぬ空白状態からなんとか立ち直った青年であったが、さて、なにをど
う言ったものかと困惑していた。
「むきゅ! 要求を伝えるわ!」
青年の沈黙を、なんか凄く都合よく解釈しているらしいぱちゅりーが堂々と言った。
要求の中身は、要するにもっとあまあまよこせを筆頭に、権利の拡大であった。
今は、この公園から出てはいけないことになっているが、それの撤廃も求めていた。
「あー、待ってろ。相談してくるから」
青年は、そう言って去って行った。
自分たちの勝利を疑っていないような、明るいゆっくりたちの声がその背中に浴びせら
れた。
「……というわけなんす」
「……はあ、それはまた」
青年は、自分の次の当番であり、日頃から親しくしている男の所に来て一部始終を報告
した。
「ごほんを読んだ……ねえ。なんか捨ててあった雑誌でも読んだのかな、あのぱちゅりー、
少しだけ漢字読めるんだよ」
「へえ、それは賢いすね。……そんな賢いのがなんでまたあんな馬鹿なこと言い出したの
やら」
「……所詮、ゆっくりだからねえ。自分のいいように考えちゃうんだろ」
「で、どうします?」
「まあ、他の連中にも相談しよう。その前に、俺も実際この目で見てみたいな」
男と青年は連れ立って公園に向かった。
「ああ!」
公園に近付いてくると、公園のそばに住んでいる老人がいて、男と青年に声をかけてき
た。
「大変なことになってるんだ。公園のゆっくりたちが」
「「え?」」
とにかく、見ればわかると言われて二人は公園に向かった。その間に手短に青年が見た
ことを話すと、老人は、
「ああ、そういうことか、確かにそんなようなことを言っていた」
と、言った。
「うわ! なんだこれ!」
「おいおいおい、なにやってんだ!」
「ごらんのとおりさ」
そこには、野良ゆっくりたちが歓声を上げながら公園を荒らす姿があった。
何匹ものゆっくりたちがゴミ箱を押し倒した。
いつもきれいに掃除されている地面にゴミがぶちまかれる。
花壇の花はめちゃくちゃに引き抜かれ踏み荒らされている。
野菜も収穫され、食い散らかされている。
「おいこら、何してんだ!」
「むきゅ! 人間さん! 遅いわよ!」
言われてみれば、男のところで話し込んでしまってけっこうな時間が経っていた。しか
し、まさかこんなことになっているとは思いもしなかった。
「待遇が改善されるまで、もうお仕事はしないわ! そのゴミも片付けないし、お花のお
手入れもしないし、野菜も作らないわ!」
「そうだよ! わかったらはやくかいぜんしてね!」
「ゆっへっへ、まりさたちがお仕事しないとにんげんさんたちも困るのぜ?」
「れいむたちのろーどーにせーとーなほーしゅーをちょうだいね!」
「「「せーとーなほーしゅーを!」」」
「「「えいえい、ゆー!」」」
気勢を上げるゆっくりたちを、青年と男と老人は、これ以上はありえないというぐらい
に冷めた目で見ていた。
三人が何も言わずに去った後も、ゆっくりたちのシュプレヒコールは続いた。
やがて、何人もの人間がやってきた。中には、先ほどの三人もいる。
「ゆふふ! にんげんさんたち、おおあわてだよ!」
「これならたいぐうがかいっぜんされるのもすぐなのぜ!」
「あまあまをむーしゃむーしゃできるね!」
「ゆわーい、あまあまはゆっくちできりゅよ!」
「ゆん、そうだね、ゆっくりできるね!」
「むきゅ! 確かあれは偉い人だわ」
ぱちゅりーが、一団の先頭に立っている男を見て言った。
「やあ……こりゃひどいな」
「むきゅ! にんげんさん! ぱちゅたちの要求については聞いてるわね?」
「ああ、聞いてるよ」
「それなら……」
「よーく聞いて欲しい」
男はそう言うと、説明を始めた。
ゆっくりたちの労働で、別段人間は得をしていないこと、この公園に住ませ食べ物を上
げるのは、人間の温情であることなど。
「むきゅ! もうだまされないって言ったはずよ!」
「そうだよ! ゆっくりできないうそをつかないでね!」
「いいかげんにするんだぜ! まりさたち、ほんとうに怒るのぜ!」
散々に罵声を浴びせられた男は、真剣な顔で言った。
「これで最後だよ」
と。
そして、さらに言った。
「すぐにゴミを片付けて、花壇にはお花の、畑にはお野菜の種をまくんだ」
「むきゅ! 断るわ!」
「「「ゆっくりおことわりだよ!」」」
ぱりゅりーたちは、断固として拒否した。
「こりゃ駄目だ」
男は後ろを振り返って言った。
「おし、じゃあ」
と、青年が前に出てきた。分厚いビニール袋を持っている。
「ゆっ! な、なにをするの!」
ぱちゅりーのすぐ隣にいたれいむの髪を掴んで持ち上げて袋に入れる。
「ゆ、ゆっくりできないよ! ここからだして!」
「ゆっくりできないって言ってるよ!」
「だしてあげてね! ぷくぅぅぅ!」
「おきゃあしゃんをかえちぇぇぇ!」
「むきゅ! 大丈夫よ!」
ぱちゅりーが自信満々に断言した。
「人間さんたちは、ぱちゅたちの労働力を失うわけにはいかないから、絶対に殺したりで
きないわ」
それを聞いて、ゆっくりたちはほっと安堵する。
「むきゅ、人間さん、下手な脅しは止めなさい」
ぱちゅりーがそう言った次の瞬間、青年の足が袋に入っていたれいむを思い切り踏み潰
した。
れいむの中身の餡子が飛び散ってビニール袋の内側に貼り付く。
「む、きゅ?」
「ゆぅ?」
「ゆゆゆ?」
「ゆ、ゆわああああ、れいむぅぅぅぅぅ!」
「おきゃあしゃんぎゃあああああ!」
袋の中で完全に潰れてぴくりとも動かなくなったれいむを見て、ゆっくりたちはパニッ
クに陥る。
「む……むきゅ! 人間さん! 一人殺せば言うことを聞くと思ってるのね! そうはい
かないわ! みんな、正当な権利のために死を覚悟して戦うつもりよ!」
ぱちゅりーが気丈に言い放った。
「よし、やれ」
袋を持った人間たちが進み出て、無造作にゆっくりを袋に入れて、先ほどのれいむのよ
うに袋越しに踏み潰し始めた。
一匹二匹三匹四匹。
死体の数が増えるたびに、ぱちゅりーの自信は揺らいでいく。
「や、やべでえええ! おしごとじます! おしごとするがら、ころざないでえええ!」
とうとう、一匹のまりさが言った。他の生き残りも一斉にそれに続く。
湧き上がった命乞いの声を聞きながら、ぱちゅりーは、むきゅ、むきゅ、ともはや半ば
精神を錯乱させて呟くだけだった。
「んー」
人間たちは顔を見合わせた。
「別に、こいつらに仕事してもらわないと困るわけじゃないし、またこんなことがあって
もアレだから、やっちゃいましょうよ」
青年が、言った。
内心、これでゆっくり当番なんてくだらないことに時間をとられないで済むようになる
ということしか考えていなかった。
人間たちは、それに背中を押されたのか、もう二度とゆっくりたちの懇願哀願に手を止
めることなく、淡々と作業を遂行した。
「むきゅ」
最後に残ったぱちゅりーも、仲間の死臭漂う袋の中で潰されて死んだ。
「ゆっくりただいま!」
「ゆっくりおかえりなさい、まりさ」
「「「ゆっくちおかえりなしゃい!」」」
「ごはんを貰ってきたからむーしゃむーしゃしようね!」
「ゆわぁい、むーちゃむーちゃすりゅよ!」
「ゆっくちできりゅね!」
「ゆっくちいただきま」
「ゆん! おちびちゃん、その前に、アレでしょ」
「ゆゆ!」
「ゆん! まりしゃちゃんとできりゅよ!」
「それじゃ、みんなでいっしょに言おうね!」
「「「にんげんしゃん、ゆっくちありがちょう!」」」
「ゆん! よく言えたね、それじゃむーしゃむーしゃしようね!」
「「「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇぇぇ!」」」
「ゆぅ、まりさぁ、ゆっくりしてるよぉ」
「ゆん、そうだね、それも人間さんのおかげだよ。おしごとをすればこの公園に住ませて
くれてごはんもくれるんだから」
「ここはさいこうのゆっくりぷれいすだね!」
ここは、あのぱちゅりーたちの住んでいた公園から少し離れたところにある公園で、こ
こでもまた、野良ゆっくりたちが清掃などのお仕事をする代わりに公園に住むことを許さ
れていた。
ぱちゅりーのような賢い指導者がいるわけではないので、仕事は効率的に行われてると
は言えず、皆苦労していた。
それでも、ゆっくりたちは現在の待遇に十分満足し、とてもゆっくりしていた。
終わり
書いたのは半端な知恵とか力が原因で滅びる系の話が好きなのるまあき。
そろそろボリュームのあるやつ書きたいのぜ。
過去作品
anko429 ゆっくりほいくえん
anko490 つむりとおねえさん
anko545 ドスハンター
anko580 やさしいまち
anko614 恐怖! ゆっくり怪人
anko810 おちびちゃん用のドア
anko1266 のるま
anko1328 しょうりしゃなのじぇ
anko1347 外の世界でデビュー
anko1370 飼いドス
anko1415 えーき裁き