ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2943 れいむ・フライ・ハイ
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『れいむ・フライ・ハイ』 6KB
自然界 何故ゆっくりは空に舞う度にそう叫ぶのか 二行作 第一部完
自然界 何故ゆっくりは空に舞う度にそう叫ぶのか 二行作 第一部完
樹海、というものがある。富士のそれが一般的には有名だが、それ以外にも似たところはあるもので、これから始まる短い物語の舞台もそんな場所だった。
どこまでも生い茂る木々。その根がある場所は実に荒々しく、地盤は無軌道な凸凹を繰り返していて、ところどころ大岩さえ佇んでいた。
それは巨岩だろうか、それとも土と石でできた塊なのだろうか。森のほぼ中央に天にも届きそうな高台があった。
その四方は切り立った崖になっていて、侵入者を拒んでいる。のぼせ上った山男でもなければ、これをよじ上ろうとはしないだろう。
秘境、という言葉に相応しい光景だが、そんな呼称は人間が一方的に付けたものに過ぎない。樹海の塔ともいうべきこの高台にも、生き物は住んでいるのだ。
天空から降り立ち羽を休めるもの、木々を飛び移るもの、そして地を這うもの。そんな地を行くものの中に、ゆっくりがいた。
ここまで読んで頂いた好事家の諸氏には申し訳ないが、それはよく見られるような間抜けで破滅的な群れではない。むしろ自制と自省を知っている賢い部類の饅頭達であった。
だからといって、必ずしも繁栄を約されている分けではなく、宿命的に終局と隣り合わせであることに変わりはないのだが、今回の主題はそこにはない。
どこまでも生い茂る木々。その根がある場所は実に荒々しく、地盤は無軌道な凸凹を繰り返していて、ところどころ大岩さえ佇んでいた。
それは巨岩だろうか、それとも土と石でできた塊なのだろうか。森のほぼ中央に天にも届きそうな高台があった。
その四方は切り立った崖になっていて、侵入者を拒んでいる。のぼせ上った山男でもなければ、これをよじ上ろうとはしないだろう。
秘境、という言葉に相応しい光景だが、そんな呼称は人間が一方的に付けたものに過ぎない。樹海の塔ともいうべきこの高台にも、生き物は住んでいるのだ。
天空から降り立ち羽を休めるもの、木々を飛び移るもの、そして地を這うもの。そんな地を行くものの中に、ゆっくりがいた。
ここまで読んで頂いた好事家の諸氏には申し訳ないが、それはよく見られるような間抜けで破滅的な群れではない。むしろ自制と自省を知っている賢い部類の饅頭達であった。
だからといって、必ずしも繁栄を約されている分けではなく、宿命的に終局と隣り合わせであることに変わりはないのだが、今回の主題はそこにはない。
ゆっくり達は、森の塔の頂上付近で暮らしている。捕食獣から身を隠すため地表や地下に巣を造り、なおかつ工夫と緊張を絶えず保っていた。
そんな営みも持つゆっくりもいる。非ゆっくり症など、だれた都会のゆっくりの間でのみ受け継がれる宿痾(しゅくあ)に過ぎない。
ともあれ、かくも凛々しい生活を続けていると、体付きを兼ねた顔付きというものも変わってくるものだ。
塔を覆うように生える樹木の側を、年老いたゆっくりの一団が歩いて行く。傷を負っていないものはひとつもいない。隻眼のものもいれば、大きな亀裂が顔の大半を占めてしまっているものもいた。
だからといって、薄汚れた路地裏の野良のように、うなだれているものなどいない。ボロボロのお飾りを堂々と晒し、顎を上げて粛々と歩き続けていく。
しっぽが欠けたちぇんが、白目を剥いて倒れる。穴あきチーズのような帽子を被ったまりさが助け起こすと、ちぇんは意識を取り戻したのか、仲間と身を寄り添って歩き出した。
この列にいるゆっくり達は、自覚しているものの集まりだった。何を。それは、自らの死期を。
そんな営みも持つゆっくりもいる。非ゆっくり症など、だれた都会のゆっくりの間でのみ受け継がれる宿痾(しゅくあ)に過ぎない。
ともあれ、かくも凛々しい生活を続けていると、体付きを兼ねた顔付きというものも変わってくるものだ。
塔を覆うように生える樹木の側を、年老いたゆっくりの一団が歩いて行く。傷を負っていないものはひとつもいない。隻眼のものもいれば、大きな亀裂が顔の大半を占めてしまっているものもいた。
だからといって、薄汚れた路地裏の野良のように、うなだれているものなどいない。ボロボロのお飾りを堂々と晒し、顎を上げて粛々と歩き続けていく。
しっぽが欠けたちぇんが、白目を剥いて倒れる。穴あきチーズのような帽子を被ったまりさが助け起こすと、ちぇんは意識を取り戻したのか、仲間と身を寄り添って歩き出した。
この列にいるゆっくり達は、自覚しているものの集まりだった。何を。それは、自らの死期を。
葉の屋根が途切れる。
ゆっくりならずとも歓声を上げてしまいそうな見晴らしであった。どこまでも続く森の絨毯。しかもその日は雲ひとつない快晴であった。
ゆっくりならずとも歓声を上げてしまいそうな見晴らしであった。どこまでも続く森の絨毯。しかもその日は雲ひとつない快晴であった。
「じゆうがおか、だよ……」
誰かが言った。まるで分譲住宅地のような名前だが、なるほどゆっくりにしてみれば小高い丘と呼べるだろう。その位細やかな隆起に過ぎなかった。
自由が丘は緑の塔の端にあり、前方には絶景が足元には断崖が存在していた。
年老いた隊列は丘の上で立ち止まり、しばし眼前の光景に見入っているようだった。
自由が丘は緑の塔の端にあり、前方には絶景が足元には断崖が存在していた。
年老いた隊列は丘の上で立ち止まり、しばし眼前の光景に見入っているようだった。
「ついたんだね……」
息も絶え絶えに、隻尾のちぇんが呟く。その視界に果たして鮮やかな色は映っているのか。
頬でそれを支えていた穴あきまりさが、一団の先端に佇むれいむに瞳を向けた。
頬でそれを支えていた穴あきまりさが、一団の先端に佇むれいむに瞳を向けた。
「おさ、そろそろ、ぜ」
「まりさ、れいむはもう、おさじゃないよ。いまのおさは、なずーりんだよ」
「まりさにとって、おさはれいむなのぜ。さいごまで、れいむなのぜ」
「……かわいいおちびちゃんだった、なずーが、おさなんだよ。ずいぶん、いきてきたんだね」
「おかげで、じまんのもちもちはださんも、かぴかぴなのぜ」
「まりさ、れいむはもう、おさじゃないよ。いまのおさは、なずーりんだよ」
「まりさにとって、おさはれいむなのぜ。さいごまで、れいむなのぜ」
「……かわいいおちびちゃんだった、なずーが、おさなんだよ。ずいぶん、いきてきたんだね」
「おかげで、じまんのもちもちはださんも、かぴかぴなのぜ」
笑った。笑い合った。古びた饅頭どもは目尻を下げ、皺になった部分がぽろりと崩れる。
そして、長だったれいむは年甲斐もなく声を張り上げた。
そして、長だったれいむは年甲斐もなく声を張り上げた。
「それじゃ、いくよ!」
れいむは自由が丘を上り切り、そして身を横たえた。
続けざまに。
続けざまに。
「こーろこーろするよ!」
向こう側へ横転した。まるで子供のように丘を転がり落ちる。
しかしそうすればどうなるか。下り坂の先には何もない。
にも関わらず、紅い饅頭は回転に抗することもなく、ただただ身を任せていく。
やがて、飛んだ。
空、真っ青な空。その下を賞味期限切れのれいむが舞っている。
落下する影。すぐにれいむだけではなくなった。まりさ、ちぇん、ぱちぇ、みょん、さなえの姿もある。
しかしそうすればどうなるか。下り坂の先には何もない。
にも関わらず、紅い饅頭は回転に抗することもなく、ただただ身を任せていく。
やがて、飛んだ。
空、真っ青な空。その下を賞味期限切れのれいむが舞っている。
落下する影。すぐにれいむだけではなくなった。まりさ、ちぇん、ぱちぇ、みょん、さなえの姿もある。
傍目には集団自殺にしか見えないだろう。実際にそうだと言ってもよい。
しかし、必ずしも世を儚んでの行為ではなく、この群れの風習として行われているものだった。
理由はふたつある。
ひとつは、死体を晒すことによって他の獣を招いたり、うっかり同胞の味を覚えさせたりしないための配慮だ。
饅頭のくせに理性的な行いだが、もうひとつは、実に感傷的なものであった。
しかし、必ずしも世を儚んでの行為ではなく、この群れの風習として行われているものだった。
理由はふたつある。
ひとつは、死体を晒すことによって他の獣を招いたり、うっかり同胞の味を覚えさせたりしないための配慮だ。
饅頭のくせに理性的な行いだが、もうひとつは、実に感傷的なものであった。
れいむは、産まれて初めての開放感を満喫していた。
胎生によりこの地に放たれてから今まで、心休まる時はなかった。
大小の捕食獣の恐怖、数々の別離、成体になってからは長という重圧さえ与えられた。
ゆっくりは地を這う生き物だ。跳躍力は低く、翼を持たないものにとっては地表すれすれの視界が一生の風景といってよい。
一切に、押さえつけられていた。敵に、環境に、責任に。
いつも見上げていた。いつか、あそこに行きたい。そこにいけば、解き放たれるのだ、と。そこに行くために、生ききるのだ、と。
だから、れいむは、ゆっくりは思わずこう叫ぶ。叫ばずにはいられない。
胎生によりこの地に放たれてから今まで、心休まる時はなかった。
大小の捕食獣の恐怖、数々の別離、成体になってからは長という重圧さえ与えられた。
ゆっくりは地を這う生き物だ。跳躍力は低く、翼を持たないものにとっては地表すれすれの視界が一生の風景といってよい。
一切に、押さえつけられていた。敵に、環境に、責任に。
いつも見上げていた。いつか、あそこに行きたい。そこにいけば、解き放たれるのだ、と。そこに行くために、生ききるのだ、と。
だから、れいむは、ゆっくりは思わずこう叫ぶ。叫ばずにはいられない。
「おそらをとんでるみたい!」
分かっていた。「みたい」だということは。実際には墜落しているだけだということは。
それでも良かった。自らを縛っているものから自由になれる。そんな贅沢を今際の際に味わえるのだから。
だからこそ、自由が丘から最期を迎えられるのは、本当に群れに貢献してきたゆっくりだけだとされた。
虚空でまりさと目が合う。微笑み合えた。もし、ゆん生に悪い意味で未練を残すものなら、落下の恐怖で顔を歪めるだけだろう。
所詮は、生きてきたようにしか、死ねない。
れいむは地に背を向けて天の方ばかり眺めている。何故最期の最期にまで見飽きた地面など見なければならないのか。そんな思いがあった。
鳥の爪がちぇんをつかむのが見えた。確かに捉えたはずが、老いた皮がぼろりと崩れて身が離れ、鳥の足から滑り落ちていく。
猫ゆは既に瞳を閉じていた。
それでも良かった。自らを縛っているものから自由になれる。そんな贅沢を今際の際に味わえるのだから。
だからこそ、自由が丘から最期を迎えられるのは、本当に群れに貢献してきたゆっくりだけだとされた。
虚空でまりさと目が合う。微笑み合えた。もし、ゆん生に悪い意味で未練を残すものなら、落下の恐怖で顔を歪めるだけだろう。
所詮は、生きてきたようにしか、死ねない。
れいむは地に背を向けて天の方ばかり眺めている。何故最期の最期にまで見飽きた地面など見なければならないのか。そんな思いがあった。
鳥の爪がちぇんをつかむのが見えた。確かに捉えたはずが、老いた皮がぼろりと崩れて身が離れ、鳥の足から滑り落ちていく。
猫ゆは既に瞳を閉じていた。
人間は虚ろな瞳で岩肌を見ている。
樹海をさ迷い、開けた場所に来たと思ったら塔のような高台があるばかりで、そこで力が尽きてしまったのだ。
彼は何故自分がこんなところにいるのか、思い返す余力もないようだった。こんな険しい自然の中を行くには妙に軽装に見えたから、自殺志願の類かもしれない。
幸か不幸か、水がわき出る場所には恵まれたので乾く心配はなかったが、水分だけで人は暮らしていけない。
飢餓だった。つい先ほどまで胃腸に痛みさえあったのだが、もうそれすら消え失せている。
木の根を枕にして仰向けになったまま動かない、動けない。
どこかで、もういいやという声がしたので、男は目を閉じることにした。その間際。
何かが、落ちてきた。辛うじて留まっている目蓋がそれを知らせ、次に臭覚がそこに行けと告げた。
本能が地を這わせる。腕は蛇のように、足は虫のように蠢いて、頭を落下物の方へと押し上げていく。
匂いが徐々に強くなる。甘い香り。それが寿命を終えたれいむであることを、彼が知るよしもなかった。
掌が黒いものをつかみ、全くの無意識が餡を口へと誘っていく。咀嚼する度に、男の眼が開いていった。
次第に人は身を起こし、ゆっくりだったものを握り、貪る。
訳も分からず、泣いていた。そして彼自身も知らないうちに、こんなことを口走っている。
樹海をさ迷い、開けた場所に来たと思ったら塔のような高台があるばかりで、そこで力が尽きてしまったのだ。
彼は何故自分がこんなところにいるのか、思い返す余力もないようだった。こんな険しい自然の中を行くには妙に軽装に見えたから、自殺志願の類かもしれない。
幸か不幸か、水がわき出る場所には恵まれたので乾く心配はなかったが、水分だけで人は暮らしていけない。
飢餓だった。つい先ほどまで胃腸に痛みさえあったのだが、もうそれすら消え失せている。
木の根を枕にして仰向けになったまま動かない、動けない。
どこかで、もういいやという声がしたので、男は目を閉じることにした。その間際。
何かが、落ちてきた。辛うじて留まっている目蓋がそれを知らせ、次に臭覚がそこに行けと告げた。
本能が地を這わせる。腕は蛇のように、足は虫のように蠢いて、頭を落下物の方へと押し上げていく。
匂いが徐々に強くなる。甘い香り。それが寿命を終えたれいむであることを、彼が知るよしもなかった。
掌が黒いものをつかみ、全くの無意識が餡を口へと誘っていく。咀嚼する度に、男の眼が開いていった。
次第に人は身を起こし、ゆっくりだったものを握り、貪る。
訳も分からず、泣いていた。そして彼自身も知らないうちに、こんなことを口走っている。
「ありがとう……」
人間は、まだ生きていけるだろう。
読者と餡庫と、それらに関わる全ての人に感謝を込めて
ご愛読、ありがとうございました
ご愛読、ありがとうございました