ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1635 希少種を殺せ!
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ankoss
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* 注意 *
救いがないです。
希少種が死にます。
善良だけど死にます。
「希少種が出たぞ! そっちだ! 逃がすな!」
休日の夕方、都下有数の自然林を有する公園に、男性の声が響く。
声はまだ若い。
「任せて! この先は沢になってるの。追い込んで潰してやるんだから」
それに応える女性の声は、どこか楽しそうだった。
「私が音を出しながら追い込むから、あなたは沿道を先回りして沢に向かってね」
「任せた!」
声と共に、男がポケットを探り、携帯電話程度の物体を放り投げる。
赤とんぼが飛び交う中、綺麗な放物線を描いて飛んでくる。
狙い違わず女性の手元にすっぽりと入ったそれは、外部バッテリー
を繋げて稼働時間を増強したICレコーダーだった。
スピーカーから、声が出る。
「ゆっくりしていってね!」
二人が、ゆっくりレーダーと呼んでいる物だった。
電磁波を発振する代わりに音声を発信して、返答を拾う。
ICレコーダーに自分の音声を吹き込んであるだけの、ゆ駆除装備だ。
欠点は多い。というか、目白押しだ。
スピーカーを向けている方向以外への探知距離が短い、元飼いゆっくり
だと効果が薄い場合がある、一部ゆっくりには元から効果がない。
けれど、視覚と組み合わせれば十分に効果は挙げられた。
「濡れた斜面と、積もった落ち葉か。速度を落として慎重に進もう」
呟いて手元でICレコーダーを操作した。
自分の予想進行速度に合わせてTrack3の10ゆ/secで録音した物を再生する。
「ゆっくりしていってね!」
よし、追い込みの始まりだ。
「ゆあああああ! みつかっちゃったんだぜ! ゆっくりできないんだぜええええ!」
「ゆっくりできないです。ゆっくりしないでにげますよ!」
人間達の先を必死で走るのは、まりさとさなえのつがいだった。
「ゆっくりいそぐよ! ゆっくりいそぐよ!」
「ゆっくりいそぎます!ゆっくりいそぎます!」
二匹は必死で下生えをかき分け、跳ね続けた。
初めて会ったときの事は、今でも覚えている。
まだ出会って日が浅いとは言え、あまり見ない種類のゆっくりを見た
物珍しさは好奇心を生み、何かと理由を付けてはついて回る内に恋愛感情が芽生え始めた。
それが、けっこんという形を成すのにそう時間は掛からなかった。
ぷろぽーずは、まりさがしてくれた。
さなえが頬を餡子色に染めながらぷろぽーずを受けてくれたとき、まりさは
とてもゆっくりしているように見えた。まだ見ぬ幸福な未来はきらきらと輝いて
いるように見えた。もはや永遠にゆっくりしてもいいとすら思った。
そこが、絶頂だった。未来は錯覚だった。そして思ったことは現実へとなりつつある。
「……してい……ね」
小さいが、後方から声が聞こえてきた。
「ゆ! ゆっくりできないんだぜええええ!」
全力で跳ねながら、思わずまりさは叫んだ。
「まりさ! おおきなこえをだしちゃだめです!」
さなえは隣を跳ねながら言う。
このさなえは挨拶に返答をしないことができた。
しかし、まりさは無理だった。
近くにあの二人のにんげんさんがやってきたとき、二匹は下生えに隠れ、息を
殺してやり過ごそうとしていた。
もう少しでやり過ごせる。そう思っていたとき、しゃがんで地面を見ていた
にんげんさんがポケットに手を突っ込んだ。
「ゆっくりしていってね!」
ポケットから、あいさつが出た。
「ゆっくりしていってね!」
反射的に出てしまったまりさの返答で発見され、今は必死に逃げている。
にんげんさんの大きさでは掻き分けないと進めない灌木も、ゆっくりなら下を
くぐり抜けられる。それでが幸いして今は逃げ続けているが、このままでは
じりじりと破滅へ向かって進んでいるだけだ。
さなえは焦り始めた。
何か方法は無いかと、餡子をフル回転させる。
「さなえ、ゆっくりいそぎながらきいてほしいよ」
そのとき、先ほどからゆ! ゆ! と、可能な限り小さな声で跳ねていた
まりさが、しゃべり出した。
「まりさがにんげんさんをひきつけるんだぜ。さなえはかくれてやりすごすのぜ!」
「いやです! わたしはまりさといっしょにいきて、しにます」
さなえの決意は固かった。もう二人は、永遠に離れないことを誓った。
まりさのぷろぽーずに応えたときから、ふたりは番になったから。最初に好きに
なったのは、さなえだったから。
必死で跳ね続けながらも、まりさが続ける。
「けど、あのおねえさんは、さなえをかってたんだぜ? まだおちびちゃんも
いないし、あやまればゆるして……」
まりさの言葉を途中で遮る。
「むりですよ。おねえさんは、きびしいひとなんです。ゆるしてはくれません。
“れいがい”はない、といつもいいます」
お姉さんの決めたルールは絶対だった。逆らったさなえが潰されるのを何度も
見て、他のさなえはより一層従順になるのだった。
「ゆう……そんな……せめてさなえだけでも……」
声から力が無くなるまりさ。それを察して、さなえは思う。
ああ、やっぱりこのまりさを好きになって良かった。
自分を捨ててもさなえを大切にしてくれる、まりさを好きになって良かった。
「それに、おねえさんがゆるしてくれても、わたしのきもちはいつわれません。
わたしは、まりさがすきです」
暖かいご飯と寝床があっても、あそこは牢獄だったのだ。逃げることさえ思い
つかなかったさなえに、道を示してくれたのは、まりさだった。
「じょうしきにとらわれないまりさが、すきです」
初めて会ったときに、常識に囚われてはいけないのだと思わせてくれたのは
まりさだったのだ。
力強く言葉を紡ぐさなえ。
「ゆ! まりさ、よわきになってたよ。きっといっしょに、にげきるんだぜ!!」
泥まみれになり、たくさんの擦り傷を作りながら逃げている最中だというのに
さなえは一瞬それを忘れた。
下生えが切れ、さなえ達の前に沢が広がった。
たくさんの赤とんぼが空を舞い、水面にちらちらと赤色を反射させている。
赤とんぼを映して透き通る水が、這うように地を伝い、流れている。
まりさと沢蟹を食べた沢だった。いっしょに体を洗い合った沢だった。
まだまだ、一緒にしたいことがたくさんある。
沢を渡るべく、まりさの後ろを跳ね行く。
まりさの後ろ姿を見ながら、さなえは願った。
生きたい、と願った。
まりさと一緒に生きていたいと、強く強く願った。
叶わなかった。
「どんぴしゃ!」
声と共に降ってきた足に、まりさが爆ぜた。
全体重を掛けた踏み込みだった。潰れると言うより、破裂するようだった。
四散したまりさの餡子が、さなえの顔を濡らす。
「まりさああああああああああああ!」
「上手い追い込みだ。さすがだぜ」
「まりさ! まりさ! まりさああああああああ!」
「うるせえ」
さなえは蹴飛ばされ、転がって沢の水に突っ伏した。
「ごばばば。ばりさあああ! まりさああああ!」
すぐに体を起こしてまりさを見るが、まりさは既に痙攣すらしていなかった。
遺言すら残すことなく、まりさは永遠にゆっくりしていた。
目はどこかへ飛び去り、口から下は綺麗にはじけて今や地面に金色の絨毯が
敷いてあるように見えるほど、潰れてしまっていた。
さなえはその死に様から目を離せず、呆然とまりさだったものを見つめていた。
「どんなもんよ。さすが私!」
林を掻き分けておねえさんが歩いてくる。
道を譲るように、赤とんぼが左右へぱっと飛び去る。
一瞬立ち止まり、まりさを一瞥した後にさなえの近くまで歩いてきた。
聞き慣れた声が降って来た。
「さなえ、例外は無いわよ。覚悟の上でしょうね」
「まりさがいないせかいに、みれんはないです」
ぼんやりと視線も定まらない様子で、さなえは応える。
「よろしい。最後に一つだけ教えて。あっちで潰れてる“希少種”の、どこが
そんなに良かったの?」
一瞬、さなえの目に光が戻った。
まりさに初めて会った日のことを思い出す。
「はじめてみたんです。まりさなんて、ずかんでしかみられなかった」
ゆっくり市場は今や完全に成熟していた。
飼いにくいまりさやれいむ、ありす、ちぇんは野良からもペットショップからも消えて久しい。その種の熱狂的支持者が、高額と引き替えにして手に入れることがある程度だ。
「めのまえで、わたしにわらいかけてくれたとき、ほんからでてきたみたいで」
マクロ市場の需要は、既にまりさやれいむを求めていなかった。
しつけの手間が少ないゆうか、さなえ、もみじ、てんこなどが、現在の野良と
ペットショップを構成しているゆっくりだった。
「まりさは、まほうつかいみたいでした。」
価格もすっかり安価になっている。
それが今の常識だった。
「とってもゆっくりして、じょうしきにとらわれていませんでした」
需要が無くなれば供給も途絶える。野良ゆっくりは飼いから転落した物、うっかり
できた子ゆっくりを捨てた物が大半を占める。
そいつらが交配を繰り返し、まりさやれいむの餡統をじわじわと駆逐した。
今や野良の中でも、まりさやれいむはほとんど見なくなっていた。
まりさは今や、希少種と呼ばれていたのだ。
「なるほど、非日常を求めるのはさなえの習性だったね。納得した」
おねえさんは幾度か頷く。
「本能は強いね。さよなら、さなえ」
「さようなら。ごめんなさい」
お姉さんは、足を一息に踏みおろした。
飛び散ったさなえの餡子を、沢の流れが少しずつ流していった。
赤とんぼが辺りを飛び回る。
お姉さんは、目の前を通り過ぎた一匹を視線で追いかける。
「アキアカネ」
しばらく追ってから、視線を切ると呟いた。
「赤とんぼだろ?」
「正しくはアキアカネって言うのよ」
そう言ってさなえから足をどけ、踵を返した。
「みんなが赤とんぼって呼んでてもね」
救いがないです。
希少種が死にます。
善良だけど死にます。
「希少種が出たぞ! そっちだ! 逃がすな!」
休日の夕方、都下有数の自然林を有する公園に、男性の声が響く。
声はまだ若い。
「任せて! この先は沢になってるの。追い込んで潰してやるんだから」
それに応える女性の声は、どこか楽しそうだった。
「私が音を出しながら追い込むから、あなたは沿道を先回りして沢に向かってね」
「任せた!」
声と共に、男がポケットを探り、携帯電話程度の物体を放り投げる。
赤とんぼが飛び交う中、綺麗な放物線を描いて飛んでくる。
狙い違わず女性の手元にすっぽりと入ったそれは、外部バッテリー
を繋げて稼働時間を増強したICレコーダーだった。
スピーカーから、声が出る。
「ゆっくりしていってね!」
二人が、ゆっくりレーダーと呼んでいる物だった。
電磁波を発振する代わりに音声を発信して、返答を拾う。
ICレコーダーに自分の音声を吹き込んであるだけの、ゆ駆除装備だ。
欠点は多い。というか、目白押しだ。
スピーカーを向けている方向以外への探知距離が短い、元飼いゆっくり
だと効果が薄い場合がある、一部ゆっくりには元から効果がない。
けれど、視覚と組み合わせれば十分に効果は挙げられた。
「濡れた斜面と、積もった落ち葉か。速度を落として慎重に進もう」
呟いて手元でICレコーダーを操作した。
自分の予想進行速度に合わせてTrack3の10ゆ/secで録音した物を再生する。
「ゆっくりしていってね!」
よし、追い込みの始まりだ。
「ゆあああああ! みつかっちゃったんだぜ! ゆっくりできないんだぜええええ!」
「ゆっくりできないです。ゆっくりしないでにげますよ!」
人間達の先を必死で走るのは、まりさとさなえのつがいだった。
「ゆっくりいそぐよ! ゆっくりいそぐよ!」
「ゆっくりいそぎます!ゆっくりいそぎます!」
二匹は必死で下生えをかき分け、跳ね続けた。
初めて会ったときの事は、今でも覚えている。
まだ出会って日が浅いとは言え、あまり見ない種類のゆっくりを見た
物珍しさは好奇心を生み、何かと理由を付けてはついて回る内に恋愛感情が芽生え始めた。
それが、けっこんという形を成すのにそう時間は掛からなかった。
ぷろぽーずは、まりさがしてくれた。
さなえが頬を餡子色に染めながらぷろぽーずを受けてくれたとき、まりさは
とてもゆっくりしているように見えた。まだ見ぬ幸福な未来はきらきらと輝いて
いるように見えた。もはや永遠にゆっくりしてもいいとすら思った。
そこが、絶頂だった。未来は錯覚だった。そして思ったことは現実へとなりつつある。
「……してい……ね」
小さいが、後方から声が聞こえてきた。
「ゆ! ゆっくりできないんだぜええええ!」
全力で跳ねながら、思わずまりさは叫んだ。
「まりさ! おおきなこえをだしちゃだめです!」
さなえは隣を跳ねながら言う。
このさなえは挨拶に返答をしないことができた。
しかし、まりさは無理だった。
近くにあの二人のにんげんさんがやってきたとき、二匹は下生えに隠れ、息を
殺してやり過ごそうとしていた。
もう少しでやり過ごせる。そう思っていたとき、しゃがんで地面を見ていた
にんげんさんがポケットに手を突っ込んだ。
「ゆっくりしていってね!」
ポケットから、あいさつが出た。
「ゆっくりしていってね!」
反射的に出てしまったまりさの返答で発見され、今は必死に逃げている。
にんげんさんの大きさでは掻き分けないと進めない灌木も、ゆっくりなら下を
くぐり抜けられる。それでが幸いして今は逃げ続けているが、このままでは
じりじりと破滅へ向かって進んでいるだけだ。
さなえは焦り始めた。
何か方法は無いかと、餡子をフル回転させる。
「さなえ、ゆっくりいそぎながらきいてほしいよ」
そのとき、先ほどからゆ! ゆ! と、可能な限り小さな声で跳ねていた
まりさが、しゃべり出した。
「まりさがにんげんさんをひきつけるんだぜ。さなえはかくれてやりすごすのぜ!」
「いやです! わたしはまりさといっしょにいきて、しにます」
さなえの決意は固かった。もう二人は、永遠に離れないことを誓った。
まりさのぷろぽーずに応えたときから、ふたりは番になったから。最初に好きに
なったのは、さなえだったから。
必死で跳ね続けながらも、まりさが続ける。
「けど、あのおねえさんは、さなえをかってたんだぜ? まだおちびちゃんも
いないし、あやまればゆるして……」
まりさの言葉を途中で遮る。
「むりですよ。おねえさんは、きびしいひとなんです。ゆるしてはくれません。
“れいがい”はない、といつもいいます」
お姉さんの決めたルールは絶対だった。逆らったさなえが潰されるのを何度も
見て、他のさなえはより一層従順になるのだった。
「ゆう……そんな……せめてさなえだけでも……」
声から力が無くなるまりさ。それを察して、さなえは思う。
ああ、やっぱりこのまりさを好きになって良かった。
自分を捨ててもさなえを大切にしてくれる、まりさを好きになって良かった。
「それに、おねえさんがゆるしてくれても、わたしのきもちはいつわれません。
わたしは、まりさがすきです」
暖かいご飯と寝床があっても、あそこは牢獄だったのだ。逃げることさえ思い
つかなかったさなえに、道を示してくれたのは、まりさだった。
「じょうしきにとらわれないまりさが、すきです」
初めて会ったときに、常識に囚われてはいけないのだと思わせてくれたのは
まりさだったのだ。
力強く言葉を紡ぐさなえ。
「ゆ! まりさ、よわきになってたよ。きっといっしょに、にげきるんだぜ!!」
泥まみれになり、たくさんの擦り傷を作りながら逃げている最中だというのに
さなえは一瞬それを忘れた。
下生えが切れ、さなえ達の前に沢が広がった。
たくさんの赤とんぼが空を舞い、水面にちらちらと赤色を反射させている。
赤とんぼを映して透き通る水が、這うように地を伝い、流れている。
まりさと沢蟹を食べた沢だった。いっしょに体を洗い合った沢だった。
まだまだ、一緒にしたいことがたくさんある。
沢を渡るべく、まりさの後ろを跳ね行く。
まりさの後ろ姿を見ながら、さなえは願った。
生きたい、と願った。
まりさと一緒に生きていたいと、強く強く願った。
叶わなかった。
「どんぴしゃ!」
声と共に降ってきた足に、まりさが爆ぜた。
全体重を掛けた踏み込みだった。潰れると言うより、破裂するようだった。
四散したまりさの餡子が、さなえの顔を濡らす。
「まりさああああああああああああ!」
「上手い追い込みだ。さすがだぜ」
「まりさ! まりさ! まりさああああああああ!」
「うるせえ」
さなえは蹴飛ばされ、転がって沢の水に突っ伏した。
「ごばばば。ばりさあああ! まりさああああ!」
すぐに体を起こしてまりさを見るが、まりさは既に痙攣すらしていなかった。
遺言すら残すことなく、まりさは永遠にゆっくりしていた。
目はどこかへ飛び去り、口から下は綺麗にはじけて今や地面に金色の絨毯が
敷いてあるように見えるほど、潰れてしまっていた。
さなえはその死に様から目を離せず、呆然とまりさだったものを見つめていた。
「どんなもんよ。さすが私!」
林を掻き分けておねえさんが歩いてくる。
道を譲るように、赤とんぼが左右へぱっと飛び去る。
一瞬立ち止まり、まりさを一瞥した後にさなえの近くまで歩いてきた。
聞き慣れた声が降って来た。
「さなえ、例外は無いわよ。覚悟の上でしょうね」
「まりさがいないせかいに、みれんはないです」
ぼんやりと視線も定まらない様子で、さなえは応える。
「よろしい。最後に一つだけ教えて。あっちで潰れてる“希少種”の、どこが
そんなに良かったの?」
一瞬、さなえの目に光が戻った。
まりさに初めて会った日のことを思い出す。
「はじめてみたんです。まりさなんて、ずかんでしかみられなかった」
ゆっくり市場は今や完全に成熟していた。
飼いにくいまりさやれいむ、ありす、ちぇんは野良からもペットショップからも消えて久しい。その種の熱狂的支持者が、高額と引き替えにして手に入れることがある程度だ。
「めのまえで、わたしにわらいかけてくれたとき、ほんからでてきたみたいで」
マクロ市場の需要は、既にまりさやれいむを求めていなかった。
しつけの手間が少ないゆうか、さなえ、もみじ、てんこなどが、現在の野良と
ペットショップを構成しているゆっくりだった。
「まりさは、まほうつかいみたいでした。」
価格もすっかり安価になっている。
それが今の常識だった。
「とってもゆっくりして、じょうしきにとらわれていませんでした」
需要が無くなれば供給も途絶える。野良ゆっくりは飼いから転落した物、うっかり
できた子ゆっくりを捨てた物が大半を占める。
そいつらが交配を繰り返し、まりさやれいむの餡統をじわじわと駆逐した。
今や野良の中でも、まりさやれいむはほとんど見なくなっていた。
まりさは今や、希少種と呼ばれていたのだ。
「なるほど、非日常を求めるのはさなえの習性だったね。納得した」
おねえさんは幾度か頷く。
「本能は強いね。さよなら、さなえ」
「さようなら。ごめんなさい」
お姉さんは、足を一息に踏みおろした。
飛び散ったさなえの餡子を、沢の流れが少しずつ流していった。
赤とんぼが辺りを飛び回る。
お姉さんは、目の前を通り過ぎた一匹を視線で追いかける。
「アキアカネ」
しばらく追ってから、視線を切ると呟いた。
「赤とんぼだろ?」
「正しくはアキアカネって言うのよ」
そう言ってさなえから足をどけ、踵を返した。
「みんなが赤とんぼって呼んでてもね」