ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko3441 ゆっくりの黙示録 1幕
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『ゆっくりの黙示録 1幕』 39KB
観察 考証 パロディ 改造 日常模様 戦闘 家族崩壊 同族殺し 駆除 群れ 野良ゆ ゲス ドスまりさ 自然界 加工場 現代 愛護人間 独自設定 某ゾンビ系映画&ゲームのパロを多く含んでおります
☆作者は絶対あきです(お久しぶりです)。
☆このSSは某サバイバルホラーゲーム、某FPSゾンビゲー、某ホラー映画の成分を多分に含んでいます。
☆ですがグロ・ホラーな雰囲気は出しきれてないです。
☆遺伝子とかの知識に関しては餡子脳なのでそこらへんは適当です。
☆それでもよろしければどうぞ……ゆっくりよんでいってね!!
<加工所・ゆっくり研究部門研究員の記録>
○月×日
ゆっくりは非常に不思議なナマモノである。
あるゆっくりショップで生まれた、金バッチ付きの両親を親とする個体が生まれてから数秒後には、初めて見るはずの人間を見下し、暴言を吐き、糞尿をまき散らし、典型的なゲスとして処理される。
その一方で人間を一度も見たことないはずの野生の希少種が、人間に対してきわめて友好的にあいさつをし、人間の言葉に対して素直な理解を示し、その力量を悟り、善良なゆっくりとして人と友好的な関係を維持する。
基準はあくまで『人間から見たもの』であるが、ゆっくりのこの極端な気質の違いに関しては長く研究されてきた。
そしてついにその謎がついに解明された。
『Y因子』。
この物質がゆっくりの気質を分ける鍵だったのだ。
○月△日
Y因子はゆっくりの餡子の中に含まれており陰陽玉のように二つの性質がある。
因子が『Z』に傾いている時、そのゆっくりはいわば善良な性格である。
因子が『G』に傾いている時、そのゆっくりはゲスな性格となる。
ゆっくりの中にあるY因子が全てどちらかに傾いているということはなく、二つは常にゆっくりの中に存在している。
Y因子がどちらになっているかは生活環境や教育の仕方によってだいぶ異なるが、野生の通常種のY因子の多くはGに傾いている。
逆に希少種や人間に友好的な群れのゆっくりのY因子はZに傾いている。
赤ゆっくりは親ゆっくりの中身を吸って成長するが、その際に餡子の中にあるY因子も受け取る。
その受け取ったY因子がどちらに傾いているかによって、赤ゆっくりの生まれた直後の気質が変わってくるのだ。
なお、吸い取られたことによって親の気質が変化するようなことはない。
因子はゆっくり内で常に一定の割合を保つようになっており、吸い取られた分は残った因子が吸い取られた因子に切り替わり常に一定の割合を保つ。
つまりZはG、GはZとなる可能性を常に秘めているといえるのだ。
現在ペットとして飼うに値するゆっくりの教育に多大な時間と金が必要とされており負担が大きい。
だが今後の研究次第ではそれが解決し、金ゲスと呼ばれるような個体を出すようなこともなくせるかもしれない。
期待は高まる。
×月○日
安定しない。
因子の人工的な切り替えによってゆっくりの善良化が進むと思っていたが甘かったようだ。
確かに一時的には変化を見せる個体がいたが、時間がたつにつれてだんだんと元に戻ってしまうのだ。
しかも前の状態よりさらにゲス化が進んでいるのだ。
これは人工的な干渉によってゆっくり内部の因子バランスが崩れ、因子がよりGへと傾いてしまったからだと思われる。
ちなみにY因子をすべてZやGへと変えてしまうと、ゆっくりは活動を停止し物言わぬ饅頭へと変化してしまう。
ZとGは全く違う性質を持ちながら、お互いが存在しなくては活動できないようなのだ。
ブリーダーのゆっくりとした教育と長い時間をかけてこそ、Zは安定しGへ傾き抑え込むことができる。
だが我々が求めるの一歩進んだ結果だ。
今後はZへの傾きを安定させる方法、もしくは切り替わることそのものを抑え込む方法を考えなければならないだろう。
△月×日
饅頭が生きているなど神に対する冒涜であり、ゆっくりが生きていること自体が罪である……などとはよく言ったものだ。
Gに傾いたY因子をたった10、善良な金バッチに加えると、周りのY因子も影響を受け、目も当てられないゲスへと変貌するに対して、ゲスに1000、Zに傾いたY因子を与えてもその効果は半日ともたない。
なんと因果なナマモノか。
Zへの切り替え実験は3000を超えたがそれを安定させる術は発見されていない。
逆にGの実験数は50程であるが、多種多様な結果が残っている。
もはやGの研究を進め、ゆっくりの駆除に回した方がいいように思えてしまう。
□月△日
なぜこんなものが出来てしまったのか。
きっかけはY因子に増殖能力を持たせようとしたことだ。
ゆっくりには無害なウイルスをZに傾いたY因子と共に投与するのだ。
中々思うような結果が得られずそれをGで試した。
そして出来上がったのが『G-56』である。
これは危険すぎる。
先に述べたが、ゆっくりのY因子全てがどちらか一方に傾いてしまうとゆっくりは活動を停止してしまう。
しかし『G-56』はそれを覆してしまった。
ゆっくり内部の全Y因子をG一色に染め上げるのだ。
ゆっくりはゆっくりできないものがあるとせいっさいっ!という形を持って集団リンチをするが、『G-56』に感染したゆっくりは他のゆっくりや生物をみると、ゆっくりとは思えない勢いで攻撃を仕掛けるのだ。
己の欲望やゆっくりの為なら他の存在の命など一切顧みないゲスの気質を、狂暴化という形で具現化したのだろうか?
だが自身しか存在しない場所ではおとなしくゆっくりしている。
『G-56』に感染すると食事や睡眠、排せつや生殖行動さえしなくなり(もはやそれらを『ゆっくり』とみなさなくなったのかもしれない)、他の何かが近づかない限りはそこでゆっくりし続ける……ある意味、究極のゆっくりを体現するのだ。
さらに厄介なのは、G-56に感染したゆっくりに触れた他のゆっくりもG-56のゆっくりと同じような行動をとり始めるということだ。
そのゆっくりを調べた結果、体内の餡子にG-56がおり、Y因子をGへと変換している様子が観測できた。
それはまさしく『感染』であり、『G-56』という新たなウイルスが誕生してしまったのだ。
Gの適応能力と耐性には驚きを禁じ得ない。
いまだZにその性質を持たせることは成功していない。
危険ではあるがその性質を『Z』へと流用できないだろうか?
研究を続けるために『G-56』のまりさはラムネ睡眠を施したうえで研究室に保管しておく。
―――以降は白紙が続いている。
『○×新聞 ☆月○日「加工所職員が大けが」』
最近加工所に勤める人間を狙った事件が多発している。
加工所研究課に勤務する研究者は夜何者かに背後から襲われ、全治一カ月の重傷を負った。
事件の背景にはゆっくり保護組織の『ゆっくりんぴーす』が関わっているのではないかと言われているが詳細はわかっていない。
加工所本部は各支部の警備の強化や職員の警護をするとともに警察にも協力を要請。
職員たちやその家族にも十分に警戒するようにと呼びかけている。
<襲撃>
加工所のゆっくり研究室。
ここは研究用のゆっくりや、すでに投薬を終えて以後の経過を見るもの、ある環境においてどんな反応をするかなどを調べるための部屋。
たくさんの通常種ゆっくりが透明な箱に入れられている。
チューブがたくさん取り付けられたもの。
あからさまに精神に異常をきたしているもの。
ただひたすら同じ場所を走り続けさせられているもの。
さまざまなゆっくりがいるが、その共通点はどれもゆっくりできていないことだろう。
その部屋には白衣を纏った研究員の男が一人おり、ある箱の前で何やら作業をしている。
先日『Z-5647』を投薬したゆっくりれいむだ。
このれいむ、金バッチ持ちであったが、飼い主が甘やかしたためにゲス化した金ゲスでいぶである。
「ゆ~おにいさん!ゆっくりしていってね!れいむはおにいさんがゆっくりしてくれたらうれしいよ!」
「ありがとう。れいむもゆっくりしていってね」
投薬からすでに三日が経過しているが、元のでいぶに戻る様子はない。
「最長記録更新だな。れいむ、またちょっと餡子をもらうぞ。少し痛いかもしれないけど我慢してくれ」
「ゆぅ……いたいいたいさんはいやだけどびょうきさんをなおすためならしかたないよ」
投薬れいむには、『れいむはびょうきでそのびょうきをなおすためにあんこをもらっている』と説明してある。
男はチューブを手に取り、れいむの体に付けようとした時だった。
バンッ、と研究室の扉が乱暴に開かれた。
「!? なんだ!部屋のドアはゆっくり開けろと『バリッ』っ!?」
抗議の声を上げつつ振り返ろうとした男だったが、突然体に衝撃が走りその場に倒れこむ。
「!?!?」
「おにいさん!?おにいさん!ゆっくりしてね!ゆっくりしてね!」
投薬れいむの声が響く。
男は床に倒れこむが、かろうじて動く頭を動かし視線を上げる。
そこにはゆっくりれいむのお面をかぶった人間が立っていた。
その手にはスタンガンが握られている。
さらにその左右にはまりさとありすのお面をかぶった人間が立っている。
「な……おま、え……ら……!?」
「ゆー!邪魔な扉を壊すよ!」
「!?」
でかい声を上げて扉を突き破ったのは三メートルほどのドスまりさだった。
「ゆ!お兄さん達!ここがみんなが閉じ込められている場所だね!」
「そうだまりさ。そしてこいつが、みんなを苦しめている悪い人間だ」
「ゆゆっ!人間さん!なんだか苦しそうだけど自業自得だよ!他のみんなはもっと苦しんだんだよ!ここにいるみんなは返してもらうよっ!」
研究員は最近加工所を襲っているやつらがいるということを思い出す。
「(こいつら……ゆっくりんぴーすか?……警備はどうした!?)」
「警備連中はドスのゆっくりおーらでゆっくりしてるぞ。残念だったな』
「!!」
そんな対ゆっくりおーら用の装備など準備していなかった。
「よし。捕まっているゆっくりたちを運び出せ」
「はい」
リーダー格なのであろうれいむの男の命令で、ありすのお面とまりさのお面をつけた二人が動き出す。
「箱さんをドスのお口に入れてね!みんなを運ぶよっ!」
部屋にある透明な箱ごと、ゆっくり達はドスの口の中に放り込まれていく。
防音性なので聞こえないが、嬉しそうな表情で何か言っているものと、倒れた男を見てざまあみろといった表情を浮かべた奴もいる。
「おにーざああああああんん!!」
投薬れいむもそのままドスの口の中に入れられてしまう。
「ぐっ!」
研究員は何とか体を起こそうとした。
「おとなしくしていろ」
れいむ面の男にスタンガンを押し付けられる。
「おとなしくしていればさらに痛い思いはしないぞ」
「リーダー。資料とかはどうします?」
「捨てろ。ゆっくりを苦しめた研究結果など見るのもごめんだ。PCのデータもすべて消去だ」
「はい」
「(くっ……そ……)」
貴重な資料だ。
今まで苦労して調べてきたデータが消えてしまう。
ゆっくりと人間の懸け橋となるはずが……研究員は無念でいっぱいだった。
形は違うがこの研究員も人間とゆっくりの関係を良好にするために頑張っていたのだ。
実験ゆっくりはその為に必要な犠牲―――たとえそれが偽善であっても、人間とゆっくりをつながる懸け橋となるならばと、本当に思っていたのだ。
「リーダー。ここにまりさがいますが、チューブが固定されていて箱が動きません」
ありすのお面を被った女の声がする。
「!!」
その言葉を聞いて研究員はハッとした。
それは『G-56』のまりさのことだった。
常に麻酔用のラムネを箱に満たしていないと目をさまし暴れだす危険があるのだ。
「チューブは麻酔用のラムネだ。無理やり外しても問題ない」
「わかりました」
ありすのお面を被った女の手によってチューブが抜かれる。
ラムネの効果はしばらく続くのでしばらくは寝たままだが……。
「っつ!!やめろ!!」
研究員は声を上げた。
「だめだっ!そいつは危険なんだ!下手したら他のゆっくりに感せ『バチッ』があっ!!」
『G-56』の持つ最も危険な特徴を口にしようとしたが、それは阻まれてしまった。
「おとなしくしていろと言ったはずだっ!!」
「……っ」
「ゆー。人間さん。これもゆっくりがゆっくりするためなんだよっ!そこでゆっくりしていってね!」
ゆっくりの入った箱を含んだままで器用に話すドス。
研究員は再びスタンガンの一撃を受け気を失ってしまった。
こうして『G-56』のまりさを含め、研究所にいたゆっくり達は強奪されることとなった。
そこにあった資料は全て破棄され、PCのデータも消去された。
ドスとお面を被った三人組は、入口に止めていた大型トラックに乗り込むとそのまま研究所を後にした。
<感染>
大型トラックに乗り込んだメンバーとドスまりさ達は、二人は運転席、一人とドスは荷台の中にいた。
「あのじじいやばばあはひどいんだよっ!たくさんのゆっくりにへんのおくすりをいたいいたいでいれたんだよっ!!」
「ぜんぜんゆっくりできなかったんだぜ!ゆるせないんだぜっ!!」
「とかいはじゃないいなかものよ!」
「わからないよ!どうしてあんなことするんだよー!」
研究所から逃げ出すことができたゆっくり達は箱から出され、荷台の中でゆっくりし研究者たちを思い思いになじっていた。
彼らは薬品を投与される前の個体であり特に変化などはない。
加工所研究室で生まれ、加工所で死ぬ実験体ゆっくりだ。
なので生活能力は乏しく、野良や野生になれば間違いなく死ぬ。
メンバーたちはそのことを知っている。
なのでゆっくり達を本部へと持ち帰り、しっかりと自活できる能力を持たせたうえで野に放つのだ。
なお何らかの異常があるゆっくりは治癒不可の場合は安楽死、もしくは治療されてから解放される。
「ひどいよ!どうしておにいさんにあんなことしたの!」
「ゆ~……れいむ。あのお兄さんはひどい人なんだよ。みんなを助けるためには仕方なかったんだよ」
例の投薬れいむはドスに抗議の声をあげている。
自分の病気のために親切にしてくれたと思っている投薬れいむはずっと怒りっぱなしだった。
ドスは投薬れいむをなだめようと必死だ。
ドスと共に荷台に乗り込んだ、まりさのお面だった男は、いまだ眠ったままの『G-56』まりさの箱の蓋を開けようとしていた。
「なんだかやけに頑丈だな……よっと」
工具を巧みに使い、溶接されていた箱の蓋をこじ開ける。
ガコンという音と共に蓋が外れ、まりさは外へと取り出された。
「だいぶ深く眠らされているようだな。よし……ゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」
荷台の中にいる他のゆっくりも反応する。
「ゆ……」
その声に反応してまりさが体を揺らす。
「ゆ!お兄さん!まりさが目を覚ましたの?」
「ああ。ドス、状況を説明してやってくれ」
人間から説明するより、ドスが説明した方がゆっくり達は心を開きやすいのだ。
ドスまりさはまりさの前に立った。
「まりさ!まりさはまりさだよ!ドスなんだよ!大変だったね!でもこの人間さん達はゆっくりさせてくれるよ!」
「ゆぎぃ……」
呻くように声を漏らすまりさ。
「ゆ!まりさ!ゆっくりしていってね!」
ドスが笑顔でそう告げる。
まりさは顔を上げた。
まりさの瞳(正確には眼球結膜という白い部分)が真っ赤に染まっていた。
そして、ドスを静かに見つめていたかと思うと……
『ゆ”っぎぎじぎぎゃああああああああああああああああああ!!』
と、奇声を上げてドスへと飛びかかった!
「ゆぅー!?」
カプリとドスの腹にかぶりつく『Gまりさ』。
だが皮が分厚いドスにダメージはない。
「や、やめてね!まりさ!離してね!」
「どうしたまりさ?」
「お、お兄さん!」
ドスまりさが男の方に振り返った。
Gまりさはドスに噛みついたまま男を見た。
するとドスの体から離れ、一直線に男に飛びかかった。
「ゆっぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「!!」
その速さは普通のゆっくりのそれではなかった。
飛行できる最強の捕食種ふらんやきめえ丸とまではいかないが、通常種最速のちぇんを軽く超えている。
顔に飛びかかってきたGまりさをすんのところで捕まえたが、バランスを崩してしりもちをつく。
「くっ!?」
「ぎいいいいいい!!」
真っ赤に染まった目を大きく見開き、口からうす赤い涎を垂れ流しつつ、男に襲いかからんと暴れた。
「やめろ!!」
男はGまりさを放り投げた。
Gまりさはトラックの壁にぶつかった。
「ゆ!まりさだいじょうぶ!?ゆっくりしていってね!」
たまたま近くにいた投薬れいむはGまりさの尋常ではない様子をみて声をかけた。
「ゆぎゅぎいいいいいいいいいいいい!!」
次の瞬間、投薬れいむの顔にGまりさが噛みついた。
「ゆぎいいいいいいいいい!?!?」
突然顔面に走った激痛に投薬れいむは声を上げる。
「なにずるのおおおおおおおおおおおお!!」
Gまりさはそのまま歯を食いしばっていく。
「いだいいいいいいいいいい!!れいむのおがおがぢぎれぢゃううううううううううう!!」
ミチミチと音を立てる投薬れいむの顔。
そして『グチュリ』という音を立てて、投薬れいむの顔面が食いちぎられた。
逃げようとしていた投薬れいむの体とひっぱっていたGまりさの体はそれぞれ別方向に転がった。
投薬れいむの中身の餡子が飛び散る。
前半分を食いちぎられた寒天の眼球がべちゃりと転がり落ちる。
「れいぶのうづぐじいおがおがあああああああああ!!ぎらめぐほしぼじのようなおべべがああああああ!!」
投薬れいむは叫び声をあげる。
「……」
ゆっくり達は衝撃のスプラッタシーンを見て固まる。
人間はその狂暴性を信じられなくて固まった。
「ゆぎげぎゃあぎゆげええええええ!!」
その停止した空間の中で唯一動けたのはGまりさだけだった。
食いちぎった投薬れいむの一部を食べることなどせずに、べちゃりと床に吐き捨てると、他のゆっくりへと体当たりを行った。
「ゆべっ!」
「「「「「うわああああああああああああ!!」」」」」
時間が動き始め悲鳴が上がる。
「ゆぎいいいいい!!」
「やべっ!ゆげべっ!どぼじっ!でえええっ!ゆげええええ!!」
「ゆぶげっ『ブチャ』」
トラックの壁と挟み込まれるように体当たりを受けたゆっくりまりさは数回の体当たりで皮が破れ行動不能となった。
「ゆぐっ……いだいぃぃぃ……」
まりさが呻くだけで動かけなくなると、Gまりさは次の標的に移った。
近くにいたちぇんに体当たりをし、ちぇんを吹き飛ばす。
「わがらなっ!?」
ちぇんはごろごろと転がっていく。
「やめなさいっ!このいなかものおおおおおお!!」
ありすがGまりさを止めようとして飛びかかった。
よそ見をしていたGまりさはその体当たりをまともに受けて転がる。
「ゆふん!いなかもののまりさはすこしいたいめをみるといいわ!」
普通のゆっくりならばここで、大して痛くもないのに悲鳴を上げるだろう。
だが、Gまりさはすでに普通のゆっくりではない。
Gまりさはすぐさま身を起こし、自分に体当たりしたありすに反撃する。
ドガッという音ともにありすが吹っ飛ぶ。
「ゆびぎぃ!?いだいいいいいいい!!どがいばなありずになに『ゆぎいいいい!!』ゆべっ!うげっ!やべっ!ごのっ!いながぼっ!やべっ!『ブチャ!』」
倒れたありすを上から踏みつぶし破裂させる。
「やめてねっ!」
ここでドスが動いた。
Gまりさを舌で弾き飛ばし、壁に激突させる。
「ドス!?」
男はただただ立ち尽くすばかりだ。
ドスの攻撃はかなり力のこもった一撃で、飛ばされたGまりさは壁に激突し、皮が破れ、餡子が吹き出し、歯が折れ、片眼が転がり落ちた。
「どうしてこんなことするの!!みんな同じゆっくりでしょ!まりさはそこでゆっくりはんせ『ゆぎゃああああああああああああああああ』ゆっ!?」
ズリズリ
と、流れ出る餡子も意に反さず、Gまりさは床這ってくる。
真っ赤に染まった目は、狂気に満ち溢れている。
「ゆひっ……」
ドスは自分よりはるかに小さいゆっくりに恐怖した。
「なんなんだよ……こいつ……」
普段はゆっくりへの愛護精神に溢れている男も、この異常なGまりさに大してはさすがにそんな気も起きないようだ。
一方、先ほどGまりさに飛ばされたちぇんを、ぱちゅりーが介抱していた。
「むきゅう。ちぇん、だいじょうぶかしら?」
「い、いたいんだよー……たすけてよー」
「むきゅん。だいじょうぶよ。おけがもないようだし。すぐよくなるわよ」
「わからないよー。わか、ら……な……」
「むきゅ?ちぇん?」
「わが……わがっ……わが、がががががががががががががががっががっが!!」
突然ちぇんが痙攣を始めた。
「むぎゅううう!?ぢぇんんんん!?」
「ゆげはっ!」
そして吐餡。
「ぢぇんんん!!あんござんはいちゃだめよおおおおお!!むぎゅ!?」
その餡子は真っ赤だった。
そして、吐餡が収まるとちぇんはゆっくりとぱちゅりーに向き直った。
「むきゅ?ちぇん?」
「……」
そしてゆっくりとぱちゅりーに近づき……
「わっがあああああああああああああああああ!!」
「むぎゅうううううううううううう!?」
突然上がった叫び声に、ドスと男は目を向けた。
そこでは先ほどGまりさに体当たりを受けたちぇんがぱちゅりーに噛みつき、その中身をまき散らしているところだった。
「どぼじでぢぇんがぱちゅりーを襲ってるのおおおおおおおお!?」
「何が……起こっているんだ……!!」
やがてぱちゅりーは中身を大量に失ったことによる失餡死をした。
「わぎゃあらあああああああああああ!!」
「ゆううううううううう!!」
ちぇんは近くにいた他のゆっくりに襲い掛かる。さらには、
「ゆぎいいいいいいいいいいいいい!!」
先ほどGまりさに体当たりをされ、皮が破れ行動不能になったまりさも同じように奇声を発していた。
先ほどまでは痛みを訴えるだけの爆ぜ饅頭だったが、まるで自分の体の痛みなど気にしていないかのように、他のゆっくりへ赤く染まった目を向け、狂気の奇声をあげている。
「くそっ!」
そこでやっと男は動き出した。
荷台のはじっこの方に置いてあったスコップを手に取り、Gちぇんに振り下ろす。
「わがばっつ!!」
赤い餡子を飛び散らせ、Gちぇんは床のシミとなった。
「うわああああああああ!」
続いて男はGまりさにスコップを振り下ろした。
「ぶぎっ!」
ほとんど動けなかったGまりさもつぶれ散った。
「ゆぎん!!」
続いて半分つぶれていたまりさにもとどめを刺す。
「はぁっはぁっ……」
残ったのは真っ赤に染まった餡子の塊だけ。
「くそっ。なんなんだよ一体……」
「「「「「ゆっぐりでぎないいいいいいいいいいい!!」」」」」
トラックの中にいたゆっくりが叫びだす。
「ぐざいいいいいい!!ゆっぐりでぎないよおおおおおおおおお!」
「もうやだ!おうぢがえるううううう!!」
「しまった!死臭か……!」
死んだゆっくりからはゆっくりにしかわからない死臭が漂う。
今ここには死んだゆっくりがたくさんいる。
その臭いがトラックの中に充満しているのだろう。
「いだいよおおおおおおお!!れいむのおがおざんがあああああ」
一方、初めに食いつかれた投薬れいむは己の顔の痛さに叫ぶばかりだった。
「お、落ち着けみんな!大丈夫!大丈夫だよ!そうだ!ドス!ゆっくりオーラでみんなを……」
男はドスに目を向けた。
「……ドス?」
「ゆぎっ……!ゆぐっ!ゆげげげげげげ!」
ドスの様子がおかしい。
何やらびくびくと細かく痙攣をしており、目が裏返っているのだ。
「ど、ドス?」
「お、おにいざ……にげ、にげでぇぇぇぇ……どず、ぼう……おがじ……ぐぅぅ!!」
男は見た。
ドスの白い眼球結膜の部分が、じわじわと真っ赤に染まっていく瞬間を。
「ま、まさ……か……」
男は最悪のシナリオを思い描いた。
慌てて運転席の方に呼びかけた。
「とめろっ!!車を止めろ!!」
「どうした?」
運転席と荷台をつなぐのぞき窓が開く。
「いいから止めろ!!早く車から降りるんだ!!」
「なんなんだ一体?」
「いいから早っ……う、うわああああああああ!!」
男が消える。
「お、おい?うおっ!」
次の瞬間、トラックにすさまじい衝撃がはしった。
「どうしたんですかっ!?」
トラックを運転する女は急な衝撃にハンドルを取られそうになりながらも尋ねる。
「わ、わからん!一体な、に……」
「リーダー?後ろで何……が……」
ミラーを覗き込んだ女の目に飛び込んできたのは―――
のぞき窓からこちらの様子をうかがう、真っ赤に染まったドスの巨大な目だった。
「つ、つぶれぶぅぅぅぅ……」
「どずぅぅぅどぐんだぜぇぇぇぇ」
「やめろぉぉぉぐぞどずうううう」
どうやら荷台にいたゆっくり達を巻き込んで運転席側に突っ込んできたようだ。
「ど、ドスっ!?」
「ゆごおおおおおおおおおお!!」
ドスの目がのぞき窓から離れる。そして―――
「馬鹿っ!やめろっ!!」
ドゴンッ!
「きゃあああああああああ!!」
「うわっ!」
再びトラックにはしる衝撃。
いつの間にか外は雨が降っており、道路が濡れているということもありトラックは大きく車体を揺らせる。
「とめろっ!止めるんだ!」
「ダメです!タイヤが!!」
路上の雨でタイヤが滑り、トラックは操作不能となってしまった。
「落ちる!!」
「逃げろっ!!」
トラックはちょうど山の中にある本部へと向かっており、山の道路を走っていた。
制御不能となったトラックはそのままガードレールへと突っ込んでいき―――空中へと飛び出した。
運転席にいた二人は途中でトラックを脱出した。
荷台にいた男もドスが突っ込んでくるのをぎりぎり避け、荷台を開けて外へと逃げていた。
操作不能となったドスまりさを乗せたトラックは崖下へと落ちて行った。
<駆除と保護>
高い木々が並ぶ森の中を迷彩服を着た二人組の男が歩いている。
その手にはアサルトライフルが握られており、一見サバイバルゲームをしに来たように見える。
煙草を咥えた老齢の男が呟く。
「静かだな」
日焼けをした男がそれに答える。
「ええ」
二人は森の中をゆっくりと歩いていく。
そしてあるところまで来て歩みを止めた。
「ここだな。群れがあったポイントは」
「はい。衛星写真によるとそうです。まあ、例の日から姿を見せていませんが」
空中から撮った思われる航空写真を見つつ男が答える。
写真には森の中に点在するゆっくりの姿がはっきりと映っている。
「よし。始めるか」
老齢の男が煙草をいったん手に取り、空気を吸い込む。
「ゆ っ く り し て い っ て ね !!」
森の中に響き渡る大きな声で、ゆっくりと同じ挨拶を高らかに叫ぶ。
「さて……」
再び煙草を咥える。
ザザッ
草むらが動く。
「来ましたね」
二人はアサルトライフルを構える。
安全装置を外す。
そして草むらから―――
「ゆっぐぎいいいいいいいいいいいいい『パァン』ゆげぎょ!!」
赤く染まった目をしたゆっくりまりさが男たち向かって飛びかかろうとしたが、アサルトライフルの弾がその顔の真ん中を正確に捉えまりさを吹き飛ばす。
「ゆぎぃっ!!ゆぎっ!!ゆ……!!ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
体中から流れ出る赤い体液をまき散らし、口から赤い餡子を吐き出しつつ、そのまりさは動かなくなっていった。
「レッツ、パリィ……」
ザザザザザ
男たちの四方から何かが来る気配。
「「「「「ゆぎぎゃげぎゃぎゃぎゃやあああああああああああああ!!」」」」」
れいむ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん、ぱちゅりー。
かつてこの場所に群れを作っていた群れのゆっくりたちが、奇声を上げて男達に向かって殺到する。
それはいつものゆっくりのようなとろくさい動きではなく、小型犬が走り寄ってくるようなぐらいの速さだ。
『ダダダダダダダダダダ』
「ゆぎょ!」
「ゆぎぇべ!」
「ゆげばあ!」
だが男たちは落ち着いてアサルトライフルの引き金を弾く。
弾丸を食らったゆっくりは先ほどのまりさと同じように、のた打ち回って死んでいく。
「数が多いな。あれを使うぞ」
「はい」
日焼けの男は腰に下げていた細長いパイプのようなものを手に取った。
「投げます!」
パイプについていたボタンを押して、男はそれを投げた。
『ゆっくりしていってね!』
パイプからゆっくり特有の甲高く耳障りな音が流れる。
それは音程を高くしてあり、聞く方にとってはかなり耳障りなものだった。
そして男たちに向かっていたゆっくり達はそれに反応し、そのパイプの方に向かって跳ねていく。
『ゆっくりしていってね!……ゆっくりしていってね!…ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!』
パイプから流れる声の感覚がだんだん狭くなっていく。
ゆっくりたちはパイプに群がり、パイプに対して踏みつけや噛みつき、体当たりをしようとしている。
『ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっく!ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆーーーーーーーー!!』
音の間隔が最小に達した次の瞬間『バオン!!』という爆発音と共に赤い煙が舞い上がる。
群がっていたゆっくり達は空中に吹っ飛んだり、近くの木に叩きつけられたりした。
パイプが爆発時にまき散らしたのは辛み成分を含んだ煙だ。
吹っ飛ばされたゆっくり達は煙にまかれ、やはり中身の餡子をまき散らしつつ死んでいく。
空中で餡子が飛び散るので、まるで雨のように地面に降り注いだ。
だいぶ数が減ったが、それでもゆっくりはまだいた。
「よし。残りを片付けるぞ」
「はい」
男たちは再びアサルトライフルの引き金を弾いた。
これはG-56に感染したゆっくりの駆除である。
G-56に感染してもゆっくりはゆっくり。
辛い物を体に受けると体が拒絶反応を起こし餡子を吐き出すのだ。
やがて失餡多量で死に至る。
中にいるG-56も辛み成分に弱くその中で死滅するのだ。
男たちが撃っているアサルトライフルの弾は、先ほどの『からしボム』と同じく辛み成分を凝縮させたもので、ゆっくりに非常に効果的なのだ。
そして、男たちが着ている迷彩服をよく見るとこう書いてあった。
『加工所ゆっくり駆除課』
例の事故から二週間。
トラックは自然公園のど真ん中に落ちた。
そこはゆっくり愛護家が管理する公園で、野生ゆっくりが全国で最も多く生息していた。
崖から落ちたトラックは大破し、中にいたゆっくりはドスを含め全滅した。
が、事故現場近くに生息してたゆっくり達がドスの餡子を食べ、二次感染が引き起こされたのだ。
後にわかったことだが、Gー56に感染したゆっくりは音に非常に敏感になる。
感染したゆっくり達は森に響く他のゆっくりの声や鳥や虫の声に引き付けられ拡散し、Gをそこら中にばらまき始めたのだ。
結果、あの襲撃から次の日の夜までに、その付近全体のゆっくり達はGに感染。
さらに二週間を経て瞬く間に自然公園全体を汚染していった。
広がる前に手は打てなかったのか?
そこが人間の愚かなところである。
ゆっくりんぴーすと加工所。
今回の研究所襲撃の一件がトラック事故のことも重なり世間へと漏れ出した。
加工所はゆっくりんぴーすを研究者襲撃や研究所襲撃事件の黒幕と叫んだが、ゆっくりんぴーすは加工所を非道の研究を行っていたとして世間にアピールした。
そんな睨み合いをしている間にGはどんどん広がっていた。
そして公園利用者が異様なゆっくりに襲われるという事態が多発し始めたところで、Gが野生のゆっくりの間に蔓延していることを知った。
人々はゆっくりというものが得体のしれない病気にかかる、危険な存在ではないかと危機感を持ち始めた。
加工所はゆっくりという製品を扱う以上、これ以上ゆっくりという商品の信用を失うわけにはいなかった。
現に加工所のゆっくり製品の売り上げ、ペットとしてのゆっくりの売り上げが減少傾向にあった。
ゆっくりんぴーすも、ゆっくりがこれ以上無意味に死ぬのは良しとしなかったし、害獣として悪名高いゆっくりの評判もさらに悪くなる。
何より、過激な運動で悪い噂(実際にやっているが起訴には証拠不十分)が絶えないゆっくりんぴーすのイメージがさらに悪化する。
そこで加工所とゆっくりんぴーすは一旦停戦することにした。
加工所は感染したゆっくりの駆除へと乗り出した。
ゆっくりんぴーすとしては感染したゆっくりの駆除は黙認することとした。
その代わり彼らは他の方法でゆっくり達を守ろうとした。
そしてお互いに情報を交換し合い、Gゆっくりの駆除と無事なゆっくりの保護を進めることにした。
無論世間一般に本当のことは知らされていない。
事実を知らない人の間では、ゆっくりの間で危険な病気が流行しており、感染したゆっくりを加工所が駆除し、ゆっくりんぴーすが未感染のゆっくりを保護しているという認識だ。
加工所やゆっくりんぴーす内でも真実を知っているのはごく一部の関係者のみである。
ゆっくりの群れを殲滅しているのは加工所の駆除課である。
森の中のあちこちで銃声とゆっくりの奇声が響き渡る。
この森がゆっくりが現れる前の静けさを取り戻すのももうすぐだろう。
ではゆっくりんぴーすは何をしているのかというと、それは駆除が行われる数時間前となる―――
森の中のとある場所で二人の男女がゆっくりを前にして、何やら話している。
赤ゆっくりから成体ゆっくりまで、群れのゆっくりが一堂に会し人間の話を聞いている。
「むきゅ。つまりどういうことなの?」
「ああ、これを見てほしいんだ」
一部のゆっくりは人間の話を興味深げに聞いている。
「にんげんはさっさとあまあまよこしてね!れいむはしんぐるまざーでたいへんだんだよ!」
「にんげんがなんのようなんだぜ!?ゆ!わかったのぜ!まりささまのどれいになりにきたのかだぜ!」
「しゃっしゃとあみゃあみゃもっちぇこい!くしょにんげん!」
群れの大半は人間に対して舐めた態度をとり罵声を浴びせている。
「……」
女性の方はゆっくりの言葉を無視し、持ってきたモニターを操作する。
「ゆゆーん!おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよお!」
「ゆふふ。おちびちゃんたち!きょうはおそとでひなたぼっこするよ!」
「「「ゆー!!」」」
そこに映っていたのは仲睦まじいゆっくりまりさとれいむ、そしてその子ゆっくり達だ。
草原の中、親子で日向ぼっこをしたり、草を食んだり、とてもゆっくりしている様子だ。
この映像は、この森のある場所で撮影された映像だ。
同族のゆっくりとした映像を見て群れのゆっくりたちも「ゆっくり~」「ゆっくりしてるねぇ」「ゆっきゅり!ゆっきゅり!」とニコニコ顔である。
「ゆゆっ?だれ?まりさはまりさだよ!ゆっくりしていってね!」
映像の中の親まりさが何かに声をかけた。
どうやら他の何かが近くに寄ってきたらしい。
「ゆぅ?みたことないありすだね!れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!」
どうやらゆっくりありすが現れたらしいが画面にはまだ映っていない。
親れいむはありすに向かってお決まりのあいさつをする。
「ゆゆっ。ありす!あいさつされたらあいさつするんだよ!だまってるとゆっくりできないよ!」
どうやらありすは無言だったようで、親まりさが文句を言う。
「ゆ!ありす!きいてるの?あいさつはきほんちゅうのきほんなんだよ!そんなのおちびちゃんでもしってるよ!おちびちゃんたち!ありすにみせてあげてね!」
続いて親れいむが自分の子供たちに言う。
「ゆゆ!わかっちゃよ!」
「れいみゅあいしゃつできりゅよ!」
「きゃっこよくきみぇるんだじぇ!」
まだ赤ゆっくり言葉が抜けない子ゆっくりのようだ。
子ゆっくり三匹が画面の外に消える。
そして精一杯大きな声が聞こえた。
「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」」」
「ゆがああああああああああああああああああ!!」
それに応えたのはありすの奇声だった。
ブチャ
「「ゆ?」」
何かがつぶれる音と、親ゆっくり二匹の固まった顔。
「「ゆぴいいいいいいいいいいい!!」」
子ゆっくり二匹の悲鳴が上がる。
「「まりさ(れいむ)のめにいれてもいだぐないぜがいいぢだいじながわいいおぢびぢゃんがああああああああああああああああああああああ!!」」
どうやら三匹のうち一匹がありすに潰されたらしい。
「ごのげすありずがああああああああ!!よぐもおぢびぢゃんおおおおぉぉぉおお!!」
親まりさが怒りの形相で画面外に消えていく。
「おぢびゃんばやぐにげでえええええええええええええ!!」
親れいむがその場で叫んでいる。
画面外からは親まりさの絶叫と、子供を潰したありすの声が響く。
「じねえええええええええええええええ!!」
「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」
「まりさああああああああ!!」
「「おちょうしゃんんんんんんんん!!」」
その場にいたゆっくりの悲鳴がいろいろ混ざり合い何が何だかわからない。
「まりざあああああああああああ!!だいじょうぶううううう!?ゆっぐりじでねええええええ!!」
「おちょうしゃんゆっきゅりいいいい!!」
「まりちゃがにゃおちてあげりゅよ!ぺーりょぺーりょ!」
親れいむも画面外へと消えていく。
どうやら親まりさが勝利したようだ。
「れ、れいむ……おちび……まりざはおぢびの……がだぎうっだん……ぜ……」
「おはなししちゃだめだよおおおお!!あんござんがでぢゃうよおおおおおおおお!!」
「き、きくんだぜれいむ……ば、ばりざはも……もう……ゆ!?」
「ぞんなごどいばないでえええええええええええ!!」
「おぢょうしゃんんんん!!」
「ぺーりょ!ぺーりょ!……ゆぴっ!?」
音声だけしか聞こえてこないが、親まりさと親まりさをぺーろぺーろしていた子まりさに変化があったようだ。
「まりさあああああああ!!じっがりじでえええ!!まり……ゆ?まりさ?おめめがあかいよ?……だめだよ!うごくとあんこさ……まり……?ゆ!?」
「まりちゃどうちたの?ゆっきゅりちちぇ『ゆびいいいいい!!』ゆうううううう!?」
「いだいいいいいいいい!!れいむのびがおがあああああああああ!!までぃざああああああ!?!?どぼじでごんなごどずるのおおおおおお!!!」
「ゆがあああああああああああああああああああ!!」
「ゆびいいいい!!」
「ゆうううう!!まりちゃがああああ!!かじょくのしゅえっこあいどりゅまりしゃがああああああ!!」
「ゆぎい!やべでえ!!れいむをがまないでええええ!!あがっ!!あぎっ!!ゆぎいっ!?」
「きょわいよおおおお!!」
ぴょんぴょんと跳ねる音がして、画面に子れいむが戻ってくる。
だが、それを覆う黒い影が。
「ゆうううううう!もういやじゃ!おうちきゃえ『ビチャ』ゆぐびっ!!」
それは赤い体液を体から流す親まりさだった。
子れいむはその下敷きになり、潰された際に飛び散った餡子がカメラに付着した。
親まりさは体の一部が破れ、餡子が流れ出しているが、それを気にする様子もなく動いている。
「ぎぎぎぎ……」
己の子供を潰しても何も思うところがないのか、赤く染まった目をぐりんぐりんと動かし、唸り声をあげている。
「ゆー!まりさーれいむーどこにいるのー!おさがよんでるよー」
他のゆっくりの声が響く。
その声に反応し、親まりさがくわっと目を見開き、声のする方向に体の向きを変えた。
そしてゆっくりらしからぬ速さでカメラの画面外へと消えていく。
「ゆゆっ。れいむ!まりさ!おさがみんなをあつめてるよ!なにかたいせつなおはな……ゆ?れいむ?まり……いぎいいいい!?どぼじでれいむにがみづいでぐるのおおおお!!」
「ゆぎぎぎぎぎいいいいい!!」
「ゆがっゆがっ!ゆぎゃあああああ!!」
「ゆびぎびびびび!!」
家族を呼びに来たれいむの悲鳴と三匹の唸り声がカメラに届く。
やがて草原には何もいなくなった。
遠くからゆっくりの悲鳴が聞こえた。
「「「「「どぼじでごんなごどになっでるのおおおおおおおおおお!?」」」」」
映像が終わり、数十秒後に群れは絶叫に包まれた。
男は群れに『これが今ゆっくりの間で流行っている病気の映像だ』と説明した。
「そんなのゆっくりできないよおおおおおおおおおお!!」
「わがらないよおおおおおおおおおおおおおお!!」
「おばけしゃんごわいよおおおおおおおおおお!!」
だが、男は安心するように言った。
自分たちは君たちを保護しに来た。
病気にかからないゆっくりぷれいすに連れて行ってあげようと。
そしてそこにはドスもいると伝えた。
「ゆっくりりかいしたよ!!」
「まりさたちはえらばれたゆっくりなんだね!」
「えらくってごめんねーーー!!」
「にんげんははやくぱちゅりーをほごしなさい!!」
「どすがいるのかだぜ?ゆふふ……どすをりようしてにんげんをしはいするのぜ……!」
こうしてゆっくり達は、空から来たヘリコプターが落とした箱の中に入っていき、そのまま隔離施設へと連れていかれた。
「これでこの区画は終了ね」
「はい」
残されたのは男女二人。
その胸には『ゆっくりんぴーす・ゆっくり保護部隊』と書かれていた。
目的を終えた二人は、森から出るために公園内のあぜ道を歩いていた。
その道中、目の前を何かが横切る。
「ゆっ!にんげんさん?ゆっくりしていってね!」
一匹のゆっくりれいむだった。
それに答えたのは男だった。
「ああ。ゆっくりするよ。れいむはこの近くのゆっくりかな?」
「ゆっ!そうだよ!れいむはあっちのほうにあるむれのゆっくりだよ!」
「なるほど。そういえば最近、変なゆっくりを見なかったかな?」
「ゆ?へんなゆっくり?」
「赤いお水を体から流してて、ゆっくりしていってね、を言えないゆっくりなんだが」
「ゆゆ~?そんなへんなゆっくりみたことないよ!それにあいさつもできないなんてかわいそうなゆっくりだね!」
「そうだな。れいむ。そんなゆっくりが居たら絶対に近寄っちゃいけないよ?れいむがゆっくりできなくなってしまうからね」
「ゆん!それはいやだよ!れいむはゆっくりしたいよ!ゆぅ……おにいさんたちもきをつけてね!そんなゆっくりがいたらおにいさんたちもゆっくりできなくなっちゃうよ!」
れいむの言葉を聞いた男は、少し悲しそうな顔をした。
「なぁれいむ。よかったら……『ダメよ』……っ」
何かを言おうとした男の言葉を女が遮る。
「ゆぅ~?おにいさんどうしたの?ゆっくりしていってね!」
「いや……なんでもない。ゆっくりしてるよ。さ、もうお行き。夕方だし、そろそろれみりゃが出る頃だろ?」
「ゆ!そうだよ!れいむはゆっくりしないでかえるよ!じゃあねおにいさん!ゆっくりしていってね!」
「ああ。ゆっくりしていってね」
れいむが草むらの中に姿を消す。
男は作り笑顔でその様子を見守っていた。
「まさか他にも未感染の群れがあったとはね……」
意外そうに女は呟く。
「ならっ……!」
男は納得できないといった表情で女に言う。
「ダメよ。もう時間切れ。あの群れだって奇跡なんだから。加工所の連中も『G』も待ってはくれないわ」
女は道を歩きつつ言う。
男は後ろをついていきながらなおも食い下がる。
「でも今わかったじゃないですか!あの群れならさっきの群れより人間に友好的で……!」
「なら保護部隊の運営費用をあなたが全額負担する?すでに枠組みが決まってる保護区の拡大を本部に申し出る?それとも、保護したゆっくりの素行が悪い連中を潰して枠を作る?」
女の声はどこまでも冷静。
完璧に割り切った様子がうかがえる。
「そんなことっ……できるわけないじゃないですか!!」
男の方は葛藤していた。
自分の無力さを、現実を、呪う響き。
「Gはどんな力を持っているかわからない。被害を最小限にするには大元から絶つしかない。ゆっくりの未来を繋ぐための必要な犠牲なのよ」
たった二週間でこの広大な自然公園を汚染した『G』
それが世に放たれればとんでもないことになる。
加工所は自然公園全域の即時駆除を訴えたが、希少種や未感染の群れの保護をゆっくりんぴーすは求めた。
加工所としては通常種の群れなどはどうでもいいが、希少種となると話は別だ。
加工場は3日の猶予をだし、ゆっくりンぴーすのメンバーは総出で自然公園を回った。
その結果いくつかの未感染の群れや、希少種が見つかったが、保護したのはコンピュータでランダムで選ばれた群れと全希少種だけだった。
そしてゆっくりんぴーすの作った偽りの自然の中でゆっくりんぴーす所属のドスに統治させるのだ。
保護されることが決まった群れのゆっくり達の性格などは関係ない。
先ほどの群れのように、人間を恐れず、明らかにゲスな気質を持つゆっくりが多くいる群れも保護しなければならない。
そしてたとえどんなに善良なゆっくりがいる群れでも、選ばれなければそのまま全滅する運命が待っているのである。
現場で活動する隊員にとっては納得できないことであるが、会議室で指揮しかとらない上層部は、保護したゆっくりの数を報告書で確認し、自分たちの愛護心を満足させているのだ。
「Gが落ち着くまでゆっくりの未来を繋げるのが私たちの役割よ」
男のように葛藤しながら活動する者もいれば、女のように全てを割り切って活動に専念する者もいた。
その時だった。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいい!!」
「「!!」」
森の中に甲高い奇声が響いた。
その声は先ほどのれいむが向かった方向からだ。
「いだいいいいい!!れいむううううううう!?いぎなりなにずるのおおおおおお!!」
「ああああああ!!ありずのどがいばなおぢびぢゃんがあああ!!」
「ゆぎいぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」
「やべでえええええ!!ぢぇんのじっぼがまないでええええええええええ!!」
「たちゅけちぇええええええ!!おかあしゃ……ゆ?おかあしゃ?どうちておめめがあかぴぎゅう!!」
「始まったようね」
「っ……」
そしてそれが皮切りになったかのように、四方からゆっくりの叫び声が響き始める。
「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」
「ゆっぐりじでええええ!!ゆっぐりじでいっでええええええええ!!」
「ゆぎっ!ゆぎっ!」
「うーうるさいんだどお~。おまんじゅうのぶんざいでなまいき……う?ううっ?……うぎぎぎぎっ!ぎぎぎぎいいいいいい!!」
「じねえええええええええ!!ゆっぐりでぎないゆっぐりはじねえええええええええええ!」
「ゆぴいいいいいいい!!」
「たしゅけちぇえええええええええ!!」
「ゆああああああああああああああ!!」
「行くわよ」
「……」
二人は山を降りていく。
保護部隊としてここでやる仕事はもはや済んだのだ。
公園を出ると、出入り口を封鎖しているゆっくりんぴーすのメンバーが出迎えてくれた。
「お疲れ様です」
「ご苦労様」
「……」
「間もなく、この区画も加工所の駆除が始まります。撤収準備に入ります」
「了解」
「……」
隊員と女は去っていく。
「……どうして、こんなことになったんだ……」
男は暗闇に沈んでいく森を悲しそうな目で見つめ呟いた。
<『G』研究レポート>
『Gゆっくり』および『G-56』の特性を大まかに上げる。
・Gゆっくり
①音や動くものに非常に敏感になり、それらをゆっくりしていないものとみなし攻撃を仕掛けてくる。
②Gゆっくりのみでいる場合はゆっくりしている。が、Gに非感染の個体や他の生物がいると襲い掛かる(ゆっくりしていないものとみなして)。
③狂暴性が上がり、無かった知能がさらに落ちたGゆっくりだが、餡子に刻み込まれた本能や情報はある程度残っている(食事や排せつ、すっきりーをする知能ももはや無いようだ)。
④赤い体液が表面を覆っており、これにもG-56が含まれている。当然これに触れたゆっくりも感染する。何故、このようなものが出ているかは不明(他の細菌からの保護膜かもしれない?)
⑤なお赤ゆっくりは変化に耐えきれず感染直後に死亡する
・G-56
①ゆっくりの特性を受け継いだのか『辛み』や『苦味』に弱い。逆に甘味物の中で、Y因子がない場合、活動を停止した状態で冬眠している。
②Y因子を持つゆっくりの皮や餡子、体液の中のみ生息することができ、ゆっくり同士のすーりすーりやすっきりーなど、触れ合う行為によって伝染する。うんうん、しーしーにも含まれ、ソレに触れても感染する。それから出てしまうとすぐさま死滅してしまう。殺傷力(感染ゆっくりは厳密には死んでいないが)は極めて強いが、感染力はそこまで高くない(自然公園全域まで広がったのは対応の遅れが原因)。
③なお、死んだゆっくりを再活動させるような力はない。あくまで生きたゆっくりに感染する。
④『G-56』も未だ安定しない。突然変異を起こす可能性があるので、Gゆっくりが生息していた地域の洗浄は念入りに行う必要があるだろう。
あとがき(容量ギリギリなので手短に)
1幕、お読みいただきましてありがとうございました。
結末までは決まっていて、上げたからには続きをなるべく早めに上げます。ゆっくりとお待ちください。
では。
観察 考証 パロディ 改造 日常模様 戦闘 家族崩壊 同族殺し 駆除 群れ 野良ゆ ゲス ドスまりさ 自然界 加工場 現代 愛護人間 独自設定 某ゾンビ系映画&ゲームのパロを多く含んでおります
☆作者は絶対あきです(お久しぶりです)。
☆このSSは某サバイバルホラーゲーム、某FPSゾンビゲー、某ホラー映画の成分を多分に含んでいます。
☆ですがグロ・ホラーな雰囲気は出しきれてないです。
☆遺伝子とかの知識に関しては餡子脳なのでそこらへんは適当です。
☆それでもよろしければどうぞ……ゆっくりよんでいってね!!
<加工所・ゆっくり研究部門研究員の記録>
○月×日
ゆっくりは非常に不思議なナマモノである。
あるゆっくりショップで生まれた、金バッチ付きの両親を親とする個体が生まれてから数秒後には、初めて見るはずの人間を見下し、暴言を吐き、糞尿をまき散らし、典型的なゲスとして処理される。
その一方で人間を一度も見たことないはずの野生の希少種が、人間に対してきわめて友好的にあいさつをし、人間の言葉に対して素直な理解を示し、その力量を悟り、善良なゆっくりとして人と友好的な関係を維持する。
基準はあくまで『人間から見たもの』であるが、ゆっくりのこの極端な気質の違いに関しては長く研究されてきた。
そしてついにその謎がついに解明された。
『Y因子』。
この物質がゆっくりの気質を分ける鍵だったのだ。
○月△日
Y因子はゆっくりの餡子の中に含まれており陰陽玉のように二つの性質がある。
因子が『Z』に傾いている時、そのゆっくりはいわば善良な性格である。
因子が『G』に傾いている時、そのゆっくりはゲスな性格となる。
ゆっくりの中にあるY因子が全てどちらかに傾いているということはなく、二つは常にゆっくりの中に存在している。
Y因子がどちらになっているかは生活環境や教育の仕方によってだいぶ異なるが、野生の通常種のY因子の多くはGに傾いている。
逆に希少種や人間に友好的な群れのゆっくりのY因子はZに傾いている。
赤ゆっくりは親ゆっくりの中身を吸って成長するが、その際に餡子の中にあるY因子も受け取る。
その受け取ったY因子がどちらに傾いているかによって、赤ゆっくりの生まれた直後の気質が変わってくるのだ。
なお、吸い取られたことによって親の気質が変化するようなことはない。
因子はゆっくり内で常に一定の割合を保つようになっており、吸い取られた分は残った因子が吸い取られた因子に切り替わり常に一定の割合を保つ。
つまりZはG、GはZとなる可能性を常に秘めているといえるのだ。
現在ペットとして飼うに値するゆっくりの教育に多大な時間と金が必要とされており負担が大きい。
だが今後の研究次第ではそれが解決し、金ゲスと呼ばれるような個体を出すようなこともなくせるかもしれない。
期待は高まる。
×月○日
安定しない。
因子の人工的な切り替えによってゆっくりの善良化が進むと思っていたが甘かったようだ。
確かに一時的には変化を見せる個体がいたが、時間がたつにつれてだんだんと元に戻ってしまうのだ。
しかも前の状態よりさらにゲス化が進んでいるのだ。
これは人工的な干渉によってゆっくり内部の因子バランスが崩れ、因子がよりGへと傾いてしまったからだと思われる。
ちなみにY因子をすべてZやGへと変えてしまうと、ゆっくりは活動を停止し物言わぬ饅頭へと変化してしまう。
ZとGは全く違う性質を持ちながら、お互いが存在しなくては活動できないようなのだ。
ブリーダーのゆっくりとした教育と長い時間をかけてこそ、Zは安定しGへ傾き抑え込むことができる。
だが我々が求めるの一歩進んだ結果だ。
今後はZへの傾きを安定させる方法、もしくは切り替わることそのものを抑え込む方法を考えなければならないだろう。
△月×日
饅頭が生きているなど神に対する冒涜であり、ゆっくりが生きていること自体が罪である……などとはよく言ったものだ。
Gに傾いたY因子をたった10、善良な金バッチに加えると、周りのY因子も影響を受け、目も当てられないゲスへと変貌するに対して、ゲスに1000、Zに傾いたY因子を与えてもその効果は半日ともたない。
なんと因果なナマモノか。
Zへの切り替え実験は3000を超えたがそれを安定させる術は発見されていない。
逆にGの実験数は50程であるが、多種多様な結果が残っている。
もはやGの研究を進め、ゆっくりの駆除に回した方がいいように思えてしまう。
□月△日
なぜこんなものが出来てしまったのか。
きっかけはY因子に増殖能力を持たせようとしたことだ。
ゆっくりには無害なウイルスをZに傾いたY因子と共に投与するのだ。
中々思うような結果が得られずそれをGで試した。
そして出来上がったのが『G-56』である。
これは危険すぎる。
先に述べたが、ゆっくりのY因子全てがどちらか一方に傾いてしまうとゆっくりは活動を停止してしまう。
しかし『G-56』はそれを覆してしまった。
ゆっくり内部の全Y因子をG一色に染め上げるのだ。
ゆっくりはゆっくりできないものがあるとせいっさいっ!という形を持って集団リンチをするが、『G-56』に感染したゆっくりは他のゆっくりや生物をみると、ゆっくりとは思えない勢いで攻撃を仕掛けるのだ。
己の欲望やゆっくりの為なら他の存在の命など一切顧みないゲスの気質を、狂暴化という形で具現化したのだろうか?
だが自身しか存在しない場所ではおとなしくゆっくりしている。
『G-56』に感染すると食事や睡眠、排せつや生殖行動さえしなくなり(もはやそれらを『ゆっくり』とみなさなくなったのかもしれない)、他の何かが近づかない限りはそこでゆっくりし続ける……ある意味、究極のゆっくりを体現するのだ。
さらに厄介なのは、G-56に感染したゆっくりに触れた他のゆっくりもG-56のゆっくりと同じような行動をとり始めるということだ。
そのゆっくりを調べた結果、体内の餡子にG-56がおり、Y因子をGへと変換している様子が観測できた。
それはまさしく『感染』であり、『G-56』という新たなウイルスが誕生してしまったのだ。
Gの適応能力と耐性には驚きを禁じ得ない。
いまだZにその性質を持たせることは成功していない。
危険ではあるがその性質を『Z』へと流用できないだろうか?
研究を続けるために『G-56』のまりさはラムネ睡眠を施したうえで研究室に保管しておく。
―――以降は白紙が続いている。
『○×新聞 ☆月○日「加工所職員が大けが」』
最近加工所に勤める人間を狙った事件が多発している。
加工所研究課に勤務する研究者は夜何者かに背後から襲われ、全治一カ月の重傷を負った。
事件の背景にはゆっくり保護組織の『ゆっくりんぴーす』が関わっているのではないかと言われているが詳細はわかっていない。
加工所本部は各支部の警備の強化や職員の警護をするとともに警察にも協力を要請。
職員たちやその家族にも十分に警戒するようにと呼びかけている。
<襲撃>
加工所のゆっくり研究室。
ここは研究用のゆっくりや、すでに投薬を終えて以後の経過を見るもの、ある環境においてどんな反応をするかなどを調べるための部屋。
たくさんの通常種ゆっくりが透明な箱に入れられている。
チューブがたくさん取り付けられたもの。
あからさまに精神に異常をきたしているもの。
ただひたすら同じ場所を走り続けさせられているもの。
さまざまなゆっくりがいるが、その共通点はどれもゆっくりできていないことだろう。
その部屋には白衣を纏った研究員の男が一人おり、ある箱の前で何やら作業をしている。
先日『Z-5647』を投薬したゆっくりれいむだ。
このれいむ、金バッチ持ちであったが、飼い主が甘やかしたためにゲス化した金ゲスでいぶである。
「ゆ~おにいさん!ゆっくりしていってね!れいむはおにいさんがゆっくりしてくれたらうれしいよ!」
「ありがとう。れいむもゆっくりしていってね」
投薬からすでに三日が経過しているが、元のでいぶに戻る様子はない。
「最長記録更新だな。れいむ、またちょっと餡子をもらうぞ。少し痛いかもしれないけど我慢してくれ」
「ゆぅ……いたいいたいさんはいやだけどびょうきさんをなおすためならしかたないよ」
投薬れいむには、『れいむはびょうきでそのびょうきをなおすためにあんこをもらっている』と説明してある。
男はチューブを手に取り、れいむの体に付けようとした時だった。
バンッ、と研究室の扉が乱暴に開かれた。
「!? なんだ!部屋のドアはゆっくり開けろと『バリッ』っ!?」
抗議の声を上げつつ振り返ろうとした男だったが、突然体に衝撃が走りその場に倒れこむ。
「!?!?」
「おにいさん!?おにいさん!ゆっくりしてね!ゆっくりしてね!」
投薬れいむの声が響く。
男は床に倒れこむが、かろうじて動く頭を動かし視線を上げる。
そこにはゆっくりれいむのお面をかぶった人間が立っていた。
その手にはスタンガンが握られている。
さらにその左右にはまりさとありすのお面をかぶった人間が立っている。
「な……おま、え……ら……!?」
「ゆー!邪魔な扉を壊すよ!」
「!?」
でかい声を上げて扉を突き破ったのは三メートルほどのドスまりさだった。
「ゆ!お兄さん達!ここがみんなが閉じ込められている場所だね!」
「そうだまりさ。そしてこいつが、みんなを苦しめている悪い人間だ」
「ゆゆっ!人間さん!なんだか苦しそうだけど自業自得だよ!他のみんなはもっと苦しんだんだよ!ここにいるみんなは返してもらうよっ!」
研究員は最近加工所を襲っているやつらがいるということを思い出す。
「(こいつら……ゆっくりんぴーすか?……警備はどうした!?)」
「警備連中はドスのゆっくりおーらでゆっくりしてるぞ。残念だったな』
「!!」
そんな対ゆっくりおーら用の装備など準備していなかった。
「よし。捕まっているゆっくりたちを運び出せ」
「はい」
リーダー格なのであろうれいむの男の命令で、ありすのお面とまりさのお面をつけた二人が動き出す。
「箱さんをドスのお口に入れてね!みんなを運ぶよっ!」
部屋にある透明な箱ごと、ゆっくり達はドスの口の中に放り込まれていく。
防音性なので聞こえないが、嬉しそうな表情で何か言っているものと、倒れた男を見てざまあみろといった表情を浮かべた奴もいる。
「おにーざああああああんん!!」
投薬れいむもそのままドスの口の中に入れられてしまう。
「ぐっ!」
研究員は何とか体を起こそうとした。
「おとなしくしていろ」
れいむ面の男にスタンガンを押し付けられる。
「おとなしくしていればさらに痛い思いはしないぞ」
「リーダー。資料とかはどうします?」
「捨てろ。ゆっくりを苦しめた研究結果など見るのもごめんだ。PCのデータもすべて消去だ」
「はい」
「(くっ……そ……)」
貴重な資料だ。
今まで苦労して調べてきたデータが消えてしまう。
ゆっくりと人間の懸け橋となるはずが……研究員は無念でいっぱいだった。
形は違うがこの研究員も人間とゆっくりの関係を良好にするために頑張っていたのだ。
実験ゆっくりはその為に必要な犠牲―――たとえそれが偽善であっても、人間とゆっくりをつながる懸け橋となるならばと、本当に思っていたのだ。
「リーダー。ここにまりさがいますが、チューブが固定されていて箱が動きません」
ありすのお面を被った女の声がする。
「!!」
その言葉を聞いて研究員はハッとした。
それは『G-56』のまりさのことだった。
常に麻酔用のラムネを箱に満たしていないと目をさまし暴れだす危険があるのだ。
「チューブは麻酔用のラムネだ。無理やり外しても問題ない」
「わかりました」
ありすのお面を被った女の手によってチューブが抜かれる。
ラムネの効果はしばらく続くのでしばらくは寝たままだが……。
「っつ!!やめろ!!」
研究員は声を上げた。
「だめだっ!そいつは危険なんだ!下手したら他のゆっくりに感せ『バチッ』があっ!!」
『G-56』の持つ最も危険な特徴を口にしようとしたが、それは阻まれてしまった。
「おとなしくしていろと言ったはずだっ!!」
「……っ」
「ゆー。人間さん。これもゆっくりがゆっくりするためなんだよっ!そこでゆっくりしていってね!」
ゆっくりの入った箱を含んだままで器用に話すドス。
研究員は再びスタンガンの一撃を受け気を失ってしまった。
こうして『G-56』のまりさを含め、研究所にいたゆっくり達は強奪されることとなった。
そこにあった資料は全て破棄され、PCのデータも消去された。
ドスとお面を被った三人組は、入口に止めていた大型トラックに乗り込むとそのまま研究所を後にした。
<感染>
大型トラックに乗り込んだメンバーとドスまりさ達は、二人は運転席、一人とドスは荷台の中にいた。
「あのじじいやばばあはひどいんだよっ!たくさんのゆっくりにへんのおくすりをいたいいたいでいれたんだよっ!!」
「ぜんぜんゆっくりできなかったんだぜ!ゆるせないんだぜっ!!」
「とかいはじゃないいなかものよ!」
「わからないよ!どうしてあんなことするんだよー!」
研究所から逃げ出すことができたゆっくり達は箱から出され、荷台の中でゆっくりし研究者たちを思い思いになじっていた。
彼らは薬品を投与される前の個体であり特に変化などはない。
加工所研究室で生まれ、加工所で死ぬ実験体ゆっくりだ。
なので生活能力は乏しく、野良や野生になれば間違いなく死ぬ。
メンバーたちはそのことを知っている。
なのでゆっくり達を本部へと持ち帰り、しっかりと自活できる能力を持たせたうえで野に放つのだ。
なお何らかの異常があるゆっくりは治癒不可の場合は安楽死、もしくは治療されてから解放される。
「ひどいよ!どうしておにいさんにあんなことしたの!」
「ゆ~……れいむ。あのお兄さんはひどい人なんだよ。みんなを助けるためには仕方なかったんだよ」
例の投薬れいむはドスに抗議の声をあげている。
自分の病気のために親切にしてくれたと思っている投薬れいむはずっと怒りっぱなしだった。
ドスは投薬れいむをなだめようと必死だ。
ドスと共に荷台に乗り込んだ、まりさのお面だった男は、いまだ眠ったままの『G-56』まりさの箱の蓋を開けようとしていた。
「なんだかやけに頑丈だな……よっと」
工具を巧みに使い、溶接されていた箱の蓋をこじ開ける。
ガコンという音と共に蓋が外れ、まりさは外へと取り出された。
「だいぶ深く眠らされているようだな。よし……ゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」
荷台の中にいる他のゆっくりも反応する。
「ゆ……」
その声に反応してまりさが体を揺らす。
「ゆ!お兄さん!まりさが目を覚ましたの?」
「ああ。ドス、状況を説明してやってくれ」
人間から説明するより、ドスが説明した方がゆっくり達は心を開きやすいのだ。
ドスまりさはまりさの前に立った。
「まりさ!まりさはまりさだよ!ドスなんだよ!大変だったね!でもこの人間さん達はゆっくりさせてくれるよ!」
「ゆぎぃ……」
呻くように声を漏らすまりさ。
「ゆ!まりさ!ゆっくりしていってね!」
ドスが笑顔でそう告げる。
まりさは顔を上げた。
まりさの瞳(正確には眼球結膜という白い部分)が真っ赤に染まっていた。
そして、ドスを静かに見つめていたかと思うと……
『ゆ”っぎぎじぎぎゃああああああああああああああああああ!!』
と、奇声を上げてドスへと飛びかかった!
「ゆぅー!?」
カプリとドスの腹にかぶりつく『Gまりさ』。
だが皮が分厚いドスにダメージはない。
「や、やめてね!まりさ!離してね!」
「どうしたまりさ?」
「お、お兄さん!」
ドスまりさが男の方に振り返った。
Gまりさはドスに噛みついたまま男を見た。
するとドスの体から離れ、一直線に男に飛びかかった。
「ゆっぎいいいいいいいいいいいいいいい!!」
「!!」
その速さは普通のゆっくりのそれではなかった。
飛行できる最強の捕食種ふらんやきめえ丸とまではいかないが、通常種最速のちぇんを軽く超えている。
顔に飛びかかってきたGまりさをすんのところで捕まえたが、バランスを崩してしりもちをつく。
「くっ!?」
「ぎいいいいいい!!」
真っ赤に染まった目を大きく見開き、口からうす赤い涎を垂れ流しつつ、男に襲いかからんと暴れた。
「やめろ!!」
男はGまりさを放り投げた。
Gまりさはトラックの壁にぶつかった。
「ゆ!まりさだいじょうぶ!?ゆっくりしていってね!」
たまたま近くにいた投薬れいむはGまりさの尋常ではない様子をみて声をかけた。
「ゆぎゅぎいいいいいいいいいいいい!!」
次の瞬間、投薬れいむの顔にGまりさが噛みついた。
「ゆぎいいいいいいいいい!?!?」
突然顔面に走った激痛に投薬れいむは声を上げる。
「なにずるのおおおおおおおおおおおお!!」
Gまりさはそのまま歯を食いしばっていく。
「いだいいいいいいいいいい!!れいむのおがおがぢぎれぢゃううううううううううう!!」
ミチミチと音を立てる投薬れいむの顔。
そして『グチュリ』という音を立てて、投薬れいむの顔面が食いちぎられた。
逃げようとしていた投薬れいむの体とひっぱっていたGまりさの体はそれぞれ別方向に転がった。
投薬れいむの中身の餡子が飛び散る。
前半分を食いちぎられた寒天の眼球がべちゃりと転がり落ちる。
「れいぶのうづぐじいおがおがあああああああああ!!ぎらめぐほしぼじのようなおべべがああああああ!!」
投薬れいむは叫び声をあげる。
「……」
ゆっくり達は衝撃のスプラッタシーンを見て固まる。
人間はその狂暴性を信じられなくて固まった。
「ゆぎげぎゃあぎゆげええええええ!!」
その停止した空間の中で唯一動けたのはGまりさだけだった。
食いちぎった投薬れいむの一部を食べることなどせずに、べちゃりと床に吐き捨てると、他のゆっくりへと体当たりを行った。
「ゆべっ!」
「「「「「うわああああああああああああ!!」」」」」
時間が動き始め悲鳴が上がる。
「ゆぎいいいいい!!」
「やべっ!ゆげべっ!どぼじっ!でえええっ!ゆげええええ!!」
「ゆぶげっ『ブチャ』」
トラックの壁と挟み込まれるように体当たりを受けたゆっくりまりさは数回の体当たりで皮が破れ行動不能となった。
「ゆぐっ……いだいぃぃぃ……」
まりさが呻くだけで動かけなくなると、Gまりさは次の標的に移った。
近くにいたちぇんに体当たりをし、ちぇんを吹き飛ばす。
「わがらなっ!?」
ちぇんはごろごろと転がっていく。
「やめなさいっ!このいなかものおおおおおお!!」
ありすがGまりさを止めようとして飛びかかった。
よそ見をしていたGまりさはその体当たりをまともに受けて転がる。
「ゆふん!いなかもののまりさはすこしいたいめをみるといいわ!」
普通のゆっくりならばここで、大して痛くもないのに悲鳴を上げるだろう。
だが、Gまりさはすでに普通のゆっくりではない。
Gまりさはすぐさま身を起こし、自分に体当たりしたありすに反撃する。
ドガッという音ともにありすが吹っ飛ぶ。
「ゆびぎぃ!?いだいいいいいいい!!どがいばなありずになに『ゆぎいいいい!!』ゆべっ!うげっ!やべっ!ごのっ!いながぼっ!やべっ!『ブチャ!』」
倒れたありすを上から踏みつぶし破裂させる。
「やめてねっ!」
ここでドスが動いた。
Gまりさを舌で弾き飛ばし、壁に激突させる。
「ドス!?」
男はただただ立ち尽くすばかりだ。
ドスの攻撃はかなり力のこもった一撃で、飛ばされたGまりさは壁に激突し、皮が破れ、餡子が吹き出し、歯が折れ、片眼が転がり落ちた。
「どうしてこんなことするの!!みんな同じゆっくりでしょ!まりさはそこでゆっくりはんせ『ゆぎゃああああああああああああああああ』ゆっ!?」
ズリズリ
と、流れ出る餡子も意に反さず、Gまりさは床這ってくる。
真っ赤に染まった目は、狂気に満ち溢れている。
「ゆひっ……」
ドスは自分よりはるかに小さいゆっくりに恐怖した。
「なんなんだよ……こいつ……」
普段はゆっくりへの愛護精神に溢れている男も、この異常なGまりさに大してはさすがにそんな気も起きないようだ。
一方、先ほどGまりさに飛ばされたちぇんを、ぱちゅりーが介抱していた。
「むきゅう。ちぇん、だいじょうぶかしら?」
「い、いたいんだよー……たすけてよー」
「むきゅん。だいじょうぶよ。おけがもないようだし。すぐよくなるわよ」
「わからないよー。わか、ら……な……」
「むきゅ?ちぇん?」
「わが……わがっ……わが、がががががががががががががががっががっが!!」
突然ちぇんが痙攣を始めた。
「むぎゅううう!?ぢぇんんんん!?」
「ゆげはっ!」
そして吐餡。
「ぢぇんんん!!あんござんはいちゃだめよおおおおお!!むぎゅ!?」
その餡子は真っ赤だった。
そして、吐餡が収まるとちぇんはゆっくりとぱちゅりーに向き直った。
「むきゅ?ちぇん?」
「……」
そしてゆっくりとぱちゅりーに近づき……
「わっがあああああああああああああああああ!!」
「むぎゅうううううううううううう!?」
突然上がった叫び声に、ドスと男は目を向けた。
そこでは先ほどGまりさに体当たりを受けたちぇんがぱちゅりーに噛みつき、その中身をまき散らしているところだった。
「どぼじでぢぇんがぱちゅりーを襲ってるのおおおおおおおお!?」
「何が……起こっているんだ……!!」
やがてぱちゅりーは中身を大量に失ったことによる失餡死をした。
「わぎゃあらあああああああああああ!!」
「ゆううううううううう!!」
ちぇんは近くにいた他のゆっくりに襲い掛かる。さらには、
「ゆぎいいいいいいいいいいいいい!!」
先ほどGまりさに体当たりをされ、皮が破れ行動不能になったまりさも同じように奇声を発していた。
先ほどまでは痛みを訴えるだけの爆ぜ饅頭だったが、まるで自分の体の痛みなど気にしていないかのように、他のゆっくりへ赤く染まった目を向け、狂気の奇声をあげている。
「くそっ!」
そこでやっと男は動き出した。
荷台のはじっこの方に置いてあったスコップを手に取り、Gちぇんに振り下ろす。
「わがばっつ!!」
赤い餡子を飛び散らせ、Gちぇんは床のシミとなった。
「うわああああああああ!」
続いて男はGまりさにスコップを振り下ろした。
「ぶぎっ!」
ほとんど動けなかったGまりさもつぶれ散った。
「ゆぎん!!」
続いて半分つぶれていたまりさにもとどめを刺す。
「はぁっはぁっ……」
残ったのは真っ赤に染まった餡子の塊だけ。
「くそっ。なんなんだよ一体……」
「「「「「ゆっぐりでぎないいいいいいいいいいい!!」」」」」
トラックの中にいたゆっくりが叫びだす。
「ぐざいいいいいい!!ゆっぐりでぎないよおおおおおおおおお!」
「もうやだ!おうぢがえるううううう!!」
「しまった!死臭か……!」
死んだゆっくりからはゆっくりにしかわからない死臭が漂う。
今ここには死んだゆっくりがたくさんいる。
その臭いがトラックの中に充満しているのだろう。
「いだいよおおおおおおお!!れいむのおがおざんがあああああ」
一方、初めに食いつかれた投薬れいむは己の顔の痛さに叫ぶばかりだった。
「お、落ち着けみんな!大丈夫!大丈夫だよ!そうだ!ドス!ゆっくりオーラでみんなを……」
男はドスに目を向けた。
「……ドス?」
「ゆぎっ……!ゆぐっ!ゆげげげげげげ!」
ドスの様子がおかしい。
何やらびくびくと細かく痙攣をしており、目が裏返っているのだ。
「ど、ドス?」
「お、おにいざ……にげ、にげでぇぇぇぇ……どず、ぼう……おがじ……ぐぅぅ!!」
男は見た。
ドスの白い眼球結膜の部分が、じわじわと真っ赤に染まっていく瞬間を。
「ま、まさ……か……」
男は最悪のシナリオを思い描いた。
慌てて運転席の方に呼びかけた。
「とめろっ!!車を止めろ!!」
「どうした?」
運転席と荷台をつなぐのぞき窓が開く。
「いいから止めろ!!早く車から降りるんだ!!」
「なんなんだ一体?」
「いいから早っ……う、うわああああああああ!!」
男が消える。
「お、おい?うおっ!」
次の瞬間、トラックにすさまじい衝撃がはしった。
「どうしたんですかっ!?」
トラックを運転する女は急な衝撃にハンドルを取られそうになりながらも尋ねる。
「わ、わからん!一体な、に……」
「リーダー?後ろで何……が……」
ミラーを覗き込んだ女の目に飛び込んできたのは―――
のぞき窓からこちらの様子をうかがう、真っ赤に染まったドスの巨大な目だった。
「つ、つぶれぶぅぅぅぅ……」
「どずぅぅぅどぐんだぜぇぇぇぇ」
「やめろぉぉぉぐぞどずうううう」
どうやら荷台にいたゆっくり達を巻き込んで運転席側に突っ込んできたようだ。
「ど、ドスっ!?」
「ゆごおおおおおおおおおお!!」
ドスの目がのぞき窓から離れる。そして―――
「馬鹿っ!やめろっ!!」
ドゴンッ!
「きゃあああああああああ!!」
「うわっ!」
再びトラックにはしる衝撃。
いつの間にか外は雨が降っており、道路が濡れているということもありトラックは大きく車体を揺らせる。
「とめろっ!止めるんだ!」
「ダメです!タイヤが!!」
路上の雨でタイヤが滑り、トラックは操作不能となってしまった。
「落ちる!!」
「逃げろっ!!」
トラックはちょうど山の中にある本部へと向かっており、山の道路を走っていた。
制御不能となったトラックはそのままガードレールへと突っ込んでいき―――空中へと飛び出した。
運転席にいた二人は途中でトラックを脱出した。
荷台にいた男もドスが突っ込んでくるのをぎりぎり避け、荷台を開けて外へと逃げていた。
操作不能となったドスまりさを乗せたトラックは崖下へと落ちて行った。
<駆除と保護>
高い木々が並ぶ森の中を迷彩服を着た二人組の男が歩いている。
その手にはアサルトライフルが握られており、一見サバイバルゲームをしに来たように見える。
煙草を咥えた老齢の男が呟く。
「静かだな」
日焼けをした男がそれに答える。
「ええ」
二人は森の中をゆっくりと歩いていく。
そしてあるところまで来て歩みを止めた。
「ここだな。群れがあったポイントは」
「はい。衛星写真によるとそうです。まあ、例の日から姿を見せていませんが」
空中から撮った思われる航空写真を見つつ男が答える。
写真には森の中に点在するゆっくりの姿がはっきりと映っている。
「よし。始めるか」
老齢の男が煙草をいったん手に取り、空気を吸い込む。
「ゆ っ く り し て い っ て ね !!」
森の中に響き渡る大きな声で、ゆっくりと同じ挨拶を高らかに叫ぶ。
「さて……」
再び煙草を咥える。
ザザッ
草むらが動く。
「来ましたね」
二人はアサルトライフルを構える。
安全装置を外す。
そして草むらから―――
「ゆっぐぎいいいいいいいいいいいいい『パァン』ゆげぎょ!!」
赤く染まった目をしたゆっくりまりさが男たち向かって飛びかかろうとしたが、アサルトライフルの弾がその顔の真ん中を正確に捉えまりさを吹き飛ばす。
「ゆぎぃっ!!ゆぎっ!!ゆ……!!ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
体中から流れ出る赤い体液をまき散らし、口から赤い餡子を吐き出しつつ、そのまりさは動かなくなっていった。
「レッツ、パリィ……」
ザザザザザ
男たちの四方から何かが来る気配。
「「「「「ゆぎぎゃげぎゃぎゃぎゃやあああああああああああああ!!」」」」」
れいむ、まりさ、ありす、ちぇん、みょん、ぱちゅりー。
かつてこの場所に群れを作っていた群れのゆっくりたちが、奇声を上げて男達に向かって殺到する。
それはいつものゆっくりのようなとろくさい動きではなく、小型犬が走り寄ってくるようなぐらいの速さだ。
『ダダダダダダダダダダ』
「ゆぎょ!」
「ゆぎぇべ!」
「ゆげばあ!」
だが男たちは落ち着いてアサルトライフルの引き金を弾く。
弾丸を食らったゆっくりは先ほどのまりさと同じように、のた打ち回って死んでいく。
「数が多いな。あれを使うぞ」
「はい」
日焼けの男は腰に下げていた細長いパイプのようなものを手に取った。
「投げます!」
パイプについていたボタンを押して、男はそれを投げた。
『ゆっくりしていってね!』
パイプからゆっくり特有の甲高く耳障りな音が流れる。
それは音程を高くしてあり、聞く方にとってはかなり耳障りなものだった。
そして男たちに向かっていたゆっくり達はそれに反応し、そのパイプの方に向かって跳ねていく。
『ゆっくりしていってね!……ゆっくりしていってね!…ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!』
パイプから流れる声の感覚がだんだん狭くなっていく。
ゆっくりたちはパイプに群がり、パイプに対して踏みつけや噛みつき、体当たりをしようとしている。
『ゆっくり!ゆっくり!ゆっくり!ゆっく!ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆーーーーーーーー!!』
音の間隔が最小に達した次の瞬間『バオン!!』という爆発音と共に赤い煙が舞い上がる。
群がっていたゆっくり達は空中に吹っ飛んだり、近くの木に叩きつけられたりした。
パイプが爆発時にまき散らしたのは辛み成分を含んだ煙だ。
吹っ飛ばされたゆっくり達は煙にまかれ、やはり中身の餡子をまき散らしつつ死んでいく。
空中で餡子が飛び散るので、まるで雨のように地面に降り注いだ。
だいぶ数が減ったが、それでもゆっくりはまだいた。
「よし。残りを片付けるぞ」
「はい」
男たちは再びアサルトライフルの引き金を弾いた。
これはG-56に感染したゆっくりの駆除である。
G-56に感染してもゆっくりはゆっくり。
辛い物を体に受けると体が拒絶反応を起こし餡子を吐き出すのだ。
やがて失餡多量で死に至る。
中にいるG-56も辛み成分に弱くその中で死滅するのだ。
男たちが撃っているアサルトライフルの弾は、先ほどの『からしボム』と同じく辛み成分を凝縮させたもので、ゆっくりに非常に効果的なのだ。
そして、男たちが着ている迷彩服をよく見るとこう書いてあった。
『加工所ゆっくり駆除課』
例の事故から二週間。
トラックは自然公園のど真ん中に落ちた。
そこはゆっくり愛護家が管理する公園で、野生ゆっくりが全国で最も多く生息していた。
崖から落ちたトラックは大破し、中にいたゆっくりはドスを含め全滅した。
が、事故現場近くに生息してたゆっくり達がドスの餡子を食べ、二次感染が引き起こされたのだ。
後にわかったことだが、Gー56に感染したゆっくりは音に非常に敏感になる。
感染したゆっくり達は森に響く他のゆっくりの声や鳥や虫の声に引き付けられ拡散し、Gをそこら中にばらまき始めたのだ。
結果、あの襲撃から次の日の夜までに、その付近全体のゆっくり達はGに感染。
さらに二週間を経て瞬く間に自然公園全体を汚染していった。
広がる前に手は打てなかったのか?
そこが人間の愚かなところである。
ゆっくりんぴーすと加工所。
今回の研究所襲撃の一件がトラック事故のことも重なり世間へと漏れ出した。
加工所はゆっくりんぴーすを研究者襲撃や研究所襲撃事件の黒幕と叫んだが、ゆっくりんぴーすは加工所を非道の研究を行っていたとして世間にアピールした。
そんな睨み合いをしている間にGはどんどん広がっていた。
そして公園利用者が異様なゆっくりに襲われるという事態が多発し始めたところで、Gが野生のゆっくりの間に蔓延していることを知った。
人々はゆっくりというものが得体のしれない病気にかかる、危険な存在ではないかと危機感を持ち始めた。
加工所はゆっくりという製品を扱う以上、これ以上ゆっくりという商品の信用を失うわけにはいなかった。
現に加工所のゆっくり製品の売り上げ、ペットとしてのゆっくりの売り上げが減少傾向にあった。
ゆっくりんぴーすも、ゆっくりがこれ以上無意味に死ぬのは良しとしなかったし、害獣として悪名高いゆっくりの評判もさらに悪くなる。
何より、過激な運動で悪い噂(実際にやっているが起訴には証拠不十分)が絶えないゆっくりんぴーすのイメージがさらに悪化する。
そこで加工所とゆっくりんぴーすは一旦停戦することにした。
加工所は感染したゆっくりの駆除へと乗り出した。
ゆっくりんぴーすとしては感染したゆっくりの駆除は黙認することとした。
その代わり彼らは他の方法でゆっくり達を守ろうとした。
そしてお互いに情報を交換し合い、Gゆっくりの駆除と無事なゆっくりの保護を進めることにした。
無論世間一般に本当のことは知らされていない。
事実を知らない人の間では、ゆっくりの間で危険な病気が流行しており、感染したゆっくりを加工所が駆除し、ゆっくりんぴーすが未感染のゆっくりを保護しているという認識だ。
加工所やゆっくりんぴーす内でも真実を知っているのはごく一部の関係者のみである。
ゆっくりの群れを殲滅しているのは加工所の駆除課である。
森の中のあちこちで銃声とゆっくりの奇声が響き渡る。
この森がゆっくりが現れる前の静けさを取り戻すのももうすぐだろう。
ではゆっくりんぴーすは何をしているのかというと、それは駆除が行われる数時間前となる―――
森の中のとある場所で二人の男女がゆっくりを前にして、何やら話している。
赤ゆっくりから成体ゆっくりまで、群れのゆっくりが一堂に会し人間の話を聞いている。
「むきゅ。つまりどういうことなの?」
「ああ、これを見てほしいんだ」
一部のゆっくりは人間の話を興味深げに聞いている。
「にんげんはさっさとあまあまよこしてね!れいむはしんぐるまざーでたいへんだんだよ!」
「にんげんがなんのようなんだぜ!?ゆ!わかったのぜ!まりささまのどれいになりにきたのかだぜ!」
「しゃっしゃとあみゃあみゃもっちぇこい!くしょにんげん!」
群れの大半は人間に対して舐めた態度をとり罵声を浴びせている。
「……」
女性の方はゆっくりの言葉を無視し、持ってきたモニターを操作する。
「ゆゆーん!おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよお!」
「ゆふふ。おちびちゃんたち!きょうはおそとでひなたぼっこするよ!」
「「「ゆー!!」」」
そこに映っていたのは仲睦まじいゆっくりまりさとれいむ、そしてその子ゆっくり達だ。
草原の中、親子で日向ぼっこをしたり、草を食んだり、とてもゆっくりしている様子だ。
この映像は、この森のある場所で撮影された映像だ。
同族のゆっくりとした映像を見て群れのゆっくりたちも「ゆっくり~」「ゆっくりしてるねぇ」「ゆっきゅり!ゆっきゅり!」とニコニコ顔である。
「ゆゆっ?だれ?まりさはまりさだよ!ゆっくりしていってね!」
映像の中の親まりさが何かに声をかけた。
どうやら他の何かが近くに寄ってきたらしい。
「ゆぅ?みたことないありすだね!れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!」
どうやらゆっくりありすが現れたらしいが画面にはまだ映っていない。
親れいむはありすに向かってお決まりのあいさつをする。
「ゆゆっ。ありす!あいさつされたらあいさつするんだよ!だまってるとゆっくりできないよ!」
どうやらありすは無言だったようで、親まりさが文句を言う。
「ゆ!ありす!きいてるの?あいさつはきほんちゅうのきほんなんだよ!そんなのおちびちゃんでもしってるよ!おちびちゃんたち!ありすにみせてあげてね!」
続いて親れいむが自分の子供たちに言う。
「ゆゆ!わかっちゃよ!」
「れいみゅあいしゃつできりゅよ!」
「きゃっこよくきみぇるんだじぇ!」
まだ赤ゆっくり言葉が抜けない子ゆっくりのようだ。
子ゆっくり三匹が画面の外に消える。
そして精一杯大きな声が聞こえた。
「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!」」」
「ゆがああああああああああああああああああ!!」
それに応えたのはありすの奇声だった。
ブチャ
「「ゆ?」」
何かがつぶれる音と、親ゆっくり二匹の固まった顔。
「「ゆぴいいいいいいいいいいい!!」」
子ゆっくり二匹の悲鳴が上がる。
「「まりさ(れいむ)のめにいれてもいだぐないぜがいいぢだいじながわいいおぢびぢゃんがああああああああああああああああああああああ!!」」
どうやら三匹のうち一匹がありすに潰されたらしい。
「ごのげすありずがああああああああ!!よぐもおぢびぢゃんおおおおぉぉぉおお!!」
親まりさが怒りの形相で画面外に消えていく。
「おぢびゃんばやぐにげでえええええええええええええ!!」
親れいむがその場で叫んでいる。
画面外からは親まりさの絶叫と、子供を潰したありすの声が響く。
「じねえええええええええええええええ!!」
「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」
「まりさああああああああ!!」
「「おちょうしゃんんんんんんんん!!」」
その場にいたゆっくりの悲鳴がいろいろ混ざり合い何が何だかわからない。
「まりざあああああああああああ!!だいじょうぶううううう!?ゆっぐりじでねええええええ!!」
「おちょうしゃんゆっきゅりいいいい!!」
「まりちゃがにゃおちてあげりゅよ!ぺーりょぺーりょ!」
親れいむも画面外へと消えていく。
どうやら親まりさが勝利したようだ。
「れ、れいむ……おちび……まりざはおぢびの……がだぎうっだん……ぜ……」
「おはなししちゃだめだよおおおお!!あんござんがでぢゃうよおおおおおおおお!!」
「き、きくんだぜれいむ……ば、ばりざはも……もう……ゆ!?」
「ぞんなごどいばないでえええええええええええ!!」
「おぢょうしゃんんんん!!」
「ぺーりょ!ぺーりょ!……ゆぴっ!?」
音声だけしか聞こえてこないが、親まりさと親まりさをぺーろぺーろしていた子まりさに変化があったようだ。
「まりさあああああああ!!じっがりじでえええ!!まり……ゆ?まりさ?おめめがあかいよ?……だめだよ!うごくとあんこさ……まり……?ゆ!?」
「まりちゃどうちたの?ゆっきゅりちちぇ『ゆびいいいいい!!』ゆうううううう!?」
「いだいいいいいいいい!!れいむのびがおがあああああああああ!!までぃざああああああ!?!?どぼじでごんなごどずるのおおおおおお!!!」
「ゆがあああああああああああああああああああ!!」
「ゆびいいいい!!」
「ゆうううう!!まりちゃがああああ!!かじょくのしゅえっこあいどりゅまりしゃがああああああ!!」
「ゆぎい!やべでえ!!れいむをがまないでええええ!!あがっ!!あぎっ!!ゆぎいっ!?」
「きょわいよおおおお!!」
ぴょんぴょんと跳ねる音がして、画面に子れいむが戻ってくる。
だが、それを覆う黒い影が。
「ゆうううううう!もういやじゃ!おうちきゃえ『ビチャ』ゆぐびっ!!」
それは赤い体液を体から流す親まりさだった。
子れいむはその下敷きになり、潰された際に飛び散った餡子がカメラに付着した。
親まりさは体の一部が破れ、餡子が流れ出しているが、それを気にする様子もなく動いている。
「ぎぎぎぎ……」
己の子供を潰しても何も思うところがないのか、赤く染まった目をぐりんぐりんと動かし、唸り声をあげている。
「ゆー!まりさーれいむーどこにいるのー!おさがよんでるよー」
他のゆっくりの声が響く。
その声に反応し、親まりさがくわっと目を見開き、声のする方向に体の向きを変えた。
そしてゆっくりらしからぬ速さでカメラの画面外へと消えていく。
「ゆゆっ。れいむ!まりさ!おさがみんなをあつめてるよ!なにかたいせつなおはな……ゆ?れいむ?まり……いぎいいいい!?どぼじでれいむにがみづいでぐるのおおおお!!」
「ゆぎぎぎぎぎいいいいい!!」
「ゆがっゆがっ!ゆぎゃあああああ!!」
「ゆびぎびびびび!!」
家族を呼びに来たれいむの悲鳴と三匹の唸り声がカメラに届く。
やがて草原には何もいなくなった。
遠くからゆっくりの悲鳴が聞こえた。
「「「「「どぼじでごんなごどになっでるのおおおおおおおおおお!?」」」」」
映像が終わり、数十秒後に群れは絶叫に包まれた。
男は群れに『これが今ゆっくりの間で流行っている病気の映像だ』と説明した。
「そんなのゆっくりできないよおおおおおおおおおお!!」
「わがらないよおおおおおおおおおおおおおお!!」
「おばけしゃんごわいよおおおおおおおおおお!!」
だが、男は安心するように言った。
自分たちは君たちを保護しに来た。
病気にかからないゆっくりぷれいすに連れて行ってあげようと。
そしてそこにはドスもいると伝えた。
「ゆっくりりかいしたよ!!」
「まりさたちはえらばれたゆっくりなんだね!」
「えらくってごめんねーーー!!」
「にんげんははやくぱちゅりーをほごしなさい!!」
「どすがいるのかだぜ?ゆふふ……どすをりようしてにんげんをしはいするのぜ……!」
こうしてゆっくり達は、空から来たヘリコプターが落とした箱の中に入っていき、そのまま隔離施設へと連れていかれた。
「これでこの区画は終了ね」
「はい」
残されたのは男女二人。
その胸には『ゆっくりんぴーす・ゆっくり保護部隊』と書かれていた。
目的を終えた二人は、森から出るために公園内のあぜ道を歩いていた。
その道中、目の前を何かが横切る。
「ゆっ!にんげんさん?ゆっくりしていってね!」
一匹のゆっくりれいむだった。
それに答えたのは男だった。
「ああ。ゆっくりするよ。れいむはこの近くのゆっくりかな?」
「ゆっ!そうだよ!れいむはあっちのほうにあるむれのゆっくりだよ!」
「なるほど。そういえば最近、変なゆっくりを見なかったかな?」
「ゆ?へんなゆっくり?」
「赤いお水を体から流してて、ゆっくりしていってね、を言えないゆっくりなんだが」
「ゆゆ~?そんなへんなゆっくりみたことないよ!それにあいさつもできないなんてかわいそうなゆっくりだね!」
「そうだな。れいむ。そんなゆっくりが居たら絶対に近寄っちゃいけないよ?れいむがゆっくりできなくなってしまうからね」
「ゆん!それはいやだよ!れいむはゆっくりしたいよ!ゆぅ……おにいさんたちもきをつけてね!そんなゆっくりがいたらおにいさんたちもゆっくりできなくなっちゃうよ!」
れいむの言葉を聞いた男は、少し悲しそうな顔をした。
「なぁれいむ。よかったら……『ダメよ』……っ」
何かを言おうとした男の言葉を女が遮る。
「ゆぅ~?おにいさんどうしたの?ゆっくりしていってね!」
「いや……なんでもない。ゆっくりしてるよ。さ、もうお行き。夕方だし、そろそろれみりゃが出る頃だろ?」
「ゆ!そうだよ!れいむはゆっくりしないでかえるよ!じゃあねおにいさん!ゆっくりしていってね!」
「ああ。ゆっくりしていってね」
れいむが草むらの中に姿を消す。
男は作り笑顔でその様子を見守っていた。
「まさか他にも未感染の群れがあったとはね……」
意外そうに女は呟く。
「ならっ……!」
男は納得できないといった表情で女に言う。
「ダメよ。もう時間切れ。あの群れだって奇跡なんだから。加工所の連中も『G』も待ってはくれないわ」
女は道を歩きつつ言う。
男は後ろをついていきながらなおも食い下がる。
「でも今わかったじゃないですか!あの群れならさっきの群れより人間に友好的で……!」
「なら保護部隊の運営費用をあなたが全額負担する?すでに枠組みが決まってる保護区の拡大を本部に申し出る?それとも、保護したゆっくりの素行が悪い連中を潰して枠を作る?」
女の声はどこまでも冷静。
完璧に割り切った様子がうかがえる。
「そんなことっ……できるわけないじゃないですか!!」
男の方は葛藤していた。
自分の無力さを、現実を、呪う響き。
「Gはどんな力を持っているかわからない。被害を最小限にするには大元から絶つしかない。ゆっくりの未来を繋ぐための必要な犠牲なのよ」
たった二週間でこの広大な自然公園を汚染した『G』
それが世に放たれればとんでもないことになる。
加工所は自然公園全域の即時駆除を訴えたが、希少種や未感染の群れの保護をゆっくりんぴーすは求めた。
加工所としては通常種の群れなどはどうでもいいが、希少種となると話は別だ。
加工場は3日の猶予をだし、ゆっくりンぴーすのメンバーは総出で自然公園を回った。
その結果いくつかの未感染の群れや、希少種が見つかったが、保護したのはコンピュータでランダムで選ばれた群れと全希少種だけだった。
そしてゆっくりんぴーすの作った偽りの自然の中でゆっくりんぴーす所属のドスに統治させるのだ。
保護されることが決まった群れのゆっくり達の性格などは関係ない。
先ほどの群れのように、人間を恐れず、明らかにゲスな気質を持つゆっくりが多くいる群れも保護しなければならない。
そしてたとえどんなに善良なゆっくりがいる群れでも、選ばれなければそのまま全滅する運命が待っているのである。
現場で活動する隊員にとっては納得できないことであるが、会議室で指揮しかとらない上層部は、保護したゆっくりの数を報告書で確認し、自分たちの愛護心を満足させているのだ。
「Gが落ち着くまでゆっくりの未来を繋げるのが私たちの役割よ」
男のように葛藤しながら活動する者もいれば、女のように全てを割り切って活動に専念する者もいた。
その時だった。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいい!!」
「「!!」」
森の中に甲高い奇声が響いた。
その声は先ほどのれいむが向かった方向からだ。
「いだいいいいい!!れいむううううううう!?いぎなりなにずるのおおおおおお!!」
「ああああああ!!ありずのどがいばなおぢびぢゃんがあああ!!」
「ゆぎいぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」
「やべでえええええ!!ぢぇんのじっぼがまないでええええええええええ!!」
「たちゅけちぇええええええ!!おかあしゃ……ゆ?おかあしゃ?どうちておめめがあかぴぎゅう!!」
「始まったようね」
「っ……」
そしてそれが皮切りになったかのように、四方からゆっくりの叫び声が響き始める。
「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」
「ゆっぐりじでええええ!!ゆっぐりじでいっでええええええええ!!」
「ゆぎっ!ゆぎっ!」
「うーうるさいんだどお~。おまんじゅうのぶんざいでなまいき……う?ううっ?……うぎぎぎぎっ!ぎぎぎぎいいいいいい!!」
「じねえええええええええ!!ゆっぐりでぎないゆっぐりはじねえええええええええええ!」
「ゆぴいいいいいいい!!」
「たしゅけちぇえええええええええ!!」
「ゆああああああああああああああ!!」
「行くわよ」
「……」
二人は山を降りていく。
保護部隊としてここでやる仕事はもはや済んだのだ。
公園を出ると、出入り口を封鎖しているゆっくりんぴーすのメンバーが出迎えてくれた。
「お疲れ様です」
「ご苦労様」
「……」
「間もなく、この区画も加工所の駆除が始まります。撤収準備に入ります」
「了解」
「……」
隊員と女は去っていく。
「……どうして、こんなことになったんだ……」
男は暗闇に沈んでいく森を悲しそうな目で見つめ呟いた。
<『G』研究レポート>
『Gゆっくり』および『G-56』の特性を大まかに上げる。
・Gゆっくり
①音や動くものに非常に敏感になり、それらをゆっくりしていないものとみなし攻撃を仕掛けてくる。
②Gゆっくりのみでいる場合はゆっくりしている。が、Gに非感染の個体や他の生物がいると襲い掛かる(ゆっくりしていないものとみなして)。
③狂暴性が上がり、無かった知能がさらに落ちたGゆっくりだが、餡子に刻み込まれた本能や情報はある程度残っている(食事や排せつ、すっきりーをする知能ももはや無いようだ)。
④赤い体液が表面を覆っており、これにもG-56が含まれている。当然これに触れたゆっくりも感染する。何故、このようなものが出ているかは不明(他の細菌からの保護膜かもしれない?)
⑤なお赤ゆっくりは変化に耐えきれず感染直後に死亡する
・G-56
①ゆっくりの特性を受け継いだのか『辛み』や『苦味』に弱い。逆に甘味物の中で、Y因子がない場合、活動を停止した状態で冬眠している。
②Y因子を持つゆっくりの皮や餡子、体液の中のみ生息することができ、ゆっくり同士のすーりすーりやすっきりーなど、触れ合う行為によって伝染する。うんうん、しーしーにも含まれ、ソレに触れても感染する。それから出てしまうとすぐさま死滅してしまう。殺傷力(感染ゆっくりは厳密には死んでいないが)は極めて強いが、感染力はそこまで高くない(自然公園全域まで広がったのは対応の遅れが原因)。
③なお、死んだゆっくりを再活動させるような力はない。あくまで生きたゆっくりに感染する。
④『G-56』も未だ安定しない。突然変異を起こす可能性があるので、Gゆっくりが生息していた地域の洗浄は念入りに行う必要があるだろう。
あとがき(容量ギリギリなので手短に)
1幕、お読みいただきましてありがとうございました。
結末までは決まっていて、上げたからには続きをなるべく早めに上げます。ゆっくりとお待ちください。
では。