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anko3858 『ある温泉街のゆっくり対策』 前編
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ankoss
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『『ある温泉街のゆっくり対策』 前編』 11KB
いじめ 虐待 差別・格差 野良ゆ 独自設定 いつもの調子です。
いじめ 虐待 差別・格差 野良ゆ 独自設定 いつもの調子です。
『ある温泉街のゆっくり対策』 前編
多少なりともゆっくりに関心のある人は、湯繰里(ゆっくり)市にはゆっくりがたくさん居
るのか、あるいはよほどゆっくりと縁の深い土地なのかと勘違いをしやすい。実際は地名を表
す字の通り、湯―――つまりは温泉―――が湧く里といった意味であり、古くは湯来里とも書
かれた。市内の中心部である湯木谷(ゆぎや)区や湯生谷(ゆんや)といった地名はもちろん
のこと、芦谷木(あしやき)という地名も有名温泉地の尻焼温泉と同様の命名であり、かつて
温泉があった事から来ている。そう、湯繰里市には温泉が湧いているのである。今も。
るのか、あるいはよほどゆっくりと縁の深い土地なのかと勘違いをしやすい。実際は地名を表
す字の通り、湯―――つまりは温泉―――が湧く里といった意味であり、古くは湯来里とも書
かれた。市内の中心部である湯木谷(ゆぎや)区や湯生谷(ゆんや)といった地名はもちろん
のこと、芦谷木(あしやき)という地名も有名温泉地の尻焼温泉と同様の命名であり、かつて
温泉があった事から来ている。そう、湯繰里市には温泉が湧いているのである。今も。
「ごはんさんをむーしゃむしゃしようね、おちびちゃん」
「れーみゅ!いっぱいむーちゃむーちゃしゅるよ!」
「ゆ!まりさのとってきたごはんさんをたべるのぜ」
公園の茂みの中に隠れるようにして、薄汚れたビニール袋がかけられた段ボールがあった。
そのビニールの上には苔や木の枝が被せられてカモフラージュがなされている。これはまりさ
種とれいむ種の番と、そしてその子であるれーみゅ1匹が棲む『ゆっくりしたおうち』であっ
た。親まりさの取ってきた『ごはんさん』は、人間から見れば道端の雑草に過ぎないものと、
観光客が落とした菓子の欠片などである。そして道に落ちていたあまあま―――つまりはどこ
かのゆっくりのうんうん―――である。うんうんを排泄物と認識しなければ、喜んで食うのが
ゆっくりである。排泄された後、ある程度時間が経っていたそれを、出歩く人間がほとんど居
ない早朝に狩りに出た親まりさは発見していたのだ。
「ゆわぁぁぁ!あまあましゃんがあるぅぅぅ!」
「ゆふふ。おちびちゃん、ちょっとまっててね」
そう言って親れいむは雑草を口に運び、噛んで柔らかくしたものをれーみゅの前に吐き出し
た。特に旨味も何も無い、どちらかと言えば苦味ばかりの草でも親ゆっくりが噛んで砂糖水の
唾液を絡ませれば、赤ゆっくりでも食えるのである。
「ゆぅぅ、れーみゅ、あまあまさんからちゃべたいよっ!」
「れいむがやわらかくしてくれたくささんをたべられたら、ごほうびにあげるのぜ」
「ゆっくりりかいしちゃよ。むーちゃむーちゃ、ちあわせー!」
「よくできたよ、おちびちゃん。それでこそれいむのゆっくりしたおちびちゃんだよっ」
野良ゆに詳しい諸兄であればお気づきであろう。このゆっくり一家の食卓には野良ゆっくり
の主要な食料、すなわち生ゴミが無い、という事に。
湯繰里市では増大するゴミ処理費用を賄うため、捨てられるゴミはすべて有料で回収されて
いる。しかし、その遥か前から生ゴミを荒らすゆっくり対策として、分別の徹底とゴミの回収
ボックスが設置され、野良ゆっくりの最大の食料供給源となっていた『生ゴミ荒らし』ができ
ない状況になっていたのである。そればかりではない。ある工夫によって生ゴミの大幅減量―
――ほぼゼロにする事に成功していたので、生ゴミ自体がほとんど出ないのである。
生ゴミが得られないのに、この町の野良ゆっくりは食料が足りるのか?答えはもちろん否で
ある。
実はこのまりさ種とれいむ種の番には、れーみゅ以外にも赤ゆっくりが居た。
『ま……まりちゃ…もっちょ……ゆっぐ………り…………』
『お゛……お゛ね゛い゛ち゛ゃ゛ん゛~っ!!な゛ん゛て゛っ゛?!と゛う゛し゛ち゛ぇ゛
ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛?!』
『ま゛り゛さ゛に゛の゛か゛わ゛い゛い゛、か゛わ゛い゛い゛、お゛ち゛ひ゛ち゛ゃ゛ん゛か゛
~!!』
『ゆ゛ん゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!こ゛め゛ん゛ね゛っ゛!!こ゛
め゛ん゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!』
これは3日前のこのおうちでの出来事である。れーみゅの他にもう1匹居たまりさ種の赤ゆ
っくりは、食料が足りず飢えで永遠にゆっくりした。このような事があれば親のどちらかが激
高して番を潰したり、ゲス化しそうなものだが、この町では同じような体験をして育って――
―いや、生き抜いてきた野良ゆばかりであるために、そのようなことは少ない。食糧難は日常
的なものであり、弱い赤ゆっくりが死ぬのもまた、いつもの事なのである。だがこれが一種の
間引きとなり、なんとか生きていられたれーみゅが育つ分くらいの食料を確保できるようにな
った。そのため一家は深い悲しみの中にあっても、わずかな『ゆっくり』をなんとか得る事が
できていた。
一家はこの食事が終わったら、再び眠りにつく。昼の明るい間に街に這い出ようものなら、
たちまち住人達によって駆除されてしまうからだ。この土地の野良ゆっくりにとって、れみり
ゃの舞い飛ぶ夜以上に昼間は恐ろしい時間であった。
「れーみゅも、おひさまのしたでゆっくりしちゃいよ」
「だめだよ、おちびちゃん。おそとはこわいこわいがいっぱいっだよ」
眠る前に言った、れーみゅのおねだりをキッパリと却下する親れいむ。
「でみょぉ、おそとでにんげんさんとたのしそうにしちぇる、ゆっくりをみたことがありゅよ」
れーみゅの言う事は本当であった。公園の茂みの中からこっそりと外を覗いて見た時に、れ
ーみゅは公園の外で人間と戯れる複数のゆっくりの姿を見た事があったのだった。
「おちびちゃんは、あんなゆっくりになっちゃだめなのぜっ!あんな、にんげんにこびをうっ
て、ゆっくりのほこりをうしなったゆっくりできないゆっくりになっちゃ!」
「ゆ、ゆぅぅぅぅ!?」
親まりさの思いがけない厳しい言葉に、れーみゅは目を白黒させた。
「あんな、にんげんになにをされてもわらっていなくちゃいけない、ゆっくりのかざかみにも
おけない『媚び売りゆっくり』になったら、おとーさんはゆるさないのぜ!」
「……ゆぅ、ゆっくりりかいちたよ…」
れーみゅはいまひとつ、なぜそこまで親まりさが言葉を荒げるのか腑に落ちなかったが、親
れいむがすーりすーりしてくれた事もあり、大人しく聞き入れたのであった。
公園の人目につかない茂みの中のお家。さしあたっては…この時間だけは、平穏であった。
「れーみゅ!いっぱいむーちゃむーちゃしゅるよ!」
「ゆ!まりさのとってきたごはんさんをたべるのぜ」
公園の茂みの中に隠れるようにして、薄汚れたビニール袋がかけられた段ボールがあった。
そのビニールの上には苔や木の枝が被せられてカモフラージュがなされている。これはまりさ
種とれいむ種の番と、そしてその子であるれーみゅ1匹が棲む『ゆっくりしたおうち』であっ
た。親まりさの取ってきた『ごはんさん』は、人間から見れば道端の雑草に過ぎないものと、
観光客が落とした菓子の欠片などである。そして道に落ちていたあまあま―――つまりはどこ
かのゆっくりのうんうん―――である。うんうんを排泄物と認識しなければ、喜んで食うのが
ゆっくりである。排泄された後、ある程度時間が経っていたそれを、出歩く人間がほとんど居
ない早朝に狩りに出た親まりさは発見していたのだ。
「ゆわぁぁぁ!あまあましゃんがあるぅぅぅ!」
「ゆふふ。おちびちゃん、ちょっとまっててね」
そう言って親れいむは雑草を口に運び、噛んで柔らかくしたものをれーみゅの前に吐き出し
た。特に旨味も何も無い、どちらかと言えば苦味ばかりの草でも親ゆっくりが噛んで砂糖水の
唾液を絡ませれば、赤ゆっくりでも食えるのである。
「ゆぅぅ、れーみゅ、あまあまさんからちゃべたいよっ!」
「れいむがやわらかくしてくれたくささんをたべられたら、ごほうびにあげるのぜ」
「ゆっくりりかいしちゃよ。むーちゃむーちゃ、ちあわせー!」
「よくできたよ、おちびちゃん。それでこそれいむのゆっくりしたおちびちゃんだよっ」
野良ゆに詳しい諸兄であればお気づきであろう。このゆっくり一家の食卓には野良ゆっくり
の主要な食料、すなわち生ゴミが無い、という事に。
湯繰里市では増大するゴミ処理費用を賄うため、捨てられるゴミはすべて有料で回収されて
いる。しかし、その遥か前から生ゴミを荒らすゆっくり対策として、分別の徹底とゴミの回収
ボックスが設置され、野良ゆっくりの最大の食料供給源となっていた『生ゴミ荒らし』ができ
ない状況になっていたのである。そればかりではない。ある工夫によって生ゴミの大幅減量―
――ほぼゼロにする事に成功していたので、生ゴミ自体がほとんど出ないのである。
生ゴミが得られないのに、この町の野良ゆっくりは食料が足りるのか?答えはもちろん否で
ある。
実はこのまりさ種とれいむ種の番には、れーみゅ以外にも赤ゆっくりが居た。
『ま……まりちゃ…もっちょ……ゆっぐ………り…………』
『お゛……お゛ね゛い゛ち゛ゃ゛ん゛~っ!!な゛ん゛て゛っ゛?!と゛う゛し゛ち゛ぇ゛
ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ゛?!』
『ま゛り゛さ゛に゛の゛か゛わ゛い゛い゛、か゛わ゛い゛い゛、お゛ち゛ひ゛ち゛ゃ゛ん゛か゛
~!!』
『ゆ゛ん゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!こ゛め゛ん゛ね゛っ゛!!こ゛
め゛ん゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!』
これは3日前のこのおうちでの出来事である。れーみゅの他にもう1匹居たまりさ種の赤ゆ
っくりは、食料が足りず飢えで永遠にゆっくりした。このような事があれば親のどちらかが激
高して番を潰したり、ゲス化しそうなものだが、この町では同じような体験をして育って――
―いや、生き抜いてきた野良ゆばかりであるために、そのようなことは少ない。食糧難は日常
的なものであり、弱い赤ゆっくりが死ぬのもまた、いつもの事なのである。だがこれが一種の
間引きとなり、なんとか生きていられたれーみゅが育つ分くらいの食料を確保できるようにな
った。そのため一家は深い悲しみの中にあっても、わずかな『ゆっくり』をなんとか得る事が
できていた。
一家はこの食事が終わったら、再び眠りにつく。昼の明るい間に街に這い出ようものなら、
たちまち住人達によって駆除されてしまうからだ。この土地の野良ゆっくりにとって、れみり
ゃの舞い飛ぶ夜以上に昼間は恐ろしい時間であった。
「れーみゅも、おひさまのしたでゆっくりしちゃいよ」
「だめだよ、おちびちゃん。おそとはこわいこわいがいっぱいっだよ」
眠る前に言った、れーみゅのおねだりをキッパリと却下する親れいむ。
「でみょぉ、おそとでにんげんさんとたのしそうにしちぇる、ゆっくりをみたことがありゅよ」
れーみゅの言う事は本当であった。公園の茂みの中からこっそりと外を覗いて見た時に、れ
ーみゅは公園の外で人間と戯れる複数のゆっくりの姿を見た事があったのだった。
「おちびちゃんは、あんなゆっくりになっちゃだめなのぜっ!あんな、にんげんにこびをうっ
て、ゆっくりのほこりをうしなったゆっくりできないゆっくりになっちゃ!」
「ゆ、ゆぅぅぅぅ!?」
親まりさの思いがけない厳しい言葉に、れーみゅは目を白黒させた。
「あんな、にんげんになにをされてもわらっていなくちゃいけない、ゆっくりのかざかみにも
おけない『媚び売りゆっくり』になったら、おとーさんはゆるさないのぜ!」
「……ゆぅ、ゆっくりりかいちたよ…」
れーみゅはいまひとつ、なぜそこまで親まりさが言葉を荒げるのか腑に落ちなかったが、親
れいむがすーりすーりしてくれた事もあり、大人しく聞き入れたのであった。
公園の人目につかない茂みの中のお家。さしあたっては…この時間だけは、平穏であった。
温泉街のバス停に数匹のゆっくりの姿があった。バスから降りる人々を前に、ぽよんぽよん
と跳ねながら元気よく声をかける。
「おきゃくさん、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくり~ゆっくり~!ゆっくりおんせんはゆっくり~」
「おきゃくさんにゆっくりしてほしいんだねー、わかるよー!」
「むきゅ!かんこうあんないじょはみぎてをいったところよ。ゆっくりしていってね!」
れいむ種、まりさ種、ちぇん種、ぱちゅりー種など、いろいろなゆっくりが観光客を前に愛
想を振りまいている。このゆっくりは見たところ身体やお飾りに汚れも無く、言葉も汚くない。
どうかすると飼いゆっくりに思えるが、実は全ゆん生粋の野良である。その証拠に、お飾りに
バッジは無く、バッジを取られたような跡も無い。
「まあ~、湯繰里温泉だけにゆっくりでお出迎えなんて、おもしろいわねぇ」
「ホントねぇ。あら、バッジが無いけど野良なのかしら?ウチの近所のクソ饅頭どもとは大違
いね」
「そうねぇ。あれにはホントうんざりさせられるけど、これくらい愛嬌があると悪くないわね
ぇ」
中年のオバちゃんの小グループはその野良の群を前にあれやこれや言いながら、しばらくす
ると去っていった。彼女達はバスの中で食べていた菓子を与えたようだ。ゆっくりの一団の前
に、口が開き半分ほどが残ったスナック菓子の袋があった。
「むきゅ、ほどほどね…つぎのばすさんがくるまで、たべられるくさをとりながらまってまし
ょう」
「わかるよー。さっきのおばさんれんちゅうは、ごはんさんをくれるゆっくりしたにんげんさ
んだったんだねー」
「れいむはおうたのれんしゅうっをするよ!ゆ~ゆ~」
「あんまりうるさくするとつぶされるから、ほどほどにするのぜ」
「どうしてそんなこというのぉぉぉぉ!?」
このやり取りでお分かりの通り、この野良ゆっくりどもは特別出来が良いわけではない。『人
間に媚を売っておけば得をする』と言う事を覚えているだけである。人間と同じく視覚を頼り
にするゆっくりにとって昼間に行動できないというのは、れみりゃの存在抜きにしてもかなり
のハンデである。さりとて、うかつに日中に行動すると問答無用で潰されてしまう。しかし例
外があった。観光客に愛想を振りまいている間は客の手前という事で潰されなかったのである。
そればかりか、何かを与えられる事すらあった。これはこの町の野良ゆっくりにとって思わぬ
福音であり、人間に媚を売る野良ゆっくりは増大した。とはいえ、今日の状況に至るまでの道
のりは決して平坦ではなかったのは、野良ゆっくりの餡子脳からして当然であった。
『ゆっへっへ、ゆっくりさせたんだから、あまあまをまりささまにけんじょうっするのぜ!』
『でいぶとあって、ゆっくりできたでしょぉぉぉ!?ゆっくりしないでいますぐ、ごはんさん
をよこせぇぇぇぇ!』
このように何かを勘違いしたゲス。
『ゆ~ゆ~、ゆっくり~して~いってね~』
『ゆーんゆーん!だじぇぇ!だじぇぇ!』
『うわ…なんだこの汚い野良は…』
ろくに身繕いもしていない、騒音を垂れ流す薄汚いモノ。
これらはたちまち駆除された。それらを繰り返すうち、次第に野良ゆっくりといえども覚え
たのである。人間への表向きの口のききかた、身繕いをして身体やお飾りをきれいにしておく
事などなどを。こうして、身ぎれいで、少なくとも人間の目の前でナメた口をきかない、人間
に愛嬌を振りまく事を覚えた一部の野良ゆっくりはその存在を黙認された。そして黙認される
までに至るために、ある重要な事がもうひとつある。
それは、あの野良ゆっくりの一団がバス停から『おうち』に向かう途中、目抜き通りを移動
中に起こった。
「ゆびょおっ!!」
奇妙な断末魔の叫びを残して、れいむが踏み潰された。昼間から一杯やって千鳥足になって
いた男が、運悪くれいむの側までよろけて来たためであった。
「んぁぁ?なんだ…ゆっくりか…汚ったねぇなぁ」
あまりに突然の出来事に、同行していたまりさ、ちぇん、ぱちゅりーは一瞬硬直する。が、
いち早く立ち直ったぱちゅりーは酔漢に声をかけた。
「ゆ…ゆっくりしていってね!」
ぱちゅりーは目の前の惨状に吐き気がこみ上げるのを抑えて、精一杯の声を上げた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!わかるよー!」
まりさとちぇんもぱちゅりーに続いて声を上げた。
「おい、野良ども!このゴミ片付けとけ」
酔漢は3匹に横柄な口調で命令する。
「むきゅ。わかったわ…ちぇん、ちりとりさんをかりてきて…」
「馬鹿野郎!喰えよ。オマエら好きだろう甘いの。『あまあましあわせー』って言ってみろ」
酔漢はぱちゅりーの声を遮って、無慈悲な命令を下した。れいむの屍骸を喰え、というのだ。
ゆっくりにとって同族食いは最大の禁忌のひとつ。そうで無くともゆっくりの死臭はゆっくり
がもっとも嫌うものだ。普通は野良であっても、そんな事をしないのだが…。
「ゆ!お…おいしそうだね!」
「たっくさんのあまあまなんだねー!わかるよー…」
「む、むきゅ…。ゆっくりいただきましょう」
3匹はれいむの屍骸を取り囲み、立ち上がるムッとした死臭を堪えて、本心を張り付いた笑
顔の裏に押し隠した。
「むーしゃむーしゃ、し、しあわせー!」×3
一斉にかぶりつき、れいむの成れの果てをほとんど噛まずに飲み込んだ。口の中一杯に死臭
と餡子の甘みが広がる。ぱちゅりーは勿論、まりさとちぇんも餡子やチョコを吐き出したくな
るのを堪えた。
「がーつがーつ、これうっめ」
「むーしゃむーしゃ、まじっぱないんだねー」
「めだまさんはかくべつね…ゆっぷ…」
「めだまさんひとりじめは、ゆっくりできないんだねー。かたほうはちぇんのだよー…」
「おかざりさんは、まりさのものなのぜ…」
白々しい演技ではあったが、3匹はれいむの亡骸をすべて腹に収めた。収めてしまった。だ
が、れいむを踏みつぶした男はまだ冷酷な命令を下した。
「おい、地面を舐めてきれいにしとけよ。よく未練たらしく舐めてるだろうが」
3匹はれいむの屍骸があった場所を舐め始める。ざらざらとした石の面が舌に痛いが、それ
もグッと耐える。
「ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ、しあわせー…」×3
やがてそこには3匹の唾液で濡れた石畳があるばかりとなった。そこにれいむが居たという
痕跡は何も無い。れいむがこの世に存在したという証は、何一つ残っていなかった。いつの間
にか酔漢は去って、もう居ない。
そう、愛嬌を振りまき媚を売って生きる野良ゆっくりが覚えたもっとも重要な事。それは『人
間に決して逆らわない』ことだ。何を要求されても笑顔を張り付かせて従うゆっくり。それが、
あの公園の親まりさがこき下ろした『媚び売りゆっくり』であった。
4匹から3匹に減った一団は目抜き通りを抜けると裏通りを這い進み、薮の中に埋もれるよ
うにある納屋とも何ともつかぬ、朽ちかけた廃屋に潜り込む。ここがこの野良の一団の『おう
ち』であった。
「ゆぅ…ゆぅぅぅぅう゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!れいぶっ!れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛
ぅ゛~!!」
「む、むきょぉぉぉ…む゛き゛ょ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛ろ゛ぉ゛ぉ゛…エレエレエレ…」
「わ゛、わ゛か゛ら゛な゛い゛っ゛!わ゛か゛ら゛な゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛
っ゛!!!!」
媚び売りゆっくり。それは生き延びてゆくために、どんな理不尽な事をされても人間に逆ら
わず、本心を押し隠して愛嬌を振りまく振りをする事を選んだ野良ゆっくりだ。一団は廃屋の
中で嘆き続けた。
(むきゅう…それでも…なんのじゆうもなく、おひさまもみえないところにとじこめられる『こ
んぽすとゆっくり』よりかは、ましだわ…)
ぱちゅりーは、じぶんよりもさらに下がいる事を思って、必死に自我を支えようとしていた。
と跳ねながら元気よく声をかける。
「おきゃくさん、ゆっくりしていってね!」
「ゆっくり~ゆっくり~!ゆっくりおんせんはゆっくり~」
「おきゃくさんにゆっくりしてほしいんだねー、わかるよー!」
「むきゅ!かんこうあんないじょはみぎてをいったところよ。ゆっくりしていってね!」
れいむ種、まりさ種、ちぇん種、ぱちゅりー種など、いろいろなゆっくりが観光客を前に愛
想を振りまいている。このゆっくりは見たところ身体やお飾りに汚れも無く、言葉も汚くない。
どうかすると飼いゆっくりに思えるが、実は全ゆん生粋の野良である。その証拠に、お飾りに
バッジは無く、バッジを取られたような跡も無い。
「まあ~、湯繰里温泉だけにゆっくりでお出迎えなんて、おもしろいわねぇ」
「ホントねぇ。あら、バッジが無いけど野良なのかしら?ウチの近所のクソ饅頭どもとは大違
いね」
「そうねぇ。あれにはホントうんざりさせられるけど、これくらい愛嬌があると悪くないわね
ぇ」
中年のオバちゃんの小グループはその野良の群を前にあれやこれや言いながら、しばらくす
ると去っていった。彼女達はバスの中で食べていた菓子を与えたようだ。ゆっくりの一団の前
に、口が開き半分ほどが残ったスナック菓子の袋があった。
「むきゅ、ほどほどね…つぎのばすさんがくるまで、たべられるくさをとりながらまってまし
ょう」
「わかるよー。さっきのおばさんれんちゅうは、ごはんさんをくれるゆっくりしたにんげんさ
んだったんだねー」
「れいむはおうたのれんしゅうっをするよ!ゆ~ゆ~」
「あんまりうるさくするとつぶされるから、ほどほどにするのぜ」
「どうしてそんなこというのぉぉぉぉ!?」
このやり取りでお分かりの通り、この野良ゆっくりどもは特別出来が良いわけではない。『人
間に媚を売っておけば得をする』と言う事を覚えているだけである。人間と同じく視覚を頼り
にするゆっくりにとって昼間に行動できないというのは、れみりゃの存在抜きにしてもかなり
のハンデである。さりとて、うかつに日中に行動すると問答無用で潰されてしまう。しかし例
外があった。観光客に愛想を振りまいている間は客の手前という事で潰されなかったのである。
そればかりか、何かを与えられる事すらあった。これはこの町の野良ゆっくりにとって思わぬ
福音であり、人間に媚を売る野良ゆっくりは増大した。とはいえ、今日の状況に至るまでの道
のりは決して平坦ではなかったのは、野良ゆっくりの餡子脳からして当然であった。
『ゆっへっへ、ゆっくりさせたんだから、あまあまをまりささまにけんじょうっするのぜ!』
『でいぶとあって、ゆっくりできたでしょぉぉぉ!?ゆっくりしないでいますぐ、ごはんさん
をよこせぇぇぇぇ!』
このように何かを勘違いしたゲス。
『ゆ~ゆ~、ゆっくり~して~いってね~』
『ゆーんゆーん!だじぇぇ!だじぇぇ!』
『うわ…なんだこの汚い野良は…』
ろくに身繕いもしていない、騒音を垂れ流す薄汚いモノ。
これらはたちまち駆除された。それらを繰り返すうち、次第に野良ゆっくりといえども覚え
たのである。人間への表向きの口のききかた、身繕いをして身体やお飾りをきれいにしておく
事などなどを。こうして、身ぎれいで、少なくとも人間の目の前でナメた口をきかない、人間
に愛嬌を振りまく事を覚えた一部の野良ゆっくりはその存在を黙認された。そして黙認される
までに至るために、ある重要な事がもうひとつある。
それは、あの野良ゆっくりの一団がバス停から『おうち』に向かう途中、目抜き通りを移動
中に起こった。
「ゆびょおっ!!」
奇妙な断末魔の叫びを残して、れいむが踏み潰された。昼間から一杯やって千鳥足になって
いた男が、運悪くれいむの側までよろけて来たためであった。
「んぁぁ?なんだ…ゆっくりか…汚ったねぇなぁ」
あまりに突然の出来事に、同行していたまりさ、ちぇん、ぱちゅりーは一瞬硬直する。が、
いち早く立ち直ったぱちゅりーは酔漢に声をかけた。
「ゆ…ゆっくりしていってね!」
ぱちゅりーは目の前の惨状に吐き気がこみ上げるのを抑えて、精一杯の声を上げた。
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!わかるよー!」
まりさとちぇんもぱちゅりーに続いて声を上げた。
「おい、野良ども!このゴミ片付けとけ」
酔漢は3匹に横柄な口調で命令する。
「むきゅ。わかったわ…ちぇん、ちりとりさんをかりてきて…」
「馬鹿野郎!喰えよ。オマエら好きだろう甘いの。『あまあましあわせー』って言ってみろ」
酔漢はぱちゅりーの声を遮って、無慈悲な命令を下した。れいむの屍骸を喰え、というのだ。
ゆっくりにとって同族食いは最大の禁忌のひとつ。そうで無くともゆっくりの死臭はゆっくり
がもっとも嫌うものだ。普通は野良であっても、そんな事をしないのだが…。
「ゆ!お…おいしそうだね!」
「たっくさんのあまあまなんだねー!わかるよー…」
「む、むきゅ…。ゆっくりいただきましょう」
3匹はれいむの屍骸を取り囲み、立ち上がるムッとした死臭を堪えて、本心を張り付いた笑
顔の裏に押し隠した。
「むーしゃむーしゃ、し、しあわせー!」×3
一斉にかぶりつき、れいむの成れの果てをほとんど噛まずに飲み込んだ。口の中一杯に死臭
と餡子の甘みが広がる。ぱちゅりーは勿論、まりさとちぇんも餡子やチョコを吐き出したくな
るのを堪えた。
「がーつがーつ、これうっめ」
「むーしゃむーしゃ、まじっぱないんだねー」
「めだまさんはかくべつね…ゆっぷ…」
「めだまさんひとりじめは、ゆっくりできないんだねー。かたほうはちぇんのだよー…」
「おかざりさんは、まりさのものなのぜ…」
白々しい演技ではあったが、3匹はれいむの亡骸をすべて腹に収めた。収めてしまった。だ
が、れいむを踏みつぶした男はまだ冷酷な命令を下した。
「おい、地面を舐めてきれいにしとけよ。よく未練たらしく舐めてるだろうが」
3匹はれいむの屍骸があった場所を舐め始める。ざらざらとした石の面が舌に痛いが、それ
もグッと耐える。
「ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ、しあわせー…」×3
やがてそこには3匹の唾液で濡れた石畳があるばかりとなった。そこにれいむが居たという
痕跡は何も無い。れいむがこの世に存在したという証は、何一つ残っていなかった。いつの間
にか酔漢は去って、もう居ない。
そう、愛嬌を振りまき媚を売って生きる野良ゆっくりが覚えたもっとも重要な事。それは『人
間に決して逆らわない』ことだ。何を要求されても笑顔を張り付かせて従うゆっくり。それが、
あの公園の親まりさがこき下ろした『媚び売りゆっくり』であった。
4匹から3匹に減った一団は目抜き通りを抜けると裏通りを這い進み、薮の中に埋もれるよ
うにある納屋とも何ともつかぬ、朽ちかけた廃屋に潜り込む。ここがこの野良の一団の『おう
ち』であった。
「ゆぅ…ゆぅぅぅぅう゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛っ゛!れいぶっ!れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛
ぅ゛~!!」
「む、むきょぉぉぉ…む゛き゛ょ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛ろ゛ぉ゛ぉ゛…エレエレエレ…」
「わ゛、わ゛か゛ら゛な゛い゛っ゛!わ゛か゛ら゛な゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛
っ゛!!!!」
媚び売りゆっくり。それは生き延びてゆくために、どんな理不尽な事をされても人間に逆ら
わず、本心を押し隠して愛嬌を振りまく振りをする事を選んだ野良ゆっくりだ。一団は廃屋の
中で嘆き続けた。
(むきゅう…それでも…なんのじゆうもなく、おひさまもみえないところにとじこめられる『こ
んぽすとゆっくり』よりかは、ましだわ…)
ぱちゅりーは、じぶんよりもさらに下がいる事を思って、必死に自我を支えようとしていた。
(後編に続く)