ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1305 はじめてのぎゃくたい
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ankoss
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今は虐待鬼威さんと呼ばれる俺の、ガキの頃の話をしよう。
俺が昔通っていた幼稚園の裏庭には、ちょっとした畑があった。
春先に皆でサツマイモやキュウリなどを植えて、大きく育ったら収穫する。
普段の手入れは先生たちに任せっぱなしだったものの、土いじりとはあまり縁のない
俺たちにとっては新鮮な体験だったし、体を動かした後に食べる採れたての野菜の味は格別だった。
特に秋のイモ掘りから始まる焼き芋大会は、俺が一番心待ちにしている行事だった。
春先に皆でサツマイモやキュウリなどを植えて、大きく育ったら収穫する。
普段の手入れは先生たちに任せっぱなしだったものの、土いじりとはあまり縁のない
俺たちにとっては新鮮な体験だったし、体を動かした後に食べる採れたての野菜の味は格別だった。
特に秋のイモ掘りから始まる焼き芋大会は、俺が一番心待ちにしている行事だった。
夏休みが過ぎ、新学期も始まったばかりの頃、俺は帰りの時間にこっそり畑を見に行くことにした。
あと一ヶ月もすれば焼き芋大会。
気の早い俺は、サツマイモがちゃんと育っているか、皆より一足先に確かめてみたかった。
あと一ヶ月もすれば焼き芋大会。
気の早い俺は、サツマイモがちゃんと育っているか、皆より一足先に確かめてみたかった。
畑は動物が入って来ないよう木製の板柵で囲まれ、戸には金具で留め金が施されている。
錠は付いていないので、留め金を外せば誰でも入る事が出来た。
金具に手をかけたところで、俺は畑が妙に騒がしい事に気付いた。
戸を開ける前に、柵の隙間からそっと中を窺う。
錠は付いていないので、留め金を外せば誰でも入る事が出来た。
金具に手をかけたところで、俺は畑が妙に騒がしい事に気付いた。
戸を開ける前に、柵の隙間からそっと中を窺う。
「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」
「おいしいね、れいむ! ここはさいこうのゆっくりぷれいすだね!」
「おいしいね、れいむ! ここはさいこうのゆっくりぷれいすだね!」
どこから入って来たのだろう、畑の真ん中に二匹のゆっくりがいた。
赤いリボンのれいむと、黒い帽子を被ったまりさだ。
絵本やテレビで見たことはあっても、本物のゆっくりに出会ったのはこれが初めてだった。
赤いリボンのれいむと、黒い帽子を被ったまりさだ。
絵本やテレビで見たことはあっても、本物のゆっくりに出会ったのはこれが初めてだった。
(すげー、ほんとにお饅頭みたいだ)
それが、初めて生のゆっくりを目にした感想だった。
だが興奮するのも束の間、奴らの周りをよく見回して俺は凍りついた。
二匹が食べていたのは、秋の収穫を楽しみにしていたサツマイモだったのだ。
つるは噛み切られ、葉は千切られ潰され、食べかけのまま放り出されているものもある。
汚らしく食べ散らかされたサツマイモを前に、腹の底から焼けつくような気持ちが俺の中に湧きあがって来た。
だが興奮するのも束の間、奴らの周りをよく見回して俺は凍りついた。
二匹が食べていたのは、秋の収穫を楽しみにしていたサツマイモだったのだ。
つるは噛み切られ、葉は千切られ潰され、食べかけのまま放り出されているものもある。
汚らしく食べ散らかされたサツマイモを前に、腹の底から焼けつくような気持ちが俺の中に湧きあがって来た。
もしこれが猿なり猪なり、物言わぬ動物相手だったら、ここまで激しい憤りは感じなかっただろう。
だがゆっくり共は、笑っていた。
先生たちが手入れし、俺が楽しみにしていたサツマイモを我が物顔で食い荒らし、へらへらと笑っていた。
それが俺には我慢出来なかった。
だがゆっくり共は、笑っていた。
先生たちが手入れし、俺が楽しみにしていたサツマイモを我が物顔で食い荒らし、へらへらと笑っていた。
それが俺には我慢出来なかった。
先生を連れてくるという考えに至らなかったのは、自分が皆の野菜を守るという使命感に酔っていたのもある。
自慢じゃないが同級生との喧嘩で負けたことは無かったし、野良犬に比べれば怖くもなんともない。
とは言え、相手は当時の俺の半分程もある成体ゆっくり。
怪我をするかもしれないのはわかっていたが、子供ならではの無鉄砲さが俺を駆り立てた。
自慢じゃないが同級生との喧嘩で負けたことは無かったし、野良犬に比べれば怖くもなんともない。
とは言え、相手は当時の俺の半分程もある成体ゆっくり。
怪我をするかもしれないのはわかっていたが、子供ならではの無鉄砲さが俺を駆り立てた。
「ゆっ? まりさ、にんげんさんだよ!」
「ほんとだ! にんげんさん、ゆっくりしていって…」
「ほんとだ! にんげんさん、ゆっくりしていって…」
俺の姿を見止めた二匹のゆっくりは、漲る殺意にも気付かず、能天気に挨拶しようとする。
言い終わる前に、俺はサッカーボールを蹴る要領でまりさの顔面に蹴りを入れた。
言い終わる前に、俺はサッカーボールを蹴る要領でまりさの顔面に蹴りを入れた。
「ゆぎゃんっ!!」
ぼすっと鈍い音。
まりさの体は地上10センチほど浮かび上がり、緩やかなアーチを描いて地面に激突する。
まりさの体は地上10センチほど浮かび上がり、緩やかなアーチを描いて地面に激突する。
「いだああああああい! いだいよおおお!」
「にんげんさん、いきなりなにするの! ゆっくりしないでまりさにあやまってね!」
「にんげんさん、いきなりなにするの! ゆっくりしないでまりさにあやまってね!」
れいむが俺に向かってぷくーっと体を膨らませた。
散々食い散らかして詫びるどころか、何の反省もしていないゆっくり共の言葉に、一層腹を立てたのを覚えている。
俺はれいむの膨れた頬目掛けて、力一杯右ストレートを叩きこんだ。
散々食い散らかして詫びるどころか、何の反省もしていないゆっくり共の言葉に、一層腹を立てたのを覚えている。
俺はれいむの膨れた頬目掛けて、力一杯右ストレートを叩きこんだ。
「ぼびゅうっ!?」
空気と一緒に悲鳴を漏らし、れいむもまた畑を転がる。
たかだか5歳かそこらの子供の力だ、殴ったぐらいじゃ潰れもしない。
しかし大袈裟に泣いて痛がるゆっくりの悲鳴は、俺に勇気と自信を与えてくれた。
たかだか5歳かそこらの子供の力だ、殴ったぐらいじゃ潰れもしない。
しかし大袈裟に泣いて痛がるゆっくりの悲鳴は、俺に勇気と自信を与えてくれた。
「もうまりさおこったよ、ゆるさないよ!!」
そこへ起き上がったまりさが、真っ赤な顔で涙目になりながら突進してくる。
横から跳びかかられ、避けきれなかった俺は仰向けにひっくり返ってしまった。
体を起こそうとする前に、ずしんと重たい物が跳び乗ってくる。
横から跳びかかられ、避けきれなかった俺は仰向けにひっくり返ってしまった。
体を起こそうとする前に、ずしんと重たい物が跳び乗ってくる。
「ゆっふん、まりさのかちだよ! ゆっくりしてないにんげんさんは、ゆっくりまりさにやっつけられてね!」
「まりさ、かっこいいよ! れいむほれなおしちゃうよ~」
「ゆへへ…そんなにほめられるとてれるよぉ」
「まりさ、かっこいいよ! れいむほれなおしちゃうよ~」
「ゆへへ…そんなにほめられるとてれるよぉ」
まりさに胸の上に圧し掛かられ、ぐっと息が詰まる。
やっぱり先生を呼んで来れば良かったかも、と一瞬思う。
しかし、勝ち誇るまりさの顔をすぐ傍で見せつけられ、悔しさ余って力が湧いてきた。
やっぱり先生を呼んで来れば良かったかも、と一瞬思う。
しかし、勝ち誇るまりさの顔をすぐ傍で見せつけられ、悔しさ余って力が湧いてきた。
こんな奴らに絶対負けたくない。負けてたまるか。
「このっ!」
俺は咄嗟にまりさのお下げ髪を掴むと、ありったけの力で引きちぎった。
ぶちっという手応えと共に、お下げが根元からひっこ抜ける。
ぶちっという手応えと共に、お下げが根元からひっこ抜ける。
「ゆんやあああああ!! ばでぃざのぎれいながみのげがああああああ!!」
予想外の反撃に、まりさは堪らず俺から跳び退いた。
頭皮もろとも引き抜いたようで、まりさのこめかみの辺りからボトボト餡子がこぼれる。
その隙を突いて起き上がり、手にしたお下げを鞭のようにべちんべちんとまりさに叩きつけた。
頭皮もろとも引き抜いたようで、まりさのこめかみの辺りからボトボト餡子がこぼれる。
その隙を突いて起き上がり、手にしたお下げを鞭のようにべちんべちんとまりさに叩きつけた。
「いだっ! いだいっ!! やべでよおおおおおおお!!」
さっきまでの威勢もどこかへ消え失せ、まりさは赤ん坊のように泣きだした。
叩く、蹴る、殴るの連続攻撃に、身動きも出来ず体を縮こまらせる。
叩く、蹴る、殴るの連続攻撃に、身動きも出来ず体を縮こまらせる。
「ばでぃざにひどいごどずるなああああああ!!」
れいむがまりさを救うべく体当たりをしてくるも、同じ手は二度も食らわない。
ひょいと脇に避けてやると、勢い余ったれいむはそのまま突っ走り、助けるはずのまりさと衝突した。
ひょいと脇に避けてやると、勢い余ったれいむはそのまま突っ走り、助けるはずのまりさと衝突した。
『ゆぶへぇっ!!!』
二匹の悲鳴が綺麗にハモった。
少し吹っ飛んでから柵にぶつかると、そのままずるずる地べたに落ちる。
仲良く折り重なった二匹まとめて、俺はパンチの雨を降らせた。
今だったらオラオララッシュと言うところだろうが、当時の俺はまだJOJOなど知らない。
少し吹っ飛んでから柵にぶつかると、そのままずるずる地べたに落ちる。
仲良く折り重なった二匹まとめて、俺はパンチの雨を降らせた。
今だったらオラオララッシュと言うところだろうが、当時の俺はまだJOJOなど知らない。
「ゆぎゃあああああああ! ぼうやべでえええええええ!!」
「ぶえええええん、ぶえええええええええん!!!」
「ぶえええええん、ぶえええええええええん!!!」
二匹の悲鳴にも耳を貸さず、固めのクッションを叩くような感触を楽しむ。
赤い血の流れる動物とは違い、餡子の詰まった喋る饅頭に憐れみなど感じない。
ひたすら殴り続けること五分、腕が痛くなったところで俺は手を止めた。
赤い血の流れる動物とは違い、餡子の詰まった喋る饅頭に憐れみなど感じない。
ひたすら殴り続けること五分、腕が痛くなったところで俺は手を止めた。
「ゆひー…ゆひぃー…」
「ぼう…ぼういだいのやだぁ…おうぢがえるぅ…」
「ぼう…ぼういだいのやだぁ…おうぢがえるぅ…」
タコ殴りにされ、痣だらけのまだら模様になった二匹の饅頭。
サツマイモを食い荒らし、謝るどころか俺に圧し掛かり、この期に及んでもまだ反省しない二匹のゆっくり。
こいつらを許し、逃がしてやるという選択肢はもう俺の中に残ってはいなかった。
サツマイモを食い荒らし、謝るどころか俺に圧し掛かり、この期に及んでもまだ反省しない二匹のゆっくり。
こいつらを許し、逃がしてやるという選択肢はもう俺の中に残ってはいなかった。
とは言え、当時5歳の俺の体力はそろそろ底を尽きかけている。
殴られ続けた饅頭二匹はそれ以上のダメージだろうが、弱っているだけで致命傷ではない。
何か武器が、こいつらに止めを刺せる武器がないだろうか。
畑を見渡した俺の視界に、きらりと光るものが映る。
シャベルだ。
先生の誰かが置き忘れたのだろう、何の変哲もない鉄製のシャベル。
しかし俺の目には、まるでテレビのヒーローの剣に見えた。
俺はシャベルを手に取ると、まりさの頭に勢い良く振り下ろす。
殴られ続けた饅頭二匹はそれ以上のダメージだろうが、弱っているだけで致命傷ではない。
何か武器が、こいつらに止めを刺せる武器がないだろうか。
畑を見渡した俺の視界に、きらりと光るものが映る。
シャベルだ。
先生の誰かが置き忘れたのだろう、何の変哲もない鉄製のシャベル。
しかし俺の目には、まるでテレビのヒーローの剣に見えた。
俺はシャベルを手に取ると、まりさの頭に勢い良く振り下ろす。
「ゆぎぃっ!?」
横に転がって避けられたが、シャベルはまりさの頬をざっくりと切り裂いた。
餡子と一緒に甘い匂いが傷口から漏れ出す。
餡子と一緒に甘い匂いが傷口から漏れ出す。
「ゆああああああん、いだいよおおおおお!! ばでぃざのすべすべほっぺがあああああ!!」
じっとしていればいいものを、痛がってのたうち回るせいでどんどん餡子がはみ出していく。
中身を減らして弱ったまりさに、俺は何度も何度もシャベルを突き刺した。
ざくっ! ざくっ!ざくっ!
固い鉄の刃にめった刺しにされ、まりさは餡子のこびりついたボロ雑巾になり果てた。
俺はシャベルを引き抜くと、残ったれいむに目を向ける。
柵の隅に追い詰められたれいむは、がたがた震えながら後ずさった。
もう抵抗する気力もなく、シャベルの刃に視線を釘づけながら命乞いを始める。
中身を減らして弱ったまりさに、俺は何度も何度もシャベルを突き刺した。
ざくっ! ざくっ!ざくっ!
固い鉄の刃にめった刺しにされ、まりさは餡子のこびりついたボロ雑巾になり果てた。
俺はシャベルを引き抜くと、残ったれいむに目を向ける。
柵の隅に追い詰められたれいむは、がたがた震えながら後ずさった。
もう抵抗する気力もなく、シャベルの刃に視線を釘づけながら命乞いを始める。
「や…やべてね、にんげんさん…れいむにひどいことしないで…」
ざくっ!
脳天に深々とシャベルを突き立てられ、れいむもすぐにまりさの後を追った。
齢5歳にして二匹のゆっくりを仕留めた俺は、シャベルを置き、しばし勝利の余韻に浸る。
今まで感じたことのない高揚感で胸が一杯になり、思わずひゃっはーと叫びたい気分だった。
しかし、畑に転がるゆっくりの死骸を前にして、すぐに我に返る。
このまま放っておいたら、先生に見つかった時に大騒ぎになってしまう。
俺は先生たちが来る前に、大急ぎで死骸を片づけることにした。
餡子に土を被せて踏みならし、皮やお下げ、飾りなどは近くの堆肥置場の中にこっそり混ぜる。
今まで感じたことのない高揚感で胸が一杯になり、思わずひゃっはーと叫びたい気分だった。
しかし、畑に転がるゆっくりの死骸を前にして、すぐに我に返る。
このまま放っておいたら、先生に見つかった時に大騒ぎになってしまう。
俺は先生たちが来る前に、大急ぎで死骸を片づけることにした。
餡子に土を被せて踏みならし、皮やお下げ、飾りなどは近くの堆肥置場の中にこっそり混ぜる。
片づけの途中でふと柵を見ると、下の方にゆっくりが通れるくらいの穴が開いていた。
雨か何かで木が腐り、そこから穴を開けて入って来たのだろう。
俺はちょっと考えてから、近くに落ちていた木の板で穴を塞いでしまうことにした。
塞ぐと言っても、ただ板を置いただけだ。大きなゆっくりが体当たりをすれば、簡単に侵入出来てしまう。
それもいいや、と俺は思った。
サツマイモを台無しにしたゆっくりへの怒りは、既にゆっくりそのものへの憎しみに変わっていた。
ゆっくりなんか全然怖くない。また入って来たなら、もう一度やっつけてやればいいんだ。
雨か何かで木が腐り、そこから穴を開けて入って来たのだろう。
俺はちょっと考えてから、近くに落ちていた木の板で穴を塞いでしまうことにした。
塞ぐと言っても、ただ板を置いただけだ。大きなゆっくりが体当たりをすれば、簡単に侵入出来てしまう。
それもいいや、と俺は思った。
サツマイモを台無しにしたゆっくりへの怒りは、既にゆっくりそのものへの憎しみに変わっていた。
ゆっくりなんか全然怖くない。また入って来たなら、もう一度やっつけてやればいいんだ。
…今思うと俺もだいぶ餡子脳だった気がする。
まあ、その辺はまだガキんちょだったんだ、見逃してやってくれ。
まあ、その辺はまだガキんちょだったんだ、見逃してやってくれ。
それからの俺は、畑の見回りが日課になった。
毎日毎日、帰りの時間になると畑を覗き、ゆっくりが来ていないとわかると肩を落とした。
本来なら喜ばしい事なのだろうが、ゆっくりを求める本能の声は、俺の中で日増しに大きくなっていった。
畑を守るという当初の目的さえ、最早ゆっくりと戦うための大義名分に過ぎなくなっていた。
毎日毎日、帰りの時間になると畑を覗き、ゆっくりが来ていないとわかると肩を落とした。
本来なら喜ばしい事なのだろうが、ゆっくりを求める本能の声は、俺の中で日増しに大きくなっていった。
畑を守るという当初の目的さえ、最早ゆっくりと戦うための大義名分に過ぎなくなっていた。
初めてゆっくりと出会ってから一週間目。
いつものように俺は裏の畑に向かった。
今日こそはゆっくりが来ていないかと、期待を込めて柵の隙間から様子を窺う。
いつものように俺は裏の畑に向かった。
今日こそはゆっくりが来ていないかと、期待を込めて柵の隙間から様子を窺う。
いた。
待ちに待ったゆっくりの再来に、俺はこみ上げる笑いを必死で飲み込んだ。
今度は大きいの二匹に加え、小さいのを三匹も連れている。親子だろう。
大きい黒帽子の肩割れは赤リボンではなく、金髪のカチューシャ付きだった。
これもテレビで見たことがある、ゆっくりありすだ。
待ちに待ったゆっくりの再来に、俺はこみ上げる笑いを必死で飲み込んだ。
今度は大きいの二匹に加え、小さいのを三匹も連れている。親子だろう。
大きい黒帽子の肩割れは赤リボンではなく、金髪のカチューシャ付きだった。
これもテレビで見たことがある、ゆっくりありすだ。
子供がいる分この間よりも手こずるだろうが、今日はこちらにも武器がある。
畑の傍に積み上げられた石と、柵に立てかけられた今ひとつ用途のわからない棒だった。
細い竹で出来た棒は、子供でも易々扱えるほど軽く、その上頑丈だ。
畑の傍に積み上げられた石と、柵に立てかけられた今ひとつ用途のわからない棒だった。
細い竹で出来た棒は、子供でも易々扱えるほど軽く、その上頑丈だ。
もたもたしている暇はなかった。
あまり時間を掛け過ぎると、先生が来てしまうかもしれない。
ポケットに詰められるだけ石を詰め込み、竹の棒を両手で握りしめて、俺は畑に踏み込んだ。
あまり時間を掛け過ぎると、先生が来てしまうかもしれない。
ポケットに詰められるだけ石を詰め込み、竹の棒を両手で握りしめて、俺は畑に踏み込んだ。
「ゆ? おいにんげん、まりささまのゆっくりプレイスになんのようだぜ!」
親まりさを俺を見つけるなり、噛んでいたサツマイモのつるをペッと吐きだした。
前のまりさより随分口が悪いし、全体的に黒っぽく汚れている。
ハエの二、三匹たかっていてもおかしくない姿だった。
前のまりさより随分口が悪いし、全体的に黒っぽく汚れている。
ハエの二、三匹たかっていてもおかしくない姿だった。
「ゆっへっへ、おやさいさんをよこどりしようとするゲスなにんげんは、まりささまがせいっさいっしてやるのぜ!」
「ありすのだ~りんはむれでいちばんつよいのよ! にげるならいまのうちよ!」
「しょうだじぇ、まりしゃしゃまのおとうしゃんはちゅよいのじぇ!」
「くじゅにんげんはゆっきゅりちになちゃい!」
「ば~きゃ、ば~きゃ! ゆぷぷっ!」
「ありすのだ~りんはむれでいちばんつよいのよ! にげるならいまのうちよ!」
「しょうだじぇ、まりしゃしゃまのおとうしゃんはちゅよいのじぇ!」
「くじゅにんげんはゆっきゅりちになちゃい!」
「ば~きゃ、ば~きゃ! ゆぷぷっ!」
てんで好き勝手な事を言われてカチンと来たが、ぐっと堪える。
言い返す代わりに、俺はポケットから取り出した石をゆっくり共目掛けてブン投げた。
言い返す代わりに、俺はポケットから取り出した石をゆっくり共目掛けてブン投げた。
「ゆぶっ!?」
的の大きな親ゆっくりではなく、傍らの小さな赤まりさに当たった。
威力自体は大したことはないはずだが、脆弱な赤ゆっくりでは石の重さに耐えられなかったらしい。
びちゃっと餡子を飛び散らせ、赤まりさは石の下敷きになった。
威力自体は大したことはないはずだが、脆弱な赤ゆっくりでは石の重さに耐えられなかったらしい。
びちゃっと餡子を飛び散らせ、赤まりさは石の下敷きになった。
「あ、あがぢゃあああああああん!?」
「あでぃずのがわいいあがぢゃんがああああああ!! どぼじでえええええ!?」
「おねえじゃあああああん!! ゆえ~ん、ゆえ~ん!!」
「こんにゃのときゃいはじゃにゃいわあああああ!!」
「あでぃずのがわいいあがぢゃんがああああああ!! どぼじでえええええ!?」
「おねえじゃあああああん!! ゆえ~ん、ゆえ~ん!!」
「こんにゃのときゃいはじゃにゃいわあああああ!!」
ぺしゃんこになってしまった赤まりさの死骸に群がり、泣き喚くゆっくり親子。
チャンスだ。
俺は両手に石を持ち、固まっている親子に雪合戦の要領で投げつける。
チャンスだ。
俺は両手に石を持ち、固まっている親子に雪合戦の要領で投げつける。
「あがじゃん、めをざばずんだぜ…ゆがっ!」
「おかーさんがぺーろぺーろしてあげ…ゆぎゃひっ!」
「おねえじゃ…ゆべしっ!」
「ゆ…ぴぎゃっ!」
「ゆべえっ!」
「おかーさんがぺーろぺーろしてあげ…ゆぎゃひっ!」
「おねえじゃ…ゆべしっ!」
「ゆ…ぴぎゃっ!」
「ゆべえっ!」
一個ぶつける度に親ゆっくりから情けない悲鳴が上がる。
赤ゆっくりたちは直接当たらずとも、跳ね返った石の巻き添えを食ったり、
石の間に挟まれて生き埋めになったりした。
三匹いた赤ゆっくりは、1分も待たずに全滅。
親ゆっくりの方にもそこそこの痛手を与えられた。
赤ゆっくりたちは直接当たらずとも、跳ね返った石の巻き添えを食ったり、
石の間に挟まれて生き埋めになったりした。
三匹いた赤ゆっくりは、1分も待たずに全滅。
親ゆっくりの方にもそこそこの痛手を与えられた。
「ばりざああああああ!! はやくなんどがじなざいよおおおおおおお!!」
「ゆ、ゆぐぐっ…! い、いいきになるんじゃないぜえええええっ!!」
「ゆ、ゆぐぐっ…! い、いいきになるんじゃないぜえええええっ!!」
親ありすに煽られ、親まりさが歯をむき出して突っ込んでくる。
俺は残ったポケットの石を、全弾親まりさにお見舞いした。
最初の一発は、見事帽子を吹っ飛ばした。
俺は残ったポケットの石を、全弾親まりさにお見舞いした。
最初の一発は、見事帽子を吹っ飛ばした。
「ゆわあああっ、まりさのおぼうじざんっ!!」
帽子を追いかけて方向転換したところへ、矢継ぎ早に石を浴びせかける。
「ゆっ!? ゆがっ! やべっ!! ぶべえっ!!」
ひとつぶつかる度に痣ができ、皮膚が裂け、歯が欠けていく。
最後の一撃がガツンと額に命中すると、親まりさはひっくり返って静かになった。
最後の一撃がガツンと額に命中すると、親まりさはひっくり返って静かになった。
「ばりざあああああああ! なにやっでるのごのやぐだだずうううううう!!!」
つま先で親まりさを蹴り転がすと、ゆぐっと呻き声が上がる。
単に気絶しただけらしい。
親まりさは後回しにして、俺は先に親ありすを片づけることにした。
単に気絶しただけらしい。
親まりさは後回しにして、俺は先に親ありすを片づけることにした。
「や…やめなさい…いなかもののぶんざいでありすにちかづかないで!!」
甲高い声で叫ぶ親ありすに何度も竹の棒を振り下ろす。
細くしなる棒を叩きつける度、親ありすに赤黒いミミズ腫れが出来る。
大きさも似ているし、まるでスイカ割りだ。
細くしなる棒を叩きつける度、親ありすに赤黒いミミズ腫れが出来る。
大きさも似ているし、まるでスイカ割りだ。
「ぴぃっ! んぎっ! ゆぎぃっ!! ごんなのどがいはじゃないわあああああああ!!」
そろそろ止めを刺そうと、勢いをつけて竹の棒を突き刺す。
しかし口を狙ったつもりが、親ありすが動いたせいで右目を貫いてしまった。
しかし口を狙ったつもりが、親ありすが動いたせいで右目を貫いてしまった。
「ぴっぎょああああああああああ!! あでぃずのおべべええええええ!!!」
慌てて棒を引っこ抜くと、カスタードまみれの白玉団子が一緒に付いてきた。
饅頭のくせに目玉の作りは妙にリアルで、流石の俺もちょっとビビる。
我ながらよくトラウマにならなかったものだと思う。
饅頭のくせに目玉の作りは妙にリアルで、流石の俺もちょっとビビる。
我ながらよくトラウマにならなかったものだと思う。
右目があった部分にぽっかり穴が空いた親ありす。
放っておいても不気味なので、さっさと楽にしてやる事にする。
俺は再び棒を構えて、今度こそ口へ突き刺した。
放っておいても不気味なので、さっさと楽にしてやる事にする。
俺は再び棒を構えて、今度こそ口へ突き刺した。
「がぼっ! ごべべべべべべ…」
棒は親ありすを貫通し、地面まで突き当たった。
餡子よりも幾分柔らかいカスタードの感触が、棒を通して伝わってくる。
引き抜いたところからどろどろのカスタードが溢れ、親ありすの体は自重で縦に潰れた。
よし、と静かになった畑で人知れず呟く。
俺は棒の先に付いたカスタードを土にこすりつけると、最後に残った親まりさの仕上げにかかろうとした。
餡子よりも幾分柔らかいカスタードの感触が、棒を通して伝わってくる。
引き抜いたところからどろどろのカスタードが溢れ、親ありすの体は自重で縦に潰れた。
よし、と静かになった畑で人知れず呟く。
俺は棒の先に付いたカスタードを土にこすりつけると、最後に残った親まりさの仕上げにかかろうとした。
「何してるの?」
ドキリとした。
振り向くと、園服を着た色白の子供が畑の入口から顔を覗かせていた。
違うクラスの子だったが、園服に付いている名札で名前がわかった。
仮に、Kとしておこう。
振り向くと、園服を着た色白の子供が畑の入口から顔を覗かせていた。
違うクラスの子だったが、園服に付いている名札で名前がわかった。
仮に、Kとしておこう。
畑に入って来たKは、まず俺を見て、それからゆっくりの死骸に気付いた。
「これ、ゆっくりだよね」
片目のない親ありすの死骸にも顔色ひとつ変えず、ぽつりと言う。
俺は戦々恐々だった。
もし先生に告げ口でもされたら、怒られるどころの話じゃ済まない。
何を言ったらいいかわからず、もごもごとよく分からない事を呟いていたと思う。
Kは表情の読めない顔で、おもむろに俺の後ろを指差した。
俺は戦々恐々だった。
もし先生に告げ口でもされたら、怒られるどころの話じゃ済まない。
何を言ったらいいかわからず、もごもごとよく分からない事を呟いていたと思う。
Kは表情の読めない顔で、おもむろに俺の後ろを指差した。
「その小さいの、ちょうだい」
指先を辿ってみれば、石山の隙間から赤ありすが一匹這い出てきていた。
奇跡的に潰されることなく生き残ったらしい。
黙って逃げれば俺には気付かれなかったのに、しょろーりしょろーりとわざわざ声に出す辺り頭の悪さが知れる。
俺は赤ありすを摘み上げると、戸惑いながらもKに差し出した。
奇跡的に潰されることなく生き残ったらしい。
黙って逃げれば俺には気付かれなかったのに、しょろーりしょろーりとわざわざ声に出す辺り頭の悪さが知れる。
俺は赤ありすを摘み上げると、戸惑いながらもKに差し出した。
「はなしちぇ! きたないてでありしゅにさわりゃにゃいで、このいにゃかもにょ!」
「ふうん。君、ありすって言うんだ」
「しょうよ! いいかりゃときゃいはにゃありしゅをおりょしなしゃい、くじゅにんげん!」
「ふうん。君、ありすって言うんだ」
「しょうよ! いいかりゃときゃいはにゃありしゅをおりょしなしゃい、くじゅにんげん!」
耳障りな金切り声で赤ありすはまくしたてる。
舌っ足らずで聞き取りにくかったが、罵倒されているのは俺でもわかる。
Kはそんな暴言にも顔をしかめたりせず、手の中の赤ありすに優しく声をかけた。
舌っ足らずで聞き取りにくかったが、罵倒されているのは俺でもわかる。
Kはそんな暴言にも顔をしかめたりせず、手の中の赤ありすに優しく声をかけた。
「ねえ、『とかいは』って何?」
「にゃにいっちぇるにょ、『ときゃいは』は『ときゃいは』にきまっちぇるでしょ!
しょんにゃこちょもわかりゃにゃいにょ? ばきゃにゃの? ちにゅの?」
「だからさ、その『とかいは』っていうのはどういう事なの? 教えてよ」
「にゃにいっちぇるにょ、『ときゃいは』は『ときゃいは』にきまっちぇるでしょ!
しょんにゃこちょもわかりゃにゃいにょ? ばきゃにゃの? ちにゅの?」
「だからさ、その『とかいは』っていうのはどういう事なの? 教えてよ」
Kはじっと、真っ直ぐな目で赤ありすを見据える。
赤ありすは落ち着きなく視線を泳がせながら、上ずった声で答えた。
赤ありすは落ち着きなく視線を泳がせながら、上ずった声で答えた。
「ゆ、ゆふん、しかちゃにゃいわね! とくべちゅにおしえちぇあげりゅわ! 『ときゃいは』はにぇ、
ゆーんと…おいちいごはんしゃんを、おにゃかいっぱいむーしゃむーしゃすりゅことよ!」
「それはただの食事でしょ。『とかいは』ってその程度?」
「ち、ちぎゃうわよ、かんちぎゃいしにゃいでよね! 『ときゃいは』…『ときゃいは』は…ゆーんと、
ゆーんと…お、おきゃあしゃんとみんにゃで、おうちゃをうちゃうことよ!」
「お歌なら、幼稚園の皆も歌ってるよ。なんだ、『とかいは』ってそんな簡単なことなんだ」
「ゆゆっ!? ゆゆゆっ!?」
ゆーんと…おいちいごはんしゃんを、おにゃかいっぱいむーしゃむーしゃすりゅことよ!」
「それはただの食事でしょ。『とかいは』ってその程度?」
「ち、ちぎゃうわよ、かんちぎゃいしにゃいでよね! 『ときゃいは』…『ときゃいは』は…ゆーんと、
ゆーんと…お、おきゃあしゃんとみんにゃで、おうちゃをうちゃうことよ!」
「お歌なら、幼稚園の皆も歌ってるよ。なんだ、『とかいは』ってそんな簡単なことなんだ」
「ゆゆっ!? ゆゆゆっ!?」
Kは赤ありすのプライドを的確に刺激し、わからないと言う逃げ道を与えない。
赤ありすがどんなに頭を捻って答えをひり出しても、やんわりと否定してしまう。
延々と質問に晒され、普段使うことのない頭脳を酷使し続けた赤ありすは、目に見えて疲弊していった。
手のひらの上で、自分よりずっと大きな人間に長時間見下ろされるというのも、
赤ゆっくりにとっては精神的に負担だったのだろう。
脂汗を流し、ゆぅゆぅと息を荒らげる赤ありすに、Kは困った顔をして追い打ちをかける。
赤ありすがどんなに頭を捻って答えをひり出しても、やんわりと否定してしまう。
延々と質問に晒され、普段使うことのない頭脳を酷使し続けた赤ありすは、目に見えて疲弊していった。
手のひらの上で、自分よりずっと大きな人間に長時間見下ろされるというのも、
赤ゆっくりにとっては精神的に負担だったのだろう。
脂汗を流し、ゆぅゆぅと息を荒らげる赤ありすに、Kは困った顔をして追い打ちをかける。
「…もしかして君、自分で言っててわかってないの? それって一番『とかいは』じゃないんじゃない?」
「にゃ、にゃにいっちぇるの! ありしゅは『ときゃいは』だっちぇいっちぇるでしょ!」
「ふふ、ありすはすぐ怒るんだね。もっとゆっくりしたらどう?」
「ありしゅはゆっきゅりしちぇるわよおおおおおお!!! …ゆ? ゆっきゅり…?」
「にゃ、にゃにいっちぇるの! ありしゅは『ときゃいは』だっちぇいっちぇるでしょ!」
「ふふ、ありすはすぐ怒るんだね。もっとゆっくりしたらどう?」
「ありしゅはゆっきゅりしちぇるわよおおおおおお!!! …ゆ? ゆっきゅり…?」
赤ありすの中で何かが閃いたらしい。
「しょ、しょうだわ! ゆっきゅりよ! ゆっきゅりしゅることが『ときゃいは』にゃのよ!」
「へえ、そうなんだ。『とかいは』って、ゆっくりって意味だったんだね」
「しょうよ! きょれでわかっちゃかちら、おばきゃしゃん!」
「うん。よくわかったよ、ありがとう」
「へえ、そうなんだ。『とかいは』って、ゆっくりって意味だったんだね」
「しょうよ! きょれでわかっちゃかちら、おばきゃしゃん!」
「うん。よくわかったよ、ありがとう」
Kはにっこり頷いて、朗らかな笑顔を向けた。
ようやく解放されると思った赤ありすは、得意げに胸を張る。
しかし。
ようやく解放されると思った赤ありすは、得意げに胸を張る。
しかし。
「でも、それだとわざわざ『とかいは』って言い替える意味がないよね?
ほかのゆっくりは皆『ゆっくり』って言ってるのに、どうして君たちだけ『とかいは』なの?」
「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅっ!?」
ほかのゆっくりは皆『ゆっくり』って言ってるのに、どうして君たちだけ『とかいは』なの?」
「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅっ!?」
安心したのも束の間、また次の質問が襲ってくる。
赤ありすはほとんど半泣きになっていた。
赤ありすはほとんど半泣きになっていた。
「しょ、しょれは…ありしゅたちが『ときゃいは』だかりゃ…」
「ほらほら、それじゃ答えになってないよ。どうしてありすは『とかいは』なの、ねえ?」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわあああああああん!!」
「ほらほら、それじゃ答えになってないよ。どうしてありすは『とかいは』なの、ねえ?」
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわあああああああん!!」
赤ありすのストレスはいよいよ限界に達しようとしていた。
「あ、ありしゅはときゃい…ときゃい、はにょ…ゆぶべぇっ」
口から大量のカスタードを吐き出し、痙攣を始める。
Kの手の中で、赤ありすは白目を剥いて動かなくなった。
Kの手の中で、赤ありすは白目を剥いて動かなくなった。
「あはは、死んじゃった。何でだろうね? 変なの」
けらけらと無邪気に笑い、Kは赤ありすの死骸を地面に放り投げた。
ポケットからリボンのついたハンカチを取り出し、手に付いたカスタードを拭う。
一部始終を見ていた俺は、口を閉じるのも忘れて呆気に取られていた。
武器も使わずにゆっくりを殺してのけるテクニックを目の当たりにし、
赤ゆ相手に全力で戦っていた自分が、何だかつまらない奴に思えてくる。
ポケットからリボンのついたハンカチを取り出し、手に付いたカスタードを拭う。
一部始終を見ていた俺は、口を閉じるのも忘れて呆気に取られていた。
武器も使わずにゆっくりを殺してのけるテクニックを目の当たりにし、
赤ゆ相手に全力で戦っていた自分が、何だかつまらない奴に思えてくる。
「…すげーな、お前」
「何が?」
「何が?」
Kはきょとんとした顔で首を傾げる。
俺なりに最大級の賛辞を贈ったつもりだったが、今ひとつ伝わらなかったらしい。
それとも、素であれをやったというのか。
とりあえず告げ口される心配は無いとわかり、俺は安堵の息をつく。
しかし、呑気に話をしている暇はなかった。
俺なりに最大級の賛辞を贈ったつもりだったが、今ひとつ伝わらなかったらしい。
それとも、素であれをやったというのか。
とりあえず告げ口される心配は無いとわかり、俺は安堵の息をつく。
しかし、呑気に話をしている暇はなかった。
「そろーり、そろーり…」
いつの間にか目を覚ましていた親まりさが、柵に空いた穴へ逃げ込もうとしていたのだ。
子供が子供なら、親もなかなかの大間抜けだ。
俺は素早く柵の方へ走り、親まりさの前に立ち塞がった。
こっちが駄目ならと親まりさは入口へ引き返そうとするも、今度はKが行く手を阻む。
挟み撃ちにされた親まりさに、逃げ場は無かった。
子供が子供なら、親もなかなかの大間抜けだ。
俺は素早く柵の方へ走り、親まりさの前に立ち塞がった。
こっちが駄目ならと親まりさは入口へ引き返そうとするも、今度はKが行く手を阻む。
挟み撃ちにされた親まりさに、逃げ場は無かった。
「覚悟しろよ、くそ饅頭」
「ねえねえ、きれいな三つあみだね。腕も無いのにどうやって結んだの?」
「や、やべるんだぜ…ばりざにちかづくんじゃないのぜえええ!」
「ねえねえ、きれいな三つあみだね。腕も無いのにどうやって結んだの?」
「や、やべるんだぜ…ばりざにちかづくんじゃないのぜえええ!」
片や、殺る気満々に腕を振り回す俺。片や、ニコニコ顔で歩み寄るK。
じりじりと、少しずつ距離を詰めていく。
親まりさはどっちを見ていいのかわからず、あたふたしながら俺とKを交互に見ていた。
じりじりと、少しずつ距離を詰めていく。
親まりさはどっちを見ていいのかわからず、あたふたしながら俺とKを交互に見ていた。
「ゆ、ゆ、ゆ、ゆわああああああん!! だれかばりざざまをだずげるんだぜえええええ!!」」
そんなまりさの悲鳴を、聞き届けた者がいた。
「あなた達!」
突然背後から鋭い声が突き刺さり、俺たちは反射的に身を竦ませる。
エプロンを着た若い女の先生が、入口から呆然と俺たちを見つめていた。
携えていたジョウロからは水がこぼれ、地面に水たまりを作っている。
俺が最も恐れていた事態が起きてしまった。
エプロンを着た若い女の先生が、入口から呆然と俺たちを見つめていた。
携えていたジョウロからは水がこぼれ、地面に水たまりを作っている。
俺が最も恐れていた事態が起きてしまった。
思いがけず先生が現れた事で、追い詰められていた親まりさは、ここぞとばかりに大胆な行動に出始めた。
「にんげんざん、だずげでぐだざいっ! ばりざなんにもじでないのにいじめられまじだ!
だずげでぇっ! ばりざごろざれるぅぅぅっ!!!」
だずげでぇっ! ばりざごろざれるぅぅぅっ!!!」
叫ぶや否やまりさは俺たちの足元をぴょんぴょんと通り過ぎ、先生にすり寄った。
「…本当なの、あなた達」
「ほんどうでずっ! ばりざのだいずぎなあでぃずも、がわいいぢびぢゃんだぢもみんな、
みんなごろざれまじだあああああっ!!」
「ほんどうでずっ! ばりざのだいずぎなあでぃずも、がわいいぢびぢゃんだぢもみんな、
みんなごろざれまじだあああああっ!!」
先生はいつになく厳しい顔で、俺たち二人をキッと見据えた。
カスタードと餡子で汚れた靴に竹の棒、地面に散らばるゆっくり親子の死骸、そして生き証人のまりさ。
俺たちに言い逃れの余地はなかった。
ゆんゆんと大声で泣き縋るまりさは、先生の腕に抱きかかえられる。
一瞬こちらを向いたその顔は、ニヤリと醜悪に歪んでいた。
カスタードと餡子で汚れた靴に竹の棒、地面に散らばるゆっくり親子の死骸、そして生き証人のまりさ。
俺たちに言い逃れの余地はなかった。
ゆんゆんと大声で泣き縋るまりさは、先生の腕に抱きかかえられる。
一瞬こちらを向いたその顔は、ニヤリと醜悪に歪んでいた。
この野郎、と思わず掴みかかりそうになるのを、Kが腕を引っ張って止める。
半ばやけくそになっている俺とは対照的に、Kは驚くほど落ちついていた。
ずっと背も小さくて華奢なのに、その目は「任せて」と言っているように見える。
Kはするすると先生の前に進み出ると、まりさと違い媚びも泣きつきもせず、素っ気なく言った。
半ばやけくそになっている俺とは対照的に、Kは驚くほど落ちついていた。
ずっと背も小さくて華奢なのに、その目は「任せて」と言っているように見える。
Kはするすると先生の前に進み出ると、まりさと違い媚びも泣きつきもせず、素っ気なく言った。
「先生。怒ってもいいけど、その前に畑の方をちゃんと見てほしいな」
「なあに? 畑がどうかしたの?」
「サツマイモの葉っぱ、千切れて無くなってるところがあるでしょ。あれ、こいつらがやったんだよ」
「えっ…!?」
「なあに? 畑がどうかしたの?」
「サツマイモの葉っぱ、千切れて無くなってるところがあるでしょ。あれ、こいつらがやったんだよ」
「えっ…!?」
Kはまりさと、ありすたちの残骸を交互に差した。
小さな指をひたと向けられたまりさの顔が、見る見る青ざめていく。
小さな指をひたと向けられたまりさの顔が、見る見る青ざめていく。
「こ、このにんげんはうそつきなんだぜ! しんじちゃだめなんだぜ!」
「嘘じゃないよ。先生、鬼威くんは悪くないよ。皆の野菜を、こいつらから守ろうとしたんだよ。そうだよね?」
「嘘じゃないよ。先生、鬼威くんは悪くないよ。皆の野菜を、こいつらから守ろうとしたんだよ。そうだよね?」
急にKは俺の方に向き直り、薄く笑いかけてきた。
俺は一瞬ドキッとしつつも、つられて頷いてしまう。
実はただゆっくりを退治したかっただけなんて、口が裂けても言える空気ではない。
俺は一瞬ドキッとしつつも、つられて頷いてしまう。
実はただゆっくりを退治したかっただけなんて、口が裂けても言える空気ではない。
先生は静かな眼差しで畑を見渡して、それからもう一度俺たちを見つめた。
その顔に、さっきまでの険しさは無い。
その顔に、さっきまでの険しさは無い。
「…ごめんね、二人の事誤解しちゃって。これじゃ先生失格だね」
「ま、まつんだぜ! まりさはわるくないんだぜ! ありすがむりやりつれてきたんだぜ!」
「二人とも、ちょっと待っててね。先に先生のお部屋まで行ってちょうだい。
大丈夫よ、話を聞かせてほしいだけだから」
「むじじないでええええええええ!!」
「ま、まつんだぜ! まりさはわるくないんだぜ! ありすがむりやりつれてきたんだぜ!」
「二人とも、ちょっと待っててね。先に先生のお部屋まで行ってちょうだい。
大丈夫よ、話を聞かせてほしいだけだから」
「むじじないでええええええええ!!」
まりさの弁解など、最早先生には通じなかった。
先生の腕にしっかりと拘束され、どんなにもがいても逃げられない。
先生の腕にしっかりと拘束され、どんなにもがいても逃げられない。
「ごべんなざい! ごべんなざい!! ばでぃざはんぜいじでまず、じでばずがらゆるじでええええええええ!!!」
まりさの悲鳴は長く尾を引きながら小さくなっていった。
先生が立ち去ると、気が抜けた俺はズボンが汚れるのも忘れてその場にへたり込んだ。
Kを見れば、先ほど手の中で死んだ赤ありすや親ありすの亡骸からカチューシャを外したり、
はみ出た目玉を靴先で転がしたりして遊んでいる。
Kを見れば、先ほど手の中で死んだ赤ありすや親ありすの亡骸からカチューシャを外したり、
はみ出た目玉を靴先で転がしたりして遊んでいる。
「えっと、ありがとな」
「うん」
「うん」
Kは無表情のまま、淡々とゆっくりたちの死骸をいじる。
ちょっと変わってるが、いい奴だと俺は思った。
ちょっと変わってるが、いい奴だと俺は思った。
話を聞くだけと言いつつ、やっぱり俺たちは怒られた。
ゆっくりを潰した事ではなく、先生に隠れて危ないことをした点に関してだが。
それから三十分延々とお説教が続き、最後に先生は、畑を守ってくれてありがとう、と俺たちを抱きしめてくれた。
本当の事を思えば後ろめたさもあったが、ご褒美にとこっそり貰った餡子飴は、忘れられないほど美味しかった。
ゆっくりを潰した事ではなく、先生に隠れて危ないことをした点に関してだが。
それから三十分延々とお説教が続き、最後に先生は、畑を守ってくれてありがとう、と俺たちを抱きしめてくれた。
本当の事を思えば後ろめたさもあったが、ご褒美にとこっそり貰った餡子飴は、忘れられないほど美味しかった。
あのまりさとは翌日、畑で再会した。
まりさは十字に組んだ竹の棒のてっぺんに据えられ、黒い帽子の代わりにバケツを被せられて、
サツマイモ畑の端に立て掛けられていた。
首から下がった板には、『はたけを あらした わるいゆっくり』と書かれている。
自分たちで食い散らかしたサツマイモを、カカシとなって守る事になろうとは。
果たしてどんな最期を迎えたのか、まりさの眼窩は落ちくぼんで白目を剥いていた。
頬はげっそりと痩せこけ、死に際の悲鳴が聞こえそうな大きく開いた口からは歯が抜け落ちて、
干からびた舌がだらしなくこぼれ出ていた。
その凄惨な表情に、園児の中には怖がって泣き出す子もいたくらいだ。
まりさにどんなことをしたのか、気になって一度先生に聞いてみた事がある。
二十歳半ばのうら若い先生は、茶目っ気たっぷりに笑って答えた。
まりさは十字に組んだ竹の棒のてっぺんに据えられ、黒い帽子の代わりにバケツを被せられて、
サツマイモ畑の端に立て掛けられていた。
首から下がった板には、『はたけを あらした わるいゆっくり』と書かれている。
自分たちで食い散らかしたサツマイモを、カカシとなって守る事になろうとは。
果たしてどんな最期を迎えたのか、まりさの眼窩は落ちくぼんで白目を剥いていた。
頬はげっそりと痩せこけ、死に際の悲鳴が聞こえそうな大きく開いた口からは歯が抜け落ちて、
干からびた舌がだらしなくこぼれ出ていた。
その凄惨な表情に、園児の中には怖がって泣き出す子もいたくらいだ。
まりさにどんなことをしたのか、気になって一度先生に聞いてみた事がある。
二十歳半ばのうら若い先生は、茶目っ気たっぷりに笑って答えた。
「鬼威くんが大人になったら教えてあげる」
先生と同じ年頃になった今でも、一晩で何をどうしたらあのデスマスクを作れるのかわからずにいる。
そんなまりさカカシの効能はさておき、木製の板柵は先生たちによって頑丈な鉄のフェンスに改築され、
以後幼稚園裏の畑にゆっくりが現れる事はなくなった。
そんなまりさカカシの効能はさておき、木製の板柵は先生たちによって頑丈な鉄のフェンスに改築され、
以後幼稚園裏の畑にゆっくりが現れる事はなくなった。
一ヶ月経ち、深まる秋とともに訪れた焼き芋大会にて、サツマイモは無事収穫された。
畑を荒らしたゆっくり共は、生い茂る葉やつるばかりに気を取られて、
土の中にあった一番美味しいイモの部分に気付かなかったらしい。
畑を荒らしたゆっくり共は、生い茂る葉やつるばかりに気を取られて、
土の中にあった一番美味しいイモの部分に気付かなかったらしい。
今、幼稚園の皆は広場の真ん中に集まっている。
先生たちは忙しく焚火でイモを焼き、園児たちは焼きたてのイモを貰って大はしゃぎだ。
その賑やかな様子を、俺とKは少し離れたジャングルジムの上から眺めていた。
ほかほか湯気を立てる黄金色のイモを口に頬張りながら、俺はKに訊ねる。
先生たちは忙しく焚火でイモを焼き、園児たちは焼きたてのイモを貰って大はしゃぎだ。
その賑やかな様子を、俺とKは少し離れたジャングルジムの上から眺めていた。
ほかほか湯気を立てる黄金色のイモを口に頬張りながら、俺はKに訊ねる。
「なあ、今日はどこにする?」
「山の傍の神社がいいな。公園は昨日行ったし、空き地の方はあんまりゆっくりが来ないしね」
「山の傍の神社がいいな。公園は昨日行ったし、空き地の方はあんまりゆっくりが来ないしね」
Kも小さなイモの皮をちびちびと剥きながら答える。
あの一件以来、俺たちはゆっくりを通じてすっかり意気投合していた。
幼稚園に来ることは無くなっても、少し探せばゆっくりなどいくらでも見つかる。
昨日公園で出会ったありすとぱちゅりーなどは最高に楽しかった。
人を見るなり、いなかもののにんげんと罵ったありす。
俺に散々石をぶつけられ、カスタードを流して逃げ惑いながら、最期はボロ切れのようになって死んだ。
もりのけんじゃと自称していたぱちゅりーはKの質問責めに遭い、とうとう頭が弾け飛んでしまった。
幼稚園に来ることは無くなっても、少し探せばゆっくりなどいくらでも見つかる。
昨日公園で出会ったありすとぱちゅりーなどは最高に楽しかった。
人を見るなり、いなかもののにんげんと罵ったありす。
俺に散々石をぶつけられ、カスタードを流して逃げ惑いながら、最期はボロ切れのようになって死んだ。
もりのけんじゃと自称していたぱちゅりーはKの質問責めに遭い、とうとう頭が弾け飛んでしまった。
今日はどんなゆっくりと出会えるだろう。
この後の楽しい時間に思いを馳せるあまり、大好きなイモの中にもうっすらと餡子の甘みを感じる。
この後の楽しい時間に思いを馳せるあまり、大好きなイモの中にもうっすらと餡子の甘みを感じる。
「実ゆっくりぶら下げてる奴がいいな。むしり取って、石の代わりに親ゆにぶつけてやるんだ」
「それもいいけど、一匹は残しておいてね。赤ゆっくりにはちょっと聞いてみたいことがあるから」
「それもいいけど、一匹は残しておいてね。赤ゆっくりにはちょっと聞いてみたいことがあるから」
俺とKは顔を見合わせ、人知れず笑いあった。
焚火の煙は悠々と高く昇り、鰯雲の泳ぐ空に吸い込まれていった。
焚火の煙は悠々と高く昇り、鰯雲の泳ぐ空に吸い込まれていった。
あとがき
最後までお読みいただいてありがとうございます。
慣れないSSで試行錯誤の真っ只中ではありますが、感想やご指摘があれば喜んでZENRAになります。
慣れないSSで試行錯誤の真っ只中ではありますが、感想やご指摘があれば喜んでZENRAになります。
しん○すけといいSAW介といい、日本の5歳児はハイスペック過ぎると思うんだ。
挿絵:のすたるじあき