ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4118 鳥と猫と人とゆっくりと卑怯
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ankoss
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『鳥と猫と人とゆっくりと卑怯』 24KB
愛で 思いやり 愛情 嫉妬 妬み 飼いゆ まりさが死ぬと思った?残念!愛で小説でした!
愛で 思いやり 愛情 嫉妬 妬み 飼いゆ まりさが死ぬと思った?残念!愛で小説でした!
・『ゆっくり理解させてみた』の続きです
・まりさ死亡を望んでいた方。お許しください!
いつもの学校の帰り道。
トタン屋根の下に自動販売機が並んでいる。
その横でたこ焼き屋さんのおじさんから300円のチーズたこ焼きを買う。
そしてその近くにある公園へ歩を進める。
その横でたこ焼き屋さんのおじさんから300円のチーズたこ焼きを買う。
そしてその近くにある公園へ歩を進める。
その公園の花壇の近くにある真っ白なベンチ。
それがわたしの特等席だ。
それがわたしの特等席だ。
そんな生活を続けてもう3年目だろうか。
わたしは高校に通い始めてからずっとこんな事をしている。
友達が居ないわけじゃない。
ただ、わたしはいつも一人の時間が欲しくなる。
わたしは高校に通い始めてからずっとこんな事をしている。
友達が居ないわけじゃない。
ただ、わたしはいつも一人の時間が欲しくなる。
もう1つ、コンビニで奮発して買ったチョコメロンパンをほおばり、紅茶で流し込む。
高校の卒業式のあとだいうのに、不思議と寂しさはなかった。
高校の卒業式のあとだいうのに、不思議と寂しさはなかった。
(また、会えたらいいよね・・・)
わたしはまた、偶然でもいいから皆と会いたいと思いながら、ひっそりと流れる風に身を揺すっていた。
そっと寒空を見上げながらストローで紅茶を吸いつくした。
ふと下を見ると、目の前にいつの間にか一匹のまりさがいた。
わたしに向かって何かを言いたそうに口を開けている。
春が近いと思っていたが風は昨日よりも冷たく、肌に染み込んでくる。
風とはどんな『音』がするんだろう。
季節が流れるたびにその音色は変わるのだろうか。
それとも景色だけが変わるのだろうか。
想像ではない『音』を聞いてみたい。
わたしに向かって何かを言いたそうに口を開けている。
春が近いと思っていたが風は昨日よりも冷たく、肌に染み込んでくる。
風とはどんな『音』がするんだろう。
季節が流れるたびにその音色は変わるのだろうか。
それとも景色だけが変わるのだろうか。
想像ではない『音』を聞いてみたい。
しかし聞こうと思っても出来ない。
生まれた頃からわたしの耳には何も届かない。
目の前のまりさがわたしに何かを言いたくてもわたしには何も届かない。
この子とわたし、『音』がないだけでまりさとわたしには大きな乖離が生まれていた。
この子とわたし、『音』がないだけでまりさとわたしには大きな乖離が生まれていた。
ただ、聞こえなくても、唇を見れば言いたいことは大体分かるはずだ。
わたしは学校の友達ともそのおかげで何の障害もなく意思の疎通が出来た。
死角から声さえ掛けなければゆっくりともお話くらいできるだろう。
そのかわり、野良ゆっくりと話すのはこれが初めてだった。
わたしは学校の友達ともそのおかげで何の障害もなく意思の疎通が出来た。
死角から声さえ掛けなければゆっくりともお話くらいできるだろう。
そのかわり、野良ゆっくりと話すのはこれが初めてだった。
友達からは関わらないほうがいい、とか、無視したほうがいいとか散々言われてきた。
この公園に一人でいるときも、いままで1匹にも会ったことがなかった。
業者の人が定期的に『管理』しているらしい。
この公園に一人でいるときも、いままで1匹にも会ったことがなかった。
業者の人が定期的に『管理』しているらしい。
わたしはそれが気になって、大きな口を開けて跳ねまわっているまりさを注意深く見てみた。
もし、捨てゆっくりという部類だったら、きっと帽子の部分にバッジというものが千切られた跡があるはずだ。
この前観ていたテレビの内容がここで役に立つと思った。
もし、捨てゆっくりという部類だったら、きっと帽子の部分にバッジというものが千切られた跡があるはずだ。
この前観ていたテレビの内容がここで役に立つと思った。
だがまりさにはそんな跡は見当たらなかった。
ただ、全体が不潔に感じられた。
ただ、全体が不潔に感じられた。
仕方なく、まりさの口元に目を向けた。
かなり早口で分かりづらいが、数分も経つと、慣れて見えるようになってきた。
そんなことより、よく喋り続けられるな、と思った。
かなり早口で分かりづらいが、数分も経つと、慣れて見えるようになってきた。
そんなことより、よく喋り続けられるな、と思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まりさは昨日人間に勝負を挑んだ。
そして惨敗していた。
そして惨敗していた。
まりさは一晩中考えていた。
どうして人間の『身体』はあんなに硬いのか。
どうしてまりさの身体は柔らかいままなのか。
どうして人間の『身体』はあんなに硬いのか。
どうしてまりさの身体は柔らかいままなのか。
そうして考えて、朝になって答えが出た。
「ゆっ!わかったんだぜ。きっとからださんにまでひきょうなことをしたにきまっているんだぜ!」
まりさにとって知らないことは存在しないこと。
人間の『身体』の硬さはまりさの身体には無い卑怯な手段に違いなかった。
人間の『身体』の硬さはまりさの身体には無い卑怯な手段に違いなかった。
ただ、もうあの人間の家に行く気はしなかった。
どうせ、また卑怯な手を使ってやられるに違いなかった。
結局卑怯な人間とは勝負も出来ないのだ。
まりさは人間の姑息さを恨むどころか哀れんだ。
どうせ、また卑怯な手を使ってやられるに違いなかった。
結局卑怯な人間とは勝負も出来ないのだ。
まりさは人間の姑息さを恨むどころか哀れんだ。
そんなことを考えていると、既に昼が近づいていた。
「ゆぅうん。とりあえず、ごはんさんをとりにいくんだぜ」
まりさはそう宣言して、いつもの餌場に行こうと思ったが、あの人間の住んでいるお家の近くを通りかかることに気づき、苛立った。
「ゆぅうう・・・いつかまりさもからだをかたくして、このおうちをとりもどしてやるんだぜ!」
強いものだけが本来自分のものを占領できる。
卑怯者にその資格はない。
まりさは復讐を誓って、今はその場から離れた。
卑怯者にその資格はない。
まりさは復讐を誓って、今はその場から離れた。
いつもは通らない公園。
ここにはまたしてもゆっくりを卑怯な手段で葬り去る人間がよくいる。
ゆっくりが本気になれば人間はひとたまりも無いはずなのに、卑怯な手段を用いてはゆっくりをゆっくりできなくする。
ここにはまたしてもゆっくりを卑怯な手段で葬り去る人間がよくいる。
ゆっくりが本気になれば人間はひとたまりも無いはずなのに、卑怯な手段を用いてはゆっくりをゆっくりできなくする。
「まりさがいつかみんなのかたきをうつんだぜ・・・・・!」
そんなことを呟きながら、まりさは青い作業服を着た男達がいないことを確認しながら慎重に進んだ。
「そろーり、そろーり」
そのときだった。
急に甘いにおいがまりさの嗅覚を突いた。
急に甘いにおいがまりさの嗅覚を突いた。
「ゆっ!?あまあまさんのにおいなのぜ!」
手前にある花壇の向こうからそれは漂ってくる。
この世にある甘味は全てまりさのものだと信じて疑わない彼女は、無意識に花壇を飛び越え、花壇の上に降り立った。
花は今の時期はまだ埋まっていないのか、草も根も無い土がまりさのあんよを支えた。
春が近いとはいえ凍えた季節に妙に暖かい土にまりさは気分をよくした。
花は今の時期はまだ埋まっていないのか、草も根も無い土がまりさのあんよを支えた。
春が近いとはいえ凍えた季節に妙に暖かい土にまりさは気分をよくした。
「さーてあまあまはどこなのぜ・・・・・ん?」
まりさは花壇に白いベンチが沿うように並べてあるのを確認した。
そのベンチには卑怯者の人間らしき『身体』が見えた。
そのベンチには卑怯者の人間らしき『身体』が見えた。
「またにんげんなのぜ・・・」
どうせまた人間が食べ物を独り占めしているんだろう、とまりさは思った。
人間は大量に食べ物を持っているはずだ。
それこそ吐いて捨てるくらいに。
卑怯者には譲渡の精神もないのかとまりさは辟易とした。
人間は大量に食べ物を持っているはずだ。
それこそ吐いて捨てるくらいに。
卑怯者には譲渡の精神もないのかとまりさは辟易とした。
が、まりさはこんな卑怯者相手でも正々堂々と行くことを忘れない。
わざわざ花壇を降りて、冷たい公園の土に降り立った。
わざわざ花壇を降りて、冷たい公園の土に降り立った。
「やい!くそにんげん!」
まりさは前もって見極めていた。
この人間は前に戦った卑怯者よりも『身体』も『道具』も小さくて弱そうだ、と。
この人間は前に戦った卑怯者よりも『身体』も『道具』も小さくて弱そうだ、と。
人間には畏れを抱かせるために出来るだけ大きく声を掛ける。
これで怖がる人間がなかなかいないからまりさは余計呆れる。
聞いてないかのように無視を決め込まれるか、『道具』を使って酷い目にあわせてくる。
道具なしでは生きられない愚かな卑怯者たちにも公平に勝負を仕掛けるまりさを見習って欲しくてしょうがなかった。
これで怖がる人間がなかなかいないからまりさは余計呆れる。
聞いてないかのように無視を決め込まれるか、『道具』を使って酷い目にあわせてくる。
道具なしでは生きられない愚かな卑怯者たちにも公平に勝負を仕掛けるまりさを見習って欲しくてしょうがなかった。
目の前の人間はどうやらだんまりをすることにしたらしい。
まりさの言葉に耳も貸さず、それこそ聞こえていないかのように飲み食いに勤しんでいた。
まりさの言葉に耳も貸さず、それこそ聞こえていないかのように飲み食いに勤しんでいた。
「ふざけるんじゃないぜええぇぇえぇえ!だれかがしゃべってるときはちゃんときけっておそわってないのぜえええ!?」
その人間はまるでまりさを空気のように無視していた。
まりさはさすがに憤慨した。
公平に戦おうと下手に出るとすぐこれだ。
これでは勝負する前にまりさの食料候補は卑怯者の栄養に消えてしまう。
余りにも不公平だ。
まりさはさすがに憤慨した。
公平に戦おうと下手に出るとすぐこれだ。
これでは勝負する前にまりさの食料候補は卑怯者の栄養に消えてしまう。
余りにも不公平だ。
まりさは出来る限り叫んだ。
「くそにんげん!そのみみはふしあななのぜ?ゆぷぷ、ぶざまなのぜ!」
これはまりさが子ゆ時代に親ゆがこういって無視していた人間を挑発していたのを真似たものだ。
この言葉に乗らなかった人間はいなかった。
物陰からこの言葉を言って人間が親ゆたちを捜している間にその人間の食べ物を盗む。
今思うととてもゆっくりしてない非道な行動だと自分でも思うが、卑怯者相手には卑怯も辞せないと当時はそう思って我慢した。
この言葉に乗らなかった人間はいなかった。
物陰からこの言葉を言って人間が親ゆたちを捜している間にその人間の食べ物を盗む。
今思うととてもゆっくりしてない非道な行動だと自分でも思うが、卑怯者相手には卑怯も辞せないと当時はそう思って我慢した。
だが大人になった自分にはそんな卑怯はもう出来ない。
きっとあの頃は両親は自分達子ゆを養うために仕方なくやっていたに違いないのだ。
きっとあの頃は両親は自分達子ゆを養うために仕方なくやっていたに違いないのだ。
だが、そんな百戦錬磨の啖呵を切ったのにも拘らず、目の前の人間は眉1つ動かさず丸い箱から出ている棒を咥えながら、空を見ていた。
「ゆ?もしかしてほんとうにふしあななのぜ?」
人間は耳ざとく、こっそり移動していてもなぜか位置がばれることが多い。
その人間が近くにいるまりさの声も聞こえないとなると、この人間は相当能力が低いのではないかという感覚が生まれた。
その人間が近くにいるまりさの声も聞こえないとなると、この人間は相当能力が低いのではないかという感覚が生まれた。
「ゆっへっへ・・・これはせんざいいちぐうのちゃんすなのぜ・・・!」
まりさはどうしてもこの人間と勝負しなくてはならなくなった。
コイツは卑怯をしてもまりさより弱いという確信が持てたからだ。
まりさが相手に気づいてもらうために軽く相手を小突こうとした瞬間。
コイツは卑怯をしてもまりさより弱いという確信が持てたからだ。
まりさが相手に気づいてもらうために軽く相手を小突こうとした瞬間。
その人間と目が合った。
静かに咥えていた棒から口を離すと、まりさをじっと見始めた。
静かに咥えていた棒から口を離すと、まりさをじっと見始めた。
「やっときづいたのぜ?まったくゆっくりしすぎなのぜ。のろまなにんげんはまりさとしょうぶしてもらうのぜ!」
だがその人間はどこか目の焦点が合ってない。
まりさの帽子をただひたすら見つめていた。
まりさの帽子をただひたすら見つめていた。
「どうしたのぜ?まりさのようなおかざりがなくてかなしいのぜ?くやしいのぜ?でもくそにんげんにはにあわないのぜ!あきらめるのぜ!」
まりさはひたすた相手のコンプレックスをついてみた。
ただ一向に畏れることも怒ることもしない。
まりさがいい加減食料の強奪を考え始めたときだった。
ただ一向に畏れることも怒ることもしない。
まりさがいい加減食料の強奪を考え始めたときだった。
人間が口を開いた。
「なかなか酷い事言うのね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まりさの言い分は大体分かった。
なぜ話しかけたのがわたしなのかも。
なぜ話しかけたのがわたしなのかも。
結構な言い分に小学生の頃をつい思い出していた。
たしかわたしの後ろから「つんぼ」と連呼してくる男子がたくさんいたような気がする。
わたしは手鏡で彼らの唇を見ているから聞こえなくてもバカにされている事はよく理解できた。
これは慣れでもなく、ただ初めから受け流すようにわたしはしていた。
たしかわたしの後ろから「つんぼ」と連呼してくる男子がたくさんいたような気がする。
わたしは手鏡で彼らの唇を見ているから聞こえなくてもバカにされている事はよく理解できた。
これは慣れでもなく、ただ初めから受け流すようにわたしはしていた。
わたしに直接何もいえない弱虫には聞く耳さえ持たない。
そのときの男子達に比べると、まりさは堂々としていた。
ただ、どうやら彼女は自分の都合の良い事しか信じない主義らしい。
「あまあま」と「全てまりさのもの」が交互にでてきたあと、「勝負しろ」と結ぶ行為を繰り返している。
そしてなぜかわたしのことを「道具を使ってでしか戦えない卑怯者」と呼んでくる。
道具とはもしかして胴体の事だろうか。
生首1つで生きている身からしたら胴を持つ事は卑怯な部類だろうか。
ただそんな事を言うなら耳の聞こえないわたしにとってほかの人は無条件で『卑怯者』になる。
その思考こそ卑怯な気がした。
ただ、どうやら彼女は自分の都合の良い事しか信じない主義らしい。
「あまあま」と「全てまりさのもの」が交互にでてきたあと、「勝負しろ」と結ぶ行為を繰り返している。
そしてなぜかわたしのことを「道具を使ってでしか戦えない卑怯者」と呼んでくる。
道具とはもしかして胴体の事だろうか。
生首1つで生きている身からしたら胴を持つ事は卑怯な部類だろうか。
ただそんな事を言うなら耳の聞こえないわたしにとってほかの人は無条件で『卑怯者』になる。
その思考こそ卑怯な気がした。
「なかなか酷い事言うのね」
まりさの目が丸く見開かれたかと思うと、すぐにニヤニヤとした顔に戻った。
「ゆっへ!いまごろきづいたっておそいんだぜ。でもまあゆるしてやるんだぜ」
「悪いんだけど、もう少しゆっくり喋ってくれない?『見えない』のよ」
「悪いんだけど、もう少しゆっくり喋ってくれない?『見えない』のよ」
まりさは一瞬惚けたような顔をする。
それがアルパカに似ていて思わず可笑しくなる。
それがアルパカに似ていて思わず可笑しくなる。
「なにいってるんだぜ?」とまりさは聞いてきた。
「言ってる通りよ」とわたしは返す。
「言ってる通りよ」とわたしは返す。
まりさの動作が止まった。
壊れたファービーのような顔をして。
読唇術がゆっくりの世界にない事はなんとなく分かる。
ただ、ここまで唖然とされるとむなしい心持になる。
とりあえず、わたしはたこ焼きをほおばりながら彼女の返答を待った。
壊れたファービーのような顔をして。
読唇術がゆっくりの世界にない事はなんとなく分かる。
ただ、ここまで唖然とされるとむなしい心持になる。
とりあえず、わたしはたこ焼きをほおばりながら彼女の返答を待った。
10分くらい経っただろうか。
公園の入り口に街灯と同じような鉄柱の先端に、頭のように付いている時計が知らせてくれる。
公園の入り口に街灯と同じような鉄柱の先端に、頭のように付いている時計が知らせてくれる。
たこ焼きはもう食べたし、チョコメロンパンもその前に食べきっていた。
紅茶はパンと一緒に流し込んでいて、わたしはもう食べるものなど持っていなかった。
このまりさはわたしに拘る理由をなくしていた。
紅茶はパンと一緒に流し込んでいて、わたしはもう食べるものなど持っていなかった。
このまりさはわたしに拘る理由をなくしていた。
ただわたしが気になっていただけ。
野良ゆっくりとはどんな考え方をしているのだろう。
飼いゆっくりや人と似たような身体を持つゆっくりなら見たことがあるけど、野良ゆっくりはテレビでしか見たことがない。
言っている事は友達やテレビで報道されている事とほとんど同じだった。
無茶苦茶な理論を振りかざしてくる。
相手の欠点を笑いながら攻めてくる。
野良ゆっくりとはどんな考え方をしているのだろう。
飼いゆっくりや人と似たような身体を持つゆっくりなら見たことがあるけど、野良ゆっくりはテレビでしか見たことがない。
言っている事は友達やテレビで報道されている事とほとんど同じだった。
無茶苦茶な理論を振りかざしてくる。
相手の欠点を笑いながら攻めてくる。
それでもわたしの興味を引いていた。
ただ、なんとなく。
ただ、なんとなく。
「ぶっひゃひゃひゃ・・・」
声を見逃すまいと口を見続けたが、よく分からない。
どうやら笑っているようだった。
眉がへの字になって、目尻が見るからに下がった表情でまりさはわたしを見る。
正月にテレビでお笑い芸人の顔芸大会を観ていたが、このまりさが出場を果たせば優勝できそうな気がして、わたしもくっと笑い声を漏らした。
どうやら笑っているようだった。
眉がへの字になって、目尻が見るからに下がった表情でまりさはわたしを見る。
正月にテレビでお笑い芸人の顔芸大会を観ていたが、このまりさが出場を果たせば優勝できそうな気がして、わたしもくっと笑い声を漏らした。
「おとがみえるわけないのぜ!そんなこともりかいできないの?ばかなの?しぬの?」
どうやらわたしをバカにしたくて堪らないらしい。
人も認識できないものは信じない主義がいるからか、まりさの言いたい事が自然とわたしにも分かる。
しかし、わたしには『見えている』のだからしょうがない。
人も認識できないものは信じない主義がいるからか、まりさの言いたい事が自然とわたしにも分かる。
しかし、わたしには『見えている』のだからしょうがない。
「ねえ、まりさ」
「なんなのぜ?さっさとしょうぶをするのぜ!」
「そんなことより」
「なんなのぜ?さっさとしょうぶをするのぜ!」
「そんなことより」
わたしはまりさの言いたい事を言うことにした。
「猫は空を飛べるかしら?」
「ゆ?なにいってるのぜ?ばかなのぜ?とりさんじゃないのにそんなことできないにきまっているのぜ。あたまおかしいのぜ?」
「ゆ?なにいってるのぜ?ばかなのぜ?とりさんじゃないのにそんなことできないにきまっているのぜ。あたまおかしいのぜ?」
まりさは当然のことを言う。
「じゃあまりさ、わたしはあなたのように耳が聞こえるようになるかしら」
「なにいってるのぜ。きこえるのがふつうなのぜ。きこえないくそにんげんはたんなるていれべるなのぜ!」
「なにいってるのぜ。きこえるのがふつうなのぜ。きこえないくそにんげんはたんなるていれべるなのぜ!」
普通の事を当然だと思っているらしい。
そんな事を公然と言っている人間にあったことは、わたしにはない。
ただ、心の隅では人が皆思っている事のようでもあるため気にもしない。
そんな事を公然と言っている人間にあったことは、わたしにはない。
ただ、心の隅では人が皆思っている事のようでもあるため気にもしない。
「そんなことより早く勝負しろ」と嗾けてくるまりさだが、わたしが既に食べ物を持ってないことを知ると、がっくりとうなだれた。
「せっかくにんげんをたおすちゃんすだったのに」
「そうなの・・・」
「かってあまあまをうばって・・・」
「うん・・・」
「まりさがいっぱいっ!たべるよていだったのに・・・」
「予定は未定なのよ」
「そんなもんなのぜ?」
「そんなもんよ」
「そうなの・・・」
「かってあまあまをうばって・・・」
「うん・・・」
「まりさがいっぱいっ!たべるよていだったのに・・・」
「予定は未定なのよ」
「そんなもんなのぜ?」
「そんなもんよ」
まりさはどうして、と呟くのが見えた。
「どうしてにんげんはみんなひきょうなてをつかうんだぜ?」
「鳥が飛ぶのは卑怯じゃないの?」
「ゆ?」
「鳥が飛ぶのは卑怯じゃないの?」
「ゆ?」
鳥は確かに飛んで当たり前、と思っている節があったらしい。
まりさに翼はない。
だが鳥が飛ぶことを卑怯だと思った事はなかったようだ。
まりさに翼はない。
だが鳥が飛ぶことを卑怯だと思った事はなかったようだ。
「わたしはゆっくりじゃないのよ」
わたしは、ゆっくりとの間に線引きをするというより、まりさとの距離を明確に見せるために言った。
まりさはまた固まった。
だがその様は何かを考えているようだった。
だがその様は何かを考えているようだった。
やがてまりさは意を決したように話し出した。
「まりさはにんげんとしょうぶしたことがあるのぜ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
まりさは目の前の人間の話を聞いているうちに、この人間ならまりさが人間に勝てない理由を明確にしてくれると直感した。
いつも通り根拠は無いが、どこか安心を感じさせる人間の雰囲気に無意識に呑まれていた。
いつも通り根拠は無いが、どこか安心を感じさせる人間の雰囲気に無意識に呑まれていた。
「まりさはそのにんげんにかてなかったんだぜ。
そのにんげんのからだはとってもっ!かたかったのぜ。
でもまりさのからだはあんなにかたくないのぜ。
どうしてなんだぜ?ひきょうじゃないなら、どうしてまりさはかてなかったのだぜ?
まりさはどうやったらつよくなれるのぜ?」
そのにんげんのからだはとってもっ!かたかったのぜ。
でもまりさのからだはあんなにかたくないのぜ。
どうしてなんだぜ?ひきょうじゃないなら、どうしてまりさはかてなかったのだぜ?
まりさはどうやったらつよくなれるのぜ?」
今までで一番餡子をひねって考えた質問をぶつけた。
人間は「んー」と変な声を出しながら、考えているようだったが、やがてまりさのほうを見た。
人間は「んー」と変な声を出しながら、考えているようだったが、やがてまりさのほうを見た。
「わたしは低レベルかしら?」
「ゆん?」
「ゆん?」
質問した事の答えではないような気がする。
どうやらこの人間はまりさが低レベルだとバカにした事を根に持っているようだ。
どうやらこの人間はまりさが低レベルだとバカにした事を根に持っているようだ。
「ゆふん!まりさはつりがとくいなのぜ!ああいえばつれるばかなにんげんがたくさんいたのぜ!」
まりさは堂々と嘘をつく。
これこそ親譲りの芸だった。
これこそ親譲りの芸だった。
「そうじゃないよ。
まりさは耳が聞こえないわたしを低レベルだと思う?」
まりさは耳が聞こえないわたしを低レベルだと思う?」
まりさは唖然とする。
「・・・みみさんがきこえないってほんとうのことなのぜ?」
「うん。そう」
「うん。そう」
おかしい。
耳が聞こえなければどうやって会話が出来るのだろう。
耳が聞こえなければどうやって会話が出来るのだろう。
「くちさんをみてもなにいってるかなんてまりさにはわからないんだぜ・・・」
まりさがそう言うと「普通はそうよ」と人間は返してきた。
「どういうことなのぜ?ほかのにんげんにはできないことができるってことなのぜ?」
「さぁ・・・・・」
「さぁ・・・・・」
どうにもパッとしない答えだった。
「・・・みみさんがきこえないなら、じぶんでなにいってるのかわからなくならないのぜ?」
まりさは耳が聞こえない世界を想像していたら、そんな疑問を口にしていた。
凍えるように冷たい風がまりさと人間を襲ってくる。
この人間は本当に風の音が分からないのだろうか。
まりさには不思議に思った。
凍えるように冷たい風がまりさと人間を襲ってくる。
この人間は本当に風の音が分からないのだろうか。
まりさには不思議に思った。
「・・・訓練したから」
風に紛れそうな声で人間は言った。
「くんっれんっ?」
聞いた事のない言葉だった。
この世で一番好きな言葉が「ゆっくり」と「最強」で、嫌いな言葉は「努力」のまりさにとってその言葉からはゆっくり出来ない雰囲気が伝わった。
この世で一番好きな言葉が「ゆっくり」と「最強」で、嫌いな言葉は「努力」のまりさにとってその言葉からはゆっくり出来ない雰囲気が伝わった。
「出来るようになるまで何度も同じことを繰り返す事」
まりさの面持ちから言葉を理解できていないと思った人間はそう付け足した。
「読唇術も喋る事もわたしは訓練してやっとできたの」
聞き慣れない言葉だった。
まりさは心でどくしんじゅつ、と唱えた。
人間から物を奪うつもりが、逆に心を奪われているような気がした。
まりさは何も気にしてない振りをした。
まりさは心でどくしんじゅつ、と唱えた。
人間から物を奪うつもりが、逆に心を奪われているような気がした。
まりさは何も気にしてない振りをした。
「それがていれべるとどうかんけいがあるんだぜ?」
「・・・どんな事をしたってわたしの耳は聞こえないのよ。
あなたがどんなに努力しても人には勝てないわ」
「・・・どんな事をしたってわたしの耳は聞こえないのよ。
あなたがどんなに努力しても人には勝てないわ」
「・・・・・ゆ!?」
やはり人間は所詮人間なのか、とまりさは思う。
まりさはどう足掻いても絶望な話が本当に嫌いだった。
どんな事があっても人間にゆっくりが勝つ話。
そんなサクセスストーリー以外の結末は許せない。
まりさはどう足掻いても絶望な話が本当に嫌いだった。
どんな事があっても人間にゆっくりが勝つ話。
そんなサクセスストーリー以外の結末は許せない。
まりさは「もういいんだぜっ!」と声を荒げた。
「もういいんだぜ・・・。どーせにんげんはじぶんたちがかてたらそれでいいのぜ・・・」
まりさは俯いたまま呟いた。
「何て言ってるのか分からないけど・・・」
表情が見えないからなのか、人間はまりさにそう言った。
「虫はどんなに頑張っても鳥には勝てないし、鳥は地上にいたら猫には敵わない。
猫を・・・食べたくはないから服従とでも言うのかな・・・ができるのは人間だけだし。
その人間も本当は牛にも馬にも勝てないような弱い生き物なのよ。
でも、力で勝てないからって卑屈になる必要性なんてないのよ」
猫を・・・食べたくはないから服従とでも言うのかな・・・ができるのは人間だけだし。
その人間も本当は牛にも馬にも勝てないような弱い生き物なのよ。
でも、力で勝てないからって卑屈になる必要性なんてないのよ」
達観した老ゆっくりのような目で人間は喋り続ける。
まりさは混乱した。
まりさは混乱した。
「ど、どういうことなのぜ!?」
「流石にゆっくりには負けないと思うけど」
「ゆぐっ!」
「流石にゆっくりには負けないと思うけど」
「ゆぐっ!」
ゆっくり聞いてね、と人間はまりさに釘を刺してきた。
普段なら「めいっれいっ!するなのぜ!!」と怒鳴っていたが、不思議と反抗心が消えていた。
普段なら「めいっれいっ!するなのぜ!!」と怒鳴っていたが、不思議と反抗心が消えていた。
「どうしても勝てない事が悪いんじゃないの。
もし、わたしが耳の聞こえる人に、自分だけ聞こえないのは理不尽だ、って思っても意味なんてないわよね」
「そ、そんなことないのぜ!きこえるだけでいいきになってるやつらにめにものを・・・」
「そんな人、いないよ」
もし、わたしが耳の聞こえる人に、自分だけ聞こえないのは理不尽だ、って思っても意味なんてないわよね」
「そ、そんなことないのぜ!きこえるだけでいいきになってるやつらにめにものを・・・」
「そんな人、いないよ」
ピシャリ。
まりさにとって目の前で引き戸を閉められるような感覚だった。
まりさにとって目の前で引き戸を閉められるような感覚だった。
「な、なにいってるんだぜ・・・?」
「ホントは子供の頃、耳が聞こえないのが嫌で周りの子に嫉妬してた時期があってね・・・」
「ホントは子供の頃、耳が聞こえないのが嫌で周りの子に嫉妬してた時期があってね・・・」
人間が遠い目をしていた。
まりさの唇など見向きもしていない。
置いていかれた気分になったが、仕方なく人間の話を聞く事に専念した。
まりさの唇など見向きもしていない。
置いていかれた気分になったが、仕方なく人間の話を聞く事に専念した。
「いくら耳を凝らしても、何も聞こえないの。
音楽が何かもわたしには分からないの。
れいむのお歌ってどんななのかも分からないの」
音楽が何かもわたしには分からないの。
れいむのお歌ってどんななのかも分からないの」
まりさに答えて欲しいのか、バッとまりさのほうに目を向けた。
(どうでもいいけど、れいむのおうたなんてきけたものじゃないのぜ・・・)
まりさは母れいむの音痴を聴いて以来、ゆっくりの歌は罵詈雑言、と思っていた。
こればかりは人間の方がいい歌を歌っている、と思っていた。
(どうでもいいけど、れいむのおうたなんてきけたものじゃないのぜ・・・)
まりさは母れいむの音痴を聴いて以来、ゆっくりの歌は罵詈雑言、と思っていた。
こればかりは人間の方がいい歌を歌っている、と思っていた。
「補聴器付けても聞こえなくてね・・・ちっとも耳が機能してないのよ。
だから最初は手話を教わってたのよ」
だから最初は手話を教わってたのよ」
ホチョウキ?シュワ?
まりさの中にそんな言葉は存在しない。
ゆっくりに出来ない事なのかと思うと、また少し疎ましく思う。
まりさの中にそんな言葉は存在しない。
ゆっくりに出来ない事なのかと思うと、また少し疎ましく思う。
「手話は大事よね。
わたし先天性だから。
本当に使ってもらわないと困るときあるし」
わたし先天性だから。
本当に使ってもらわないと困るときあるし」
話がどんどん脱線している。
「ちょ、ちょっとまつのぜ!」
まりさはおさげで人間の脛を叩いた。
不思議そうな顔をしたが、慌てた様子で注釈を加え始めた。
不思議そうな顔をしたが、慌てた様子で注釈を加え始めた。
「あ、えっと、補聴器って言うのは・・・」
「そ、そういうことじゃないのぜ!
いないってどういうことなのぜ」
「そ、そういうことじゃないのぜ!
いないってどういうことなのぜ」
まりさが気になっていたのはそういうことではない。
耳が聞こえなくてどうして卑しい奴らに小バカにされなくて済んでいるのか。
人間共がまりさたちを弱い生物だとバカにしたような目で見てくるというのに。
いや、実際は生き物とすら認識してもらえていない。
きっと人間は欠点があれば同族にもそういう眼で見ているに違いないとまりさは睨んでいた。
お飾りをなくしたゆっくりがゆっくり出来ない、と迫害されるように。
まりさはお飾りのない相手にそれほどゆっくり出来ないと感じた事はない。
ただ、まりさは多少の欠点だけでそれを責めてくる輩が嫌いだった。
人間のゆっくりを見る眼が嫌いだった。
耳が聞こえなくてどうして卑しい奴らに小バカにされなくて済んでいるのか。
人間共がまりさたちを弱い生物だとバカにしたような目で見てくるというのに。
いや、実際は生き物とすら認識してもらえていない。
きっと人間は欠点があれば同族にもそういう眼で見ているに違いないとまりさは睨んでいた。
お飾りをなくしたゆっくりがゆっくり出来ない、と迫害されるように。
まりさはお飾りのない相手にそれほどゆっくり出来ないと感じた事はない。
ただ、まりさは多少の欠点だけでそれを責めてくる輩が嫌いだった。
人間のゆっくりを見る眼が嫌いだった。
かつて両親を永遠にゆっくりさせた人間の眼は今でも夢に出る。
まりさはこのとき気づき始めていた。
本当は人間に勝とうと思って勝負を吹っかけ続けてきたわけではない。
単に人間に目にものを見せてやろうと思っていただけだ。
一瞬で良い。
人間の驚いた顔が見たかっただけだった。
あのゆっくり出来ない眼差しを少しの間だけでも止めて欲しかっただけだった。
本当は人間に勝とうと思って勝負を吹っかけ続けてきたわけではない。
単に人間に目にものを見せてやろうと思っていただけだ。
一瞬で良い。
人間の驚いた顔が見たかっただけだった。
あのゆっくり出来ない眼差しを少しの間だけでも止めて欲しかっただけだった。
それが空回りしている行動だとしても、まりさにはそれしか方法がないと思っていた。
人間がまりさを見つめたままキョトンとしていた。
それが、急に生気を帯びたような眼に戻ると、微笑みながらこう言った。
それが、急に生気を帯びたような眼に戻ると、微笑みながらこう言った。
「わたしは・・・誰かに馬鹿にされても、恥じない生き方してるって、思ってるから」
寒空にあふれる淀んだ雲から日が差してくるのを、まりさは感じた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・☆・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
白塗りの壁に赤い瓦屋根の家からピアノの音がする。
この街ではごく有り触れた色彩の家だ。
この街ではごく有り触れた色彩の家だ。
ピアノの前に腰を据え、鍵盤を指で撫でるように叩いているのはまりさだった。
お兄さんに、頭突きでやられたあのまりさ。
公園で、難聴のお姉さんに喧嘩を吹っ掛けたあのまりさ。
お兄さんに、頭突きでやられたあのまりさ。
公園で、難聴のお姉さんに喧嘩を吹っ掛けたあのまりさ。
まりさは拾われたのだ。
あのお姉さんに。
あのお姉さんに。
部屋の扉がそっと開いた。
「まーりさ!」
お姉さんが扉から顔を覗かせている。
「どうしたの、まりさ?急に電話で呼び出したりして」
「まぁその・・・大した用事じゃないんだけど・・・」
「まぁその・・・大した用事じゃないんだけど・・・」
そう言いながらまりさは机の引き出しを開ける。
「え?まりさどうしたの?」
動かれたせいかお姉さんにはまりさが何を言ったのか聞こえなかったらしい。
まりさは引き出しから紙袋を取り出した。
まりさは引き出しから紙袋を取り出した。
「ほい、これ」
彼女が紙袋から取り出したのは補聴器だった。
「う?え?でもこれって・・・」
補聴器を買うには検査してもらわないといけないはずだった。
なぜまりさが補聴器を出したのだろうか、とお姉さんは気になっているようだった。
なぜまりさが補聴器を出したのだろうか、とお姉さんは気になっているようだった。
「この前、お姉さんの主治医さんのところに乗り込んだんだぜ」
「まさかこの前、急に聴力検査しようなんて先生が言い出したのって・・・」
「先生はノリがよくて助かったのぜ」
「まさかこの前、急に聴力検査しようなんて先生が言い出したのって・・・」
「先生はノリがよくて助かったのぜ」
全く無茶をする。
お姉さんはそう思った。
なにせ彼女に拾われた次の日、急に胴付き化したのだ。
それでまりさはやはり家から出て行くと申し出てきた。
父も母も野良ゆっくりだと思って止めようともしてなかったが、お姉さんが全力で止めた。
そうしなければ、まりさが家にいることはなかっただろう。
もっとも、今出て行くといえば、父も母も無視はもうしようがないと思う。
文字通り彼女は『家族』になっていた。
お姉さんはそう思った。
なにせ彼女に拾われた次の日、急に胴付き化したのだ。
それでまりさはやはり家から出て行くと申し出てきた。
父も母も野良ゆっくりだと思って止めようともしてなかったが、お姉さんが全力で止めた。
そうしなければ、まりさが家にいることはなかっただろう。
もっとも、今出て行くといえば、父も母も無視はもうしようがないと思う。
文字通り彼女は『家族』になっていた。
ただ、お姉さんにはもう1つ気になることがあった。
「わたしでも聞こえる補聴器なんてあるかしら」
「最新鋭、なんだぜ。
まりさの一年の進歩より科学の進歩の方が歩幅も歩数も桁が違うのぜ」
「最新鋭、なんだぜ。
まりさの一年の進歩より科学の進歩の方が歩幅も歩数も桁が違うのぜ」
まりさはお姉さんの耳に手を伸ばした。
柔らかいセミロングの髪の感触が手に伝わる。
お姉さんの耳に補聴器をつけた。
柔らかいセミロングの髪の感触が手に伝わる。
お姉さんの耳に補聴器をつけた。
「聞こえるのぜ?お姉さん」
お姉さんは固まっていた。
まるで初めてまりさと話をしたあの日のように。
あの時固まったのはまりさのほうだったがきっとこんな感じだったのだろう。
「ファービーみたいだった」と言われたがまりさにはその意味が今でも分からない。
まるで初めてまりさと話をしたあの日のように。
あの時固まったのはまりさのほうだったがきっとこんな感じだったのだろう。
「ファービーみたいだった」と言われたがまりさにはその意味が今でも分からない。
まりさが過去を振り返っていたら、お姉さんは玉響に涙を流し始めた。
嗚咽も悲しむ表情も前触れもなく、ただ涙を流し始めていた。
嗚咽も悲しむ表情も前触れもなく、ただ涙を流し始めていた。
「ちょと、ちょっと待っておねえさ・・・」
まりさが驚いて声をあげると、お姉さんは驚いたようにまりさを見て涙を拭き始めた。
ゴシゴシと服の袖で目元を擦ったせいか、赤く腫れてしまっている。
ゴシゴシと服の袖で目元を擦ったせいか、赤く腫れてしまっている。
まりさはお姉さんが急にどうしたのかと聞こうとしたときだった。
「へえ・・・それがまりさの声なんだね」
お姉さんが言った。
「ゆ・・・お父さんとお母さんを呼ぶの忘れてたんだぜ・・・」
初めて声を聞かせるべきだと思っていた相手を差し置いて出しゃばってしまったと思い、まりさは落胆した。
「やーね!家族でしょ!お母さん達が帰ってきたら早速聞いてみる!」
家族と言う言葉にまりさの身体のどこかが熱くなっていく。
思わずお姉さんに背中を向けてしまった。
思わずお姉さんに背中を向けてしまった。
「ど、どうしたのよ!?」
「な、なんでもないんだぜ・・・それより!」
「な、なんでもないんだぜ・・・それより!」
まりさは大声を出した。
「ひゃ!?」
声になれてないためか、補聴器は人の意思に反して音を拾ってくるためか、お姉さんを驚かしてしまう。
まりさは悪気はないとはいえ、謝った。
予測は出来ていたはずだったから。
まりさは悪気はないとはいえ、謝った。
予測は出来ていたはずだったから。
お姉さんは笑ったまま、いいのいいの、と謝るまりさにそう繰り返した。
「ところでまりさ」
意地悪そうな顔でお姉さんは言った。
「それよりってなに?」
「そうなのぜ・・・」
「そうなのぜ・・・」
まりさの俯き気味の呟き声が鮮明に聞こえてお姉さんは思わず顔がはにかんだ。
これが聞き取れるようになるとは、と感動で唸りたい気分だった。
これが聞き取れるようになるとは、と感動で唸りたい気分だった。
ドスッとまりさはピアノの前に座った。
「聞いてもらいたい曲があるのぜ」
お姉さんは静かに頷いた。
まりさが鍵盤に手を置いて、深呼吸する。
まりさが鍵盤に手を置いて、深呼吸する。
ピアノが調べを奏で始めた。
まりさは弾きながら自分の半生を思い出す。
胴付きになった日のこと。
かつて街で聞いた旋律がピアノの音だとわかって、ピアノの曲を買いあさったときのこと。
まりさに対してあれほど反感を持っていたお姉さんの両親がまりさにピアノをくれたときのこと。
胴付きになった日のこと。
かつて街で聞いた旋律がピアノの音だとわかって、ピアノの曲を買いあさったときのこと。
まりさに対してあれほど反感を持っていたお姉さんの両親がまりさにピアノをくれたときのこと。
人間に復讐心を抱いていた日々のこと。
それが力や言葉で肉薄に出来る差ではないこと。
その復讐心の正体をお姉さんとの出会いで解き明かしたときのこと。
嫉妬や羨望に任せて人間という敵を作って八つ当たりしていた日々はもうここにはない。
まりさと勝負したお兄さんの家に行ったときのことを思い出すと面白おかしくなる。
誰もまりさのことを憶えていないと思ったら、誰か判らなかっただけだったらしい。
ゆうかもめーりんも、そしてお兄さんも皆、口があんぐりと開いていた。
今でもたまに彼らの家へ畑を耕しに行く。
それが力や言葉で肉薄に出来る差ではないこと。
その復讐心の正体をお姉さんとの出会いで解き明かしたときのこと。
嫉妬や羨望に任せて人間という敵を作って八つ当たりしていた日々はもうここにはない。
まりさと勝負したお兄さんの家に行ったときのことを思い出すと面白おかしくなる。
誰もまりさのことを憶えていないと思ったら、誰か判らなかっただけだったらしい。
ゆうかもめーりんも、そしてお兄さんも皆、口があんぐりと開いていた。
今でもたまに彼らの家へ畑を耕しに行く。
そして、ただまりさはただひっそりと、仲間達と暮らしていた日々。
かつて森で生まれたこと。
大勢の仲間と遊んだこと。
両親がお飾り不全で追い出されたとき、一緒についていった日のこと。
その両親が人間の虐待で死んだ日のこと。
かつて森で生まれたこと。
大勢の仲間と遊んだこと。
両親がお飾り不全で追い出されたとき、一緒についていった日のこと。
その両親が人間の虐待で死んだ日のこと。
本当の両親はもう居ない。
ただ、命日に両親が殺された裏路地に花を供えることだけは忘れない。
ただ、命日に両親が殺された裏路地に花を供えることだけは忘れない。
それができるのはここにいるお姉さんがその切欠を作ってくれた。
まりさはそのお姉さんの補聴器を作って貰いに行った日を思い出す。
まりさはそのお姉さんの補聴器を作って貰いに行った日を思い出す。
胴付きでもゆっくりだと扱われる喧騒にも拘らず、まりさの無茶な要求に乗ってくれた先生。
『お茶目』という言葉がまりさの好きな言葉に加わった日でもある。
『お茶目』という言葉がまりさの好きな言葉に加わった日でもある。
全ては長いような気がしたが、露が落ちる間の出来事のような気もする。
しかし、まりさの生き方は確実に変わっていた。
しかし、まりさの生き方は確実に変わっていた。
演奏が終わって、お姉さんは言った。
「ねえ、まりさ?わたし達、傍目から見たら変かな?
耳が聞こえるようになっただけで泣いちゃうし、まりさがピアノを弾けるようになっただけで大喜びするなんて。
大抵の人は耳は聞こえて当然だし、ピアノが弾ける人はたくさん居るのにね」
耳が聞こえるようになっただけで泣いちゃうし、まりさがピアノを弾けるようになっただけで大喜びするなんて。
大抵の人は耳は聞こえて当然だし、ピアノが弾ける人はたくさん居るのにね」
ふぅ、とまりさは溜息をついた。
その答えなら初めて出会った日に、お姉さんが言っていたじゃないか、とまりさは思った。
その答えなら初めて出会った日に、お姉さんが言っていたじゃないか、とまりさは思った。
「馬鹿なのぜ?」
まりさはお姉さんに悪態をついていた。
お姉さんは「なによぅ・・・」と言いながら口を尖らせていた。
お姉さんは「なによぅ・・・」と言いながら口を尖らせていた。
誰かに何を思われていようが、まりさには気にするに値した事じゃない。
これは、自分を見つめなおして得た真実だからだ。
これは、自分を見つめなおして得た真実だからだ。
「まりさ達は恥ずかしくない生き方してると思うぜ!」
あとがき
重たい。重たすぎますだ。
20KBも超えるはずじゃなかったのに。
10KBくらいで終わらせようと思ってたのに。
20KBも超えるはずじゃなかったのに。
10KBくらいで終わらせようと思ってたのに。
最初はまりさをぶっ殺そうと思っていましたが、永遠にゆっくりしてもらっても、彼女が学ぶ事何もないままはさびしいと感じて・・・つい。
今回はお姉さん達と末永く爆ぜてもらおうと思います。
今回はお姉さん達と末永く爆ぜてもらおうと思います。
虐待がなかったのはご愛嬌。
今度投稿するときは、虐待ものを書くのでよろしくお願いします。
今度投稿するときは、虐待ものを書くのでよろしくお願いします。