ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4309 野良ゆっくりを飼うということ
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『野良ゆっくりを飼うということ』 21KB
愛で 自業自得 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 希少種 現代 独自設定 失礼します
愛で 自業自得 飼いゆ 野良ゆ 赤ゆ 希少種 現代 独自設定 失礼します
前作anko4299 ゆっくりは幸せな夢を見るか? の続き物となっております。
なるべくこの話の中で完結するようにしていますが、そちらの方も読んでいただけたら話がよりわかると思います。
なるべくこの話の中で完結するようにしていますが、そちらの方も読んでいただけたら話がよりわかると思います。
それではどうぞ
公園でゆっくりを拾うということ。
それは人間からしてみれば二つの想像が出来る。
虐待目的か、ただの気紛れか。
飼いゆっくりにするということなどまず、間違いなく想像できない。
虐待目的か、ただの気紛れか。
飼いゆっくりにするということなどまず、間違いなく想像できない。
野良ゆっくりとは汚いものだ。
街の生態系の中でも最底辺を這いずり回り、汚染物質と廃液とゴミの中を蠢きまわる存在である。
しかし、そんな存在でもあえて拾う人間がおり。
更にその中でも、優しきに人間に拾われて飼いゆっくりになれるということは奇跡と言っても過言ではない。
街の生態系の中でも最底辺を這いずり回り、汚染物質と廃液とゴミの中を蠢きまわる存在である。
しかし、そんな存在でもあえて拾う人間がおり。
更にその中でも、優しきに人間に拾われて飼いゆっくりになれるということは奇跡と言っても過言ではない。
ただ、嘆くべきは多くのゆっくりが、人間はゆっくりをゆっくりさせるものという妄執を持っていると言う事か。
そしてその妄執を持つゆっくりは、自らが飼いゆっくりになれることを信じて疑わないのである。
そしてその妄執を持つゆっくりは、自らが飼いゆっくりになれることを信じて疑わないのである。
とある経緯により、公園の群れから赤びゃくれんを託されたお兄さんは下宿先であるマンションの一室で苦悩していた。
座椅子に座り、ローテーブルに赤びゃくれんを置いて頭を抱えている。
託されたはいいにしても、お兄さんはゆっくりを飼ったことはなかった。
せいぜい、種類の名前や好物、苦手なものなど、本格的に飼うとなっては知識不足な点が多すぎるのである。
座椅子に座り、ローテーブルに赤びゃくれんを置いて頭を抱えている。
託されたはいいにしても、お兄さんはゆっくりを飼ったことはなかった。
せいぜい、種類の名前や好物、苦手なものなど、本格的に飼うとなっては知識不足な点が多すぎるのである。
託された以上は立派なゆっくりに育てて見せると、特に約束したわけでもない。
ハンカチに包まれて静かな寝息を立てている赤びゃくれんを見る。
じっとその寝姿を見詰めていると、何か内から湧き上ってくるのをお兄さんは感じていた。
ハンカチに包まれて静かな寝息を立てている赤びゃくれんを見る。
じっとその寝姿を見詰めていると、何か内から湧き上ってくるのをお兄さんは感じていた。
「ああ、そうだな」
いくら適当不思議饅頭の仲間だとしても。
生き物を飼うのはそういうことではないという使命感からか、お兄さんは決意した。
そして、ノートパソコンのスイッチを入れる。
生き物を飼うのはそういうことではないという使命感からか、お兄さんは決意した。
そして、ノートパソコンのスイッチを入れる。
「まず、野良ゆを飼いゆにするにはどうすればいいんだ?」
餅屋は餅屋、ゆっくりに関する情報が集まっていると言っても過言ではないとある場所のHPにアクセスする。
そこはもっともゆっくりたちが恐れるものの代名詞、加工所だ。
情報の海をこれでもないあれも違うと探しながらやっとのことで辿りつく。
そこはもっともゆっくりたちが恐れるものの代名詞、加工所だ。
情報の海をこれでもないあれも違うと探しながらやっとのことで辿りつく。
「えっと? まず指定の病院に連れて行って病気の検査に……デトックスぅ!?」
お兄さんの頭は日常生活ではそうそう触れ合う事の無い言葉の羅列にくらくらしていた。
下手したら人間の自分よりよっぽど上な処置を施される可能性もある。
さすがに首を捻ったお兄さんであるが、一応すると決めた以上はやり通そうと思い直す。
下手したら人間の自分よりよっぽど上な処置を施される可能性もある。
さすがに首を捻ったお兄さんであるが、一応すると決めた以上はやり通そうと思い直す。
そしてまずは病院に連れて行こうと思い、びゃくれんの為の簡易移動ケースを作ってやることにした。
部屋の隅に置いてあった通信販売サイトの段ボールの中でも特に小さいものを選ぶ。
最後は中にチラシやプリントの束を詰めて見事に完成、即席ベッド。
その上にハンカチに包まれたびゃくれんをそっと置いてやる。
部屋の隅に置いてあった通信販売サイトの段ボールの中でも特に小さいものを選ぶ。
最後は中にチラシやプリントの束を詰めて見事に完成、即席ベッド。
その上にハンカチに包まれたびゃくれんをそっと置いてやる。
「行くか」
バッグに財布が入っているのを確認し、段ボール箱を抱えて外に出る。
部屋の鍵を閉めたところで段ボールを抱える自分の姿を想像し、少しだけ涙が出てくるお兄さんであった。
部屋の鍵を閉めたところで段ボールを抱える自分の姿を想像し、少しだけ涙が出てくるお兄さんであった。
お兄さんのマンションから歩いて徒歩10分程にある加工所系列のゆっくり専門病院。
外壁はお洒落なレンガ調であり、清潔さに溢れた門構えはまるで人間の病院と同じである。
そのあまりの立派さに本当にここであっているのだろうか、間違っていないだろうかと思ってしまいお兄さんは入ることを躊躇するのだが。
しかし――
外壁はお洒落なレンガ調であり、清潔さに溢れた門構えはまるで人間の病院と同じである。
そのあまりの立派さに本当にここであっているのだろうか、間違っていないだろうかと思ってしまいお兄さんは入ることを躊躇するのだが。
しかし――
「おねがいじまずぅぅぅぅぅぅ! だずげでぐだざいぃぃぃぃぃ! ばりざのおぢびじゃんがじんじゃいぞうなんでずぅぅぅぅぅ!」
「はやくでてこいくずぅぅぅ! れいむのおちびちゃんがしんじゃうだろぉぉぉ!」
「ゆ゛……ゆ゛っ、ゆぅ」
「はやくでてこいくずぅぅぅ! れいむのおちびちゃんがしんじゃうだろぉぉぉ!」
「ゆ゛……ゆ゛っ、ゆぅ」
病院の前で人目もはばからずに叫ぶ野良一家を目の前にすれば、嫌でもここがゆっくりの為の病院だと言うことが一目でわかる。
どこで聞いたのかは知らないが、野良ゆ達にとっても、ここは希望の場所なのである。
砂糖水の涙を撒き散らし、必死に頭を地面に擦りつけるまりさ。
両のもみあげをぴこぴこと振り回し憤怒の形相で病院の中を睨み付けているれいむ。
全身をカビに蝕まれ、お飾りの形状から恐らくれいむであろう赤ゆが、苦しそうな声を上げていた。
どこで聞いたのかは知らないが、野良ゆ達にとっても、ここは希望の場所なのである。
砂糖水の涙を撒き散らし、必死に頭を地面に擦りつけるまりさ。
両のもみあげをぴこぴこと振り回し憤怒の形相で病院の中を睨み付けているれいむ。
全身をカビに蝕まれ、お飾りの形状から恐らくれいむであろう赤ゆが、苦しそうな声を上げていた。
その光景を見てここがゆっくり専門病院で間違いないだろうと判断したお兄さんだが、ふと足を止めた。
あの野良ゆたちはドアの前に居座っている。
そしてその病院の扉は自動ドアではなく押し引きするタイプのドアだ。
あそこで潰されることもなく喚き続けていられたのも、自分たちの力で開けられないからだろう。
だが、もしここで自分がドアを開けようとすればあの野良一家は病院内に入ろうとするだろうし、そしたら病院にも迷惑がかかる。
果てどうしたものだろうかと考えると、お兄さんは見つけられてしまった。
野良一家に。
あの野良ゆたちはドアの前に居座っている。
そしてその病院の扉は自動ドアではなく押し引きするタイプのドアだ。
あそこで潰されることもなく喚き続けていられたのも、自分たちの力で開けられないからだろう。
だが、もしここで自分がドアを開けようとすればあの野良一家は病院内に入ろうとするだろうし、そしたら病院にも迷惑がかかる。
果てどうしたものだろうかと考えると、お兄さんは見つけられてしまった。
野良一家に。
「だずげでぐだざいぃぃぃぃ! あぞごにいげばおぢびじゃんがだずがるんでじょぉぉぉぉ!? なんでだずげでぐれないのぉぉぉぉぉ!?」
「ゆっくりしてないでさっさとあのとうめいなかべさんをどけてこいこのくそどれい! れいむのゆるしもなくゆっくりしてるんじゃないよぉぉぉ!」
「ゆっくりしてないでさっさとあのとうめいなかべさんをどけてこいこのくそどれい! れいむのゆるしもなくゆっくりしてるんじゃないよぉぉぉ!」
子供をドアの前に残して跳ね寄ってくる親ゆっくりたち。
汚汁を撒き散らし目を見開くその様は実にゆっくりしていないと言えるだろう。
お兄さんは鬱陶しそうに目を逸らす。
今のお兄さんはこんな野良ゆに付き合うつもりはさらさらない、仕方ない、潰すかと考え始めた時。
汚汁を撒き散らし目を見開くその様は実にゆっくりしていないと言えるだろう。
お兄さんは鬱陶しそうに目を逸らす。
今のお兄さんはこんな野良ゆに付き合うつもりはさらさらない、仕方ない、潰すかと考え始めた時。
「うっせぇぞゴミ共!」
その一声と共に、白衣を着た中年男性が勢いよくガラス戸を押し開けた。
「ゆっ! だずがるよおぢびじゃぁぁぁん!」
「このくそじじい! あけるのがおそいんだよぉぉぉ! そしてれいむはごみじゃないぃぃぃぃぃ!」
「このくそじじい! あけるのがおそいんだよぉぉぉ! そしてれいむはごみじゃないぃぃぃぃぃ!」
忙しい事にこっちに跳ねて来たかと思うともうドアの方へと跳ねて行っている。
が、待てよとお兄さんは首を傾げる。
あの親ゆっくりたちはドアの前に子供を置いてきた。
そして、あの男性は建物の中からドアを押して出てきた、つまり。
が、待てよとお兄さんは首を傾げる。
あの親ゆっくりたちはドアの前に子供を置いてきた。
そして、あの男性は建物の中からドアを押して出てきた、つまり。
「あん? てめぇらの糞小袋はそこの床の染みになってるよ」
「ゆっ!?」
「ゆあっ!?」
「ゆっ!?」
「ゆあっ!?」
男性は確信犯であった。
親ゆっくりたちは一分程停止し、長い長いタイムラグの後に、ようやくその餡子の線がなんであるかを知った。
子供を殺されて怒り狂わない親など居ない。
それはゆっくりであっても例外ではなく。
親ゆっくりたちは一分程停止し、長い長いタイムラグの後に、ようやくその餡子の線がなんであるかを知った。
子供を殺されて怒り狂わない親など居ない。
それはゆっくりであっても例外ではなく。
「ゆわぁぁぁ! おちびちゃんをころしたげすはしねぇぇぇぇぇ!」
「せいっさいっだぁぁぁ! しねぇぇぇぇぇ!」
「せいっさいっだぁぁぁ! しねぇぇぇぇぇ!」
そして、無謀にも人間に挑むのである。
「うっせぇぇぇ! 病院では静かにしろぉぉぉ!」
と、大きく足を振り上げ叩き潰す態勢に入る。
そのフォームは余りに美しく、振り上げられた脚が風を巻き起こしているかのような幻覚を生み出していた。
そのフォームは余りに美しく、振り上げられた脚が風を巻き起こしているかのような幻覚を生み出していた。
「おりゃぁぁぁ!」
「ゆべぇっ!?」
「まりさぁぁぁぁ?!」
「もういっちょぉぉぉ!」
「ゆげしぇっ!」
「ゆべぇっ!?」
「まりさぁぁぁぁ?!」
「もういっちょぉぉぉ!」
「ゆげしぇっ!」
男性は舌を口ごと踏み抜いてまりさとれいむを黙らせた。
ゆっくりは舌がないとまともにしゃべることはできない、現に、目の前の番も意味不明の呻き声を発することしかできないでいた。
ここまで来るとゆっくりがすることはただ一つ、逃げることだ。
ゆっくりは舌がないとまともにしゃべることはできない、現に、目の前の番も意味不明の呻き声を発することしかできないでいた。
ここまで来るとゆっくりがすることはただ一つ、逃げることだ。
「ぼぼじでぇ!? ぼぼじでばじざぼぼびぢぢゃんぼぼんばべびぃぃぃぃぃ!?」
「べびぶばぁぁぁぁぁ! ぼんばぼぼべじんでびびぶっぐりじゃばいんばぁぁぁ!」
「まぁまぁゆっくりしていけ」
「ぶっぐりべぎぐばげばいべじょっ……ぼぞらぼどんべるびだぃぃぃ!」
「ぼろぜぇぇぇ! べびぶぼぼろぜぇぇぇぇぇ!」
「ゴミ箱の中でな」
「べびぶばぁぁぁぁぁ! ぼんばぼぼべじんでびびぶっぐりじゃばいんばぁぁぁ!」
「まぁまぁゆっくりしていけ」
「ぶっぐりべぎぐばげばいべじょっ……ぼぞらぼどんべるびだぃぃぃ!」
「ぼろぜぇぇぇ! べびぶぼぼろぜぇぇぇぇぇ!」
「ゴミ箱の中でな」
そう言うと男性は二匹をちりとりに乗せて近くのゆっくり用ゴミ箱に叩き込んだ。
こうして、あの番は子供を助けられることもなく死んだことになるが、同情することないだろう。
人の領域に踏み込もうとする野良にはふさわしい末路だ。
そして男性は水を撒いて地面についた餡子を流し去り、お兄さんの方に振り向く。
こうして、あの番は子供を助けられることもなく死んだことになるが、同情することないだろう。
人の領域に踏み込もうとする野良にはふさわしい末路だ。
そして男性は水を撒いて地面についた餡子を流し去り、お兄さんの方に振り向く。
「客か? 今ならすぐに診てやれるぞ」
「また珍しいのを拾ってきたもんだなぁ」
「はぁ……」
「はぁ……」
そのまま男性に連れられて、あれよあれよの間に診察室へと通されたお兄さん。
この医師だという男性と、受付の女性以外に人はおらず、本当にすぐ見てくれるほど暇であったようだ。
箱の中で眠るびゃくれんをじっと見ている。
この医師だという男性と、受付の女性以外に人はおらず、本当にすぐ見てくれるほど暇であったようだ。
箱の中で眠るびゃくれんをじっと見ている。
「ところで、これ? 生きてるのか?」
「生きてますよ。寝てるだけで」
「一体何食わせたんだ? ラムネか?」
「あー、聞いてないです……」
「聞いてない? どういうことだ、話してみろい」
「生きてますよ。寝てるだけで」
「一体何食わせたんだ? ラムネか?」
「あー、聞いてないです……」
「聞いてない? どういうことだ、話してみろい」
お兄さんは正直に、医者にどういう経緯があってこのびゃくれんを拾うに至ったかを説明する。
ほうほうと相槌を打つ医者はかなりフランクではあったが大層な聞き上手であり、お兄さんもスムーズに話すことが出来た。
お兄さんが話し終わると、医者はパンと思いっきり手を叩いた。
何事かと身体をびくつかせたお兄さんであったが、続いて聞こえてきた声が更にお兄さんを驚かせた。
ほうほうと相槌を打つ医者はかなりフランクではあったが大層な聞き上手であり、お兄さんもスムーズに話すことが出来た。
お兄さんが話し終わると、医者はパンと思いっきり手を叩いた。
何事かと身体をびくつかせたお兄さんであったが、続いて聞こえてきた声が更にお兄さんを驚かせた。
「ゆ……ゆっくりおはようございます」
なんと今までずっと深い眠りについていたびゃくれんが目を覚ましたのである。
今までずっと寝ていたのに、一体どういう事なのだろうと混乱するお兄さんに医者は説明する。
今までずっと寝ていたのに、一体どういう事なのだろうと混乱するお兄さんに医者は説明する。
「うどんげの“きょうきのひとみ”っていうのは催眠術の一種みたいなもんでな。こんなふうに何かきっかけがあると覚醒したりするのよ」
「そうなんですか?」
「ああ。ほら、よくテレビで催眠術師が催眠を解く時の暗示として手を叩いたりするだろ? それと一緒だよ」
「へぇ……」
「腕の良いうどんげなら更に細かく暗示を決められるがな」
「そうなんですか?」
「ああ。ほら、よくテレビで催眠術師が催眠を解く時の暗示として手を叩いたりするだろ? それと一緒だよ」
「へぇ……」
「腕の良いうどんげなら更に細かく暗示を決められるがな」
医者はそんなことを言いながらてきぱきと診察の為の準備を始めていた。
特に面白そうな見物、というわけでもないのでお兄さんは箱の中を覗いてみる。
中ではびゃくれんが一体自分がどこに居るのだろうかと、不安そうな顔で辺りを見回していた。
そして、ふとさした影に気付いたのか、上を見上げた。
お兄さんと目が合う。
特に面白そうな見物、というわけでもないのでお兄さんは箱の中を覗いてみる。
中ではびゃくれんが一体自分がどこに居るのだろうかと、不安そうな顔で辺りを見回していた。
そして、ふとさした影に気付いたのか、上を見上げた。
お兄さんと目が合う。
「こ、こんにちは。ゆっくりしていってくださいね」
「ああ。ゆっくりしてるよ」
「あの、にんげんさんはあのときのにんげんさんですよね? ここは、どこですか?」
「ゆっくり専門の病院だよ?」
「びょういん、ですか? どうしてわたしがびょういんに?」
「はいはいすぐに説明するからちょっと失礼」
「ああ。ゆっくりしてるよ」
「あの、にんげんさんはあのときのにんげんさんですよね? ここは、どこですか?」
「ゆっくり専門の病院だよ?」
「びょういん、ですか? どうしてわたしがびょういんに?」
「はいはいすぐに説明するからちょっと失礼」
そういうと医者はひょいと赤びゃくれんを持ち上げて診察を始める。
髪の毛の質や目を覗きこんでみたり、肌の張りの具合と底面など。
見落としが無いようにじっくりと調べてから、診察机に引いておいたティッシュの上にびゃくれんを置く。
髪の毛の質や目を覗きこんでみたり、肌の張りの具合と底面など。
見落としが無いようにじっくりと調べてから、診察机に引いておいたティッシュの上にびゃくれんを置く。
「運が良いな兄ちゃん。油の染みも特にない、土汚れだけだ。とりあえず洗浄とデトックスくらいで十分だろう」
「あ、あの! にんげんさん! わたしはいったい?」
「ん? ああ、この兄ちゃんの飼いゆっくりになるんだよ。良かったな」
「ゆ? ええっ!?」
「あ、あの! にんげんさん! わたしはいったい?」
「ん? ああ、この兄ちゃんの飼いゆっくりになるんだよ。良かったな」
「ゆ? ええっ!?」
驚いた顔をして動きを止めるびゃくれん。
当然だろう、野良であるならば誰もが憧れる飼いゆっくりになれるのだ、驚いて当然である。
と、いいたいところだが。
野良ゆっくりの反応からすればこれは稀な部類に入る。
ゆっくりしていないと人間を見下すゆっくりは、ゆっくりしている自分たちを飼うのが当然だと思うのだ。
だから、こういう反応を示すゆっくりは珍しいと言って良い。
当然だろう、野良であるならば誰もが憧れる飼いゆっくりになれるのだ、驚いて当然である。
と、いいたいところだが。
野良ゆっくりの反応からすればこれは稀な部類に入る。
ゆっくりしていないと人間を見下すゆっくりは、ゆっくりしている自分たちを飼うのが当然だと思うのだ。
だから、こういう反応を示すゆっくりは珍しいと言って良い。
「とりあえず洗浄だな、おおーい。頼むー」
固まったびゃくれんをそのままにトレイに乗せて、受付をしていた女性にびゃくれんを預ける。
そして女性は診察室の奥の方へと消えて行った。
そして女性は診察室の奥の方へと消えて行った。
「さて、さっきはあんなこと言ったが、飼うんだろうな、もちろん?」
「ええ、はい」
「んじゃ、いろいろ書いてもらうからな」
「ええ、はい」
「んじゃ、いろいろ書いてもらうからな」
そういって医者はペンと共に複数枚の書類を寄越してくる。
書かれている文字を見ると誓約書の類だったり名前住所を書く欄があるものであったり。
書かれている文字を見ると誓約書の類だったり名前住所を書く欄があるものであったり。
「えっと、これは?」
「飼い主の登録とバッジの申請、そしてゆっくりを飼うにあたっての誓約に同意するものだな」
「ああ、バッジ制度については知ってますけど、誓約ってのは初めて知ったんですが」
「飼い主の登録とバッジの申請、そしてゆっくりを飼うにあたっての誓約に同意するものだな」
「ああ、バッジ制度については知ってますけど、誓約ってのは初めて知ったんですが」
バッジ制度、それは飼いゆっくりのランクを示す制度である。
銅バッジはそのゆっくりが飼われているということを示すものであり、躾も悪かったりされていない個体も多い。
銀バッジは銅よりも上等であり、人間と生活するにあたり必要十分な躾をされている個体と認定される。
このクラスになると、人間と共に飲食店などに入ることも許されてくる程だ。
そして最上級である金バッジ。
人間の良き隣人であることを証明されたこのバッジは、全飼いゆっくりが目指すべき場所でもある。
その扱いも、下手に手を出せば訴訟沙汰になってもおかしくないほどだ。
バッジ、と一言で言ってもそれほどの格差がある。
銅バッジはそのゆっくりが飼われているということを示すものであり、躾も悪かったりされていない個体も多い。
銀バッジは銅よりも上等であり、人間と生活するにあたり必要十分な躾をされている個体と認定される。
このクラスになると、人間と共に飲食店などに入ることも許されてくる程だ。
そして最上級である金バッジ。
人間の良き隣人であることを証明されたこのバッジは、全飼いゆっくりが目指すべき場所でもある。
その扱いも、下手に手を出せば訴訟沙汰になってもおかしくないほどだ。
バッジ、と一言で言ってもそれほどの格差がある。
「バッジ制度については知ってんだな? じゃあ捨てゆっくりについては?」
「それは、急な転勤でゆっくりを飼えなくなったとか、飼っていたゆっくりがゲス化したとかで捨てられたゆっくりのことでしょう?」
「そうなんだよ。それで捨てるのが問題なんだよ。可哀想だからとか、愛着があるから殺したくない、だから捨てるんじゃなくてな。
捨てるときは潰すなり加工所に持っていって欲しいのよ。そんなゆっくりが野良で生き続けることは少ないが、そいつらが人間に被害を加えることもありうるんだ」
「それは、急な転勤でゆっくりを飼えなくなったとか、飼っていたゆっくりがゲス化したとかで捨てられたゆっくりのことでしょう?」
「そうなんだよ。それで捨てるのが問題なんだよ。可哀想だからとか、愛着があるから殺したくない、だから捨てるんじゃなくてな。
捨てるときは潰すなり加工所に持っていって欲しいのよ。そんなゆっくりが野良で生き続けることは少ないが、そいつらが人間に被害を加えることもありうるんだ」
ゆっくりによる被害はお兄さんも良く知っている。
家へ勝手に侵入しては荒らしまわったり、飼いゆを自分たちをゆっくりさせないゆっくりと称する制裁やれいぽぉなど。
花壇や家庭菜園を荒らしまわることもあり、大変な問題になったこともある。
家へ勝手に侵入しては荒らしまわったり、飼いゆを自分たちをゆっくりさせないゆっくりと称する制裁やれいぽぉなど。
花壇や家庭菜園を荒らしまわることもあり、大変な問題になったこともある。
「でだ。犬や猫でも同じでな、飼っているペットの損害は飼い主の責任だ。その所在をはっきりさせる為にも必要なんだ」
「そうだったんですか。わかりました」
「そうだったんですか。わかりました」
この書類の意味を理解したお兄さんは一つ一つきっちりと文言を読み込んでサインする。
たっぷり10分程かけたお兄さんは最後に判を押し、医者に書類を全て渡す。
医者も渡されたものに記入漏れやミスが無いかを確認し、満足そうに頷く。
たっぷり10分程かけたお兄さんは最後に判を押し、医者に書類を全て渡す。
医者も渡されたものに記入漏れやミスが無いかを確認し、満足そうに頷く。
「まぁ、糞真面目に全部読んだあんたならゆっくりを飼っても大丈夫だろうな」
「はぁ……ありがとうございます」
「はぁ……ありがとうございます」
けなされてるんだか褒められてるんだかわからないお兄さんは生返事だ。
「いやいや、褒めてるんだぜ? 中にはよく読みもしないうちにさっさと書いて出してきたと思ったら、結局捨てちまうようなのがさ」
「そんな人が居るんですね……」
「そうよ。っと、ところで兄ちゃん、今までにゆっくりを飼ったことは?」
「ありませんね。ついでにこの後ペットショップに行こうかと」
「そんな人が居るんですね……」
「そうよ。っと、ところで兄ちゃん、今までにゆっくりを飼ったことは?」
「ありませんね。ついでにこの後ペットショップに行こうかと」
そうお兄さんが言うと医者はにんまりと笑う。
「丁度いい! ここで揃えていけよ。安くするからさ」
「でも……ここ病院でしょう?」
「ここはどこだか忘れたのか? ここは加工所直系の病院だ。品物の品質に関しては保証するぜ」
「でも……ここ病院でしょう?」
「ここはどこだか忘れたのか? ここは加工所直系の病院だ。品物の品質に関しては保証するぜ」
準備していたのだろう、ばっとカタログを差し出してくる。
お兄さんは準備のいいことだと思いつつ、医者からカタログを受け取りページを捲った。
正直なところ、何を用意して何を買えばいいのか一切わからない。
お兄さんは準備のいいことだと思いつつ、医者からカタログを受け取りページを捲った。
正直なところ、何を用意して何を買えばいいのか一切わからない。
「……すいません、何買えばいいんですかね?」
「なんだ、そんなところからか」
「種類だとかなんだとかは知ってますが、飼うってなるとそこまでは……」
「野良の対処とかは飼うとは別ものだもんな、よーし、めんどくさいがゆっくりを飼う心得をついでに教えてやるよ。暇だしな」
「なんだ、そんなところからか」
「種類だとかなんだとかは知ってますが、飼うってなるとそこまでは……」
「野良の対処とかは飼うとは別ものだもんな、よーし、めんどくさいがゆっくりを飼う心得をついでに教えてやるよ。暇だしな」
医者からのレクチャーを受け、とりあえず必要最低限の物だけを紙にメモしていく。
愛玩用グッズとか、そういうのまで買ってしまったら、今後お兄さんの食卓には白いご飯のみになるだろう。
愛玩用グッズとか、そういうのまで買ってしまったら、今後お兄さんの食卓には白いご飯のみになるだろう。
「こんなところか」
「あ、ありがとうございました。いろいろ勉強になります」
「なに、どうせ暇なんだ。時間を潰すには丁度いい」
「そういや、なんでずっと誰も来ないんですか? もう一時間くらいいますけど……」
「ゆっくりなんてのはゆっくりさせておけば病気になることなんてないしな。怪我もオレンジジュースですぐに治る。年に何度かの定期健診くらいさ、病院が必要なのは」
「……言っちゃ悪いんですけど、それって病院必要なんですかね?」
「無ければ無いでうるさいんだよ、いろいろとな」
「あ、ありがとうございました。いろいろ勉強になります」
「なに、どうせ暇なんだ。時間を潰すには丁度いい」
「そういや、なんでずっと誰も来ないんですか? もう一時間くらいいますけど……」
「ゆっくりなんてのはゆっくりさせておけば病気になることなんてないしな。怪我もオレンジジュースですぐに治る。年に何度かの定期健診くらいさ、病院が必要なのは」
「……言っちゃ悪いんですけど、それって病院必要なんですかね?」
「無ければ無いでうるさいんだよ、いろいろとな」
そんなことを言いながら、医者はのんびりとしていた。
そしてちらと壁に掛けていた時計を見る。
そろそろだなと医者が呟くと同時に、奥の方からあの看護婦が戻ってきた。
手のトレイの上に、すっかり綺麗になったびゃくれんを乗せて。
そしてちらと壁に掛けていた時計を見る。
そろそろだなと医者が呟くと同時に、奥の方からあの看護婦が戻ってきた。
手のトレイの上に、すっかり綺麗になったびゃくれんを乗せて。
「お疲れー。じゃあ次これ用意してね」
「わかりました。人使いが荒いんですから」
「その割には時間かけてたじゃない?」
「どうせ暇なんだからいいじゃないですか。ああ、他の検診も済ませておきましたから」
「はい、ありがとうね」
「わかりました。人使いが荒いんですから」
「その割には時間かけてたじゃない?」
「どうせ暇なんだからいいじゃないですか。ああ、他の検診も済ませておきましたから」
「はい、ありがとうね」
医者はトレイを受け取り、看護婦はお兄さんが書いたメモを受け取りまた奥の方へと消えていく。
ほんの数秒、医者はびゃくれんを診る。
ほんの数秒、医者はびゃくれんを診る。
「うん、大丈夫でしょう」
医者は机の上にトレイを置いた。
トレイの上に乗っていたびゃくれんに野良だったころの面影はない。
泥や土は丁寧に落とされ、土で赤茶けていた髪の毛も、金髪を基調とし頭頂部からかかる紫のグラデーションが映えるようになっていた。
肌の汚れもすでになく、まるで白絹のような美しさと弾力を兼ね備えているようである。
トレイの上に乗っていたびゃくれんに野良だったころの面影はない。
泥や土は丁寧に落とされ、土で赤茶けていた髪の毛も、金髪を基調とし頭頂部からかかる紫のグラデーションが映えるようになっていた。
肌の汚れもすでになく、まるで白絹のような美しさと弾力を兼ね備えているようである。
「君のびゃくれんは健康そのものだよ。ちょっと栄養不足気味みたいだけど、それ以外に問題は無し。はい、これで終了。お疲れ様」
「はい、ありがとうございます」
「で、お金はあるのかな?」
「な、なんとか……」
「ならいいんだよ。じゃ、お大事に。何かあったらまたおいで」
「失礼します」
「おっと忘れてた」
「はい、ありがとうございます」
「で、お金はあるのかな?」
「な、なんとか……」
「ならいいんだよ。じゃ、お大事に。何かあったらまたおいで」
「失礼します」
「おっと忘れてた」
と、医者がまたも机の下から何かを取り出す。
赤ゆ用の移動用ケースだ。
バスケットのようなものであり、中には脆弱な赤ゆっくりを痛めないように程よく固く柔らかいマットが敷き詰められている。
これ自体が赤ゆ用のベッドにもなる優れものだ。
それを、医者はお兄さんへと手渡す。
赤ゆ用の移動用ケースだ。
バスケットのようなものであり、中には脆弱な赤ゆっくりを痛めないように程よく固く柔らかいマットが敷き詰められている。
これ自体が赤ゆ用のベッドにもなる優れものだ。
それを、医者はお兄さんへと手渡す。
「少し早いけど、これ商品ね」
「いいんですか? 後払いになりますけど……」
「いいのいいの。折角綺麗にしたのにまた汚れるのも嫌でしょ? ああ、ハンカチと君が持ってきた段ボール、どうする? 捨ててもいい?」
「いいんですか? 後払いになりますけど……」
「いいのいいの。折角綺麗にしたのにまた汚れるのも嫌でしょ? ああ、ハンカチと君が持ってきた段ボール、どうする? 捨ててもいい?」
元々ハンカチは捨てる気でいたお兄さん、処分までしてくれるというならありがたい。
「じゃあ、お願いします」
「はいはい。じゃ、お帰りはあちらから」
「はいはい。じゃ、お帰りはあちらから」
びゃくれんを持ち上げた時、ふんわりとしたミントの香りが漂ってくる。
いいゆっくり用のシャンプーを使っているのだろうな、と思いながらお兄さんはびゃくれんをバスケットの中へと入れてやった。
一方でびゃくれんは未だに戸惑い顔のまま固まっている。
無理も無いだろう、今まで両親から蔑まれ、非常にゆっくりできない生活を送っていたところの急な生活環境の変化だ。
人間であっても戸惑うばかりであろう。
お兄さんはそんなびゃくれんを面白そうに見つめながら、医務室を後にした。
いいゆっくり用のシャンプーを使っているのだろうな、と思いながらお兄さんはびゃくれんをバスケットの中へと入れてやった。
一方でびゃくれんは未だに戸惑い顔のまま固まっている。
無理も無いだろう、今まで両親から蔑まれ、非常にゆっくりできない生活を送っていたところの急な生活環境の変化だ。
人間であっても戸惑うばかりであろう。
お兄さんはそんなびゃくれんを面白そうに見つめながら、医務室を後にした。
「では、お会計はこのくらいになります」
諭吉さんが一枚と野口さんが三枚、お兄さんの財布から消えて行った。
この前口座から下ろしたばかりなんだけどなぁ、と思うもお兄さんはなるべく顔を出さないようにする。
びゃくれんが不安そうにこちらを見上げているのだ。
不穏な顔を見せる訳にもいかない。
この前口座から下ろしたばかりなんだけどなぁ、と思うもお兄さんはなるべく顔を出さないようにする。
びゃくれんが不安そうにこちらを見上げているのだ。
不穏な顔を見せる訳にもいかない。
「お大事に」
看護婦の声を背中に受けて、お兄さんは病院を後にした。
右手にはびゃくれんを乗せたバスケットを、左手には今日買ったばかりの飼育用品を。
飼育用品にはそれなりの重さがあるのか、春先にも関わらずにお兄さんの額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
右手にはびゃくれんを乗せたバスケットを、左手には今日買ったばかりの飼育用品を。
飼育用品にはそれなりの重さがあるのか、春先にも関わらずにお兄さんの額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
「お おにいさん?」
びゃくれんがお兄さんに声をかける。
「どうした?」
前を向いたままお兄さんは答える。
さすがに、この荷物を抱えたまま視線をそらしてはまっすぐに歩く自信がお兄さんにはないのである。
さすがに、この荷物を抱えたまま視線をそらしてはまっすぐに歩く自信がお兄さんにはないのである。
「どうしてわたしをたすけたのですか? わたしはあのまま」
「なに。自分から死を受け入れるゆっくりなんて初めて見たしな。それで飼おうって気になったんだ」
「なに。自分から死を受け入れるゆっくりなんて初めて見たしな。それで飼おうって気になったんだ」
それに、このびゃくれんの両親の思い通りにことが運ぶのが嫌だったと言うこともある。
その辺りを知るはずないだろうに、うまく事を進めてくれたあの友人とその飼いゆっくりには感謝の気持ちで溢れてくる。
今度何か御礼をしないとな、とお兄さんはひっそりと考え始めていた。
その辺りを知るはずないだろうに、うまく事を進めてくれたあの友人とその飼いゆっくりには感謝の気持ちで溢れてくる。
今度何か御礼をしないとな、とお兄さんはひっそりと考え始めていた。
「でも わたしにはそんなしかくはありません」
「はぁ? 資格ってなんだよ? 初めて聞いたぞ?」
「ゆっくりはゆっくりしているからゆっくりであり ゆっくりしているからおにいさんのようなにんげんにゆっくりさせてくれるとおそわりました」
「そんな訳ないだろ。ゆっくりは人間をゆっくりさせるからゆっくりをゆっくりさせるんだ。教えたやつは馬鹿だな」
「わたしもそうおもいます ずっとまちがっているとおもっていましたから でも やっぱりわたしではだめなのです」
「どうしてだ?」
「わたしが おにいさんをゆっくりさせられるとはとうていおもわないのです」
「はぁ? 資格ってなんだよ? 初めて聞いたぞ?」
「ゆっくりはゆっくりしているからゆっくりであり ゆっくりしているからおにいさんのようなにんげんにゆっくりさせてくれるとおそわりました」
「そんな訳ないだろ。ゆっくりは人間をゆっくりさせるからゆっくりをゆっくりさせるんだ。教えたやつは馬鹿だな」
「わたしもそうおもいます ずっとまちがっているとおもっていましたから でも やっぱりわたしではだめなのです」
「どうしてだ?」
「わたしが おにいさんをゆっくりさせられるとはとうていおもわないのです」
驚いたお兄さんはびゃくれんを見る。
その瞳は真剣そのもので、嘘を言っているようには思えない。
今の言葉は野生や野良で生きるゆっくりの価値観を大きく逸脱したものだ。
大抵の場合、ゆっくりというものは自分たちがゆっくりしているから他の全ての存在もゆっくりできる、という誇大妄想じみた価値観を持っている。
この価値観はペット用に厳しく躾けられたものであっても、時折その価値観に縛られることがあるほど強い。
希少種とはいえ、つい先日まで野良の群れの、しかも通常種中心の群れで過ごして居たびゃくれんにどうしてそう思えるのだろうか。
お兄さんは無性に聞いてみたくなった。
その瞳は真剣そのもので、嘘を言っているようには思えない。
今の言葉は野生や野良で生きるゆっくりの価値観を大きく逸脱したものだ。
大抵の場合、ゆっくりというものは自分たちがゆっくりしているから他の全ての存在もゆっくりできる、という誇大妄想じみた価値観を持っている。
この価値観はペット用に厳しく躾けられたものであっても、時折その価値観に縛られることがあるほど強い。
希少種とはいえ、つい先日まで野良の群れの、しかも通常種中心の群れで過ごして居たびゃくれんにどうしてそう思えるのだろうか。
お兄さんは無性に聞いてみたくなった。
「どうしてそう思うんだ?」
「わたしはうまれたころからゆっくりしていないゆっくりとののしられてきました それでも りょうしんにかんしゃしていないわけではないのです
わたしをうんでくれたのですから ですが わたしがうまれたことでりょうしんはゆっくりできなくなり むれもゆっくりできなくなりました
そんなわたしがどうしてにんげんさんをゆっくりさせることができるのですか?」
「わたしはうまれたころからゆっくりしていないゆっくりとののしられてきました それでも りょうしんにかんしゃしていないわけではないのです
わたしをうんでくれたのですから ですが わたしがうまれたことでりょうしんはゆっくりできなくなり むれもゆっくりできなくなりました
そんなわたしがどうしてにんげんさんをゆっくりさせることができるのですか?」
びゃくれんの声は悲痛だった。
両親に愛されることもなく、群れからも厄介者扱い。
その生まれの特異性ゆえに殺されることもなく、直接的な危害を加えられたわけでもない。
だが、常に針のむしろに座っているようなその暮らしは、幼い心を苛み続けたのであろう。
ともすれば、ゆっくりが持つ価値観も容易に破壊するほどには。
両親に愛されることもなく、群れからも厄介者扱い。
その生まれの特異性ゆえに殺されることもなく、直接的な危害を加えられたわけでもない。
だが、常に針のむしろに座っているようなその暮らしは、幼い心を苛み続けたのであろう。
ともすれば、ゆっくりが持つ価値観も容易に破壊するほどには。
びゃくれんの話を聞いてお兄さんはふと思い出したことがある、親から虐げられたゆっくりは極めて善良になりやすいと。
なるほど、人間とゆっくりが共に暮らすのに困難な理由の一つに上げられるのが価値観の違いだ。
ゆっくりは全て自分がゆっくりできるからと上であると考え他者を見下していく、そんな考えと姿勢を人間が許すはずもない。
しかし、その価値観の違いがわかるのは賢い希少種と、理解しているかは微妙だが幼少から躾けられた飼いゆっくりたちのみである。
そして、もう一つの例外が、親から虐げられたゆっくりだ。
親であるゆっくりから虐げられるということは、ゆっくりであることを否定されたにも等しく、そのような価値観を抱くこともないのである。
ゆっくりは全て自分がゆっくりできるからと上であると考え他者を見下していく、そんな考えと姿勢を人間が許すはずもない。
しかし、その価値観の違いがわかるのは賢い希少種と、理解しているかは微妙だが幼少から躾けられた飼いゆっくりたちのみである。
そして、もう一つの例外が、親から虐げられたゆっくりだ。
親であるゆっくりから虐げられるということは、ゆっくりであることを否定されたにも等しく、そのような価値観を抱くこともないのである。
つまり、とお兄さんは結論付ける。
このびゃくれんは飼いゆっくりに相応しい素質を持ち、きっと良いパートナーになれるであろうと。
辛い生活を送ってきたからこそ、報われてもいいのではないだろうか。
むしろ報われるべきであろう。
お兄さんはゲスは嫌いではあるが、真面目に生きようとしているゆっくりは好きなのだ。
このびゃくれんは飼いゆっくりに相応しい素質を持ち、きっと良いパートナーになれるであろうと。
辛い生活を送ってきたからこそ、報われてもいいのではないだろうか。
むしろ報われるべきであろう。
お兄さんはゲスは嫌いではあるが、真面目に生きようとしているゆっくりは好きなのだ。
「なんで最初から諦めるんだ?」
「わかりました……えっ?」
「わかりました……えっ?」
ゆっくりさせられない自分は飼われる価値はない、そう思い捨てられる気でいたのであろうびゃくれんが驚きの声を発する。
不思議そうな瞳で、お兄さんをまじまじと見つめていた。
不思議そうな瞳で、お兄さんをまじまじと見つめていた。
「俺はお前みたいな真面目なやつは好きなんだ。手伝ってやりたいと思う。でもな、最初から諦めるのは駄目だ」
「で でも……」
「でももなにも無い。俺をゆっくりさせられないなら、ゆっくりさせられるようになればいい。簡単だろ?」
「そうですけど」
「仏さんだって修行を積んで悟りを開いたんだ。時間を掛ければきっとなれるさ」
「みほとけも ですか?」
「ああ。そうだ。それでも、諦めるのかい?」
「で でも……」
「でももなにも無い。俺をゆっくりさせられないなら、ゆっくりさせられるようになればいい。簡単だろ?」
「そうですけど」
「仏さんだって修行を積んで悟りを開いたんだ。時間を掛ければきっとなれるさ」
「みほとけも ですか?」
「ああ。そうだ。それでも、諦めるのかい?」
びゃくれん種は仏教関連の建物や道具を好む、ということを医者から聞いていたお兄さんはびゃくれんを励ます為に仏を引き合いに出した。
前向きにさせる為だから仏も罰は下しはしないだろう、果たして、びゃくれんは考え込んだ。
その時間実に五分。
ゆっくりと考えたびゃくれんが次にお兄さんを見上げた時には、実に晴れ晴れとした顔をしていた。
前向きにさせる為だから仏も罰は下しはしないだろう、果たして、びゃくれんは考え込んだ。
その時間実に五分。
ゆっくりと考えたびゃくれんが次にお兄さんを見上げた時には、実に晴れ晴れとした顔をしていた。
「おにいさん わたし がんばります じぶんをきめつけるなんてじきしょうそうでした わたし おにいさんをゆっくりさせてあげられるようにがんばります!」
「その意気だ。一緒に頑張ろうな、びゃくれん」
「はいっ!」
「その意気だ。一緒に頑張ろうな、びゃくれん」
「はいっ!」
元気のいい返事だ、と思いながらポケットから器用に鍵を取り出す。
びゃくれんが考えているうちに、お兄さんはマンションに辿り着き階段をのぼっていた。
自宅の鍵を開け、そして。
びゃくれんが考えているうちに、お兄さんはマンションに辿り着き階段をのぼっていた。
自宅の鍵を開け、そして。
「ようこそ、俺の家へ。今日からここが、お前の住む場所だ」
南向きに面した大きな窓からは光が溢れ、びゃくれんを包むよう。
お兄さんはバスケットからフローリングの床の上にびゃくれんを下ろしてやった。
びゃくれんは歓喜に打ちひしがれる様に震えている。
お兄さんはバスケットからフローリングの床の上にびゃくれんを下ろしてやった。
びゃくれんは歓喜に打ちひしがれる様に震えている。
「ああっ わたし ほんとうに……」
目尻に涙を溜めて、びゃくれんは振り返る。
そして今まで誰にも見せたことの無いとびっきりの笑顔で、言った。
そして今まで誰にも見せたことの無いとびっきりの笑顔で、言った。
「おにいさん これからよろしくおねがいしますね!」
「ああ、よろしくな」
「ああ、よろしくな」
お兄さんとびゃくれんの生活はこれから始まる。
―了―
びゃくれん愛でのつもりでしたが、若干考察よりでしたね。
今度はお兄さんとびゃくれんの生活を書いてしっかり愛でてみたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今度はお兄さんとびゃくれんの生活を書いてしっかり愛でてみたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
過去作
anko4299 ゆっくりは幸せな夢を見るか?
anko4299 ゆっくりは幸せな夢を見るか?