ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4577 ゆっくりパラサイト
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『ゆっくりパラサイト』 32KB
観察 自然界 現代 失礼します
観察 自然界 現代 失礼します
※ グロ表現と感じられる内容を含む可能性があります。閲覧は自己責任でお願いします。
一匹のまりさが、地べたをずりずりと這っていた。
どこもかしこも傷だらけで、泥やら何やらでべとべとに汚れた、ひかえめに言っても汚らしいまりさである。
いかにもみすぼらしい風体のなか、眼だけが右左と動いて何かを探していた。
巣の中に番のれいむとおちびちゃんを残して、食糧を集めているところだった。ゆっくりが言うところの、「狩り」という名の落ち物拾いだ。
どこもかしこも傷だらけで、泥やら何やらでべとべとに汚れた、ひかえめに言っても汚らしいまりさである。
いかにもみすぼらしい風体のなか、眼だけが右左と動いて何かを探していた。
巣の中に番のれいむとおちびちゃんを残して、食糧を集めているところだった。ゆっくりが言うところの、「狩り」という名の落ち物拾いだ。
「ごはんざん…………ごはんざん…………ごはんざん…………」
栄養状態が悪くかさかさになった口からはガラガラに濁った声がうわごとのようにこぼれていた。
まりさが食糧を入れるのに使っている、皺くちゃのほつれたおぼうしの中には、そこらに生えていた野草が詰め込められている。我慢すれば食べられなくもないという、比較的マシという部類の、苦くて不味い草ばかりが。
まりさが食糧を入れるのに使っている、皺くちゃのほつれたおぼうしの中には、そこらに生えていた野草が詰め込められている。我慢すれば食べられなくもないという、比較的マシという部類の、苦くて不味い草ばかりが。
「ゆっぐりじだごはんざん……ででぎでぐだざい……ばりざだち……ゆっぐりじだいんでず……ゆっぐりざぜだいんでず……」
巣にいるおちびちゃんが待っているのは、本当は昆虫や甘い木の実といった、もっとゆっくりした食糧だ。
草は比較的保存ができ、量も獲れるが、甘味を好むゆっくりにとってとにかく苦い。赤ゆっくりが食べるのにはいちいち吐き気をこらえなければならず消化にも悪い。一言で言うと、ゆっくりできない。
まりさもそれを理解し、疲れきった体を押して血眼になって狩りを続けている。だが結果は、おぼうしの中を見れば明らかだった。
草は比較的保存ができ、量も獲れるが、甘味を好むゆっくりにとってとにかく苦い。赤ゆっくりが食べるのにはいちいち吐き気をこらえなければならず消化にも悪い。一言で言うと、ゆっくりできない。
まりさもそれを理解し、疲れきった体を押して血眼になって狩りを続けている。だが結果は、おぼうしの中を見れば明らかだった。
まりさの住むこの山が、生き物の住まないはげ山なのではない。
秋と言うにはまだ暑く、夏と言うにはもう涼しいといったこの時期、山は生き生きとした草木にあふれ、虫たちだって見るまでもなくそこらじゅうに息づいているのが分かる。
適当にふらふらとうろつくだけでも、ゆっくりが食べそうな昆虫などすぐに集められそうなものだ。
人間であれば容易に。
秋と言うにはまだ暑く、夏と言うにはもう涼しいといったこの時期、山は生き生きとした草木にあふれ、虫たちだって見るまでもなくそこらじゅうに息づいているのが分かる。
適当にふらふらとうろつくだけでも、ゆっくりが食べそうな昆虫などすぐに集められそうなものだ。
人間であれば容易に。
「ごはんざん……どごなの……はえでぎでね……ゆっ……ゆう゛ぅっ……」
這い続けるまりさの目と鼻の先に生えた草の上を、まるまると太った緑色の芋虫が、一匹でにょろにょろと動いている。
ゆっくりにとって、生きた芋虫は新鮮な、ゆっくりした食糧のひとつだ。ぷりぷりとしたその体はおちびちゃんたちも大好物で、食べればしあわせー! になれるに違いない。
しかしまりさは、目の前にある芋虫を捕まえるどころか、まるで気付いていない様子で、素通りして先に進んでしまう。
意図して避けたのではない。
緑色の草の上にいる緑色の芋虫を見つけられるほどの観察力など、ゆっくりは持ち合わせていないのだ。
ゆっくりにとって、生きた芋虫は新鮮な、ゆっくりした食糧のひとつだ。ぷりぷりとしたその体はおちびちゃんたちも大好物で、食べればしあわせー! になれるに違いない。
しかしまりさは、目の前にある芋虫を捕まえるどころか、まるで気付いていない様子で、素通りして先に進んでしまう。
意図して避けたのではない。
緑色の草の上にいる緑色の芋虫を見つけられるほどの観察力など、ゆっくりは持ち合わせていないのだ。
「ゆ゛っ……ゆ゛っ……ゆ…………ちょうぢょざん……」
一匹のアゲハ蝶がひらひらと目の前に躍り出てきて、まりさは思わずそれを見上げた。
暖かな日差しに照らされて優雅に羽ばたき、くるくるとまりさの前で踊っている。
しかしまりさがそっと舌を伸ばすと、小馬鹿にしたようにその脇を通り抜けて、あっという間に飛び去ってしまった。まりさは声ひとつ上げず、悔しそうに唇を噛んでぶるぶると震える。
空を飛ぶことのできる生き物に対して、ゆっくりが勝る点はほとんど皆無といっていい。これらの生き物にとって、ゆっくりは天地がひっくりかえっても捕食者とはなりえない。
暖かな日差しに照らされて優雅に羽ばたき、くるくるとまりさの前で踊っている。
しかしまりさがそっと舌を伸ばすと、小馬鹿にしたようにその脇を通り抜けて、あっという間に飛び去ってしまった。まりさは声ひとつ上げず、悔しそうに唇を噛んでぶるぶると震える。
空を飛ぶことのできる生き物に対して、ゆっくりが勝る点はほとんど皆無といっていい。これらの生き物にとって、ゆっくりは天地がひっくりかえっても捕食者とはなりえない。
「…………どぼじで……どぼじで…………みんないじわるずるの……?」
がさがさと草を踏んで近づけば、目の前をぴょんぴょんとバッタが跳ねて逃げる。
葉っぱの裏に隠れたテントウムシを見つけても、すぐにどこかに飛んで行ってしまう。
ハチに至っては見つけたらこちらが危険だ。生きているなら言うまでも無く、死骸であっても毒のためむーしゃむーしゃすることができない。
食べやすい木の実なんかはゆっくりが見つけるより早く、とうの昔に他の生き物に食べられている。
葉っぱの裏に隠れたテントウムシを見つけても、すぐにどこかに飛んで行ってしまう。
ハチに至っては見つけたらこちらが危険だ。生きているなら言うまでも無く、死骸であっても毒のためむーしゃむーしゃすることができない。
食べやすい木の実なんかはゆっくりが見つけるより早く、とうの昔に他の生き物に食べられている。
「ゆっぐり……ただいま…………」
日中を狩りに費やして、悄然としたまままりさは家路についた。
森の中にある坂に、まりさが暮らす巣がある。低木の根の付近に、穴、というかくぼみがそれだ。木の枝が真上にあり、かろうじて雨避けの役割を果たしてくれているが十分ではない。風についてはこれを防ぐ手立ては何一つな見当たらない。
それも仕方のない話なのだ。木の洞のような立派なおうちは、とっくのとうに鳥の巣になっていたり、他のゆっくりが使っていたりして空きは無い。
道具を作ったり使ったりする知恵もなく、砂糖細工の歯しか持ち合わせのないゆっくりが、自分と数匹に十分な広さの穴を掘ることなど夢のまた夢だ。
森の中にある坂に、まりさが暮らす巣がある。低木の根の付近に、穴、というかくぼみがそれだ。木の枝が真上にあり、かろうじて雨避けの役割を果たしてくれているが十分ではない。風についてはこれを防ぐ手立ては何一つな見当たらない。
それも仕方のない話なのだ。木の洞のような立派なおうちは、とっくのとうに鳥の巣になっていたり、他のゆっくりが使っていたりして空きは無い。
道具を作ったり使ったりする知恵もなく、砂糖細工の歯しか持ち合わせのないゆっくりが、自分と数匹に十分な広さの穴を掘ることなど夢のまた夢だ。
「ゆっ………ゆっぐり…………おがえりなざい…………」
その粗末な巣の中で、まりさと同じくガリガリに痩せこけたれいむが、死んだ魚のような目でまりさを迎えた。
ぐったりとしていたところに、戻ってきたまりさを見つけてずるずると這い寄るが、れいむの表情に希望は窺えない。
ぐったりとしていたところに、戻ってきたまりさを見つけてずるずると這い寄るが、れいむの表情に希望は窺えない。
「…………ばりざ……ごはんざんは…………?」
「……ゆっ…………これが…………きょうの、ごはんざん……だよ…………」
「ぞんな……ぞんな…………おぢびじゃんが……しんじゃうよ…………」
「……ゆっ…………これが…………きょうの、ごはんざん……だよ…………」
「ぞんな……ぞんな…………おぢびじゃんが……しんじゃうよ…………」
おぼうしの中を埋め尽くす草、草、草。
それでもれいむは嘆くばかりで、まりさを責めることはしなかった。
ゆっくりに取れるものと取れないもの、そして自分の限界をも理解しているのだ。まりさに取ってこれないものが、さらに能力の劣るれいむに用意できるわけが無かった。
それでもれいむは嘆くばかりで、まりさを責めることはしなかった。
ゆっくりに取れるものと取れないもの、そして自分の限界をも理解しているのだ。まりさに取ってこれないものが、さらに能力の劣るれいむに用意できるわけが無かった。
「……ゅ゛っ……っ…………コぉ゛っ……」
かすれるような音を出している、一匹の小さな小さなゆっくりが、まりさとれいむが最後の希望としていたおちびちゃんだ。
ガチガチに乾いた皮に、ちぢれて原型をとどめていない髪。しーしーやうんうんの痕が残る汚らしい赤れいむだった。唾液の一滴さえ出ない口には食べもののカスすら残っておらず、ひび割れた唇の端からは、呼吸のたびに声にならない悲鳴ばかりがこぼれている。
虫の息という表現に相応しい有様の我が子を、まりさとれいむは絶望と無力感でいっぱいになった顔で見つめた。
虐待家からしたらたまらない表情だった。野良ゆっくりをほとんどみかけなくなった現代社会では、金を払わないとなかなか見られない、負の感情をこれでもかと詰め込んだ極上の顔である。
ガチガチに乾いた皮に、ちぢれて原型をとどめていない髪。しーしーやうんうんの痕が残る汚らしい赤れいむだった。唾液の一滴さえ出ない口には食べもののカスすら残っておらず、ひび割れた唇の端からは、呼吸のたびに声にならない悲鳴ばかりがこぼれている。
虫の息という表現に相応しい有様の我が子を、まりさとれいむは絶望と無力感でいっぱいになった顔で見つめた。
虐待家からしたらたまらない表情だった。野良ゆっくりをほとんどみかけなくなった現代社会では、金を払わないとなかなか見られない、負の感情をこれでもかと詰め込んだ極上の顔である。
(れーびゅ……じぬ……じぬ……じぬ…………)
標準的な赤ゆっくり以下の体格の赤れいむは、この二日ほど栄養を何一つ採っていない。
以前は苦い草も我慢して食べていたが、それだけの食生活ではやはり徐々に体力が奪われていき、ついに草を餡子に変換することさえ満足にできなくなった。燃費が悪い赤ゆっくりにとって致命的だ。
飢餓はとっくに極限に達している。
飢えの苦しみが意識を奪ってくれないのは、この小さなゆっくりにとって拷問にも等しかった。
以前は苦い草も我慢して食べていたが、それだけの食生活ではやはり徐々に体力が奪われていき、ついに草を餡子に変換することさえ満足にできなくなった。燃費が悪い赤ゆっくりにとって致命的だ。
飢餓はとっくに極限に達している。
飢えの苦しみが意識を奪ってくれないのは、この小さなゆっくりにとって拷問にも等しかった。
(じぬ……じぬ……おにゃが…………ずいだ……)
おなかすいた。おなかすいた。死ぬ。死ぬ。死ぬ――眠ることも動くことも叶わず、れーみゅの思考はずっとその言葉で埋め尽くされている。
野生のゆっくりにとって、餓死と捕食はメジャーな部類だ。たっぷりと死の恐怖を引き伸ばされながら、毎日毎日、今日もどこかで、赤ゆっくりは死んでいく。
おちびちゃんが100匹いれば、半数近くは飢えて死ぬと言われている。
ゆっくりとしてはありきたりな死が、想像を絶する苦痛を伴って、赤れいむにも訪れようとしていた。
野生のゆっくりにとって、餓死と捕食はメジャーな部類だ。たっぷりと死の恐怖を引き伸ばされながら、毎日毎日、今日もどこかで、赤ゆっくりは死んでいく。
おちびちゃんが100匹いれば、半数近くは飢えて死ぬと言われている。
ゆっくりとしてはありきたりな死が、想像を絶する苦痛を伴って、赤れいむにも訪れようとしていた。
「ゆ゛ううう……! おぢびじゃ゛ん……でいぶのがわいいおぢびじゃんっ……!」
「ゆっぐじじで……ゆっぐじ…………おぢびじゃん……ぐざざんをだべでねっ……おでがいだよっ……!」
「ゆっぐじじで……ゆっぐじ…………おぢびじゃん……ぐざざんをだべでねっ……おでがいだよっ……!」
まりさとれいむは涙声を上げて、青々とした草を噛んで柔らかくしては赤れいむにたべさせようとする。
しかし赤れいむはもう、柔らかくなった草でさえ飲み込むことはできない状態だった。一度もむーしゃむーしゃとできず、そのままでろりと吐きだしてしまう。
餡子に蓄えられたエネルギーは中枢餡を維持するのに精いっぱいで、運動に使う餡子に回せるほど残っていないのだ。
しかし赤れいむはもう、柔らかくなった草でさえ飲み込むことはできない状態だった。一度もむーしゃむーしゃとできず、そのままでろりと吐きだしてしまう。
餡子に蓄えられたエネルギーは中枢餡を維持するのに精いっぱいで、運動に使う餡子に回せるほど残っていないのだ。
(あまあま……あまあま……あまあま……あばあば…………)
エネルギーの枯渇したゆっくりは本能的にあまあまを求める。
実際こうまでなると、オレンジジュースをかけるくらいしか救う手立ては無い。しかしそんなものをゆっくりが用意できるはずがなく、れいむとまりさにできるのは意味のない呼びかけしかなかった。
実際こうまでなると、オレンジジュースをかけるくらいしか救う手立ては無い。しかしそんなものをゆっくりが用意できるはずがなく、れいむとまりさにできるのは意味のない呼びかけしかなかった。
(どぼじで……どぼじで……だずげで……ぐれないの……どぼ…………じで…………)
生まれる前は良かった。
ゆっくりしていってね! と挨拶して生まれ、あまあまをむーしゃむーしゃして、すーりすーりをして、あまあまをむーしゃむーしゃして、すーやすーやをする。
そんな楽しい空想に、いつまでも浸っていることができた。親の餡子から伝わってくるそれが、一生に一度あるかないかの、儚い幻だと知らずにいられた。
どうしてこの世に生まれてしまったのだろう。
ゆっくりしていってね! と挨拶して生まれ、あまあまをむーしゃむーしゃして、すーりすーりをして、あまあまをむーしゃむーしゃして、すーやすーやをする。
そんな楽しい空想に、いつまでも浸っていることができた。親の餡子から伝わってくるそれが、一生に一度あるかないかの、儚い幻だと知らずにいられた。
どうしてこの世に生まれてしまったのだろう。
「ゅ゛…………ぁ……ぇ………………………………」
生まれる前に戻りたい。
そう思った赤れいむの眼から、今度こそ光が消えていった。
そう思った赤れいむの眼から、今度こそ光が消えていった。
「ゆ゛っ……ゆう゛う゛う……! どぼじでぇ……! ゆっぐう゛う゛う゛!! ゆ゛ひいぃぃっ……!!」
「でいぶの……でいぶのっ…………ゆあ゛ああっ……ああ゛……あ……あ゛あ゛あ゛ぁ゛…………!!」
「でいぶの……でいぶのっ…………ゆあ゛ああっ……ああ゛……あ……あ゛あ゛あ゛ぁ゛…………!!」
急速に黒く染まっていく我が子の体に目を見開き、まりさとれいむは歯を食いしばりながら悲鳴のようにすすり泣く。
他の動物に見つかったら殺されると肝に銘じているため、わんわんと大声を上げて泣き叫ぶことは無いのだ。
他の動物に見つかったら殺されると肝に銘じているため、わんわんと大声を上げて泣き叫ぶことは無いのだ。
「ゆっぐう゛ぅ…………ゆ゛あぁぁぁんっ…………!!」
「ゆひぃぃぃぃぃっ…………!」
「ゆひぃぃぃぃぃっ…………!」
我が子がカピカピの死体になったのを見て、ただでさえ汚い顔をぐしゃぐしゃにして涙を流す。
まりさとれいむはそれからも、新しくおちびちゃんを作ったが同じように死なせ続けた。
そうこうしているうちに冬が来て、仲良く凍えて、ひもじく死んでいった。
まりさとれいむはそれからも、新しくおちびちゃんを作ったが同じように死なせ続けた。
そうこうしているうちに冬が来て、仲良く凍えて、ひもじく死んでいった。
最初はこうではなかった。
ゆっくりたちがこの国に現れた当初は、人間以外に初めて現れた言葉を話す生き物として、良き隣人として期待する人間もいるにはいたそうだ。
しかしゆっくりの手前勝手さ、自己中心的な考え、あまりに幼稚な精神が明るみに出ると、あっという間に良き隣人は嫌われ者に変わった。
街を汚し、騒音や罵声を浴びせるゆっくりが、清潔と平穏を好むこの国の人間に好かれる要素など、はじめからどこにも無かったのだ。
ゆっくりたちがこの国に現れた当初は、人間以外に初めて現れた言葉を話す生き物として、良き隣人として期待する人間もいるにはいたそうだ。
しかしゆっくりの手前勝手さ、自己中心的な考え、あまりに幼稚な精神が明るみに出ると、あっという間に良き隣人は嫌われ者に変わった。
街を汚し、騒音や罵声を浴びせるゆっくりが、清潔と平穏を好むこの国の人間に好かれる要素など、はじめからどこにも無かったのだ。
ゆっくり嫌いの風潮が世間に広まっていくと、国は何のためらいもなく、増えつつあった野良ゆっくりの駆除にかかった。この国の衛生状態と不思議饅頭の命、どちらが良いかは天秤にかけるまでもない。
捕まえては集め、集めては捕まえて、一日に何万というゆっくりが効率的に殺されていった。このとき国が設立したゆっくり処理場が、後に加工所と呼ばれるようになるのだが――それはまた別の話である。
ゆっくりを飼おうとする物好きな人間もめっきり減り、愛護団体は世間の非難にさらされて次々と姿を消していった。
人間たちの領域に入り込むゆっくりが次々と殲滅された結果、野良ゆっくりは急速に過去の存在になっていった。人目のつかない薄暗い路地裏などで、惨めにひっそり生きているものがわずかにいるばかりだ。
捕まえては集め、集めては捕まえて、一日に何万というゆっくりが効率的に殺されていった。このとき国が設立したゆっくり処理場が、後に加工所と呼ばれるようになるのだが――それはまた別の話である。
ゆっくりを飼おうとする物好きな人間もめっきり減り、愛護団体は世間の非難にさらされて次々と姿を消していった。
人間たちの領域に入り込むゆっくりが次々と殲滅された結果、野良ゆっくりは急速に過去の存在になっていった。人目のつかない薄暗い路地裏などで、惨めにひっそり生きているものがわずかにいるばかりだ。
駆除をかろうじて逃れた少数のゆっくりたちは、必然的に野山に追いやられた。
しかし何の能力も持たないゆっくりたちが、生きて子孫を残すことに特化し続けてきた先住民たちに、自然界で太刀打ちなどできない。
人間の畑を荒そうにも、野生動物への対策がそのままゆっくり対策となってこれを阻んだ。今この国では、ゆっくりによる農場の被害はゼロである。ゆっくりは獣に対して何一つ勝るところがないのだから、それも当然の話だ。
ゆっくりたちに許された立場はひとつだけ。
ほとんど植物しか食べられず、どんな獣にも勝つことのできない、圧倒的な弱者だ。
しかし何の能力も持たないゆっくりたちが、生きて子孫を残すことに特化し続けてきた先住民たちに、自然界で太刀打ちなどできない。
人間の畑を荒そうにも、野生動物への対策がそのままゆっくり対策となってこれを阻んだ。今この国では、ゆっくりによる農場の被害はゼロである。ゆっくりは獣に対して何一つ勝るところがないのだから、それも当然の話だ。
ゆっくりたちに許された立場はひとつだけ。
ほとんど植物しか食べられず、どんな獣にも勝つことのできない、圧倒的な弱者だ。
「ひぼじいよ…………ひぼじいよ…………ごはんざん…………でできでね…………」
「どぼじで……ゆっぐりざぜでぐれないの…………」
「ゆ……ゆんぎゃあぁぁあぁぁぁぁあああ!!! れいぶをだべない゛でええぇぇぇぇえええぇぇ!!!」
「おなが……じゅいだのじぇ………………ゆっ、ゆ゛っ…………ゆ゛っ……」
「どぼじで……ゆっぐりざぜでぐれないの…………」
「ゆ……ゆんぎゃあぁぁあぁぁぁぁあああ!!! れいぶをだべない゛でええぇぇぇぇえええぇぇ!!!」
「おなが……じゅいだのじぇ………………ゆっ、ゆ゛っ…………ゆ゛っ……」
その日暮らしする能力さえ満足に持たない、哀れなくらい弱く惨めな生き物――日本中にひっそりと暮らす野生のゆっくりたちにとって、それが現実となりつつあった。
ゆっくりできない。できるはずがない。それでも死ぬことが怖いから、苦しみ、怯えながら、野生のゆっくりはただ生き続けている。
ゆっくりできない。できるはずがない。それでも死ぬことが怖いから、苦しみ、怯えながら、野生のゆっくりはただ生き続けている。
そんな地上最底辺の生き物が、体の中に餡子やクリームなどの栄養を、飢えながらも保っているのだ。
他の生物がゆっくりをさらに効率よく食いものにするのに、十分な下地が最初から整っていた。
他の生物がゆっくりをさらに効率よく食いものにするのに、十分な下地が最初から整っていた。
春。
無事に越冬できるゆっくりは全体の1割にも満たず、大幅にその数を減らしている。競争は緩い。
そのため悲惨の一言に尽きる狩りの成果も、この時期であれば比較的マシなものが得られることもある。食事に木の実が混ざりはじめ、虫の死骸が1つ出ることがたまにある、という程度には改善するのだ。
そんな事情もあって、生き残ったゆっくりたちはこの時期にすっきりー! をしておちびちゃんを作る。
大した蓄えが無かったとしても、「おちびちゃんはゆっくりできる」と刷り込まれたゆっくりたちは我慢するができない。現実逃避と記憶の捏造が大好きなゆっくりたちに、そんな心構えなどあろうはずがなかった。
無事に越冬できるゆっくりは全体の1割にも満たず、大幅にその数を減らしている。競争は緩い。
そのため悲惨の一言に尽きる狩りの成果も、この時期であれば比較的マシなものが得られることもある。食事に木の実が混ざりはじめ、虫の死骸が1つ出ることがたまにある、という程度には改善するのだ。
そんな事情もあって、生き残ったゆっくりたちはこの時期にすっきりー! をしておちびちゃんを作る。
大した蓄えが無かったとしても、「おちびちゃんはゆっくりできる」と刷り込まれたゆっくりたちは我慢するができない。現実逃避と記憶の捏造が大好きなゆっくりたちに、そんな心構えなどあろうはずがなかった。
「れいむのおちびちゃんっ……ゆっぐり、していってね…………!」
ゆっくりの住処としては高級な部類にあたる木の洞で、頭から蔓を生やし、実ゆっくりに向かって微笑んでいるれいむも、そんなゆっくりだった。
父母の死体を食べるというありふれた方法で冬をしのぎ、春になってすぐさま、木の洞という高級住宅に住む優秀なまりさと番になることができた。
あっという間にできたおちびちゃんたちに、しきりに微笑みかけている。
蔓からは全部で5匹の実ゆっくりが垂れ下がっており、どれもが現実を知らないまま、幸せなゆん生を夢見て穏やかに眠っていた。
父母の死体を食べるというありふれた方法で冬をしのぎ、春になってすぐさま、木の洞という高級住宅に住む優秀なまりさと番になることができた。
あっという間にできたおちびちゃんたちに、しきりに微笑みかけている。
蔓からは全部で5匹の実ゆっくりが垂れ下がっており、どれもが現実を知らないまま、幸せなゆん生を夢見て穏やかに眠っていた。
「ゆっくりしていってね……! ゆっくりじていってねっ!」
「ゅっ……ゆっきゅ……」
「ゅぅ……じぇ! ……じぇ!」
「……ゆっく! ぅっくちぃ!」
「ゅっ……ゆっきゅ……」
「ゅぅ……じぇ! ……じぇ!」
「……ゆっく! ぅっくちぃ!」
れいむがしきりに挨拶をすると、おちびちゃんたちはぷるぷると反応する。舌ったらずの可愛いお口で、ゆっくりとしたお返事をしようとしてくれる。
大声で挨拶をすればたちまち獣に見つかってしまうから、小声でしか「ゆっくりしていってね」を言えない。だがそれでも、れいむは十分ゆっくりしていた。
ご飯も満足に食べられず、暑さ寒さも満足にしのぐことができない。あまあまなんて食べたこともないし、姉妹はどんどん死んでいく――そんなゆっくりできないことばかりのゆん生だったれいむに、おちびちゃんたちはゆっくりにとって何よりも大切な、失いかけていた「ゆっくり」というものを思い出させてくれた。
ゆっくりしていってね、の言葉はガラガラの涙声になっていた。それほどまでにゆっくりできない一生を、このれいむは送って来たのだ。
目に入れても痛くない、まさにゆっくりした、れいむの素敵なおちびちゃんたちだった。
大声で挨拶をすればたちまち獣に見つかってしまうから、小声でしか「ゆっくりしていってね」を言えない。だがそれでも、れいむは十分ゆっくりしていた。
ご飯も満足に食べられず、暑さ寒さも満足にしのぐことができない。あまあまなんて食べたこともないし、姉妹はどんどん死んでいく――そんなゆっくりできないことばかりのゆん生だったれいむに、おちびちゃんたちはゆっくりにとって何よりも大切な、失いかけていた「ゆっくり」というものを思い出させてくれた。
ゆっくりしていってね、の言葉はガラガラの涙声になっていた。それほどまでにゆっくりできない一生を、このれいむは送って来たのだ。
目に入れても痛くない、まさにゆっくりした、れいむの素敵なおちびちゃんたちだった。
「ゆっくりじていってねっ……! ゆっくり…………ゆ?」
もっとお返事をもらいたくて挨拶を繰り返し、可愛いおちびちゃんのお声が聞きたい一心で耳をすませていたれいむは、ある音をとらえた。
プン、という羽音だった。
餡子そのものであるうんうんには、小バエがたかることもある。だがそれにしても大きな音だったように、それでいて不吉な音だったようにれいむには思えた。それにうんうんばかりは悪臭がひどくゆっくりできないため、きちんと毎日巣の外に出して処理している。
途端に心配になって来てキョロキョロと周囲を見回すれいむだが、ゆっくりの多分にもれず、早く飛ぶ小さい虫を見つけられるほどの観察力はない。
だからその虫を見つけられたのは、きっと気のせいだよ……と不安ながらも楽観することにして、再びおちびちゃんたちを眺めようと視線を戻したときだった。
プン、という羽音だった。
餡子そのものであるうんうんには、小バエがたかることもある。だがそれにしても大きな音だったように、それでいて不吉な音だったようにれいむには思えた。それにうんうんばかりは悪臭がひどくゆっくりできないため、きちんと毎日巣の外に出して処理している。
途端に心配になって来てキョロキョロと周囲を見回すれいむだが、ゆっくりの多分にもれず、早く飛ぶ小さい虫を見つけられるほどの観察力はない。
だからその虫を見つけられたのは、きっと気のせいだよ……と不安ながらも楽観することにして、再びおちびちゃんたちを眺めようと視線を戻したときだった。
「ゆうううううっ!? は、は、はちさん……!!!!」
茎の先端に、一匹の蜂がとまっていた。黒くて地味な外見をした、指先ほどの小さなサイズだ。
「ただいまなのぜ……きょうは、きのみさんもとれたのぜっ……!」
「ま、ま、まりさ……! お、お、おちびちゃんに、はっ、はちさんが……!」
「ゆ゛っ!? ……は、は、は、はちさん……!?」
「ま、ま、まりさ……! お、お、おちびちゃんに、はっ、はちさんが……!」
「ゆ゛っ!? ……は、は、は、はちさん……!?」
れいむが震える声で言うと、ちょうど狩りから帰って来たまりさも驚き、ガタガタと震えながら声を殺しはじめる。
蜂を刺激すると痛い目に遭う。そんな当たり前のことさえ知らないゆっくりは、あっという間に刺されて死ぬ。
蜂を刺激すると痛い目に遭う。そんな当たり前のことさえ知らないゆっくりは、あっという間に刺されて死ぬ。
「は、はちさん……あっちにいってね……でぐちはあっちだよ……! おねがいだよっ……!」
「で、で、で、でていくのぜっ……! はやくしないと、ま、まりさが、おこるのぜ、ぷくーするのぜっ……!」
「で、で、で、でていくのぜっ……! はやくしないと、ま、まりさが、おこるのぜ、ぷくーするのぜっ……!」
どうあがいても勝ち目のない相手を、明らかにおびえながら説得しようとするれいむとまりさ。
だが、小さな蜂は茎の先端に近いところにとまったまま動かない。ちょうどれいむから一番遠い、末っ子のおちびちゃんがぶらさがっているところだ。
そこにじっとしがみつき、腹部の先端を茎に押しつけている。しかししばらくすると満足したのか、プン、という羽音を立てて飛びたつ。
透明な羽をはばたかせて、夕空の中に飛び去っていった。
だが、小さな蜂は茎の先端に近いところにとまったまま動かない。ちょうどれいむから一番遠い、末っ子のおちびちゃんがぶらさがっているところだ。
そこにじっとしがみつき、腹部の先端を茎に押しつけている。しかししばらくすると満足したのか、プン、という羽音を立てて飛びたつ。
透明な羽をはばたかせて、夕空の中に飛び去っていった。
「ゆ……はちさん、どこかにいっちゃった……?」
「こ、これで、あんしんなのぜ……ゆっ、おちびたち、いつみてもゆっくりしてるのぜぇ……!」
「ゆぅっ、ほんとだよ……! おちびちゃん、ゆっくりしていってね……!」
「こ、これで、あんしんなのぜ……ゆっ、おちびたち、いつみてもゆっくりしてるのぜぇ……!」
「ゆぅっ、ほんとだよ……! おちびちゃん、ゆっくりしていってね……!」
肝心の蜂がいなくなると、ゆっくりしたおちびちゃんたちに見入り始め、ニタニタと笑いはじめる。
結局この日のことは、3分としないうちにすっかり忘れてしまった。
結局この日のことは、3分としないうちにすっかり忘れてしまった。
そうして、一週間ほど経った。
相変わらず豊かとはいえないがそれでもマシになった食糧事情のおかげで、実ゆっくりたちはみな標準的な赤ゆっくりサイズにまで成長している。
十分な成長を終えた赤ゆっくりが、自発的にぷるぷると震えはじめ、今にも茎から生まれ落ちようとしていた。
れいむはそれを感じとって、今にも泣き出しそうな、くしゃくしゃの笑顔をおちびちゃんたちに投げかけていた。
相変わらず豊かとはいえないがそれでもマシになった食糧事情のおかげで、実ゆっくりたちはみな標準的な赤ゆっくりサイズにまで成長している。
十分な成長を終えた赤ゆっくりが、自発的にぷるぷると震えはじめ、今にも茎から生まれ落ちようとしていた。
れいむはそれを感じとって、今にも泣き出しそうな、くしゃくしゃの笑顔をおちびちゃんたちに投げかけていた。
「おちびちゃんたちが、うまれそうだよ……! がんばってね! がんばってね……!!」
「ゆっ……ゆっ、ゆっ、ゆっ!」
「……ゆっくち! ゆっくちうみゃれりゅよ!」
「まりちゃ、ゆっくちうまれりゅのじぇ!!」
「ゆっ……ゆっ、ゆっ、ゆっ!」
「……ゆっくち! ゆっくちうみゃれりゅよ!」
「まりちゃ、ゆっくちうまれりゅのじぇ!!」
ぷるぷる。ぷちぷち。ぽとぽとぽと。
果たしてれいむの感じた通り、赤ゆっくりたちが誕生を宣言しながら、次々と落ちはじめた。
果たしてれいむの感じた通り、赤ゆっくりたちが誕生を宣言しながら、次々と落ちはじめた。
「ゆっくちうみゃれちゃよ! ゆっくちちていっちぇにぇ!」
「きゃわいいまりちゃが、ゆっくちうまれちゃのじぇ! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
「ゆっくちちちぇっちぇにぇ!」
「ゆっくちしゅるのじぇ!」
「ゆわぁぁ……おちびちゃんたち、ゆっくりしていってね……! ゆっくりしていってねぇぇっ……!」
「「「「ゆっくちしていっちぇにぇ!!」」」」
「きゃわいいまりちゃが、ゆっくちうまれちゃのじぇ! ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
「ゆっくちちちぇっちぇにぇ!」
「ゆっくちしゅるのじぇ!」
「ゆわぁぁ……おちびちゃんたち、ゆっくりしていってね……! ゆっくりしていってねぇぇっ……!」
「「「「ゆっくちしていっちぇにぇ!!」」」」
5匹の実ゆっくりのうち4匹が、無事に赤ゆっくりデビューを果たした。
耐えきれずにぼろぼろと涙をこぼして、れいむはそれでも幸せそうに微笑む。
番のまりさが帰ってきたら、全員で「ゆっくりしていってね!」の挨拶をしようと、れいむはゆっくりした決意をした。
そう、そのためにはもう1ゆん必要だ。まだ蔓の先端に、末っ子まりちゃのおちびちゃんが、生まれる瞬間を待っているのだ。
耐えきれずにぼろぼろと涙をこぼして、れいむはそれでも幸せそうに微笑む。
番のまりさが帰ってきたら、全員で「ゆっくりしていってね!」の挨拶をしようと、れいむはゆっくりした決意をした。
そう、そのためにはもう1ゆん必要だ。まだ蔓の先端に、末っ子まりちゃのおちびちゃんが、生まれる瞬間を待っているのだ。
「ゆっくりしていってね……! さいごのおちびちゃんがうまれたら、くきさんをむーしゃむーしゃして……ど、ど、どぼぢでおぢびじゃんがじんでるのおおおおお!!?」
その末っ子のおちびちゃんは、死んでいた。
たった今死んだばかりなのだろう、饅頭皮は黒ずみ始めたばかりであった。
まりさに生まれていたことが人目でわかるお帽子ごと、蔓に頭をくっつけたまま、あっという間に変色してしまった。
れいむは訳が分からなくなった。ついさっきまで幸せの絶頂にいた筈が、そのまま一気に突き落とされた気分だった。
あらん限りの声を――獣に見つかるからと普段は出さない大声を上げたれいむは、わけも分からぬままわんわんと泣きだした。
そうして気付いた。
たった今死んだばかりなのだろう、饅頭皮は黒ずみ始めたばかりであった。
まりさに生まれていたことが人目でわかるお帽子ごと、蔓に頭をくっつけたまま、あっという間に変色してしまった。
れいむは訳が分からなくなった。ついさっきまで幸せの絶頂にいた筈が、そのまま一気に突き落とされた気分だった。
あらん限りの声を――獣に見つかるからと普段は出さない大声を上げたれいむは、わけも分からぬままわんわんと泣きだした。
そうして気付いた。
「おでぃびじゃんがぁ……! れいぶのおぢびじゃんっ……ゆ……? おぢびじゃんに……は、はち、さん……?」
はちさんが。
這い出ている。
おちびちゃんの、黒ずんだ体から。
這い出ている。
おちびちゃんの、黒ずんだ体から。
「おきゃーしゃん? どーち……ゆんびゃぁぁ! いっぱい、いーっぱい、でてくりゅよぉぉ!!??」
「ま、まりちゃのいもーちょがぁぁぁ、はちしゃんになっちゃのじぇぇぇ!!?」
「ゆんやぁぁ!! ごあいよおおお!!!」
「ゆっぐじでぎにゃいいい!! ゆっぐじできにゃいよおぉぉおおお!!!」
「ま、まりちゃのいもーちょがぁぁぁ、はちしゃんになっちゃのじぇぇぇ!!?」
「ゆんやぁぁ!! ごあいよおおお!!!」
「ゆっぐじでぎにゃいいい!! ゆっぐじできにゃいよおぉぉおおお!!!」
呆然とする母親の視線の先に、おちびちゃんたちも気付いて悲鳴を上げはじめた。
黒ずんだ末っ子まりさの体は、ぽとりと地面に落ちた。その皮を喰い破って、黒い小さな蜂が、わらわらと這い出してくる。
羽が乾いていないのだろう、蜂たちはそのままてこてこと歩くと、れいむには目もくれずに、やがて巣の外へと去って行った。
黒ずんだ末っ子まりさの体は、ぽとりと地面に落ちた。その皮を喰い破って、黒い小さな蜂が、わらわらと這い出してくる。
羽が乾いていないのだろう、蜂たちはそのままてこてこと歩くと、れいむには目もくれずに、やがて巣の外へと去って行った。
「おぢび……おぢ………………どぼじでええええええ!!!」
後には我に返り泣き叫ぶれいむと、ゆんゆんと泣くおちびちゃんたちだけが残された。
このれいむたちからすれば突然降ってわいた悲劇は、たった1匹の寄生蜂が引き起こしたものだった。
コマユバチなどの寄生蜂は、蛾や蝶の幼虫に卵を産みつけ、幼虫の間はその体を食糧として成長することが知られている。後にユックリコマユバチと名付けられた例の蜂も、そのグループに属するうちの1匹だった。
蜂は植物型妊娠をしたゆっくりの茎に卵を産み、そこから孵化した幼虫が実ゆっくりを食い荒らしたのだ。実ゆっくりが成長しているように見えたのは、顔面内側の餡子を喰われて苦痛を訴えることが出来なくなった赤ゆっくりが過剰に親から餡子を吸い上げて、サイズを水増ししていたからだった。
コマユバチなどの寄生蜂は、蛾や蝶の幼虫に卵を産みつけ、幼虫の間はその体を食糧として成長することが知られている。後にユックリコマユバチと名付けられた例の蜂も、そのグループに属するうちの1匹だった。
蜂は植物型妊娠をしたゆっくりの茎に卵を産み、そこから孵化した幼虫が実ゆっくりを食い荒らしたのだ。実ゆっくりが成長しているように見えたのは、顔面内側の餡子を喰われて苦痛を訴えることが出来なくなった赤ゆっくりが過剰に親から餡子を吸い上げて、サイズを水増ししていたからだった。
(まりちゃ、ゆっくちしゅるのじぇ……ゆっくちちて、きゅーとにうまれりゅのじぇ……)
と生まれる日を夢見ていた実まりさ。
生まれた先にもゆっくりなどなかっただろうが、生まれる前にゆっくりできなくないことが起こるというのもまったく予想外だっただろう。
生まれた先にもゆっくりなどなかっただろうが、生まれる前にゆっくりできなくないことが起こるというのもまったく予想外だっただろう。
(ゆゆっ? まりちゃのあたまが、むーじゅむーじゅすりゅのじぇ……?)
(ゆ……ゆ? まりちゃのあんこしゃん、ゆっくち……ゆっぴゃああああ! まりちゃのしたしゃん、いちゃいいちゃいなのじぇぇ!!)
(ゆぴっ……ゆぴぃぃ……いちゃいのじぇぇ……どぼちて……ゆっ!? こ、こんどは、おかおもむーじゅむーじゅすりゅのじぇ……?)
(ゆっぴゃぁ! いちゃい! おもにおかおが、いちゃいんだじぇぇ! ……ま、まりしゃのにゃかに、なにかいりゅのじぇぇぇ!! ゆんやぁぁ!!)
(ゆ……ゆ? まりちゃのあんこしゃん、ゆっくち……ゆっぴゃああああ! まりちゃのしたしゃん、いちゃいいちゃいなのじぇぇ!!)
(ゆぴっ……ゆぴぃぃ……いちゃいのじぇぇ……どぼちて……ゆっ!? こ、こんどは、おかおもむーじゅむーじゅすりゅのじぇ……?)
(ゆっぴゃぁ! いちゃい! おもにおかおが、いちゃいんだじぇぇ! ……ま、まりしゃのにゃかに、なにかいりゅのじぇぇぇ!! ゆんやぁぁ!!)
寄生を果たした10個ほどの卵は、孵化すると真っ先に末っ子まりちゃの体に侵入し、表情や舌を動かす餡子を食いつぶした。
そこから先はやりたい放題だ。親から餡子を吸い上げてかさを増していく実まりさに対し、喰い過ぎて殺さないよう、しかし貪欲に餡子を食べ続けるだけ。
そこから先はやりたい放題だ。親から餡子を吸い上げてかさを増していく実まりさに対し、喰い過ぎて殺さないよう、しかし貪欲に餡子を食べ続けるだけ。
(ゆびゃぁぁ! たじゅけちぇぇ! いやなのじぇ! こわいのじぇぇ!)
(……いちゃいいちゃいいちゃい!! ゆっぴゃぁぁ! うごきゃないでぇぇ! まりちゃのあんこしゃんがぁぁあぁあ!!)
(ゆんやぁ……い、いやぢゃ、いやぢゃぁ……まりちゃ、ちにたくないのじぇ……いやにゃのじぇぇ……)
(いじゃい……いじゃ…………いじゃ…………たしゅけちぇぇ……)
(……いちゃいいちゃいいちゃい!! ゆっぴゃぁぁ! うごきゃないでぇぇ! まりちゃのあんこしゃんがぁぁあぁあ!!)
(ゆんやぁ……い、いやぢゃ、いやぢゃぁ……まりちゃ、ちにたくないのじぇ……いやにゃのじぇぇ……)
(いじゃい……いじゃ…………いじゃ…………たしゅけちぇぇ……)
とこんな経過をたどり、実まりさはおぞましいまでの苦痛のあまり、そのうち死を望むようになっていった。
(…………ちにたい……ちにたい…………ころちて……ころち…………ぴっ! …………――――)
羽化とともに餡子を掘り進みはじめた成虫が中枢餡を傷つけたことで、実まりさは何日もの苦しみから解放された。ようやく、死ねたのだ。
その蜂が、なぜ芋虫ではなく、ゆっくりの茎に卵を産みつけたのかは、誰にもわからない。
幼虫が餡子を食べて成長することができたのも、偶然、の一言で片付く要素が大きいのかもしれない。
ゆっくりたちにとって致命的なことは、その蜂の子供たちが、無事に外の世界に解き放たれてしまったということだった。
第二世代の蜂のうち、母バチの遺伝子を色濃く引き継いだ何匹かの若い蜂は、繁殖期になると親と同じように、ゆっくりの頭から生えた蔓めがけて襲いかかった。
幼虫が餡子を食べて成長することができたのも、偶然、の一言で片付く要素が大きいのかもしれない。
ゆっくりたちにとって致命的なことは、その蜂の子供たちが、無事に外の世界に解き放たれてしまったということだった。
第二世代の蜂のうち、母バチの遺伝子を色濃く引き継いだ何匹かの若い蜂は、繁殖期になると親と同じように、ゆっくりの頭から生えた蔓めがけて襲いかかった。
「れいむのおちびちゃん、ゆっくりしていってね……ゆゆっ!?」
「ゆうううっ……! やめてね、やめてねっ……! くきさんから、はなれてねっ……!」
「ゆうううっ……! やめてね、やめてねっ……! くきさんから、はなれてねっ……!」
蜂が止まっていることに気付くゆっくりがわずかにいた。
「おちびちゃんは……てんしさんだよっ……れいむの、さいごのきぼうっだよっ……!!」
「ゆっくりしていってねっ……ゆっくりしていってねぇぇっ……!」
「おなが……ずいだよ……でも、おぢびじゃんがいるよ…………ゆっぐりできるよ……」
「ゆっくりしていってねっ……ゆっくりしていってねぇぇっ……!」
「おなが……ずいだよ……でも、おぢびじゃんがいるよ…………ゆっぐりできるよ……」
気付かない馬鹿もその100倍はいた。
しかしいずれにせよ、ゆっくり側に抵抗の手段はなかった。空を飛ぶ素早い生き物に対して、ゆっくりができることは何一つない。
卵は茎から実ゆっくりへと移動し、餡子を食い荒らし、数を増やしていった。
多くの実ゆっくりが生まれる前に殺されて、競争相手のいないユックリコマユバチは爆発的に増殖を果たし、次々と犠牲者を出した。
しかしいずれにせよ、ゆっくり側に抵抗の手段はなかった。空を飛ぶ素早い生き物に対して、ゆっくりができることは何一つない。
卵は茎から実ゆっくりへと移動し、餡子を食い荒らし、数を増やしていった。
多くの実ゆっくりが生まれる前に殺されて、競争相手のいないユックリコマユバチは爆発的に増殖を果たし、次々と犠牲者を出した。
「なんでなの゛おぉおおぉおおっ……!? なんでぇぇっ……!!」
「どぼじで……どぼじでなの……どぼじで……」
「どぼじで……どぼじでなの……どぼじで……」
ところでだが、野生のゆっくりは群れをつくらない。
群れというのは、余裕のあるものがないものを助け、場合によっては助けられ、力を合わせて作っていくものである。精一杯その日暮らしを続けるゆっくりに、群れをつくるような力も余裕もありはしなかった。また余裕があったところで、ゆっくりは自分と、せいぜい自分の家族がゆっくりすることまでしか頭にない。そんな生き物が群れという社会を作れる筈もなかった。
群れがないということは、ゆっくりどうしで共有する知識はほとんどゼロに等しいということだ。
蜂から逃げろ。蜂の居ない所に住め。そんなことを理解するゆっくりも奇跡的にいたにはいたが、そんな情報がゆっくりたち全てに行き渡ることはなかった。
群れというのは、余裕のあるものがないものを助け、場合によっては助けられ、力を合わせて作っていくものである。精一杯その日暮らしを続けるゆっくりに、群れをつくるような力も余裕もありはしなかった。また余裕があったところで、ゆっくりは自分と、せいぜい自分の家族がゆっくりすることまでしか頭にない。そんな生き物が群れという社会を作れる筈もなかった。
群れがないということは、ゆっくりどうしで共有する知識はほとんどゼロに等しいということだ。
蜂から逃げろ。蜂の居ない所に住め。そんなことを理解するゆっくりも奇跡的にいたにはいたが、そんな情報がゆっくりたち全てに行き渡ることはなかった。
「れーみゅのいもーとがぁぁぁぁ!!」
「ま、まりちゃのいもーちょ!! どーなっちぇるのじぇぇぇ!?」
「ま、まりちゃのいもーちょ!! どーなっちぇるのじぇぇぇ!?」
奇妙なことに、蜂が卵を産みつけるのは植物型妊娠の蔓のうち、先端部に実った実ゆっくりの直上――いわゆる末っ子のおちびちゃんの付近に限られた。
後に人間が研究された際に、親ゆっくりから見つかりにくいとか、その位置が一番卵を産みつけやすいとか、そんな説がまことしやかに囁かれた。
その真偽はともかく、この蜂は蔓に生えた実ゆっくりを全て喰い尽く訳では無かった。
結果として、この蜂の餌食となった場合、全てのおちびちゃんが生まれた直後に、末っ子の死を目の当たりにすることになった。
後に人間が研究された際に、親ゆっくりから見つかりにくいとか、その位置が一番卵を産みつけやすいとか、そんな説がまことしやかに囁かれた。
その真偽はともかく、この蜂は蔓に生えた実ゆっくりを全て喰い尽く訳では無かった。
結果として、この蜂の餌食となった場合、全てのおちびちゃんが生まれた直後に、末っ子の死を目の当たりにすることになった。
「れーみゅ……ゆっぐじじだい……ゆっぐ……ゆぴっ! あ、あ、ありしゃん!!」
「こっちにくるんじゃにゃいのじぇぇ! いやなのじぇ! ゆっぴゃぁああん、むししゃんごあいのじぇええ!!」
「こっちにくるんじゃにゃいのじぇぇ! いやなのじぇ! ゆっぴゃぁああん、むししゃんごあいのじぇええ!!」
しばらくすると、ゆっくりたちはおちびちゃんの頃から、生きた昆虫、特に黒い虫を過剰なまでに恐れるようになった。
成体になって狩りに苦しむより早く、おちびちゃんとして飢えに苦しむよりもさらに前――生まれた瞬間に見せつけられる死は、ゆっくりたちに自分たちがどれだけあっけなく死ぬ存在なのか、他の生き物に食い物にされるのかを学ばせるのに一役買ったのだ。
末っ子おちびちゃんの死にざまは、赤ゆっくりたちにとって鮮烈なまでのトラウマになり、常に恐怖を与え続けたのだ。
成体になって狩りに苦しむより早く、おちびちゃんとして飢えに苦しむよりもさらに前――生まれた瞬間に見せつけられる死は、ゆっくりたちに自分たちがどれだけあっけなく死ぬ存在なのか、他の生き物に食い物にされるのかを学ばせるのに一役買ったのだ。
末っ子おちびちゃんの死にざまは、赤ゆっくりたちにとって鮮烈なまでのトラウマになり、常に恐怖を与え続けたのだ。
「あ……あ……ありずのどがいばなおぢびぢゃんがぁあああぁぁああ!!!」
「むぎゅ…………え゛っ、エ゛レエ゛レエ゛レエ゛レ……」
「むぎゅ…………え゛っ、エ゛レエ゛レエ゛レエ゛レ……」
喰われるのは餡子だけに止まらなかった。例の蜂から枝分かれした亜種は、特にゆっくりありすや、ゆっくりぱちゅりーの生えた蔓を狙い撃ちにした。
我が子から黒い蜂が這いだしてくるというあまりにもアレな光景に、おちびちゃんに寄生された親ぱちゅりーは例外なくクリームを吐きだして死に、死体は親子仲良くクリームの海に沈んだ。
我が子から黒い蜂が這いだしてくるというあまりにもアレな光景に、おちびちゃんに寄生された親ぱちゅりーは例外なくクリームを吐きだして死に、死体は親子仲良くクリームの海に沈んだ。
それが契機であったかのように、ゆっくりを取り巻く生態系は変わった。
「おぢびじゃんが……おぢびじゃんが、はえざんになっぢゃっだのぜええぇぇえぇえ!!???」
「ゆ゛ぅうっ!? どぼじでおぢびじゃんがら、いもむじざんがででぐるのぉお゛おぉぉおお!!?」
「お……おちびじゃんがら……、きのこさん……?」
「ゆ゛ぅうっ!? どぼじでおぢびじゃんがら、いもむじざんがででぐるのぉお゛おぉぉおお!!?」
「お……おちびじゃんがら……、きのこさん……?」
そのうち蜂だけではなく、様々な生き物が、ゆっくりに寄生するべく登場しはじめた。
冬虫夏草のように、ある日突然ゆっくりを死に至らしめる寄生虫は、本ゆんはもちろん、それを見るゆっくりたちをも恐怖のどん底に突き落としていった。
冬虫夏草のように、ある日突然ゆっくりを死に至らしめる寄生虫は、本ゆんはもちろん、それを見るゆっくりたちをも恐怖のどん底に突き落としていった。
不思議なことにこれらの新種は、新種とはとても思えないほどの短期間……ほんの数十年ほどの間に、次々と姿を現した。
進化とは本来もっと長い、とてつもなく長い時間をかけて起こるはずのものである。
それがなぜ、しかもゆっくりに関わる種ばかりが、これほどまでに高速の進化を遂げて行ったのか。
人間の研究者たちも、この現象にはほとほと頭を悩ませたらしい。
進化とは本来もっと長い、とてつもなく長い時間をかけて起こるはずのものである。
それがなぜ、しかもゆっくりに関わる種ばかりが、これほどまでに高速の進化を遂げて行ったのか。
人間の研究者たちも、この現象にはほとほと頭を悩ませたらしい。
「ゆっくりが自分たちを生態系の最底辺だと自覚し、その認識を思い込みの力が強化した結果、他の種にまで影響を与えた……っていう可能性があるんじゃないか?」
ある虐待愛好家は、同好の士にそんなことを言って納得させたという。
「まー、そんなのどうでもいいけどなぁ」
「やべでぐだざい!! ぼうやべでぐだざい!!! ぞれだけは!!!!! おでがい!!!!!!」
「最初の威勢はどうしたんだ? ほらほら、『どれいはあまあまをもってきてさっさとしぬのぜ!』だっけ? 言ってみなって! もう一回さぁ!」
「ごべんだざい!!! ごべんだざいごべんだざいごべんだざい!!!! ばりざがどれいになりばず!! なりばずがらあ゛ああ!!」
「……ゆぴっ? …………ぴっ! ぴぃぃっ!!」
「ああ゛ああああ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!! ゆ゛あああ゛あ゛あ゛あああああああああ!!!!!」
「やべでぐだざい!! ぼうやべでぐだざい!!! ぞれだけは!!!!! おでがい!!!!!!」
「最初の威勢はどうしたんだ? ほらほら、『どれいはあまあまをもってきてさっさとしぬのぜ!』だっけ? 言ってみなって! もう一回さぁ!」
「ごべんだざい!!! ごべんだざいごべんだざいごべんだざい!!!! ばりざがどれいになりばず!! なりばずがらあ゛ああ!!」
「……ゆぴっ? …………ぴっ! ぴぃぃっ!!」
「ああ゛ああああ゛あ゛あ゛あ゛あああああああ!!!! ゆ゛あああ゛あ゛あ゛あああああああああ!!!!!」
泣き叫び許しを乞うまりさの額から生えた可愛い可愛いおちびちゃんに、きゅーとな蜂の子を植えつけ続けるという、流行りの虐待にチャレンジしながら。
「……ゆっ……ゆっ…………おみじゅ…………お、み、じゅ……どごなのじぇぇ……」
夜の森を、子まりさが這っている。
汚い汚い、どうしてこんなに汚れられるのかというほど汚い子まりさだ。
しかしながら、このご時世にしては栄養状態は良好で、痩せ方はわずかに頬がこけている程度。
親ゆっくりが懸命に狩りを続けた結果、子ゆっくりまで育つことのできた幸運な子まりさだった。
汚い汚い、どうしてこんなに汚れられるのかというほど汚い子まりさだ。
しかしながら、このご時世にしては栄養状態は良好で、痩せ方はわずかに頬がこけている程度。
親ゆっくりが懸命に狩りを続けた結果、子ゆっくりまで育つことのできた幸運な子まりさだった。
子まりさは必死の形相で、飲み水を求めて這いずっていた。そのこと自体は問題はない。問題は今が真夜中だということだ。
夜間はおろか昼までさえ、勝手な外出は両親に禁止されている。
子まりさも親ゆっくりの言いつけを、これまで忠実に守ってきた。そう教育されたというより、それができない姉妹から順番に死んでいったという方が近いが。
親ゆっくりたちもこの子まりさを、残された最後のおちびちゃんを、時に厳しく、しかし大事に、大事に育ててきた。
夜間はおろか昼までさえ、勝手な外出は両親に禁止されている。
子まりさも親ゆっくりの言いつけを、これまで忠実に守ってきた。そう教育されたというより、それができない姉妹から順番に死んでいったという方が近いが。
親ゆっくりたちもこの子まりさを、残された最後のおちびちゃんを、時に厳しく、しかし大事に、大事に育ててきた。
「おみじゅ…………おみじゅ…………のむのじぇ……ごーぐごーぐ、じゅるのじぇ…………」
しかし子まりさは、ここに来て突然、言いつけを破った。
増長してつけ上がったのではない。「まりちゃはしゃいっきょうなのじぇ!」などとほざくゆっくりは、その時点である意味希少種と同義になる。街中でももう、虐待用ゆっくりショップや、虐待お兄さんたちの「養殖」によってしか見つけることはできないだろう。
増長してつけ上がったのではない。「まりちゃはしゃいっきょうなのじぇ!」などとほざくゆっくりは、その時点である意味希少種と同義になる。街中でももう、虐待用ゆっくりショップや、虐待お兄さんたちの「養殖」によってしか見つけることはできないだろう。
子まりさはぎょろぎょろと、血走るように濁った目を左右に向けて、必死に水を探している。
表情はあまりの渇きに切迫しきっていた。親の言いつけを破ろうとするような、破らざるを得なくなるような、想像を絶する渇きに襲われているのだ。
どうしてこんなにのどが渇くのか。寝る前にちゃんと、ごーくごーくしたはずなのに。
そんなことを考えられないほど苦しみ、今にも死にそうな声を上げながら、子まりさは必死にずりずりと這っていた。
表情はあまりの渇きに切迫しきっていた。親の言いつけを破ろうとするような、破らざるを得なくなるような、想像を絶する渇きに襲われているのだ。
どうしてこんなにのどが渇くのか。寝る前にちゃんと、ごーくごーくしたはずなのに。
そんなことを考えられないほど苦しみ、今にも死にそうな声を上げながら、子まりさは必死にずりずりと這っていた。
「おみじゅ……おみじゅ……おみじゅ……!!!」
無我夢中で這っていたが、子まりさは幸運にも、おうちの近くにある池にたどりついた。
言うまでも無く濡れすぎると死ぬゆっくりにとって、水辺は飲み水のある場所という以上に、事故の多発地帯という意味合いが強い。
言うまでも無く濡れすぎると死ぬゆっくりにとって、水辺は飲み水のある場所という以上に、事故の多発地帯という意味合いが強い。
「みじゅ!!! み!!!!! じゅ!!!!!!!」
普段は何が有っても近づくなと厳命されているその場所に、子まりさはしかし飛ぶように跳ねていった。
「ごぼぼぼご!!! ごぼ!! ごーぐ、ごーぐ!!! ごーぐごーぐごーぐごーぐ!! ごーぐごーぐごーぐ!!!!!」
顔はおろか底部まで水に浸し、子まりさは必死にごーくごーくを始める。
ごーくごーくしゅるのじぇ、などと言っている余裕もないのが納得の、すさまじい飲みっぷりだ。
水を体内に取り込み、取り込み続ける。
子まりさが水を飲むのを止めたのは、そろそろ体内餡がお汁粉うんうんになって腹を下すのでは、という段にまで飲み続けたときだった。
ごーくごーくしゅるのじぇ、などと言っている余裕もないのが納得の、すさまじい飲みっぷりだ。
水を体内に取り込み、取り込み続ける。
子まりさが水を飲むのを止めたのは、そろそろ体内餡がお汁粉うんうんになって腹を下すのでは、という段にまで飲み続けたときだった。
「ごーぐごーぐ…………ぴっ!」
子まりさは刺すような痛みに悲鳴を上げた。
痛みはあにゃるからはじまり、あっという間に全身に飛び火し広がっていった。
痛みはあにゃるからはじまり、あっという間に全身に飛び火し広がっていった。
「ぴっ……ぴ……ゆぴゃぁあああぁぁあぁ!! あぁああっぁぁあっぁああああぁ!! あっがあぁあぁぁっぁあっあああ!!!」
突然始まった引き裂かれるような激痛に、子まりさはたまらず叫んだ。
焼かれているように熱い。燃えるように熱くて痛い! 熱い! 痛い! 痛い! ゆっくりにとって毒でもある水に体を浸しているにもかかわらず、子まりさは出鱈目に跳ね回った。両目とも限界を超えて見開き、もんどりうって苦しんでいる。
焼かれているように熱い。燃えるように熱くて痛い! 熱い! 痛い! 痛い! ゆっくりにとって毒でもある水に体を浸しているにもかかわらず、子まりさは出鱈目に跳ね回った。両目とも限界を超えて見開き、もんどりうって苦しんでいる。
「ゆぎょっ!!??」
と、苦しみ暴れる子まりさのあにゃるが、ぼこっとできものでもできたように突然膨れた。
痛みのあまり脱糞しようというのか?
正解だが、不正解だ。脱糞は脱糞でも子まりさのうんうんが圧迫しているのではない。
いままさに、子まりさのあにゃるからこんにちは!しはじめたのは、なるほど確かに、うんうんであった。
しかしながら、うんうんではなかった。
痛みのあまり脱糞しようというのか?
正解だが、不正解だ。脱糞は脱糞でも子まりさのうんうんが圧迫しているのではない。
いままさに、子まりさのあにゃるからこんにちは!しはじめたのは、なるほど確かに、うんうんであった。
しかしながら、うんうんではなかった。
「ぼっ! ……びょっ! ボっぎょおぉぉおおぼぉぉぉおおぉおぉぉおっぉおおおおお!!!!!」
もともと水を吸いはじめており、脆くなっていたこともあって、内圧に耐えかねた子まりさのあにゃるは無残にも引きちぎられた。
中から始めは勢いよく、それからはじわじわと、餡子が飛び出し漏れ出す。
中から始めは勢いよく、それからはじわじわと、餡子が飛び出し漏れ出す。
そのお汁粉うんうんの中に、白いヒモのようなものが蠢いていた。
まるで一本に伸ばしきったハンガーのような奇妙なそれは、脱糞された多量の餡子の中から首をもたげ、ひょろひょろと頭を振り回しはじめる。
間違いなく、生き物であった。
ハリガネのように細長いそれは、その形の通りハリガネムシと呼ばれる種によく似ている。
まるで一本に伸ばしきったハンガーのような奇妙なそれは、脱糞された多量の餡子の中から首をもたげ、ひょろひょろと頭を振り回しはじめる。
間違いなく、生き物であった。
ハリガネのように細長いそれは、その形の通りハリガネムシと呼ばれる種によく似ている。
この子まりさの親は懸命に狩りを続けてきた、と述べた。
その中にも、普通のゆっくりでは見つけられないような、ちょうど死にかけていた昆虫が――寄生蜂を想起しない『食べられる』虫が、ほんのわずかの量ながら含まれてはいた。子まりさにとっての不運は、子まりさが食べた今にも死にそうなその虫のはらわたに、恐るべき生き物が潜んでいたということだ。
一週間ほどを子まりさの体の中で過ごし、のびのびと育ったその虫は、子まりさの水分を過剰なまでに吸い上げた。
結果、強烈な渇きに苦しめられた子まりさは、こうしてわざわざ、虫を水中に還す手伝いを果たしたのだ。
自分の命と引き換えに。
その中にも、普通のゆっくりでは見つけられないような、ちょうど死にかけていた昆虫が――寄生蜂を想起しない『食べられる』虫が、ほんのわずかの量ながら含まれてはいた。子まりさにとっての不運は、子まりさが食べた今にも死にそうなその虫のはらわたに、恐るべき生き物が潜んでいたということだ。
一週間ほどを子まりさの体の中で過ごし、のびのびと育ったその虫は、子まりさの水分を過剰なまでに吸い上げた。
結果、強烈な渇きに苦しめられた子まりさは、こうしてわざわざ、虫を水中に還す手伝いを果たしたのだ。
自分の命と引き換えに。
「ゅ゛…………………………ゅ ………………………………ブ……………………」
やがて中枢餡が水に攫われると同時に、子まりさは動きを止めた。子まりさの周囲にいくつも転がっている、同じ運命をたどった同族の遺骸には、最期まで気付かないままであった。
こうして水中に帰った虫たちは、交尾をして卵を産み、次の世代へと命を引き継いでいく。
そうして次のターゲットへと入りこみ、再び我が子に命を託していくのだ。
こうして水中に帰った虫たちは、交尾をして卵を産み、次の世代へと命を引き継いでいく。
そうして次のターゲットへと入りこみ、再び我が子に命を託していくのだ。
ユックリコマユバチの出現から、50年ほどが経った現在。
今や人間や獣、昆虫に寄生するものと同じような種までもが、ゆっくりたちにもその矛先を向けている。
先程のハリガネムシに似た種のように、寄生形態にも複雑なものも増えた。ありとあらゆる形で、ゆっくりたちは寄生虫に利用されている。
今や人間や獣、昆虫に寄生するものと同じような種までもが、ゆっくりたちにもその矛先を向けている。
先程のハリガネムシに似た種のように、寄生形態にも複雑なものも増えた。ありとあらゆる形で、ゆっくりたちは寄生虫に利用されている。
そんな中、虫どうしの間で競争も起こった。ゆっくりの数にも限りがあり、奪い合いになったのだ。
その結果、寄生虫たちの間にも住み分けが起こり、獲物となる種の調整がなされていった。このほど、それがようやく落ち着きつつある。
寄生虫たちが形成する生態系は、ひとつの極相に達しようとしていた。
その結果、寄生虫たちの間にも住み分けが起こり、獲物となる種の調整がなされていった。このほど、それがようやく落ち着きつつある。
寄生虫たちが形成する生態系は、ひとつの極相に達しようとしていた。
ゆっくりの数は減少を続けたが、今は底を見た状態だ。
ゆっくりの数が不足すれば、それに寄生したり、捕食する生き物の数も減っていくからだ。ゆっくり同士の間でも、競争率は当然落ちていく。
するとゆっくりたちはまた、少しずつ増え始める。するとこれ幸いとばかりに、次々と食い荒らされていく。延々と、それが繰り返される。
ぐるぐると回るサイクルが、ゆっくりたちに今後の繁栄を許すことはない。生かさず殺さずの、まさに生き地獄であった。
ゆっくりの数が不足すれば、それに寄生したり、捕食する生き物の数も減っていくからだ。ゆっくり同士の間でも、競争率は当然落ちていく。
するとゆっくりたちはまた、少しずつ増え始める。するとこれ幸いとばかりに、次々と食い荒らされていく。延々と、それが繰り返される。
ぐるぐると回るサイクルが、ゆっくりたちに今後の繁栄を許すことはない。生かさず殺さずの、まさに生き地獄であった。
ゆっくりたちがこの悪循環から抜け出すことはできない。
存在意義でもあるゆっくりを捨て、生きることを第一とし、他の個体と力を合わせようとしない限り、ゆっくりたちの立ち位置は変わらないだろう。
つまりその機会は、永遠に訪れないのだ。
存在意義でもあるゆっくりを捨て、生きることを第一とし、他の個体と力を合わせようとしない限り、ゆっくりたちの立ち位置は変わらないだろう。
つまりその機会は、永遠に訪れないのだ。
ゆっくりはこれからも、最底辺の生き物であり続ける。
>おしまい<
明けましておめでとうございます。
ネタがネタなのでグロくなってしまいました。不快になってしまった方は申し訳ありません。
お読みいただきまして有難うございました。寒さに気をつけてお過ごしください。
ネタがネタなのでグロくなってしまいました。不快になってしまった方は申し訳ありません。
お読みいただきまして有難うございました。寒さに気をつけてお過ごしください。
【書いたもの】
anko4019 実験お姉さんの休日
anko4059 雪国とゆっくり
anko4065 音
anko4168 ゆっくり食べようえだまりちゃ
anko4462 冬のゆっくりキリギリス
anko4019 実験お姉さんの休日
anko4059 雪国とゆっくり
anko4065 音
anko4168 ゆっくり食べようえだまりちゃ
anko4462 冬のゆっくりキリギリス
アップしたはいいけど後になってコレジャナイ感が漂ってきたりして消してしまったものもこの中に2、3あります。
これからはしません。すみませんでした。
これからはしません。すみませんでした。