ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4634 おかざりきり
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『おかざりきり』 61KB
観察 考証 差別・格差 飾り 日常模様 群れ 赤ゆ 独自設定 細かいこたぁいいよね。
観察 考証 差別・格差 飾り 日常模様 群れ 赤ゆ 独自設定 細かいこたぁいいよね。
「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!」
「やめちぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やめちぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
季節は春。越冬を終わらせてベビーラッシュを迎えたある山間のゆっくりの群れに、多くの悲鳴がこだましていた。
「やれやれなのぜ……」
そのなかをゆっくりと長まりさが歩んでいた。
「おさ! はやく! はやくなんだねー!」
幹部ちぇんがまりさを急かす。
ゆう、と一息つくと、長まりさは声がする巣の中でも一番手近なものに潜り込んだ。
ゆう、と一息つくと、長まりさは声がする巣の中でも一番手近なものに潜り込んだ。
「ゆっくり邪魔するのぜ」
通常ゆっくりの“おうち”に入るときはあいさつをしなければならないのであるが、今は急を要する。
家主の許可も得ず、けっかいっをのけて大きめな体でのっそりと家に入り込んだ。
家主の許可も得ず、けっかいっをのけて大きめな体でのっそりと家に入り込んだ。
「「ゆっ?」」
家主のまりさとれいむ夫妻の目がこちらを向く。
果たしてそこには、長まりさが想像した通りの情景があった。
果たしてそこには、長まりさが想像した通りの情景があった。
「ちゅぶれりゅぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「いぢゃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「いぢゃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ピンポン球大の赤れいむが、バレーボール大のまりさによって今にも潰されようとしていた。
その奥にはこの様子に怯える2,3ゆ程度の赤ゆっくりと、それとは別に親れいむにおさげを噛み上げられ、泣きわめいている赤まりさが居た。
その奥にはこの様子に怯える2,3ゆ程度の赤ゆっくりと、それとは別に親れいむにおさげを噛み上げられ、泣きわめいている赤まりさが居た。
「何してるのぜ!」
「ゆ!? れいむは、おかざりがゆっくりしてないげすをせいっさいしていただけだよ!」
「そうなんだよおさ! むれのおきてにそむくようなまねはしてないよ!」
「ゆ!? れいむは、おかざりがゆっくりしてないげすをせいっさいしていただけだよ!」
「そうなんだよおさ! むれのおきてにそむくようなまねはしてないよ!」
そう言われ長まりさは親まりさが潰そうとしてい赤まりさと、親れいむが加えている、赤れいむにそれぞれ目を向ける。
赤れいむにはリボンが4分の1ほど囓られたように欠けがあり、赤まりさと言ったら、山高帽の頭の部分がバッサリと切れていた。
赤れいむにはリボンが4分の1ほど囓られたように欠けがあり、赤まりさと言ったら、山高帽の頭の部分がバッサリと切れていた。
「ゆげ……」
冷静な長まりさですら顔をしかめ、餡子を戻しそうになるほどのゆっくりしてなさ具合だ。並のゆっくりであるこの夫妻が耐えられるわけもなかった。
「ゆ! おさ! ゆっくりできないゆっくりはゆっくりじゃないんだよ! だからゆっくりごろしにはならないんだよ! ゆっくりりかいしてね」
思わず肯首してしまいそうになるのをぐっとこらえ、長まりさは首を横に振ってそれを否定する。
「ど、どうして?」
「きまってるんだぜ。おかざりがゆっくりしてなくとも、ゆっくりごろしはゆっくりできないんだぜ」
「きまってるんだぜ。おかざりがゆっくりしてなくとも、ゆっくりごろしはゆっくりできないんだぜ」
ぎょっとした顔をする夫妻。その長の冷静な言葉に、まだ長が何者かということすらわかっていないお飾りの欠けた二ゆの赤ゆも、何か希望の光を見たような顔で長まりさを見た。
「ゆっくりできないゆっくりだろうとも——」
縋るような目を向けてくる赤ゆに目を移すと、
「えいえんにゆっくりさせるとおうちがくさいくさいなんだぜ」
吐き捨てるようにそういった。
「「ゆ……ぴっ?」」
お飾りの欠けた赤ゆの顔の餡がみるみるうちに引いてくる。
それとは逆に、ゆっくりびっくりとばかりに両親はぽかんと口を開けてしきりに顔を見合わせ、ぱっと尊敬と親愛の笑顔を長まりさに向けた。
それとは逆に、ゆっくりびっくりとばかりに両親はぽかんと口を開けてしきりに顔を見合わせ、ぱっと尊敬と親愛の笑顔を長まりさに向けた。
「ゆっ! さすがはおさだよ! まりさ、あぶなくおうちをくさいくさいにするところだったよ!」
「かんがえがたりなさすぎるのだぜ。おうちはきちょうなのぜ。くさいくさいでだめにするとかえがきかないのぜ。
そのうえいちどえいえいんにゆっくりしたゆっくりがでるとむれのゆっくりぷれいすまでくさいくさいでたいへんなのぜ」
「かんがえがたりなさすぎるのだぜ。おうちはきちょうなのぜ。くさいくさいでだめにするとかえがきかないのぜ。
そのうえいちどえいえいんにゆっくりしたゆっくりがでるとむれのゆっくりぷれいすまでくさいくさいでたいへんなのぜ」
呆れたように長まりさが言い放つ。群れの一員である両親への眼差しは、世話のやける子供を見るかのごとく温かい。
「じゃあ、おそとでえいえんにゆっくりさせるね!」
「ばかなのぜ。おそとっていっても、かりをするばしょや、みんなでゆっくりするばしょなのぜ。
どこでころしてもむれのめいわくなのぜ」
「ばかなのぜ。おそとっていっても、かりをするばしょや、みんなでゆっくりするばしょなのぜ。
どこでころしてもむれのめいわくなのぜ」
“殺す”そう穏当でない言葉を言い放った視線の先には、お飾りの欠けた赤ゆがいる。
その視線は、ゴミかうんうんを見ているかのような、実にゆっくりできない眼差しであった。
その視線は、ゴミかうんうんを見ているかのような、実にゆっくりできない眼差しであった。
「お……おしゃ……まりちゃ……まりちゃ……」
「ゆう……。ゆっくちちちぇね! ゆっくちちちぇぇ!」
「うるさいのぜ!」
「ゆう……。ゆっくちちちぇね! ゆっくちちちぇぇ!」
「うるさいのぜ!」
長まりさの恫喝にゆひぃ、と赤ゆが縮こまる。
「ゆう……。おさのゆうとおりだよ……。」
「でも……。こんなゆっくりできないゆっくりがおうちにいても……」
「でも……。こんなゆっくりできないゆっくりがおうちにいても……」
もはやお飾りの欠けた赤ゆたちは非ゆっくり症を発症するかの勢いで消耗していた。
親から向けられるゆっくりできない視線、長からのゴミを見るかのような視線。
それらが相まって、彼女たちは生まれ落ちる前に見た希望も夢も、この世界には無いことを否応無しに思い知らされていた。
親から向けられるゆっくりできない視線、長からのゴミを見るかのような視線。
それらが相まって、彼女たちは生まれ落ちる前に見た希望も夢も、この世界には無いことを否応無しに思い知らされていた。
「なんとかこのおさがかんがえてみるのぜ。
それまでぜったいにえいえんにゆっくりさせちゃだめなのぜ」
「「ゆう……」」
それまでぜったいにえいえんにゆっくりさせちゃだめなのぜ」
「「ゆう……」」
両親ゆっくりは自らが生んだゴミに憂鬱な気分になる。
ゆっくりはお飾りが欠けたゆっくりを非常に忌み嫌う。
後天的なものならまだ同情の余地があるがそれでも同族として扱われないほどの苛烈な差別に見舞われる、
先天的なものとなるとそれは人間の想像を絶するほどのものとなる。
彼女たちの弁によると、生理的嫌悪感という言葉では済まないものがあるのだそうだ。
「えいえんにゆっくりさせさえしなければ。どうしてもかまわんのぜ」
「「ゆう?」」
ゆっくりはお飾りが欠けたゆっくりを非常に忌み嫌う。
後天的なものならまだ同情の余地があるがそれでも同族として扱われないほどの苛烈な差別に見舞われる、
先天的なものとなるとそれは人間の想像を絶するほどのものとなる。
彼女たちの弁によると、生理的嫌悪感という言葉では済まないものがあるのだそうだ。
「えいえんにゆっくりさせさえしなければ。どうしてもかまわんのぜ」
「「ゆう?」」
物分りの悪いしょうがない奴だ、そういった顔で一つため息を付いて、長まりさは言葉をつなげた。
「いったままなのだぜ。えいえんにゆっくりさせさえしなければ、どうしようとかまわんのだぜ。
いっそ、うんうんどれいにしても、なにしてもいいのだぜ」
いっそ、うんうんどれいにしても、なにしてもいいのだぜ」
淡々と、冷静に、長まりさは両親に福音を、二ゆの赤ゆに絶望を与えた。
お飾りの欠けた二ゆは引きつった顔であたりを見回す。
お飾りの欠けた二ゆは引きつった顔であたりを見回す。
「お、おきゃあ……しゃ……」
「おちょーしゃ……」
「おちょーしゃ……」
両親の笑顔は、一時間にも満たないゆん生の中で見たこともないほどゆっくりしたものであった。
ただその笑顔は、お飾りのない二ゆの赤ゆに、何かとてもゆっくりできないものを感じさせていた。
ただその笑顔は、お飾りのない二ゆの赤ゆに、何かとてもゆっくりできないものを感じさせていた。
□ □ □
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐじゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ゆっぐぢぃぃぃぃぃぃぃ!」
「おじびじゃん! あんごばいじゃだべぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ぼっじょ……。びゅっぐじ……」
「ぐじゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ゆっぐぢぃぃぃぃぃぃぃ!」
「おじびじゃん! あんごばいじゃだべぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ぼっじょ……。びゅっぐじ……」
「きりがないんだぜ……」
調べた所,越冬後にすっきりして殆どの世帯が赤ゆを作り、すべての世帯の赤ゆにお飾りの欠けたゆっくりが含まれていた。
不思議なことに全部、という例は存在せず、三ゆのうちの一ゆであるとか,
一部お飾りの欠けた赤ゆが生まれた、という状況であった。
不思議なことに全部、という例は存在せず、三ゆのうちの一ゆであるとか,
一部お飾りの欠けた赤ゆが生まれた、という状況であった。
時すでに遅く、すでに生まれた直後に潰してしまい、巣の中が死臭で充満してしまった世帯が少なくない数出ていた。
その上そのゆっくりできない匂いに吐餡死してしまった五体満足な赤ゆっくりも馬鹿にならない数に登る。
その上そのゆっくりできない匂いに吐餡死してしまった五体満足な赤ゆっくりも馬鹿にならない数に登る。
「ゆ! ゆっくりできないゆっくりでも、ころすのはだめなんだぜ。ころさなきゃなにをしてもいいのぜ。みんなにそうつたえるのぜ!」
「わかったんだよー」
「わかったんだよー」
ぼむぼむと跳ねながら幹部ちぇんが次々に群れのゆっくりに命令を伝達していく。
その会話の切れ端に、同じ言葉が何回も出てきているのを、長まりさは聞き逃さなかった。
その会話の切れ端に、同じ言葉が何回も出てきているのを、長まりさは聞き逃さなかった。
「“おかざりきり”だよ……」
「“おかざりきり”がでたんだよ……」
「“おかざりきり”がでたんだよ……」
“お飾り切り”この群れに伝わる言い伝えのようなものである。
赤ゆがたくさん一度に生まれるとき、その内かなりの数の赤ん坊のお飾りに、ゆっくりが許容できないほどの傷ができるという。
赤ゆがたくさん一度に生まれるとき、その内かなりの数の赤ん坊のお飾りに、ゆっくりが許容できないほどの傷ができるという。
「……馬鹿馬鹿しいのぜ」
そうは言うものの、長まりさはこの事態にどうすべきか頭を悩ませていた。
この長まりさは、先代の長を“ゆっくりをゆっくりさせないゆっくり”として追い出し、就任したという経緯を持つ。
それだけに、群れのゆっくりがゆっくりできるためにはどうしたら良いか常に考えを巡らせているのだった。
幸い、長まりさはゆっくりにしては非常に優秀であり、並のゆっくりなら穴を掘って、
埋めるとかれみりゃに食わせるなどという短絡的な手をとるところを、中枢餡で既に却下していた。
この長まりさは、先代の長を“ゆっくりをゆっくりさせないゆっくり”として追い出し、就任したという経緯を持つ。
それだけに、群れのゆっくりがゆっくりできるためにはどうしたら良いか常に考えを巡らせているのだった。
幸い、長まりさはゆっくりにしては非常に優秀であり、並のゆっくりなら穴を掘って、
埋めるとかれみりゃに食わせるなどという短絡的な手をとるところを、中枢餡で既に却下していた。
「あなをほるにはかずがおおいんだぜ……。れみりゃにくわせたら……。れみりゃがふえてゆっくりできなくなるんだぜ……」
幹部ちぇんに声をかけて、長まりさは今日の予定を変更して、群れの周りを見まわることにした。
「てきとうながけさんや、あなさんがあればちょうどいいのだぜ……」
一応、そういった場所を知っているといえば知っていた。
しかしそこまではやや遠く、ゆっくりできない赤ん坊を連れて行くにはいささか大変な距離であった。
しかしそこまではやや遠く、ゆっくりできない赤ん坊を連れて行くにはいささか大変な距離であった。
「ゆん……」
群れを外れ、狩り場を外れ、うら寂しい川が流れる谷間に出てゆうとため息を付いた
「かわさんにながすのかぜ? ゆう……。それもきけんなのだぜ」
川は群れの水場がであるが、付近はゆっくりにとって危険なゴツゴツした岩場である。
ご~くご~くプレイスに行ける安全なルートは限られており、大人以外は立ち入ってはならないという掟が存在する。
そこに赤ゆを連れて行くというのはすこし危険過ぎた。
それに、群れの水場からゆっくりを流すというのも心情的にためらわれる。
ご~くご~くプレイスに行ける安全なルートは限られており、大人以外は立ち入ってはならないという掟が存在する。
そこに赤ゆを連れて行くというのはすこし危険過ぎた。
それに、群れの水場からゆっくりを流すというのも心情的にためらわれる。
「ゆう……」
弱った。最適解がない。いっそ何とかして穴を掘るか。
しかし春先で皆狩りに育児に忙しい。まだまだ自然の実りは少なく、余裕が出るまでには赤ゆは成体になってしまうだろう。
川辺での~びの~びしながらそのように考えを巡らせていると、いつの間にか川向うに、一ゆんのれいむが居た。
しかし春先で皆狩りに育児に忙しい。まだまだ自然の実りは少なく、余裕が出るまでには赤ゆは成体になってしまうだろう。
川辺での~びの~びしながらそのように考えを巡らせていると、いつの間にか川向うに、一ゆんのれいむが居た。
「ゆっ!」
そのれいむには右目の辺りに引きつったような傷があった。
通常もちもちとしている饅頭皮はシワが寄りカサついている。
随分と長い間生きてきた老ゆっくりであるようだ。
通常もちもちとしている饅頭皮はシワが寄りカサついている。
随分と長い間生きてきた老ゆっくりであるようだ。
「お、おさ……」
「ひさしぶりだね。まりさ」
「ひさしぶりだね。まりさ」
この傷れいむこそ、まりさが追い出した元長である。
群れにすっきり制限をはじめ厳しい掟を敷き、収穫の一部を収めさせ、群れの子供を親から引き離すなど、列挙すれば枚挙にいとまがないほどの暴政を敷いた
“ゆっくりをゆっくりさせないげすおさ”。
という烙印を押され、若い今の長まりさに、長らく務めた長の座を実に、実にあっさりと追われたのであった。
群れにすっきり制限をはじめ厳しい掟を敷き、収穫の一部を収めさせ、群れの子供を親から引き離すなど、列挙すれば枚挙にいとまがないほどの暴政を敷いた
“ゆっくりをゆっくりさせないげすおさ”。
という烙印を押され、若い今の長まりさに、長らく務めた長の座を実に、実にあっさりと追われたのであった。
「ゆっ! いまさらなに!? まりさがおさなんだよ! れいむはもうおさじゃないんだよ!」
「しってるよ」
「しってるよ」
片頬を釣り上げて皮肉げに笑うれいむ。自分を追い出した相手に、荒んでいるとはいえ笑みを浮かべる余裕があるということに、まりさの心は乱れる。
体躯や戦闘能力では若いまりさに圧倒的な分があるのかもしれないが、精神的な成熟は目の前の霊夢に遠く及ばない。
そのことがわかるだけに、まりさはこの傷れいむを目の前にすると苛立ってしまうのである。
体躯や戦闘能力では若いまりさに圧倒的な分があるのかもしれないが、精神的な成熟は目の前の霊夢に遠く及ばない。
そのことがわかるだけに、まりさはこの傷れいむを目の前にすると苛立ってしまうのである。
「べつにむりにえらそうにしなくてもいいよ。まりさがおさなんでしょ?」
「ゆぐっ!」
「ゆぐっ!」
その機微もお見通しとばかりに傷れいむが感情を揺らす。
まりさは沸騰しそうな餡子を抑えて相手の様子をうかがうことにした。
まりさは沸騰しそうな餡子を抑えて相手の様子をうかがうことにした。
「……なんなのぜ。いまさら……。なにしにきたんだぜ……」
「おかざりきりがでたんだね」
「ゆっ!?!?」
「おかざりきりがでたんだね」
「ゆっ!?!?」
なぜわかった。どうしてわかった。そういう疑問を言っては負けだと言葉を飲み込んで、長まりさはなるべく威厳を保ちつつ返答する。
「そ、そうなんだぜ。ゆっくりできないれんちゅうをどうするかかんがえているのぜ」
「……おかざりがかけてるくらいで……ゆっくりできないなんてことはないよ……」
「……おかざりがかけてるくらいで……ゆっくりできないなんてことはないよ……」
荒んだ、やさぐれた表情を浮かべていた傷れいむが、ふっと憂いたような悲しげな顔を見せた。
老いているとはいえ、傷があるとはいえ、その表情は傷れいむを、長まりさがドキッとするほどの美ゆっくりに見せた。
若く、傷がなければ、たいそう美ゆっくりであっただろうれいむは、その悲しげな眼差しで視線を遠くに流した。
老いているとはいえ、傷があるとはいえ、その表情は傷れいむを、長まりさがドキッとするほどの美ゆっくりに見せた。
若く、傷がなければ、たいそう美ゆっくりであっただろうれいむは、その悲しげな眼差しで視線を遠くに流した。
「ゆ……ゆっ! 何をいってるのぜ! おかざりがゆっくりしてないゆっくりはゆっくりできないのぜ!」
「ゆふふ……。そうだね……。そうなんだよね……。れいむはゆっくりりかいしているよ……」
「ゆふふ……。そうだね……。そうなんだよね……。れいむはゆっくりりかいしているよ……」
先ほどの憂いを含んだ表情は消え、再び荒れた笑顔に戻る傷れいむ。
しばらくゆふゆふと笑ったかと思うと、死んだような目でまっすぐに長まりさの方を向いて、言う。
しばらくゆふゆふと笑ったかと思うと、死んだような目でまっすぐに長まりさの方を向いて、言う。
「あとにかい、たいようさんがゆっくりおはようしたら、ここにくるとちゅうのひろばに、へんなまりさがくるよ」
「ひろば? へんなまりさ?」
「みたらわかるよ。へんだから。そのまりさはね、おかざりがかけたおちびちゃんを、あまあまとこうかんしてくれるんだよ」
「ゆっ! あまあま!」
「ひろば? へんなまりさ?」
「みたらわかるよ。へんだから。そのまりさはね、おかざりがかけたおちびちゃんを、あまあまとこうかんしてくれるんだよ」
「ゆっ! あまあま!」
あまあま。ゆっくり。特に野生のゆっくりにとっては貴重品である。
ゆっくりにとってあまあまは究極の嗜好品であるだけでなく、医療薬としても珍重される。手に入っても隠匿され、病気になった時くらいでしか口にできるものではないのである。
それで殺し合いになることさえ珍しくない。
そのあまあまとお飾りの欠けた赤ゆと交換してくれるまりさが二日後に来るという。
もしほんとうにそうであれば、どれだけ群れのゆっくりがゆっくりできることだろうか。
ゆっくりにとってあまあまは究極の嗜好品であるだけでなく、医療薬としても珍重される。手に入っても隠匿され、病気になった時くらいでしか口にできるものではないのである。
それで殺し合いになることさえ珍しくない。
そのあまあまとお飾りの欠けた赤ゆと交換してくれるまりさが二日後に来るという。
もしほんとうにそうであれば、どれだけ群れのゆっくりがゆっくりできることだろうか。
「べつにしんじなくてもいいよ。まりさのすきにしてね。じゃあね」
ゆっくりと、悠然と、傷れいむはこの場を立ち去った。
そのゆっくりっぷりに、まりさは言いようもない劣等感を感じずにいられなくなってしまう。ただ、その劣等感に反発して、あえて違う道を進むような、そういう真似をするほど長まりさは愚かではなかった。
そのゆっくりっぷりに、まりさは言いようもない劣等感を感じずにいられなくなってしまう。ただ、その劣等感に反発して、あえて違う道を進むような、そういう真似をするほど長まりさは愚かではなかった。
「あとにかい、たいようさんがゆっくりおはようしたら……」
その言葉を噛み締め、長まりさは踵を返す。
二日後の準備をするために……。
□ □ □
「おきゃーしゃ! しゅ~りしゅ~りしちぇぇ!」
「ゆぅ~ありちゅはちょかいひゃなおうちゃがききちゃいわぁ!」
「ゆぅ~ありちゅはちょかいひゃなおうちゃがききちゃいわぁ!」
ある巣の中,ゆっくりたちはお昼までの狩りや雑事を終え,一家団欒のゆっくりした時間を過ごしていた。
れいむとありすの夫妻と,その周りを飛び跳ね様々な事をねだる赤れいむと赤ありすの二ゆ。
そして……。
れいむとありすの夫妻と,その周りを飛び跳ね様々な事をねだる赤れいむと赤ありすの二ゆ。
そして……。
「おきゃーしゃ……おちょーしゃ………ありちゅはちょきゃいはよ……」
その巣のかなり離れた奥の方から、バッキリと半分に割れたカチューシャを申し訳なさげに載せている赤ありすが、悲しげに団欒を見つめていた。
「しゅ~りしゅ~りしちゃいわぁ……おうちゃうちゃいちゃいわぁ……」
ゆんゆんとすすり泣く赤ありす。割れたカチューシャは動くと落ちてしまう。だから一歩も動けずにいた。
意を決してカチューシャ無しで親に寄り添った結果は、冷えきった視線のありすに髪の毛を噛み咥えられ、巣の奥に放り出されるという無残なものであった。
眼前の団欒を前に、そこにいていいはずの自分がそこに居ない歯がゆさをかみしめる。
ゆっくりにとって一番つらいのはゆっくり出来ないことであるが、ゆっくりを共有できない事はそれ以上に辛いことである。
事実、通常単体で過ごすゆっくりは、ゆっくりを得るために一日に必要なカロリー以上を摂取する傾向があるが、集団でいる場合は余分に取るカロリーが減少することがわかっている。
独り身のゆっくりほど飢えに対するただでさえ低い我慢が更に低くなる。群れが破綻する原因の一つとして非婚化があるくらいである。
意を決してカチューシャ無しで親に寄り添った結果は、冷えきった視線のありすに髪の毛を噛み咥えられ、巣の奥に放り出されるという無残なものであった。
眼前の団欒を前に、そこにいていいはずの自分がそこに居ない歯がゆさをかみしめる。
ゆっくりにとって一番つらいのはゆっくり出来ないことであるが、ゆっくりを共有できない事はそれ以上に辛いことである。
事実、通常単体で過ごすゆっくりは、ゆっくりを得るために一日に必要なカロリー以上を摂取する傾向があるが、集団でいる場合は余分に取るカロリーが減少することがわかっている。
独り身のゆっくりほど飢えに対するただでさえ低い我慢が更に低くなる。群れが破綻する原因の一つとして非婚化があるくらいである。
「む~ちゃむ~ちゃ……するわぁ……」
赤ありすは目の前の草に舌をつける。苦い。親が放ってよこした食事。死なない程度のことしか考えていなかったため、野生で手に入る草としては下の中あたりの食事であった。
下の下でないだけありがたいと思え。そう言わんばかりの態度に、赤ありすも泣くだけ泣いて喚くだけ喚いて無視されるだけされて、ようやく自分の立場を心得たのだった。
下の下でないだけありがたいと思え。そう言わんばかりの態度に、赤ありすも泣くだけ泣いて喚くだけ喚いて無視されるだけされて、ようやく自分の立場を心得たのだった。
「む~じゃむ~じゃ……にがにが~ふしあわせ~」
尋常では無いまずさ。何度も何度もエ”ン”となりながら、それでも空腹に耐え切れず無理やり噛み砕いて餡に収める。
口の中には苦い草汁が充満し、お腹の餡の中でさえその苦味が醸成されているような気さえする。
口を濯ぐ水なんてもらえるわけがない。
口の中には苦い草汁が充満し、お腹の餡の中でさえその苦味が醸成されているような気さえする。
口を濯ぐ水なんてもらえるわけがない。
「む~ちゃむ~ちゃ! ちょかいひゃ~!!」
「しあわちぇ~~~」
「しあわちぇ~~~」
目の前の姉妹は何を食べているのだろうか。ゆっくりした柔らかい草。芋虫。花。
見ないように見ないようにしても、声は聞こえてくる。耳でも塞げればよかったのだろうが、ゆっくりの聴覚は全身に有りそれも出来ない。
咀嚼音とその味のゆっくり具合を実況する姉妹に両親。そのゆっくりをお互いに報告し合い、感謝しあう。
本当に心からゆっくり出来る光景であった。自分がそこに居ないということを除けば。
「ゆう……ゆぴゃあ……」
見ないように見ないようにしても、声は聞こえてくる。耳でも塞げればよかったのだろうが、ゆっくりの聴覚は全身に有りそれも出来ない。
咀嚼音とその味のゆっくり具合を実況する姉妹に両親。そのゆっくりをお互いに報告し合い、感謝しあう。
本当に心からゆっくり出来る光景であった。自分がそこに居ないということを除けば。
「ゆう……ゆぴゃあ……」
ボロボロと砂糖水の涙をこぼして赤ありすは泣いた。
こんな仕打ちを受けるはずではなかったのだ。こんな目に合うために生まれたわけではなかったのだ。
こんな仕打ちを受けるはずではなかったのだ。こんな目に合うために生まれたわけではなかったのだ。
「ゆう……いなかもののおちびがまたないているわ……」
「しょうがないよ。ゆっくりしていないんだし。あとしばらくのしんぼうだよ」
「そうよね! あともうすこししたらあのゆっくりしてないおちびがいなくなって、あまあまがてにはいるわ!」
「しょうがないよ。ゆっくりしていないんだし。あとしばらくのしんぼうだよ」
「そうよね! あともうすこししたらあのゆっくりしてないおちびがいなくなって、あまあまがてにはいるわ!」
あまあま、その言葉に、五体満足な方の赤ありすの顔がぱぁっと晴れる。
「あみゃあみゃ! あみゃあみゃ!」
「ゆふふ……だめよ、いくらあまあまでもそんなにはしゃいじゃ、とかいはなれでぃーにはなれないわ」
「ゆう、ゆっくりごめんなさい」
「ゆふふ……だめよ、いくらあまあまでもそんなにはしゃいじゃ、とかいはなれでぃーにはなれないわ」
「ゆう、ゆっくりごめんなさい」
それでもあまあまに心が踊り回るらしく、ウキウキと身を躍らせていた。
それがお飾りが無いとはいえ妹を売り飛ばして手に入るものだということには頭が全く回らないらしい。
それがお飾りが無いとはいえ妹を売り飛ばして手に入るものだということには頭が全く回らないらしい。
「……」
その傍ら、そっとお飾りのない赤ありすの方を見やる赤れいむ。
お飾りなしの赤ありすと目が合うとそっと目をそらすが、もみあげをぴこぴこと動かして合図を送る。
お飾りなしの赤ありすと目が合うとそっと目をそらすが、もみあげをぴこぴこと動かして合図を送る。
「さあおちびちゃんたち、む~しゃむ~しゃしたら、す~やす~やしようね!」
その言葉を合図に家族は親ありすが拵えた鳥の巣のような”ふかふかさん”の上に各々陣取って固まり、うつらうつらとし始める。
ゆっくりは寝る際、家族と固まって寝ることが多い。肌をすりあわせて寝ることがゆっくりを満たすのだ。
お飾りの欠けた赤ありすに当然そのゆっくりが回ってくることはない。
一度寝入った時に傍にこっそり寄り添った時など、手加減なしの体当たりを食らわされて何度も吐餡したトラウマは未だに癒えていない。
寝床も慰み程度の葉っぱが数枚。ゆっくり眠れたことなどあろうはずもない。
ゆっくりは寝る際、家族と固まって寝ることが多い。肌をすりあわせて寝ることがゆっくりを満たすのだ。
お飾りの欠けた赤ありすに当然そのゆっくりが回ってくることはない。
一度寝入った時に傍にこっそり寄り添った時など、手加減なしの体当たりを食らわされて何度も吐餡したトラウマは未だに癒えていない。
寝床も慰み程度の葉っぱが数枚。ゆっくり眠れたことなどあろうはずもない。
ただそれでも……赤ありすにはわずかばかりの希望があった。
「しょりょ~りしょりょ~り。ゆう……いもうちょ、みょうしゅ~やしゅ~やしちゃ?」
ぶんぶんと首を降る赤ありす。目の前には姉の赤れいむ。
家族の尽くが赤ありすを無視する中、こっそりと気をかけてくれるのは、この姉の赤れいむだけであった。
ぶんぶんと首を降る赤ありす。目の前には姉の赤れいむ。
家族の尽くが赤ありすを無視する中、こっそりと気をかけてくれるのは、この姉の赤れいむだけであった。
「ごめんにぇ、ごひゃんしゃんちょっとしきゃのこしぇなきゃったよ。ゆふぅ」
生まれて間もない赤ゆっくりだ。巣の中とは言え、いつもの”ふかふかさん”から歩いて赤ありすのもとに来るだけでも大変だというのに、この赤れいむはその上食事までわけてくれるのであった。
「おねえしゃん……ゆっくち………ゆっくちぃ……!」
目から大量の砂糖水を目から垂れ流す。
「しゃ、はやきゅたべにゃいちょ、おきゃーしゃにみちゅかりゅよ」
「む~ちゃ……む~ちゃ……ちあわちぇぇ……」
「ゆう、よぎょれちゃってるにぇ、おにぇーちゃんがぺーりょぺーりょしちぇあげりゅね」
「む~ちゃ……む~ちゃ……ちあわちぇぇ……」
「ゆう、よぎょれちゃってるにぇ、おにぇーちゃんがぺーりょぺーりょしちぇあげりゅね」
赤ありすが食事を書き込んでいる間、姉れいむは親の見よう見まねでたどたどしく赤ありすの体を舐めて綺麗にしていく。
饅頭皮を清潔に保つことはカビなどを防ぐ健康維持の目的がある。
それとは別に、砂糖水の分泌液が出るゆっくりの体を舐めることは、非常にゆっくりできることという側面もある。スキンシップという面からも、舐められることも非常にゆっくりを感じることである。
無論、赤ありすは生まれてこの方親にぺ~ろぺ~ろをされたことなどなかった。
饅頭皮を清潔に保つことはカビなどを防ぐ健康維持の目的がある。
それとは別に、砂糖水の分泌液が出るゆっくりの体を舐めることは、非常にゆっくりできることという側面もある。スキンシップという面からも、舐められることも非常にゆっくりを感じることである。
無論、赤ありすは生まれてこの方親にぺ~ろぺ~ろをされたことなどなかった。
「ありがちょぉ……おねーちゃはちょかいひゃだわ……ちょかいはだわ……」
「ちょっとおきゃーしゃもおちょーしゃもひじょいよ……。いもーちょはちょってもゆっくちちちぇるにょに……」
「ちょっとおきゃーしゃもおちょーしゃもひじょいよ……。いもーちょはちょってもゆっくちちちぇるにょに……」
この赤れいむは母性の強く、かつお飾りをそこまで重要視しないタイプあるらしい。
よくぼせい()とカッコつきで言われるれいむ種であるが、極端な差別や排斥などに対して異を唱え、群れの崩壊を防ぐ事も多い。
孤児となった赤ゆなどの面倒を見たり、それとなく群れの子供に目を配ったりするのもれいむ種の母性の特徴である。
それが悪い方向に出ることも多い。というより、ゆっくりの特性で悪い方へ出ないものなど存在しない。どんな一見デメリットが見られないような特徴も、大抵信じがたい経緯で悪い方へ出る。
よくぼせい()とカッコつきで言われるれいむ種であるが、極端な差別や排斥などに対して異を唱え、群れの崩壊を防ぐ事も多い。
孤児となった赤ゆなどの面倒を見たり、それとなく群れの子供に目を配ったりするのもれいむ種の母性の特徴である。
それが悪い方向に出ることも多い。というより、ゆっくりの特性で悪い方へ出ないものなど存在しない。どんな一見デメリットが見られないような特徴も、大抵信じがたい経緯で悪い方へ出る。
「ゆ! きりぇいになっちゃね! じゃあまちゃきゅるよ。ゆっくちしちぇいっちぇね!」
「……ゆっくちしちぇいっちぇね」
「……ゆっくちしちぇいっちぇね」
姉との別れを名残惜しむも、ここでわがままを言えば困るのは姉だということは誰よりもよく理解していた。
ゆんゆんと泣き崩れながら、赤ありすは肌に残ったぬくもりを反芻しながら体を落ち着かせた。
ゴツゴツとした地面。ゆっくりの欠片もない布団。その上で身を横たえ、ぽたりと落ちたお飾りを憎々しげに睨めつける。
そんなことをしてもお飾りが治るわけもない。お飾りのないゆっくりできなさ加減を抑えることもできない。
悲嘆に暮れる以外に、やることもできることもなかった。
不幸を体現したかのような彼女。ただ、ひとつこの赤ありすに言えることがある。
ゆんゆんと泣き崩れながら、赤ありすは肌に残ったぬくもりを反芻しながら体を落ち着かせた。
ゴツゴツとした地面。ゆっくりの欠片もない布団。その上で身を横たえ、ぽたりと落ちたお飾りを憎々しげに睨めつける。
そんなことをしてもお飾りが治るわけもない。お飾りのないゆっくりできなさ加減を抑えることもできない。
悲嘆に暮れる以外に、やることもできることもなかった。
不幸を体現したかのような彼女。ただ、ひとつこの赤ありすに言えることがある。
それは彼女が、幸運なことに、非常に良い家族に恵まれた、ということである。
□ □ □
翌日。太陽が上り、各世帯が朝食を終え、狩りから戻りまたゆっくりとした昼食を終えた頃。
群れの中心、皆でひなたぼっこなどをする陽の光が当たる広場。
そこにテニスボール大の子ゆっくりが何ゆんかが集まってなにやらわいわいと騒ぎまわっていた。
群れの中心、皆でひなたぼっこなどをする陽の光が当たる広場。
そこにテニスボール大の子ゆっくりが何ゆんかが集まってなにやらわいわいと騒ぎまわっていた。
越冬中、計算した上で、育児の安全性のために越冬中に子作りをしたもの。考えなしに子を作り、たまさか生き残ったもの。
そういった様々な経緯で生き残った子ゆっくりが広場に集い、何かをバタバタと走り回りながら行なっていた。
もし遠目から見たら、ボール遊びかサッカーのように見えただろう。
付近を通り掛かる大人ゆっくりの顔も、優しげなゆっくりとした瞳である。子ゆっくりが何かの遊びに興じている以上の感想を持つ人間は居ないだろう。
そういった様々な経緯で生き残った子ゆっくりが広場に集い、何かをバタバタと走り回りながら行なっていた。
もし遠目から見たら、ボール遊びかサッカーのように見えただろう。
付近を通り掛かる大人ゆっくりの顔も、優しげなゆっくりとした瞳である。子ゆっくりが何かの遊びに興じている以上の感想を持つ人間は居ないだろう。
……だが、声が聞こえるほど近づくと、その考えはゆっくりの中身ほど甘いものだということに気付かされるだろう。
「いぢゃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい!!!!
やめぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「どりぶる! どりぶるなのじぇ!」
「ゆぅ~~~! じぇったいごーるはさせないんだね~!」
「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ! ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!」
やめぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「どりぶる! どりぶるなのじぇ!」
「ゆぅ~~~! じぇったいごーるはさせないんだね~!」
「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ! ゆんやぁぁぁぁぁぁぁ!」
転がしているのはボールではない。例の、お飾りの欠けた赤ゆである。
既に外見がズダボロになっているが、黒髪からかろうじてれいむ種であることがわかる。
遊んでいる子ゆっくりに容赦はない。広場といっても芝生などあろうはずもなく、背の低い草がちらほらある程度で、当然細かい石や砂が辺り一面に存在する。
その上で転がされ、跳ね飛ばされ、地面にたたきつけられていた。
ゆっくりは脆い。子ゆっくりは尚更脆い。自然界で子ゆっくりが遊べる物は少ないのだ。更に更に脆い赤ゆっくりは格好の遊び道具と言えた。
既に外見がズダボロになっているが、黒髪からかろうじてれいむ種であることがわかる。
遊んでいる子ゆっくりに容赦はない。広場といっても芝生などあろうはずもなく、背の低い草がちらほらある程度で、当然細かい石や砂が辺り一面に存在する。
その上で転がされ、跳ね飛ばされ、地面にたたきつけられていた。
ゆっくりは脆い。子ゆっくりは尚更脆い。自然界で子ゆっくりが遊べる物は少ないのだ。更に更に脆い赤ゆっくりは格好の遊び道具と言えた。
「おびぇびぇっ! おびぇびぇがぁぁぁ! でいみゅのおびぇびぇがぁ!」
まぶたごと小石でえぐられようとお構いなく、子ゆっくりたちはお飾りのない赤ゆっくりを平然と小突き回す。
「しゅ~~~~~と!」
「おじょりゃぁぁぁぁぁっ!」
「おじょりゃぁぁぁぁぁっ!」
懇親の一撃で跳ね飛ばされ、そのまま勢いで“ごーる”と称される草むらにもんどり落ちる。
「いじゃぃぃぃぃぃぃぃい! おびょにおぎゃおぎゃいじゃいいいいいい! あんよぎゃあああ! でいみゅのあんよぎゃあああ!」
殺してはならぬという教えに従い、そこらでかき集めた若草や若葉を積んだ山に、頭から突っ込んだ赤れいむはその痛みを実況しながら転げまわる。
鋭い草に薄い皮を切り刻まれ、体のあちこちに細かい外出餡、内出餡が発生する。
鋭い草に薄い皮を切り刻まれ、体のあちこちに細かい外出餡、内出餡が発生する。
「いじゃぃよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! どぼじでぎょんなぎょじょじゅるにょおおおおおおおおお!!!!
でいみゅのこまちゃのきりぇあがっちゃあんよぎゃぁぁぁぁ!!!! からしゅしゃんのにゅればいりょのくろきゃみぎゃぁぁぁぁぁ!!!!
きゃわいいきゃわいいおりぼんしゃんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
でいみゅのこまちゃのきりぇあがっちゃあんよぎゃぁぁぁぁ!!!! からしゅしゃんのにゅればいりょのくろきゃみぎゃぁぁぁぁぁ!!!!
きゃわいいきゃわいいおりぼんしゃんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
まわりの子ゆっくりはげ~らげ~らと朗らかに笑う。
彼女らは知っている。叫ぶ余裕が有るということはまだまだ遊べるということだ。
赤ゆっくりが虚弱と言えども、所詮は子ゆっくり。気をつけていればぶつかっても大したダメージにはなりにくい。
時間とともに蓄積していくダメージを見極める事のできる子ゆっくりは一目置かれ、他のゆっくりからモテるという現象さえ発生する。
彼女らは知っている。叫ぶ余裕が有るということはまだまだ遊べるということだ。
赤ゆっくりが虚弱と言えども、所詮は子ゆっくり。気をつけていればぶつかっても大したダメージにはなりにくい。
時間とともに蓄積していくダメージを見極める事のできる子ゆっくりは一目置かれ、他のゆっくりからモテるという現象さえ発生する。
「ゆ……。ゆぐっ……。えひゅ……。えひゅ……」
「あ……。あ…………」
「どぼぢで……。ゆっぐじ……。ゆっ……。ゆっ……」
「あ……。あ…………」
「どぼぢで……。ゆっぐじ……。ゆっ……。ゆっ……」
競技場とされた場所の傍らに、ボールとして使用不能とされた赤ゆっくりが並ぶ。砂糖菓子の髪もお飾りも歯も目も饅頭皮も、何もかもズタズタにされてしまった。
目のあった陥没や裂けた口の傍からだらだらと砂糖水を垂れ流し、嘆き悲しむ。
目のあった陥没や裂けた口の傍からだらだらと砂糖水を垂れ流し、嘆き悲しむ。
「ゆっくちしちぇね! ゆっくち! ぺ~りょ! ぺ~りょ!」
「やじゃ……。やじゃよ……。ゆっくちちないでね! ゆっくちしちぇね!」
「やじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! きょわいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「おにぇぎゃいやめちぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「やじゃ……。やじゃよ……。ゆっくちちないでね! ゆっくちしちぇね!」
「やじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! きょわいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「おにぇぎゃいやめちぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
その横にはこれからボールになるお飾りの欠けた赤ゆっくりたち。
ボール役だった赤ゆっくりをせめて慰めるもの。ひたすら怯えるもの。縋るもの。そして逃げようとするもの。
ボール役だった赤ゆっくりをせめて慰めるもの。ひたすら怯えるもの。縋るもの。そして逃げようとするもの。
「まりちゃはゆっくちちにゃいでにぎぇるのじ——こにょおおじょらにつばしゃをひろげちょんでいくのじぇ!」
「ゆ~ん、こんなゆっくりできないちびどものみはりさんなんてごめんなのじぇ」
「ゆ~ん、こんなゆっくりできないちびどものみはりさんなんてごめんなのじぇ」
割りを食った見張りの子まりさがそうひとりごちる。
逃げようとした赤まりさの髪の毛を加え持ち上げ、そこらに放り投げる。
逃げようとした赤まりさの髪の毛を加え持ち上げ、そこらに放り投げる。
「ゆびぇ!!」
「ゆん、にげるなんてふてぇちびなのだじぇ、きめたのじぇ。つぎはおまえなのだじぇ」
「どぼじでじょんなこちょいうにょぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ゆん、にげるなんてふてぇちびなのだじぇ、きめたのじぇ。つぎはおまえなのだじぇ」
「どぼじでじょんなこちょいうにょぉぉぉぉぉぉ!!!」
器用にあんよで赤まりさを押さえつけると、つばの部分が大多数欠けてしまった山高帽を取り上げる。
「おぼうち! まりしゃのしっこきゅのやみさんをたたえたでんしぇつにふしゃわしいおぼうち!」
「げ~らげ~ら。こんなゆっくりできないおぼうしがでんせつっさんとかれみりゃもわらうのじぇ。ぼーるにこんなものいらないのじぇ。び~りび~り」
「ゆびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! まりしゃのきぼうのひきゃりをひめちゃおぼうちぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「げ~らげ~ら。こんなゆっくりできないおぼうしがでんせつっさんとかれみりゃもわらうのじぇ。ぼーるにこんなものいらないのじぇ。び~りび~り」
「ゆびゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! まりしゃのきぼうのひきゃりをひめちゃおぼうちぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
びたん、と何かが飛んでくる。先ほどまでボールにされていた赤れいむだ。
泣き、喚き、許しを請い、媚び諂い、それでもどうにもならず、もはやただ痛い痛いとうわ言のようにしか言わなくなってしまった。ここが限界だ。
泣き、喚き、許しを請い、媚び諂い、それでもどうにもならず、もはやただ痛い痛いとうわ言のようにしか言わなくなってしまった。ここが限界だ。
「ぼーるをこうっかんなんだよー。まりさ~、ぼーるよういしてくれてありがちょーね~、みょんとこうたいじゃよ~」
「ゆぅうん! まちくたびれたのじぇ!」
「ゆぅうん! まちくたびれたのじぇ!」
決して一ゆの子ゆっくりだけに嫌なことを押し付けようとしない子どもたちに、周りの大人は目を細めゆっくりする。
幹部ぱちぇり~はゆん、とふんぞり返って、
幹部ぱちぇり~はゆん、とふんぞり返って、
「むきゅふん! ぱちぇのさべつっはよくないというきょういくっがきいたのだわ! みんな! なかよく! びょうっどうにね! あと、ぼーるをえいえんにゆっくりさせちゃだめよ!」
ゆんは~い! という子どもたちの元気な声。
平和だ。ゆっくりしているね。という声がどことなく聞こえてくる。
群れの平和な、そう、平和な午後の姿だった。
平和だ。ゆっくりしているね。という声がどことなく聞こえてくる。
群れの平和な、そう、平和な午後の姿だった。
「ゆ……。あ、ああああああああああああっ……」
「ゆべ……。ゆべぇ……」
「ゆっ……。ゆっ……」
「ゆっぎゅりぃぃぃぃぃ……」
「ゆべ……。ゆべぇ……」
「ゆっ……。ゆっ……」
「ゆっぎゅりぃぃぃぃぃ……」
積み重なるズダボロになったお飾りの欠けた、ボロボロの赤ゆっくりたち。
その横で朗らかに笑い遊ぶ子ゆっくり。
その横で朗らかに笑い遊ぶ子ゆっくり。
「いじゃぃぃぃぃぃぃぃころんだよぉぉぉぉぉぉぉ」
「ゆう、まりさ、いたいのいたいのとんでけー! だよ!」
「みんなでぺえ~ろぺ~ろするのじぇ!」
「ゆう、まりさ、いたいのいたいのとんでけー! だよ!」
「みんなでぺえ~ろぺ~ろするのじぇ!」
「おともだちのきをつかえるなんて、なんてたゆんおもいなゆっくりなのかしら」
「ゆふふ。こどもたちみんなゆっくりしたゆっくりだねぇ」
「ゆふふ。こどもたちみんなゆっくりしたゆっくりだねぇ」
大人も、子供も、群れのみんなは、ゆっくりしていた。
うららかな、春の日のほのぼのとした光景であった。
うららかな、春の日のほのぼのとした光景であった。
□ □ □
「さあみんな、む~しゃむ~しゃのあとはうんうんのじかんなのぜ」
「うんうんたいそう! うんうんするよ! 」
「「「うんうんたいしょう! うんうんしゅるよ!」」」
「みぎへひだりへふ~りふり!」
「「「みぎへひじゃりへふ~りふりぃ!」」」
「うんうんさんも、おでかけするよ」
「「「でりゅよ! いっぴゃいでりゅよ! しゅっきり!!!!!」」」
「うんうんたいそう! うんうんするよ! 」
「「「うんうんたいしょう! うんうんしゅるよ!」」」
「みぎへひだりへふ~りふり!」
「「「みぎへひじゃりへふ~りふりぃ!」」」
「うんうんさんも、おでかけするよ」
「「「でりゅよ! いっぴゃいでりゅよ! しゅっきり!!!!!」」」
「「やめちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」
親子と三ゆの赤ゆっくりが一斉にうんうんを放出する。
その先にはお飾りの欠けた赤ゆっくりが二ゆ。
その先にはお飾りの欠けた赤ゆっくりが二ゆ。
「くちゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「やめちぇぇゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「やめちぇぇゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「うんうんぢょれいがにゃにかいっちぇるよ!」
「ゆ! ゆっくりしてないおちびたちのごはんはみんなのうんうんだよ! ゆっくりりかいしてね!」
「ゆ! ゆっくりしてないおちびたちのごはんはみんなのうんうんだよ! ゆっくりりかいしてね!」
「「ゆっくぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」
赤ゆはうんうん、し~し~の場所をいち早く覚え、家の管理に関する負担は大分減った。親ゆっくりたちは思う。家のことを考える良い子どもたちだと。
□ □ □
「いじゃい! いじゃい! やめじぇね! やめじぇね! ありしゃんはこにゃいでね!」
「ゆ! ありさんがよってきたのぜ。みんなむ~しゃむ~しゃするのぜ」
「まりさはかりのめいゆんだね~わかるよ~」
「ゆっくちしちぇないあんこによっちぇきちぇ、たべりゃれるなんちぇ、ありしゃんはばきゃなんだね~!」
「ばきゃなありしゃんはゆっくちたべりゃれちぇね!」
「まりさはかりのめいゆんだね~わかるよ~」
「ゆっくちしちぇないあんこによっちぇきちぇ、たべりゃれるなんちぇ、ありしゃんはばきゃなんだね~!」
「ばきゃなありしゃんはゆっくちたべりゃれちぇね!」
お飾りの欠けた赤ゆに傷をつけ、餡子を露出させる。
そこに寄ってきた蟻や虫を食べるだけの簡単な狩りだ。
そこに寄ってきた蟻や虫を食べるだけの簡単な狩りだ。
「「む~ちゃむ~ちゃしあわちぇ~!!!」」
「いぢゃい! ありしゃん! あんこしゃんかじりゃないじぇぇぇぇぇl!!!!!」
赤ゆっくりたちは、賢い親に尊敬の眼差しを向ける。勝手に湧いてくる蟻や虫。
一回に口に入る量は少なくとも、この数ならのんびり食事すれば夕方までには満腹になるだろう。飢えと縁遠い家族は幸せであった。
一回に口に入る量は少なくとも、この数ならのんびり食事すれば夕方までには満腹になるだろう。飢えと縁遠い家族は幸せであった。
□ □ □
「むきゅ、いいわねおちびちゃんたち。これはとてもゆっくりしてそうなくささんだけど、たべると……」
「やめちぇぇぇぇぇぇぇぇ、む~ちゃむ~ちゃしちゃくにゃ——。
こりぇどきゅはいちぇりゅぅぅぅぅぅ!! にぎゃいいいいいいいいいいいい!」
こりぇどきゅはいちぇりゅぅぅぅぅぅ!! にぎゃいいいいいいいいいいいい!」
「こんなふうに、にがにがさんでゆっくりできないの。ゆっくりおぼえてね!」
「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」
「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」
自分で見て聞いて経験しなければわからないゆっくり。
そんな家族に、食べられるもの、食べられないものを、お飾りの欠けた赤ゆっくりを用いた実験をもって教育する。
この赤ゆっくりたちは成長すれば、狩りで命を落とすことはないだろう。
そんな家族に、食べられるもの、食べられないものを、お飾りの欠けた赤ゆっくりを用いた実験をもって教育する。
この赤ゆっくりたちは成長すれば、狩りで命を落とすことはないだろう。
□ □ □
群れのあちこちから悲鳴が聞こえる。
お飾りが欠けているというだけで、彼女らは社会の最底辺に置かれ、積極的な虐待を受ける。
ゆっくりは承認欲求が強い。そしてゆっくりすることを至上命題としている。
しかし、人間にとって幸せの定義が難しいのと同様。ゆっくりにとってもゆっくりするとはどういうことかの定義が非常に難しい。
だから下の、“ゆっくりできないゆっくり”を見ることにより、
自分がいかにゆっくりしているかを認識することは、
彼女らにとって非常に“ゆっくりを感じられる”ことなのだ。
お飾りが欠けているというだけで、彼女らは社会の最底辺に置かれ、積極的な虐待を受ける。
ゆっくりは承認欲求が強い。そしてゆっくりすることを至上命題としている。
しかし、人間にとって幸せの定義が難しいのと同様。ゆっくりにとってもゆっくりするとはどういうことかの定義が非常に難しい。
だから下の、“ゆっくりできないゆっくり”を見ることにより、
自分がいかにゆっくりしているかを認識することは、
彼女らにとって非常に“ゆっくりを感じられる”ことなのだ。
だから群れは平和そのものだ。満たされ、充足し、意欲に満ちた日々。どのゆっくりも今日を生きているしあわせ~を餡子に満たしている。
「ゆぎ……ゆぅぅぅぅ……」
その様子を、ゆんゆんと泣きながら見つめ、高台で泣く傷れいむがいた。
□ □ □
二日がたった。
例の開けた場所に長まりさが来てみると、たしかにそこに、変なまりさが居た。
「どうつきさん……。なのぜ?」
目の前にいたまりさは、ゆっくりした山高帽を被っており、確かにまりさであった。
だが、ゆっくりで言うところの全身である頭の下に、妙な部位がついており、あまり見ていて気持ちのいい姿をしていなかった。
見たことはないが、これが“胴付き”というものなのだろうか。
だが、ゆっくりで言うところの全身である頭の下に、妙な部位がついており、あまり見ていて気持ちのいい姿をしていなかった。
見たことはないが、これが“胴付き”というものなのだろうか。
「まりさが、おさ?」
「そ、そうなのぜ! ゆっくりしてないおちびとあまあまをこうかんしてくれるのかぜ?」
「うん、するよ。ひとゆにつききまったりょうのあまあまをあげるよ」
「ほ、ほんとうなのぜ? あまあまはきちょうっ! なのぜ。それを――」
「べつに、いやならこうかんしなくていいよ」
「ゆ、ゆぐぅ、こうかんっしたゆっくりしてないおちびはどうするのぜ?」
「きいてどうするの? ゆっくりしてないおちびちゃんなんてどうでもいいでしょ?」
「そ、そうなのぜ! ゆっくりしてないおちびとあまあまをこうかんしてくれるのかぜ?」
「うん、するよ。ひとゆにつききまったりょうのあまあまをあげるよ」
「ほ、ほんとうなのぜ? あまあまはきちょうっ! なのぜ。それを――」
「べつに、いやならこうかんしなくていいよ」
「ゆ、ゆぐぅ、こうかんっしたゆっくりしてないおちびはどうするのぜ?」
「きいてどうするの? ゆっくりしてないおちびちゃんなんてどうでもいいでしょ?」
取り付く島もない。ただ言っていることは事実だ。
ゆっくりしていないおちびなどどうでもいい。むしろ不要だ。早急に処分したい。
ここ2日でゆっくりしてないおちびの様々な処遇を見てきたが、正直頭を抱えていた。
群れの皆は考えと加減というものが足りない。死んだものが出ていないのが奇跡に近い。
ゆっくりしていないおちびなどどうでもいい。むしろ不要だ。早急に処分したい。
ここ2日でゆっくりしてないおちびの様々な処遇を見てきたが、正直頭を抱えていた。
群れの皆は考えと加減というものが足りない。死んだものが出ていないのが奇跡に近い。
「むれのみんなにしらせてはいるのぜ、もうすこししたらみんなくるのぜ、まりさがとうっそつするのぜ」
「そうだね。おねがい。ああひとつ。わがままをいったり、ぬすもうとしたりわるいことするゆっくりにはえんりょしないよ?」
「それはしょうちなのだぜ。むしろむれのほうでせいっさいなのだぜ」
「そうだね。おねがい。ああひとつ。わがままをいったり、ぬすもうとしたりわるいことするゆっくりにはえんりょしないよ?」
「それはしょうちなのだぜ。むしろむれのほうでせいっさいなのだぜ」
それは良かった、そういう胴付まりさは言って、てきぱきとよくわからない箱やイスなどを広場に設置する。
辺りにほんのすこし良い匂いが漂ってきた。どうやらあまあまを持ってきたというのは嘘ではないらしい。
辺りにほんのすこし良い匂いが漂ってきた。どうやらあまあまを持ってきたというのは嘘ではないらしい。
たちまちのうちに準備は整い、またたくまに群れのゆっくりがワイワイと集まってきた。
「いじゃい!」
「おきゃーしゃ? おちょーしゃ? きょきょどきょ? にゃにしゅるにょ?」
「おきゃーしゃ? おちょーしゃ? きょきょどきょ? にゃにしゅるにょ?」
「この二ゆなのだぜ」
「うわぁ、うんうんまみれだね……」
「うわぁ、うんうんまみれだね……」
最初の二ゆはうんうんに頭から爪先までまみれていた。おそらくうんうん穴かどこかに突き落とされうんうん奴隷にされていたのだろう。
正直親たちも連れてきたいとすら思っていなかったに違いない。あまあま、それさえなければ。
正直親たちも連れてきたいとすら思っていなかったに違いない。あまあま、それさえなければ。
「まあいいや。はい、あまあまだよ。ここでたべないでおうちでゆっくりたべてね」
そう言って胴付きまりさは実にゆっくりしてそうな木の実状の物を取り出して夫婦に渡した。
「ゆわぁ……とってもゆっくりしたにおいだよぉ……」
「ゆん! かえったらおちびちゃんとむ~しゃむ~しゃしようね!」
「ゆん! かえったらおちびちゃんとむ~しゃむ~しゃしようね!」
食べ物を抱えると、スキップするようにぽいんぽいんと、お飾りの欠けた子どもたちに一瞥もせずに跳ね消える。
「お! おちょーしゃ! おきゃーしゃ!」
「じょこいくにょ! きょきょにいりゅよ! やじゃ! ひとゆにしにゃいで! おきゃーしゃ!」
「はいはい、きみたちはこっちね」
「じょこいくにょ! きょきょにいりゅよ! やじゃ! ひとゆにしにゃいで! おきゃーしゃ!」
「はいはい、きみたちはこっちね」
手早く何か処置すると、赤ゆっくりは急に黙りこんでしまった。
その赤ゆっくりを箱に収めると、何事もなかったかのように胴付きまりさは仕事を続けた。
その赤ゆっくりを箱に収めると、何事もなかったかのように胴付きまりさは仕事を続けた。
ズタボロになり、もはや何種かわからなくなったような赤ゆっくりを連れてくるもの。
「いいよ、おかざりのかけてるあかんぼうだったら、えいえんにゆっくりさえしてなきゃこうかんするよ」
せめてもの情けとして、身綺麗にされて親子ともども泣きながらくるもの。
「みためはかんけいないよ~、一ゆにつきおなじかずのあまあまだからね」
親に蹴りころがされながらくるもの。
「はいはい、あまあまだね~」
ストレスでひくっくり症を発症しているもの。ろくに世話もされなかったためゆカビにかかったもの。
「どんな赤ん坊でも大丈夫だよ」
それらに淡々と仕事をこなす胴付きまりさ。
その様子を長まりさは怪訝な表情で伺っていた。
まるで感情というものがないようだ。本当にこのまりさはゆっくりなんだろうか。それとも同付きというのはこういうものなのだろうか。
その様子を長まりさは怪訝な表情で伺っていた。
まるで感情というものがないようだ。本当にこのまりさはゆっくりなんだろうか。それとも同付きというのはこういうものなのだろうか。
「「あまあまちょうだいね! たっくさんでいいよ!」」
「ゆげぇ!」
「……あらら」
「……あらら」
とある夫婦がお飾りに欠けのある赤ゆっくりを連れてきた。
それはいい。だが、だがあまりにも数が……。
それはいい。だが、だがあまりにも数が……。
「どぼじでごんにゃごじょじゅるにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」x 14
長まりさは困惑した。確かこの夫婦に居たお飾りの欠けた赤ゆっくりは三ゆだったはずだ。
それが増えている……。確かこの夫婦の赤ゆっくりの数は……。
長まりさが餡子脳をフル回転させて、その答えにたどり着くのには、若干の時間を要した。
それが増えている……。確かこの夫婦の赤ゆっくりの数は……。
長まりさが餡子脳をフル回転させて、その答えにたどり着くのには、若干の時間を要した。
「お、おちびの、お、おかざりをやぶりやがったのぜ……」
「「たっくさんいるよ! たっくさんちょうだいね!」」
「「たっくさんいるよ! たっくさんちょうだいね!」」
そう、この夫婦。お飾りの欠けた赤ゆっくりとあまあまを交換してくれると聞いて、生まれた子供すべてのお飾りを食い破り連れてきたのだ。
「ど、どうかしてるのぜ! あまあまがほしいからってじゆんのおちびを!」
「あかちゃんはまたうめばいいんだよ!」
「そうだよ! あかちゃんはまたつくればいいけど、あまあまはかりじゃてにはいらなんだよ! ゆっくりりかいしてね!」
「あかちゃんはまたうめばいいんだよ!」
「そうだよ! あかちゃんはまたつくればいいけど、あまあまはかりじゃてにはいらなんだよ! ゆっくりりかいしてね!」
長まりさは愕然とした。お馬鹿なのはいい。だがこのお馬鹿は度が過ぎている。
生まれついてゆっくりしてないやつはどうでもいい。
だが五体満足な子供は別だ。自分の子供よりあまあまが大事だというのか。
生まれついてゆっくりしてないやつはどうでもいい。
だが五体満足な子供は別だ。自分の子供よりあまあまが大事だというのか。
「ゆん? どうしたのおさ。おきてはやぶってないよお?」
「……じゆんのおちびのおかざりをくいやぶるおや、なんてそうっていのはんいがいなのぜ……」
「……じゆんのおちびのおかざりをくいやぶるおや、なんてそうっていのはんいがいなのぜ……」
基本的にゆっくりは民事非介入が基本だ。
ましてや長まりさは“ゆっくりをゆっくりさせる”という青写真で長になった。
よって、家庭内暴力にかんしては死亡にまで達しない限り群れの掟には引っかからない。
ましてや長まりさは“ゆっくりをゆっくりさせる”という青写真で長になった。
よって、家庭内暴力にかんしては死亡にまで達しない限り群れの掟には引っかからない。
「……じゆんのおちびを……」
「どうかしてるんだね……」
「どうかしてるんだね……」
その場のゆっくりたちがヒソヒソと耳打ちしあう。
まずい空気が流れるが、本ゆんたちは至って朗らかだ。
まずい空気が流れるが、本ゆんたちは至って朗らかだ。
「いいよ。おかざりにかけのあるおちびならなんだもこうかんするよ」
そういってひょいひょいと十四ゆの赤ゆっくりに今までと同様の処置を施すと、親ゆっくりにあまあまを渡す。
何しろ二桁に登る数だ。何回か分けないと持ちきれないほどのあまあまがその夫婦の手に渡った。
何しろ二桁に登る数だ。何回か分けないと持ちきれないほどのあまあまがその夫婦の手に渡った。
「ゆ! はこぶね! みはっててね!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
番がいなくなった後、あまあまをしばらく見張っていた片割れも、大量のあまあまの匂いに中枢餡がくすぐられたのだろうか。
砂糖水のよだれを垂らし、じっとつまれた大量のあまあまを餡走った目で見つめ始めた。
砂糖水のよだれを垂らし、じっとつまれた大量のあまあまを餡走った目で見つめ始めた。
「ゆ……たべたらだめなのだぜ。おうちにかえってからふたりでむ~しゃむ~しゃしたほうがいいのぜ」
長まりさが警告する。この手のトラブルは群れには非常に多い。
家の中でやる分には構わないのだが、家の外で許すと、近隣住民とトラブルを起こす事になり、結果厄介なことになる。
家の中でやる分には構わないのだが、家の外で許すと、近隣住民とトラブルを起こす事になり、結果厄介なことになる。
「ゆ~~~。あっまあっまさん! ゆっくりゆっくりたべられてねっ!」
今までは量がそこまででもなかったために気づかなかったが、今こうして目の前に大量のあまあまがつまれると、その場にいた他のゆっくりたちもその匂いにあてられ始める。
「……どうかしてるよ」
「でも、あまあまだよ……めったにたべられないよ……」
「おちびちゃんをなんて……」
「でもまたうめば……」
「でも、あまあまだよ……めったにたべられないよ……」
「おちびちゃんをなんて……」
「でもまたうめば……」
不穏な空気が流れる。長まりさは不安になった。
はじめから釘を差しておくべきだったろうが、後の祭りと言えた。
はじめから釘を差しておくべきだったろうが、後の祭りと言えた。
「ゆ、このちびとこうかんしてね! すぐでいいよ!」
次のれいむとありすの夫婦が現れ、足元の赤ありすを蹴飛ばしながらそういう。
「いちゃいわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
栄養が足りず、乗せただけの半分欠け落ちたお飾りがぽたりと落ちる。
「はいはい。こうかんだ――」
「まっちぇね!」
「まっちぇね!」
夫婦の後ろから赤れいむガイを決したような顔で飛び出してきた。
「「ゆっ?」」
ぽかんとする両親を尻目に、赤ありすにまっすぐ顔を向ける。
「ゆっくちしちぇいっちぇね!」
「ゆ、ゆっくちしていっちぇにぇ……」
「ゆ、ゆっくちしていっちぇにぇ……」
そう挨拶すると、頭のリボンを外し、片方を自ゆんのあんよの下に敷き、もう片方を咥え、思いっきりの~びの~びを始めた。
「「ゆっ!?!?!?」」
何かが引き裂かれる音。それはその赤れいむのリボンが引き裂かれる音であった。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」x たくさん
この場にいた全てのゆっくりが、この赤れいむの所業を理解できなかった。
破れたリボンを適当に結び直すと、胴付きまりさにむかってこうゆっくりと述べる。
破れたリボンを適当に結び直すと、胴付きまりさにむかってこうゆっくりと述べる。
「ゆ! こりぇでれいみゅもおかじゃりのかけちゃゆっくちだよ! いもーちょといっちょにちゅれちぇっちぇにぇ! あみゃあみゃはみんにゃにあげちぇね!」
「「どぼじでぞんなごどじだどおおおおおおおおおおおおお!!!!」」
「ばきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! おねーちゃのばきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! いにゃかもにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ばきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! おねーちゃのばきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! いにゃかもにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
両親と妹が叫ぶ。まさか自らお飾りを破ってまで妹と一緒にいようなどと思う物がいるとは思わなかっただろう。
「な、なんてことするのぜ……」
長まりさも目をまんまるに見開いて驚く。
周りのゆっくりも思考がついてこれていない。
周りのゆっくりも思考がついてこれていない。
「おかざりのかけたあかゆっくりはこうかんするよ」
「おちょーしゃ! おきゃ-しゃ! ぎょめんなしゃい! いみゃみゃでありがちょう! のこっちゃいもーちょとゆっくちちちぇいっちぇね!」
「おちょーしゃ! おきゃ-しゃ! ぎょめんなしゃい! いみゃみゃでありがちょう! のこっちゃいもーちょとゆっくちちちぇいっちぇね!」
胴付きまりさは淡々とその赤れいむをつまみあげると箱のなかに入れる。
泣き喚く赤ありすもさっさと摘み上げると箱のなかに収める。
もはや声も聞こえてこない。
泣き喚く赤ありすもさっさと摘み上げると箱のなかに収める。
もはや声も聞こえてこない。
わけも分からず自失する両親にあまあまを押し付けると、次のゆっくりに道を譲るよう促す。
両親ゆっくりはただ言われるままに道を譲り、譲った後あまあまを抱えながら、ゆるゆると巣へと戻っていく。
おそらく餡子脳では何が起きているのか未だわからずにいるのだろう。
両親ゆっくりはただ言われるままに道を譲り、譲った後あまあまを抱えながら、ゆるゆると巣へと戻っていく。
おそらく餡子脳では何が起きているのか未だわからずにいるのだろう。
「なんなんだぜ……」
だんだんと長まりさはこの胴付まりさを気味悪く思うようになってきた。
このような状況で、このような騒動の中、何一つ驚きひとつ出さず冷静に淡々と作業を進められるものなのか。
長まりさも冷静であることに若干の誇りを持つタイプではあるがいかんせんこれは異常だ。
冷静どころか感情がないかのようだ。ここはひとつ確かめねばなるまい。
このような状況で、このような騒動の中、何一つ驚きひとつ出さず冷静に淡々と作業を進められるものなのか。
長まりさも冷静であることに若干の誇りを持つタイプではあるがいかんせんこれは異常だ。
冷静どころか感情がないかのようだ。ここはひとつ確かめねばなるまい。
「おい――」
そう言いかけた長まりさの目の前に、ぎょっとする光景が姿を現した。
「あまあまちょうだいね! たっくさんでいいよ!」xいっぱい
自分の家の赤ゆっくりのお飾りを全てむしってしまった短絡的な家族が、驚くほどの数並んでいたのである。
□ □ □
狂騒は終わった。
群れに別れを告げ、胴付まりさが森の麓にまで歩いてくる。
群れに別れを告げ、胴付まりさが森の麓にまで歩いてくる。
「ふう」
一息ついて山高帽を取り外す。
そこには少女の姿はない。居たのは、30代ほどの男性の姿があった。
そう、彼はまりさに偽装した人間であったのだ。
そこには少女の姿はない。居たのは、30代ほどの男性の姿があった。
そう、彼はまりさに偽装した人間であったのだ。
「たくさん……おちびちゃんてにはいったね……」
「そうですね。ですが少し、傷物が多いのがきになりますね」
「そうですね。ですが少し、傷物が多いのがきになりますね」
帽子を外した人間に、あの傷れいむが話しかけた。
二人は知り合いである。宿敵とさえ言っていい。
二人は知り合いである。宿敵とさえ言っていい。
「そのおちびちゃんはどうするの? またつぶすの?」
「ええ、野生の記憶餡は貴重ですからね。注文が殺到している状態です」
「ええ、野生の記憶餡は貴重ですからね。注文が殺到している状態です」
彼女たちのゆん生。それは飼いゆっくりになることでも、加工所に行くことでもない。
彼女たちの未来は……それは“飼いゆっくりの材料”になることであった。
彼女たちの未来は……それは“飼いゆっくりの材料”になることであった。
「いくつか賢い赤ん坊がいましたね。彼女たちの中枢餡は、良いゆっくりになるでしょう」
ゆっくりが人間と付き合い始めて長く経つ。
その間に、人間は幾つもの失敗を重ね、そしてある点に到達した。
その間に、人間は幾つもの失敗を重ね、そしてある点に到達した。
“調教するより、望むゆっくりを作ったほうが早い”
賢いゆっくりの中枢餡を、必要な分だけの記憶を持つ餡でくるみ、見た目が非常にいい饅頭皮に詰め込む。
これだけで、たったこれだけで飛躍的に飼いやすいゆっくりになった。
これだけで、たったこれだけで飛躍的に飼いやすいゆっくりになった。
今ではペットショップに行ってもゆっくりはいない。あるのは材料だけだ。
カタログで好きな性質を指定すれば、餡を混ぜあわせ、皮をかぶせて一丁上がり。
カタログで好きな性質を指定すれば、餡を混ぜあわせ、皮をかぶせて一丁上がり。
いい加減ななまものであるゆっくりは、生き物としてではなく、ある種の加工食品のような扱いで人間社会を生きることとなった。
飼えるとなると様々なバリエーションを求めるようになるのが人間の性である。
庭先で野生に近い、テラリウムのような生態系をゆっくりで形成したい、もしくは庭や畑の雑草や虫をゆっくりに食べさせたい。
そういう用途にふさわしい材料餡の需要が高まっている。
庭先で野生に近い、テラリウムのような生態系をゆっくりで形成したい、もしくは庭や畑の雑草や虫をゆっくりに食べさせたい。
そういう用途にふさわしい材料餡の需要が高まっている。
「やれやれ、もっとスマートに製造出来れば、それがいいのですけどね」
加工所製の餡では限界があった。草や虫を食物として認識しないのだ。
させたとしても、鳥などが来ても危機感を持たず、あっという間に食われてしまうなど、ハプニングが起こりやすい野外で長生きできない。
せめてそこそこの野生の本能くらいは持ってもらわないと外で飼うにはふさわしくない。
しかし、野生のゆっくりから直接取り出した餡を使用すると、人間に逆らい、山に帰ろうとさえしてしまう。
させたとしても、鳥などが来ても危機感を持たず、あっという間に食われてしまうなど、ハプニングが起こりやすい野外で長生きできない。
せめてそこそこの野生の本能くらいは持ってもらわないと外で飼うにはふさわしくない。
しかし、野生のゆっくりから直接取り出した餡を使用すると、人間に逆らい、山に帰ろうとさえしてしまう。
「“おかざりきり”、たいへんだったでしょ? ゆっくりしてないねにんげんさんは。もっとゆっくりすればいいのに」
だから、群れをラムネ噴霧で眠らせ、茎やぽんぽんの中の実ゆに、ある合成甘味料を注射することにより、お飾りの成長を阻害。
まるで切られたようなお飾りの赤ゆっくりを大量に作る。
そして群れのゆっくりにいじめさせる。
まるで切られたようなお飾りの赤ゆっくりを大量に作る。
そして群れのゆっくりにいじめさせる。
生命の危機に陥るほどいじめ抜かれた赤ゆっくり。
その餡を混ぜあわせれば、野生の性質を持った、山の群れに嫌悪感を抱くような餡質にすることができる。
後は人間はお飾りでいじめないということを教えるだけでいい。
その餡を混ぜあわせれば、野生の性質を持った、山の群れに嫌悪感を抱くような餡質にすることができる。
後は人間はお飾りでいじめないということを教えるだけでいい。
それだけで、野生の性質を持った、人間に心酔する飼いゆっくりの出来上がり。
貴重なため高値で取引され、ゆっくりのブリーダーであるこの人間の、大きな収入源の一つであった。
貴重なため高値で取引され、ゆっくりのブリーダーであるこの人間の、大きな収入源の一つであった。
「ゆっくりしますよ、一仕事終えましたらね」
「ゆぐ……」
「ゆぐ……」
傷れいむが奥歯を噛み締める。
傷れいむは……。このことを知っていた。この人間から教わっていた。
この人間とは長い。何回も何回もぶつかり、跳ね飛ばされてきた。
傷れいむは……。このことを知っていた。この人間から教わっていた。
この人間とは長い。何回も何回もぶつかり、跳ね飛ばされてきた。
「ゆぐ……えっぐ……」
「あの群れは……」
「あの群れは……」
だから、この人間が次に何を言うか、よくわかっていた。
「梅雨まで、もちませんでしょうねぇ……」
「ゆあああああああああああああああああ!!!!」
「ゆあああああああああああああああああ!!!!」
群れは覚えてしまった。あまあまの味を。
群れは覚えてしまった。下層ゆっくりがいることのゆっくりを。
群れは覚えてしまった。あまあまのためなら子供を傷つけるようなゲスがいることを。
「ゆあああああああああああああああああ!!!!」
群れは覚えてしまった。下層ゆっくりがいることのゆっくりを。
群れは覚えてしまった。あまあまのためなら子供を傷つけるようなゲスがいることを。
「ゆあああああああああああああああああ!!!!」
食べ物で、立場で、ゆっくりたちは上下を押し付け合い、殺し合いに発展することだろう。
傷れいむが何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も見たテンプレ。
傷れいむが何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も見たテンプレ。
「ゆあああああああああああああああああ!!!!」
それを避けようと努力した。人間に頭を垂れ教えを乞い、理想に近い運営を行なってきた。
この山は人間の山だ。ゆっくりが増えすぎると駆除されてしまう。
人間のしたことはそれを抑える仕事の一環でもある。餡も手に入り一石二鳥。
この山は人間の山だ。ゆっくりが増えすぎると駆除されてしまう。
人間のしたことはそれを抑える仕事の一環でもある。餡も手に入り一石二鳥。
傷れいむは、そんな人間の思う通りなどにはさせないと、懸命にゆっくりぷれいすの維持と発展のために努力した。
だが、野菜を育てようとしては種から食い散らかし、税を取れば不平不満を言いごまかし反発し、福祉を整えれば皆それに乗っかろうとする。
越冬の保存食があると思えば群れの全ゆんが“ほぞんしょくがあるからだいじょうぶだよ”と飽食に浸る。
すっきり~制限をすれば赤ゆをつくって既成事実を作ろうとする。
越冬の保存食があると思えば群れの全ゆんが“ほぞんしょくがあるからだいじょうぶだよ”と飽食に浸る。
すっきり~制限をすれば赤ゆをつくって既成事実を作ろうとする。
それらを、なんとかしてきた。なんとか収めるべきところに収めようと奮闘努力した
「ゆっぐりぃぃぃぃゆっぐりぃぃぃぃぃぃ!!!!」
その末が“ゆっくりをゆっくりさせないげす”の烙印であった。
人間は傷れいむに一つ頭を下げ山を下り始めた。
それが傷れいむのこころを何よりも抉った。
この人間は、ゆっくりを見下げていない。むしろ愛情さえ持っている。
そのことが否応なしにわかる。だからこそ傷れいむの心を抉る。
それが傷れいむのこころを何よりも抉った。
この人間は、ゆっくりを見下げていない。むしろ愛情さえ持っている。
そのことが否応なしにわかる。だからこそ傷れいむの心を抉る。
傷れいむに対し優しい視線を向けたゆっくりなどゆん生で一ゆもいなかった。
優しい視線を向けたのは、向けてくれたのは、あの人間ただ一人だけだったのだから。
「ゆっぐじは!!!! ゆっぐじできないんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
優しい視線を向けたのは、向けてくれたのは、あの人間ただ一人だけだったのだから。
「ゆっぐじは!!!! ゆっぐじできないんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
叫び声が山間に響いてこだまする。
大地の地霊の叫びのように。
この山間の群れは、梅雨を待たずにお互い殺しあって壊滅した。
長まりさは、おちびを売り飛ばすよう扇動したという罪でうんうん穴に突き落とされ、 悪臭の中、ゆカビに罹患して苦しみ抜いて死んだ。
長まりさは、おちびを売り飛ばすよう扇動したという罪でうんうん穴に突き落とされ、 悪臭の中、ゆカビに罹患して苦しみ抜いて死んだ。