ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1373 優しい人たち
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ankoss
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早朝。
街が再び目覚めるまであと数時間といった頃。
住民の多くはいまだ夢の中だったが、そうではない人もちらほら現れ始めていた。
街が再び目覚めるまであと数時間といった頃。
住民の多くはいまだ夢の中だったが、そうではない人もちらほら現れ始めていた。
街の中には公園がある。
直径二百メートルほどの円形の敷地内には立ち木や芝生が溢れ、中心には噴水があった。
直径二百メートルほどの円形の敷地内には立ち木や芝生が溢れ、中心には噴水があった。
その公園に、今、一人の老人がいた。
左手にゴミ袋を持ち、タバコの吸殻や空き缶などをせっせと拾い集めている。
公園の管理人……ではない。
掃除を日課にしているだけの、ごく普通の住民だった。
左手にゴミ袋を持ち、タバコの吸殻や空き缶などをせっせと拾い集めている。
公園の管理人……ではない。
掃除を日課にしているだけの、ごく普通の住民だった。
ぐるりと園内を回り終えると、老人は大きく背伸びをし、深呼吸した。
公衆トイレの前にある時計を見る。
午前六時。
いつもと変わらぬ朝だ。
彼は、自分以外には誰一人いない、静かな公園が好きだった。
掃除が終ったあと、そのままのんびりすることも彼の日課である。
噴水のそばのベンチに座ろうとしたそのとき、静寂が破られた。
公衆トイレの前にある時計を見る。
午前六時。
いつもと変わらぬ朝だ。
彼は、自分以外には誰一人いない、静かな公園が好きだった。
掃除が終ったあと、そのままのんびりすることも彼の日課である。
噴水のそばのベンチに座ろうとしたそのとき、静寂が破られた。
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
「言われんでもゆっくりし……なに?」
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
「言われんでもゆっくりし……なに?」
確かに人間はいなかった。
が、ゆっくりはいた。
それも二匹。目の前に。
ゆっくりれいむと、恐らくはその子供であろうゆっくりまりさが、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。
老人はとりあえずベンチに腰を下ろしてから、闖入者たちをまじまじと見つめた。
二匹とも汚れてはいるものの、街に暮らすゆっくりとしては小奇麗なほうだった。
が、ゆっくりはいた。
それも二匹。目の前に。
ゆっくりれいむと、恐らくはその子供であろうゆっくりまりさが、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。
老人はとりあえずベンチに腰を下ろしてから、闖入者たちをまじまじと見つめた。
二匹とも汚れてはいるものの、街に暮らすゆっくりとしては小奇麗なほうだった。
(街中でもゆっくりが増えてきたと聞いてはいたが……いや……)
いったいどこから……などとは考えるまい。
いつの間にかそこにいるのがゆっくりなのだ。
いつの間にかそこにいるのがゆっくりなのだ。
「ゆっくりしていってね!!! おじいさんは ゆっくりできるひと?」
「ゆっくち! ゆっくちしようね!」
「あ、あぁ、ゆっくり……」
「ゆっくち! ゆっくちしようね!」
「あ、あぁ、ゆっくり……」
返事をしかけて、慌てて口を噤む。
そして、努めて冷たい声でれいむたちに問いかけた。
そして、努めて冷たい声でれいむたちに問いかけた。
「お前たちはここに何をしに来たんだ?」
「ゆぅ? れいむたちは ゆっくりぷれいすを さがしにきたんだよ!」
「ここは とっても ゆっくちできりゅよ!」
「ゆぅ? れいむたちは ゆっくりぷれいすを さがしにきたんだよ!」
「ここは とっても ゆっくちできりゅよ!」
老人の声の変化にも気付かず、れいむとまりさは楽しそうにはしゃいでいた。
「そうか……。だがな、ここは人間のための場所なんだ。お前たちが入ってはいけないんだ。
判るな? 判ったらとっとと出て行け」
「ゆ……どうして? どうして そんなこというの? みんなで いっしょにゆっくりしようよ!」
「ゆっくちぃ……」
判るな? 判ったらとっとと出て行け」
「ゆ……どうして? どうして そんなこというの? みんなで いっしょにゆっくりしようよ!」
「ゆっくちぃ……」
さすがに不穏なものを感じとったのか、れいむたちの表情が翳る。
まりさに至っては涙目になっていた。
まりさに至っては涙目になっていた。
「駄目だ。いいか、今すぐに、ここから、出て行け。
二度と来るんじゃない。人間の目に付かんところで暮らすんだ。いいな?」
「どうして……? おじいさん ゆっくりしようよ……。
ゆっくりぷれいすを きれいにしていたときの おじいさんは、とってもゆっくりして……」
「喧しい!!」
二度と来るんじゃない。人間の目に付かんところで暮らすんだ。いいな?」
「どうして……? おじいさん ゆっくりしようよ……。
ゆっくりぷれいすを きれいにしていたときの おじいさんは、とってもゆっくりして……」
「喧しい!!」
老人はれいむの言葉を遮ると、ベンチから立ち上がった。
「出て行かんと言うのなら、この場で叩き潰してやる!」
「ゆ、ゆんやぁあぁぁぁあああ!! おちびちゃん ゆっくりしないで にげるよぉおおお!!」
「お、おきゃあしゃぁあん!!」
「ゆ、ゆんやぁあぁぁぁあああ!! おちびちゃん ゆっくりしないで にげるよぉおおお!!」
「お、おきゃあしゃぁあん!!」
れいむはまりさを口の中に入れると、脱兎の如く逃げ出した。
その、ゴムまりのように飛び跳ねていく後姿を見つめる老人。
彼の心には、掃除を終えたときの爽快感は欠片も残っていなかった。
その、ゴムまりのように飛び跳ねていく後姿を見つめる老人。
彼の心には、掃除を終えたときの爽快感は欠片も残っていなかった。
* * *
一時間後。
れいむとまりさは公園にいた。
やっと見つけたゆっくりプレイスを、そう簡単に諦め切れるわけがなかったのだ。
あの老人の姿はない。
れいむとまりさは公園にいた。
やっと見つけたゆっくりプレイスを、そう簡単に諦め切れるわけがなかったのだ。
あの老人の姿はない。
「ゆぅん。もうだいじょうぶだよ おちびちゃん。ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくちー! ゆっくちしていっちぇね!!!」
「ゆっくちー! ゆっくちしていっちぇね!!!」
ぽよんぽよんと跳ね回るまりさを嬉しそうに見守るれいむ。
とてもゆっくりした時間を、二匹は過ごしていた。
不意に後ろから声がした。
とてもゆっくりした時間を、二匹は過ごしていた。
不意に後ろから声がした。
「ん? ゆっくり……? こんなところにも出るようになったのか……」
ビクンと固まり、声のしたほうを恐るおそる見上げるれいむとまりさ。
果たしてそこには、スーツ姿の男が自分たちを見下ろしていた。
果たしてそこには、スーツ姿の男が自分たちを見下ろしていた。
「ゆ、ゆあ、ああぁ……」
「おきゃ、おきゃーしゃ……」
「おきゃ、おきゃーしゃ……」
先ほどの老人の怒声が記憶に残っていた二匹はガタガタと震え上がった。
それでも何とか、れいむは声を絞り出す。
それでも何とか、れいむは声を絞り出す。
「に、にんげんさん、ごめんなさい。れいむたち、すぐにでていきます。
だ、だから たすけてください……」
「何だ? えらく殊勝な物言いだな」
だ、だから たすけてください……」
「何だ? えらく殊勝な物言いだな」
野良ゆっくりには珍しい態度に、男は興味を持った。
自分は危害は加えないとどうにか安心させ、れいむから話を訊く。
おおよその事情が飲み込めた男は、「ふぅむ」と溜め息を吐いた。
自分は危害は加えないとどうにか安心させ、れいむから話を訊く。
おおよその事情が飲み込めた男は、「ふぅむ」と溜め息を吐いた。
「なるほどなぁ、そんな事を言われたのか。そりゃひどいなぁ」
「ゆ……?」
「ゆ……?」
想像していた反応と違っていたのだろう、れいむたちは不思議そうに男を見上げた。
その視線に笑顔で応えながら彼は言う。
その視線に笑顔で応えながら彼は言う。
「れいむ、まりさ。この公園は人間だけのもの、なんていうのは嘘っぱちさ」
「うそ……?」
「あぁ、そうさ。そのお爺さんはれいむたちに意地悪したかったんだろう。
いや、まったく、可哀相な目に遭ったもんだ」
「じゃ、じゃあ れいむたち……ここにいて いいの……?」
「もちろんさ。好きなだけここにいるといい」
「うそ……?」
「あぁ、そうさ。そのお爺さんはれいむたちに意地悪したかったんだろう。
いや、まったく、可哀相な目に遭ったもんだ」
「じゃ、じゃあ れいむたち……ここにいて いいの……?」
「もちろんさ。好きなだけここにいるといい」
その言葉を聞いて、れいむたちは一瞬ぽかんとしていた。
しかしすぐに自分たちの幸福を実感したらしい。
しかしすぐに自分たちの幸福を実感したらしい。
「ゆ……ゆわぁあぁぁぁあああ! ありがとう おにいさん! よかったよぉおおお……!」
「ゆわーい!! ゆっくち! ゆっくちっ! ゆっくちーっ!」
「ゆわーい!! ゆっくち! ゆっくちっ! ゆっくちーっ!」
れいむは涙を流して男に礼を言い、まりさははちきれんばかりの笑顔で飛び跳ねた。
全身で喜びを表現する二匹に、男もつられて笑い出す。
全身で喜びを表現する二匹に、男もつられて笑い出す。
「おいおい、俺は特に何かをしたわけじゃ……ま、いいか。
それじゃ、俺はそろそろ行くよ。ゆっくりしていけよ、れいむ、まりさ」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
それじゃ、俺はそろそろ行くよ。ゆっくりしていけよ、れいむ、まりさ」
「ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくちしていっちぇね!!!」
公園の出口へと向かう男。
その背後からは、れいむたちの幸せそうな笑い声がいつまでも聞こえるような気がした。
その背後からは、れいむたちの幸せそうな笑い声がいつまでも聞こえるような気がした。
公園を出る頃にはその声も聞こえなくなっていた。
男はおもむろに鞄から携帯電話を取り出すと、あるところへ電話をかけた。
男はおもむろに鞄から携帯電話を取り出すと、あるところへ電話をかけた。
「ええ、そうです。ゆっくりれいむとまりさが一匹ずつ。場所は……」
スーツと靴は新調したばかりで、汚したくなかった。
「大丈夫だと思います。噴水の近くを気に入っていたみたいですから。
少なくとも公園の外には出ないと思います」
少なくとも公園の外には出ないと思います」
ゆっくりとは本当に単純だ。
「公園には小さな子供も遊びに来ますからね。あんな不潔なゆっくりがいては危険極まりない」
なぜ、あんなのが存在しているんだろう?
『最近は潰したらそのまま放置されるケースが多くてですね。
ご連絡いただいて助かります。速やかに処理しますのでご安心ください』
「いえいえ、市民として当然の義務ですよ。では、お願い致します」
ご連絡いただいて助かります。速やかに処理しますのでご安心ください』
「いえいえ、市民として当然の義務ですよ。では、お願い致します」
男は電話を切った。
市役所と契約したゆっくり駆除専門の業者は二十四時間対応だ。
便利な時代になったものである。
業者によると、都市部に発生するゆっくりの数は年々増えてきているらしい。
いやな時代になった。
市役所と契約したゆっくり駆除専門の業者は二十四時間対応だ。
便利な時代になったものである。
業者によると、都市部に発生するゆっくりの数は年々増えてきているらしい。
いやな時代になった。
「それにしても、『人間の目に付かないところで暮らせ』か。
誰かは知らんが、お優しい人もいたもんだ」
誰かは知らんが、お優しい人もいたもんだ」
男は少しだけ顔を歪めた。
遅かれ早かれ、あの二匹は死ぬのだ。
それなら、少しでも幸せを感じさせてやるのが優しさだと思うのだが。
遅かれ早かれ、あの二匹は死ぬのだ。
それなら、少しでも幸せを感じさせてやるのが優しさだと思うのだが。
男は駅の方へと歩いて行く。
早朝出勤もたまにはいいものだ、と初めて思った。
彼の横を、自転車に乗った高校生が通り過ぎる。
早朝出勤もたまにはいいものだ、と初めて思った。
彼の横を、自転車に乗った高校生が通り過ぎる。
「おっと、俺も急がんと遅刻しちまう」
街は本格的に目覚めつつあった。
(了)
挿絵:車田あき