ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1298 ゆっくりにかけるかね
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ankoss
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ゆっくりにかけるかね
ある寒い日の朝、青年が休日にテレビのニュースを眺めていると、若づくり
した女性キャスターが、手に持った資料の紙束を忙しくめくっていた。耳を
傾けてやると、淡々とした口調でどこか熱心に語るそれは、このところ急に
増えているという、『ゆっくり』に関する事件のニュースだった。
男は水を入れたヤカンをコンロに掛けると、やれやれ、といった風に肩を透
かした。
朝食のトーストを齧り、カップかもうもう湯気を立ち上らせ、こげ茶が更に
濁ったような色のコーヒーを飲んだ。唯一と言っていい青年自慢の特製ドロ
ドロコーヒーは喉をしっとりと湿らせ、青年の体をあっという間に温める。
青年はブルーベリージャムをスプーンたっぷりに救いあげ、トーストの表面
に遠慮なく塗りたくった。表面の小さな焦げが見えなくなって、再度齧りつ
くと、リモコンを操ってチャンネルを変えた。
『 ……のお薦めする 新 ☆ 製 ☆ 品 ☆ !!!! 』
ばかばかしいほど明るい音楽の、とあるCMが流れていた。思わず、青年は
頭を抱えた。
近年急増し続ける『ゆっくり被害』は、とうとうゆっくりと言うナマモノを、
生物学の立ち位置的に害虫と指定し、国民には黙認的に駆除対象とされた。
という話をつい先日友人から聞いた。
――尤もその容姿を可愛がる人も結構いるらしく、全部が全部害虫というこ
とではない、とも聞き、「どっちなんだよ」と青年は思った。
世の中には、テレビで大々的に取り上げられると、直ぐにそこから漏れる甘
い汁をすすりに群がる、浅はかな連中がいる。例によって、このゆっくり騒
動において真っ先に甘い汁を啜りに来た会社がある。ゆっくりを撃退すると
いうグッズを数多く作り、ゆっくりにとって地獄と知られる場所――。
名前を『加工所』といった。
テレビのコマーシャルは加工所の新製品の紹介している。どう見ても特別な
仕掛けなど無さそうな透明な箱が、さぞ神々しく画期的な発明品であるかの
ような映し方をされていた。
青年は2杯目のコーヒーをカップに次いだ。テレビ画面を隠すようにカップ
を掲げ、湯気の向こうに先日の友人を思い出す。
『じゃじゃーん! 見ろよこの箱! 加工所から取り寄せたんだぜ!?』
嬉々として語る友人の腕には、あの透明な箱があった。
『他にもこれとか……これも、これなんかも取り寄せたんだぜ!』
机の上を次から次に占領する対ゆっくり用駆除道具。青年の目からすれば、
どれも等しくごみ山のガラクタたちに見えた。
『これがよー…………』
そして、頼んでもないのに解説が始まる。結局その時は、興奮してベラベラ
まくし立てた友人の、たちの悪いセールストークで一日を終えた。
−
「ゆぎぃ……ゆっ……ゆっ……」
小さな、ほんの小さな一つの喘ぎ声に、青年の意識は引き戻された。それは
昔飼っていた熱帯魚の水槽の中から聞こえていた。
米粒ほどの砂利の上に、蜜柑くらいのまんまるまずそうなハゲ饅頭が一つ。
下半分をセロハンテープで何重かに縛られ、水槽の濁った水のせいか皮膚は
湿気でふやけ、ただれている。人間でいう足に相当する部分は、砂利に対し
て水平にくっついている。 輪郭を小さくしたようなクリクリのお目目から
涙を流していた。
かつてゆっくりれいむと呼ばれていた普通のゆっくりだった。
うめき声は口に巻き付けたテープが唾液で緩み、微かな空気の通り道を作っ
たせいだろう。1週間も唾液にさらされれば、接着面の粘性も落ちるものだ。
青年は一瞥をくれてやる。口を開いた。
「――ああ、まだいたの?」
それだけ。ハゲれいむは大粒の涙を流したが、もううめき声は上げなかった。
れいむには逃げる意思はなかった。
水槽の高さは数十?はあるから蜜柑くらいの大きさしかないれいむでは逃げ
られない。そもそも青年はれいむを捕獲して直ぐに、“あんよ”を包丁で適
当に切って捨てているから動けるはずもなかった。
もう少しでれいむは死ぬだろう。実に簡単に、死ぬのだ。
−
『次に加工所がお薦めしますのはァ~ッッ!! ゆっくりホイホ……』
食器をかたずけに台所に来ると、冷蔵庫の足元に設置してあるゴキブリホイ
ホイが激しく揺れていた。青年はまたも、ああ、と3日前を思いだす。ここ
には一匹のゴキブリと、一匹のまりさが入っているはずだ。
これを買った当日、冷蔵庫ゴキブリホイホイの粘着剤のど真ん中に、本来ゴ
キブリをとらえるゴキブリの疑似餌の上にチョコクッキーのカスをおいてい
た。チョコはクッキーなどに比べると香りが強いから選んだ。
仕事から帰ってくると、不思議なことにゴキブリホイホイは冷蔵庫の下から
消えていた。視線を少し上げると、暴れ狂うゴキブリホイホイがあった。
「ゆぎぃ~っ!! な、なんであまあまがとれないのぜーっ!!!?
あまあまはゆっくりしないでまりささまにたべられるんだぜ――っ!!」
歯ぎしりと共に少年のような声がした。上から覗くと、案の定一匹のまりさ
がチョコの前でホイホイ飛び跳ねていた。
まりさは自分を大きな影が覆ったことも、そもそもなぜ動けないのかも気づ
いていない。感情に任せて飛び付かんともがく姿、目は、狂信者を思わせた。
青年はそっと冷蔵庫の下にゴキブリホイホイを持ってくると、マジックテー
プで床に固定した。
中ではまりさの虚しい努力が続いていた。
-
テーブルの上に、パンパンに膨れ上がった500?ペットボトルが置いてあ
る。中に入っているのは飲料物ではなく。ゆっくりだ。
「ゆぎゅ……ゆっ! ……ゆっ……」
掠れた声は息も絶え絶えと伝える。それもそうだった。このペットボトルに
入ってるゆっくりは、全部で3匹。いずれも、本来は野球ボールからソフト
ボールサイズに成長している、子ゆっくりなのだから。
このゆっくりたちは、1ヶ月ほど前に青年の家に侵入し、お家宣言を行った
れいむとまりさの番の子供である。その時はれいむの頭に生えた蔦にぶら下
がっていた。
青年はまりさとれいむの「ここは~」というテンプレ的な台詞を聞きながら
冷静にれいむの蔦を根元から千切り、驚愕に動きが止まったまりさを掴むと、
包丁で切り刻んで水洗トイレに流した。
『お゛ね゛がい゛でずぅ゛ぅ゛ぅ゛!!! あ゛がぢゃ゛ん゛だげばぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!』
まりさを殺した無慈悲な手が、自分の頭をつかんだ時、れいむは泣き叫び、
赤ちゃんだけは、赤ちゃんだけはと悲願した。青年はわかったと答え、れ
いむは安堵した。後にれいむは口をコンロの熱で溶接され、あんよを焼か
れ、体の1/4の高さまでお湯を入れた水槽に入れられた。
そのれいむの目の前で、青年は砂糖水とオレンジジュースを混ぜたものを、
500?ペットボトルに入れ、続けて、4匹の赤ゆっくりが実ったままの蔦を
入れた。
れいむは青年に感謝した。声は出ないし動けないし、おまけにこの体は浸
された水で少しずつ溶けていくだろう。だが、子供たちは生きていける。
青年はれいむをみた。涙をとめどなく流し、勝手な感涙に浸るれいむ。
きっと
「あかちゃんはすごくゆっくりした子供たちだから」、
「ゆっくりせいちょうしてにんげんをゆっくりさせるから」、
「自分似て、ゆっくりした子」、
「自分は死ぬけど、あの子たちは殺されない!」
と心から思っている。どうでもいい。
翌日、赤ゆっくりが4匹、元気に生まれた。
−
そして1週間後、親れいむが既に足が安定せず腹のあたりまで溶け始めた頃、
ゆっくりたちに異変が起こり始めた。
「せまいよぉ! もっちょそっちによっちぇね!!」
「ゆんやぁぁ! それじゃまりささまがゆっくりできないんだじぇ!!!」
「い゛も゛う゛どごぞ! でいぶのあだまにのらないでね!!!」
「ゆぎゃああああ!! れいみゅつびゅれりゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
赤ゆっくりは子ゆっくりになり、大きさも格段に大きくなっていた。一番上
の姉まりさは、言葉づかいこそ赤ゆっくり混じりであるが、大きさ的には野
球ボールと変わりない。
より広い空間を求めて、姉妹たちは、他の姉妹を押しつぶしていく。
うんうんもしーしーも出したら出しっぱなし、小さい頃は一番年下のれいむ
が処理させられていたものの、今は違う。
体の向きを変えるスペースを作るのすら一苦労で、おまけに一番下にいるこ
とで常に潰れかけなれいむでは処理が追い付くはずもない。
どころか、押しつけられた体は底に溜まったしーしーに溶かされ始めていた。
「……………!! ……………!!!」
親れいむは何もできず、ただ黙って姉妹が憎しみ合う様を見ていた。
青年はペットボトルの中に、オレンジジュースを流し込む。
「ちゅーる! ちゅーる! し、し、ししあわしぇ~っ!!!」
最上段を陣取るまりさが体にかかるオレンジジュースを舐めとる。光悦した
表情を浮かべた。2段目、3段目のれいむとまりさもこぼれてくるオレンジジ
ュースを舐めとり、同様に光悦した。
再下段にいるれいむは、絶叫した。
「ゆ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!」
自分の腹を、みるみるオレンジの液体が浸していく。舐めとろうにも体を動
かせない。がたがたと震えるが、上からのしかかる圧力に勝てない。
その間にも、オレンジジュースは降り注ぐ。
「ゆぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! やめちぇぇぇ! かけにゃいでぇぇぇ!!!
とけちゃうぅぅぅ!!!!! れいみゅとけちゃぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「うるさいのじぇ!! くじゅれいむ!!」
「しょーじゃしょーじゃ! あまあまをあげてるのにもんきゅいうにゃ!!」
「ゆっへっへっ! くじゅれいみゅはだまってあしばになってるのぜ!!」
姉たちがれいむにのしかかる力を強めた。ぶしっと、れいむの腹の皮が破れた。
「ゆぎゅ……が……」
それから、年下のれいむが死ぬには時間がかかった。オレンジジュースと砂
糖水の液体は、れいむを溶かしつつ、意識と餡子をはっきりさせたまま、生
皮をゆっくりはぎ取るように、殺して行った。
親れいむがドロドロに溶けてなくなるのは、さらにその一週間後だった。
‐
そして今、子ゆっくりたちは互いに大きくなり続け、ペットボトルをパンパ
ンに膨れさせるほど成長した。実に見事な成長だが、それが自分たちを苦し
めているとは餡子脳では分からない。
「ゆぎゅ……ゆぎゅ……」
一番上のまりさの声が細々と聞こえる。二番目にいるれいむはペットボトル
の側面に運悪く正面から押しつけられいた。圧力に耐えかねた両眼が破裂し
ている。それでも餡子が漏れないのは、漏れる隙間もなく押しつけられてい
るからに他ならない。
末っ子れいむが死んで、自動的に一番下になったまりさは体の半分がドロド
ロに溶け、それでもオレンジジュースと砂糖水のおかげで死んでいなかった。
水分を吸い上げた皮が、黄ばんでいる。
ペットボトルの側面から見える、半分の潰れかけの横顔は、以外にも笑顔だった。
ちらりと時計を見て、青年は片付けの引き換えに冷蔵庫から持ってきたオレ
ンジジュースをペットボトルに流し込む。テーブルの上の僅かな出来ごと。
オレンジジュースの量こそ日ごと適当だが、青年はこの日課を、一日足りと
て欠かしたことはない。
一番上のまりさが口を動かし、何かをつぶやいた。
「……ちゅーる……ちゅーる……ちゅーる……」
‐
『さらにさらになぁ~んとぉ! この石はゆっくりが嫌いな臭いを……』
朝の日課を終えた青年は、そうだ靴を磨こうと玄関に向かう。靴は意外と高
いから、大事に扱わなければならない。
靴箱から事後と用のローファーを出し、糸のほつれたタオルとクリーナーを
洗面所備え付けの棚から、お湯をためた洗面器を風呂場から持ち出す。さぁ
いざ磨こうとしたとき、やはり声が聞こえた。
「ゆっ……そのこえはにんげんさん……?
おねがいします! れいむを、れいむをたすけてくださいぃぃぃぃ!!」
ドアの向こう側から、ゆっくりの声。青年は手を止めて、ドアを開ける。
そこにはれいむとまりさの番。そしてその子供であろう大量の赤ゆっく
りがいた。
「ゆっへっへっ! さすがれいむだぜ!」
まりさがしたり顔で笑う。それを見たれいむは体をのけぞらせて威張った。
「ゆっへん! 人間さんなんて可愛い可愛いれいむが頼めば
いちころだっていったでしょ~!」
「ゆっきゅりー! おかぁしゃんはしゅごいね!!!」
「しゃしゅがれいみゅのおかあしゃんだにぇ!!」
「ゆっきゅりー!!!!!!」
赤ゆっくりたちの雑音大合唱に気分を良くしたれいむとまりさは、キリッと
その目に自信を滾らせて、青年を見据えた。
「ここはまりさたちのゆっ゛!!!!!?」
お決まりのセリフを吐くため、大きく口を開いたまりさに、青年は靴磨きの
クリーナーをワンプッシュ。さらに黒く濁りかけていた洗面器のお湯を騒が
しい赤ゆっくりに満遍なく振りかけた。
「ゆべぇぇぇぇ!!!!!??」
まりさが、それにつられるように赤ゆっくり立ちが痙攣し始める。
まりさは眼球が飛び出すほど盛り上がり、口から餡子を吐気散らす。赤ゆっ
くりたちは餡子を吐きだして即死するもの、暴れ出して他の赤ゆっくりと潰
れ合うものさまざまだったが、
「もっちょ……ゆ……」
しばらく耐えていた一匹の死をきっかけに、ドミノ倒しのようにパタパタ倒
れ、永遠にゆっくりした。
「おとびちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!! ゆっくりしたらだめぇぇぇぇ!!
ま゛でぃざぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!!」
れいむは何をしていいかわからず、目線を絶えずきょろきょろさせていた。
まりさは痙攣がやまず、盛り上がりすぎた眼球が片方こぼれおちた。ぼとん、
と質量を感じさせる音で落下したそれを、青年は踏みつぶした。
「いや゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ゆぶじっ゛!!!!」
青年は泣き叫ぶれいむの口に糸のほつれたタオルを突っ込み、持っていたロ
ーファーの踵でれいむの眉間を打ち抜いた。ぐちゃっと音がして、れいむの
体が歪なUの字に変わる。
餡子を撒き散らし転がると、まりさと同じように痙攣した。
青年は何事もなかったかのように扉を閉め、靴を磨く作業に戻った。
まりさとれいむ、それに生き残った赤ゆっくりたちは、どうせ野犬やカラス
に食われる。動けないゆっくりなど野生動物にとってはただの餌なのだ。
そうでなくても掃除は簡単だ。赤ゆっくりの吐いた餡子はその体だけに大し
た量ではない。大量に吐き散らしたれいむも大半の餡子は体に残っている。
その場合、生きたまま虫などに食われるのが自然の摂理。
ドア一枚隔てた先で、靴のクリーナーというどこの家にもありそうなものに
よって、多くのゆっくりが死んでいた。
‐
青年はリビングに戻り、背伸びを一つすると、カタカタ泡を吹いていたヤカ
ンを止め、テレビを見た。
『今日は太っ腹だよ~っ! これはぬぁんと!! ……!』
加工所の商品紹介はまだ続いていた。
ばかばかしい。と青年は呟く。
ゆっくりは所詮饅頭程度の耐久性しか持っておらず、痛みに弱い。
バスケットボールサイズでも中高生なら余裕で踏みつぶして殺せるし、
拷問なんてペットボトルとオレンジジュースさえあれば簡単にできる。
こんなやつらの為に高い金出して専門の道具を買うやつもだが、
それをぼったくり値打ちで売り出す業者もあきれ果てる。
ゆっくりにさしたる興味がない青年は、テレビの電源を落とした。
「バカジャネェーノ……ってな」
直後、背後から「ゆぎゃぁぁぁぁ!!」という声が聞こえた。
空気の入れ替えの為にあけてた玄関から侵入した野良ゆっくりが、
タップリ吹きかけておいた防虫剤をタップリ吸い込んだのだろう。
「一番あきれ果てるのは……あいつらかなぁ」
外にあった多量のゆっくりの死骸を見て、何も思わなかったのだろうか?
青年は片手に沸かしたお湯を持ち、めんどくさそうに玄関へと向かった。
単純でシンプルなのを書きたかったが消化不良感がすごい。
正直こいつらいじめるのに特殊な道具いらんでしょ?
書いた作品
ふたば系ゆっくりいじめ 884 ゆ 前編
ある寒い日の朝、青年が休日にテレビのニュースを眺めていると、若づくり
した女性キャスターが、手に持った資料の紙束を忙しくめくっていた。耳を
傾けてやると、淡々とした口調でどこか熱心に語るそれは、このところ急に
増えているという、『ゆっくり』に関する事件のニュースだった。
男は水を入れたヤカンをコンロに掛けると、やれやれ、といった風に肩を透
かした。
朝食のトーストを齧り、カップかもうもう湯気を立ち上らせ、こげ茶が更に
濁ったような色のコーヒーを飲んだ。唯一と言っていい青年自慢の特製ドロ
ドロコーヒーは喉をしっとりと湿らせ、青年の体をあっという間に温める。
青年はブルーベリージャムをスプーンたっぷりに救いあげ、トーストの表面
に遠慮なく塗りたくった。表面の小さな焦げが見えなくなって、再度齧りつ
くと、リモコンを操ってチャンネルを変えた。
『 ……のお薦めする 新 ☆ 製 ☆ 品 ☆ !!!! 』
ばかばかしいほど明るい音楽の、とあるCMが流れていた。思わず、青年は
頭を抱えた。
近年急増し続ける『ゆっくり被害』は、とうとうゆっくりと言うナマモノを、
生物学の立ち位置的に害虫と指定し、国民には黙認的に駆除対象とされた。
という話をつい先日友人から聞いた。
――尤もその容姿を可愛がる人も結構いるらしく、全部が全部害虫というこ
とではない、とも聞き、「どっちなんだよ」と青年は思った。
世の中には、テレビで大々的に取り上げられると、直ぐにそこから漏れる甘
い汁をすすりに群がる、浅はかな連中がいる。例によって、このゆっくり騒
動において真っ先に甘い汁を啜りに来た会社がある。ゆっくりを撃退すると
いうグッズを数多く作り、ゆっくりにとって地獄と知られる場所――。
名前を『加工所』といった。
テレビのコマーシャルは加工所の新製品の紹介している。どう見ても特別な
仕掛けなど無さそうな透明な箱が、さぞ神々しく画期的な発明品であるかの
ような映し方をされていた。
青年は2杯目のコーヒーをカップに次いだ。テレビ画面を隠すようにカップ
を掲げ、湯気の向こうに先日の友人を思い出す。
『じゃじゃーん! 見ろよこの箱! 加工所から取り寄せたんだぜ!?』
嬉々として語る友人の腕には、あの透明な箱があった。
『他にもこれとか……これも、これなんかも取り寄せたんだぜ!』
机の上を次から次に占領する対ゆっくり用駆除道具。青年の目からすれば、
どれも等しくごみ山のガラクタたちに見えた。
『これがよー…………』
そして、頼んでもないのに解説が始まる。結局その時は、興奮してベラベラ
まくし立てた友人の、たちの悪いセールストークで一日を終えた。
−
「ゆぎぃ……ゆっ……ゆっ……」
小さな、ほんの小さな一つの喘ぎ声に、青年の意識は引き戻された。それは
昔飼っていた熱帯魚の水槽の中から聞こえていた。
米粒ほどの砂利の上に、蜜柑くらいのまんまるまずそうなハゲ饅頭が一つ。
下半分をセロハンテープで何重かに縛られ、水槽の濁った水のせいか皮膚は
湿気でふやけ、ただれている。人間でいう足に相当する部分は、砂利に対し
て水平にくっついている。 輪郭を小さくしたようなクリクリのお目目から
涙を流していた。
かつてゆっくりれいむと呼ばれていた普通のゆっくりだった。
うめき声は口に巻き付けたテープが唾液で緩み、微かな空気の通り道を作っ
たせいだろう。1週間も唾液にさらされれば、接着面の粘性も落ちるものだ。
青年は一瞥をくれてやる。口を開いた。
「――ああ、まだいたの?」
それだけ。ハゲれいむは大粒の涙を流したが、もううめき声は上げなかった。
れいむには逃げる意思はなかった。
水槽の高さは数十?はあるから蜜柑くらいの大きさしかないれいむでは逃げ
られない。そもそも青年はれいむを捕獲して直ぐに、“あんよ”を包丁で適
当に切って捨てているから動けるはずもなかった。
もう少しでれいむは死ぬだろう。実に簡単に、死ぬのだ。
−
『次に加工所がお薦めしますのはァ~ッッ!! ゆっくりホイホ……』
食器をかたずけに台所に来ると、冷蔵庫の足元に設置してあるゴキブリホイ
ホイが激しく揺れていた。青年はまたも、ああ、と3日前を思いだす。ここ
には一匹のゴキブリと、一匹のまりさが入っているはずだ。
これを買った当日、冷蔵庫ゴキブリホイホイの粘着剤のど真ん中に、本来ゴ
キブリをとらえるゴキブリの疑似餌の上にチョコクッキーのカスをおいてい
た。チョコはクッキーなどに比べると香りが強いから選んだ。
仕事から帰ってくると、不思議なことにゴキブリホイホイは冷蔵庫の下から
消えていた。視線を少し上げると、暴れ狂うゴキブリホイホイがあった。
「ゆぎぃ~っ!! な、なんであまあまがとれないのぜーっ!!!?
あまあまはゆっくりしないでまりささまにたべられるんだぜ――っ!!」
歯ぎしりと共に少年のような声がした。上から覗くと、案の定一匹のまりさ
がチョコの前でホイホイ飛び跳ねていた。
まりさは自分を大きな影が覆ったことも、そもそもなぜ動けないのかも気づ
いていない。感情に任せて飛び付かんともがく姿、目は、狂信者を思わせた。
青年はそっと冷蔵庫の下にゴキブリホイホイを持ってくると、マジックテー
プで床に固定した。
中ではまりさの虚しい努力が続いていた。
-
テーブルの上に、パンパンに膨れ上がった500?ペットボトルが置いてあ
る。中に入っているのは飲料物ではなく。ゆっくりだ。
「ゆぎゅ……ゆっ! ……ゆっ……」
掠れた声は息も絶え絶えと伝える。それもそうだった。このペットボトルに
入ってるゆっくりは、全部で3匹。いずれも、本来は野球ボールからソフト
ボールサイズに成長している、子ゆっくりなのだから。
このゆっくりたちは、1ヶ月ほど前に青年の家に侵入し、お家宣言を行った
れいむとまりさの番の子供である。その時はれいむの頭に生えた蔦にぶら下
がっていた。
青年はまりさとれいむの「ここは~」というテンプレ的な台詞を聞きながら
冷静にれいむの蔦を根元から千切り、驚愕に動きが止まったまりさを掴むと、
包丁で切り刻んで水洗トイレに流した。
『お゛ね゛がい゛でずぅ゛ぅ゛ぅ゛!!! あ゛がぢゃ゛ん゛だげばぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!』
まりさを殺した無慈悲な手が、自分の頭をつかんだ時、れいむは泣き叫び、
赤ちゃんだけは、赤ちゃんだけはと悲願した。青年はわかったと答え、れ
いむは安堵した。後にれいむは口をコンロの熱で溶接され、あんよを焼か
れ、体の1/4の高さまでお湯を入れた水槽に入れられた。
そのれいむの目の前で、青年は砂糖水とオレンジジュースを混ぜたものを、
500?ペットボトルに入れ、続けて、4匹の赤ゆっくりが実ったままの蔦を
入れた。
れいむは青年に感謝した。声は出ないし動けないし、おまけにこの体は浸
された水で少しずつ溶けていくだろう。だが、子供たちは生きていける。
青年はれいむをみた。涙をとめどなく流し、勝手な感涙に浸るれいむ。
きっと
「あかちゃんはすごくゆっくりした子供たちだから」、
「ゆっくりせいちょうしてにんげんをゆっくりさせるから」、
「自分似て、ゆっくりした子」、
「自分は死ぬけど、あの子たちは殺されない!」
と心から思っている。どうでもいい。
翌日、赤ゆっくりが4匹、元気に生まれた。
−
そして1週間後、親れいむが既に足が安定せず腹のあたりまで溶け始めた頃、
ゆっくりたちに異変が起こり始めた。
「せまいよぉ! もっちょそっちによっちぇね!!」
「ゆんやぁぁ! それじゃまりささまがゆっくりできないんだじぇ!!!」
「い゛も゛う゛どごぞ! でいぶのあだまにのらないでね!!!」
「ゆぎゃああああ!! れいみゅつびゅれりゅうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
赤ゆっくりは子ゆっくりになり、大きさも格段に大きくなっていた。一番上
の姉まりさは、言葉づかいこそ赤ゆっくり混じりであるが、大きさ的には野
球ボールと変わりない。
より広い空間を求めて、姉妹たちは、他の姉妹を押しつぶしていく。
うんうんもしーしーも出したら出しっぱなし、小さい頃は一番年下のれいむ
が処理させられていたものの、今は違う。
体の向きを変えるスペースを作るのすら一苦労で、おまけに一番下にいるこ
とで常に潰れかけなれいむでは処理が追い付くはずもない。
どころか、押しつけられた体は底に溜まったしーしーに溶かされ始めていた。
「……………!! ……………!!!」
親れいむは何もできず、ただ黙って姉妹が憎しみ合う様を見ていた。
青年はペットボトルの中に、オレンジジュースを流し込む。
「ちゅーる! ちゅーる! し、し、ししあわしぇ~っ!!!」
最上段を陣取るまりさが体にかかるオレンジジュースを舐めとる。光悦した
表情を浮かべた。2段目、3段目のれいむとまりさもこぼれてくるオレンジジ
ュースを舐めとり、同様に光悦した。
再下段にいるれいむは、絶叫した。
「ゆ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!」
自分の腹を、みるみるオレンジの液体が浸していく。舐めとろうにも体を動
かせない。がたがたと震えるが、上からのしかかる圧力に勝てない。
その間にも、オレンジジュースは降り注ぐ。
「ゆぎゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! やめちぇぇぇ! かけにゃいでぇぇぇ!!!
とけちゃうぅぅぅ!!!!! れいみゅとけちゃぅぅぅぅぅぅ!!!!」
「うるさいのじぇ!! くじゅれいむ!!」
「しょーじゃしょーじゃ! あまあまをあげてるのにもんきゅいうにゃ!!」
「ゆっへっへっ! くじゅれいみゅはだまってあしばになってるのぜ!!」
姉たちがれいむにのしかかる力を強めた。ぶしっと、れいむの腹の皮が破れた。
「ゆぎゅ……が……」
それから、年下のれいむが死ぬには時間がかかった。オレンジジュースと砂
糖水の液体は、れいむを溶かしつつ、意識と餡子をはっきりさせたまま、生
皮をゆっくりはぎ取るように、殺して行った。
親れいむがドロドロに溶けてなくなるのは、さらにその一週間後だった。
‐
そして今、子ゆっくりたちは互いに大きくなり続け、ペットボトルをパンパ
ンに膨れさせるほど成長した。実に見事な成長だが、それが自分たちを苦し
めているとは餡子脳では分からない。
「ゆぎゅ……ゆぎゅ……」
一番上のまりさの声が細々と聞こえる。二番目にいるれいむはペットボトル
の側面に運悪く正面から押しつけられいた。圧力に耐えかねた両眼が破裂し
ている。それでも餡子が漏れないのは、漏れる隙間もなく押しつけられてい
るからに他ならない。
末っ子れいむが死んで、自動的に一番下になったまりさは体の半分がドロド
ロに溶け、それでもオレンジジュースと砂糖水のおかげで死んでいなかった。
水分を吸い上げた皮が、黄ばんでいる。
ペットボトルの側面から見える、半分の潰れかけの横顔は、以外にも笑顔だった。
ちらりと時計を見て、青年は片付けの引き換えに冷蔵庫から持ってきたオレ
ンジジュースをペットボトルに流し込む。テーブルの上の僅かな出来ごと。
オレンジジュースの量こそ日ごと適当だが、青年はこの日課を、一日足りと
て欠かしたことはない。
一番上のまりさが口を動かし、何かをつぶやいた。
「……ちゅーる……ちゅーる……ちゅーる……」
‐
『さらにさらになぁ~んとぉ! この石はゆっくりが嫌いな臭いを……』
朝の日課を終えた青年は、そうだ靴を磨こうと玄関に向かう。靴は意外と高
いから、大事に扱わなければならない。
靴箱から事後と用のローファーを出し、糸のほつれたタオルとクリーナーを
洗面所備え付けの棚から、お湯をためた洗面器を風呂場から持ち出す。さぁ
いざ磨こうとしたとき、やはり声が聞こえた。
「ゆっ……そのこえはにんげんさん……?
おねがいします! れいむを、れいむをたすけてくださいぃぃぃぃ!!」
ドアの向こう側から、ゆっくりの声。青年は手を止めて、ドアを開ける。
そこにはれいむとまりさの番。そしてその子供であろう大量の赤ゆっく
りがいた。
「ゆっへっへっ! さすがれいむだぜ!」
まりさがしたり顔で笑う。それを見たれいむは体をのけぞらせて威張った。
「ゆっへん! 人間さんなんて可愛い可愛いれいむが頼めば
いちころだっていったでしょ~!」
「ゆっきゅりー! おかぁしゃんはしゅごいね!!!」
「しゃしゅがれいみゅのおかあしゃんだにぇ!!」
「ゆっきゅりー!!!!!!」
赤ゆっくりたちの雑音大合唱に気分を良くしたれいむとまりさは、キリッと
その目に自信を滾らせて、青年を見据えた。
「ここはまりさたちのゆっ゛!!!!!?」
お決まりのセリフを吐くため、大きく口を開いたまりさに、青年は靴磨きの
クリーナーをワンプッシュ。さらに黒く濁りかけていた洗面器のお湯を騒が
しい赤ゆっくりに満遍なく振りかけた。
「ゆべぇぇぇぇ!!!!!??」
まりさが、それにつられるように赤ゆっくり立ちが痙攣し始める。
まりさは眼球が飛び出すほど盛り上がり、口から餡子を吐気散らす。赤ゆっ
くりたちは餡子を吐きだして即死するもの、暴れ出して他の赤ゆっくりと潰
れ合うものさまざまだったが、
「もっちょ……ゆ……」
しばらく耐えていた一匹の死をきっかけに、ドミノ倒しのようにパタパタ倒
れ、永遠にゆっくりした。
「おとびちゃぁぁぁぁぁぁん!!!!!! ゆっくりしたらだめぇぇぇぇ!!
ま゛でぃざぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!!!!!」
れいむは何をしていいかわからず、目線を絶えずきょろきょろさせていた。
まりさは痙攣がやまず、盛り上がりすぎた眼球が片方こぼれおちた。ぼとん、
と質量を感じさせる音で落下したそれを、青年は踏みつぶした。
「いや゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ゆぶじっ゛!!!!」
青年は泣き叫ぶれいむの口に糸のほつれたタオルを突っ込み、持っていたロ
ーファーの踵でれいむの眉間を打ち抜いた。ぐちゃっと音がして、れいむの
体が歪なUの字に変わる。
餡子を撒き散らし転がると、まりさと同じように痙攣した。
青年は何事もなかったかのように扉を閉め、靴を磨く作業に戻った。
まりさとれいむ、それに生き残った赤ゆっくりたちは、どうせ野犬やカラス
に食われる。動けないゆっくりなど野生動物にとってはただの餌なのだ。
そうでなくても掃除は簡単だ。赤ゆっくりの吐いた餡子はその体だけに大し
た量ではない。大量に吐き散らしたれいむも大半の餡子は体に残っている。
その場合、生きたまま虫などに食われるのが自然の摂理。
ドア一枚隔てた先で、靴のクリーナーというどこの家にもありそうなものに
よって、多くのゆっくりが死んでいた。
‐
青年はリビングに戻り、背伸びを一つすると、カタカタ泡を吹いていたヤカ
ンを止め、テレビを見た。
『今日は太っ腹だよ~っ! これはぬぁんと!! ……!』
加工所の商品紹介はまだ続いていた。
ばかばかしい。と青年は呟く。
ゆっくりは所詮饅頭程度の耐久性しか持っておらず、痛みに弱い。
バスケットボールサイズでも中高生なら余裕で踏みつぶして殺せるし、
拷問なんてペットボトルとオレンジジュースさえあれば簡単にできる。
こんなやつらの為に高い金出して専門の道具を買うやつもだが、
それをぼったくり値打ちで売り出す業者もあきれ果てる。
ゆっくりにさしたる興味がない青年は、テレビの電源を落とした。
「バカジャネェーノ……ってな」
直後、背後から「ゆぎゃぁぁぁぁ!!」という声が聞こえた。
空気の入れ替えの為にあけてた玄関から侵入した野良ゆっくりが、
タップリ吹きかけておいた防虫剤をタップリ吸い込んだのだろう。
「一番あきれ果てるのは……あいつらかなぁ」
外にあった多量のゆっくりの死骸を見て、何も思わなかったのだろうか?
青年は片手に沸かしたお湯を持ち、めんどくさそうに玄関へと向かった。
単純でシンプルなのを書きたかったが消化不良感がすごい。
正直こいつらいじめるのに特殊な道具いらんでしょ?
書いた作品
ふたば系ゆっくりいじめ 884 ゆ 前編