ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1249 おそらをとんでるみたい!
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ankoss
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おそらをとんでるみたい!
※短いです
※虐待はないです
道は木々を貫いて森の中をどこまでも走っていた。
その先がぷつりと途切れ、長い下り坂が下の林まで伸びている場所がある。
その坂をゆっくりと登ってくるものがある。
それは一台のすぃーだった。
音もなく現れたすぃーは坂を登りきり、あおむけになった車体が水平に戻る。
その上に乗っていたゆっくりたちは、恐る恐る周囲を見渡した。
そこは、楽園だった。
道の上に張り出した木々がアーチを作って、日差しをまだらに投げかけている。
見上げる空が見えなくなるほどの葉が茂っていた。
どの枝にも、赤い宝石のような実がいくつも成っている。
「むきゅ~」
ぱちゅりーは思わず感嘆の声をあげた。
といってもそれは風船から空気が抜けるときのような弱々しい吐息だった。
ここに来るまでの行程で体力を使い果たしてしまったのである。
「ぱちゅりー、すごいね!」
「はやくおりて木の実さんとりにいくみょん!」
「せっかちなんだねー、わかるよー」
「ゆゆ、ほんとにあったんだぜ」
口々にぱちゅりーに話し掛けるのはこれまで道中を共にしたゆっくりたちだった。
れいむ、みょん、ちぇん、まりさの四匹である。
すぃーの上でぽかんと口を開けて自然の天井を眺めている者もいれば、
待ちきれないように体をそわそわと上下させている者もいた。
みな、新たな餌場の可能性に浮き立っているのであった。
「むきゅ、みんなのきょうりょくのおかげよ。ありがとう」
ぱちゅりーは、ねぎらいの言葉をかける。
そして、これからとるべき方針を説明し始めた。
そもそも彼らがここにいるのは、まったくの思いつきだった。
彼らは群れの食料の未来を担う探検隊だった。
群れの長のぱちゅりーが、同じぱちゅりーにリーダーの大役を任命したのである。
保存食も残り少ない。
近くの餌場はとりつくした。
どうにか、群れの人口を賄える餌場を確保できないだろうか。
長にそうかきくどかれて、群れのためになるならと、ぱちゅりーは喜んで応じた。
メンバーも長が選んだ。
みな人のいいゆっくりばかりだった。
群れの広場には、とってきたご飯をのせるための石の台座が作られた。
長と群れのゆっくりたちが見守る中、ぱちゅりーたちは広場を後にする。
盛大な見送りがされ、英ゆん扱いの五匹は、わずかな照れと誇りを胸に出発した。
それから、群れの外を三日間探した。
だが、都合のいい餌場がそう簡単に見つかるはずもない。
ならば、あそこへ行ってみようとぱちゅりーが言う。
灯台下暗し。
その場所は群れのすぐ隣にあった。
急勾配のため今まで誰も登りきったゆっくりのいない、坂道である。
その先は、未知に包まれていた。
ぱちゅりーは探索に当たって、巨大なすぃーを一台用意させていた。
普通のすぃーより一回り以上大きく、車輪が六つもついている。
成体サイズのゆっくりがゆうに六匹乗れる大きさだった。
これに乗って長距離を移動し、とってきたご飯を乗せて帰るはずであった。
隊長のぱちゅりーは、これに皆を乗せて坂を登ったのである。
普通のすぃーならば斜面を登りきる馬力が得られずすべり落ちていただろう。
しかし、全ゆんがいっせいにすぃーを動かすことによって、その力は何倍にもなる。
たんでむすぃーに乗ったつがいのすぃーが、他のすぃーよりも速く動いていることに気付いた
ぱちゅりーは、多ゆん数でのすぃー操作を思いついたのだった。
ぱちゅりーの指揮のもと、全ゆんが「ゆっくりしないで進んでね!」という気持ちをすぃーに送る。
するとすぃーは糸で引かれたように動き出し、速度を上げ始めた。
見る見る速度を増していくすぃーが坂道に差し掛かったとき、がくんという衝撃が走った。
前輪が登り斜面をとらえたのだった。
すぃー全体が傾き、ゆっくりたちはずり落ちそうになる。
「ゆゆゆゆゆ!」
「あわてないで! みんなで前に進みたいと思うのよ!」
一度は慌てふためいたゆっくりたちも、ぱちゅりーの号令で落ち着きを取り戻した。
再びすぃーを動かすために、ゆんゆんうなりながら前進を念じる。
すぃーはのろのろと坂道を登っていった。
ぱちゅりーの前方にはただざらついた土が見える。
それがどんどん後ろへ流れていくと、ぱちゅりーの気分も高まっていく。
やがて視界に広がっていた地面が途切れ、青空が姿を現した。
抜けるような青空の下を、すぃーが駆け抜けていく。
お空を飛んでるみたい。
ぱちゅりーは思わず呟いた。
坂を登りきった時、ゆっくりたちはへとへとになっていた。
慣性に任せてすぃーを走らせる。
普段ゆっくりすることしか考えていないゆっくりたちが、
目的のために力を合わせて何かをしたのはこれが初めてだったかもしれない。
ぱちゅりーも疲れていた。
すぃーを動かしながら号令をかけていたのだから当然だった。
荒い息がおさまり、しばらくして辺りを見回す。
そして冒頭の場面に戻るというわけだった。
「とにかくなんでもいいから木の実さんをあつめるわよ」
方針といってもそれ以外になかった。
ぱちゅりーは枝を使って木の実を取ることを提案した。
背の低い木の小枝を折り取って、低い位置の木の実をざん、ざんと払う。
すると、赤い木の実がばらばらと落ちてくる。
それを集めてすぃーに積み込む。
このやり方はおおむね上手くいった。
五匹で協力して作業をすると、いつの間にかすぃーは満杯になっていた。
ピラミッドのように小高く積みあがった木の実は、すぃーの上を占領している。
残ったのはゆっくり一匹分くらいのスペースだった。
帰り道には誰が乗るのか、ゆっくりらしくないやや緊張した空気が流れた。
そんな雰囲気を微塵も考慮せずにれいむが真っ先に飛び上がった。
「ゆゆ~ん、れいむはつかれたよ! ゆっくりのるよ!」
「ま・つ・の・ぜ」
すぃーに乗ろうとしたれいむを、まりさのおさげが引き止めた。
リボンが引っ張られてれいむがのけぞる。
「なにずるのぉ~!」
「ぱちゅりーは体も強くないし、すぃーのあいでぃあもぱちゅりーが考えたんだぜ。
まりさはぱちゅりーが乗ったほうがいいとおもうのぜ」
「さんせいだみょん」
「わかるよー」
ぱちゅりーは驚いて受け入れようとしなかった。
「でも……ちぇんもつかれてるし……」
「ちぇんならだいじょうぶだよー、まだまだいけるんだよー」
ちぇんは強がって見せるが、人一倍走り回って息が上がるまで木の実を集めていたのをぱちゅりーは知っていた。
「ごめんね、すぐにこうたいしましょうね」
ぱちゅりーはすぃーに乗った。
その後ろから、四匹が重くなったすぃーを押していく。
もともと一匹では動かせないような大型のすぃーのうえに
木の実を満載しているためその歩みは非常に遅い。
「みんなでおすよ! えいえいゆー!」
「ゆんしょ! ゆんしょ!」
掛け声にあわせて四匹がすぃーを押すと、わずかに車輪が動く。
ぱちゅりーは砂糖菓子の歯を割れそうなほど食いしばってすぃーを前進させる。
かたつむりが這うようにじわじわと動いても、全体の行路から見ればほんのわずか進んだだけに過ぎない。
真っ先にれいむが投げ出した。
「ゆわぁー! もうつかれたよ! どぼじでこんなことしなくちゃいけないのぉおお!」
ごろごろと転がりながらだだをこねる。
五匹の力でやっと動いていたすぃーはぴたりと止まった。
やれやれという感じで残りの三匹がれいむを見る。
「れいむ、しょうがないんだぜ。むれのみんなが木の実さんをまってるのぜ」
「やじゃぁぁぁ! れいむはつかれてるんだよ! いっぽもうごけないよ!」
どうしたものかと三匹が餡子の頭を巡らせていると、ぱちゅりーがみょんの後ろに立っていた。
「むきゅ、ぱちぇがこうたいするわ」
「でも、だいじょうぶかみょん?」
「へいきよ、これぐらい」
とたんにれいむは元気を取り戻して、跳ねるようにすぃーに飛び乗る。
「やったぁぁ!」
「れいむ……ちゃんとすぃーを動かすんだぜ?」
ゆっくりたちはまた動き始めた。
その歩みは先ほどよりさらに遅くなっていた。
ぱちゅりーはちぇんとみょんの間で頑張るものの、押しているはずのあんよがずりさがっている。
もともとゆっくりしていない行動が苦手なぱちゅりーは、今にもクリームを吐きそうになっていた。
「ほんとにだいじょうぶなの? わからないよー」
「ええ……むきゅ、へ、へいきよ、むぎゅ」
一方のれいむはぼけーっとしていた。
すぃーを動かしているのかいないのか、はたから見ると分からないが、その表情は緩みきっている。
時折思い出したように、「ゆっくりしないで動いてね!」と叫ぶ。
声に出す必要はないのだが、気にしていないようだ。
「ゆゆ~ん、いいけしきだね! でもちょっとゆっくりしすぎだね!」
れいむは気楽に呟いて、ごろりと仰向けになった。
下で頑張っている四匹を無視して、堂々と怠ける。
ふと視線を上げたれいむは、うずたかく積みあがった木の実を見て、よからぬ考えを起こした。
(こんなにあるんだから、ちょっとくらいいいよね!)
舌をそろ~りそろ~りと伸ばして、木の実をひとつ掠め取る。
口に入れると、爽やかな甘味が広がった。
「むーしゃむーしゃ、しあわせぇー!」
「れいむ、なにか見えたのぜ!?」
その声を聞いて、まりさが下から聞いてくる。
「ゆゆ、な、何でもないよっ! もっとそくどをあげてね! たくさんでいいよ!」
「むちゃいうなだぜ!」
すぃーは下り坂に差し掛かっていた。
空ばかり見ていたれいむは、そのことに気付かない。
じりじりと進むすぃーの前輪が、ついに斜面に降りた。
がたんと音がした気がしたが、それはれいむがショックを受けた時に聞いた幻聴だったかもしれない。
「ゆ……」
まずてっぺんに積まれていた木の実が一つ、転がり落ちた。
れいむがそのことに気付くのと、後ろで押していた四匹のゆっくりたちが様子がおかしいことを感じたのが同時だった。
ぽろぽろとこぼれ落ちていく木の実が、れいむの頭に降り注ぐと、
いくらぼんやりしたれいむでも大変な事態が起こっていることに気がついた。
すでに前輪は斜面からせり出していて、残った真ん中の車輪も斜面に降りようとしている。
ぱちゅりーが、どうやってここまで来たのかやっと思い出したが、後の祭りだった。
「いけない、さかみちのことをわすれて……むきゃぁ!」
大きくすぃーが傾くと、後輪が跳ね上がる。
六つの車輪のうち四つが斜面に降りたすぃーは、凄い勢いで坂道を下っていった。
体重を預けていたすぃーがなくなったぱちゅりーたちは、揃って前のめりに倒れる。
れいむの悲鳴が尾を引いて、坂道をすぃーと一緒に下っていった。
残されたゆっくりたちは、ただ呆然としていた。
「ゆわぁぁぁぁぁ~!」
れいむは生まれて始めておそろちーちーを漏らしていた。
すぃーがかたむいたと思ったら、いきなりびゅーんとはしりだして、今もはしっている。
まわりの景色はすごいいきおいでうしろに行ってしまうし、風もびゅうびゅうふいている。
れいむのぷりてぃーなくちびるもふうあつでぶるぶるめくれている。
そして何より、れいむが気になるのは、前方に見えている、大きな岩だった。
坂道の途中から突き出したそれは、見る見るうちれいむの視界を埋め尽くしていく。
衝撃。
空が傾いた。
視界の片隅ですぃーが大破している。
弾幕のように広がった赤い木の実の一つ一つがゆっくりと宙を飛んでいった。
岩にぶつかったすぃーは、れいむを空中高く放り出した。
弾丸のように投げ出されたれいむは、坂道を戻り、林の上を飛んでいた。
すぐ下には群れの広場が見える。
れいむの目にはただ、青い空が映っている。
もみあげのすぐそばを風が通り過ぎていく音がする。
高く高く飛び上がりながら、れいむはあることを思った。
――こんなとき、なんていうんだっけ。
――きもちよくて、たかいところにびゅーんととんでいったとき。
――そうだ。
口を小判型に開けて大きな声で叫ぶ。
「おそらをとんでるみたい!!」
ちょうどその時、れいむの体は放物線の頂点に届いた。
そして落ちていく。
林の中へ。
群れの中へ。
れいむの目は最後まで空を見ていた。
広場では、長ぱちゅりーが澄ました顔で探検隊の帰りを待っていた。
いや、その振りをしていた。
長ぱちゅりーは広場の台座に飛び乗る。
「こんなもの、むだなのにね、むっきゅっきゅ」
辺りには誰もいない。
普段はよい長として見せる顔が、今は醜く歪んでいた。
長ぱちゅりーは考える。
あのぱちゅりーさえいなくなれば、この群れでぱちゅりーは私だけになる。
長でもないくせに、色々と口出しをしてくる可愛げのないやつだった。
そのうえ私より尊敬されているなんて、許せるはずがない。
だから、追い払った。
群れの外にご飯などあるはずがない。
どこかでれみりゃにでも食べられているだろう。
何より、保存食ならうなるほどある。
ただし、私に従うものにしか分ける気はない。
あいつらの旅は、全くの無駄だったというわけね。
お供のゆっくりたちも、お人よしすぎて群れでは疎まれていた。
邪魔なぱちゅりーを亡き者にし、ついでにゴミ掃除も出来る。
我ながら完璧な作戦だわ。
仮にぱちゅりーたちが手ぶらで帰ってきても、英ゆんとして送り出された期待を裏切った罪は重い。
その権威は地に堕ちるだろう。
群れに逆らうものは居なくなり、今まで以上に長ぱちゅりーの意のままとなる。
森の賢者は、一人で充分だった。
長ぱちゅりーは、凄絶な笑みを浮かべた。
それはクリームの詰まった頭のもっと深いところから、
汚水が染み出るようにして出てきた、邪悪な笑みだった。
「……むきゅ」
抑えきれない笑いが溢れて、長ぱちゅりーの口をついて出た。
「むきゃきゃきゃきゃ! むきゃきゃきゃきゃきゃ!」
堂々たる声をあげて空を仰ぐ。
ふと見上げた視線の先に、ぱちゅりーは見た。
太陽の中から現れた、こちらに向かって落ちてくるれいむの後頭部を。
広場に落ちてきたれいむの体は、その真ん中にいた長ぱちゅりーの脳天からあんよまで貫いて、餡子の花を咲かせた。
あとがき
最後まで読んでくれてありがとうございます
もっと速く書けるよう頑張ります
過去に書いたもの
ふたば系ゆっくりいじめ 898 赤ゆ焼き
ふたば系ゆっくりいじめ 928 贈り物
ふたば系ゆっくりいじめ 979 子まりさとれいぱー
※短いです
※虐待はないです
道は木々を貫いて森の中をどこまでも走っていた。
その先がぷつりと途切れ、長い下り坂が下の林まで伸びている場所がある。
その坂をゆっくりと登ってくるものがある。
それは一台のすぃーだった。
音もなく現れたすぃーは坂を登りきり、あおむけになった車体が水平に戻る。
その上に乗っていたゆっくりたちは、恐る恐る周囲を見渡した。
そこは、楽園だった。
道の上に張り出した木々がアーチを作って、日差しをまだらに投げかけている。
見上げる空が見えなくなるほどの葉が茂っていた。
どの枝にも、赤い宝石のような実がいくつも成っている。
「むきゅ~」
ぱちゅりーは思わず感嘆の声をあげた。
といってもそれは風船から空気が抜けるときのような弱々しい吐息だった。
ここに来るまでの行程で体力を使い果たしてしまったのである。
「ぱちゅりー、すごいね!」
「はやくおりて木の実さんとりにいくみょん!」
「せっかちなんだねー、わかるよー」
「ゆゆ、ほんとにあったんだぜ」
口々にぱちゅりーに話し掛けるのはこれまで道中を共にしたゆっくりたちだった。
れいむ、みょん、ちぇん、まりさの四匹である。
すぃーの上でぽかんと口を開けて自然の天井を眺めている者もいれば、
待ちきれないように体をそわそわと上下させている者もいた。
みな、新たな餌場の可能性に浮き立っているのであった。
「むきゅ、みんなのきょうりょくのおかげよ。ありがとう」
ぱちゅりーは、ねぎらいの言葉をかける。
そして、これからとるべき方針を説明し始めた。
そもそも彼らがここにいるのは、まったくの思いつきだった。
彼らは群れの食料の未来を担う探検隊だった。
群れの長のぱちゅりーが、同じぱちゅりーにリーダーの大役を任命したのである。
保存食も残り少ない。
近くの餌場はとりつくした。
どうにか、群れの人口を賄える餌場を確保できないだろうか。
長にそうかきくどかれて、群れのためになるならと、ぱちゅりーは喜んで応じた。
メンバーも長が選んだ。
みな人のいいゆっくりばかりだった。
群れの広場には、とってきたご飯をのせるための石の台座が作られた。
長と群れのゆっくりたちが見守る中、ぱちゅりーたちは広場を後にする。
盛大な見送りがされ、英ゆん扱いの五匹は、わずかな照れと誇りを胸に出発した。
それから、群れの外を三日間探した。
だが、都合のいい餌場がそう簡単に見つかるはずもない。
ならば、あそこへ行ってみようとぱちゅりーが言う。
灯台下暗し。
その場所は群れのすぐ隣にあった。
急勾配のため今まで誰も登りきったゆっくりのいない、坂道である。
その先は、未知に包まれていた。
ぱちゅりーは探索に当たって、巨大なすぃーを一台用意させていた。
普通のすぃーより一回り以上大きく、車輪が六つもついている。
成体サイズのゆっくりがゆうに六匹乗れる大きさだった。
これに乗って長距離を移動し、とってきたご飯を乗せて帰るはずであった。
隊長のぱちゅりーは、これに皆を乗せて坂を登ったのである。
普通のすぃーならば斜面を登りきる馬力が得られずすべり落ちていただろう。
しかし、全ゆんがいっせいにすぃーを動かすことによって、その力は何倍にもなる。
たんでむすぃーに乗ったつがいのすぃーが、他のすぃーよりも速く動いていることに気付いた
ぱちゅりーは、多ゆん数でのすぃー操作を思いついたのだった。
ぱちゅりーの指揮のもと、全ゆんが「ゆっくりしないで進んでね!」という気持ちをすぃーに送る。
するとすぃーは糸で引かれたように動き出し、速度を上げ始めた。
見る見る速度を増していくすぃーが坂道に差し掛かったとき、がくんという衝撃が走った。
前輪が登り斜面をとらえたのだった。
すぃー全体が傾き、ゆっくりたちはずり落ちそうになる。
「ゆゆゆゆゆ!」
「あわてないで! みんなで前に進みたいと思うのよ!」
一度は慌てふためいたゆっくりたちも、ぱちゅりーの号令で落ち着きを取り戻した。
再びすぃーを動かすために、ゆんゆんうなりながら前進を念じる。
すぃーはのろのろと坂道を登っていった。
ぱちゅりーの前方にはただざらついた土が見える。
それがどんどん後ろへ流れていくと、ぱちゅりーの気分も高まっていく。
やがて視界に広がっていた地面が途切れ、青空が姿を現した。
抜けるような青空の下を、すぃーが駆け抜けていく。
お空を飛んでるみたい。
ぱちゅりーは思わず呟いた。
坂を登りきった時、ゆっくりたちはへとへとになっていた。
慣性に任せてすぃーを走らせる。
普段ゆっくりすることしか考えていないゆっくりたちが、
目的のために力を合わせて何かをしたのはこれが初めてだったかもしれない。
ぱちゅりーも疲れていた。
すぃーを動かしながら号令をかけていたのだから当然だった。
荒い息がおさまり、しばらくして辺りを見回す。
そして冒頭の場面に戻るというわけだった。
「とにかくなんでもいいから木の実さんをあつめるわよ」
方針といってもそれ以外になかった。
ぱちゅりーは枝を使って木の実を取ることを提案した。
背の低い木の小枝を折り取って、低い位置の木の実をざん、ざんと払う。
すると、赤い木の実がばらばらと落ちてくる。
それを集めてすぃーに積み込む。
このやり方はおおむね上手くいった。
五匹で協力して作業をすると、いつの間にかすぃーは満杯になっていた。
ピラミッドのように小高く積みあがった木の実は、すぃーの上を占領している。
残ったのはゆっくり一匹分くらいのスペースだった。
帰り道には誰が乗るのか、ゆっくりらしくないやや緊張した空気が流れた。
そんな雰囲気を微塵も考慮せずにれいむが真っ先に飛び上がった。
「ゆゆ~ん、れいむはつかれたよ! ゆっくりのるよ!」
「ま・つ・の・ぜ」
すぃーに乗ろうとしたれいむを、まりさのおさげが引き止めた。
リボンが引っ張られてれいむがのけぞる。
「なにずるのぉ~!」
「ぱちゅりーは体も強くないし、すぃーのあいでぃあもぱちゅりーが考えたんだぜ。
まりさはぱちゅりーが乗ったほうがいいとおもうのぜ」
「さんせいだみょん」
「わかるよー」
ぱちゅりーは驚いて受け入れようとしなかった。
「でも……ちぇんもつかれてるし……」
「ちぇんならだいじょうぶだよー、まだまだいけるんだよー」
ちぇんは強がって見せるが、人一倍走り回って息が上がるまで木の実を集めていたのをぱちゅりーは知っていた。
「ごめんね、すぐにこうたいしましょうね」
ぱちゅりーはすぃーに乗った。
その後ろから、四匹が重くなったすぃーを押していく。
もともと一匹では動かせないような大型のすぃーのうえに
木の実を満載しているためその歩みは非常に遅い。
「みんなでおすよ! えいえいゆー!」
「ゆんしょ! ゆんしょ!」
掛け声にあわせて四匹がすぃーを押すと、わずかに車輪が動く。
ぱちゅりーは砂糖菓子の歯を割れそうなほど食いしばってすぃーを前進させる。
かたつむりが這うようにじわじわと動いても、全体の行路から見ればほんのわずか進んだだけに過ぎない。
真っ先にれいむが投げ出した。
「ゆわぁー! もうつかれたよ! どぼじでこんなことしなくちゃいけないのぉおお!」
ごろごろと転がりながらだだをこねる。
五匹の力でやっと動いていたすぃーはぴたりと止まった。
やれやれという感じで残りの三匹がれいむを見る。
「れいむ、しょうがないんだぜ。むれのみんなが木の実さんをまってるのぜ」
「やじゃぁぁぁ! れいむはつかれてるんだよ! いっぽもうごけないよ!」
どうしたものかと三匹が餡子の頭を巡らせていると、ぱちゅりーがみょんの後ろに立っていた。
「むきゅ、ぱちぇがこうたいするわ」
「でも、だいじょうぶかみょん?」
「へいきよ、これぐらい」
とたんにれいむは元気を取り戻して、跳ねるようにすぃーに飛び乗る。
「やったぁぁ!」
「れいむ……ちゃんとすぃーを動かすんだぜ?」
ゆっくりたちはまた動き始めた。
その歩みは先ほどよりさらに遅くなっていた。
ぱちゅりーはちぇんとみょんの間で頑張るものの、押しているはずのあんよがずりさがっている。
もともとゆっくりしていない行動が苦手なぱちゅりーは、今にもクリームを吐きそうになっていた。
「ほんとにだいじょうぶなの? わからないよー」
「ええ……むきゅ、へ、へいきよ、むぎゅ」
一方のれいむはぼけーっとしていた。
すぃーを動かしているのかいないのか、はたから見ると分からないが、その表情は緩みきっている。
時折思い出したように、「ゆっくりしないで動いてね!」と叫ぶ。
声に出す必要はないのだが、気にしていないようだ。
「ゆゆ~ん、いいけしきだね! でもちょっとゆっくりしすぎだね!」
れいむは気楽に呟いて、ごろりと仰向けになった。
下で頑張っている四匹を無視して、堂々と怠ける。
ふと視線を上げたれいむは、うずたかく積みあがった木の実を見て、よからぬ考えを起こした。
(こんなにあるんだから、ちょっとくらいいいよね!)
舌をそろ~りそろ~りと伸ばして、木の実をひとつ掠め取る。
口に入れると、爽やかな甘味が広がった。
「むーしゃむーしゃ、しあわせぇー!」
「れいむ、なにか見えたのぜ!?」
その声を聞いて、まりさが下から聞いてくる。
「ゆゆ、な、何でもないよっ! もっとそくどをあげてね! たくさんでいいよ!」
「むちゃいうなだぜ!」
すぃーは下り坂に差し掛かっていた。
空ばかり見ていたれいむは、そのことに気付かない。
じりじりと進むすぃーの前輪が、ついに斜面に降りた。
がたんと音がした気がしたが、それはれいむがショックを受けた時に聞いた幻聴だったかもしれない。
「ゆ……」
まずてっぺんに積まれていた木の実が一つ、転がり落ちた。
れいむがそのことに気付くのと、後ろで押していた四匹のゆっくりたちが様子がおかしいことを感じたのが同時だった。
ぽろぽろとこぼれ落ちていく木の実が、れいむの頭に降り注ぐと、
いくらぼんやりしたれいむでも大変な事態が起こっていることに気がついた。
すでに前輪は斜面からせり出していて、残った真ん中の車輪も斜面に降りようとしている。
ぱちゅりーが、どうやってここまで来たのかやっと思い出したが、後の祭りだった。
「いけない、さかみちのことをわすれて……むきゃぁ!」
大きくすぃーが傾くと、後輪が跳ね上がる。
六つの車輪のうち四つが斜面に降りたすぃーは、凄い勢いで坂道を下っていった。
体重を預けていたすぃーがなくなったぱちゅりーたちは、揃って前のめりに倒れる。
れいむの悲鳴が尾を引いて、坂道をすぃーと一緒に下っていった。
残されたゆっくりたちは、ただ呆然としていた。
「ゆわぁぁぁぁぁ~!」
れいむは生まれて始めておそろちーちーを漏らしていた。
すぃーがかたむいたと思ったら、いきなりびゅーんとはしりだして、今もはしっている。
まわりの景色はすごいいきおいでうしろに行ってしまうし、風もびゅうびゅうふいている。
れいむのぷりてぃーなくちびるもふうあつでぶるぶるめくれている。
そして何より、れいむが気になるのは、前方に見えている、大きな岩だった。
坂道の途中から突き出したそれは、見る見るうちれいむの視界を埋め尽くしていく。
衝撃。
空が傾いた。
視界の片隅ですぃーが大破している。
弾幕のように広がった赤い木の実の一つ一つがゆっくりと宙を飛んでいった。
岩にぶつかったすぃーは、れいむを空中高く放り出した。
弾丸のように投げ出されたれいむは、坂道を戻り、林の上を飛んでいた。
すぐ下には群れの広場が見える。
れいむの目にはただ、青い空が映っている。
もみあげのすぐそばを風が通り過ぎていく音がする。
高く高く飛び上がりながら、れいむはあることを思った。
――こんなとき、なんていうんだっけ。
――きもちよくて、たかいところにびゅーんととんでいったとき。
――そうだ。
口を小判型に開けて大きな声で叫ぶ。
「おそらをとんでるみたい!!」
ちょうどその時、れいむの体は放物線の頂点に届いた。
そして落ちていく。
林の中へ。
群れの中へ。
れいむの目は最後まで空を見ていた。
広場では、長ぱちゅりーが澄ました顔で探検隊の帰りを待っていた。
いや、その振りをしていた。
長ぱちゅりーは広場の台座に飛び乗る。
「こんなもの、むだなのにね、むっきゅっきゅ」
辺りには誰もいない。
普段はよい長として見せる顔が、今は醜く歪んでいた。
長ぱちゅりーは考える。
あのぱちゅりーさえいなくなれば、この群れでぱちゅりーは私だけになる。
長でもないくせに、色々と口出しをしてくる可愛げのないやつだった。
そのうえ私より尊敬されているなんて、許せるはずがない。
だから、追い払った。
群れの外にご飯などあるはずがない。
どこかでれみりゃにでも食べられているだろう。
何より、保存食ならうなるほどある。
ただし、私に従うものにしか分ける気はない。
あいつらの旅は、全くの無駄だったというわけね。
お供のゆっくりたちも、お人よしすぎて群れでは疎まれていた。
邪魔なぱちゅりーを亡き者にし、ついでにゴミ掃除も出来る。
我ながら完璧な作戦だわ。
仮にぱちゅりーたちが手ぶらで帰ってきても、英ゆんとして送り出された期待を裏切った罪は重い。
その権威は地に堕ちるだろう。
群れに逆らうものは居なくなり、今まで以上に長ぱちゅりーの意のままとなる。
森の賢者は、一人で充分だった。
長ぱちゅりーは、凄絶な笑みを浮かべた。
それはクリームの詰まった頭のもっと深いところから、
汚水が染み出るようにして出てきた、邪悪な笑みだった。
「……むきゅ」
抑えきれない笑いが溢れて、長ぱちゅりーの口をついて出た。
「むきゃきゃきゃきゃ! むきゃきゃきゃきゃきゃ!」
堂々たる声をあげて空を仰ぐ。
ふと見上げた視線の先に、ぱちゅりーは見た。
太陽の中から現れた、こちらに向かって落ちてくるれいむの後頭部を。
広場に落ちてきたれいむの体は、その真ん中にいた長ぱちゅりーの脳天からあんよまで貫いて、餡子の花を咲かせた。
あとがき
最後まで読んでくれてありがとうございます
もっと速く書けるよう頑張ります
過去に書いたもの
ふたば系ゆっくりいじめ 898 赤ゆ焼き
ふたば系ゆっくりいじめ 928 贈り物
ふたば系ゆっくりいじめ 979 子まりさとれいぱー