ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1206 ゆっくり一家とゲスとお兄さん
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ankoss
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ゆっくり一家とゲスとお兄さん
1.
晴れ渡る空の下、長閑な堤防沿いを一台の自転車が走っていた。
乗っているのは小さなリュックを背負った若い男性である。
彼はサイクリングを趣味としており、今日は遠出をしていた。
(さて、と。もうそろそろお昼にでもしようかな)
ちょっとした橋に差し掛かるあたりで男は自転車を止めた。
自転車を降り、土手に腰をかけリュックを降ろし中からおにぎりを取り出した。
(これが楽しみなんだよな)
男はそう思いつつ、おにぎりを口に運ぼうとした瞬間、視線を感じた。
周りを見渡してみるが誰もいない。
妙に思いつつ首を傾げて、再度おにぎり口に運ぼうとした時、静かな空間に一声が響いた。
「おちびちゃん!にんげんさんにはちかづいちゃだめだよ!」
男が声のした方向を見ると一匹の成体れいむが確認できた。
見るとお飾りはボロボロで片眼が無いようであった。
そしてその視線の先には男の持つおにぎりを見つめる子まりさがいた。
「ゆ?これがにんげんしゃんなのじぇ?」
「そうだよ!にんげんさんはゆっくりできないからちかづいちゃだめだよ!」
男はこの成体れいむは過去に人間に色々とやられたらしいということを察知した。
自分は別に虐待には興味がないが、怪物のように言われているのが不満に思った。
「いや、別に俺は手を出したりしないから…」
男はゆっくりごときに話しをするのも馬鹿らしいとも思ったが、
一人きりのサイクリングは退屈であったので暇つぶしにと話しかけた。
「しんじられないよ!にんげんさんのことばをしんじてちかづいたら、れいむのおめめさんをかたほうとっちゃったんだよ!」
「にんげんしゃんきょわいのじぇぇぇ!」
静かであった川辺がいきなりうるさくなり、長閑な雰囲気が台無しとなった。
男は面倒くさくなったのである手段に出た。
「あー…じゃあこれやるよ。だから騒ぐな」
男はおにぎりを子まりさの前に置いた。
「ゆ?」
首を傾げるように子まりさは傾いた。
成体れいむはよほど酷い目にあったのだろうか、さらに言葉を続けた。
「たべちゃだめだよ!どくがはいってるかもしれないよ!」
男はイラッとしたが、残りのおにぎりを食べはじめた。
食べる姿を見れば安心するだろうという考えだ。
「おかーしゃん、まりさこれたべたいのじぇ…」
「ゆぅ…じゃあおかーさんがどくみをするからまっててね」
(毒味だなんて言葉どこで覚えるんだろうなぁ…)
成体れいむはおにぎりをほんの一口食べた。
「むーちゃむーちゃ……しあわせー!」
一つ間をおいての「しあわせ」であった。
そうと分かればお握りの消費は早く、子まりさと成体れいむの二匹ですぐに食べてしまった。
「ごちそうさま!おいしかったよ、ありがとうおにーさん!」
「ありがちょうね!」
「はいはい」
野良には珍しくしっかりと感謝ができていることに男は少し興味を持ち、この二匹と話をした。
話によると、この成体れいむは元飼いゆのまりさと番になっているらしい。
いわゆる虐待鬼威惨に虐待され、瀕死で放置されていたところを助けてもらっただとかで、のろけ話が間に挟まれた。
そして橋のたもとに巣を作って、そこで子まりさが産んだらしい。
ゆっくりの話す言葉を上手く解釈すれば大体こんな感じになるだろう。
「へぇ、なかなか大変だったんだな」
「まりさがすごいからだよ!まりさがいなかったられいむはしんでたよ!」
「おとーしゃんはしゅごいんだじぇー!」
二匹は興奮気味に元飼いゆまりさを賞賛した。
話を聞く限りではかなり真っ当なゆっくりであると思われた。
「で、そのまりさはどこにいるんだ?」
「かりにいってるよ!ゆうがたにはもどってくるよ!」
「夕方か。興味はあるけどもうそろそろ帰らないとな」
遠出してきただけあって早く帰らなければ暗くなってしまう。
その上この辺りは灯りも少ないため、暗くなれば危険なのだ。
「おにーしゃんまた来るの?」
「おにーさんはゆっくりできるひとだからいつでもきていいよ!」
「まあ、その内にな。じゃ、またな」
男はその場を片付け、自転車に跨り来た道を走り始めた。
二匹はその背中を見送った。
「やさしいにんげんさんもいるんだなぁ…」
「またにぇー!」
二匹は気がつかなかったが、その時怪しい視線が二匹の姿を捉えていた。
2.
次の休日、男はあのゆっくり一家が気になり、その場所を訪れることにした。
土手に来てみるとあの二匹と成体まりさが確認できた。
「おっす」
「あ、あのときのおにーさんだ!」
「こんにちはなのじぇ!」
男が自転車を止めて声を掛けると元気に返事をした。
自転車を降りて土手に下ると、成体まりさが寄ってきて話し始めた。
「先日は妻と子がお世話になりました。」
男は吹き出しそうになった。
しっかりとした言葉遣いで礼儀正しく話しかけられるとは思ってもいなかったのだ。
それによく見ると、顔つきも凛々しい気がした。
「あ、あぁ。それにしても流暢な言葉遣いだな…」
「元のご主人様によく学ばせて頂いたものですから。」
「そうか…」
それから話を一通りしてからお弁当を広げることにした。
今回は一家に会うという目的の元来ていたため、お弁当はやや多く作ってきた。
「それじゃあみんなで食べようか」
「ゆゆ!またいっしょにたべていいの!?」
「ありがとう!おにーしゃん!」
「こんなに良い物を頂けるなんて、とても嬉しく思います。本当にありがとうございます。」
和やかに食事と会話をし、帰り支度をしようとした時、成体まりさから声を掛けられた。
「あの、少し話をする時間を貰えないでしょうか」
「あぁ、少しなら別に構わないぞ」
そんなに急ぐこともなかったので男は話に付き合うことにした。
成体まりさは成体れいむと子まりさに他で遊んでくるように言い遠ざけてから話を始めた。
内容は成体まりさの昔話であった。
話によると、このまりさは少し前まで老夫婦の飼いゆっくりとして過ごしていたらしい。
文武両道を志し、礼儀にも厳しかったために、今のようなゆっくり離れしたゆっくりになったということである。
そして、何故野良になったかということに差し掛かると、涙を目に蓄え始めていることが見てとれた。
御婆様が亡くなり、御爺様の気力がすっかり衰えたところにろくでもない息子が上がり込んだというのである。
御爺様の世話を全くせずに財産を食いつぶし、挙げ句の果てに借金まで作ってしまったらしい。
その間まりさは御爺様の世話を頑張ったらしいのだが、結局助けることができなかった。
その後、親族によって目の敵にされ追い出されたというところで話は終わった。
「お兄さん。私は無力なのでしょうか。守るべきものを守れない駄目な生き物なのでしょうか」
成体まりさは真剣な眼差しで男を見つめた。
「…それを決めるのは俺じゃないからなんとも言えないがな」
男は言葉を止めて視線を遊んでいる二匹に目をやった。
同時に成体まりさも二匹を見つめた。
「今のあいつらを守れてるのはお前のおかげだろう。できた、できなかったを考えるより今を大切にしようぜ」
「…」
「少なくともあいつらはお前を信頼していたぞ。それに応えてやったらどうだ?」
「…はい!」
「じゃ、俺帰るわ。あいつらにもよろしくな」
考えがすっきりしたのだろうか、成体まりさは満面の笑みで力強くしっかりとした返事をした。
男は自転車に跨り帰路についた。
怪しい視線は今日も一家を捉えていた。
3.
さらに次の休日。また来るという約束はしていないものの一家が気になるのでまた出掛けることにした。
土手に来てみるとそこには今までとは明らかに異なる状況があった。
成体まりさがボロボロになり、黒ずみかけてぐったりとしていた。
男は明らかに異様な事態に驚き、すぐさまその場に駆けつけた。
成体まりさの片眼にあたる部分に棒きれが突き刺さっていた。
「おい!どうかしたのか!?」
「あぁ…その声はお兄さんですか…?」
消え入るようなか細い声で成体まりさは応えた。
そした涙ぐみながら続けた。
「ゲスれいむに我が子を盾に取られてこの様です…恐らく今は妻がいる巣に向かっているでしょう…」
「分かった。俺が見てくる。」
「…結局、私は誰も守れないんですね」
「…」
男はリュックからオレンジジュースを取り出して成体まりさにかけだした。
そして諭すように話しかけた。
「…暫く経ったらまた動けるようになるだろう。それから先はお前次第だ」
「…」
男は自転車に跨り橋のたもとに巣に向かった。
近づくにつれ声が聞こえてきた。
「くそじじいからたべものをまきあげるなんてずるいよ!さっさとれいむにぜんぶわたしてね!」
「にんげんざんのだべものなんでもっでないでずぅぅぅぅぅ!」
「だりぇかたしゅけてぇぇぇ!」
「うそをつくげすなれいむはせいっさいだよ!」
「やめでぇぇぇぇぇぇ!」
「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!」
巣に来てみると、普通の成体ゆっくりよりも一回りも二回りも大きいゲスれいむがれいむを踏みつぶしていた。
なるほど、あのまりさでも適わないのも当然であると思える大きさである。
子まりさは半ば囓られているといった状況であった。
「おい!」
「あっ!おにーしゃん!」
「だずげでぐださぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ふん!どれいはれいむにたべものさんをわたしてさっさとしんでね!」
このゲスれいむは無謀にも挑発するような言葉を投げかけてきた。
これが本心であるということは分かるものの男にとっては呆れる発言でしかなった。
「それは無理だな」
男はそう言いつつゲスれいむのもみあげを掴みぶら下げた。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「おい、お前らは今の内に避難してろ」
「おにーしゃん!ありがとう!」
「ありがどうございまずうぅぅぅぅぅぅ!」
男は嘘を言った。
この場から二匹を遠ざけたのは避難させるためではなかったのである。
これから始める制裁を見られたく無かったからだ。
「ばなぜぐぞじじぃぃぃぃぃぃぃ!」
「さーてと」
男はリュックからピーラーを出した。
これは一家のためにリンゴを剥こうと持ってきたものである。
「これが何か分かるかな?」
「わがるわげないでじょぉぉぉぉぉぉ!?」
「じゃあ教えてやろう。こう使うんだ」
男はピーラーを使いゲスれいむの表皮を剥ぎ始めた。
同時に凄まじい叫び声が空に響き渡った。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせえ」
表皮を薄く剥いでいくのだ。その痛みは計り知れないものだろう。
剥ぐ度に耳を劈くような悲鳴が聞こえるので男はうんざりし始めてきた。
「これでも咥えとけ」
男がゲスれいむの口に突っ込んだものはその辺にあった石だ。
重さも大きさもなかなかな物である。
「あががががががが…」
「さて、続きをしようか」
悲鳴は無くなったものの激痛がゲスれいむを襲い続ける。
声にならない叫びが体内にこだましているのだろうか、ゲスれいむの体は細かに振動している。
「大分薄くなったな」
ゲスれいむは皮や髪やお飾りをも殆どはぎ取り薄皮一枚という状況になっていた。
さらに自分の涙で顔のあたりはぐしゃぐしゃになって原型を留めていない。
「このまま川に投げ捨ててもいいけどどうしようかな…」
「…!」
どうやらやめてくれという意思表示をしているようであるが男には伝わらない。
そして男はあることを思い出した。
「あ、そうだ」
男はゲスれいむの目玉をえぐり取った。
同時にゲスれいむの体がびくんと動いた。そして気絶したのか動かなくなった。
「これでよし」
男は満足そうに微笑むとゲスれいむから石を取り出し、土手の向こう側に蹴り飛ばした。
鈍い着地音が聞こえた。
4.
「お兄さん!ゲスれいむは!?妻と子は!?」
ワンテンポ遅くあの成体まりさが棒きれを携えてやってきた。
接地面が酷くボロボロになっている。どうやらゆっくりなりに急いで来たようである。
「追い払った。お前の妻とお子さんは避難させてるよ」
「そうですか…何から何まで本当にありがとうございます」
「いや、別にいいよ。…お前も頑張ったじゃないか」
「私は何も…」
「その持っている棒きれとボロボロの足がなによりの証拠だよ。よく勇気を出したな」
「お兄さん…」
成体まりさは感涙していた。
自分をこんなにも認めてくれる人に会えて嬉しかったのである。
「あぁ、そうだお土産だ」
「なんですか?」
「ちょっと痛いが我慢しろよ…」
男は成体まりさの片眼に刺さっている棒きれを抜き取った。
目玉ごと抜けた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「悪い!今新しいの渡すから!」
男は先ほどゲスれいむからえぐり取った目玉を成体まりさの眼に急いで入れた。
同時に激痛が走る。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ごめん!でも勘弁してくれ…」
「…?あれ、見える…!」
「あのゲスから奪い取ったんだ。あいつよりお前の方が有効活用してくれるだろう」
「お兄さん…本当に、本当にありがとうございますっ!」
成体まりさは土下座するような勢いで顔を突っ伏した。
同時に嗚咽の声が漏れた。
「おとーしゃんだいじょうぶなのじぇ!?」
「まりさー!」
土手の上の方から成体まりさを呼ぶ二匹の声がした。
その声は段々と大きくなる。
「ほら、お前らの大事な家族が来てるぞ。笑顔で迎えてやれ」
「はい!」
涙が残るその笑顔で成体まりさは家族を迎えた。
感動の再会といったところであろうか。
「あ、れいむ。お前にもお土産があるぞ」
「ゆ?ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
晴れ渡った青空に悲鳴が響いた。
5.
眼に新しい光を手に入れた二匹と食事を楽しんだ後、挨拶を交わし男は帰っていった。
「いいにんげんさんだったね…」
「おにーしゃんはしゅぎょいにんげんしゃんだじぇ!」
「あぁ、本当に素晴らしい人だったよ…」
成体まりさは男との交流を思い返し、満足そうな笑みを浮かべた。
空には綺麗な夕焼けが輝いていた。
1.
晴れ渡る空の下、長閑な堤防沿いを一台の自転車が走っていた。
乗っているのは小さなリュックを背負った若い男性である。
彼はサイクリングを趣味としており、今日は遠出をしていた。
(さて、と。もうそろそろお昼にでもしようかな)
ちょっとした橋に差し掛かるあたりで男は自転車を止めた。
自転車を降り、土手に腰をかけリュックを降ろし中からおにぎりを取り出した。
(これが楽しみなんだよな)
男はそう思いつつ、おにぎりを口に運ぼうとした瞬間、視線を感じた。
周りを見渡してみるが誰もいない。
妙に思いつつ首を傾げて、再度おにぎり口に運ぼうとした時、静かな空間に一声が響いた。
「おちびちゃん!にんげんさんにはちかづいちゃだめだよ!」
男が声のした方向を見ると一匹の成体れいむが確認できた。
見るとお飾りはボロボロで片眼が無いようであった。
そしてその視線の先には男の持つおにぎりを見つめる子まりさがいた。
「ゆ?これがにんげんしゃんなのじぇ?」
「そうだよ!にんげんさんはゆっくりできないからちかづいちゃだめだよ!」
男はこの成体れいむは過去に人間に色々とやられたらしいということを察知した。
自分は別に虐待には興味がないが、怪物のように言われているのが不満に思った。
「いや、別に俺は手を出したりしないから…」
男はゆっくりごときに話しをするのも馬鹿らしいとも思ったが、
一人きりのサイクリングは退屈であったので暇つぶしにと話しかけた。
「しんじられないよ!にんげんさんのことばをしんじてちかづいたら、れいむのおめめさんをかたほうとっちゃったんだよ!」
「にんげんしゃんきょわいのじぇぇぇ!」
静かであった川辺がいきなりうるさくなり、長閑な雰囲気が台無しとなった。
男は面倒くさくなったのである手段に出た。
「あー…じゃあこれやるよ。だから騒ぐな」
男はおにぎりを子まりさの前に置いた。
「ゆ?」
首を傾げるように子まりさは傾いた。
成体れいむはよほど酷い目にあったのだろうか、さらに言葉を続けた。
「たべちゃだめだよ!どくがはいってるかもしれないよ!」
男はイラッとしたが、残りのおにぎりを食べはじめた。
食べる姿を見れば安心するだろうという考えだ。
「おかーしゃん、まりさこれたべたいのじぇ…」
「ゆぅ…じゃあおかーさんがどくみをするからまっててね」
(毒味だなんて言葉どこで覚えるんだろうなぁ…)
成体れいむはおにぎりをほんの一口食べた。
「むーちゃむーちゃ……しあわせー!」
一つ間をおいての「しあわせ」であった。
そうと分かればお握りの消費は早く、子まりさと成体れいむの二匹ですぐに食べてしまった。
「ごちそうさま!おいしかったよ、ありがとうおにーさん!」
「ありがちょうね!」
「はいはい」
野良には珍しくしっかりと感謝ができていることに男は少し興味を持ち、この二匹と話をした。
話によると、この成体れいむは元飼いゆのまりさと番になっているらしい。
いわゆる虐待鬼威惨に虐待され、瀕死で放置されていたところを助けてもらっただとかで、のろけ話が間に挟まれた。
そして橋のたもとに巣を作って、そこで子まりさが産んだらしい。
ゆっくりの話す言葉を上手く解釈すれば大体こんな感じになるだろう。
「へぇ、なかなか大変だったんだな」
「まりさがすごいからだよ!まりさがいなかったられいむはしんでたよ!」
「おとーしゃんはしゅごいんだじぇー!」
二匹は興奮気味に元飼いゆまりさを賞賛した。
話を聞く限りではかなり真っ当なゆっくりであると思われた。
「で、そのまりさはどこにいるんだ?」
「かりにいってるよ!ゆうがたにはもどってくるよ!」
「夕方か。興味はあるけどもうそろそろ帰らないとな」
遠出してきただけあって早く帰らなければ暗くなってしまう。
その上この辺りは灯りも少ないため、暗くなれば危険なのだ。
「おにーしゃんまた来るの?」
「おにーさんはゆっくりできるひとだからいつでもきていいよ!」
「まあ、その内にな。じゃ、またな」
男はその場を片付け、自転車に跨り来た道を走り始めた。
二匹はその背中を見送った。
「やさしいにんげんさんもいるんだなぁ…」
「またにぇー!」
二匹は気がつかなかったが、その時怪しい視線が二匹の姿を捉えていた。
2.
次の休日、男はあのゆっくり一家が気になり、その場所を訪れることにした。
土手に来てみるとあの二匹と成体まりさが確認できた。
「おっす」
「あ、あのときのおにーさんだ!」
「こんにちはなのじぇ!」
男が自転車を止めて声を掛けると元気に返事をした。
自転車を降りて土手に下ると、成体まりさが寄ってきて話し始めた。
「先日は妻と子がお世話になりました。」
男は吹き出しそうになった。
しっかりとした言葉遣いで礼儀正しく話しかけられるとは思ってもいなかったのだ。
それによく見ると、顔つきも凛々しい気がした。
「あ、あぁ。それにしても流暢な言葉遣いだな…」
「元のご主人様によく学ばせて頂いたものですから。」
「そうか…」
それから話を一通りしてからお弁当を広げることにした。
今回は一家に会うという目的の元来ていたため、お弁当はやや多く作ってきた。
「それじゃあみんなで食べようか」
「ゆゆ!またいっしょにたべていいの!?」
「ありがとう!おにーしゃん!」
「こんなに良い物を頂けるなんて、とても嬉しく思います。本当にありがとうございます。」
和やかに食事と会話をし、帰り支度をしようとした時、成体まりさから声を掛けられた。
「あの、少し話をする時間を貰えないでしょうか」
「あぁ、少しなら別に構わないぞ」
そんなに急ぐこともなかったので男は話に付き合うことにした。
成体まりさは成体れいむと子まりさに他で遊んでくるように言い遠ざけてから話を始めた。
内容は成体まりさの昔話であった。
話によると、このまりさは少し前まで老夫婦の飼いゆっくりとして過ごしていたらしい。
文武両道を志し、礼儀にも厳しかったために、今のようなゆっくり離れしたゆっくりになったということである。
そして、何故野良になったかということに差し掛かると、涙を目に蓄え始めていることが見てとれた。
御婆様が亡くなり、御爺様の気力がすっかり衰えたところにろくでもない息子が上がり込んだというのである。
御爺様の世話を全くせずに財産を食いつぶし、挙げ句の果てに借金まで作ってしまったらしい。
その間まりさは御爺様の世話を頑張ったらしいのだが、結局助けることができなかった。
その後、親族によって目の敵にされ追い出されたというところで話は終わった。
「お兄さん。私は無力なのでしょうか。守るべきものを守れない駄目な生き物なのでしょうか」
成体まりさは真剣な眼差しで男を見つめた。
「…それを決めるのは俺じゃないからなんとも言えないがな」
男は言葉を止めて視線を遊んでいる二匹に目をやった。
同時に成体まりさも二匹を見つめた。
「今のあいつらを守れてるのはお前のおかげだろう。できた、できなかったを考えるより今を大切にしようぜ」
「…」
「少なくともあいつらはお前を信頼していたぞ。それに応えてやったらどうだ?」
「…はい!」
「じゃ、俺帰るわ。あいつらにもよろしくな」
考えがすっきりしたのだろうか、成体まりさは満面の笑みで力強くしっかりとした返事をした。
男は自転車に跨り帰路についた。
怪しい視線は今日も一家を捉えていた。
3.
さらに次の休日。また来るという約束はしていないものの一家が気になるのでまた出掛けることにした。
土手に来てみるとそこには今までとは明らかに異なる状況があった。
成体まりさがボロボロになり、黒ずみかけてぐったりとしていた。
男は明らかに異様な事態に驚き、すぐさまその場に駆けつけた。
成体まりさの片眼にあたる部分に棒きれが突き刺さっていた。
「おい!どうかしたのか!?」
「あぁ…その声はお兄さんですか…?」
消え入るようなか細い声で成体まりさは応えた。
そした涙ぐみながら続けた。
「ゲスれいむに我が子を盾に取られてこの様です…恐らく今は妻がいる巣に向かっているでしょう…」
「分かった。俺が見てくる。」
「…結局、私は誰も守れないんですね」
「…」
男はリュックからオレンジジュースを取り出して成体まりさにかけだした。
そして諭すように話しかけた。
「…暫く経ったらまた動けるようになるだろう。それから先はお前次第だ」
「…」
男は自転車に跨り橋のたもとに巣に向かった。
近づくにつれ声が聞こえてきた。
「くそじじいからたべものをまきあげるなんてずるいよ!さっさとれいむにぜんぶわたしてね!」
「にんげんざんのだべものなんでもっでないでずぅぅぅぅぅ!」
「だりぇかたしゅけてぇぇぇ!」
「うそをつくげすなれいむはせいっさいだよ!」
「やめでぇぇぇぇぇぇ!」
「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!」
巣に来てみると、普通の成体ゆっくりよりも一回りも二回りも大きいゲスれいむがれいむを踏みつぶしていた。
なるほど、あのまりさでも適わないのも当然であると思える大きさである。
子まりさは半ば囓られているといった状況であった。
「おい!」
「あっ!おにーしゃん!」
「だずげでぐださぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ふん!どれいはれいむにたべものさんをわたしてさっさとしんでね!」
このゲスれいむは無謀にも挑発するような言葉を投げかけてきた。
これが本心であるということは分かるものの男にとっては呆れる発言でしかなった。
「それは無理だな」
男はそう言いつつゲスれいむのもみあげを掴みぶら下げた。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「おい、お前らは今の内に避難してろ」
「おにーしゃん!ありがとう!」
「ありがどうございまずうぅぅぅぅぅぅ!」
男は嘘を言った。
この場から二匹を遠ざけたのは避難させるためではなかったのである。
これから始める制裁を見られたく無かったからだ。
「ばなぜぐぞじじぃぃぃぃぃぃぃ!」
「さーてと」
男はリュックからピーラーを出した。
これは一家のためにリンゴを剥こうと持ってきたものである。
「これが何か分かるかな?」
「わがるわげないでじょぉぉぉぉぉぉ!?」
「じゃあ教えてやろう。こう使うんだ」
男はピーラーを使いゲスれいむの表皮を剥ぎ始めた。
同時に凄まじい叫び声が空に響き渡った。
「ゆぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせえ」
表皮を薄く剥いでいくのだ。その痛みは計り知れないものだろう。
剥ぐ度に耳を劈くような悲鳴が聞こえるので男はうんざりし始めてきた。
「これでも咥えとけ」
男がゲスれいむの口に突っ込んだものはその辺にあった石だ。
重さも大きさもなかなかな物である。
「あががががががが…」
「さて、続きをしようか」
悲鳴は無くなったものの激痛がゲスれいむを襲い続ける。
声にならない叫びが体内にこだましているのだろうか、ゲスれいむの体は細かに振動している。
「大分薄くなったな」
ゲスれいむは皮や髪やお飾りをも殆どはぎ取り薄皮一枚という状況になっていた。
さらに自分の涙で顔のあたりはぐしゃぐしゃになって原型を留めていない。
「このまま川に投げ捨ててもいいけどどうしようかな…」
「…!」
どうやらやめてくれという意思表示をしているようであるが男には伝わらない。
そして男はあることを思い出した。
「あ、そうだ」
男はゲスれいむの目玉をえぐり取った。
同時にゲスれいむの体がびくんと動いた。そして気絶したのか動かなくなった。
「これでよし」
男は満足そうに微笑むとゲスれいむから石を取り出し、土手の向こう側に蹴り飛ばした。
鈍い着地音が聞こえた。
4.
「お兄さん!ゲスれいむは!?妻と子は!?」
ワンテンポ遅くあの成体まりさが棒きれを携えてやってきた。
接地面が酷くボロボロになっている。どうやらゆっくりなりに急いで来たようである。
「追い払った。お前の妻とお子さんは避難させてるよ」
「そうですか…何から何まで本当にありがとうございます」
「いや、別にいいよ。…お前も頑張ったじゃないか」
「私は何も…」
「その持っている棒きれとボロボロの足がなによりの証拠だよ。よく勇気を出したな」
「お兄さん…」
成体まりさは感涙していた。
自分をこんなにも認めてくれる人に会えて嬉しかったのである。
「あぁ、そうだお土産だ」
「なんですか?」
「ちょっと痛いが我慢しろよ…」
男は成体まりさの片眼に刺さっている棒きれを抜き取った。
目玉ごと抜けた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「悪い!今新しいの渡すから!」
男は先ほどゲスれいむからえぐり取った目玉を成体まりさの眼に急いで入れた。
同時に激痛が走る。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ごめん!でも勘弁してくれ…」
「…?あれ、見える…!」
「あのゲスから奪い取ったんだ。あいつよりお前の方が有効活用してくれるだろう」
「お兄さん…本当に、本当にありがとうございますっ!」
成体まりさは土下座するような勢いで顔を突っ伏した。
同時に嗚咽の声が漏れた。
「おとーしゃんだいじょうぶなのじぇ!?」
「まりさー!」
土手の上の方から成体まりさを呼ぶ二匹の声がした。
その声は段々と大きくなる。
「ほら、お前らの大事な家族が来てるぞ。笑顔で迎えてやれ」
「はい!」
涙が残るその笑顔で成体まりさは家族を迎えた。
感動の再会といったところであろうか。
「あ、れいむ。お前にもお土産があるぞ」
「ゆ?ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
晴れ渡った青空に悲鳴が響いた。
5.
眼に新しい光を手に入れた二匹と食事を楽しんだ後、挨拶を交わし男は帰っていった。
「いいにんげんさんだったね…」
「おにーしゃんはしゅぎょいにんげんしゃんだじぇ!」
「あぁ、本当に素晴らしい人だったよ…」
成体まりさは男との交流を思い返し、満足そうな笑みを浮かべた。
空には綺麗な夕焼けが輝いていた。