あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ内検索 / 「虚無と鬼」で検索した結果
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虚無と鬼
「クロノベルト」より「九鬼耀綱」を召喚 虚無と鬼-01 Bサイド 虚無と鬼-02 -
虚無と鬼-01
前ページ次ページ虚無と鬼 虚無と鬼 第一話 ただ歩いていた。 白き靄が立ち込め、果てが見えないほど真っ直ぐに続く道。 その道には霧以外はなにもなく、道の外には深い奈落があるだけである。 傍らには誰もいない。 先ほどまで共に歩いていた息子とは、すでに道を違えた。 後悔や未練はあると言えばあるが、我慢できないほどのものでもなく。 息子の前ではカッコよくいたいと思うぐらいには父親であった。 どちらにしろ、今更息子の行く先へと行けるはずも無く。逆に息子を連れてゆくわけにもいかない。 なぜなら行く先は地獄なのだから。 人を殺しすぎた。 仕事、正当防衛、犯罪者相手――そんな建前が通用するには数が多く。 なにより自分の“強さのために”殺したものだからだ。 犯罪者を殺し、本当は罪のない者を殺し、力ある者を殺し、力ない者を殺し、子供を殺し、老人を殺し、悪人を殺し... -
虚無と鬼-01b
前ページ次ページ虚無と鬼 虚無と鬼 第一話 (Bサイド) そこに広がるはどこまでも続く荒野。 鳥の一羽、虫の一匹、草木一本さえない命無き道。 見渡す先は暗黒。 果て無く、際限無く、暗闇へ向かって沈む道のり。 先にあるのは底無しの絶望。 地獄(ダロマグル)。 罪人が、悪が、黒き者が落ちる最凶最悪のゴミ捨て場。 そこには数多くの悪夢と、罪人と、生贄と、罪無き者が苦悶を、絶望を喘いでいるのか。 そしてそれらを貪る不死の王(ノーライフキング)。 死そのものでありながら、死なずに死んでいるかつての神の片割れ。 どんなに信仰深く彼を崇める信者であろうとも、心に抱くは絶望だろう。 地獄へと向かうということは、不死の王が味わっている無限の苦痛を己が身に受けるということであるのだ。 それゆえに、正気を保てるわけは無く。 もし正気でいられるのならば、それはすでに... -
虚無と鬼-02
前ページ虚無と鬼 虚無と鬼 第二話 「…………」 沈黙は金、雄弁は銀という言葉があるが。 暗闇の中、ルイズは沈黙の金を堪能する余裕は無く。雄弁の銀を取ることも躊躇われていた。 被った布団から目だけを出して、ちらりと壁際へと目を向ける。 そこには、壁に背を預けて寝る男がいた。 クキヨウコウと名乗った『メイジ殺し』の男。 ルイズはそのクキを悶々とした気持ちで見詰めた。 あれから、学院へクキを連れて帰ったルイズのするべきことは状況の確認だった。 部屋に招き入れると、さっそくベッドに座る。 軽く部屋を見回すクキへと話しかけた。 「この部屋が珍しいの?」 それにクキは、前の時はゆっくり見るヒマがなくてね、と苦笑気味に呟く。 なんだかあんまり深く突っ込んではいけない気配がしたので、軽く咳払いをして話を切り出した。 「クキ、あなたはわたしの使い魔にな... -
虚無と賢女
PSのアクションRPG「ベアルファレス」より ラスボス戦直後の「西方の賢女」エレアノールを召喚 ※ネタバレ注意 虚無と賢女-00 虚無と賢女-01 虚無と賢女-02 虚無と賢女-03 虚無と賢女-04 虚無と賢女-05 虚無と賢女-06 虚無と賢女 幕間1 虚無と賢女-07 虚無と賢女-08 虚無と賢女-09 虚無と賢女-10 虚無と賢女 設定集 -
虚無と狂信者
注)本SSは『HELLSINGのキャラがルイズに召喚されました』スレに掲載された作品です。 「HELLSING」のアンデルセン、アーカードを召喚 虚無と狂信者-01 虚無と狂信者-02 虚無と狂信者-03 虚無と狂信者-04 虚無と狂信者-05 虚無と狂信者-06 虚無と狂信者-07 虚無と狂信者-08 虚無と狂信者-09 虚無と狂信者-10 虚無と狂信者-11 虚無と狂信者-12 虚無と狂信者-13 虚無と狂信者-14 虚無と狂信者-15 虚無と狂信者-16 虚無と狂信者-17 虚無と狂信者-18 虚無と狂信者-19 虚無と狂信者-20 虚無と狂信者-21 虚無と狂信者-22 虚無と狂信者-23 虚無と狂信者-24 虚無と狂信者-25 虚無と狂信者-26 虚無と狂信者-27 外伝 もう一つの虚無と狂信者-... -
虚無と狼の牙
「トライガン・マキシマム」からニコラス・D・ウルフウッドを召喚 虚無と狼の牙-01 虚無と狼の牙-01b 虚無と狼の牙-02 虚無と狼の牙-03 虚無と狼の牙-04 虚無と狼の牙-05 虚無と狼の牙-06 虚無と狼の牙-07 虚無と狼の牙-08 虚無と狼の牙-09 虚無と狼の牙-10 虚無と狼の牙-11 虚無と狼の牙-12 虚無と狼の牙-13 虚無と狼の牙-14 虚無と狼の牙-15 虚無と狼の牙-16 虚無と狼の牙-17 虚無と狼の牙-18 虚無と狼の牙-19 虚無と狼の牙-20 虚無と狼の牙-21 -
虚無と金の卵
「マルドゥックヴェロシティ」のウフコックを召喚 第一章 使い魔は金の卵 虚無と金の卵-01 虚無と金の卵-02 虚無と金の卵-03 虚無と金の卵-04 虚無と金の卵-05 虚無と金の卵-06 虚無と金の卵-07 虚無と金の卵-08 虚無と金の卵-09 虚無と金の卵-10 第二章 追憶と邂逅 虚無と金の卵-11 虚無と金の卵-12 虚無と金の卵-13 虚無と金の卵-14 虚無と金の卵-15 虚無と金の卵-16 虚無と金の卵-17 虚無と金の卵-18 -
虚無と十七属性
『ポケットモンスターダイヤモンドパール』より、主人公(男)を召喚 虚無と十七属性-01第一節「魔王」 虚無と十七属性-02 虚無と十七属性-03 虚無と十七属性-04 虚無と十七属性-05 虚無と十七属性-06 虚無と十七属性-07 虚無と十七属性-08 虚無と十七属性-09第二節「怯える剣(つるぎ)」 虚無と十七属性-10 虚無と十七属性-11 -
虚無と最後の希望
「HALO」より、マスターチーフを召喚 虚無と最後の希望 Level01 虚無と最後の希望 Level02 虚無と最後の希望 Level03 虚無と最後の希望 Level04 虚無と最後の希望 Level05 虚無と最後の希望 Level06 虚無と最後の希望 Level07 虚無と最後の希望 Level08 虚無と最後の希望 Level09 虚無と最後の希望 Level10 虚無と最後の希望 Level11 虚無と最後の希望 Level12 虚無と最後の希望 Level13 虚無と最後の希望 Level14 虚無と最後の希望 Level15 虚無と最後の希望 Level16 虚無と最後の希望 Level17 虚無と最後の希望 Level18 虚無と最後の希望 Level19 虚無と最後の希望 Level20 虚無と最後の希望 Level21... -
虚無と炎髪灼眼
灼眼のシャナよりシャナを召喚 虚無と炎髪灼眼-01 虚無と炎髪灼眼-02 フリアグネ&マリアンヌの なぜなにシャナ!なんでも質問箱! -
『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』
ウィザードリィより、アラビク王子を召喚 (設定はベニー松山版) 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-1 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-2 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-3(前編) 『虚無と金剛石~ゼロとダイアモンド~』-3(後編) -
虚無と金の卵-01
前ページ次ページ虚無と金の卵 プロローグ/???にて―― 自閉し、外部との接触を絶った多次元構造の自己の中で、金の卵と呼ばれた鼠はまどろんでいた。 虚無にあがく良心の存在を夢見ていた。 『“苦痛する価値”がかつて果たした役割は、今も全ての犠牲者に宿っている』 自己が濫用される悪夢を見ていた。 『自分がどんどん小さくなっていく……俺が消えてしまいそうだ……』 自己の存在を訴える夢を見ていた。 『俺もいつか必ず死ぬ。 それがいつかはわからない。 それまでに俺は見つけ出さなければいけないんだ。俺自身の有用性を』 信頼する相棒に裏切られ、忌むべき凶器として操られた悪夢を見ていた。 『何故だ。何故俺を濫用した……ボイルド』 相棒は、良心を振り切って加速し、虚無の権化と化してしまった。 ... -
虚無と賢女-00
前ページ次ページ虚無と賢女 その日、物質世界と精神世界を融合させ『新しき世界』を創造しようとした神―――ベアルファレスは倒れ、 その身体の中から眩い『光』が異形の表皮を突き破って溢れ、あっという間に始原の地の最深部たる神界を覆いはじめる。 最強の切れ味を秘めた無銘の長剣で斬りかかった青年と、その傍らで強大な炎の魔法を放ち続けた少女を飲み込んで。 「ウェルドー!! ノエルー!!」 ただ一人、辛うじて『光』から逃れることの出来た女性は、死闘で乱れた長く美しい黒髪を整えもせず、 必死になって脈動しつつ膨張する光の塊―――光球に向かって叫び続けた。 「返事を!! 返事をしてくだ―――ッ!?」 何度目かの呼びかけの最中、光球は突如として脈動を止める。膨れようとする箇所、収縮しようとする箇所、 ねじれた円錐状の突起を生み出す箇所、い... -
虚無と夜闇の魔法使い
――――――――――予告―――――――――――― ―――空に浮かぶは二つの月 ―――世界を統べるは魔法の力 今、ハルケギニアを舞台に新たな物語が始まろうとしていた。 少女の声に呼ばれ、異世界から召喚されし一振りの魔剣を持つ少年。 彼は侵魔から地球を守る為、過去に忘れ去られし古の力―魔法―を駆使して戦う魔法使い"ウィザード" ――その少年の名は柊蓮司。またの名を「下がる男」―― 柊蓮司「そのネタはもういいんだよっ!」 ≪虚無と夜闇の魔法使い≫ ――少年と少女が出会った時、世界は新たな歴史を紡ぎ出す。 異世界の住人である彼は、この世界に何を齎すのか! 柊蓮司「お、俺の魔剣がーっ!?」 ... -
虚無と狂信者-03
前ページ次ページ虚無と狂信者 教皇庁生物学研究所より再生能力強化用製剤及び当該研究データの全てが奪われ、研究者 十五名が殺害される。遺体の状況から吸血鬼の犯行であると判断し、13課が捜査開始。 二年間の捜査の後構成員二名が行方不明。その後10年間の捜査の結果、進展が認めら れず捜査の終結を決定する。当製剤唯一の被験者であるアレクサンド・アンデルセン神父 「一体ここどこだ?」 平賀才人は視界に突然現れた森に茫然とする。それもそうだ、今まで東京に居たんだから。 上を見ると月が二つある。彼は笑って言う。 「夢だなこりゃ。」 「「私の使い魔しらない?」」 ルイズとキュルケは二人同時に話しかける 「あなた、リンゴの香水?それ。」 強い匂いにルイズは顔をしかめた。その途端キュルケが震えだす。 常に冷静なゲルマニアの娘の取... -
虚無と十七属性-10
前ページ次ページ虚無と十七属性 「たばさーっ!」 友人のキュルケが、どたばたという擬態語を上げながら、了承も得ずに『アンロック』をして部屋に入ってきた。『サイレント』を使おうかと杖を手に取ったが、キュルケはもうそこまで来ていた上に、何か焦っていた。 悪いけれど、読書中は静かにして欲しいのに。 「ね、ね、タバサ。今日はとても良い天気でしょう? 一緒に町まで行かない?」 「……虚無の曜日」 「分かってるわ。あなたにとって虚無の曜日が、本を読める大切な憩いの日って事は。でも、大変なの! ルイズと、その使い魔と一緒に町へ行こうかと思ったら、彼がなんか凄い早い乗り物に乗って先に行っちゃったの!」 その言葉に、ぴくん、と反応する。あの『魔王』じみた彼は、一体どんな乗り物を持っているのかに興味が湧いたのだ。だけど、召喚された時にはそんな物を持っていなかった気がする。 「... -
虚無と十七属性-07
前ページ次ページ虚無と十七属性 「ヴェストリの広場で、ギーシュが決闘してるぞ!」食堂に、二年生の誰かが駆け込んできてそう言った。 「え、本当!? 誰と? 誰と?」 「もしかして、さっきの二股が原因?」周りの生徒が、これはいい肴を見つけた、とばかりに飛びついた。 「ああ。なんでも、原因となった小瓶を拾った、ルイズの使い魔と決闘しているらしい。逆恨みだよなー」 その言葉が食堂に響いた後、一斉に視線がこっちを向いた。思わず吹き出しそうになった口の中のものを、必死に飲み込む。 「あんの……馬鹿!」 虚無と十七属性 第七話 バラおとこのギーシュは ワルキュレをくりだした! (※ポケモンの世界に於いて、固有名詞は5文字までしか入りません) 「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。よって、君の相手は青銅のゴーレム・ワルキューレがお相手す... -
虚無と狂信者-02
前ページ次ページ虚無と狂信者 アンデルセンは、とりあえずは普通にやってくれていた。キュルケが部屋を私から遠い所 にしたり、あの吸血鬼が昼間寝ていたりなどから2人が出会う絶対数も少なかったし、 出会っても私とキュルケが全力で止めたからだが。彼は普段は温厚な神父の顔を崩さなか ったし、私の雑用を割りとしっかりやった。曰く「孤児院の仕事で慣れている」そうだ。 しかし、隙あらば平民に彼の神の教えを広めようとするのには辟易した。 けれど、あの時の出来事もまた彼なのだろうか。 私が錬金の授業で失敗した時、クラスの皆は私を責め立てた。それは死人がでてもおかし くない規模の爆発だったから無理もないけど。情けない気分になる私の前に彼は立ち、 私の両肩に両手を置き、皆にこう言った。 「この中で生まれて一度も失敗をしたことの無い人だけがこの子を責... -
虚無と十七属性-08
前ページ次ページ虚無と十七属性 「何だ!? 一体、どこから現れた!」突如白い巨人が出現し、ギーシュは慌てふためいた。 「どこって……ここだが」それを、青年はさも当たり前といったように、手のひらに収まる大きさの球を答える。 「君が召喚したのかい?」 「そうだ。これは、お前たちメイジが俗に言う……使い魔、という奴だ」 虚無と十七属性 第八話 「魔法の使えない平民の分際で、使い魔だって? ルーンも刻めないから、感覚の共有もできないだろうし、そんな 亜人じゃ、コミュニケーションもとれないじゃないか。変わったペットのようだが、それじゃ、僕は倒せないよ」 その言葉を聞いて、ルイズは歯噛みした。感覚の共有ができないなんて、まさに私の事じゃないか、と。 だが、青年は、ちっとも動じない。 『主人を蔑むか。貴様、貴族と名乗ったが、精々恥を、その身体と... -
虚無と狼の牙-19
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十九話 トリステイン城下町にある酒場魅惑の妖精亭は、シンと静まり返っていた。タルブがアルビオンの侵攻を受けたというニュースを聞いて、タルブ出身の店長スカロンはどうしても店を開ける気持ちになどなれなかったのだ。 「大丈夫よ、父さん。あそこの人たち、ほんとうにしぶといから平気だって」 ジェシカが椅子に座って頭を抱えるスカロンの肩をポンと叩く。 「わたしだって、そう思っているわよ。けれども、やっぱり心配で心配で」 そう言ってスカロンが頭をフルフルと振った時だった。カランとベルの鳴る音がして、店の扉が開いた。 「あ、悪いんだけれども、今日は店は閉めてるんだ――って、あんた、ウルフウッド?」 「え?」 ジェシカの素っ頓狂な声に、スカロンも顔を上げる。そこにはつい先日アルバイトでこの店にいた男の姿。 「よう、店... -
虚無と十七属性-05
前ページ次ページ虚無と十七属性 教師・コルベールは学院長室へと走っていた。 ヴァリエール嬢の召喚した、平民の使い魔のルーンについて調べていたら、大変な事が分かったのだ。 始祖ブリミルに仕えていたとされる、伝説の使い魔のうちの一人、神の頭脳ミョズニトニルン。そのルーンが、召喚された平民の使い魔の額に刻まれていたものと一致したからだ。しかも、そのルーンは契約時に刻まれたものではなく、恐らく謎の契約のルーンによって、後天的に生まれたものと来ている。 何たる異常事態だ。一刻も早く報告せねば。 「オールド・オスマン!」学院長室の扉を、ノックもせずに力一杯こじ開けた ――が、 「すまん、申し訳ない、本当に申し訳ないと思っとる、もうしないから、ああっ、やめてっ、そこはっ、いたいっ…………んむ?」 中にいたのは、到底この学院の長とは思えない行動(おそらくセクハラ)... -
虚無と十七属性-01
前ページ次ページ虚無と十七属性 ここはどこだ。周りの人だかりは何だ。そして目の前で、棒を持ち、マントを着たピンクの女は誰だ。 14歳くらいに見えるピンクの少女は、仰向けに倒れている俺を、まるで牛乳を拭いた雑巾を見るような目で見て、 「アンタ誰?」と訊いてきた。 虚無と十七属性 第一節「魔王」 第一話 髪を揺らし、草木を波打たせる風の穏やかな音は、桃色の髪の毛を靡かせる今の少女の対義にあたる存在のようだった。 少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・フラン・ド・ラ・ヴァリエールは不機嫌だった。 彼女はヴァリエール公爵家の三女として生まれたにも関わらず、今まで魔法一つ成功できた事が一度もない。二年に進級 する為に絶対不可欠の存在である、使い魔召喚の儀式だけはなんとしても成功させなければならなかったが、幾度も失敗を繰り返した。 そして、今... -
虚無と十七属性-09
前ページ次ページ虚無と十七属性 「……あった」 あの使い魔の青年に刻まれていた、新しい二つのルーン。 もう、模写した時に半ばわかったようなものだったが、再びこの書物を見て、確信へと変わった。 「ウィンダールヴとガンダールヴ……」 『始祖ブリミルと使い魔たち』という書物に記載されているそれと、自分がスケッチしたルーンは一致した。 ルーンの刻まれた位置もまた、狂い無く一致している。 「神の左手ガンダールヴ……あらゆる武器を使い、ブリミルの盾となった……。右手はウィンダールヴ、あらゆる獣を操り、ミョズニトニルンはあらゆるマジックアイテムを使える……そして、記されない四番目……」 独り言を呟き、自分がスケッチした、未だ確認できないルーンをしげしげと眺める。果たして、このハルケギニアの文献で、このルーンが記された書物は存在するのか。 気がつけばもう夜も遅く、... -
虚無と十七属性-06
前ページ次ページ虚無と十七属性 「これで分かったでしょ? 私がどうしてゼロと呼ばれるか」 「……」 目を覚ましたシュヴルーズ教諭に命じられた、教室の後片付けを黙々とこなす中、ルイズが突然沈黙を破った。 「魔法成功確率、ゼロのルイズ……。さんざん平民だ何だ言って、結局私も貴族になりきれていないのよ。私って滑稽ね……・。笑いたき ゃ、笑いなさいよ。魔法が使えない貴族って馬鹿にされて、もう名誉なんてあったものじゃないわ」 「……確かに成功はしていないかもしれないが、魔法は使えている」 「そんなの、ただの屁理屈よ!」 「あれだけの高エネルギーを、精神力と呼ばれるものからひねり出し、ここまで惨状を生み出したのは誰だ? 教室一つを使い物にならなくする破壊力で、短時間詠唱、そして、衣服を含めなければ自分は傷一つ負わないという都合の良さ。 今の爆発だけを磨き、コントロールで... -
虚無と狂信者-01
前ページ次ページ虚無と狂信者 私の好敵手である「微熱」のキュルケの召喚した使い魔は恐ろしいものだった。 赤いコートに防止にサングラス、見かけは只の平民である。しかし私たちは声がでない。 誰も彼も固まったままである。皆一様に彼をみる。彼は私たちを見回し、目があう生徒は皆脅えた。 コルベール先生は杖を向けるがキュルケは左手で制止する。彼女は使い魔に説明をし、契約を要求した。 「私に従僕になれと?」 彼はキュルケに訪ねた。 「ええ、そうよ」 彼女は髪をかきあげながら言い放つ。彼は肩を震わせ笑った。一歩も退かないキュルケに私は改めて感嘆する。 「その前に教えて、あなた何者?」 彼は答えた。 「吸血鬼だ」 その瞬間言いようもない感情が私たちをつつんだ。しかし、私たちは声も上げることができない。キュルケは嬉しそうに手を叩いてい... -
虚無と十七属性-02
前ページ次ページ虚無と十七属性 「~~~~ッ!」 胸板にじんじんと伝わる痛みで、俺は目を覚ました。 「! 目が覚めましたか!」 身体を起こさないで視線だけを声の主の方向けると、そこには、見覚えのあるようなないような、髪の毛の薄い男性が、 鈍器になりそうな分厚い本を開いていた。 「ここは、何処だ……」痛みの中で、なんとか声を絞り出した。 「トリステイン魔法学院です。毎年行われる、春の使い魔召喚の儀式であなたが呼ばれたのです。 いやはや、あなたがコントラクト・サーヴァントであそこまで苦痛を強いさせてしまうとは、本当に申し訳ありません」 何のことだか、さっぱり分からない。 「……」 「ああ、何が起きたか分からない、といった顔をなさっていますね。詳細を説明しますと、あなたは、桃色髪のこの学院の生徒に 使い魔として召喚され、そしてその契約である接吻を終えた後... -
虚無と十七属性-04
前ページ次ページ虚無と十七属性 結局月を眺めた後、地理を把握するために30分ほど学院内を動き回り、部屋に戻った。するとまぁ、他の生徒まで巻き込んで俺を 捜していたらしいルイズから、勝手に動き回るなと折檻され、使い魔がなんたるかを20分ほど説教され、そして改めて、ルイズが就寝した のを見届けてから、バッグを枕代わりにして、一枚の毛布を身体にくるんで寝た。 それで、日付が変わった今日。俺は何をしているかというと、何でも使い魔の雑務と託(かこつ)けて洗濯をやらされている。 ああ、水が冷てぇ。 虚無と十七属性 第四話 シエスタはメイドである。 日々甲斐甲斐しく働く、黒髪黒目、白い肌にそばかすのある可愛らしい彼女は、故郷のタルブ村から、この魔法学院に奉公に出ている。 まだ貴族達が寝静まっている、まだ外気が冷たい朝霧のある頃に起き、いくら... -
虚無と十七属性-03
前ページ次ページ虚無と十七属性 「……」 「そう言えば、まだ聞いてなかったわね。アンタの名前、なんていうの?」 「……」 「早く言いなさいよ」 「……」 「……何?私から名乗らせる気? まぁ、いいわ。もう既に一度言ってるけど。私の名は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ ド・ラ・ヴァリエール。今日からあなたのご主人よ。ご主人様、と呼びなさい。で、あなたは?」 「……俺は」 「うん」 「……記憶がない」 「…………………………は?」 虚無と十七属性 第三話 「自分の名前が分からない!?」 夜の宿舎に、金切り声が響き渡った。そして、途端に自分の声の大きさを客観的に考えて、思わず赤くなって俯いてしまう。 「……ああ。自分に関する、一切の記憶がない」医務室から帰ってきた使い魔は、あっけらかんとそう言った。 「記憶がないって……... -
虚無と狼の牙-08
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第八話 厨房で皿洗いを再開しようとしたウルフウッドの耳に人の怒鳴り声が聞こえた。 「この馬鹿娘ー! 僕ちんのラブリーなお顔にカカトをくれるとは何事だー!」 その声にウルフウッドは一つ大きなため息を付き、厨房からホールへと顔を出した。 「なぁ、なんやあれ?」 ウルフウッドは梁に軽く手を突きながら、上半身を前のめりに覗き込むようにして隣にいたジェシカに尋ねた。 「税務官のナイトウよ。まったく、あのルイズの馬鹿、とんでもないのにケンカ売っちゃって……」 ジェシカが顔に手を当てて嘆いた。 「税務官、役人か?」 「そう。この辺りの飲食店の税を取り立てている役人よ。 あいつに下手に逆らうと重い税をふっかけられるから、この辺りの飲食店はどこもあいつに逆らえないわけ。 それで、あいつはそれをいいことにあちこちで好... -
虚無と金の卵-11
前ページ次ページ虚無と金の卵 ガリア王都、リュティス。 そこに、ハルケギニア有数の宮殿の一つ、ガリア王家のヴェルサルテイル宮殿が存在する。 そして宮殿中心部、グラン・トロワの一室に、二人の男が向かい合っている。 一人は瀟洒な椅子にゆったりと寛いでいる――王者の風格。 一人はひどく堅い調子で屹立する――忠誠を見せんとして身動ぎもしない。 椅子で寛ぐ男、ガリア国王陛下ジョゼフ。青髪の美丈夫。たくわえられた立派な髭。がっしりとした闘士のような体つき。 匂い立つような男ぶり/国民からは無能王、簒奪者と罵られる男。 そして、ジョゼフはもう一人の男に何事かを報告させていた。 その男の眼球はせわしなく動く。だが努めて、不興や誤解を与えぬよう、朗々と羊皮紙を読み上げていく。 酷く緊張した男の有様とは対照的に、ジョゼフは欠伸混じりに聞いていた。 「... -
虚無と狼の牙-05
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第五話 揺れる馬車の振動の中でフーケは目を覚ました。もう、随分と陽は傾き始めている。例の小屋にたどり着いたのが真昼だったから、自分は三時間くらい気を失っていたのか。 体をもぞもぞとうごかしてみた。両腕が縛られている。杖は近くにはないようだ。当たり前か。 「やられちゃったわねぇ……」 小さくひとり言を呟く。気が付いたことがばれたら色々とうっとおしそうなので、誰にも聞こえないような小さな声で。 これから自分はどうなるのだろうか。まぁ、よくても悪くても死刑には変わりはないだろうが。 それにしても、まさかメイジでもなんでもない男にやられてしまうとは思わなかった。 ゴーレムの動きから正確に自分の位置を見つけ出すとは。 フーケは職業柄そういった敵に回したらやばい人物に鼻が効くつもりだったのだが、今回だけは失敗した... -
虚無と狼の牙-21
前ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二十一話 夕日を浴びて高らかに笑う謎の貴婦人、その正体とは―― 「何やってるんですか、先生?」 モンモランシーが気の抜けた声を出した。 「な、ち、違いますよ。断じて私はシュヴルーズなどという者ではありません!」 いや、シュヴルーズのシュの字も出してねーよ。 と、モンモランシーは思った。 「なんで、魔法学院におったはずのシュブルーズ先生がこんなところにおんねん?」 「あ、違いますよ、ウルフウッド君。シュブルーズ、じゃなくてシュヴルーズ。下唇を噛んで、ヴ。よくある間違いなんで気をつけてください」 「……」 一同、言葉が出ないまま、ぽかーんと自称シュヴルーズではない人を見つめる。 「……というのが、シュヴルーズの発音に対する一般論です」 なわけねーだろ。 と、モンモランシーは思った。 「で、そのセ... -
虚無と狂信者-07
前ページ次ページ虚無と狂信者 ミスロングビル、真の名を土くれのフーケと呼ぶ、は悩んでいた。あの破壊の杖の使い方が分からない。 学院の連中を誘き寄せようかとも思ったが、あんな化け物がいるのでは下手に動けない。というか動きたくない。 そもそもあの吸血鬼共とは酒場で知り合った。明確なギブアンドテイクの元に手を組んだだけだ。 しかし、その強さは明らかに異常ということは分かった。それをあんなにもた易く倒す吸血鬼と神父。 どうもオスマンの話だと奴らは吸血鬼を狩るものらしい。 その話を聞いた時、奴らの話に乗り吸血鬼と成らないでよかったと思ったものだ。 そしてこれからの身の振り方を考える。はっきり言ってこの秘書の仕事の収入は悪くない。 ただ、盗賊の仕事ほどでは無い。 考え事をしていると何かにぶつかった。それにフーケは悶絶する。 赤いコート、帽子、サングラ... -
虚無と金の卵-04
前ページ次ページ虚無と金の卵 ある日の学院長室における、年寄りの楽しい楽しいセクハラの時間/代価――ミス・ロングビルのビンタと蹴りの応酬。 痛がりつつも満足を覚えていた学院長オスマンの至福の時間は破られる。 コルベールの逸る足音が学院長室へと近づく。 オスマン達はその足音が聞こえた時点で、気の抜けた空気を早業で払拭させていた。 「オールド・オスマン! 大変です!」 「なんじゃね? 大変なことなどあるものかね」 コルベールの目に映るのは、机に向かい重々しく手を組むオスマン/粛々と書類を整理するミス・ロングビル。 そして乱暴に扉を開けたコルベールに対し、オスマンは重々しく頷いて促す。 「こ、これを見てください!」 「これは『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。 まーたこのような古臭い文献など漁りおって。 ... -
虚無と狂信者-10
前ページ次ページ虚無と狂信者 アンデルセン達が桟橋へと到着した。その大木にさすがのアンデルセンも驚いた。 そして階段を上り、踊り場にさしかかった時、後ろからそいつは現れた。 仮面をつけた男、男の発する気配から、そこそこはできる印象を受ける。 神父は、構えるルイズ達を制し、先に行くよう促した。その彼の前にギーシュが躍り出る。 「あはは、女王陛下の望みのため、このギーシュ・ド・グラモンが、グボア!」 仮面の唱えたエア・ハンマーにより、ギーシュは昏倒した。 その後、男にゴミを捨てるように、階段から落とされる。 アンデルセンは興味なさそうに一部始終を見ていた。 アンデルセンにとっては久し振りのまともな戦闘である。 ルイズも行ったようだし、心置き無く楽しめる。 「いい月だな」 アンデルセンはそう言うと、懐から大量の銃剣を取り出し、仮面に投... -
虚無と金の卵-07
前ページ次ページ虚無と金の卵 ルイズが学院に入学してから身に付けた癖――魔法の練習を人目に晒すのを徹底的に避ける。 練習のたびに、魔法が出来ない自分をまざまざと自覚するためであった。 そして虚無の曜日にも魔法の練習に励むルイズであったが、結果はいつも通り、無しのつぶてであった。 「はぁ……まったく、今日も成功しなかったわ」 だが、珍しく声色に徒労感を滲ませていない。 明日また頑張ろう――そんな気楽さが入り混じっていた。 ルイズは努力家である。そして努力の積み重ねの結果、数限りない失敗を冒す。 他のメイジの、自分の失敗に対する反応=嘲笑、揶揄、あるいは落胆――今まで、他の貴族の視線は目に見えぬ病いのように、 常にルイズを脅かしていた。 だがルイズは、ウフコックを召喚してからは、さほど気にしなくなっていた。 自分の魔法への... -
虚無と狂信者-11
前ページ次ページ虚無と狂信者 巨大な狼がアンデルセンに勢いよく噛みつき、壁に叩きつける。 アンデルセンの左腕はメキメキと音を立てた。 血の塊を吐いた神父は空いた右腕で銃剣を突き立てようとするも、素早く離脱される。 サイトは今にも千切れそうな彼の左腕に口を押さえる。 だが、アンデルセンのとった行動はさらに恐るべき行動だった。 彼は己の左腕の袖に噛みつき、無理矢理引っ張り上げた。 そして、あろうことか、大尉に向かって行った。 「神父!!」 サイトが不安げに声をかける。しかし、アンデルセンはサイトの方を一顧だにしない。 ただ真っ直ぐに狼へと立ち向かう。眼には未だに闘志と殺意が湛えられている。 突き進もうとした彼は、不意に思いだしたようにポツリと、おそらくはサイトに向けて呟いた。 「そうあれかしと叫んで斬れば、世界はするりと片付き申す」... -
虚無と金の卵-06
前ページ次ページ虚無と金の卵 ミス・ロングビルの顔――学長のセクハラに耐える美人秘書。 一般的に見て美人で清楚。学園という閉鎖的な空間においては、まさに男性教師陣の薔薇と言えた。 もう一つの顔――王立銀行の金庫/貴族屋敷の宝物庫/大商人の蔵/種類を問わず神出鬼没、 トリステイン中の金持ちを震え上がらせる謎の怪盗『土くれのフーケ』。 魔法学院本塔に垂直に立つ女性の姿を、二つの月の光が浮かび上がらせる。 「ふう……ここまで堅牢とはねぇ」 土系統のエキスパートであるフーケは、その自身の魔法を駆使して宝物庫にあたる場所の壁に垂直に立ち、 そして足の裏から伝わる感触で壁の厚さを図っていた。 舌打ちし、忌々しげに足元の宝物庫の壁を見つめる。 「あのコッパゲから話を引き出したは良いものの……いくら物理的な力に弱いったってね……。 こん... -
虚無と金の卵-15
前ページ次ページ虚無と金の卵 「ワルド!」 混乱と焦燥がルイズを覆う。 ルイズは、二人の切り結んでいた場所へ、馬を真っ直ぐに駆けさせようとする。 だが、右手が――右手袋に変身したウフコックが、それを押しとどめた。 手綱が後ろへと引っ張られ、馬は慌てて急制動を駆ける。 「落ち着け、接触するな!」 「だ、だって! ワルドが! 死んじゃう!」 取り乱したルイズに対して、ウフコックが手袋越しに叫ぶ。 「プロ同士の戦いに君が突っ込んでどうする! 魔法で勝てるのか!? それとも素手で戦うか!? 戦って死ぬことが君の仕事か!」 ウフコックに怒鳴られる――召喚して以来、ルイズにとって初めての体験である。 その驚きで、一瞬ルイズの動きが止まる。 驚愕による心の空白を埋めるように、落ち着いた声でウフコックはルイズに話しかける... -
虚無と金の卵-02
前ページ次ページ虚無と金の卵 鼻腔をくすぐるのは、石畳と木と、人の手で折られた布、そして古びた羊皮紙の匂い。 期待に胸を膨らませる匂いと、同じくらいの強さの、誰かの身を案じる匂い。 ――近代都市ではついぞ嗅いだことのない芳しさ。 そんな匂いに包まれて、ウフコックは珍しく健やかに眠っていた。 あるとき、ウフコックは部屋に入り込む夜の冷気を感じ取り、小動物らしく身震いする。 まぶたと髭が、ふるふると小さく揺れている。 「どうしたんだ、ドクター……。 珍しい、良い匂いだ……それに、寒いな。エアコンを止めたのか……?」 ぼんやりと覚めやらぬ頭で、ウフコックは呟いた。 そして、そのウフコックのぼんやりとした頭を撫でる誰かが居た。 「喋った? ……でも、寝ぼけてるのかしら……」 頭への優しい刺激と耳慣れない声を感じ、... -
虚無と狼の牙-17
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十七話 ジョンストンはレキシントン号の真下に竜騎士部隊を展開させた。先行した巡洋艦四隻撃墜の原因が、下からの狙撃であったことを踏まえての策である。 「例のトリステイン貴族といい、艦長といい、全くの腰抜けどもめ。この私自らが戦い方を教えてくれるわ!」 鼻息を荒くしてジョンストンは威勢よく啖呵を切った。ボーウッドは苦笑いを浮かべながら、ジョンストンの後姿を見つめる。その二人の傍らで、ワルドはどこか冷ややかな笑いを浮かべている。 「事実上更迭された割には、随分と余裕ですな、ワルド子爵?」 平然とした様子のワルドに、ボーウッドは訝しげな様子で話しかけた。 「なに、面白いものがみれそうですからな」 「面白い?」 「……まずは相手の手の内を知る、これは戦いの基本でしょう」 ワルドは目の前のジョ... -
虚無と狂信者-04
前ページ次ページ虚無と狂信者 ベッドの上の男は、震える手で老人にそれを渡した。胸には金の十字架がある。 「このマークを…知るものが居れば…それを…渡して下さい…。」 男は十字架を触りながら、震える声で呟いた。 「我らは…右…手に…短刀と毒…薬を持ち…、左……手に」 トバルカインはトランプを無数に取り出し、アンデルセンは銃剣を逆手に持ち大上段に構えた。 先に動いたのはトバルカインだった。横に駆けながらトランプを放って行く。 アンデルセンはそれの間を抜けながら銃剣を投げつける。双方の得物が双方の頬を掠める、その傷が治らないことに吸血鬼の緊張は高まる。 遠距離での戦いに不利を見たアンデルセンがトバルカインに突撃を敢行するも、トランプの一斉正射に身を交わすのみ。 だがトバルカインとしてはアーカードが追い付く前に決着を付けねばならない為、精神的には不利... -
虚無と狼の牙-11
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十一話 デルフリンガーの愚痴に付き合ったウルフウッドが宿に戻ると、ギーシュはまだ気持ちよさそうに眠っていた。 「ほんまに気楽な奴やの、お前は」 あきれ返るように呟くと、ウルフウッドはベッドに腰を下ろした。 出発は明日の朝。それまで時間はたっぷりとある。 「け、あのクソアホンダラ。ワイの一張羅が泥だらけやないけ」 そうぼやくと、乱暴に身体をベッドに投げ出した。 その日の夜、ウルフウッドたちは宿の一階の酒場にいた。 「あら、ダーリン、ルイズは?」 「知らん。お前らがてっきり呼びに行ってるもんやと思たんやけどな」 ウルフウッドはギーシュと共に二階から降りてくる途中でキュルケに声を掛けられた。キュルケの横ではタバサがあいかわらず本を読んでいる。 「まぁ、別にいいわ。あつーい二人の時間を邪魔しち... -
虚無と金の卵-12
前ページ次ページ虚無と金の卵 屋敷の中庭の池に浮かぶ、一艘の小船の上――六歳の頃の自分だけの領地。 小船遊びなどは、家族の中で自分しかしていなかった。 ルイズは誰にも見咎められることなく、ただゆらゆらと船に揺られている。 ルイズの幼少時代――姉や両親に叱られ、小船の上で隠れていたときのこと。 母の魔法の特訓や叱りの言葉が、途方も無く怖かった。 小姓や召使の哀れみの目が、痛くてたまらなかった。 とても怖くて、怖くて、誰にも見つからない小船に逃げ込んで体を丸くしていた。 この場所に気付いて探し出してくれる人は、いつも優しく、そして頼もしい人だったのだから。 「泣いているのかい、ルイズ」 ルイズは、声の主を見た。 つばの広い立派な羽帽子。精悍ながら優しさに満ちた表情の貴族。 子爵様だ、とすぐにルイズは気付く。 最近、... -
虚無と狼の牙-01
前ページ次ページ虚無と狼の牙 「虚無と狼の牙」1-1 彼は満足していた。守りたかったものは無事守りぬけた。 取り戻したかったもの――救いたかった人物は無事救い出せた。 志半ばで倒れることが無念でなかったかと言えば、それは嘘になる。 しかし、それでも彼は満足していた。自分が命がけで未来を託した人々に。 二度と帰る事は出来ないと思っていた故郷。そこに彼は帰ってこれた。 その幸福と歓喜に包まれて、そして無二の親友の傍で旅立てる自分は ――おかしいかもしれないが、そのとき世界で一番幸せな人間なのだと心の底から思っていた。 一つの世界で狼は眠りについた。その牙を墓碑として。そして、もう一つの世界で狼は再び目覚める。 * ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは呆然と立ち尽くしていた。 彼女の目の前には、爆風が巻き上げた砂埃... -
虚無と最後の希望 Level02
前ページ次ページ虚無と最後の希望 level-2 「困惑」 「すみません……」 ベッドに横になっているルイズ、極度の緊張による過呼吸。 意識喪失まで陥ったが、水魔法により落ち着きを取り戻し今に至る。 「いやいや、わしの所へ来るよりここに来て正解じゃった」 ルイズが寝るベッドの隣のベッドに寝るオスマン。 ロングビルの下着を自力で見ようと試みたところ、ヒールで3、4発顔面を踏みつけられ医療室行きとなった。 「ミス・ヴァリエール、学院長室に呼び出した理由はわかっとるじゃろ?」 その言葉を聞いてルイズは瞼を閉じ数秒、決意したかのように返事をする。 「はい、使い魔のことですよね」 「そう、使い魔のことじゃ」 「それで……、退学、ですか?」 毛布から顔半分だけだし、恐る恐るといった感じに問う。 ... -
虚無と狼の牙-02
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二話 ウルフウッドはなぜか学院の講義に出ていた。目の前で教師の説明する話は全くわからない。けれども、学校というものへ通った事のない彼は、自分が授業を受けているというだけで、どこか歯がゆく嬉しい気持ちになるのだった。 なぜ彼が授業を受けているのか。その説明をするには例のギーシュとの決闘騒動までさかのぼらなくてはならない。 例の決闘のあと良くも悪くも彼は有名人になってしまった。平民が貴族を打ち負かしたことが気に食わない生徒に絡まれるようになった。もっともこの場合大半はウルフウッドに睨まれるだけで、なにやら適当に理由をつけて逃げ出すのだが。 そしてもう一つの困ったことは、なぜか彼が女子生徒にもてはじめたことである。ルイズの同級生であるキュルケに言い寄られたり、例のギーシュが二股をかけていたケティという女の子からラブ... -
虚無と金の卵-03
前ページ次ページ虚無と金の卵 「おはよう、ルイズ」 「あら、おはよう、キュルケ」 春の使い魔召喚から一夜が明けた。 自室を出てすぐの廊下で、ルイズは、キュルケと呼ばれた赤毛の女性と真正面から対峙していた。 戦意とまでは行かないまでも、緊張と対抗心の匂いをウフコックは嗅ぎつける。 いや、この二人だけではない。 羞恥の匂いや自慢げな匂い、まるで発表会やパーティのような空気が朝から漂っている。 それもそのはずで、学園の2年生にとって使い魔を連れての初めての授業であり、 まさにお披露目と言っても過言では無い。 だが、キュルケの目には、ルイズをどうみても使い魔を連れているように写っていない。 「『ゼロ』のルイズ、あなたの使い魔はどうしたの? もうそっぽ向かれちゃったのかしら?」 「貴女みたいな浮気性と一緒にしないでくれる? ... -
虚無と金の卵-18
前ページ虚無と金の卵 サイトが酒場から出た後、ルイズ達も宿の部屋に引き上げていた。 流石に上等な部屋だけあって、調度品も一級品、ベッドも天蓋付きであった。 公爵家の屋敷に住んでいたルイズがそれらに気後れするはずもなく、旅の疲れを癒すのにはうってつけだった。 だが旅の荷を降ろしたところで、キュルケのはしゃいだ姿がルイズの視界に飛び込む――溜息が出る。 「渋いわ! それに愛嬌もあるし! 学院じゃあお目にかかれなかったタイプよね。ねぇタバサ、あなたはどう思う!?」 「……興味はある。噂がどれだけ本当か、知りたい」 「でしょうでしょう? ここで出会ったのが運命よね! 確か、王党派の詰め所に居るって言ってたわよね」 サイトと別れた後も、キュルケはきゃあきゃあと騒ぎつつ、次なるアプローチを考えているらしい。 キュルケはいち早く部屋... - @wiki全体から「虚無と鬼」で調べる