バトルROワイアル@Wiki内検索 / 「2-026」で検索した結果

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  • 2-026
    026 BR黙示録マジ ざざーん。ざざーん。 大きな波が断崖絶壁の岩に当たっては砕け、無数の泡となって消えてゆく。 その様子を上から寝そべりながらぼんやりと眺めていた男が一人。 「ここから飛び降りたら、空をも飛べるかもしらん……」 そんなことを呟いて寝返ると、海の青から今度は空の青が男の視界を埋め尽くした。 「下も青けりゃ上も青、そして俺の顔も見事に真っ青ってか!  …あーちくしょう!なんだってこんなことになっちまったっていうんだよー!」 駄々っ子のように足をバタバタさせながらこの男…♂マジは一人で騒いでいた。 「大体よー、1年もWIZにもセージにもならずにふらふらしてた奴が  いきなりマジシャンギルドに呼ばれるってことにおかしいって思わなかったのかよー!  今まで出向いたことなんて一度もなかった癖になんで今更いっちまったんだよ俺のバカ!」 一頻り騒いだ後に...
  • 詳細情報男性
    ...ジシャン <初出:2-026話> <死亡:2-207話> =特徴= [容姿]長髪(2-026)      顔色が悪い(2-026) [口調] [性格] [備考]JOB50(2-026) =所持品= ピンゾロサイコロ(6面とも1のサイコロ) 3個(2-026)→1つ割れる(2-167) 青箱 1個 スティレット(2-054) =状 態= 死体位置 E-7(2-207) パーティ ♀マジシャン(2-093)→はぐれる(2-161) 左手負傷(スティレットによる自傷)(2-139) =戦 闘= ♂Wizとギャンブル対決(2-167) ミストレスに魔力を奪われ死亡(2-207) 005.♂アーチャー <初出:2-011話> <死亡:2-011話> =遺 品= 青箱2個→♂アサシンが所持(2-050) =状 ...
  • 2-028
    028.騎士道志望 木を削る音が森に響く。 かしっかしっかしっ。 少年はその音を聞きながら少し前、一週間程度前の自分を思い出す。 かしっかしっかしっ。 自分はいずれは街を、世界を護る騎士になりたい。 かしっかしっかしっ。 その為の修練、その為の訓練。 かしっかしっかしっ。 相手を殺す為ではなく、生かす為の訓練。 かしっかし、か……。 不意に木を削るナイフが止まる。 「これも、修練なんですか?マスター」 少年は木々の合間から見える空を仰ぐ。 とても高く澄んでいる空、喉かな景色、と言うべきだろう。 喉かな景色とは裏腹に行われる、似合わない茶番。 少年は考える。 「僕に、果たして護る事はできるのかな」 少年は考える。 「力があれば、できるのだろう...
  • 2-029
    029.うつつかまぼろしか 周囲を木々に囲まれた林の中。 「あなた……私も、ついにここに来ました」 オーラをまとった♀WIZが足元にロザリオを置き、左手の薬指にはめられた指輪にくちづけしてつぶやいた。 所持品は全て没収されたが、はずすことのできない祝福された結婚指輪だけは残っていた。 しかし、この指輪にはもう本来の効果はない。 夫であるプリーストは、前回のBRでGMジョーカーに殺されたから。 夫は戒律破りの殴りプリーストだった。 それでも、不正が嫌いで自分の身よりも他人を案じ、殴りである以外はプリーストとして申し分ない性格だった。 自分のようなAGIWIZを拾ってくれたのも、きっと最初は優しさからだったのかもしれない。 ……そう、その性格。 それが災いしたのだろう。 BR法にも前面を切って反対していたために、ゲームへ送られてしまった。 そ...
  • 2-022
    022.バードマスター 「・・・・・・ふぁるぅ」 相棒の名を呼べど、答えてくれる彼はいない。 殺し合えと言われても、その手段さえ彼女は持たない。 眼下に広がる青い海に向けてもう一度、ぽつりと呟いた。 「ふぁる・・・会いたいよ・・・」 彼女は鷹使いである。鷹と心を通わせ、その言葉さえも理解できるまでにファルコンマスタリーの技術を磨き上げるが、その反面彼女は他の誰をも信用することはできなかった。 ファルコンだけを唯一無二の友とし続けてきた彼女に、心を許す事の出来る人間としての友人は存在しなかったのである。 仲間を見つけるという選択肢など無く、 誰かを殺して生き延びるなど思考の中に入って来る事すらなく、 それでも死にたくなんてなかった。 どうすればいいのか、何がどうなっているのか、さっぱり理解できなかった。 どうすればいいの、あたし? 何か、考えなけ...
  • 2-025
    025.Hello 「怖い怖い怖い怖い怖い怖い」 頭の中を駆け巡る言葉にならない感情。 それを必死に言葉にして紡ぎだしたとき彼女の口からこぼれたのはそれだけだった。 GMジョーカーによる狂宴の幕開けのあと、♀商人は海岸に飛ばされていた。 見渡す限りの広大な海。 思わずここから逃げ出したくなる。逃げることが可能なようにも思えた。 だがそんなことは有り得ない。 商人ギルドにもBR法の施行およびその実施の噂は流れてきていた。 情報というものの価値をある意味では最も重要視する商人ギルドにおいて その情報の持つ意味はまさに「人生の終わり」であった。 現世利益、商売繁盛がモットーの商人達にとってそんなゲームに巻き込まれることは 騎士や暗殺者達とは当然意味合いが違っていた。 ゆえに♀商人の反応もまた商人ギルドの一般的な枠を外れるものでは決してなかった。 ...
  • 2-027
    027.黄昏ベイビー  ―――ばさばさ、ばさ。  フェーンと呼ばれる烈しい熱風が、しゃがみこんだ私の髪を強く吹き流す。  右手でそれを抑えながら、私は自身が潜んでいる岩場の影を、じっと凝視していた。  腰まで伸びた、紺碧の長髪。日に照りかえって新緑のように萌えるそれが、この砂漠では目立つ目標にしかならないことを、私は理解していた。  露出度の高い服装は、この熱気の中では都合がいい。しかし、砂漠の気候は、昼夜では完全に逆転する。  日光の照射する今はまだ天国のようなものだ。真に恐怖すべきは、凍て付く冷気に侵食される、夜。それまでに、この灼熱から抜けねばならない。  狙う時間は、夕刻。黄昏に乗じて、この砂漠を抜け出す。オレンジに展開される世界では、私の姿も少しは黄砂にまぎれるだろう。  それまで、頭を整理する時間は十分にある。  ポータルの閃光を抜けて、し...
  • 2-021
    021.出立  こんな事は許されない、と彼女…カプラ職員のグラリスは思う。  それは、彼女達の上司からの直々の通達だった。即ち、『冒険者達の名簿を王国に引き渡せ』と。  グラリスがこの狂ったゲームの事を知ったのは、それからすぐのことだ。  暫くたって。まず反対したのはテーリングとソリンだった。  彼女達はグラリスの目の届く場所からすぐにいなくなった。そして帰ってこなかった。  他のカプラ職員よりはほんの少しだけ高い位置に居る彼女は、その二人が彼の戦場で死んだことを知った。  確か、死因は刺殺と撲殺だったと思う。綺麗だった顔が醜く歪んで見るも無残な死に方だった。  それから。彼女は不安がる残りの職員達を纏める為に努めて非情になった。  冒険者達への王国の指示には絶対に従いなさいと。それが無数の人を殺す事になろうとも。  Wやディフォルテー達が自分を恨らんだり...
  • 2-020
    020.白馬の騎士 俺の親父はプロンテラ、いや王国全体でも少しは名の売れた鍛冶師だった。 親父の武具を求める連中は絶えなかったし、弟子にしてくれと押しかけてくる若い鍛冶師も 大勢いた。俺もそんな親父を誇りに思っていた。 だが……隣国との間で始まった戦争がすべてを変えた。 当然戦争にあたって大量の武具を必要とした王国の連中は、親父も含め城下の鍛冶師を すべて召集すると言い出した。親父はそれにただ一人反抗したのだ。 「オレの作る武具は、お上の都合でバカバカしい殺し合いするためにあるんじゃねえ」と言って。 親父が反逆罪で捕らえられ、処刑されるまでそう長くはかからなかった。 残された俺たちは国を密かに脱出し、隣国であるシュバルツバルト王国に逃げ込んだ。 親父に仕込まれた鍛治の腕は捨てた。権力者どもには戦いの力に利用されるだけだと 思い知ったからだ。その代わり、手先の技...
  • 026
    026.暗中模索 「くっ………なんだってこんな事に………」 女クルセイダーが闇ポタで飛ばされたのは川の畔、その上流と思われる森の中だった。 まぶたの裏には未だに、GMの非道な行為が鮮明に焼きついている。 民を守るために常に前衛で勇敢に戦ってきた彼女だが、今は困惑と恐怖のせいか、覇気が感じられない。 呆然と座りつくしたまま、彼女はずっと考え続けていた。 ゲームに乗るか、否か。 誰か既に乗ってしまった人間がいるかもしれない。自分を獲物と見定めて背後から忍び寄り、今まさに襲おうとしている輩がいるかもしれない。 考えた。自分の心に、何度も何度も問いかけた。だがいくら自問したところで、答えは一つだった。 乗らない。乗れるわけが無い。 自分は聖騎士だ。人々の命を守るのが使命であり、その使命は同時に、自分にとって誇りだった。 今までずっと貫いてきたものを、...
  • 2-023
    23.Servants 「どうしてこんなことになっちゃったんだろう?」 砂浜をとぼとぼと歩く彼はクリーム色の修道服に身を包むアコライト。 モンスターによって両親を早くになくした彼は教会所属の孤児院で育てられた。 貧しくも敬虔な神父の下、息を吸うように神の教えを学んだ彼は当然のように聖職者への道を歩むことを選ぶ。 それは、他人を助けられる人になりなさいと言う神父の教育の賜物でもあった。 「なんで殺しあわなくちゃならないんだよ」 彼にとって人と人とは助け合うものであって殺しあうものではない。 だから、彼は徴兵には応じず、教会を飛び出して自由に人の手助けを出来る冒険者という道を選んだ。 だというのに、なんていう運命の皮肉なのだろう。それとも神の試練というべきか。 彼は冒険者になってしまったが故にこの殺しの舞台へと招かれてしまった。 「うっ…く...
  • 2-024
    24.逆毛と栗毛 オレはどうやら嫌われ者らしい。 そりゃそうだよな、この外見で聖職者なんて子供でも逃げ出すっつーの。 それでもよ、いくら赤色の逆毛でローグですら逃げ出すような強面だからってよ、 『とりあえず今回の人身御供は君ね』 はねぇだろうが! 大司教の野郎、少しはすまないだの申し訳ないだの、 そういう顔をすりゃ、まだ諦めもついたってもんだ。 よっぽどオレを聖堂教会から追い出したかったみてぇだな、ちきしょう。 確かにオレは戒律破りで、悪人だったら容赦なく殺して生きてきた。 けどよ、 「よりにもよって噂に聞いたBRなんぞに参加させられちまうとはな───」 いかんいかん、つい弱気になって声を外に出しちまった。 自分で出した声に動揺して辺りを見回すなんて、オレもだせぇよな。 さて、現状の再確認をしよう。オレの青箱からは武器...
  • NG2-02
    NG.A certain tale 男は闇に生きてきた 闇に生まれ闇に死ぬ、それが自分の人生だと思っていた 少女は光の中で生きてきた だが光のあまりの眩しさに少女は闇の入り口へと逃げ出した 彼は暗殺者だった 物心がついた時にはすでに人の殺し方を教えられ、十になる前に初めて人を殺した 同じような境遇の者が一人、また一人と消える中、彼は常に生き残ってきた やがて年月は過ぎ、彼は暗殺者としては闇の世界では名を知らぬ者は居ないほどとなった そんな中、彼はこのゲームに参加させられた。秘密裏に国と繋がった組織の者からの推薦を受けて 『大本命』『彼ならこのゲームに生き残るだろう』『ベットが集中してしまう』 連れてこられる前に数人の金持ちが生き残りを予想しながらチップを賭けていたのを覚えている その光景を見たとき、彼の中で何かが芽生えた 言われるまま人を...
  • 詳細情報女性
    現在の状態  詳細情報 男性冒険者 女性冒険者 特別枠参加者 その他の人物 021.♀ノービス 022.♀スパノビ 023.♀剣士 024.♀マジシャン 025.♀アーチャー 026.♀アコライト 027.♀シーフ 028.♀商人 029.♀騎士 030.♀WIZ 031.♀ハンター 032.♀プリースト 033.♀アサシン 034.♀BS 035.♀クルセイダー 036.♀セージ 037.ダンサー 038.♀モンク 039.♀ローグ 040.♀アルケミスト 021.♀ノービス <初出:2-011話> <死亡:2-197話> =特徴= [容姿]髪型 ノビデフォ(2-011) [口調] [性格] [備考]死んだふり使用可(2-050) =遺 品= ポイズンナイフ(2-174)→♂ローグに奪われる(2-197) 包丁(♂ローグの手向け品)(2-197) ...
  • 2-065
    065 Ice Coffin 「う・・・く・・・・・・っ・・・」   男は、悪夢を見ていた。   ―――冷たい、冷たい棺の中。   辺りを見渡そうにも、首が凍りついたかのように動かず。ただ、眼前にのっぺりと広がる天井――らしきもの――のみが、現実を示すように色彩を放って存在している。   それは、真紅。紅を引いた女性の唇にも似た、あでやかで美しい赤。   しかし、それはどこか布のようにも見える。闇に覆われて、よく見えないが。   てらてらと照り返す光沢。白。これは、布?いや、しかし布にしては奇妙だ。それでは、コレは何なのだ。   ・・・今、自分はどこにいるのか。   それが、男にはどうしてもわからなかった。   ただ、仰向けになって、どこか狭い空間に閉じ込められている、ということだけが頭の隅で理解できている。   しかし、ここはどこで?...
  • 2-002
    002.ご利用は計画的に 「あーもー、こんチクショウめ」 その職業らしからぬ豪快さで、どかっと地面に腰を下ろして女アコライトは自分の支給品を眺めていた 節約して飲めば二日分程度の水に控えめに食べれば4食分ほどのパンと干し肉、この島のものらしい地図、その他細々とした雑貨の品数点 そして最後に入っていた支給品、二つの青箱のうち一つは速度増加ポーションらしいビンが2本、もう一つが武器ならよかったのだが 「こんなモノどーしろっつーのよ」 それはとても戦いには使えそうに無かった 元々モンク志望ゆえに武器は無くとも素手での戦いには自信はあった。それでも武器になりそうな物はあった方が良かったのだが だがしかし、これは… 「くぅ~ん」 つぶらな黒い瞳の子犬が膝の上から彼女を見上げていた どうするーア○フルー♪ そんな曲が頭の中を流れる ...
  • another2-02
    ある小川のほとりにて  …時間は少々遡る。  ──たった数時間で、随分と血生臭くなったものね。私は。  グラリスは頭の片隅で、そんな事を思った。  その言葉を証明するかの様に、彼女の纏った前掛け付きの制服は紅く濡れていた。  グラリスは森を抜けて、♀モンクに遭遇するまでに発見していた小川に引き返していた。  ざわざわと木立が揺れている。その癖、森の中は酷く蒸し暑く、血塗れの服を着て歩くには酷く不快だったので。  彼女は、自分の衣服を水で洗ってしまうことに決めた。(腐敗した血から、傷口への感染症の問題もある)  次からは出来る限りこんなには派手に返り血を浴びまい。  とはいえ。  水でびしょ濡れになってしまうのも血塗れの服のままで居るのも不快さでは然程変わらない。  だが、少なくとも血塗れのままで居るのは良くない。もしもWと出会えた時、彼女を怯...
  • 詳細情報特別
    現在の状態  詳細情報 男性冒険者 女性冒険者 特別枠参加者 その他の人物 041.グラサンモンク 042.グラリス 043.プロンテラ案内要員 044.ジルタス 045.悪ケミ 046.忍者 047.ホルグレン 048.工務大臣 049.淫徒プリ 050.ミストレス 寄生虫 ふぁる 041.グラサンモンク <初出:2-018話> =特徴= [容姿]csm 4r0l6010i2 [口調] [性格] [備考]右心臓(2-018)      習得スキル ヒール、気功、白刃取り、指弾、金剛、阿修羅(2-061) =所持品= 緑ポーション 5個(2-018) インソムニアックサングラス(2-018) 種別不明鞭(ジルタスのもの)(2-153) =状 態= 現在位置 F-7(2-198) パーティー 悪ケミ(2-185) 助けを求める人達を守りたい...
  • 2-075
    075 Inferno【夜間】 「阿修羅ッ覇王拳ッ!!!」 最大限の気を込めた拳が♀剣士の左腕にぶち当たる。 モンクの奥義の一つであるこの技は、掠っただけでも相手を完全に破壊するという反則のような技だ。 その原理は発頸の応用であり、拳に溜めた気が敵の体内を駆け巡り内側からずたずたにするというものだ。 この技を使い慣れていた♂モンクは右手の感触に勝利を確信した。 (勝った!) それは常識的な判断。 しかし、常識というものは時としてその中に住む者に牙をむく。 「後ろーーーッ!!」 勝利の確信から♀剣士の様子を確かめていなかった♂モンクの耳を♀騎士の悲鳴が打つ。 その声に押されるように♂モンクは前方へと飛んだ。 轟という熱い風が巻いて肌をなでる。 「バケモンかよッ」 飛んでくるかもしれないファイアボールのことも忘れて前...
  • 2-071
    071 Night stalker  【夜間 第一回定時報告直後】  マダ、カ  マダ、コロサナイノカ  ―――槍が、叫んでいる。  ハヤク  ハヤク、チヲ  ハヤク、ニクヲ  ハヤク、タマシイヲ  ハヤク  「早く・・・早く・・・次の・・・次の獲物・・・次の・・・肉・・・肉・・・・・・」  彼女・・・♀剣士は、泥中のように暗くねっとりとした闇の中を、一人歩んでいた。  右手には巨大な戦槍。儀仗の如く緻密な装飾の施されたその槍は、だが人の作ったものではない、あきらかな『異質』を放っている。  煉獄の悪魔が鍛えたとされし、禁断の魔槍―――煉火槍、ヘルファイア。一説には、スルトと呼ばれる巨人の王が炎の悪魔に作成させ、終焉の黄昏と呼ばれる戦で振るったと云う。  振るえば火弾を撒き散らし、携えた者も、自在に火弾を生成、操作できる...
  • 2-038
    038.生臭坊主 on the Tree  ―――まぁ、なにはともかく。自分が死んでしまうことだけは避けねばならん。  巨木の頂上、森の頂とも呼べる場所。幹に背をもたれ、座禅を組み(『息吹』と呼ばれる、異国に伝わる一種の瞑想法である)、ほけー、と雲を眺めながら、♂モンクはじっと考え込んでいた。  尻の下には、衣服が汚れぬように広辞苑・・・もとい、黙示録。苔むした巨木の枝葉はじめりと湿っており、直に座ると尻が濡れてしまう。だから、座布団代わり。  神をも恐れぬ行為と呼ばれるやもしれんが、異端の神なぞ知ったことではない。俺が信じるのは、この拳に誓った神のみ。それ以外の神なぞ便所紙すらの価値もないわけだ。と、勝手に言い訳するのは、やはり伝説の武器に対する敬意に他ならないのだろうか。いやはや、それはさておき、だね。今考えるべきはこの広辞・・・黙示録のことではなく。これからど...
  • 2-084
    084 暗い夜 [定時放送後・深夜] 暗い。 森の中である。襲撃の的にされぬよう火を焚くわけにもいかず、わだかまる闇の中で ♀クルセは木の幹にもたれ、空を見上げる。 やはり、暗い。 黒々とした木々の天蓋を通して、わずかばかりの星の瞬きが見えた。それは昨日まで 見上げていたものと変わらないはずなのに、急に遠くなってしまったように彼女には思えた。 なぜ、こんなに暗いのだろう。 鬱蒼とした木々の陰のせいというだけではない。この島そのものがはらむ闇の気配とでも 言うべきものが、彼女の視界にも、そして心にも暗くのしかかってくる。 血と殺戮、死と恐怖の空気が充満したこの島。あの道化師の忌わしい放送によれば、 すでに9人の人間が二度と復活すら適わぬ死に見舞われたことになる。 そしてそれは即ち、彼らに死をもたらした者がいるということ。今この瞬間にだって、 森の闇の向こうか...
  • 2-055
    055 戦う理由 「♂アルケミさんは……このゲームに乗る気ですか?」 傷の処置を終えて服を調えた♀クルセが、ふと真顔に戻って切り出す。 「あー……俺がその気だったら、まず無防備な君を殺してると思うがね」 「真面目に答えてください!」 ぴしゃりと言われ、♂アルケミはわしわしと髪をかき乱す。 彼とてこんな場所で死にたくはない。むろん冒険者としては何度も死線をくぐり抜けてきたが、 このゲームはそれとは根本的に異なっている。このゲームでの死者は「蘇生できない」 ――つまり、「本当に」死ぬ。生きたければ、勝ち残るしかないのだ。 「わからねぇな……どうするのがいいのか。むざむざ殺されるのはごめんだが、 奴らの思惑に乗るってのも癪だ」 それは彼のプライドの問題でもあったし、処刑された父への裏切りであるとも思った。 一瞬の沈黙の後、♀クルセが続ける。 「私は、さっきあの人に...
  • 2-089
    089 失った心、取り戻した心 [夜間] ───ずっと答えを探していた 誰かの声が聞こえる。答えを探しさまよう私を呼ぶ誰か。 それが誰であるか分からないまま、私はうたかたの夢から目を覚ます。 目に飛び込んできたのは暗闇、どこまでも広がる黒の世界。 いや、黒だけではなかった。 夜の闇の中でゆらゆらと揺らめく赤銅の光、♂剣士が森の奥、その光を指差しながら私に何かを叫んでいた。 「森が燃えている、だと?」 私は慌てて飛び起き、彼が指差す先にある赤い灯火を凝視する。 遠過ぎてはっきりとは分からないが、それが炎の光であることだけはなんとなく分かった。 肉眼で炎を確認するや、私はコルドボルトの詠唱を開始する。 体に感じられる適度な湿気から山火事が自然発生した可能性は無い。 もし火を焚いているのだとすれば、この状況下であれほど派手にやる...
  • 2-095
    095 喪失【夜間】 ふふ、ははは。僕は今、何処を歩いているんだろう。 随分暗い、でも別に寒くはないな。ただあんまり闇が濃くて、自分の声すら拾い難いけど。 しかしさっきまで月が出ていたはずなのに、あは、突然辺りが視づらくなってしまった。。 それどころか、僕の体だってよく目を凝らさないと見えないのは、一体なんでなんだろう。 ともかく、すぐ傍に死体があった。ここは危ない。でも収穫もあったな、あはは、凄いよこれ。 真っ暗でもこれの事だけは分かる、ちゃんと僕の手に収まっている僕のランプ。 だからとにかく早く♀セージのところに、戻らなきゃ、いけないのに。 彼女は一体何処に消えたんだ?さっきもこの辺をモンスターが、うふふ、うろついていたし。 勿論きちんと殺してやったけどさ。  ◇◇◇ ♂剣士が♀セージに先行して発見したのは、既に炎が衰えた後の殺人現場だった...
  • 2-057
    第57話 馬鹿と秀才  ―――視界は、前後不覚。左右天地、私を包む空間そのものが、まるで漆黒の海。オニキスにも似たその闇の中に、少女の姿がふわりと浮かんでいるのを―――私は、意識のみの形となって、一人見つめている。もしかしたら、この闇自体が私なのかもしれない。意識の海。混濁した思考。黒。  影すら残さぬ闇の渦中。へたり込んだ少女はおいおいと泣き咽びながら、涙を必死に拭うように、顔を服にごしごしとこすり付ける。その腕に、蒼い打撲の跡。見れば、足首には白い湿布が巻かれており、痛々しく膨れ上がっていた。脚をくじいているのだ、あの少女は。私はおぼろげに理解する。そして、少女の顔が、一般的に言う「醜い」顔立ちで、体つきもまるでオークの如く肥えていて、身につけている衣服は実に粗末で・・・。まるで襤褸切れをまとう愚かな豚のようにしか見えず、実際彼女は常日頃、雌豚だとか、豚足だとかいう風に周囲...
  • 2-042
    42.♀モンクの誤算 何度目のヒールになるのだろうか、折れた肋骨は治る気配すら見せてはくれない。 それでも、痛みが少しは和らいでくれたことに感謝するべきなのだろう。 漁師小屋の中で♀モンクはひとり思う。 なぜ、自分がこの馬鹿げた戦いに参加させられたのか。 『依頼がきておる、詳細は現地で聞くが良い』 カピトリーナの長老は確かに私にそう言った。 つまりこの殺し合いは国家だけでなくカピトリーナ修道院も公認だったというわけだ。 そう考えると全てのつじつまが合う。 国家によって布かれた動員令、それに反対運動を起こしていたモンクたちの謎の失踪。 GMジョーカーは今回が4回目と言っていた。 行方不明になったモンクの数は今まで男女合わせて6人、偶然のはずがない。 なぜなら私もまた動員令に対して反対運動を起こしていたモンクのひとりなのだから。 ...
  • 2-016
    016.暗殺者の企み ……絶叫か、不用意なモンだな。 クローキングで森を駆けていた♂アサシンの耳に、それは届いた。 まだ結構な距離があるようだがそれが聞こえたのは、暗殺者ゆえに研ぎ澄まされた五感のおかげだ。 索敵を続けていた彼はそれに気付くと、クローク状態のままその絶叫のもとに急ぐ。 恐らくは協力してくれるであろう♀アサシンを見つける為の索敵行動ではあったが、絶叫などの響くような状況であれば誰かしらがそこには居るだろう。 戦闘が起こったと考えて。 あの絶叫は、恐らくは殺した側のもの。 あんな絶叫をあげるようでは殺しに慣れているはずもない。 それでも殺傷するに至れたのなら、何かしらの武器は持っているはずだ。 そして、今の俺には武器が必要だ。 クロークは問題無く持続出来ている、そろそろ現場が視界に入るはず……。 「……ぁ…………ぁ...
  • 2-054
    054 現実と幻想 さて……漠然と仲間を探すと考えたところで、都合よく仲間になる人が見つかるというわけも無く。 ♂マジは一人海岸から離れ森を抜けを人の気配を探しつつ徘徊していた。 「割と歩いたとは思うのだが一向に人が見つかる気配が無い………  おかしいっ……俺一人が孤立して飛ばされたというのだろうか………?」 支給された袋から地図を取り出し自分のたどってきた道と現在位置を確認する。 「さっきまでいた海岸の形状とコンパスの指した方向から察するに今居る場所は西側………  俺は海岸とは逆の森を進んで……途中平原に出そうになって再び森に戻ったから……  大体この辺りか………?くそっ……この地図大まか過ぎるだろっ……!」 渡された白図では得られる情報が余りにも少なく、とても現在位置が特定できるようなものではない。 頼りになるのはコンパスと己の勘………そしてまったく当てになら...
  • 2-044
    044 王子様はじめました 「ほら、見てください王子様! このナイフ!  きっと神様があたしたちの出会いを祝福してくださってるんだわ!」 青箱から手に入れた一振りのナイフを手に、幸せそうにニコニコと笑っている♀アーチャー。 ♂ハンターにとって最大の不幸といえるかもしれない彼女との出会い。 それを果たしたばかりの彼のテンションは地を這っていた。 (何かと思えばプリンセスナイフ…あの子がはしゃぐわけだ。  しかしねぇ、神様なんてものがいるんなら、こんな戦いに参加させられることなんてなかったと思うよ…) プリーストに聞かれたら小一時間説教されそうなことを考えながら、♂ハンターは♀アーチャーに苦笑いを返した。 「幸せそうでいいねぇ君は」 「はい♪ 運命の王子様に出会えたんですもん。それにあたし、幸福の国のお姫様ですから」 (……嫌味も通じない…か) 俺の...
  • 2-078
    078 ジョーカーの嘘 「特別製の首輪?」 参加者を監視・盗聴していたGM橘は首を捻った。 おかしい、そんな首輪は用意した覚えはない もしかしてジョーカーが用意しておいたのだろうか? ちょっと聞いてみる必要がありそうだ 「ジョーカーさん、♂ローグの首輪って特別製なんですか?」 「ううん、他の参加者と同じ普通の首輪だよ」 即答された 「え、でも♂ローグは禁止地域に入っても爆発しない首輪だって言ってましたけど」 「ああ、それは嘘だよ。みんなと一緒、禁止地域に入れば爆発するよ」 また即答された。 でも、何でそんな嘘を? 「マーダー役が首輪の心配をせずに思い切って殺せるように爆発しないって言ってあげたんです。  でも、そんな言葉を鵜呑みにして禁止地域に入るような馬鹿は嫌いなんですよ。  必要なのは私の言葉でも疑い用心深く、もしもの時を考え行動...
  • 2-035
    035.日常との別れ とりあえず、傷の手当てをしなくては。 ♀BSは、魔術師に撃たれた左腕の傷口をそっと窺った。 スパノビのヒールのおかげでなんとか止血はできたが、傷口は おせじにも癒えたとはいえず、おまけに痛みも戻ってきた。 このままにしておくことはできない。 不幸中の幸いか、凍傷はまぬがれたらしい。 後ろから左腕を弾いた魔力の衝撃はかなりの強さだったので、 おそらく高レベルのコールドボルトだったはずだ。 運が悪ければ凍って砕けてしまうか、一生動かなくなるかするだろうに この程度で済んだのは奇跡としか言い様がなかった。 「あの♀マジ……絶対許さん……でもレベル低かったみたいでよかった」 「ぼず、おで、おで……」 ♂スパノビは、♀BSを癒そうとしきりにヒールを繰り返す。 「もういいって、血は止まったし、助かったよ」 もう何度目か...
  • 2-066
    066.壊された情報 [夕刻] 殺されたくない。死にたくない。逃げたい。生き延びたい。 常人ならざる速度で島を疾走する彼の頭の中に渦巻いていた言葉を要約するならば、その四語に尽きた。 実際には、神や悪魔への罵倒にGMジョーカーへの悪口雑言、女王への不満に襤褸切れにされた自尊心を癒すための慰めも混じってはいたが、結局のところ、この男の思考は自己の保身で埋め尽くされていた。 あの♀アコライトと協力するとか、同じように脱出を図る人々を探して仲間にするとか、そういった考えが小指の爪ほどにも浮かばぬくらい、男は恐慌に陥っていた。 (わ、わたしはっ、だ、大臣なんだぞ!? な、長年、あの王家に仕えてきたんだぞ!? こ、ここ、この島だって私が見つけたんじゃないか! そっ、それなのに、こ、この仕打ちは酷すぎるっ!!) 林を抜け、平野を抜け、小高い丘すら走り抜け――万年机仕事ばかりの中年が...
  • 2-039
    039.伝説のクホり師 断崖絶壁のすぐそばに灯台がある。 そしてその上で一人の男がタバコを銜えたそがれていた。 「クホホ・・・・・・ついに俺もこんなところに駆り出されちまったか」 妻の顔がもう一度みたい。 そして昔、戦闘BSを目指すという勘当した娘にももう一度会いたい。 もう一度会うことができたらあの時の事を詫びたい。 「あいつ元気してるかなぁ・・・・・・」 幾多の冒険者達の武防具をクホっても罵倒や怨嗟の声を浴びても 悠然としていた鍛冶屋の姿は実はナイーブな一面もあるのだ。 最もこんな状況下だからなのかもしれないが・・・・・・。 「あいつワンパクだったからな・・・・・・」 子供の頃から姉御肌で近所のガキ大将をやったりしていた。 そのくせして弱い者虐めは絶対にしなかった。 力はあったし、不器用さから言っても俺の後を継ぐよ...
  • 2-018
    018.修羅の男 「新たな指令よ」 聞きなれた声。だが、どこか不安気にも聞こえた。 彼女が言うには、なんでも本来正式な職業ギルドにくるはずの通達がなぜかこの非公認のアサシンギルドにもきたらしい。 通達の内容は、簡潔にすると「ギルドの代表者同士で殺し合いをして来い」というもの。 そしてその代表者にオレが選ばれたとのこと。 説明を終えて何か言いたそうな相方を制して承諾した。 もとより指令を断ったことは今までもなかったし、 それに参加することで「あの男」の情報も得られるかもしれないと思ったからだ。 「そう、わかったわ。じゃあもう止めないけど、無事帰ってきてね。」 「大丈夫だ」 こうしてオレはこの海岸へ飛ばされてきた。 周囲に気配が感じられないことを確認し、 まずは支給された2つの青い箱を開けてみることにした。 まず1つ目を開けると、ビンが割...
  • 2-073
    073.流離う者 【夜~深夜】 大臣を追いかけていたはずの♀アコ。彼女は今 「……どこよここ」 何故か満月を背に断崖絶壁の上に立っていた! 「おっかしいなぁ……さっきまで森の中に居たんだけど」 大臣を追って東に向かって進んでいた。それは覚えている 途中で標的を見失い、逃げたらしい方角『東』に進んでいたのだが 「確か『西から昇ったお日様が東に沈む~♪』だからあっちよね」 そんなことを言いながら太陽の沈む方向に向かっていたのである 当然のことながら追いつけるはずもないというか全くの真逆の方向なわけで、そのうち日もとっぷりと暮れてしまった 「太陽って北から昇って南だったっけ……あんたわかる?」 ペットフードをお腹一杯食べて腕の中で丸くなって眠る子犬に問いかけるも、答えてくれるはずも無し 仕方ないのでどこか小屋を探して...
  • 2-079
    079 誕生、悪ケミハウス [放送前] 辿り着いた海岸は東、だから水平線に太陽は沈まない。 薄暗い海は、深い闇、押しては返す波の音だけが、ざざー、ざざーと海辺に響く。 かろうじて視認できた海岸線の形状と、配布された地図から、 区切られたエリアにおけるさらに詳細な位置を特定すると、 海岸から少し離れたところで火を起こし、お湯を沸かしている悪ケミの元へ歩み寄った。 悪ケミは沸かしたお湯に、岩場からここまでの道中で偶然発見し採取した数枚の黄ハーブを浸し、 始まりの場で渡された水筒に、そのお湯を戻す作業をしていた。 お湯を沸かすのに使った鍋、これもまたどこかから見つけてきたのだろう。 なるほど、戦闘面はともかく、サバイバルな方面での才能は優れているらしい。 「うふふー、効果は薄いけどお手製の黄ハーブティーができたわよー」 私がすぐ側まで近づいてきてい...
  • 2-085
    085 暗殺者への試練【定時放送後~夜】 ――お前はもっと冷徹になり切れ。     そうすれば、お前は強くなる 月、か。俺達暗殺者の歩く世界には不要の産物なんだがな。頭上に広がる果てなき闇より己を照らす真円を見上げ、♂アサシンは自嘲した。 視線を落とすと、木の下で横になっている♀ノービスの姿。いろいろな事があって流石に疲れたのだろう、すうすうと暢気な寝息が聴こえてくる。支給された鞄を枕に、まるで緊張感のない寝顔。時々むにゃむにゃと何か呟くが、よく聴き取れない。 ・・・やれやれだ。 ♂アサシンは、思考の迷宮を彷徨っていた。 無防備だな。本当に。このゲームじゃあ寝込みを襲われたら、その時点でズィ・エンドなんだぜ。 いや何を言っている、俺がいるからに決まってるだろう。俺が傍にいるから、コイツはこんな場所でも安心して眠れてるんだ。 そうじゃねぇ、少しゆっくり...
  • 2-076
    076.特別扱い  日は沈み、闇が支配する殺人の舞台に、できる事ならば二度と聴きたくもなかった、GMジョーカーと名乗っていた男の声が響き渡り、犠牲者と、禁止区域なるものを読み上げた。  ♂ハンター達が篭城していた浜辺の小屋にもその声は届き、中にいた彼等も慌てて各々、地図を確認する。ジルタスが♂アコの地図を覗き込もうとした際、頬と頬が触れ合って♂アコが顔を赤らめるというお約束のシーンもあったのだが、それは今は置いておいて。  地図が示す♂ハンター達4人の現在位置は、エリアI-5。その位置だけ暗く沈んだ赤い光が灯り、つまりはもう半刻も過ぎればこの小屋のある浜辺一帯は禁止エリアに認定されるという事実を示していた。 「・・・やべ。移動が要る」  取り出した自分の地図を睨みながら、♂ハンターは唸った。 「移動・・・・・・でも、確か、さっき・・・」  その表情を読み取ると、♂アコ...
  • 2-000
    プロローグ 神聖歴1026年―― ルーンミッドガッツ国王トリスタンⅢ世急死。 英明な君主として知られるトリスタンⅢ世の逝去は世界に大きな衝撃をもたらした。 トリスタンⅢ世はいまだ世継ぎに恵まれておらず、一国の王としてはまだ若かったために後継者も定めていなかったのである。皇后イゾルデ以外に側室も持っていなかったことが裏目に出たと言えよう。 当面はイゾルデが摂政として国王を代理し、大臣や騎士団がそれを補佐することになった。 ところがすぐに問題が表面化する。重要な意志決定にもたつくのだ。 大臣同士の意見が食い違った場合、それまではトリスタンⅢ世が即断を下していた。しかしお飾りである皇后イゾルデにそれだけの決断力はなく、議論によって最良の結論を導こうにも政治に絶対の解などない。意見の対立が個人間の感情的対立へと広がるに至って、国政は悪化の一途をたどった。 国...
  • 2-068
    068. 定時放送①  夕闇が包む孤島、その全体に轟き渡るひゃははははは、とけたたましい笑い声。それは一頻り続いた後、慇懃そうな男の口調に変わる。 「・・・はい、どうも。まさかお忘れだなんて酷い事は申されませんよね、ジョーカーです。夜分お騒がせして申し訳ありませんが、これも定められた義務、そしてルールなので、御容赦願います。定時報告の時間となりましたので、これより現時点での死亡者の名簿を読み上げたいと思いまーす。よろしいですかー、読みますよー」  一拍置いて、 「まず・・・♂ノービスさん。  次、♂アーチャーさん。  ♀シーフさん。  プロンテラ案内要員さん。  ♀モンクさん。  ♀ローグさん。  ♂商人さん。  ♀アサさん。  ♀プリさん。  ・・・以上、9名で・・・えー、合ってますね。残り、41名に御座います。いや、今回の参加者の面々...
  • 2-092
    092 別離 さて…どうしたものか。 彼の思考は晴れていた。 突然降って来た女―――♀マジとの会話も、ある意味での休息となった。 行動を起こすには十分な状態である。 問題は未だ共にいる彼女だ。 確かに、自分をのっけから否定しないところには少なからず好印象を抱いた。 しかし、どうも調子が狂う。 ここに来て最初に聖騎士を襲ったときは、確かに先を予測し、的確な攻撃を繰り出すことが出来たというのに、この少女のときはそれが出来なかった。 疲れもあった、意外性もあった。だがそれだけでは、この自分の不調の裏づけにはならない。 この少女特有の何かがあるということか。 それとも自分自身が腑抜けてしまっただけなのか。 いつでも彼は自信に満ちていた。 それこそ魔術、学力などは当然のこと。 格闘でさえも、相手の動きを分析し、予測することができれば負ける気は無かった...
  • 2-011
    011.森中模索  さて。困ったものであるなぁ。  森の中で一人で座り込み、暗殺者と見間違うほどぼさぼさの長い髪を掻きながら♂モンクはぼけ、っと考えていた。  前々から、この狂気の沙汰の噂程度は聞いていたけれど、実際に巻き込まれれば案外落ち着いたものである。  何故なら彼は、世間の状況から取り残された様に、タートルアイランドで半分野生化しかけていたから。  …いや、訂正しよう。そんな事しか思い浮かばないのだ。  これほど頭の回転が鈍っているのは、矢張り動揺している証拠だろう。  この様な事は、例え魔物共の首魁を目の前にしてもそうそうあるまい。 「一体俺はどうやって生き残ろうかしら」  現状確認に呟いてみて、こういう状況に叩き込まれたのだなぁ、と思う。  ともあれ、彼は勿論この島の藻屑として消え去る様な意思は無かったし、とりあえずのところは、口にした言葉が...
  • 2-033
    033.脱出計画 どうしよう。50人で殺しあって最後の一人になったものだけが生き残れる、だなんて。 自分にはそれはきっと無理だ、能力の面でも、気持ちの面でも。 「そうなると・・・ここからこっそり脱出するしかないのかな・・・。」 管理者がやすやすそれを許してくれるとも思えないが殺し合いの頂点に立つより確実だと思えた。 「まず海岸線を歩いてみるかな・・・。周りに他の陸地でもあれば・・・。」 しかし、それを見つけたところで脱出できるというわけでもないが。なんにせよ何か手がかりをつかまなければならない、脱出の。 こんなところで死ぬわけには行かないのだ。私にはまだやり遂げてない夢があるのだから。 (あ、そういえば支給品確認してなかったわね・・・。) 青い箱にいれられているアイテムを確認する。 (おお、愛用してた装備がまさか2つも出てくるなんて運がいいじゃない私も。) 箱...
  • 2-051
    51 TwinTail 「むぅ」 せせらぎを見据えてその男、軽装の剣士の様に見える彼―――♂セージ―――は唸った。 その隣にはツインテールの金髪を揺らす♀商人の姿も見える。 結局、彼女は恐る恐るではあるものの一人きりでいることよりは二人でいることを選んだのだった。 ただし、♂セージが常に先頭を歩くという条件付で。 そういう取り決めの中で♂セージは海岸線から川を見つけ出しそれを遡上するルートを取った。 彼自身、まずは水のある場所の確認をしておきたかったからだ。 そして、彼がそう考えるように水場を確認しにきた者がいるかどうかを調べておきたかったからでもある。 その結果、彼はある意味予想通りのもの、他方では全く思いがけないものを見つけていた。 「…誰?…グラリスさん?カプラサービスまで犠牲になっているの?」 隣の商人の少女が隣の♂セージにだけ...
  • 2-082
    082 窮地 「果たして間に合うかどうかね・・・・・・」 私達は夜を駆ける。 タイムリミットは多く見積もって25分ぐらいしかない。 しかし、このままF-6側に向かうのが正解なのであろうか・・・・・・? 引き返した方が近いのではないだろうか・・・・・・? ふと、嫌な予感にかられる。 「確か移動時にあなた地図見てたわよね? このエリアに入ってから何分ぐらい経ったか分かる!?」 急いで♀BSに問いかける。 「えっと、大体だけど50分前にはこのエリアに居たはずだよ!」 失礼な事に野生のカンなのであろうか彼女の時間感覚は信頼できる。 誤差はそんなにないはずだ。 急いで頭の中で逆算をする。 50分前にこのF-5エリアに入ったと仮定する。 ここの1エリアは普通の歩きなら1時間30分ぐらいかかると今までの経験で分かっていた。 とするとここは少なくと...
  • 2-077
    077 僅かな時間に思う事──放送前  夜。夜である。  空を見上げれば、真っ黒いベルベットの天蓋。砕いた宝石を撒いたみたいな星。  それから。まん丸に磨いた白い玉石(ムーンストーン)。綺麗だな、なんて♀Wizは考えて、くすっと笑った。  そうだ。この世界は、惚れ惚れする位に美しい。たとえ、こんな場所であったとしても。  火は焚いていない。それがここがどこかを教えているのが残念だったけれど。  ──夜風がそよいでいる。彼女の髪が僅かに蒼く染まり、黒い木々と共に風と戯れている。  ♂プリーストを始めとした彼等は、一夜の宿を森の中の一角に定めていた。  夜を六度に分け、交代で見張りに立つという規定だ。  一番最初に見張りに立つことになった♀Wizは、じっと空を見上げ、そんな取り留めの無い事を考えていた。  それから。結局、私の夢の事は話せませんでしたね…と少々...
  • 2-045
    045 現実を見据えるということ 男は静かに森の中を歩いている。 時たまぺきりという小枝をふみしめる音がする。 空に向かってたくましく成長している若芽を無慈悲に踏み潰す。 足元にある命を気にしていてはおちおち歩くことすら出来ない。 今の彼にとって開けた視界の前にある命はどれほどのものなのだろうか。 しゃらんしゃらんと綺麗な音を立てながら一人の少女が歩いている。 「…う~、こわいようこわいよう」 おっかなびっくりといった感じで歩いている。 そこは割りと見通しのいい平野で草もくるぶし程度までしか生えてはいない。 遠くから誰かが近づいてくればすぐに分かるほど見通しのいい平野だった。 「でも、ここなら誰かきてもすぐわかるよね、うん」 少女は自分で自分を納得させながら歩いていく。 少女のつけた鈴のしゃらんしゃらんという音にまじってかすかに小川のせせ...
  • 2-093
    093 遭遇【定時放送直前】 「この辺りは……平原のどの辺りだろうか………」 右手に見える丘、振り返るとうっすらと見える木々そして正面に広がる草原…。 人を探して森から平原へ黙々と歩いてきた♂マジであったが、 歩き疲れたのか、背の低い草の生える草原にごろりと横になり日の沈み紅く染まる空を眺めていた。 「人に出会うことがこれほど難しいとは……最初に集められた人数を見たときは結構な人の数が居たと思うのだが……」 足が棒になるほど島を歩いたが、結局人に出会うことはできないまま…♂マジは一人孤独であった。 一陣の風が彼の頬を撫で、そして草の葉を揺らし彼の周りを通り過ぎていく。 その様子はまるでここが殺し合いのゲームの会場なんてことを忘れさせるくらい、平和なもので。 思わず現実から目を背けたくなるような日常が、♂マジの前にはあったのである。 だが。 ♂マジはロー...
  • 2-019
    019.利用するものされるもの さて、なぜ俺様がここにいるのか? 突然拉致されて、ここでいきなり殺しあえと言われた。 ただ気がついたらこの会場にいただけだ。 状況はなんとなくわかっている。俺様マジ危ないっていうことだけは。 『愉しい悦しい殺し合いゲームの始まりです!』 そんな趣味ないんだけどな…。 俺様はただちょっと稼いでちょっと贅沢してちょっときれいな嫁さんもらって ちょっときれいな家を買ってちょっと可愛い子供をもうけて… ただの並みの人生送りたいだけの、平凡で善良なただのBSなんだけどなあ。 そして今、現実離れした、『現実』が目の前にある。 「お願い…助けてぇ…許してぇ…ごめんなさい…」 ♀ケミが必死に彼に助けを乞うていた。 特筆すべきは彼女のプロポーションで、ピッチリとしたアルケミストの服装が、 彼女の...
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