- 前提として二人は夫婦。仲人はお館さまと三条夫人(信玄正室)
- 幸村と政宗は純粋にライバル関係。政宗は「幸村を正室に~」とかはちっとも考えてない。
こんな感じで。
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苦しさと悦楽がない交ぜになったような喘ぎ声が、閨から漏れる。
「あ……や、め………」
「まだだよ。そんな言葉じゃ、俺は許さないよ」
主と従者の立場が反転したような声。
従者が主を組み敷き、抱いている最中だった。
「言ったよね? 飛び出したらいけないって。――ねぇ旦那、俺がどれだけ心配したか分かる?」
過日の戦で、幸村は先陣を任された。ある程度のところでわざと引き、敵をおびき寄せ、
そこを武田軍で叩く、という作戦だった。
しかし、逸った幸村は引くことを忘れた。
敵に囲まれ、あわやというところを佐助に助けられたのだった。
「相手は、伊達政宗だったんだよ。……旦那が、首を取りたいって思うの、分かるけど。
……旦那の首が繋がってなかったら、意味ないんだよ?」
いつもの調子にわずかに毒を含ませ、佐助は涙目で見つめてくる主に微笑みかけた。
「そんな顔したってダメ。許さないからね」
容赦なく縛った腕を、強引に頭上にやる。痛みに顔をしかめるのは申し訳ないと
ほんの少しだけ思う。けれど、この意外と細い首に迫った六本の爪とそれに怯まず
前に突き進もうとする姿を思い出すと、怒りがこみ上げてくる。
苦しさと悦楽がない交ぜになったような喘ぎ声が、閨から漏れる。
「あ……や、め………」
「まだだよ。そんな言葉じゃ、俺は許さないよ」
主と従者の立場が反転したような声。
従者が主を組み敷き、抱いている最中だった。
「言ったよね? 飛び出したらいけないって。――ねぇ旦那、俺がどれだけ心配したか分かる?」
過日の戦で、幸村は先陣を任された。ある程度のところでわざと引き、敵をおびき寄せ、
そこを武田軍で叩く、という作戦だった。
しかし、逸った幸村は引くことを忘れた。
敵に囲まれ、あわやというところを佐助に助けられたのだった。
「相手は、伊達政宗だったんだよ。……旦那が、首を取りたいって思うの、分かるけど。
……旦那の首が繋がってなかったら、意味ないんだよ?」
いつもの調子にわずかに毒を含ませ、佐助は涙目で見つめてくる主に微笑みかけた。
「そんな顔したってダメ。許さないからね」
容赦なく縛った腕を、強引に頭上にやる。痛みに顔をしかめるのは申し訳ないと
ほんの少しだけ思う。けれど、この意外と細い首に迫った六本の爪とそれに怯まず
前に突き進もうとする姿を思い出すと、怒りがこみ上げてくる。
忍びと主という間を、花も嵐も炎も踏み越えて結ばれた二人である。
祝言は嬉しすぎて幸せすぎて、忍びを家臣として扱ってくれる主を持てただけでも幸せなのに、
その主の伴侶になれるなんて、もう俺様こんなに幸せでいいのばち当たらないの?
と思ったものだった。
しかし、いざ彼女を「夫」として支えてみると、苦労の連続だった。
元々、勇猛といえば聞こえはいいが向こう見ずなところがある幸村である。
主と仰いでいたのだから、どうすればいいのかくらい分かっている。が、気持ちはそうはいかない。
女と侮られる度に、先陣を切って突き進むたびに、肝を冷やす場面を見るたびに、
心の臓が止まるような思いをする。
以前なら、ここまでの痛みはなかった。
夫になってから、気づかされた。
彼女が一番嬉々とするのは、奥州の竜。彼を相手にするときだけ、幸村は暴走する。
恋のように、相手を思う姿を見る。
赤備えの具足を纏って「佐助、政宗殿とまみえるぞ」と笑う度に、「今日も、あの人はすばらしい」と武を褒める度に、自分は「草」と呼ばれる存在だと思い知らされる。
色も、慕情も超えた、純粋に魂をぶつける相手。
それは、けして自分ではないのだ。
祝言は嬉しすぎて幸せすぎて、忍びを家臣として扱ってくれる主を持てただけでも幸せなのに、
その主の伴侶になれるなんて、もう俺様こんなに幸せでいいのばち当たらないの?
と思ったものだった。
しかし、いざ彼女を「夫」として支えてみると、苦労の連続だった。
元々、勇猛といえば聞こえはいいが向こう見ずなところがある幸村である。
主と仰いでいたのだから、どうすればいいのかくらい分かっている。が、気持ちはそうはいかない。
女と侮られる度に、先陣を切って突き進むたびに、肝を冷やす場面を見るたびに、
心の臓が止まるような思いをする。
以前なら、ここまでの痛みはなかった。
夫になってから、気づかされた。
彼女が一番嬉々とするのは、奥州の竜。彼を相手にするときだけ、幸村は暴走する。
恋のように、相手を思う姿を見る。
赤備えの具足を纏って「佐助、政宗殿とまみえるぞ」と笑う度に、「今日も、あの人はすばらしい」と武を褒める度に、自分は「草」と呼ばれる存在だと思い知らされる。
色も、慕情も超えた、純粋に魂をぶつける相手。
それは、けして自分ではないのだ。