戦国BASARA/エロパロ保管庫

花の名はもう呼べない

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「若様こんにちは」
「うむ」
「今日も甘味処ですか?」
「いや、別に毎日行っているわけでは…」
「幸村さまー!お花あげる!」
「む?かたじけない」
小さな子供から大まじめな顔で花を受け取り幸村は歩き続けた。
上田の城を父から継いで幾年が経ったか、街の者は皆若い幸村に好意的だった。
二年前、徳川との大きな戦に敗れた幸村は、民達の心遣いにひどく慰められたものだった。
道行く人にからかわれるくらいに幸村は甘いものを好み、かつては部下の忍びに命じてあらゆる店の甘味を買いに行かせていたものだが、その部下はもういない。
上田の民は皆幸村とその部下との深い絆を見知っていたから、幸村が他の部下に買わせるのではなく自分で甘味を買いに出かけるのを暖かいまなざしで見守っていた。
「いらっしゃいませ!」
近ごろの幸村の気に入りは、一年ほど前に出来た団子屋だった。
すぐに美味いと評判になり連日繁盛している。
また店員も細かなところに気がつきよく働く者たちばかりだ。
暖簾をくぐり、何かを探すように中を見回せば、つん、と羽織りの袖が引かれた。
「いらっしゃいませ、幸村さま」
おっとりと微笑む女は、この店の主人だった。
身体が弱いのだというこの女は杖なしでは歩くのにも難儀するという事であまり店にも姿を見せないのだが、幸村が店に来れば必ず不自由な身をおして現れる。
陽に当たらぬせいか白い肌にほっそりとした身体つきの女がにこりと笑えば、幸村もまた静かに微笑んだ。
特別美しいわけではないが人好きのする可愛げのある顔つきをしていて、柔らかく穏やかに話す。
まだ十代の小娘のようにも見えれば悟りきった尼のようにも見えるこの女に言い寄るものもいたが、すべてやんわりとした拒絶とも気付かせぬ物言いで断っている。
そのせいか、幸村の隠し女ではないかと噂する者もいた。


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