E115SS:土場藩国会議風景

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土場藩国会議風景

 土場藩国会議室では国の行き先を決める会議が執り行われていた。

 藩国の中心都市「ノレーフレソテ」にある藩王邸に備え付けられている施設である。
 数人が入ればいっぱいになる部屋の中には、国の中枢を占めるメンバーが集まり、中央のモニターには聯合国の越前藩国からきた情報が表示されている。

 中央の席に座るのは缶。全能力-5であり、もはや、文化的な生活をしていること自体が土場七不思議の ひとるに数えられる、土場の王である。
 どうやら、土場神社に出張中なのを無理やり戻されたようだ。
 その隣には、難民地区の治安維持から帰還した八神少年が座る。
 立場は「土場藩国、藩王代行」であるが、言ってみれば無限にバカである藩王の取り押さえ役である。
 なお、現在摂政のいない、土場藩国において藩王に次ぐ権利を持つのが八神である。詠唱評価は30。
 逆らったら消し炭にされると評判の黒王子であった。



「では、会議を始める。司会進行は元JAMです。」
 犬の姿でKBNが告げる。本来の名前より元JAM、という響きが気に入っているらしい。
「さて、ほぼ出席しているところすまないが。シュワは欠席だ。」
 卓の中でひとつだけ空いた席を見る。
「理由は「すいません水の巫女を追いかけるので欠席します」と黄色いハンカチを買いに行った」
「シュワならいつものこと!」
 そろそろファンブルの工場全部黄色い布だらけになるんじゃないのか、とひそかな笑いが起こった。
 彼の本気は全員知っているところなのでほほえましいエピソードとなる。

「そっすね、んじゃとりあえず100億ゲットおめ、で、難民対策どうする?」
「食糧は、配るとしてそれ以外ですね」
 むー、と缶が難しい顔をする。
「普通に交番建てればいんじゃない?」
 最もまともな意見を言うのがFAREである。JAMと同じく暗黒吏族なのだが、最近いい人らしい。最もらしい意見で、会議の内容としてはこれで終わりに見えた。
「でもさー、なんかネタが少なくね?」
 缶である。
「こうさ、衣食も足りたら必要なのは笑いじゃね?」
 娯楽も大事!と急にまともなことをいいだす。
「ほう」
 犬の姿で前足を出しつつKBNが缶を見る。
「というわけで、俺の新作ギャグをみてくれ!!」
 ぽん、という音をたてて机の上に上る。缶なので見た目はどうということはない。
「いきます!」
 缶は、いつももっている、おやつぶくろからそっとみかんを取り出し頭上に持ち上げようとした。
ぐぐぐぐぐ、と音がしそうである。筋力も-5なので若干苦心しているようだった。



「あ、アルミ缶の上にあるみか…」

 言い終わる前にそのみかんをひょい、と八神が持ち上げる。
「あ、かえして、缶のおやつかえして!」
 じたばたと缶が暴れる。八神は舌打ちすると、こういった。
「じゃーんけーん」
 思わず缶も構える。
「ほい!」
 空き缶がだす手は「ぐー」、対する少年の手は「ちょき」ただし目標は空き缶の顔。
「ぎゃああああ、めがー、めがー」
 見事に目にヒット、評価19VS-5の戦いなので差分など関係なく自動成功。
 八神はため息をつきつつみかんを机の上に置いた。机の上では目潰しをくらわされた缶がじだじだと転がっている。八神が置いたみかんにひっかかって、床に落ちることだけは免れているようだ。
「…そんなんだから、近所のこどもに【ばかなおにいちゃん】の愛称で親しまれたりするんですよ」
「ヤメテ、その微妙に現実的な嘘はヤメテ!」
 激しく拒否する缶。さすがに今の性別は「女」なので昔のことだが何か引っかかるらしい。
「すいません、正しくは【凄くバカなおにいちゃん】です。」
「なお、わるいわ!!!」
「真実です」
「ひどいよう、缶虐待だよう」
 べそべそと泣きだすが、もはや「ばか呼ばわり」の涙なのか目潰しの涙なのかわからない。
「後でアメをあげるから、おとなしくしてください」
「うぃ」
 即座に泣きやんでおとなしくなる缶。八神はそのまま缶をイスの上に置き直す。

「で、難民対策は交番建てるだけでいいのな」
 KBNの締めの言葉に全員がうなづく。
「まあ、普通だな」
「普通でいいです」
 八神がキッパリという。もはや、次世代の藩王としての役目をキッチリ果たすべく動いているといっていいだろう。
 会議はごくごく平和に終了するのだった。

(SS:あさぎ・イラスト:矢上麗華)


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