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院内集会に参加してみた - (2015/01/07 (水) 20:30:47) の編集履歴(バックアップ)


2月24日(水)の冷静な「児童ポルノ禁止法の改正論議」を求める院内集会に参加してみました。
当日仕事や学校などの予定があり行けなかった人、参加しようとしたけれど定員オーバーで参加できなかった人などはどんなものだったか議論の内容や場の雰囲気を少しでも参考にしてくれれば嬉しいです。

概要
コンテンツ文化研究会が主催する院内集会(勉強会・講演会)に参加しました。
議員は7人も来ており、代理で秘書を送っている方が3人おられたので計10人も来ていました。
マスコミ関係者も結構来てましたし一般の参加者もおられました。
そして講演者の面子もその内容も本当に素晴らしかったです。
定員の50人がすぐに満杯になったのはうなずけます。

こんな集会を殆どコスト0で切り盛りして上手く廻したコンテンツ文化研究会は本当に凄いです。

注意
この記事は私の記憶とメモを頼りに、書き起こされたもので完全な議事録ではありません。
書きなぐりのメモを頼りにおぼろげな記憶を思い起こし、自分で言葉を付け足したり消したりしています。
正確性についてはあまり保証できないことをご了承ください。

日時 2010年2月24日(水)13:00
場所 衆議院第二議員会館 第四会議室


開始前

13:00
時間になっても面子がそろわず微妙にがやがやした感じ
なんか議員席の方に耳を向けると、「今は法務委員会やってるからこういうのが好きな人は皆むこう言ってる」とか言ってる。そりゃ残念とか思うけど、よく考えると自分なんかが参加できたのはそういう人がいたからかと思い直す。
13:09ごろ
皆がそろって、主催者であるコンテンツ文化研究会の杉野さんの挨拶
さすがの杉野さんも緊張しているようだった。
その後司会の山口貴志弁護士が挨拶し今回の講演者たちの紹介を行いました。

保坂氏と議員一同 後ろ山口弁護士 準備でがやがや

今回講演した人

1.田島泰彦氏(上智大学新聞学部教授)
  講演内容 単純所持・取得罪は本当に必要か?

2.森川 嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)
  講演内容 創作物規制がもたらす危険性について

3.杉浦ひとみ氏(弁護士・東京アドヴォカシー法律事務所 )
  講演内容 現場から見た児童保護施策の必要性

4.中川譲氏(東京大学大学院情報学府 所属 MIAU(インターネットユーザー協会)理事)
  講演内容 インターネット上の児童ポルノ情報閲覧規制について

正直規制問題に対してこれ以上はないというほどのオールスター軍団でした。

講演内容

1.田島泰彦氏(上智大学新聞学部教授)

13:15-13:33

講演内容 単純所持・取得罪は本当に必要か?

述べられたのは以下の3つです。
1.児童ポルノ法案の基本的問題
2.去年行われた自公と民主の修正協議
3.現在の民主党の対応の問題点

1.児童ポルノ法案の基本的問題
タイトルのあいまいさ
そもそも現在の児童ポルノの規定はあまりにも曖昧すぎる。
それなのに、さらに児童ポルノという名前の響きだけで反対の声を上げにくいという現状があり、思考停止してしまっている。

何でもかんでも規制という考え方はどうなのか?
表現の自由や思想・信条の自由、創作の自由に大きく関わる問題になる
だからこそ何でもかんでも規制という風潮にストップをかける世論の構築が必要だ。

3号ポルノのあいまいさ
児童ポルノ禁止法の問題点としてよく語られる、いわゆる三号ポルノの問題点を述べられました。
こんなあいまいな規定では警察にいいように利用される恐れがある。


3号ポルノとは児童ポルノ禁止法の児童ポルノとはなにか定義する部分の一説。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO052.html
『三  衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの』
非常に曖昧で警察が思うままに乱用されない、規制がどんどん拡大しかねないと以前から危惧されている。
http://d.hatena.ne.jp/pinsuke/20090704/1246684737

単純所持規制と創作物規制
警察の捜査のむやみな拡大に繋がる恐れがある。

メディアの対応
大抵のメディアが無批判に児童ポルノ規制を賛美している。

例1:警察の発表は鵜呑みにしてそのまま報道する
例2:しかしこういう勉強会で述べられたことは無視する

このような規制の流れは統制社会へ繋がりかねない
戦前の統制はエログロナンセンス規制から始まった面がある。
一番弱いそういう部分から規制は広がっていく。

2.法案審議時の修正協議の問題
当時は一気に規制問題が取り上げられ進められた、そして最終的に廃案になったわけだがその過程で修正協議が進められていた。
その内容には3つの問題点がある
 1.3号ポルノは若干修正が入るが残る
 2.単純所持規制も盛り込まれていた
 3.創作物規制は別法でやる

これらは自公案よりはマシとはいえ、自公案をベースにしたものには間違いなく大きな懸念が残っている。

3.現在の民主党の対応の問題点
定義規定
三号ポルノなどよりは限定されているがそれでも曖昧な点が残る。

所得罪
単純所持よりはマシだが悪用される危険はある

民主党のメディア規制のスタンス
 例1:人権擁護法案
 例2:小沢事件時の対応などのように、メディア介入捜査介入を平気でやってしまう姿勢

結論
以上のように表現規制問題は非常に繊細な問題であるのに、十分な議論がなされていないので慎重・冷静な議論が必要だ。

雑感

田島氏は法律や社会のあり方から表現規制の問題点を取り上げていました
正直国会審議の中での参考人答弁の内容とほとんど違いはありませんでしたが、こういう権威ある人が基本的大原則を繰り返し述べてくれるということは非常に有難いことだと思います。

その上であえて国会審議と違う点を上げるとすれば
1.今回は時間が限られていたこと
2.今回は、規制派主催の国会審議中での慎重論という立場ではなく、慎重派主催の勉強会の中での意見だったこと
などから、国会審議のときよりも若干反対色が強かったです。

ちなみに田馬氏は新聞界の権威であり、新聞社には田島氏の教え子が沢山おり、毎日新聞社の「開かれた新聞」委員会委員も務めており、毎日新聞がそれほど児童ポルノ規制に無条件肯定ではなくなったのは田島氏の影響でもあるそうです。

2.森川 嘉一郎氏(明治大学国際日本学部准教授)

13:33-13:50

講演内容 創作物規制がもたらす危険性について

創作物規制がなされるとどのような危険があるのか、規制の範囲をきわめて狭めても壊滅的な悪影響は避けられない。
出版社もそれは分かっているが児童ポルノという名称もあり、大手であればあるほど口を出せない状況になっている。

私は「アニメの観光資源化」などで役人と話すと、役人はいいマンガ・アニメと悪いマンガ・アニメがあると思っているらしい。
そして、いいマンガ・アニメは健全な漫画家やメーカーが作り健全な国民が見るもので、悪いマンガ・アニメは不健全な漫画家やメーカーが作り一部の男性が見るものだと思っている
そして「悪いアニメやマンガだけを排除するにはどうしたらいいのでしょうか?」と聞いてくる。(会場で笑いの声が上がる)

しかし実際はいいマンガ・悪いマンガなどと分かれているものではなく、あらゆるクリエイターが渾然一体となっていいマンガ・悪いマンガなどの作品をつくり、消費者もいいマンガ悪いマンガわけ隔てなく消費している。
そしてアマやセミプロで腕を上げていった人が上に上がってプロになったりしている。
このクリエイター層の桁違いな膨大さが日本のアニメやマンガを支えている。
このような構図は欧米にはなく、欧米はプロであるクリエイターと消費者が断絶している。

役人や政治家が連想する良いマンガと悪いマンガ 実際の姿

ここでアマ・セミプロの例としてコミケが紹介される。
これは有明で行われているコミックマーケットで、一般参加者は3日で55万人、参加サークルは3万人にも上る。
一般にそういうものを扱ってるのは男性だというイメージがあるが参加の7割は女性だ(本当なのか?と思ったw)
そしてその中でいわゆるエロを扱うサークルはサークル数ベースで3割、売り上げベースで5割くらいだといわれている。
コミケの様子例1:人が多い コミケの様子例2:女性が多い

次、いいマンガと悪いマンガに境目などないことの例として、幾人かの漫画家やクリエイターの例を挙げていく。
例えば、文化庁の主催するメディア芸術祭というイベントで優秀賞や対象をとった漫画家がエロ同人書いてたり、ロリコン漫画家の先駆け的存在だったりする。
また賞をもらったアニメのキャラデザをやっている人はエロゲ製作もしているし、マンガ版を書いてる人はエロ漫画家である。

結論
このように日本のマンガ・アニメ文化や社会は渾然一体となっているので、外科手術のように悪い部分だけを取り除くのは不可能であり、もしそんなことを行えば日本のマンガ・アニメ文化を支える基盤は簡単に崩壊してしまう。

雑感

個人的に権威ある人が広く深く綿密にオタク文化のあり方を述べていたのは感動しました
今まで言いたくてもいえなかったことをよく言ってくれたという感じでした。
ただあえて注文つけるなら賞を受けた作品の中ですら性描写シーンがあるということも述べて欲しかったかなと思いました。

3.杉浦ひとみ氏(弁護士・東京アドヴォカシー法律事務所 )

13:51-14:07

講演内容 現場から見た児童保護施策の必要性

被害者保護の観点から見た児童ポルノ捜査のあり方
現在の児童ポルノ被害者の聞き取り調査は、捜査のためのものであり問題点が二つある。
問題点
1.子供の記憶は簡単に変質する
子供は「周りの大人がそうだったよね?」と繰り返すとそれを信じてしまう。こういう現象は大人にもあるのだが、大人は自分の意見をすりかえられたことを認識できるが、子供にはそれが出来ない。
これは実験でも確認されており、実際に芋ほりに言ったことない子供に「芋ほり楽しかったね」と繰り返しいい、「ほら一緒に芋を掘って食べたでしょ?おじいちゃんも美味しかったといっていたよ」などと話し続けると記憶が入れ替わってしまう。
そしてその後種明かしをすると大人の場合は「おかしいと思った」と答えるのに対し、子供の場合は完全に記憶が摩り替わっているので「だけど嘘は言ってない」と答えてしまう。
だから犯罪立件をもくろむ大人の警察に子供の聞き取りを任せるのは、証拠収集の方法として問題がある。
2.トラウマの問題
子供にとって狭い取調室の中で辛い記憶を何度も何度も色々な大人の前で喋らせるのは、子供のトラウマを何度も抉りトラウマを深めてしまう。

では、被害者保護のためには聞き取り方法はどうあるべきか
それはアメリカで行われている聞き取り方法を導入するべき
まず聞き取りは狭い取調室ではなく広い開放的なところで行う。
さらに質問もYes/Noの質問ではなく、オープンクエッションで聞いていく。
そしてその様子を児童保護のプロなどが監視し、これ以上は限界であるとみればストップをかける。

この方法は日本でも女性の強姦被害者について導入しようという動きがあるが、児童にも適応するべきだ。

その他
単純所持については今の規定は問題だが、野放しではいけないのではないかという考えのようでした。
また社会の風潮などを法や制度を変えることによって正すこともありうるという立場の意見でした。
ただ今回の参加者の方々の話しを聞いて少し考えが変わったとも言っておりました。

また日本では寝た子を起こすなという考えの下で、性を隠そうという傾向があるがもっと性教育をしっかりとして性を教える方がいいのではないかとも言っていました。
これはかなり大事なことだと思います。

雑感

杉浦さんは児童保護のスペシャリストであり、最先端の知識を持っている人です。
我々がこの問題で戦っていくには「規制派の案では児童保護にはならない。我々の案の方がずっと児童保護になる」とならなければいけません。
その為には杉浦さんのような方をこちらに引き込み彼女の持っている児童保護の知識を積極的に導入せねばならないのだと思います。

また性教育の問題などは一見無関係に見えながら本当は何よりも本質的に重要な問題だと思います。
すなわち、国民を自分で判断する能力のある存在としてみるか、未熟であり国が管理・コントロールするべき存在としてみるかという問題です。
前者を重視するならば判断力を養うことに力を注ぐことになりますし、後者を重視するなら余計な情報は全て遮断することに力を注ぐことになるのでしょう。
ポルノ規制問題の本質の一つはここにあると思います。

4.中川譲氏(東京大学大学院情報学府 所属 MIAU(インターネットユーザー協会)理事)

14:08-17

講演内容 インターネット上の児童ポルノ情報閲覧規制について

主に現在進められているインターネット検閲である。ブロッキングについて話されました。
本当にネットユーザーに対してブロッキングなんて出来るの?という問いに対しては欧米ではすでに5年くらいの運用実績があるということです。
そのロジックとしては、そもそもそういう国は単純所持規制どころか、メールやネットでたまたま見てしまったような場合でも有罪になるような法が敷かれており、プロバイダー各社が顧客であるユーザーを保護するために警察から送られてきたリストのサイトを遮断するという形が取られているそうです。これは法律で決められているのではなく、業界によるのユーザー保護、自主規制という形で行われている。

そしてブロッキングの内容は警察や警察の外郭団体が決定して、その決定方法は殆どブラックボックスであり、ブロッキングの内容も90%以上はオーバーブロッキング(不必要なブロッキングだ)と言われています。

そして欧米の国々で児童ポルノ規制だけがこんなアレな法律なのかと言うと、向こうでは世論ががっちり固まっており児童ポルノ問題にちょっとでも異を唱えると社会から袋叩きに遭うので怖くて誰も異を唱えられないそうです。
同じく、このような広範なブロッキングも児童ポルノだけに適応されており犯罪情報などは普通に流れているけど、これはなぜブロッキングしないのかと問うと「表現の自由があるから」となるそうです。

結論
もし仮に児童ポルノ対策として規制が必要だとしてもブロッキングは非常に筋が悪い方法である

雑感

想像以上にブロッキングは有害だと思いました。
そしてそんなことが社会の関心を殆ど集めないまま進められている現状がちょっと恐ろしかったです

あとは児童ポルノってだけで思考停止するのは日本だけじゃなくて世界の共通事項なんですねw
日本の民度は思ったより低くないのかもしれません(というか欧米の民度が思ったより高くないのかも…)
まあ向こうは組織及びエリートがしっかりしてるから、それで持ってるのかもしれませんね。

質問応答

14:17-22
その後質問の時間が5分くらい取られました。
質問はメディア関係者優先で行われました。
日本テレビの質問
Q:田島さんは三号ポルノの規定が曖昧だとおっしゃっていましたが、それならどのような規定にすればいいのでしょうか?

A:それが分かれば…(会場苦笑)
ただ一ついえるのは、まずは児童ポルノについて本当にどこがどう悪いのかもっと議論するべきだ
そしてその上で規制が必要だとしてももっと他の期間と突き合わせるべきだ。
そして法律というのは、法律を作ると自主規制などの形で法律以外の部分も動く。
だからこそ、きちんと冷静にプロセスを踏むべき。

『マンガ論争勃発』の昼間たかし氏の質問
Q:(主催者へ質問)なんで講演者が学識者だけになったの?
A:本当はもっと色々な方に講演してもらいたいのですが、時間の都合もあります。我々は今後もこのような集いを続けて行きたいのでそのときに講演をお願いするかもしれない。

Q:次はどのような勉強会を開くつもりか?
A:東京都の条例を取り上げたい

最後に議員の人たちの挨拶

14:22-14:40
橋本べん議員:まだこの問題にはそれほど詳しくないので、これから勉強させてもらいたいです。
本多平直議員:与野党で合意があったのは事実だし、その内容も田島氏の言ってた通りのものだ。
しかし、政権交代もあったことだし、出来れば動かしたいと思っている。
ただ、私も民主案には問題があると思うが、それでも頑張って民主案に戻すのがやっとだと思う。
松浦大悟議員:自公は外国は外国はというが、日本には日本の特殊事情がある。
例えば、取調べの可視化などだ。可視化のような制度が整備されていないのに武器(単純所持)だけよこせと言うのは間違いだろう。
松岡広隆議員:カンボジアで売春買春の調査をしたことがある。そのときのことを思い出すと今も涙が出る。
宮崎岳志議員:私自身もコバルト文庫で三冊ほど本を出して5万部ほど売れたことがある(会場笑い)
その立場から申すと森川氏の意見に同意する。
コバルトはいわゆるボーイズラブと呼ばれる言ってみれば未成年の男の性交を取り扱うことが多い。
しかし、そんなコバルト文庫から直木賞作家が3人も出ている。
このように文化は混沌としている。被害者救済は必要だが文化は守らねばならない。
山花郁夫議員:被害者救済と創作物規制は分けなければいけない。
民主党案も出来れば修正したい。
児童ポルノと言う問題は本当に選挙に不利なのだが、それでも覚悟を決めてこの問題に取り組みたい
保坂のぶと前議員:半年でこれほど状況が変わるのが凄いと思った。
思い起こせば葉梨議員がサンタフェも廃棄するべきだ、保存されているネガも処分するべきだなどと言っていたがこの法案が通ると本当にそうなりかねなかった。
しかし現在は7名の議員の方々がこの問題を考えるために集まってくださったことは本当に凄いことだと思う。
挨拶する保坂氏 保坂氏コメント中の議員さんたち(議員さんが沢山来すぎたので保坂氏が後ろに下がりました)

集会の感想

状況は想像以上に深刻だが、コンテンツ文化研究会などの有志の方々が想像以上に頑張っているのでなんとか均衡を保っているのだと認識を改めました。
恐らくこの規制の流れはしばらく続きますし、その流れを完全に食い止めるのは不可能だと思う。
だから問題は規制をどれだけ小さくするかと言う点にかかってくるのではないかと思う。

スタッフの一人に「今回の集会の為に活動している方はどれくらいいるのか?」と問うたところ「10人くらいだ」とおっしゃっていました。
たった10人の人たちが知恵と情熱を振り絞るだけでこれだけのことが出来るんです。
皆様方もこの問題を逃げず諦めず直視し、一緒に戦ってくださるとありがたいと思います。


参考


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