第五話 死闘の果て
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gundam_dollda
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ずっとずっと、探していたんだ…
深い氷と闇の世界から、貴女だけを探していたんだ…
深い氷と闇の世界から、貴女だけを探していたんだ…
「ガンダムマルス、アレス・ルナーク!これよりガンダムドルダを駆逐する!」
先ほどデイヴ達と戦闘を行っていた時とは比べ物にならないほどの速度で、二刀流のガンダムマルスがドルダへと向かう。
(シンシア…)
その身に走る驚異のGに、顔を歪ませるアレス。
(何度でも、探し出すよ…)
激突するドルダとマルス。二刀流の太刀をドルダのビームフィールドが阻む。
(君の目、その手の温もりを…!)
揺るぎない瞳のまま、マルスはサーベル柄部を軸とし、そのままドルダに向かって宙返り、かかと落としを放つ。
ガァン!仰け反るドルダに対して、マルスが攻撃の手を緩めることはない。
片方のバスターライフルの銃口をマルスに向けるドルダの手首を、マルスの手刀打ちが弾く。
「…ッ!」
顔を歪める謎の少女。クランも戸惑いを隠せないでいる。
そのままマルスはドルダの懐に入り込むようにして、ビームブレイドを発生させたままの足で三日月蹴りを放つ。
(やはりビームは無効化されるか…!)
思い通りにならない目の前の敵に対して舌打ちをするアレス。
(それでも!)
仰け反るドルダに対し、三日月蹴りを放った足を軸足とし、さらに軸足を回転させ跳躍し、自らの背中を見せるマルス。
大きな隙が出来た、と思いきや…目にもとまらぬ速さでそのまま反対の足で勢いをつけると、大きく弧を描くようにして、軸足が舞いドルダの頭部を強く打つ。
「くっ!あああああああ!」
大きくよろめくドルダに、叫ぶ少女とクラン。
しかし少女は、すぐに冷たい瞳に戻ると、冷静な判断でマルスに腹部のビームキャノンの照準を合わせる。
「いっけー!」
収束するビームキャノンを間一髪で回避するマルス。一瞬のうちにMA形態に変形することで、マルスの下半身を狙ったビームを避けたのだった。
先ほどまでマルスの下半身を捉えていたビームは、出会うべき対象を捉え損ね、虚しく消えて行った。
(だとしても!)
MA形態のままビームライフルを連射し、ドルダに特攻するマルス。
放たれるビームはすべて無効化されるも、連撃としての意味は成したようだ。
わずかな隙を見出し、一定以上の間合いに入りMS形態に変形、そのままドルダにラリアット、廻し蹴り、追い打ちの足刀蹴りを入れる。
「ぅぅ…あああ!」
衝撃から来るGに苦しむ少女。
ドルダのビームジェネレーターはビーム兵器を無効化するフィールドを発生させるが、実弾や実剣、MS等による格闘は防げないのであった。
一方でクランの方は、Gによる衝撃に苦しみながらも、頭の中では別のことを思い苦しんでいた。
先ほど偶然聴こえた通信…アレスという名…
もし目の前の真紅の機体のパイロットが本当に彼女の思い浮かべるアレスだったなら、この戦いは起こってはならないものだ。
(アレス…本当にあなたなの?)
それまで戸惑いと苦しみと幾らかの傷痕のみしか映し出していなかったクランの瞳が、今度は固い決意によって輝きを取り戻す。
(だとしたら、私はこの戦いを止めなければならない…!)
アレスとシンシア。シンシアとアレス。シンシアとアレスとクラン。
目の前の少女が本当にシンシアなのかはわからない。また、目の前の機体が本当にアレスであるのかはわからない。
しかしクランは、なんとしてもこの戦いを止めなければならない、とその心で決めたのであった。
先ほどデイヴ達と戦闘を行っていた時とは比べ物にならないほどの速度で、二刀流のガンダムマルスがドルダへと向かう。
(シンシア…)
その身に走る驚異のGに、顔を歪ませるアレス。
(何度でも、探し出すよ…)
激突するドルダとマルス。二刀流の太刀をドルダのビームフィールドが阻む。
(君の目、その手の温もりを…!)
揺るぎない瞳のまま、マルスはサーベル柄部を軸とし、そのままドルダに向かって宙返り、かかと落としを放つ。
ガァン!仰け反るドルダに対して、マルスが攻撃の手を緩めることはない。
片方のバスターライフルの銃口をマルスに向けるドルダの手首を、マルスの手刀打ちが弾く。
「…ッ!」
顔を歪める謎の少女。クランも戸惑いを隠せないでいる。
そのままマルスはドルダの懐に入り込むようにして、ビームブレイドを発生させたままの足で三日月蹴りを放つ。
(やはりビームは無効化されるか…!)
思い通りにならない目の前の敵に対して舌打ちをするアレス。
(それでも!)
仰け反るドルダに対し、三日月蹴りを放った足を軸足とし、さらに軸足を回転させ跳躍し、自らの背中を見せるマルス。
大きな隙が出来た、と思いきや…目にもとまらぬ速さでそのまま反対の足で勢いをつけると、大きく弧を描くようにして、軸足が舞いドルダの頭部を強く打つ。
「くっ!あああああああ!」
大きくよろめくドルダに、叫ぶ少女とクラン。
しかし少女は、すぐに冷たい瞳に戻ると、冷静な判断でマルスに腹部のビームキャノンの照準を合わせる。
「いっけー!」
収束するビームキャノンを間一髪で回避するマルス。一瞬のうちにMA形態に変形することで、マルスの下半身を狙ったビームを避けたのだった。
先ほどまでマルスの下半身を捉えていたビームは、出会うべき対象を捉え損ね、虚しく消えて行った。
(だとしても!)
MA形態のままビームライフルを連射し、ドルダに特攻するマルス。
放たれるビームはすべて無効化されるも、連撃としての意味は成したようだ。
わずかな隙を見出し、一定以上の間合いに入りMS形態に変形、そのままドルダにラリアット、廻し蹴り、追い打ちの足刀蹴りを入れる。
「ぅぅ…あああ!」
衝撃から来るGに苦しむ少女。
ドルダのビームジェネレーターはビーム兵器を無効化するフィールドを発生させるが、実弾や実剣、MS等による格闘は防げないのであった。
一方でクランの方は、Gによる衝撃に苦しみながらも、頭の中では別のことを思い苦しんでいた。
先ほど偶然聴こえた通信…アレスという名…
もし目の前の真紅の機体のパイロットが本当に彼女の思い浮かべるアレスだったなら、この戦いは起こってはならないものだ。
(アレス…本当にあなたなの?)
それまで戸惑いと苦しみと幾らかの傷痕のみしか映し出していなかったクランの瞳が、今度は固い決意によって輝きを取り戻す。
(だとしたら、私はこの戦いを止めなければならない…!)
アレスとシンシア。シンシアとアレス。シンシアとアレスとクラン。
目の前の少女が本当にシンシアなのかはわからない。また、目の前の機体が本当にアレスであるのかはわからない。
しかしクランは、なんとしてもこの戦いを止めなければならない、とその心で決めたのであった。
「なんなんだよ、アイツらは…?」
装甲の剥げたグワッシュから、直接二機のガンダム同士の戦いを見つめるデイヴ。
見たこともない機体が、見たこともない装備を持ち、見たことのない状況で戦っている。
「クソッ!俺は一体どうすりゃいいんだ…?」
焦るデイヴに、通信が入る。フィリアからだった。
「デイヴ、皆、聞こえる!?」
緊迫したフィリアの声。どうやら現状を把握しているようだ。
「ああ。しかし聞いてないぜ、フィリア。お前の言う再スタートってのは、アンノウン同士のドンパチに巻き込まれることだったのか?」
皮肉を言うデイヴ。まあこのような理不尽な状況で、その気持ちはわからないでもないが。
「もう!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
「…へいへい。で?俺達はどうすりゃいいんだ?」
「全員とにかく現場より緊急離脱!急いで!」
フィリアが言い終わると同時に、今度はスメッグヘッド教授から通信が入る。
「何を言っておるのだ、シュード君!現場のパイロットは皆、あの二機のデータ収集を最優先とせよ!」
傲慢に言い放つスメッグヘッド。驚きを隠せない第七次調査団の面々。
ゲイリーなどは悲嘆の声を洩らし、泣き出しかけていた。
そんな中、一人デイヴのみが答える。
「おいおい、そりゃねえっすよ、教授殿。命あってのものダネって言葉、教授ともあろうお方が知らねえとは言わせませんよ」
「口答えをするな、この落ちこぼれ!」
「ハッ!これでもヨボヨボのアンタよかMSは操縦できるぜ」
「なんだと、貴様!」
「落ちつけよ、血圧が上がっちまう」
激昂するスメッグヘッドとニヤリと笑うデイヴ。
「実はこの落ちこぼれ、僭越ながらガンダムタイプと交戦したであります!」
おどけたように言う、しかしその表情は出来るだけ真面目になるよう努めていた。
「なに!?」
驚くスメッグヘッド。
「一応グワッシュのミッションレコーダーに記録、残ってんぜ。それでもまだウダウダ言うのかい?アンタの口は」
デイヴはスメッグヘッドに聞こえないように、一機分だけだけどな、と呟く。
「それを早く言わんか、バカタレ!全員速やかに帰還せよ!」
通信が切れる。安心の溜息をもらす面々。特にゲイリーなどはそれが顕著であった。
「やるじゃねえか、オッサン。教授を黙らせちまうなんて」
ディックからの通信が入る。
「クソオヤジからオッサンへ昇格できて光栄であります、中尉殿。しかしあのジジイの口は悪意製造機だな。おしゃぶりでもはめとけっての」
相変わらず皮肉を続けるデイヴ。しかし、その顔は作った真剣さではなく、本当に真剣な表情そのものだった。
「さて、こっからどう帰るかねえ…ラーグ中尉とネルネ…だっけか?俺とアイツのMS、引っ張って行ってくれよ」
「誰が貴様なぞを!出撃前、私のドグッシュを…その…」
顔を真っ赤にするネルネ・ルネールネ。
その顔の赤さは怒り半分、恥ずかしさ半分といったところだろうか。
「構わない。デイヴィッドは俺が。君はディックを頼んだ」
「…えっ!?いや、その私は…」
何故か慌て出すネルネ。女性というのは、よくわからないものだ。
「そ、その、デイヴィッドを運んでも…」
言い終わる前に、シヴォーフのムウシコスがデイヴのグワッシュを支える。
「離脱する!」
シヴォーフとデイヴ、ネルネとディック、そしてゲイリーは帰還するべく、その場を離れようとした。
装甲の剥げたグワッシュから、直接二機のガンダム同士の戦いを見つめるデイヴ。
見たこともない機体が、見たこともない装備を持ち、見たことのない状況で戦っている。
「クソッ!俺は一体どうすりゃいいんだ…?」
焦るデイヴに、通信が入る。フィリアからだった。
「デイヴ、皆、聞こえる!?」
緊迫したフィリアの声。どうやら現状を把握しているようだ。
「ああ。しかし聞いてないぜ、フィリア。お前の言う再スタートってのは、アンノウン同士のドンパチに巻き込まれることだったのか?」
皮肉を言うデイヴ。まあこのような理不尽な状況で、その気持ちはわからないでもないが。
「もう!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」
「…へいへい。で?俺達はどうすりゃいいんだ?」
「全員とにかく現場より緊急離脱!急いで!」
フィリアが言い終わると同時に、今度はスメッグヘッド教授から通信が入る。
「何を言っておるのだ、シュード君!現場のパイロットは皆、あの二機のデータ収集を最優先とせよ!」
傲慢に言い放つスメッグヘッド。驚きを隠せない第七次調査団の面々。
ゲイリーなどは悲嘆の声を洩らし、泣き出しかけていた。
そんな中、一人デイヴのみが答える。
「おいおい、そりゃねえっすよ、教授殿。命あってのものダネって言葉、教授ともあろうお方が知らねえとは言わせませんよ」
「口答えをするな、この落ちこぼれ!」
「ハッ!これでもヨボヨボのアンタよかMSは操縦できるぜ」
「なんだと、貴様!」
「落ちつけよ、血圧が上がっちまう」
激昂するスメッグヘッドとニヤリと笑うデイヴ。
「実はこの落ちこぼれ、僭越ながらガンダムタイプと交戦したであります!」
おどけたように言う、しかしその表情は出来るだけ真面目になるよう努めていた。
「なに!?」
驚くスメッグヘッド。
「一応グワッシュのミッションレコーダーに記録、残ってんぜ。それでもまだウダウダ言うのかい?アンタの口は」
デイヴはスメッグヘッドに聞こえないように、一機分だけだけどな、と呟く。
「それを早く言わんか、バカタレ!全員速やかに帰還せよ!」
通信が切れる。安心の溜息をもらす面々。特にゲイリーなどはそれが顕著であった。
「やるじゃねえか、オッサン。教授を黙らせちまうなんて」
ディックからの通信が入る。
「クソオヤジからオッサンへ昇格できて光栄であります、中尉殿。しかしあのジジイの口は悪意製造機だな。おしゃぶりでもはめとけっての」
相変わらず皮肉を続けるデイヴ。しかし、その顔は作った真剣さではなく、本当に真剣な表情そのものだった。
「さて、こっからどう帰るかねえ…ラーグ中尉とネルネ…だっけか?俺とアイツのMS、引っ張って行ってくれよ」
「誰が貴様なぞを!出撃前、私のドグッシュを…その…」
顔を真っ赤にするネルネ・ルネールネ。
その顔の赤さは怒り半分、恥ずかしさ半分といったところだろうか。
「構わない。デイヴィッドは俺が。君はディックを頼んだ」
「…えっ!?いや、その私は…」
何故か慌て出すネルネ。女性というのは、よくわからないものだ。
「そ、その、デイヴィッドを運んでも…」
言い終わる前に、シヴォーフのムウシコスがデイヴのグワッシュを支える。
「離脱する!」
シヴォーフとデイヴ、ネルネとディック、そしてゲイリーは帰還するべく、その場を離れようとした。
「逃すものか!」
アレスはドルダと戦いながらも、彼ら第七次調査団を全滅させるという、ティモールの命令を実行することを忘れはしなかった。
ドルダの放つビームキャノン、手に持った方のバスターライフルの閃光を巧みに避けつつ、ビームガンブレードの照準を彼らに向ける。
「落ちろ!」
放たれるビームライフルの雨が、殿を務めていたデイヴとシヴォーフを襲う。
(当たるものか…俺は言うんだ、彼女に…帰ったら、結婚しようって…!)
必死にビームライフルを回避しようとするが、その一撃がムウシコスに直撃する。
「うわあああああ!」
動きを止めたムウシコスを襲う無情な攻撃。
憐れ、シヴォーフ・ラーグはその名の通り、宇宙の塵と消えてしまった。
かたやデイヴのグワッシュは、奇跡的に、本当に奇跡的にだが、ムウシコスの爆散の影響を受け誘爆することなく吹っ飛ばされるだけで済んでいた。
「オッサン!」
「デイヴィッド!」
同時に叫ぶディックとネルネ。しかし、彼らとデイヴとの距離はあまりにも離れ過ぎていた。
助けに行こうとするが、ゲイリーの制止を受け、なす術もなく二人は帰投するしかなかったのだった…
「つくづく運のいい…しかし貴様も終わりだ!」
もはやデイヴを撃つことに何の躊躇いも戸惑いもなく、アレスは引き金を引こうとする。
が…
またしてもガンダムドルダがそれを阻む。
今度はバスターライフルをマウントし、大型のビームソードを抜く。
両肩のジェネレーターからもビームサーベルを発生させ、マルスに対抗する為接近戦を主流に切り替えることにしたようだ。
「!」
ドルダは腹部のビームキャノンを放ち、マルスに向けてビームソードを振りかざす。
マルスはビームキャノンを避け、ビームガンブレードをドルダに向ける。
バチッ!ビームソードとビームガンブレードが火花を散らす。
マルスはドルダの攻撃を巧く防げた…かに見えた。
刹那、ドルダは体勢を変え、ビームソードを持っていない方の肩を突き出す。
ドルダの肩にあるビームサーベルがマルスを襲う。
「シールドが!?」
間一髪でその斬撃をセンサーシールドで阻むことに成功したマルス。
しかし、ドルダの圧倒的なビーム出力の前に、マルスのセンサーシールドは溶解してしまう。
(クッ!まずいな…)
両手を振り上げた状態のマルス。中段に大きな隙が出来る。
「ビームキャノン、収束…発射!」
叫ぶ少女。
「ダメええぇぇぇ!」
しかし、その声よりも深い悲しみを知っている叫び声の主が、少女の操縦を阻む。
「お姉、ちゃん…?」
信じられないといった顔をする少女。
ああ、そんな顔をしないで…クランは少女を見つめ、自らのしたことを悔いたがすぐに気を取り直し少女に問う。
「通信のスイッチは、どれ!?」
「何を…」
「いいから!答えて!」
その昔、自らの妹を叱った時のことを思い出しながら、クランは語気鋭く言い放つ。
その迫力に気圧された少女は観念したのか、一つのスイッチを指差し、黙り込む。
クランは身を乗り出して、通信のスイッチを押す。
「アレス!あなた、アレスね!?こんなことはもうやめて!もうこちらに敵意は無いわ!お願い!」
「「!」」
今までの比にならないほどの驚愕を見せるアレス…そしてデイヴ。
「聞こえるでしょう!?応答して、アレス!」
アレスは少しの逡巡の後、応答する。
「クラン…なのか!?何故あなたがここに…!」
「事情は後で話すわ!とにかくこれ以上争うのはもうやめましょう!」
「だが、その機体は…」
優しさと決意が入り混じった声で答えるアレス。
「アレス。お願いだからお姉ちゃんの言うこと、聞いて?」
不意に、クランが、鬼気迫る迫力の全てを抑え、肉親に向ける情愛をありったけに込めて、自らの弟に語りかける。
「姉、さん…」
ドルダとマルス…二機のガンダムは、火星の暁の空に沈黙するのだった。
アレスはドルダと戦いながらも、彼ら第七次調査団を全滅させるという、ティモールの命令を実行することを忘れはしなかった。
ドルダの放つビームキャノン、手に持った方のバスターライフルの閃光を巧みに避けつつ、ビームガンブレードの照準を彼らに向ける。
「落ちろ!」
放たれるビームライフルの雨が、殿を務めていたデイヴとシヴォーフを襲う。
(当たるものか…俺は言うんだ、彼女に…帰ったら、結婚しようって…!)
必死にビームライフルを回避しようとするが、その一撃がムウシコスに直撃する。
「うわあああああ!」
動きを止めたムウシコスを襲う無情な攻撃。
憐れ、シヴォーフ・ラーグはその名の通り、宇宙の塵と消えてしまった。
かたやデイヴのグワッシュは、奇跡的に、本当に奇跡的にだが、ムウシコスの爆散の影響を受け誘爆することなく吹っ飛ばされるだけで済んでいた。
「オッサン!」
「デイヴィッド!」
同時に叫ぶディックとネルネ。しかし、彼らとデイヴとの距離はあまりにも離れ過ぎていた。
助けに行こうとするが、ゲイリーの制止を受け、なす術もなく二人は帰投するしかなかったのだった…
「つくづく運のいい…しかし貴様も終わりだ!」
もはやデイヴを撃つことに何の躊躇いも戸惑いもなく、アレスは引き金を引こうとする。
が…
またしてもガンダムドルダがそれを阻む。
今度はバスターライフルをマウントし、大型のビームソードを抜く。
両肩のジェネレーターからもビームサーベルを発生させ、マルスに対抗する為接近戦を主流に切り替えることにしたようだ。
「!」
ドルダは腹部のビームキャノンを放ち、マルスに向けてビームソードを振りかざす。
マルスはビームキャノンを避け、ビームガンブレードをドルダに向ける。
バチッ!ビームソードとビームガンブレードが火花を散らす。
マルスはドルダの攻撃を巧く防げた…かに見えた。
刹那、ドルダは体勢を変え、ビームソードを持っていない方の肩を突き出す。
ドルダの肩にあるビームサーベルがマルスを襲う。
「シールドが!?」
間一髪でその斬撃をセンサーシールドで阻むことに成功したマルス。
しかし、ドルダの圧倒的なビーム出力の前に、マルスのセンサーシールドは溶解してしまう。
(クッ!まずいな…)
両手を振り上げた状態のマルス。中段に大きな隙が出来る。
「ビームキャノン、収束…発射!」
叫ぶ少女。
「ダメええぇぇぇ!」
しかし、その声よりも深い悲しみを知っている叫び声の主が、少女の操縦を阻む。
「お姉、ちゃん…?」
信じられないといった顔をする少女。
ああ、そんな顔をしないで…クランは少女を見つめ、自らのしたことを悔いたがすぐに気を取り直し少女に問う。
「通信のスイッチは、どれ!?」
「何を…」
「いいから!答えて!」
その昔、自らの妹を叱った時のことを思い出しながら、クランは語気鋭く言い放つ。
その迫力に気圧された少女は観念したのか、一つのスイッチを指差し、黙り込む。
クランは身を乗り出して、通信のスイッチを押す。
「アレス!あなた、アレスね!?こんなことはもうやめて!もうこちらに敵意は無いわ!お願い!」
「「!」」
今までの比にならないほどの驚愕を見せるアレス…そしてデイヴ。
「聞こえるでしょう!?応答して、アレス!」
アレスは少しの逡巡の後、応答する。
「クラン…なのか!?何故あなたがここに…!」
「事情は後で話すわ!とにかくこれ以上争うのはもうやめましょう!」
「だが、その機体は…」
優しさと決意が入り混じった声で答えるアレス。
「アレス。お願いだからお姉ちゃんの言うこと、聞いて?」
不意に、クランが、鬼気迫る迫力の全てを抑え、肉親に向ける情愛をありったけに込めて、自らの弟に語りかける。
「姉、さん…」
ドルダとマルス…二機のガンダムは、火星の暁の空に沈黙するのだった。
偶然に偶然が重なって、二機の死闘を見守ることになっていたデイヴに衝撃が走る。
いや、デイヴィッド・リマーがこの場所に居合わせたことはそもそも偶然なのだろうか。
偶然という必然が、運命という言葉に言い換えられ、デイヴの前に立ちはだかる。
「クラン…アレス…どっかで聞いたことがあると思ってたら、あの時の…」
過去の傷痕が痛み、デイヴは親友のフィリアにすら見せたことのない涙をその目に浮かべた。
(二年前の、あの事件の…俺が、俺が助けられなかった…!)
二年前…そう、クラン・R・ナギサカの妹、シンシアが死去した(と思われる)のも二年前。
デイヴィッド・リマーが軍を退役し、簡易居住惑星地区で飲んだくれのニートになったのも二年前…
悲しみに顔を伏せるデイヴ。しかしハッと面を上げる。
(まさか、あのガンダムもここに…)
二年前の悲劇の役者達…彼らが一挙にこの地へ集結しているという運命。
しかし、それには一人、役者が足りなかった。
そう、ガンダムドルチェである。
二年前の事件を引き起こした機体、純白の美しさを持つその機体が、デイヴの思惑通り約束の地へ近づきつつあった。
「そんな、ウソ、だろ…?」
白き舞姫のように流麗に、舞うようにしてガンダムドルチェはデイヴのグワッシュの元へ向かってくる。
「来るな…!」
冷や汗がとめどなく流れる。
「来るな…!」
首を振り、両手を突き出し拒絶の意を示す…が、なお近づく機体。
「来ないでくれえぇっ!」
デイヴの望みとは裏腹に、ガンダムドルチェはグワッシュのコクピットをこじ開け、デイヴをその掌に乗せる。
「来るな、とは随分な挨拶ね」
少女の声。但し、シンシアと思しき少女の澄んだ声を天使と形容するならば、こちらは美しさというものを熟知した、悪魔の声と形容出来る。
「ずっと、あなたに会いたかったの。デイヴ」
ドルチェのハッチが開き、デイヴを招き入れる。
操縦席には、金の髪に漆黒の瞳を持つ美しい少女。
「私はエリス。宜しくね、デイヴ」
運命の序曲は終わり、歯車が回転する。
いや、デイヴィッド・リマーがこの場所に居合わせたことはそもそも偶然なのだろうか。
偶然という必然が、運命という言葉に言い換えられ、デイヴの前に立ちはだかる。
「クラン…アレス…どっかで聞いたことがあると思ってたら、あの時の…」
過去の傷痕が痛み、デイヴは親友のフィリアにすら見せたことのない涙をその目に浮かべた。
(二年前の、あの事件の…俺が、俺が助けられなかった…!)
二年前…そう、クラン・R・ナギサカの妹、シンシアが死去した(と思われる)のも二年前。
デイヴィッド・リマーが軍を退役し、簡易居住惑星地区で飲んだくれのニートになったのも二年前…
悲しみに顔を伏せるデイヴ。しかしハッと面を上げる。
(まさか、あのガンダムもここに…)
二年前の悲劇の役者達…彼らが一挙にこの地へ集結しているという運命。
しかし、それには一人、役者が足りなかった。
そう、ガンダムドルチェである。
二年前の事件を引き起こした機体、純白の美しさを持つその機体が、デイヴの思惑通り約束の地へ近づきつつあった。
「そんな、ウソ、だろ…?」
白き舞姫のように流麗に、舞うようにしてガンダムドルチェはデイヴのグワッシュの元へ向かってくる。
「来るな…!」
冷や汗がとめどなく流れる。
「来るな…!」
首を振り、両手を突き出し拒絶の意を示す…が、なお近づく機体。
「来ないでくれえぇっ!」
デイヴの望みとは裏腹に、ガンダムドルチェはグワッシュのコクピットをこじ開け、デイヴをその掌に乗せる。
「来るな、とは随分な挨拶ね」
少女の声。但し、シンシアと思しき少女の澄んだ声を天使と形容するならば、こちらは美しさというものを熟知した、悪魔の声と形容出来る。
「ずっと、あなたに会いたかったの。デイヴ」
ドルチェのハッチが開き、デイヴを招き入れる。
操縦席には、金の髪に漆黒の瞳を持つ美しい少女。
「私はエリス。宜しくね、デイヴ」
運命の序曲は終わり、歯車が回転する。
五話 終 六話に続く